タイトル: | 特許公報(B2)_粗フェノール液の処理方法 |
出願番号: | 1998350318 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C07C 37/82,C07C 37/08,C07C 39/04 |
国分 嘉光 北戸 詳二 瀬崎 義弘 猪俣 将実 永松 茂樹 JP 3948845 特許公報(B2) 20070427 1998350318 19981209 粗フェノール液の処理方法 三井化学株式会社 000005887 国分 嘉光 北戸 詳二 瀬崎 義弘 猪俣 将実 永松 茂樹 20070725 C07C 37/82 20060101AFI20070705BHJP C07C 37/08 20060101ALI20070705BHJP C07C 39/04 20060101ALI20070705BHJP JPC07C37/82C07C37/08C07C39/04 C07C 37/82 C07C 37/08 C07C 39/04 特公昭42−026777(JP,B1) 特開平01−211544(JP,A) 特開平01−275641(JP,A) 特開平01−211543(JP,A) 1 2000169410 20000620 8 20030722 松本 直子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、合成樹脂、農薬、染料、医薬などの製造のための中間体として有用であるフェノールの製造方法に関する。さらに詳しくは、クメン法によるフェノールの製造において、クメンヒドロペルオキシドの酸接触分解によって得られる粗フェノール液を、中和処理する方法に関する。【0002】【従来の技術】従来、フェノールを合成する方法として、各種の方法が提案されている。これらの方法の中で、クメンを出発原料としてフェノールを合成する、いわゆるクメン法フェノール製造プロセスが一般的に実用化されている。このクメン法プロセスは、クメンを酸素又は空気により酸化してクメンヒドロペルオキシド(以下、「CHP」と略す)を生成し、次に得られたCHPを鉱酸触媒の存在下に分解反応させてフェノールとアセトンを得る方法である。【0003】近年、フェノールを製造するフェノールプラントにおいては、反応条件が温和で、かつ経済性にも優れる、このクメン法プロセスが世界のフェノール製造法の主流を占めている。クメン法によるフェノール製造プロセスは、大きく分けて酸化系、濃縮系、クリベージ系、中和系、精製系、リサイクル系から成り立っている。クメンを酸化して得られるクメンヒドロペルオキシドを酸により開裂(クリベージ)した後、中和工程において、触媒である鉱酸を中和する。この鉱酸は、通常、苛性ソーダや、精製系などの各工程でフェノールの回収のためにアルカリ水によって抽出され、リサイクルされたナトリウムフェノラート(以下、「フェネート」と略す)を含有するアルカリ水溶液などによって中和される場合と、アニオン交換樹脂などのイオン交換樹脂によって中和される場合に大別される。【0004】苛性ソーダなどのアルカリ水溶液による中和処理では、中和処理液は油・水分離された後、水層の一部は廃水として系外に取り出される。この際、中和廃水中に少量のフェノールが分配されるため、経済的にも環境問題の観点からも好ましくない。【0005】このような例には次のようなものが挙げられる。例えば、特開昭58‐126824では、無機酸触媒の存在下、加熱してCHPを開裂させることによって生成する粗反応生成物の中和において、その粗生成物に、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びバリウムなどの非水性金属水酸化物を添加することによって、無機酸を中和する方法が開示されている。【0006】さらに、このような中和工程に使用されるアルカリ塩は、中和工程の下流において種々のトラブルの原因となることが知られている。