タイトル: | 特許公報(B2)_アセトキシスチレン類の製造方法 |
出願番号: | 1998357554 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C07C 69/157,C07C 67/24,C07B 61/00 |
平嶺 正 磯田 陽一郎 出井 紀昭 JP 3881468 特許公報(B2) 20061117 1998357554 19981216 アセトキシスチレン類の製造方法 本州化学工業株式会社 000243272 牧野 逸郎 100079120 平嶺 正 磯田 陽一郎 出井 紀昭 20070214 C07C 69/157 20060101AFI20070125BHJP C07C 67/24 20060101ALI20070125BHJP C07B 61/00 20060101ALN20070125BHJP JPC07C69/157C07C67/24C07B61/00 300 C07C 15/40 C07C 67/24 C07C 69/157 CASREACT(STN) 特開平10−316618(JP,A) 特開2000−191598(JP,A) 3 2000178227 20000627 13 20020423 関 美祝 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、アセトキシスチレン類の製造方法に関する。【0002】【従来の技術】近年、半導体デバイスの微細化と高集積化を背景として、高解像度と高感度を有するフォトレジスト材料が要望されており、この要望に従って、最近、KrF、ArFエキシマレーザー等の短波長光の化学増幅型レジスト材料が開発されており、なかでも、光照射によって容易に脱離する保護基にて水酸基を保護したポリヒドロキシスチレン類が特に有用であることが知られている。このようなポリヒドロキシスチレン類の原料モノマーとしては、従来、水酸基を保護基で保護した置換オキシスチレン類、特に、アセトキシスチレン類が広く用いられている。【0003】このようなアセトキシスチレン類の製造方法は、従来、種々のものが知られている。例えば、特開平8−157410号公報には、p−ヒドロキシベンズアルデヒドをアセチル化してp−アセトキシベンズアルデヒドとし、有機溶剤中、これに亜鉛金属とトリメチルクロロシランや塩化アセチルのような活性な塩化物を触媒として臭化メチレンを反応させる方法が記載されている。 Polymer, 24, p. 995 (1983) には、p−アセトキシベンズアルデヒドに臭化メチルトリフェニルホスフィンを作用させる Wittg 反応による方法が記載されている。J. Am. Chem. Soc., 80, p. 3645 (1985) には、p−アセトキシベンズアルデヒドにグリニヤール試薬を反応させる方法が記載されている。ヨーロッパ特許公開公報第355983号には、1−(4−アセトキシフェニル)エタノールを高温で脱水する方法が記載されている。更に、特開平6−192172号公報には、1−(4−アセトキシフェニル)エタノールを塩化アセチル又は無水酢酸でアセチル化して1−(4−アセトキシフェニル)エチルカルボキシレートとし、これを高温気相反応させる方法が記載されている。【0004】上記のほか、特開平2−47114号公報には、p−ヒドロキシアセトフェノンを臭素化した後、無水酢酸でアセチル化して、3,5−ジブロモ−4−アセトキシベンゾフェノンとし、これを水素化ホウ素ナトリウムで還元して、1−(3,5−ジブロモ−4−アセトキシフェニル)エタノールとした後、これを硫酸水素カリウムで脱水して、3,5−ジブロモ−4−アセトキシスチレンを得る方法が記載されている。【0005】【発明が解決しようとする課題】このように、従来、アセトキシスチレン類の製造方法は、種々知られているものの、多くは、ヒドロキシベンズアルデヒド類又はアセトキシベンズアルデヒド類を出発物質とし、特殊で高価な副原料を用いるので、アセトキシスチレン類を工業的規模で製造する方法としては採用し難く、他方、高温での気相反応を含む多段の反応工程を要するものは、コストが嵩むのみならず、生産効率が悪く、しかも、廃水、廃油の排出量も多い。【0006】本発明は、アセトキシスチレン類の製造におけるこのような問題を解決するためになされたものであって、工業的に容易に入手することができる低廉な出発物質から一段の工程にてアセトキシスチレン類を高収率にて製造する方法を提供することを目的とする。【0007】【課題を解決するための手段】本発明によれば、一般式(I)【0008】【化5】【0009】で表わされるt−ブトキシスチレン類を触媒の存在下にアセチル化剤と反応させることによる一般式(II)【0010】【化6】【0011】で表わされるアセトキシスチレン類の製造方法が提供される。