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タイトル:特許公報(B2)_散乱吸収体の内部情報の計測方法及び装置
出願番号:1998314613
年次:2007
IPC分類:G01N 21/17,A61B 5/1455


特許情報キャッシュ

土屋 裕 JP 3950243 特許公報(B2) 20070427 1998314613 19981105 散乱吸収体の内部情報の計測方法及び装置 浜松ホトニクス株式会社 000236436 長谷川 芳樹 100088155 塩田 辰也 100089978 寺崎 史朗 100092657 土屋 裕 20070725 G01N 21/17 20060101AFI20070705BHJP A61B 5/1455 20060101ALI20070705BHJP JPG01N21/17 625A61B5/14 320 G01N 21/00-21/01 G01N 21/17-21/61 A61B 5/145,10/00 JSTPlus(JDream2) 特開平10−111238(JP,A) 特開平10−073481(JP,A) 特開平07−163571(JP,A) JAPANESE JOURNAL OF APPLIED PHYSICS Part1,1998年 5月15日,Vol.37/No.5A,Page.2724-2727 22 2000146828 20000526 32 20050707 横井 亜矢子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、吸収係数や吸収成分の濃度といった、散乱吸収体の内部情報を計測するための方法及び装置に関するものである。【0002】【従来の技術】マイクロ・ベア・ランバート則(Microscopic Beer-Lambert Law、以下「MBL則」という)に基づいて、測定対象の媒体である散乱吸収体の吸収係数あるいは吸収成分の濃度等を測定する方法としては、例えば本発明者らによって特開平8−94517号公報、特開平10−73481号公報、特開平10−111238号公報に開示された方法がある。このようなMBL則に基づく方法は、原理的に、▲1▼媒体形状、▲2▼境界条件、及び▲3▼散乱、等の影響を受けないという大きな特長があり、散乱吸収体への光の再入射がない限り、任意の媒体形状、任意の境界条件、及び種々の散乱特性を有する媒体に対して同一の解析式を適用することができる。【0003】MBL則に基づく計測方法は、現在のところ4種類に大別することができる。すなわち、(1)検出光の時間分解波形を利用する時間分解計測法(Time Resolved Spectroscopy、以下「TRS法」という)、(2)時間分解波形の時間積分値と光路長平均を利用する時間分解積分計測法(Time Integrated Spectroscopy、以下「TIS法」という)、(3)時間分解波形の一部分をゲートで切り出して利用する時間分解ゲート計測法(Time Gating Spectroscopy、以下「TGS法」という)、及び(4)変調光を利用する位相変調計測法(Phase Modulation Spectroscopy、以下「PMS法」という)である。この中でも、生体においては散乱による光減衰が大きく、実用上はできるだけ多くの光を利用することが重要になるという観点からいえば、全ての出力光を利用する(2)のTIS法及び(4)のPMS法が有利である。これら2つの計測方法は、互いにフーリエ変換の関係にある。【0004】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、MBL則に基づく計測方法は上述したように多くの利点を有しているが、その計測精度は、広い範囲への利用・応用に対して充分なものではない。例えば、生体を測定対象とした場合に、皮膚の色や、毛髪の有無等による種々の個体差によって光強度の絶対値等が影響されて、計測精度の低下の原因となる、という問題があった。さらに、散乱係数の波長依存性が計測精度を低下させる。【0005】また、測定時における解析の演算時間が充分には短縮されていないという問題があり、そのため、リアルタイム計測が困難であった。【0006】本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、従来のMBL則に基づく計測方法に対して、さらに高精度かつ高速での計測が可能な散乱吸収体の内部情報の計測方法及び装置を提供することを目的とする。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、光強度の絶対値またはその比などの情報を用いることなく、光路長平均と分散、あるいはそれらに相当する物理量を利用する分光計測方法(The Mean and Variance based Spectroscopy、以下「MVS法」という)を用い、特に複数の異なる波長成分のパルス光に対する光路長平均及び分散を測定することによって高精度な計測が可能となること、及び散乱係数の波長依存性を解析式に簡単に繰り込むことができることを見出し、本発明に到達した。また同様に、複数の異なる波長成分の変調光に対する群遅延及び振幅の対数の変調周波数に対する2階偏微分値を測定することによっても高精度な計測が可能となることを見出し、本発明に到達した。【0008】 すなわち、本発明による第1の散乱吸収体の内部情報の計測方法は、 2種類以上の所定波長のパルス光を、ヒトを除く散乱吸収体中に光入射位置から入射する光入射ステップと、 前記散乱吸収体内部を伝播した前記2種類以上の所定波長の光を光検出位置で検出して光検出信号を取得する光検出ステップと、 前記光検出信号に基づいて、検出光の強度の時間変化を示す波形データを取得する信号処理ステップと、 前記波形データに基づいて、前記検出光を構成する複数光子の光路長平均と、分散とを演算する光路長平均及び分散演算ステップと、 前記光路長平均、前記分散、及び前記2種類以上の所定波長における吸収係数差の間に成立する所定の関係に基づいて、前記所定波長における前記吸収係数差を算出する吸収係数差算出ステップと、を含むことを特徴とする方法である。【0009】また、本発明による第1の散乱吸収体の内部情報の計測装置は、2種類以上の所定波長のパルス光を散乱吸収体中に光入射位置から入射する光入射手段と、前記散乱吸収体内部を伝播した前記2種類以上の所定波長の光を光検出位置で検出して光検出信号を取得する光検出手段と、前記光検出信号に基づいて、検出光の強度の時間変化を示す波形データを取得する信号処理手段と、前記波形データに基づいて、前記検出光を構成する複数光子の光路長平均と、分散とを演算する光路長平均及び分散演算手段と、前記光路長平均、前記分散、及び前記2種類以上の所定波長における吸収係数差の間に成立する所定の関係に基づいて、前記所定波長における前記吸収係数差を算出する吸収係数差算出手段と、を備えることを特徴とする装置である。【0010】上記した本発明による第1の方法及び装置は、時間分解積分計測法(TIS法)によって時間領域で解析を行うMVS法であるTIMVS法によるものである。