つまり、各中和工程の下流に設けられた濃縮塔や蒸留塔などにはリボイラーが備え付けられているが、このリボイラーでプロセスを流れる油液を加熱すると、中和に使用されたナトリウムなどがチューブ表面に析出し、リボイラーのファウリングを起こすという問題点があった。【0007】そこで、従来から各種の流体処理装置によりナトリウムなどのアルカリ塩をプロセスから除去することが行われてきた。そのような方法の一つに充填濾剤によるナトリウムなどのアルカリ除去があるが、この方法では使用する濾材が短期間しか性能を維持できないなどの問題点があった。【0008】また、例えば、特開平8‐259481では、中和段階中に開裂生成物のpHを約4.0〜4.9に調整することによって、硫酸を重硫酸塩に転換する硫酸除去方法が開示されている。しかし、本法でも酸性条件下ではα‐メチルスチレンのダイマーなどへの化学的損失が生じ、実際的には経済的に好ましくない。【0009】一方、イオン交換樹脂を用いた粗フェノール液の中和方法についても、従来から研究されており、種々の方法が提案されている。イオン交換樹脂を用いた粗フェノール液の中和方法は中和処理後の油層に含有されるナトリウム塩が激減するので、上述の蒸留系でのリボイラーのファウリング防止が図れる。また、蒸留系に持ち込まれる水分量が激減するので、大幅なスチーム原単位の改善が図れるなどのメリットを有する。この方法では、母液をガラス製カラムに充填したイオン交換樹脂に上向流あるいは下向流により通液するカラム式が多くの場合採用されている。しかし、この方法では、樹脂の架橋度が低いため、その樹脂と接触するフェノール中の含水率の変動などによって、樹脂の収縮や膨潤が生じ、これが原因となって、その樹脂の一部に破壊が生じたり、樹脂充填層が不均一化される。その結果、樹脂充填層の活性劣化が大きいという問題点があった。【0010】本発明者等は上記した従来の技術について検証したところ、従来のイオン交換樹脂による鉱酸の除去方法では、酸の除去能力が十分でない上に、イオン交換樹脂の破損などを生じるため、耐久性も十分ではなかった。【0011】【発明が解決しようとする課題】 本研究の目的は、クメンを酸化して得られるクメンヒドロペルオキシドを酸開裂させた後の粗フェノール液中に含有する硫酸を、できるだけ温和な条件で、硫酸の除去能力が高く、長期間、樹脂の破損による劣化や不均一化を生じないイオン交換樹脂による硫酸の除去方法を提供することにある。【0012】【課題を解決するための手段】 本発明者らは、前記課題を解決するため、鋭意研究を行った結果、クメンを酸化して得られるクメンヒドロペルオキシドを酸開裂させた後の、硫酸を含有する粗フェノール液を特定のイオン交換樹脂と接触させることによって、フェノールの収率悪化の原因となるp-クミルフェノールやα-メチルスチレンダイマーなどの高沸点不純物を生成することなく、また、長期間、イオン交換樹脂の劣化を生じることなく、硫酸を中和する方法を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、クメンヒドロペルオキシドの酸接触分解によって得られる、硫酸を濃度10〜1000ppmの範囲で含有する粗フェノール液を、平均粒径が0.15〜1.5mmの範囲であり、かつ粒径分布均一度が1.0〜1.4の範囲であり、架橋度が5〜10%の範囲であるマクロポーラス型弱塩基性アニオン交換樹脂と、粗フェノール液の空間速度SVが1〜30ml-粗フェノール液/ml-IER/hの範囲で接触させることを特徴とする硫酸を含有する粗フェノール液の処理方法である。【0013】【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。【0014】鉱酸を含有する粗フェノール液を中和するのに使用する、イオン交換樹脂(以下、「IER」と略す)としては、一般に、塩基性アニオン交換樹脂が使用できるが、本発明に用いられるイオン交換樹脂は、前記のイオン交換樹脂のうち、アクリル‐ジビニルベンゼン共重合体を基体としたものに1級アミン、2級アミン、3級アミンの、1種または2種以上を導入したものである。