タイトル: | 特許公報(B2)_α,β−不飽和ケトン化合物の製造方法 |
出願番号: | 1998325422 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07D 309/06,C07D 335/02 |
金子 彰 瀬下 敦寛 山崎 悟 西脇 剛 JP 4294130 特許公報(B2) 20090417 1998325422 19981116 α,β−不飽和ケトン化合物の製造方法 日本曹達株式会社 000004307 廣田 雅紀 100107984 松橋 泰典 100113860 金子 彰 瀬下 敦寛 山崎 悟 西脇 剛 20090708 C07D 309/06 20060101AFI20090618BHJP C07D 335/02 20060101ALN20090618BHJP JPC07D309/06C07D335/02 C07D 309/06 C07D 335/02 CAplus(STN) REGISTRY(STN) 特開平03−161456(JP,A) 特開平03−161457(JP,A) 特開平03−161454(JP,A) 1 2000143655 20000526 8 20050802 井上 明子 【0001】【産業上の利用分野】本発明は農医薬、特に除草剤の中間体として有用な一般式〔I〕【化2】(式中R1は1位に側鎖を持つ脂肪族基、脂環基、置換された脂環基、複素環基、置換された複素環基、フェニル基または置換されたフェニル基を示す) で表されるα,β−不飽和ケトン類(以下化合物〔I〕という)の製造方法に関するものである。【0002】【従来の技術】従来、α,β−不飽和ケトンの合成法において、アルデヒドを出発原料とする種々の合成法が知られているが、それらの合成法を工業的に採用するには種々の問題がある。例えば、アルデヒドとアセトンのアルドール縮合があるが、一般に副生物が多く、目的物の単離が困難で収率が低く、また大過剰のアセトンを必要とする。また、アルデヒドとアセトンとを、ピペリジン−酢酸を触媒として縮合せしめる合成法〔INDIAN J.Chem.Vol.16B 970〜972(1978)等に記載〕においては、高価な触媒を大量に必要とし、また大過剰のアセトンを必要とする。特開平3−161456号ではアセト酢酸のアルカリ金属塩とアルデヒドとを3,5−ジメチルピペリジン等の触媒下反応させ、γ位に水素原子を0ないし1個もつα,β−不飽和ケトンを収率良く合成する方法が記載されており、その中で、反応溶媒としてトルエンあるいはクロロホルムが用いられている。しかしクロロホルムは近年、公害問題・毒性等の点から鎖状塩素系炭化水素溶媒であるジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等は排水規制が敷かれ、これらを工業的に用いる場合には特別な回収設備が必要となってきた。一方トルエン溶媒を用い、水溶性の高いR1 が4−テトラヒドロピラニル基、あるいは3−テトラヒドロチオピラニル基等の酸素原子または硫黄原子を有する複素環基の場合、一般式〔III 〕R1 ・CH(OH)CH2 C(=O)CH3 で表わされるβ−ヒドロキシケトン体が多く副生するため、脱水反応を行って目的物を得る必要があった。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明は前記のような水溶性の高い化合物の場合でも、脱水工程を設けずに目的物が好収率で得られ、しかも、工業的問題のない製造方法を提供するものである。【0004】【課題を解決するための手段】本発明はアセト酢酸のアルカリ金属塩と一般式〔I〕R1 CHO(式中、R1は1位に側鎖を持つ脂肪族基、脂環基、置換された脂環基、複素環基、置換された複素環基、フェニル基または置換されたフェニル基を示す)で表わされるアルデヒドとをデカヒドロイソキノリン存在下、水と水難溶性有機溶媒との混合溶媒中で反応させることを特徴とする一般式〔II〕【化3】(ここにR1は前記と同じ意味を表す)で表されるα,β−不飽和ケトン類の製造方法である。【0005】本発明において原料のアセト酢酸アルカリ金属塩は、アセト酢酸ナトリウム、アセト酢酸カリウム、アセト酢酸リチウム等であり、ジケテンまたはアセト酢酸エステル類を苛性ソーダ、苛性カリ等の苛性アルカリ水溶液で加水分解した後、副生するアルコールを減圧濃縮により除去することで水溶液として容易に得られる。こうして得られる水溶液の濃度は、次の反応において、水が多量に存在すると収率が低下することから通常、40〜50%の濃度に調整して用いる。【0006】反応中のpHとしては6〜8、特に好ましくは7.1〜7.5である。pH6以下では反応が遅く収率も低下する。またpH8以上では一般式〔III〕R1CH(OH)CH2C(=O)CH3で表されるβ−ヒドロキシケトン体の副生量が増加する。従って、反応中、鉱酸を用いて上記pHに調整する。pH保持に使用する鉱酸としては系内の水量を少なくするため濃硫酸、85%リン酸等の水の含量の少ない酸、あるいは塩化水素ガス等の酸性ガスあるいは無水硫酸、五酸化リン等の酸無水物を使用することが望ましい。