このように、複数の波長成分の光に対する光路長平均及び分散を用いるTIMVS法とすることによって、従来のMBL則に基づく計測方法の有していた利点に加えて、さらに、▲1▼波長や位置に依存する入射光強度の絶対値や個体差が問題にならない、▲2▼散乱係数の波長依存性を繰り込んだ定量式が極めて簡単になる、▲3▼時間分解計測において時間軸のゼロ点(t=0)を同定するときの誤差が低減される、などの実用上非常に重要な利点を生じる。【0011】また、本方法及び装置において、時間分解波形のモーメントをコンピュータで計算することによって、検出光子の光路長平均(時間分解波形の重心)や分散を高速に計算することができる、発明者らによって開発された差演算法(Simple Subtraction Method、SSM)を適用することによって、計測・解析時間が大幅に短縮され、リアルタイム計測が可能になる。なお、この差演算法に関しては、例えば特開平9−61343号に記載されている。【0012】なお、前記吸収係数差算出ステップ(吸収係数差算出手段)は、前記2種類以上の所定波長における前記吸収係数差及び吸収成分の吸光係数差に基づいて、前記吸収成分の濃度をさらに算出することが好ましい。【0013】また、前記光路長平均及び分散演算ステップ(光路長平均及び分散演算手段)において行われる前記演算は、前記光検出信号の光路長平均と分散、及び装置関数の光路長平均と分散、とを用いる演算であることが好ましい。【0014】また、前記吸収係数差算出ステップ(吸収係数差算出手段)において用いられる前記所定の関係は、マイクロ・ベア・ランバート則から導出される前記光路長平均、前記分散、及び前記2種類以上の所定波長における前記吸収係数差の関係であることが特に好ましい。【0015】またさらに、2種類以上の所定波長ということに関しては、より具体的には、前記光入射ステップ(光入射手段)において用いられる前記パルス光は、n+1種類(ただし、nは1以上の整数)の前記所定波長の前記パルス光であり、前記光検出ステップ(光検出手段)において検出される前記光検出信号は、n+1種類の前記光検出信号であり、前記信号処理ステップ(信号処理手段)において取得される前記波形データは、n+1種類の前記波形データであり、前記光路長平均及び分散演算ステップ(光路長平均及び分散演算手段)において演算される前記光路長平均及び前記分散は、n+1種類の前記光路長平均及び前記分散であり、前記吸収係数差算出ステップ(吸収係数差算出手段)において算出される前記吸収係数差は、n+1種類の前記所定波長におけるn種類の前記吸収係数差であること、を特徴とすることが好ましい。【0016】これによって、n+1種類、すなわち2種類以上の波長成分のパルス光入射に対する応答から得られるn+1種類の光路長平均及び分散から、n種類の吸収係数差を効率的に算出し、求めることができる。【0017】また、このとき、前記吸収係数差算出ステップ(吸収係数差算出手段)は、n+1種類の前記所定波長におけるn種類の前記吸収係数差及びn種類の吸収成分の吸光係数差に基づいてn種類の前記吸収成分の濃度をさらに算出することとしても良い。【0018】 また、本発明による第2の散乱吸収体の内部情報の計測方法は、 所定周波数で変調された2種類以上の所定波長の変調光を、ヒトを除く散乱吸収体中に光入射位置から入射する光入射ステップと、 前記散乱吸収体内部を伝播した前記2種類以上の所定波長の光を光検出位置で検出して光検出信号を取得する光検出ステップと、 前記光検出信号から前記所定周波数成分の信号を抽出する信号処理ステップと、 前記所定周波数成分の信号に基づいて、前記所定周波数成分の信号の群遅延と、振幅の対数の変調周波数に対する2階偏微分値とを演算する群遅延及び振幅の対数の2階偏微分値演算ステップと、 前記群遅延、前記振幅の対数の変調周波数に対する2階偏微分値、及び前記2種類以上の所定波長における吸収係数差の間に成立する所定の関係に基づいて、前記所定波長における前記吸収係数差を算出する吸収係数差算出ステップと、を含むことを特徴とする方法である。【0019】また、本発明による第2の散乱吸収体の内部情報の計測装置は、所定周波数で変調された2種類以上の所定波長の変調光を散乱吸収体中に光入射位置から入射する光入射手段と、前記散乱吸収体内部を伝播した前記2種類以上の所定波長の光を光検出位置で検出して光検出信号を取得する光検出手段と、前記光検出信号から前記所定周波数成分の信号を抽出する信号処理手段と、前記所定周波数成分の信号に基づいて、前記所定周波数成分の信号の群遅延と、振幅の対数の変調周波数に対する2階偏微分値とを演算する群遅延及び振幅の対数の2階偏微分値演算手段と、前記群遅延、前記振幅の対数の変調周波数に対する2階偏微分値、及び前記2種類以上の所定波長における吸収係数差の間に成立する所定の関係に基づいて、前記所定波長における前記吸収係数差を算出する吸収係数差算出手段と、を含むことを特徴とする装置である。【0020】上記した本発明による第2の方法及び装置は、位相変調計測法(PMS法)によって周波数領域で解析を行うMVS法であるPMMVS法によるものである。このPMMVS法は、本発明による第1の方法及び装置に係るTIMVS法とフーリエ変換の関係にあるものであり、このように複数の波長の光に対する群遅延及び振幅の対数の変調周波数に対する2階偏微分値を用いるPMMVS法とすることによって、従来のMBL則に基づく計測方法の有していた利点に加えて、TIMVS法に関して示した利点▲1▼、▲2▼、及び▲4▼位相変調計測において位相のゼロ点を同定するときの誤差が低減される、などの実用上非常に重要な利点を生じる。【0021】なお、前記吸収係数差算出ステップ(吸収係数差算出手段)は、前記2種類以上の所定波長における前記吸収係数差及び吸収成分の吸光係数差に基づいて、前記吸収成分の濃度をさらに算出することが好ましい。【0022】また、前記吸収係数差算出ステップにおいて用いられる前記所定の関係は、マイクロ・ベア・ランバート則から導出される前記群遅延、前記振幅の対数の変調周波数に対する2階偏微分値、及び前記2種類以上の所定波長における前記吸収係数差の関係であることが特に好ましい。【0023】またさらに、2種類以上の所定波長ということに関しては、より具体的には、前記光入射ステップ(光入射手段)において用いられる前記変調光は、n+1種類(ただし、nは1以上の整数)の前記所定波長の前記変調光であり、前記光検出ステップ(光検出手段)において検出される前記光検出信号は、n+1種類の前記光検出信号であり、前記信号処理ステップ(信号処理手段)において抽出される前記所定周波数成分の信号は、n+1種類の前記所定周波数成分の信号であり、前記群遅延及び振幅の対数の2階偏微分値演算ステップ(群遅延及び振幅の対数の2階偏微分値演算手段)において演算される前記群遅延及び前記振幅の対数の変調周波数に対する2階偏微分値は、n+1種類の前記群遅延及び前記振幅の対数の変調周波数に対する2階偏微分値であり、前記吸収係数差算出ステップ(吸収係数差算出手段)において算出される前記吸収係数差は、n+1種類の前記所定波長におけるn種類の前記吸収係数差であること、を特徴とすることが好ましい。【0024】これによって、n+1種類、すなわち2種類以上の波長の変調光入射に対する応答から得られるn+1種類の群遅延及び振幅の対数の変調周波数に対する2階偏微分値から、n種類の吸収係数差を効率的に算出し、求めることができる。【0025】また、このとき、前記吸収係数差算出ステップ(吸収係数差算出手段)は、n+1種類の前記所定波長におけるn種類の前記吸収係数差及びn種類の吸収成分の吸光係数差に基づいてn種類の前記吸収成分の濃度をさらに算出することとしても良い。