これらのイオン交換樹脂は更に、強塩基性官能基である4級アンモニウムが一部導入されていてもよい。また、塩基性アニオン交換樹脂の形状には、ゲル型あるいは、マイクロポーラス型のものがあるが、反応速度上、粒子の強度上もマクロポーラス型が好ましく、本発明ではマクロポーラス型のイオン交換樹脂が用いられる。このような塩基性アニオン交換樹脂には、レバチット(バイエル社製)、ダイヤイオン(三菱化学社製)、アンバーリスト(ロームアンドハース社製)など市販されている各種のものが挙げられる。【0015】樹脂の使用pHの範囲や温度については特に制限はなく、実用pH範囲、即ち、pH 0〜14の範囲、樹脂の最高温度以内、通常、80℃以内において使用可能である。実用使用するアニオン交換樹脂は、処理する鉱酸を含有する粗フェノール液に対して、交換容量が大きいこと、再生効率が高いこと、圧力損失が小さく、逆洗展開率が小さいこと、さらには機械的強度が大きく、浸透圧ショックにも強いことが好ましい。交換容量が大きいと使用する樹脂量が少なくなり、経済性が高くなる。また、圧力損失が小さいと樹脂層高を高くする、あるいは通液、通水速度を大きくすることが可能となる。さらに、逆洗展開率が低いことは、強い逆洗を可能とする。このような観点から、本発明において使用するイオン交換樹脂は、マクロポーラス型の弱塩基性アニオン交換樹脂である。マクロポーラス型の弱塩基性アニオン交換樹脂は使用中の体積変化が少なく、交換速度が速い。また、再生効率も良い。さらに、重炭酸イオンや塩化物濃度の影響も少なく、機械的強度、耐酸化性に優れ、交換容量が流速、温度にあまり影響されないため、比較的低温でも使用可能である。 本発明に用いるイオン交換樹脂の平均粒径及び粒径分布均一度は、水を吸収して湿潤した状態の樹脂に関して測定されたものである。樹脂の粒径分布均一度は以下の式により定義される。【0016】粒径分布均一度 = A/B A:ふるい残留体積40%の目開き(mm)B:ふるい残留体積90%の目開き(mm)使用するイオン交換樹脂の平均粒径は、0.15〜1.5mmの範囲のものである。1.5mmよりも大きい平均粒径では、反応物質の樹脂粒子内の拡散速度が小さくなり、交換速度が小さくなるだけでなく、樹脂単位重量当たりの接触面積(比表面積)が小さくなり、除去効率が低下する。一方、平均粒径が0.15mmよりも小さい場合では粗フェノール液を流通させる際の樹脂充填層の接触抵抗が大きくなる。従って、平均粒径は0.15〜1.5mmの範囲、好ましくは0.2〜1.2mmの範囲、更に好ましくは0.3〜1.0mmの範囲である。また、樹脂の粒径分布均一度については、その値が小さい場合は、粗フェノール液を流通させる際の接触抵抗が大きくなり、反対に、その値が大きい場合は、除去効率が低下するので、本発明における粒径分布均一度は1.0〜1.4の範囲である。【0017】イオン交換樹脂の架橋度は、イオン交換樹脂に含まれている架橋剤の含有量(重量%)で表される。架橋度が5%より小さければ、細孔の網目(ミクロポアの孔径)が増大し、イオン交換速度は増加するが、単位体積当たりのイオン交換容量が低下する。一方、架橋度が10%よりも大きければ、機械的強度は増加するが、細孔の網目が小さくなり、イオン交換反応が遅くなる。従って、イオン交換樹脂の架橋度は、5〜10%の範囲のものが好ましい。【0018】さらに、イオン交換樹脂のコンディショニングについては、乾燥していても湿潤のままでも使用できるが、湿潤の場合は、鉱酸を含有する粗フェノール液を通液する前に予め、被処理液であるフェノールを含有する非水溶媒と相溶性のある溶媒に置換しておくことが好ましい。その場合、アセトンが好適である。また、使用するアニオン交換樹脂はOH型の場合、再生処理などで抜液する際などは、窒素雰囲気下、あるいは減圧下で行うことが好ましい。イオン交換樹脂の大気との接触は、空気中の二酸化炭素を吸収して、一部、炭酸水素イオン型となり、交換容量の低下を招く。