【0012】【発明の実施の形態】本発明の方法においては、出発物質は、一般式(I)【0013】【化7】【0014】で表わされるt−ブトキシスチレン類であり、具体例として、例えば、o−t−ブトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン又はm−t−ブトキシスチレンを挙げることができるが、好ましくは、p−t−ブトキシスチレンである。本発明によれば、上記出発物質に対応して、一般式(II)【0015】【化8】【0016】で表わされるアセトキシスチレン類、即ち、o−アセトキシスチレン、p−アセトキシスチレン又はm−アセトキシスチレンを得ることができる。特に、本発明によれば、好ましくは、p−t−ブトキシスチレンからp−アセトキシスチレンを得ることができる。【0017】本発明によれば、上述したようなt−ブトキシスチレン類に触媒の存在下にアセチル化剤を反応させて、目的とするアセトキシスチレン類を得るが、ここに、アセチル化剤としては、無水酢酸や塩化アセチルが用いられ、なかでも、無水酢酸が好ましく用いられる。このようなアセチル化剤は、仕込みのt−ブトキシスチレン類1モル部に対して、少なくとも1モル部が用いられ、好ましくは、1.5〜5モル部の範囲で用いられる。【0018】また、触媒としては、好ましくは、酸触媒が用いられる。酸触媒の具体例としては、例えば、硫酸、リン酸等の鉱酸類や、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸、ポリスチレンスルホン酸等のカチオン交換樹脂等を挙げることができる。これらのなかでも、有機スルホン酸が好ましく、特に、p−トルエンスルホン酸が好ましく用いられる。これら酸触媒は、特に、限定されるものではないが、通常、仕込みのt−ブトキシスチレン類に対して、5〜50重量%の範囲で用いられる。【0019】本発明によれば、出発物質であるt−ブトキシスチレン類や反応生成物であるアセトキシスチレン類の重合を防止するために、(a) 一般式(III)【0020】【化9】【0021】(式中、R1 は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、R2 及びR3 はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示す。)で表わされる酸アミド類及び(b) 一般式(IV)【0022】【化10】【0023】(式中、Xは水素原子、メチル基、エチル基又は水酸基を示し、Yはt−ブチル基、t−アミル基又はメトキシ基を示し、m及びnはそれぞれ1〜3の整数を示す。但し、2≦m+n≦5である。)で表わされる置換フェノール類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の重合防止剤の存在下にt−ブトキシスチレン類にアセチル化剤を反応させることが好ましい。酸アミド類は、一般には、スチレン類の重合防止に効果があるとはされていないが、本発明においては、上記置換フェノール類と共に重合防止剤と呼ぶこととする。【0024】上記酸アミド類としては、ホルムアミド、アセトアミド、N−メチルホルムアミド、プロピオンアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N−t−ブチルホルムアミド、ピバラミド(トリメチルアセトアミド)、N,N−ジエチルアセトアミド、ヘキサノアミド、N,N−2−トリメチルプロピオンアミド、N,N−ジエチルプロピオンアミド、N,N−ジイソプロピルホルムアミド、N,N−ジイソプロピルアセトアミド、N,N−ジイソブチルホルムアミド、ホルムアニリド、アセトアニリド等を挙げることができる。これらのなかでは、N,N−ジメチルホルムアミドが特に好ましく用いられる。このような酸アミドは、特に、限定されるものではないが、通常、仕込みのt−ブトキシスチレン類1モル部に対して、0.01〜1.5モル部の範囲、好ましくは、0.05〜1モル部の範囲で用いられる。【0025】また、上記置換フェノール類としては、例えば、t−ブチルハイドロキノン、4−t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、3−メチル−6−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、4−メトキシフェノール等を挙げることができる。このような置換フェノール類も、特に、限定されるものではないが、通常、仕込みのt−ブトキシスチレン類に対して、50〜5000ppm、好ましくは、100〜1000ppmの範囲で用いられる。【0026】特に、本発明においては、上記置換フェノール類として、一般式(V)【0027】【化11】【0028】(式中、Zはメチル基又はエチル基を示し、xは0又は1、yは1〜3、zは0〜2の整数を示す。