【0026】【発明の実施の形態】以下、図面と共に本発明による散乱吸収体の内部情報の計測方法及び装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。【0027】まず、本発明の原理について説明する。【0028】(本発明の原理)TIS法による吸収係数差の算出散乱吸収体内部をジグザグに伝播する光子の生存率は、ジグザグ光路長l(エル)と媒体(散乱吸収体)の吸収係数μaとの積の指数関数exp(−μal)になる。すなわち、減衰がジグザグ光路長lと吸収係数μaとの積μalで表される。このとき、散乱吸収体のインパルス応答h(t)は時間因果関数になり、【数1】と表される。ここで、μsとμaは非等方散乱係数と吸収係数、cは媒体中の光速度、tは飛行時間、lは光路長(飛行距離)である。また、s(μs,t)は吸収係数μa=0のときの応答である。飛行時間tは時間分解計測によって計測することができる。また、光速度cは散乱吸収体の屈折率で決まり、例えば生体などにおいては、その値は一定値と見なして良い。以上のような事実が、MBL則とよばれるものである。なお、後に用いる輸送散乱係数(等価散乱係数ともよばれる)μ'sは、μsと散乱角の余弦の平均値gを用いてμ's=(1−g)μsと表される。【0029】散乱媒体のインパルス応答h(t)の時間積分値I(μs,μa)は、【数2】のようになる。上記(1.2b)式のL(μs,μa)=c<t>は、検出された光子の光路長平均(平均光路長ともいう)を表す。この際、<t>はインパルス応答波形の重心(検出された光子の平均飛行時間)を表し、インパルス応答の時間波形をコンピュータで演算(モーメントを計算)して簡単に算出することができる。【0030】次に、光路長平均L(μs,μa)の吸収係数依存性を求めると、【数3】となる。ここで、σ2は光路長lの分散を表し、光路長平均L(μs,μa)をμaで偏微分して符号を変えたもの、あるいは時間積分I(μs,μa)をμaで2階偏微分したものに等しい。この分散σ2(μs,μa)は、前記の光路長平均L(μs,μa)と同様にして、インパルス応答の時間波形をコンピュータで演算して簡単に算出することができる。【0031】同様にして、時間積分I(μs,μa)のμaに関する3階の偏微分、つまり光路長平均L(μs,μa)のμaに関する2階の偏微分を求めることができ、この値は波形歪みに関する情報を与える。数学的には、m階の偏微分値が存在すれば(m−1)階以下の偏微分値が必ず存在する。【0032】ここで、散乱係数μsを定数として、光路長平均L(μs,μa)=L(μa)をμa1のまわりにTaylor展開して表すと、【数4】となる。ただし、L′及びL″は、Lのμaに関する1階及び2階の偏微分である。ここでδ=μa2−μa1とすれば、【数5】が得られる。すなわち、散乱係数が一定であるとき、吸収係数の変化(吸収係数差)(μa2−μa1)は、インパルス応答の光路長平均(時間分解波形の重心)及び分散を用いて計算することができる。この新しい知見は、後述するように吸収成分の濃度を計測する際に用いられる。【0033】計測に用いる入射光パルスの時間幅は有限であり、増幅器や計数回路の帯域幅も有限である。したがって、実際の計測で得られる時間波形(観測波形または観測値)は、散乱媒体のインパルス応答と計測系のインパルス応答(装置関数ともよばれる)とのコンボリューションになる。【0034】観測値から計測装置の特性の影響を取り除いて、真の散乱媒体のインパルス応答の光路長平均及び分散を求める手段として、次の2種がある。第1の方法は、良く知られているデコンボリューション法である。これは、観測値を装置関数でデコンボリューションしてインパルス応答を求め、得られた波形から光路長平均や分散を求める。第2の方法は、装置関数における光路長平均及び分散、及び観測波形における光路長平均と分散をそれぞれ別々に求め、これらの値から散乱媒体のインパルス応答の光路長平均と分散を求める。この場合、インパルス応答における光路長平均と分散は、観測波形と装置関数におけるそれぞれの値の差になる。【0035】観測される波形o(t)は、媒体のインパルス応答(真の光波形)h(t)と計測系のインパルス応答(装置関数)i(t)を用いて、【数6】と表される。ただし、記号【数7】はコンボリューション演算を表す。ここで、波形o(t)、i(t)、及びh(t)の重心をそれぞれμo、μi、及びμhとし、分散をそれぞれσo2、σi2、及びσh2とする。また、上記のそれぞれの波形の母関数を、【数8】と定義する。このように定義すると、これらの母関数は、s=0で何回でも微分することができる。【0036】この母関数を使うと、各波形のコンボリューションは母関数の積、すなわち【数9】のように表される。また、o(t)の重心μoは、【数10】となる。ここで、(2.5)式から【数11】であるから、ここから【数12】が得られる。また、分散は、【数13】で与えられるから、ここから【数14】が得られる。同じようにして、3次以上のモーメントに対しても同様の関係式が得られる。したがって、インパルス応答に対する各モーメントは、予め測定した装置関数と媒体に対する観測波形から、コンピュータを用いて高速に計算することができる。【0037】以上示したのが、TIS法によって、観測波形からインパルス応答の光路長平均や分散、及び吸収係数差を求める方法である。【0038】PMS法による吸収係数差の算出次に、強度変調光を用いる計測方法について述べる。媒体の周波数応答を示すシステム関数H(ω)は、インパルス応答h(t)のフーリエ変換で表され、【数15】となる。ここで、R及びXはそれぞれ実部及び虚部であり、A及びφはそれぞれ振幅及び位相遅れであり、これらはロックインアンプなどで簡単に計測することができる。【0039】そして、【数16】なる関係(Cauchy-Riemannの関係式)が成立し、システム関数H(ω)が正則関数であることがわかる。さらに、(3.2a)及び(3.2b)式から、【数17】を導出することができる。すると、例えば(3.2c)式から、【数18】が導出される。この(3.3)式は前出の(1.2c)式と相似形であり、(3.3)式の左辺は観測可能である。また、右辺第1項の被積分関数は群遅延であり、前述した光路長平均L(μs,μa)に相当する。この群遅延は、2つの変調周波数ω1及びω2における位相遅れφ1及びφ2を用いて、【数19】と近似される。また、(3.3)式の右辺第2項は吸収係数がμa=0のときの値である。さらに、群遅延【数20】は、ω≪cμaのとき【数21】と近似される。なお、φ/ωは位相遅延である。【0040】ここで、群遅延の吸収係数依存性を求めると、【数22】が得られる。ここで、(3.5)式右辺の【数23】は、3種類の変調周波数を用いて容易に計測することができる。これは、先に求めた分散に相当する。【0041】また上記では、(3.2c)式から(3.3)式ないし(3.5)式を求めたが、同様の関係式を(3.2a)、(3.2b)、及び(3.2d)式から求めることができる。なお、PMS法の場合、先に述べた真の波形を求めるためのデコンボリューション演算は、通常不要である。【0042】ここで、TIS法における場合と同様にして、散乱係数μsが定数であるとして、群遅延と吸収係数の変化(吸収係数差)の関係を求めると、【数24】が得られる。