また水の含量の多い濃塩酸でも、原料のアセト酢酸アルカリ金属塩の水溶液を高濃度化して用いることで反応は円滑に進行する。【0007】本発明に使用する水難溶性有機溶媒としてはジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等の塩素化炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、ヘキサン等の炭化水素系溶媒が使用できる。特に本発明では溶媒の極性のいかんによらず高収率で目的物を得ることができるので、水難溶性有機溶媒としては汎用性が高く安価なトルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、ヘキサン等の炭化水素系溶媒が使用できる。【0008】一般式〔I〕で表わされるアルデヒドとしてはα位に水素原子を0ないし1個持つアルデヒドであり、たとえばイソブチルアルデヒド、2−メチルブタナール、2−メチルペンタナール、2,3−ジメチルブタナール、2−メチルヘキサナール、2−エチルヘキサナール、2−エチルペンタナール、2−メチルヘプタナール、2−メチルノナール等のアルデヒドのα位で分岐している脂肪族アルデヒド、シクロヘキサンカルバルデヒド、2−メチルシクロヘキサンカルバルデヒド、3−メチルシクロヘキサンカルバルデヒド、4−メチルシクロヘキサンカルバルデヒド等の脂環基を持つアルデヒド、4−テトラヒドロピランカルバルデヒド、2−テトラヒドロフランカルバルデヒド、3−テトラヒドロピランカルバルデヒド、3−テトラヒドロチオピランカルバルデヒド等の複素環アルデヒド、ベンズアルデヒド、o−メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、p−メチルチオベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド等の芳香族アルデヒドである。本発明は特に4−テトラヒドロピランカルバルデヒド、3−テトラヒドロチオピランカルバルデヒド等の水溶性の高い酸素原子または硫黄原子を有する6員の複素環基を有する化合物に適している。【0009】本発明において反応温度としては10〜60℃であるが、反応温度が高いほど一般式〔III〕R1CH(OH)CH2C(=O)CH3で表されるβ−ヒドロキシケトン体の副生量が増加するため収率が低下する。従って特に好ましい反応温度としては10〜40℃である。【0010】本発明を実施するには一般式〔I〕で表わされるアルデヒド1モルに対し、1〜3モルのアセト酢酸のアルカリ金属塩の水溶液に、アルデヒド1モルに対して10〜1000ml、好しくは100〜800mlの水難溶性有機溶媒を加えた後、アルデヒド1モルに対して0.01モル以上、好しくは0.05〜0.20モルのデカヒドロイソキノリンを加える。さらに鉱酸を加えpHを6.0〜8.0に調製する。ついで10〜60℃で鉱酸によりpH6.0〜8.0に維持しながらアルデヒド1モル相当を加え1〜10時間攪拌せしめて反応を行う。反応終了後水を加えて鉱酸でpH2以下とし、有機層を水層から分離する。さらに有機層をアルカリで中和後水洗して有機層を水層から分離し、有機層を減圧濃縮することにより目的とするα,β−不飽和ケトン化合物を得る。また有機層より分離した水層を苛性ソーダ等の苛性アルカリでpHを13以上とし、水難溶性有機溶媒で抽出することにより触媒として使用したデカヒドロイソキノリンは90%以上回収され再使用が可能である。【0011】【実施例】以下に本発明の実施態様を実施例をもって説明する。ただし本発明はこの実施例に限定されるものではない。【0012】実施例1内容積1000mlの反応器を用いてこれにアセト酢酸メチルエステル371.6g(3.2モル)および水134.4gを仕込み、水冷攪拌下に内温を35〜40℃に保ちながら25%NaOH水溶液537.6g(3.36モル)を4時間で滴下し、その後35〜40℃で1時間攪拌を続けた後、水およびメタノールを40℃で減圧留去した。フラスコ内容物を一部取り出し1規定の塩酸標準水溶液によりpH滴定を実施した結果、得られたアセト酢酸ナトリウム水溶液の濃度は50%であった。このアセト酢酸ナトリウム水溶液から169.2g(0.68モル)を量り取り内容積1000mlの反応器に入れ、ついでトルエン150ml、デカヒドロイソキノリン6.96g(0.05モル)を加え、濃硫酸でpHを7.4とした。この中に4−テトラヒドロピランカルバルデヒド57.1g(0.5モル)を20分かけて滴下した後3時間攪拌を続けた。反応中温度を20±2℃に保ち濃硫酸を滴下することによりpHを7.4±0.1に維持した。反応終了後水72.6gを加え、濃硫酸にてpHを1.5として60℃まで昇温した後有機層を水層から分離した。有機層に25%NaOH水溶液を5g加えて中和した後有機層を水層から分離した。さらに有機層に水10gを加えて攪拌・水洗し有機層を水層から分離した後無水硫酸マグネシウムにより乾燥した。