但し、1≦x+y+z≦5である。)で表わされるt−ブチルフェノール類が好ましく用いられる。【0029】このようなt−ブチルフェノール類として、例えば、t−ブチルハイドロキノン、4−t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、3−メチル−6−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール等を挙げることができる。【0030】本発明においては、t−ブトキシスチレン類とアセチル化剤の反応は、上記酸アミド類又は置換フェノール類のいずれかの存在下に行なってもよいが、しかし、上記酸アミド類と置換フェノール類との両方の存在下にt−ブトキシスチレン類とアセチル化剤の反応を行なうことによって、t−ブトキシスチレン類や反応生成物であるアセトキシスチレン類の重合による重合体成分の生成を抑えて、目的とするアセトキシスチレン類を高収率にて得ることができる。【0031】本発明によれば、反応の方法は、特に、限定されるものではないが、アセチル化剤と酸触媒と上記重合防止剤とからなる混合溶液に攪拌しながら、出発物質であるt−ブトキシスチレン類を滴下して、反応を行なうのが好ましい。必要に応じて、適宜の有機溶剤を用いることができる。反応温度は、通常、0〜95℃の範囲であるが、好ましくは、15〜90℃の範囲である。反応温度が低すぎるときは、反応速度が遅く、反応に要する時間が長くなって、望ましくない2量体等の低重合体やそれ以上の高重合体の生成が増加し、他方、反応温度が高すぎるときも、同様に、望ましくない低重合体や高重合体の生成が増加して、目的とするアセトキシスチレン類の収率が低下する。【0032】アセチル化剤と酸触媒と上記重合防止剤とからなる混合溶液にt−ブトキシスチレン類を滴下するとき、イソブチレンガスが発生し、反応混合物中には酢酸が生成する。【0033】反応の終点は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC分析)によって、反応混合物中の未反応のt−ブトキシスチレン類がほぼ消費された時点を目安とすることができる。反応の終了後は、反応を加熱下に行なったときは、得られた反応混合物をできる限り速やかに常温以下、例えば、30℃以下に冷却するのが好ましい。【0034】このようにして、反応が終了した後は、好ましくは、反応混合物に中和剤を加えて酸触媒を中和した後、蒸留によって酢酸と無水酢酸との混合物を蒸留にて回収し、その後、更に、蒸留によって目的とするアセトキシスチレン類を回収分離することができる。【0035】上記中和剤としては、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のような酢酸のアルカリ金属塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸(水素)塩を挙げることができる。また、アミン類、特に、第3級アミン類も触媒の中和剤として用いることができる。このような第3級アミン類としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジエチルメチルアミン、N,N−ジメチルイソプロピルアミン、N,N−ジイソプロピルアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジブチルメチルアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、N,N−ジメチルウンデシルアミン、トリデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン等を挙げることができる。【0036】このような中和剤は、特に、限定されるものではないが、通常、仕込みの酸触媒1モル部に対して、少なくとも等モル部が用いられる。しかし、余りに多く用いるときは、反応混合物中の酢酸塩の量が増えて、その後の蒸留の操作性が悪くなるおそれがあり、また、目的物の分離収率も低下するおそれがあるので、好ましくは、仕込みの酸触媒に対して、1.0〜1.5モル部の範囲で用いられる。【0037】本発明によれば、このように、反応終了後、反応混合物に中和剤を加えて酸触媒を中和した後、酢酸と無水酢酸とを蒸留にて回収し、引続き、蒸留を続けて、目的とするアセトキシスチレン類を回収することができる。しかし、好ましくは、酢酸と無水酢酸とを回収した後、酸触媒と中和剤との反応で生成した蒸留残渣中の無機塩類を水洗にて除去し、次に、このように処理した蒸留残渣に前記置換フェノール類を加えて後に、できるだけ低い温度で蒸留残渣を蒸留して、目的とするアセトキシスチレン類を回収分離するのが好ましい。