したがって、PMS法においても、前述したTIS法と同様に、散乱係数が一定であるときの吸収係数の変化(吸収係数差)を、群遅延とその吸収係数依存性の実測値から算出することができる。【0043】MVS法による吸収成分の濃度の算出次に、インパルス応答の光路長平均及び分散の値から、吸収成分の濃度を定量する分光計測法(MVS法)について説明する。以下においては、散乱係数μsのかわりに、一般的に計測しやすい輸送散乱係数μ's(=(1−g)μs)を用いる。また、説明を簡単にするために、1種類の吸収成分を含む水を主成分とする散乱媒体の2波長分光を考え、計測に用いる波長をλ1及びλ2とし、それぞれの波長における光学定数を下付き添え字1及び2を用いて表す。このとき、波長λ1とλ2における媒体の吸収係数μa1及びμa2と、吸収成分の濃度Cとの関係は、【数25】である。ここで、ε1及びε2は、波長λ1及びλ2における吸収成分の単位濃度当たりの吸光係数(または吸収係数)、例えばモル吸光係数、μw1及びμw2は、波長λ1及びλ2における水の吸収係数である。したがって、実測波形から得られる吸収係数差(μa2−μa1)を求めて、吸収成分の濃度Cを定量することができる。【0044】以上のような分光計測を行う場合、一般の媒体では2波長(λ1及びλ2)における散乱係数の値が異なる。そして、この散乱係数の差が吸収成分の濃度定量アルゴリズムを複雑にしている。以下では、まず光路長平均と輸送散乱係数の関係を求め、続いて、その関係を用いて吸収成分の濃度を定量する新しい方法について説明する。【0045】光拡散方程式によれば、反射型計測の場合の光路長平均L(μ's,μa)は単にLρと略記して、【数26】と表される。ただし、ρは光入射・検出位置間距離である。【0046】今、吸収係数は等しい値μaをもつが、輸送散乱係数がμ's1及びμ's2(この値は、ちょうど波長λ1及びλ2のときの輸送散乱係数に等しい)である場合の光路長平均の比を考えると(普通このようなことは起こらない)、【数27】となる。ただし、μeffは有効減衰係数であり、【数28】である。ただし、ここでは吸収係数に依存しない光拡散定数を用いた。一般的な計測条件、すなわちρ>20mm、μ's>0.8mm、μa≫0.001mm-1であるとき、(4.3)式は【数29】と近似される。すなわち、吸収係数が同じであるが輸送散乱係数が異なるときの光路長平均の比は、吸収係数に依存せず、輸送散乱係数の比で決まる定数になる。なお、実際の媒体計測では、波長を変化させて輸送散乱係数を変えると、通常は吸収係数も変化するから、(4.3)式に示すLρの比を直接計測することは困難である。【0047】上記とほぼ同じ条件下、すなわち一般的な透過型計測の場合にも、光路長平均の比に対して同様に(4.5)式の近似が成立する。図1に、輸送散乱係数が異なるときの光路長平均Lの吸収係数μaとの関係の一例を、L1及びL2によって模式的に示す。【0048】上記(4.5)式は光拡散近似に基づいて得られた関係であるが、実際の媒体に対してこの関係が成立することは、散乱媒体を模擬したモンテカルロ(Monte Carlo)計算、及び生体模擬ファントムによる実験で確認されている。【0049】そこで、以上を一般化し、波長λ1及びλ2における光路長平均の比を、【数30】と近似しk'で定義する。ここで用いたL1(μa)及びL2(μa)は、輸送散乱係数が異なるが吸収係数が同じ値μaである媒体に対する光路長平均を表す。したがって、ここで定義した係数k'を用いると、吸収係数が同じ値μaであるが、輸送散乱係数が異なる媒体に対する光路長平均の比を推定することができる(図2参照)。またさらに、(4.6)式が成立するということは、光路長平均を表す曲線k'×L1(μa)及びL2(μa)が(μa,L)平面で重なることを意味するから、光路長平均を表す曲線L1(μa)及びL2(μa)のμaにおける分散σ2(μ's1,μa)及びσ2(μ's2,μa)に対して、【数31】が成立する。【0050】以上のような知見は、次の意味で大変重要である。すなわち、(4.6)式で定義した係数k'を用いることによって、輸送散乱係数が異なる媒体に対する光路長平均L(μ's,μa)を正規化することができる。この結果、輸送散乱係数が異なる媒体に対する光路長平均を一元的に取り扱うことができる。【0051】以下、このような関係を用いて、吸収成分の濃度Cを求める。【0052】上記したように、係数k'を導入すると輸送散乱係数に波長依存性がある媒体の分光計測が、輸送散乱係数が一定であるときの吸収成分の濃度計測に帰結される。この結果、(μa,L)平面における1本の光路長平均を示す曲線を考えればよく、吸収成分の濃度計測に際して(1.5)式を適用することができる。今、k'で正規化した光路長平均L2=k'L1を用いるとして(1.5)式を参照すると、吸収係数の差に関して、【数32】が成立する。ここで、【数33】であるから、最終的に【数34】が成立する。すなわち、吸収係数差は実測値から得られる光路長平均L1(μa1)、L2(μa2)、及び分散σ12(μa1)、σ22(μa2)、を用いて定量することができる。【0053】以上から、吸収成分の濃度Cを求めると最終的に、【数35】となり、2波長分光計測によって吸収成分の濃度Cを定量する式が求められた。ここでは、光路長平均の項が(k'L1−L2)となっているから、時間分解計測において時間軸のゼロ点(t=0)を同定するときの誤差の問題が、従来の方式(L1+L2)に対して大きく緩和される。特にμ's≒1である生体などで、この効果は大きい。【0054】 また、位相変調計測法(PMS法)の場合は前記と同様にして、【数36】となる。ただし、【数37】である。上記の(4.10)式においても、群遅延の項が(k'φ'1−φ'2)となっているから、位相変調計測において位相のゼロ点(φ=0)を同定するときの誤差の問題が、従来の方式(φ1+φ2)に対して大きく緩和される。特にμ'S≒1である生体などで、この効果が大きいことは同様である。【0055】以上から、光路長平均と分散、あるいはそれらに相当する物理量を用いる本発明による分光計測法(MVS法)は、従来のMBL則に基づく計測法の利点に加えて、▲1▼波長や位置に依存する入射光強度の絶対値や個体差が問題にならない、▲2▼散乱係数の波長依存性を繰り込んだ定量式が極めて簡単になる、▲3▼時間分解計測において時間軸のゼロ点(t=0)を同定するときの誤差の問題が緩和される、▲4▼位相変調計測において位相のゼロ点を同定するときの誤差の問題が緩和される、などの大きな利点を生じることが明らかである。【0056】なお、上記(4.8)式は、次のようにして導出することも可能である。まず、(1.3)式から、【数38】が得られる。すると、波長λ1及びλ2における光路長平均の差は、【数39】となる。ここで、(4.6)式と(4.7)式を仮定すれば、【数40】であるから、結局、前出の(4.8b)式、すなわち、【数41】が得られる。【0057】次に、輸送散乱係数の比を定量する方法について述べる。反射型計測の場合の光路長平均Lρ(μ's,μa)は前出の(4.2)式で与えられ、Lと略記すれば、【数42】となる。ただし、ρは光入射・検出位置間距離である。したがって分散σ2は、【数43】となる。ここで、光路長平均Lと分散σ2を用いて、輸送散乱係数μ'sと吸収係数μaを記述すると、【数44】が得られる。さらに通常の計測、すなわち3μ'sρ≫4のときは、【数45】と近似される。