硫酸マグネシウムを濾別後溶媒を減圧留去し、残った油状物をさらに減圧蒸留することにより沸点91〜95℃(0.1mmHg)の無色の油状物69.0gを得た。(粗収率89.5%)ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、目的物4−(4−テトラヒドロピラニル)−3−ブテン−2−オンの純度は96.5%であった。(収率86.4%)なお副生物である4−ヒドロキシ−4−(4−テトラヒドロピラニル)−ブタン−2オンが3.5%含まれていた。【0013】実施例2、3実施例1において反応温度を30±2℃または40±2℃に変え、実施例1と同様な方法により反応を行った。結果を表1に示す。【0014】実施例4実施例1と同様の条件で合成した50%アセト酢酸ナトリウム水溶液169.2g(0.68モル)を内容積1000mlの反応器に入れ、ついでトルエン150ml、デカヒドロイソキノリン6.96g(0.05モル)を加え、35%塩酸でpHを7.3とした。この中に4−テトラヒドロピランカルバルデヒド57.1g(0.5モル)を20分かけて滴下した後2時間攪拌を続けた。反応中温度を35〜40℃に保ち35%塩酸を滴下することによりpHを7.3±0.2に維持した。反応終了後35%塩酸にてpHを1.5として60℃まで昇温した後有機層を水層から分離した。有機層に無水硫酸マグネシウムを添加して乾燥し、硫酸マグネシウムを濾別後240.0gの有機層を得た。有機層の一部をサンプリングし、高速液体クロマトグラフィーにより純度99.9%の標準品を用いた内部標準法で分析したところ、目的物4−(4−テトラヒドロピラニル)−3−ブテン−2−オンの濃度は27.0%であった。(収率84.0%)副生物である4−ヒドロキシ−4−(4−テトラヒドロピラニル)−ブタン−2オンの濃度は2.4%であり、4−テトラヒドロピランカルバルデヒドに対する収率は6.6%であった。【0015】実施例5実施例1と同様の条件で合成した48%アセト酢酸ナトリウム水溶液536.9g(2.08モル)を内容積1000mlの反応器に入れ、ついでトルエン150ml、デカヒドロイソキノリン20.9g(0.15モル)を加え、濃硫酸でpHを7.2とした。この中に3−テトラヒドロチオピランカルバルデヒド195.7g(1.5モル)を40分かけて滴下した後2時間攪拌を続けた。反応中温度を22〜24℃に保ち濃硫酸を滴下することによりpHを7.4±0.1に維持した。反応終了後濃硫酸にてpHを1.5とした後60℃まで昇温し、水120gを添加した。60℃で30分攪拌した後、有機層を水層から分離した。有機層に25%NaOH水溶液6gを加えて中和した後、有機層を水層から分離した。さらに有機層に水30gを加えて攪拌・水洗し有機層を水層から分離した後溶媒を減圧留去した。残った油状物をさらに減圧蒸留することにより沸点107〜108℃(0.1mmHg)の無色の油状物232.7gを得た。(粗収率91.1%)ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、目的物4−(3−テトラヒドロチオピラニル)−3−ブテン−2−オンの純度は98.0%であった。(収率89.3%)【0016】比較例1実施例1と同様の条件で合成した50%アセト酢酸ナトリウム水溶液357.9g(1.36モル)を内容積1000mlの反応器に入れ、ついでトルエン300ml、3,5−ジメチルピペリジン11.3g(0.1モル)を加え、濃硫酸でpHを7.5とした。この中に4−テトラヒドロピランカルバルデヒド114.2g(1.0モル)を1時間かけて滴下した後3時間攪拌を続けた。反応中温度を35〜40℃に保ち濃硫酸を滴下することによりpHを7.3±0.2に維持した。反応終了後水125.7gを加え、濃硫酸にてpHを1.5として60℃まで昇温した後有機層を水層から分離した。有機層に25%NaOH水溶液を9g加えて中和した後有機層を水層から分離した。さらに有機層に水20gを加えて攪拌・水洗し、有機層を水層から分離した後トルエンの一部を減圧留去し、318.7gの有機層を得た。有機層の一部をサンプリングし、高速液体クロマトグラフィーにより純度99.9%の標準品を用いた内部標準法で分析したところ、目的物4−(4−テトラヒドロピラニル)−3−ブテン−2オンの濃度は38.0%であった。(収率78.5%)なお副生物である4−ヒドロキシ−4−(4−テトラヒドロピラニル)−ブタン−2−オンの濃度は7.3%であり、4−テトラヒドロピラニルカルバルデヒドに対する収率は13.5%であった。【表1】【0017】【発明の効果】本発明の製造方法は4−テトラヒドロピラニル基等の水溶性の高い置換基を有する化合物でも好収率で目的のα,β−不飽和ケトン化合物が得られ、しかも毒性等の問題もなく工業的に優れた製造方法である。 アセト酢酸のアルカリ金属塩と4−テトラヒドロピランカルバルデヒドとをデカヒドロイソキノリン存在下、水とトルエンとの混合溶媒中で反応することを特徴とする4−(4−テトラヒドロピラニル)−3−ブテン−2−オンの製造方法。