このように、蒸留残渣からアセトキシスチレン類を蒸留にて回収する際、置換フェノール類は、特に、限定されるものではないが、通常、t−ブトキシスチレン類とアセチル化剤の反応を行なう際とほぼ同じ量、即ち、t−ブトキシスチレン類に対して、50〜5000ppm、好ましくは、100〜1000ppmの範囲で用いられる。【0038】【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、反応混合物中のp−アセトキシスチレンの生成量と未反応のt−ブトキシスチレンの残存量をGPCにて定量することによって、反応を追跡すると共に、収率を求めた。【0039】実施例1攪拌機、温度計及び還流コンデンサを備えた1000mL容量四つ口フラスコに無水酢酸306g(3.00モル)、p−トルエンスルホン酸一水和物15g(0.08モル)、ジメチルホルムアミド15g(0.205モル)及びt−ブチルハイドロキノン30mgを仕込み、70℃に加温した。【0040】内温を70℃に保ちつつ、p−t−ブトキシスチレン176g(1.00モル)を2時間で滴下し、この後、70℃で更に30分間攪拌して、反応を行なった。反応終了後、得られた反応混合物をGPC分析したところ、未反応のp−t−ブトキシスチレンは存在しておらず(反応率100%)、目的とするp−アセトキシスチレンの収率は67.9モル%であった。【0041】反応混合物に酢酸ナトリウム7.8g(0.095モル)を中和剤として加え、減圧蒸留によって酢酸と無水酢酸の混合物を留去した。蒸留残渣にトルエンと水を加え、油層を3回水洗し、油層にt−ブチルハイドロキノン30mgを加え、この油層から減圧蒸留によってトルエンと低沸点成分を留去した後、留出温度72〜86℃/1mmHgで主留分96.0g(GPC純度99.5%)を得た(収率59モル%)。【0042】この主留分はガスクロマトグラフィー(GC)質量分析、赤外線吸収スペクトル分析及び核磁気共鳴スペクトル分析から、目的とするp−アセトキシスチレンであることを確認した。【0043】GC質量分析(m/z):160(M+),120(M+−COCH3 ),105(M+−57)赤外線吸収スペクトル(KBR,cm-1):1755,1500,1365,1190,1180核磁気共鳴スペクトル(δppm):2.30(s),5.25(d),5.71(d),6.71(d),7.05〜7.44(m)【0044】実施例2攪拌機、温度計及び還流コンデンサを備えた200mL容量四つ口フラスコに無水酢酸61.2g(0.60モル)、p−トルエンスルホン酸一水和物3g(0.016モル)、ジメチルホルムアミド3g(0.041モル)及びt−ブチルハイドロキノン6mgを仕込み、90℃に加温した。【0045】内温を90℃に保ちつつ、p−t−ブトキシスチレン26.4g(0.15モル)を1時間で滴下し、この後、90℃で更に5分間攪拌して、反応を行なった。反応終了後、得られた反応混合物をGPC分析したところ、未反応のp−t−ブトキシスチレンは存在しておらず(反応率100%)、目的とするp−アセトキシスチレンの収率は78.2モル%であった。【0046】実施例3攪拌機、温度計及び還流コンデンサを備えた200mL容量四つ口フラスコに無水酢酸61.2g(0.60モル)、p−トルエンスルホン酸一水和物3g(0.016モル)、ジメチルホルムアミド3g(0.041モル)及びt−ブチルハイドロキノン6mgを仕込み、80℃に加温した。【0047】内温を80℃に保ちつつ、p−t−ブトキシスチレン26.4g(0.15モル)を1時間で滴下し、この後、80℃で更に1時間攪拌して、反応を行なった。反応終了後、得られた反応混合物をGPC分析したところ、未反応のp−t−ブトキシスチレンは存在しておらず(反応率100%)、目的とするp−アセトキシスチレンの収率は68.3モル%であった。【0048】反応混合物に炭酸ナトリウム2.1g(0.02モル)を中和剤として加え、減圧蒸留によって酢酸と無水酢酸の混合物を留去した。蒸留残渣にトルエンと水を加え、油層を3回水洗し、得られた油層にt−ブチルハイドロキノン6mgを加え、この油層から減圧蒸留によってトルエンと低沸点成分を留去した後、留出温度80〜93℃/1mmHgで主留分14.6g(GPC純度99.0%)を得た(収率59.9モル%)。【0049】実施例4攪拌機、温度計及び還流コンデンサを備えた200mL容量四つ口フラスコに無水酢酸61.2g(0.60モル)、p−トルエンスルホン酸一水和物3g(0.016モル)、ジメチルホルムアミド3g(0.041モル)及びt−ブチルハイドロキノン6mgを仕込み、70℃に加温した。【0050】内温を70℃に保ちつつ、p−t−ブトキシスチレン26.4g(0.15モル)を1時間で滴下し、この後、70℃で更に1時間攪拌して、反応を行なった。