【0058】以上により、計測値から演算した光路長平均Lと分散σ2を用いて、輸送散乱係数μ'sと吸収係数μaを定量することができる。この方法は、簡便であることが最大の特徴・利点であり、比較的大きい媒体に対して高い精度が得られ、このとき輸送散乱係数μ'sと吸収係数μaの測定精度は10%程度である。ところが、この方法は異なる媒体あるいは異なる波長で計測したときに得られる輸送散乱係数の比に対する定量精度が優れている。すなわち、上記の方法によって、輸送散乱係数比を高精度で高速に計測することができる。この場合、光路長平均Lや分散σ2を求めるには、前述した差演算法を利用することができる。【0059】したがって、波長λ1及びλ2において計測したときに得られる輸送散乱係数の比μ's(λ2)/μ's(λ1)は、それぞれの波長の計測で得られる光路長平均Lと分散σ2を用いて、【数46】で与えられる。したがって、前出のk'は、【数47】となる。ただし、光路長平均と分散は略表示を用いた。【0060】以上により、吸収成分の濃度Cは、(4.8)式に(5.6)式を代入して、実測値から求めることができる。なお、輸送散乱係数の比が予め既知の場合には、この既知値を用いても良い。また、他の方法によってこの輸送散乱係数の比を求めても良い。【0061】以下に、上述した計測原理に基づく計測方法及び装置の好適な実施形態について具体的に説明する。【0062】(第1実施形態)図2〜図4を参照して本発明の好適な一実施形態である第1実施形態について説明する。図2には、2種類の波長の光を用いて、散乱吸収体1に含まれている吸収成分の濃度Cを定量する本発明による計測装置が示してある。説明を簡潔にするため、ここでは散乱特性と吸収特性が一様であり、1種類の吸収成分が含まれている液状媒体を考える。液体は例えば水であり、計測に際して水の吸収を考慮する必要がある。【0063】図2に示す装置は、光入射用の光ガイド3を備えており、光ガイド3の出力端が散乱吸収体1の表面の所定の位置に配置されている。光ガイド3の入力端には波長選択器4を介して光源5が光学的に接続されており、光源5から発せられたパルス光は、波長選択器4において所定波長λ1及び/またはλ2に波長選択され、光ガイド3を介して位置ujから散乱吸収体1に入射される。【0064】このパルス光の時間幅は、光検出信号からインパルス応答の光路長平均が導出できる程度に短いものであればよく、通常は10ps〜1ns程度の範囲において選択される。また,光の波長は、計測対象である散乱吸収体1に応じて適宜に選択されるが、一般に例えば生体では、生体の透過率と定量すべき吸収成分の分光吸収係数との関係から、通常は700〜900nm程度の近赤外線域の波長が用いられる。光源5としては、発光ダイオード、レーザーダイオード、各種のパルスレーザーなど、種々のものを使用することができる。この光源5は単一波長あるいは狭帯域の光を発生するものを2種類以上使用してもよいが、2波長以上の波長の光を同時に発生するものであってもよい。このような光源5の構成によって、光ガイド3及び波長選択器4の構成についても、適宜変更・設定される。また、2波長以上の波長の光を時系列に発生するものであってもよく、この場合は波長選択器4を省略することができる。【0065】また、図2に示す装置は、光検出用の光ガイド6を備えており、光ガイド6の入力端が散乱吸収体1の表面の所定の位置に配置されている。そして、光ガイド6の出力端には光検出器7が光学的に接続されており、散乱吸収体1内部を散乱されつつ伝播した光は、位置vkから光ガイド6を介して光検出器7に導かれ、光検出器7で受光信号が電気信号である光検出信号に変換される。また、光検出器7及び光源5には信号処理部8が電気的に接続されており、この信号処理部8において、光検出信号に基づいて検出光強度の時間変化を示す波形データが取得される。さらに、信号処理部8には演算処理部9が電気的に接続されており、この演算処理部9において、波形データに基づいて検出光を構成する複数光子の光路長平均及び分散が演算される。これらの光路長平均、分散、及び2種類の波長における輸送散乱係数の比に基づいて吸収係数差(μa2−μa1)が前出の(4.8)式によって定量され、さらにこの吸収係数差に基づいて、あるいは直接、前出の(4.9)式によって、吸収成分の濃度Cが定量される。【0066】上記の光入射用光ガイド3、波長選択器4及び光源5が本発明に係る光入射手段、光検出用光ガイド6及び光検出器7が本発明に係る光検出手段、信号処理部8が本発明に係る信号処理手段をそれぞれ構成している。また、演算処理部9は複数の機能を有して構成されており、それらは本発明に係る光路長平均及び分散演算手段(または、群遅延及び振幅2階偏微分値演算手段)、及び吸収係数差算出手段をそれぞれ構成している。【0067】なお、散乱吸収体1の表面における、光ガイド3に接続される光入射面及び光ガイド6に接続される光検出面以外の部位は、内側は光を吸収し、外側は光を遮光する構造にすることが望ましい。また、散乱吸収体1の内部を複数の波長の光が同時に散乱伝播する場合には、光検出器7と光ガイド6との間に波長選択フィルタ(図示していない)を適宜配置して測定を行ってもよい。【0068】図3は、光検出器7、信号処理部8及び演算処理部9の好適な構成の一例を示す。図3に示す構成は、いわゆる時間相関光電子計数法と呼ばれる方法を用いて高速時間波形計測法を実施するための構成である。本構成例においては、光検出器7として光電子増倍管(PMT)を用いており、また、信号処理部8がコンスタント・フラクション・ディスクリミネータ(CFD)21、時間−振幅変換器(TAC)22及びADコンバータ(A/D)23で構成されている。そして、PMT7の出力信号は、CFD21を介してTAC22に導かれて時間に対応したアナログ電圧に変換され、さらにADコンバータ23でデジタル信号に変換される。このデジタル信号は、検出光強度の時間変化を示す波形データに対応するものである。【0069】図3に示す演算処理部9においては、光源5及び信号処理部8にCPU30が電気的に接続されており、光入射に同期した光検出のタイミング等がCPU30によって制御されると共に、信号処理部8から出力された波形データはCPU30に導かれる。また、入射光の波長等もこのCPU30によって制御あるいは選択される。具体的な手法としては、異なる波長の光を時分割で入射させて使用する手法と、異なる波長の光を同時に含む光を使用する手法とがある。具体的な波長選択手段としては、例えばミラーを用いた光ビーム切り換え器、フィルターを用いた波長切り換え器、光スイッチを用いた光切り換え器等がある。【0070】図3に示す演算処理部9は、さらに、オペレーティングシステム(OS)41及び後で詳述する内部情報計測プログラム42が記憶されたプログラムメモリ40と、各種データファイルが記憶されるデータファイルメモリ50と、得られた散乱吸収体の内部情報を示すデータを記憶するデータメモリ61と、作業用データを一時的に記憶する作業用メモリ62と、データの入力を受け付けるキーボード71及びマウス72を備える入力装置70と、得られたデータを出力するディスプレイ81及びプリンタ82を備える出力装置80とを備えており、これらも電気的に接続されているCPU30によって制御される。なお、上記のメモリは、コンピュータの内部メモリ(ハードディスク)であっても、フレキシブルディスクであってもよい。