従って、接触する二酸化炭素量は痕跡量まで低減させておくことが好ましい。【0019】 本発明において、処理する粗フェノール液中の鉱酸は、硫酸が用いられる。また、粗フェノール液中の硫酸濃度は、10〜1000ppmの範囲のものが用いられる。硫酸含有濃度が10ppmより低濃度では、CHPを開裂してフェノールとアセトンを得る工程において、反応が不十分となり、残存CHPが増加し、条件によっては再び急激に反応を開始する可能性があるため、通常はこの濃度よりも高い濃度で行われる。一方、硫酸濃度が1000ppmより高濃度では、イオン交換樹脂の負荷量が増大するだけでなく、酸開裂反応の際に生成する高沸点不純物が増加してフェノールの収率が低下することがわかっている。従って、粗フェノール液中の硫酸濃度は、10〜1000ppmの範囲、好ましくは50〜800ppmの範囲、さらに好ましくは100〜600ppmの範囲である。【0020】本発明における中和工程の一例としては、マクロポーラス型弱塩基性アニオン交換樹脂をカラムに充填し、被処理液を上向流あるいは、下向流により通液するカラム式が挙げられるほか、バッチ式にしても差し支えない。カラム操作時の流体の空間速度SVは、 1〜30ml‐粗フェノール液/ml‐IER/hの範囲である。SVが1ml‐粗フェノール液/ml‐IER/hより低い場合は、装置が大型化する。一方、SVが30ml‐粗フェノール液/ml‐IER/hより大きい場合は、イオン交換樹脂の利用効率が低下する。従って、SVは 1〜30ml‐粗フェノール液/ml‐IER/hの範囲であり、好ましくは2〜20ml‐粗フェノール液/ml‐IER/hの範囲、さらに好ましくは3〜15ml‐粗フェノール液/ml‐IER/hの範囲である。【0021】本発明で使用するイオン交換樹脂の再生に利用するアルカリ水溶液は、通常、苛性ソーダ水溶液が使用できる。また、該アルカリ濃度は特に制限はないが、通常、2〜20重量%の範囲ものを使用するのが好ましい。また、その使用量は、再生する樹脂中の交換容量に応じて、適宜決定されるが、最低交換容量の当量分以上存在すればよく、好ましくは1.1〜1.5倍当量使用する。また、再生温度に特に制限はないが、通常、常温付近で行われる。【0022】【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。【0023】実施例1市販の弱塩基性アニオン交換樹脂レバチットMP64(マクロポーラス型、架橋度 6%、総交換容量 1.5meq/ml、バイエル製)をふるい分け、平均粒径 0.54mm、粒径分布均一度 1.2のイオン交換樹脂を得た。このイオン交換樹脂を水浸漬状態で13mlを、ガラス製カラム(内径D 1.5cm、高さL 7.5cm:L/D=5)に常温で充填した。次に、アセトンを、ポンプによって空間速度 SV 5ml‐Acetone/ml‐IER/hでカラム上部から1時間通液し、イオン交換樹脂を非水系溶媒(アセトン)に置換した。次いで、クメン法製造プロセスから得られた鉱酸を含有する粗フェノール液(組成:硫酸 490ppm、フェノール 37.6%、アセトン 49.4%、クメン 8.4%、α‐メチルスチレン 3.7%、その他にアセトフェノン、ジメチルフェニルカルビノール、p‐クミルフェノール、メシチルオキシド、メチルスチレンダイマー、ヒドロキシアセトンなどが検出された。)を空時速度SV 10ml‐粗フェノール液/ml‐IER/hでカラム上部から通液した。処理液中のギ酸、酢酸及び硫酸のリーク量はShim‐pack IC‐A3カラムを装着したイオンクロマトグラフで測定した。通液は処理液中の硫酸濃度が2ppm以上になったところで通液を停止した。【0024】次に、4重量% 水酸化ナトリウム水溶液を空時速度 SV 5ml‐NaOH/ml‐IER/hでカラム上部から1時間通液し、樹脂の再生を行った。さらに、空時速度 SV 5ml‐H2O/ml‐IER/hでカラム上部から蒸留水を用いて通液・洗浄した。