反応終了後、得られた反応混合物をGPC分析したところ、未反応のp−t−ブトキシスチレンは存在しておらず(反応率100%)、目的とするp−アセトキシスチレンの収率は64.7モル%であった。【0051】この反応混合物にジエチルアニリン2.9g(0.02モル)を中和剤として加え、減圧蒸留によって酢酸と無水酢酸と低沸点成分を留去し、引続いて、留出温度80〜93℃/1mmHgで主留分13.7g(GPC純度97.4%)を得た(収率56.2モル%)。【0052】実施例5〜8実施例4において、p−トルエンスルホン酸一水和物に代えて、表1に示す酸触媒のそれぞれ3gを用いた以外は、実施例4と同様に反応を行なった。結果を表1に示す。表1において、滴下時間とは、実施例1におけるように、p−t−ブトキシスチレンの滴下時間であり、後反応時間とは、p−t−ブトキシスチレンの滴下の終了後、更に反応を行なった時間であり、反応率とは、反応終了後にGPCにてp−t−ブトキシスチレンの消費量を定量し、未反応のp−t−ブトキシスチレンがないときを100%としたものであり、収率とは、GPCにて定量したp−アセトキシスチレンのp−t−ブトキシスチレン基準の収率(モル比)である。【0053】【表1】【0054】実施例9実施例4において、p−t−ブトキシスチレンと無水酢酸との反応に際して、t−ブチルハイドロキノンを用いなかった以外は、実施例4と同様に反応を行なったところ、p−t−ブトキシスチレンは全量消費されていたが(反応率100%)、重合体成分が収率30.6モル%の割合で副生しており、目的とするp−アセトキシスチレンの収率は60.0モル%であった。【0055】実施例10実施例4において、ジメチルホルムアミドに代えて、ジメチルアセトアミド3g(0.034モル)を用いた以外は、実施例4と同様に反応を行なったところ、p−t−ブトキシスチレンは全量消費されていたが(反応率100%)、重合体成分が収率38.2モル%の割合で副生しており、目的とするp−アセトキシスチレンの収率は56.0モル%であった。【0056】実施例11実施例4において、ジメチルホルムアミドとt−ブチルブチルハイドロキノンを用いなかった以外は、実施例4と同様に反応を行なったところ、p−t−ブトキシスチレンは全量消費されていたが(反応率100%)、重合体成分が収率35.6モル%の割合で副生しており、目的とするp−アセトキシスチレンの収率は48.4ル%であった。【0057】比較例1実施例4において、p−トルエンスルホン酸一水和物を用いることなく、実施例4と同様に反応を行なったが、p−t−ブトキシスチレンは全量、未反応のままで残存しており(反応率0%)、目的とするp−アセトキシスチレンを得ることができなかった。【0058】【発明の効果】以上のように、本発明によれば、t−ブトキシスチレン類と一般的なアセチル化剤、特に、無水酢酸とを原料として、一段の工程にて、目的とするアセトキシスチレン類を高収率にて製造することができる。特に、本発明に従って、前記酸アミド類及び/又は置換フェノール類の存在下に反応を行なうことによって、t−ブトキシスチレン類とアセトキシスチレン類の重合を有効に防止しつつ、反応を行なって、高収率で目的とするアセトキシスチレン類を製造することができる。更に、本発明の方法によれば、t−ブトキシスチレン類も無水酢酸も、工業的に製造されている化学品であるので、低廉に安定してアセトキシスチレン類を製造することができる。 一般式(I)で表わされるt−ブトキシスチレン類を有機スルホン酸触媒の存在下に無水酢酸と反応させることを特徴とする一般式(II)で表わされるアセトキシスチレン類の製造方法。 一般式(I)で表わされるt−ブトキシスチレン類を硫酸、有機スルホン酸触媒及びカチオン交換樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸触媒の存在下に無水酢酸と反応させて、反応混合物中に一般式(II)で表わされるアセトキシスチレン類を得ると共に、反応混合物中に酢酸が生成するアセトキシスチレン類の製造方法において、 (a) 一般式(III)(式中、R1 は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、R2 及びR3 はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示す。)で表わされる酸アミド類からなる重合防止剤の存在下にt−ブトキシスチレン類を反応させるアセトキシスチレン類の製造方法。 請求項2に記載の方法において、酸アミド類と、 (b) 一般式(IV)(式中、Xは水素原子、メチル基、エチル基又は水酸基を示し、Yはt−ブチル基、t−アミル基又はメトキシ基を示し、m及びnはそれぞれ1〜3の整数を示す。但し、2≦m+n≦5である。)で表される置換フェノール類とからなる重合防止剤の存在下にt−ブトキシスチレン類を反応させるアセトキシスチレン類の製造方法。