【0071】データファイルメモリ50には、内部情報計測プログラム42の実行によって得られる波形データ、光路長平均、装置関数(計測系のインパルスレスポンス)、分散、輸送散乱係数の比、吸収係数差等の諸データが記憶され、また、入力装置70を用いて予め入力された計測条件や既知値等のデータも記憶される。このような入力データとしては、被計測媒体の形状、光入射位置、光検出位置、光入射・光検出位置間距離、計測に用いる光の波長、計測の種類(反射型、透過型など)、計測対象となる吸収成分の所定の波長における吸光係数などがある。【0072】なお、光検出器7は光電子増倍管のほか、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、PINフォトダイオード等、あらゆる種類の光検出器を使用することができる。測定に使用する光検出器7の選択に際しては、使用される測定光の波長の光が検出できる分光感度特性をもっていれば良い。さらに、光信号が微弱であるときは高感度あるいは高利得の光検出器を使用することが好ましい。また、上記の光入射用光ガイド3や光検出用光ガイド6の代わりに、光ファイバーやレンズなどを利用してもよい。【0073】次に、図4に示す本発明による計測方法の一実施形態のフローチャート(図3に示した内部情報計測プログラム42の処理を示すフローチャート)に基づいて以下に詳細に説明する。【0074】図4に示すフローチャートにおいては、まず、光源5で生成した所定波長のパルス光を光ガイド3を介して散乱吸収体1の光入射位置ujに入射し(S110)、散乱吸収体1内部で散乱されつつ伝播した光を光検出位置vkに設置した光ガイド6を介して光検出器7で検出する(S120)。【0075】そして、検出された光に対応する光検出信号が光検出器7から発せられ、信号処理部8において検出光強度の時間変化を示す波形データに変換される(S130)。また、予め装置関数(計測系のインパルスレスポンス)を測定して(S190)、データファイルメモリ50に記憶しておく。この際、装置関数は、図3に示した構成において散乱吸収体1を取り除いて、光ガイド3の光出力端と光ガイド6の光入力端とを直接、対向・接触結合させて測定する。したがって、装置関数には光源のパルス幅や検出系の帯域幅などの影響が含まれている。【0076】次に、得られた波形データ及び装置関数に基づいて、インパルス応答を構成する複数光子の光路長平均L並びに分散σ2を演算する(S140)。なお、インパルス応答の光路長平均及び分散は、それぞれ、前出の(2.8)及び(2.10)式に示されているように、計測波形と装置関数との光路長平均及び分散の和になる。前出の(1.2b)式に示したように光路長平均は時間分解波形の加重平均、また分散は前出の(1.3)で表されるから、いずれも時間分解波形、すなわち上記で得た波形データをコンピュータで計算して(モーメント計算になる)、高速に求めることができる。【0077】そして、この光路長平均L及び分散σ2に基づいて、散乱係数の比の平方根、すなわちk'を、(5.6)式に基づいて演算する(S150)。次に、散乱吸収体の吸収係数差、あるいは吸収成分の濃度を、前出の(4.8)式あるいは(4.9)式に基づいてそれぞれ算出し(S160あるいはS170)、算出された結果を出力する(S180)。【0078】なお、上記の光路長平均及び分散の演算(S140)では、波形データを装置関数でデコンボリューション処理して得たインパルス応答から、光路長平均や分散を求めるようにしてもよい。また、上記の散乱係数の比の平方根の演算(S150)では、前述したように、あらかじめ他の方法で測定した値を用いてもよい。【0079】また、以上の実施形態で、所定波長の光としてn+2(≧3、nは1以上の整数)種類以上の波長のパルス光を使用することによって、n+1種類の吸収係数差を求め、これらの値からn+1種類の吸収成分の濃度を定量することができる。【0080】(第2実施形態)本実施形態は、本発明を位相変調計測に応用する例を示す。この場合、計測装置の構成は、前述の図3に示す信号処理部8を、例えばロックインアンプを含む演算装置で置き換えた構成になる。また、光源5は3種類の変調周波数成分(ω1,ω2,ω3)を含む2種類の所定波長λ1及び/又はλ2の変調光を発生する。【0081】図5に、本発明の方法を位相変調計測に応用した実施形態のフローチャートを示す。図5に示すフローチャートにおいては、まず、光源5で生成した所定波長の強度変調光を光ガイド3を介して散乱吸収体1の光入射位置ujに入射し(S110)、散乱吸収体1内部で散乱されつつ伝播した光を光検出位置vkに設置した光ガイド6を介して光検出器7で検出する(S120)。そして、検出された光に対応する光検出信号が光検出器7から発せられ、信号処理部8に供給される。【0082】信号処理部8に含まれるロックインアンプは、上記したλ1とλ2の波長の変調光に対して3種類の所定周波数成分の信号を抽出する(S131)と共に、3種類の所定周波数成分の信号に対して(3.1)式に述べた実部R、虚部X、振幅A、及び位相遅れφを出力する。なお、位相のゼロ点については予め取得しておく(S191)。次に、この実施形態では、上記2種類の所定波長の変調光入射に対する3種類の所定周波数成分の信号の振幅A、位相遅れφ、及び3種類の変調周波数(ω1,ω2,ω3)を用いて、変調周波数がω2である検出光を構成する複数光子の群遅延、及び振幅の対数のωに対する2階の偏微分(群遅延の吸収係数に対する偏微分値に等しい、(3.5)式参照)を演算する(S141)。【0083】そして、この群遅延及びその吸収係数に対する偏微分値とに基づいて、散乱係数の比の平方根、すなわちk'を演算する(S150)。この場合、前出の(5.6)式で、光路長平均Lをc倍の群遅延、分散σ2をc2倍の振幅の対数のωに対する2階の偏微分に置き換えて計算する。次に、散乱吸収体の吸収係数差、あるいは吸収成分の濃度を、前出の(4.8)式あるいは(4.9)式に基づいてそれぞれ算出し(S160あるいはS170)、算出された結果を出力する(S180)。ただし、これらの場合にも、光路長平均Lをc倍の群遅延、分散σ2をc2倍の振幅の対数のωに対する2階の偏微分に置き換えて計算する。【0084】なお、上記では群遅延及びその吸収係数に対する偏微分値を求めているが、前述のようにω≪cμaのときは、群遅延は位相遅延と近似されることから、位相遅延及び位相遅延の吸収係数に対する偏微分値を演算してもよい。また、上記散乱係数の比の平方根の演算(S150)では、あらかじめ他の方法で測定した値を用いてもよい。【0085】また、以上の実施形態で、所定波長の光としてn+2(≧3、nは1以上の整数)種類以上の波長のパルス光を使用することによって、n+1種類の吸収係数差を求め、これらの値からn+1種類の吸収成分の濃度を定量することができる。【0086】(第3実施形態)図6は本発明の第3実施形態を示すもので、人体頭部などの散乱媒体内部のヘモグロビンの濃度あるいはヘモグロビンの酸素飽和度を計測、あるいはモニタリングする装置を示す。この装置では、3種類の波長、すなわち波長λ1、λ2、λ3の光を使う。この場合、パルス光を用いた場合は第1実施形態、変調光を用いた場合は第2実施形態と同じ動作原理であり、構成も同じである。ただし、光入射手段、及び光検出手段を実装する容器の構造が、上記した各実施形態とは異なっている。