水洗浄は最終洗浄水のpHが9となった時点で終了した。【0025】通液実験の結果、イオン交換樹脂の90倍量の通液まで硫酸リーク量 0.5ppm以下を維持した。【0026】また、処理液を通液した後の樹脂の外観は若干の着色(薄茶色→褐色)は見られるものの、充填層における膨潤・収縮による樹脂の破砕や不均一化は観察されなかった。【0027】実施例2 弱塩基性アニオン交換樹脂レバチットMP64の平均粒径が0.15mm、粒径分布均一度 1.1のものを使用した以外は実施例1と同様の方法で実施した。【0028】通液実験の結果、イオン交換樹脂の102倍量の通液まで硫酸リーク量 0.5ppm以下を維持した。また、処理液を通液した後の樹脂の外観は若干の着色(薄茶色→褐色)は見られるものの、充填層における膨潤・収縮による樹脂の破砕や不均一化は観察されなかった。【0029】実施例3 弱塩基性アニオン交換樹脂レバチットMP64に代えて、架橋度8%の弱イオン交換樹脂レバチットMP62(マクロポーラス型、平均粒径 0.65mm、粒径分布均一度 1.3、総交換容量 1.7meq/ml、バイエル製)にした以外は実施例1と同様の方法で実施した。【0030】通液実験の結果、イオン交換樹脂の95倍量の通液まで硫酸リーク量 0.5ppm以下を維持した。また、処理液を通液した後の樹脂の外観は若干の着色(薄茶色→褐色)は見られるものの、樹脂層における膨潤・収縮による樹脂の破砕や不均一化は観察されなかった。【0031】実施例4 被処理液の空間速度 SVを、4.5ml‐粗フェノール液/ml‐IER/hにした以外は実施例1と同様の方法で実施した。【0032】通液実験の結果、イオン交換樹脂の93倍量の通液まで硫酸リーク量 0.5ppm以下を維持した。また、処理液を通液した後の樹脂の外観は若干の着色(薄茶色→褐色)は見られるものの、樹脂層における膨潤・収縮による樹脂の破砕や不均一化は観察されなかった。【0033】実施例5 市販の弱塩基性アニオン交換樹脂レバチットMP64(バイエル製)を、水浸漬状態で13mlをガラス製カラム(内径D 1.5cm、高さL 7.5cm:L/D=5)に常温で充填した。次に、アセトンをポンプによって空間速度 SV 5ml‐Acetone/ml‐IER/hでカラム上部から1時間通液し、イオン交換樹脂を非水系溶媒(アセトン)に置換した。次いで、鉱酸を含有する粗フェノール液(硫酸濃度490ppm)を空時速度SV 4.5ml‐粗フェノール液/ml‐IER/hでカラム上部からイオン交換樹脂の80倍量通液した。80倍量通液時の硫酸のリーク量はShim‐pack IC‐A3カラムを装着したイオンクロマトグラフで測定した。【0034】次に、4重量% 水酸化ナトリウム水溶液を空時速度 SV 5ml‐NaOH/ml‐IER/hでカラム上部から1時間通液し、樹脂の再生を行った。さらに、空時速度 SV 5ml‐H2O/ml‐IER/hでカラム上部から蒸留水を用いて通液・洗浄した。水洗浄は最終洗浄水のpHが9となった時点で終了した。【0035】上記の操作を繰り返し、80倍量通液時の硫酸リーク量が2ppm以上となった時点でイオン交換樹脂が破過したものとして通液を停止した。【0036】繰り返し通液・再生試験の結果、160サイクルまで硫酸リ−ク量 0.5ppm以下を維持した。使用後のイオン交換樹脂の総交換容量は1.48meq/mlであり、ほとんど劣化傾向は観察されなかった。また、使用後の樹脂の外観は若干の着色(薄茶色→褐色)は見られるものの、樹脂層における膨潤・収縮による樹脂の破砕や不均一化は観察されなかった。【0037】比較例1 弱塩基性アニオン交換樹脂レバチットMP64に代えて、市販の強塩基性アニオン交換樹脂レバチットMP500(マクロポーラス型、平均粒径 0.84mm、粒径分布均一度 1.2、総交換容量 1.2meq/ml、バイエル製)を使用した以外は実施例1と同様の方法で実施した。【0038】通液実験の結果、イオン交換樹脂の72倍量の通液で硫酸リーク量 2.5ppmに達したので、通液を中止した。