【0087】図6に示す装置においては、光入射手段及び光検出手段は、鉢巻きのようにして頭部1aに装着する取り付けバンドをもつ容器10に収められており、信号処理部8、演算処理部9等を含む外部機器11とは、ケーブル12によって接続されている。【0088】図7は容器10の詳細を示す。容器10には、光源5、波長選択器4、光入射用光ガイド3、光検出用光ガイド6、及び光検出器7が内蔵されており、光源5から発せられた所定波長λ1、λ2、λ3の光は波長選択器4で波長選択されて、光ガイド3を介して頭部1aに入射される。この際、所定波長λ1、λ2、λ3は、図8に示したヘモグロビンの吸収スペクトルを参照して、適宜に選ばれる。【0089】なお、上記では光入射手段及び光検出手段を内蔵する容器10と、信号処理部8及び演算処理部9を収容する外部機器11とは、コネクタ13を介してケーブル12によって接続したが、この間を無線、光信号等の他の手段によって接続することもできる。このようにすれば、例えばベッドサイドや静止状態での計測だけでなく、運動中の計測もできる。また、頭部だけでなく、例えばマラソン中の人の太股などを対象とした計測も可能になる。さらには、市内有線ケーブル、光ケーブル等で接続すれば、病院等の施設から家庭にいる人のリモート計測も可能になり、また、病院などにおける病室の集中管理等にも応用できる。【0090】ここで、ヘモグロビンの濃度と光学定数をそれぞれCb:還元型ヘモグロビンのモル濃度(M)Co:酸化型ヘモグロビンのモル濃度(M)p1:還元型ヘモグロビンの波長λ1におけるモル吸光係数(mm-1M-1)p2:還元型ヘモグロビンの波長λ2におけるモル吸光係数(mm-1M-1)p3:還元型ヘモグロビンの波長λ3におけるモル吸光係数(mm-1M-1)q1:酸化型ヘモグロビンの波長λ4におけるモル吸光係数(mm-1M-1)q2:酸化型ヘモグロビンの波長λ5におけるモル吸光係数(mm-1M-1)q3:酸化型ヘモグロビンの波長λ6におけるモル吸光係数(mm-1M-1)とすると、各波長における吸収係数は、【数48】と表される。ただし、a1、a2、a3はヘモグロビン以外の吸収成分と水を含めた吸収係数である。【0091】本発明の方法によって実際に計測されるのは吸収係数差であるから、それに対応して上式を書きかえると、【数49】となる。すなわち、上式の左辺が本発明の方法によって計測される量である。この式は、2個の未知数Cb及びCoを含む連立方程式であるから、この連立方程式を解くことによって、2個の未知数Cb及びCoを求めることができる。この場合、a1、a2、a3の値については、通常は、a1≒a2≒a3となるように波長を選択する。また、a1、a2、a3の値に、生体の標準値を用いる事もできる。【0092】以上により、この実施形態では、還元型ヘモグロビンの濃度Cb、酸化型ヘモグロビンの濃度Co、ヘモグロビンの量(Cb+Co)、及び酸素飽和度Co/(Cb+Co)を求めることができる。【0093】以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は勿論上記実施形態に限定されるものではない。【0094】すなわち、上記実施形態においては光入射位置及び光検出位置を固定しているが、光入射位置及び/又は光検出位置を走査させてもよい。また、散乱吸収体の周囲に複数の光入射位置及び/又は光検出位置を配置するようにしてもよい。【0095】さらに、上記実施形態において、1つの散乱吸収体に対して光入射位置及び/又は光検出位置を走査させて計測する場合、あるいは吸収成分の濃度が変化する前後に散乱吸収体の同一位置で計測する場合には、計測中の散乱特性は一定で変化しないと考えてよい。そしてこの場合には、前出の(4.9)式及び(4.10)式において、k'=1とおいて吸収成分の濃度分布(基準値に対する差)あるいは吸収成分の濃度変化(基準値に対する差)を計測することができる。特に前者の例は、本願発明者らによって特開平10−73481号において開示された実施例2(マンモグラフィー)などの計測に有効である。【0096】【実施例】以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。【0097】(実施例1)本実施例においては、本発明の方法の精度を確認するためにシミュレーションを行った結果を示す。【0098】すなわち、厚さ30mmのスラブ状の散乱吸収体(媒体)に対して、吸収係数を変化させて、本発明による光路長平均及び分散を用いる分光計測法(MVS法)についてのモンテカルロシミュレーションを行った。このモンテカルロシミュレーションでは、2波長分光計測で計測されるデータに直接対応するデータは得られないが、吸収成分の濃度が異なるときのモンテカルロデータを用いて、2波長分光の有効性をシミュレーションすることができる。すなわち、吸収係数の差を定量するのに、前出の(4.8)式でk'=1としたものを用いる。【0099】反射型計測で光入射・検出位置間距離5mmの計測結果を表1及び表2に、光入射・検出位置間距離30mmの計測結果を表3及び表4に示す。また透過型で光入射・検出位置間距離30mm(媒体の厚さに相当する)の計測結果を表5及び表6に示す。いずれの場合にも、散乱係数はμ's=1mm-1であるが、散乱角の余弦の平均値は表1、3、5においてはg=0.6、また表2、4、6においてはg=0.9である。【0100】【表1】【表2】【表3】【表4】【表5】【表6】それぞれの表中の最左列のμaはモンテカルロ計算に際して設定した媒体の吸収係数である。また、表中の中央部のΔμaは、上下に隣り合う1組のモンテカルロデータから計算される光路長平均Lと分散σ2を用いて、前出の(4.8)式によって定量した吸収係数差である。ただし、k'=1とした。表中の右部には、比較のために輸送散乱係数の比を定量する別の方法で求めた吸収係数差((5.3a)式)をOld-Δμaとして示した。表から、このOld-Δμaは、反射型計測ではDCバイアスがかかる傾向、また透過型計測では傾きが1より大きい傾向が見られ、本発明による方法によって求めたΔμaの方がOld-Δμaに比べて誤差が少ないことがわかる。【0101】吸収係数μaが小さいときは、吸収係数μaに対する光路長平均Lの傾きの変化が大きくなる(図1参照)。したがって、吸収係数μaが小さい領域では、前出の(1.5)式を導出する際に用いた線形近似(平均値定理を用いたのに等しい)の誤差が出る。この誤差は、当然、吸収係数差が小さくなれば減少する。この傾向は表1ないし表6の結果に見られ、最下段の定量値の精度がかなり良い。なお、実際の生体などの分光計測では、後述するように、2波長間の吸収係数差は、ちょうど、吸収係数μaが小さいときに小さくなる。また、生体では水の吸収があるため、吸収係数の絶対値もその分だけ大きくなる。したがって、以上の2点から、生体などの分光計測では上記の誤差が大きく緩和される。【0102】(実施例2)本実施例においては、本発明の方法の精度を確認するために模擬ファントムを用いて実験を行った結果を示す。【0103】実験系の概要は図3に示した通りであり、光源としては、それぞれ波長がλ1=782nmとλ2=831nmのピコ秒パルスを発生し、いずれのパルスも、繰り返し周波数5MHz、パルス幅約50psである2台のピコ秒パルス発生器を用いた。これらのピコ秒パルスは、光スイッチと光減衰器を経由して200μm径のGIファイバーに入射され、他端である出射端から出射された光が散乱吸収体であるファントムに入射される。