また、使用後の樹脂の一部が破損していた。【0039】比較例2 弱塩基性アニオン交換樹脂レバチットMP64に代えて、平均粒径が5.12mm、粒径分布均一度 1.2の弱塩基性アニオン交換樹脂を使用した以外は実施例1と同様の方法で実施した。【0040】通液実験の結果、イオン交換樹脂の59倍量の通液で硫酸リーク量 2.8ppmに達したので、通液を中止した。また、使用後の樹脂の外観において若干の着色(薄茶色→褐色)が見られた。しかしながら、樹脂層における膨潤・収縮による樹脂の破砕や不均一化は観察されなかった。【0041】比較例3弱塩基性アニオン交換樹脂レバチットMP64に代えて、平均粒径が0.58mm、粒径分布均一度 1.6の弱塩基性アニオン交換樹脂を使用した以外は実施例1と同様の方法で実施した。 通液実験の結果、イオン交換樹脂の57倍量の通液で硫酸リーク量2.3ppmに達したので、通液を中止した。また、使用後の樹脂の外観は若干の着色(薄茶色→褐色)が見られた。しかしながら、樹脂層における膨潤・収縮による樹脂の破砕や不均一化は観察されなかった。【0042】実施例6弱塩基性アニオン交換樹脂レバチットMP64に代えて、架橋度4%の弱塩基性アニオン交換樹脂にした以外は実施例1と同様の方法で実施した。通液実験の結果、イオン交換樹脂の67倍量の通液まで硫酸リーク量 0.5ppm以下を維持していたが、極僅かに使用後の樹脂の破損が確認され、樹脂は、若干柔らかくなっていた。【0043】実施例7粗フェノール液中に含まれる硫酸濃度を490ppmから硫酸添加により1520ppmにした以外は実施例1と同様の方法で実施した。【0044】通液実験の結果、イオン交換樹脂の66倍量の通液で硫酸リーク量 2.2ppmに達したので、通液を中止した。また、使用後の樹脂の外観は若干の着色(薄茶色→褐色)は見られるものの、樹脂層における膨潤・収縮による樹脂の破砕や不均一化は観察されなかった。【0045】実施例8被処理液の空間速度 SV 45ml‐粗フェノール液/ml‐IER/hにした以外は実施例1と同様の方法で実施した。通液実験の結果、イオン交換樹脂の68倍量の通液で硫酸リーク量 2.4ppmに達したので、通液を中止した。また、使用後の樹脂の外観は若干の着色(薄茶色→褐色)は見られるものの、樹脂層における膨潤・収縮による樹脂の破砕や不均一化は観察されなかった。【0046】比較例4弱塩基性アニオン交換樹脂レバチットMP64に代えて、市販の強塩基性アニオン交換樹脂レバチットMP500(バイエル製)を使用し、鉱酸を含有する粗フェノール液(硫酸濃度490ppm)を空時速度SV 4.5ml‐粗フェノール液/ml‐IER/hでイオン交換樹脂の60倍量通液した以外は実施例5と同様の方法で実施した。【0047】繰り返し通液・再生試験の結果、55サイクルで硫酸リ−ク量が3.1ppmに達したため、繰り返し通液を中止した。使用後のイオン交換樹脂の総交換容量は1.2meq/mlから0.75meq/mlに低下していた。また、使用後の樹脂の一部が破損していた。【0048】【発明の効果】 本発明によれば、クメンヒドロペルオキシドの酸接触分解によって得られる粗フェノール液中に含有する硫酸を、マクロポーラス型低塩基性アニオン交換樹脂に接触させることによって、フェノールの収率悪化の原因となるp-クミルフェノールやメチルスチレンダイマーなどの高沸点不純物を生成することなく、また、長期間、イオン交換樹脂が劣化することなく中和することが可能となる。 クメンヒドロペルオキシドの酸接触分解によって得られる、硫酸を濃度10〜1000ppmの範囲で含有する粗フェノール液を、平均粒径が0.15〜1.5mmの範囲であり、かつ粒径分布均一度が1.0〜1.4の範囲であり、架橋度が5〜10%の範囲であるマクロポーラス型弱塩基性アニオン交換樹脂と、粗フェノール液の空間速度SVが1〜30ml-粗フェノール液/ml-IER/hの範囲で接触させることを特徴とする硫酸を含有する粗フェノール液の処理方法。