ファントムからの出力光は5mm径のバンドルファイバーで受光されて、図3に示した時間相関光電子計数法による装置によって計測される。なお、光路長平均の演算などに必要となる2波長における装置関数は、光入射用及び光検出用ファイバーを密着させた状態で計測される。【0104】実験に用いたファントムは、アクリル製の容器(幅120mm、高さ120mm、奥行き40mm)に散乱物質として1%イントラリピッド(Intralipid)溶液を420ml入れ、そこに吸収物質としてグリーニッシュブラウンインク(greenish brown ink)を0.07mlずつ、インクの総量が0.56mlになるまで徐々に添加し、透過型計測を光入射・検出位置間距離40mmの条件で行った。実際のファントムの吸収係数は、添加したインクの吸収係数と水(蒸留水)の吸収係数の和になる。計測に用いたパルス光の波長λ1=782nmとλ2=831nmにおいて、輸送散乱係数の理論値はそれぞれ1.0207及び0.9531である。したがって、それらの比は1.071であり、k'=1/1.035=0.9633となる。また、グリーニッシュブラウンインクの吸光係数、及び蒸留水の吸収係数は分光器で測定した。表7に、実験におけるファントムの光学パラメータを示す。【0105】【表7】以上の条件によって行ったファントムによる実験から得られた実験値から求めたインパルス応答の光路長平均と分散の値を表8に示す。【0106】【表8】生体や生体模擬液体ファントムについての測定においては、水の吸収を無視することができない。また、吸収成分の吸光係数は波長によって異なり、分光計測はこの差を利用する。ファントムの吸収係数と光路長平均の関係を図9に示す。ここで、ファントムの吸収係数は、実測した蒸留水の吸収係数、添加したインクの量、及び実測したインクの吸光係数を用いて計算した。また、図中の曲線は、光拡散近似で得られる光路長平均を表す式の一般形【数50】でフィッティングした。この図9から、(4.6)式が近似的に成立することがわかる。【0107】さらに、この図で分光計測に用いる一組のデータ、すなわちインクの添加量が同一である一組のデータにおける吸収係数差を考えると、この差はファントムの吸収係数が増加するとともに増加し、ファントムの吸収係数が小さいときはこの差も小さいことがわかる。このような関係は、生体などの分光計測に対して一般的に成立する。MVS法の基本式である(1.5)式の導出に際して線形近似を用いたが、図9に示すように、光路長平均の曲率と吸収係数差は、ちょうど一方が小さくなると他方が大きくなる関係にあるから、吸収係数が変化する全域にわたって線形近似が小さい誤差で成立することがわかる。【0108】実験によって定量された吸収成分の濃度Cを表9に示す。表9では比較のために、比k'に一定値を使う方法 (k'=0.9663、理論値)、及び輸送散乱係数に波長依存性がないと仮定(k'=1)したときの結果、さらには実験で求めた輸送散乱係数の比の平均(k'=0.9681)を用いた結果を合わせて示した。この表から、輸送散乱係数に波長依存性がないと仮定(k'=1)した場合は、当然ながら誤差は大きく、また、それ以外の方法に対しても、本発明による方法は優れた精度を与えることがわかる。【0109】なお、実験で求めた比の平均値(k'=0.9681)を用いた結果と比較しても、各測定ごとに求めた結果の方が誤差が小さいが、これは、各測定におけるノイズの影響が、演算の過程において相殺されるためと考えられる。【0110】【表9】【0111】【発明の効果】本発明による散乱吸収体の内部情報の計測方法及び装置は、以上詳細に説明したように、次のような効果を得る。すなわち、本発明による計測方法及び装置は、光路長平均及び分散、あるいはこれらに相当する物理量を利用するものであって、光強度の絶対値あるいは比などの情報は利用しない。したがって、媒体に入射された光量の絶対値を定量あるいは推定するという実用化に際する困難な問題が解決される。【0112】本発明による計測方法及び装置には、時間領域で解析する方法と、周波数領域で解析する方法の2つの方法がある。前者では、差演算法を適用することによって、リアルタイム計測が可能になる。また、後者では、3種類の変調周波数を用いることによって、リアルタイム計測が可能になる。【0113】このような方法は,形状や境界条件、媒体寸法、散乱特性、光入射・検出位置間距離、透過反射などの計測形態などに依存しない計測ができるという大きな特長を合わせもつことになる。以上から、本発明による散乱吸収体の内部情報の計測方法及び装置は、生体内の種々の生理機能物質を非侵襲かつリアルタイムで簡便に計測する装置に広く応用されるものと期待される。【図面の簡単な説明】【図1】散乱係数が異なるときの光路長平均と吸収係数との関係を示すグラフである。【図2】本発明による散乱吸収体の内部情報の計測装置の一実施形態を示す模式図である。【図3】図2に示した装置の好適な具体的構成の一例を示す模式図である。【図4】本発明による散乱吸収体の内部情報の計測方法の一実施形態を示すフローチャートである。【図5】本発明による散乱吸収体の内部情報の計測方法の他の実施形態を示すフローチャートである。【図6】本発明による散乱吸収体の内部情報の計測装置の他の実施形態を示す模式図である。【図7】図6に示した装置の好適な具体的構成の一例を示す模式図である。【図8】ヘモグロビンの吸収スペクトルを示すグラフである。【図9】ファントムの吸収係数と光路長平均との関係を示すグラフである。【符号の説明】1…散乱吸収体、1a…頭部、2…内部情報計測装置、3…光入射用光ガイド、4…波長選択器、5…光源、6…光検出用光ガイド、7…光検出器、8…信号処理部、9…演算処理部、10…容器、11…外部機器、12…ケーブル、13…コネクタ、21…CFD、22…TAC、23…ADコンバータ、30…CPU、40…プログラムメモリ、41…オペレーティングシステム、42…内部情報計測プログラム、50…データファイルメモリ、61…データメモリ、62…作業用メモリ、70…入力装置、71…キーボード、72…マウス、80…出力装置、81…ディスプレイ、82…プリンタ。 2種類以上の所定波長のパルス光を、ヒトを除く散乱吸収体中に光入射位置から入射する光入射ステップと、 前記散乱吸収体内部を伝播した前記2種類以上の所定波長の光を光検出位置で検出して光検出信号を取得する光検出ステップと、 前記光検出信号に基づいて、検出光の強度の時間変化を示す波形データを取得する信号処理ステップと、 前記波形データに基づいて、前記検出光を構成する複数光子の光路長平均と、分散とを演算する光路長平均及び分散演算ステップと、 前記光路長平均、前記分散、及び前記2種類以上の所定波長における吸収係数差の間に成立する所定の関係に基づいて、前記所定波長における前記吸収係数差を算出する吸収係数差算出ステップと、を含むことを特徴とする、散乱吸収体の内部情報の計測方法。 前記吸収係数差算出ステップは、前記2種類以上の所定波長における前記吸収係数差及び吸収成分の吸光係数差に基づいて、前記吸収成分の濃度をさらに算出することを特徴とする請求項1記載の散乱吸収体の内部情報の計測方法。 前記光路長平均及び分散演算ステップにおいて行われる前記演算は、前記光検出信号の光路長平均と分散、及び装置関数の光路長平均と分散、とを用いる演算であることを特徴とする請求項1記載の散乱吸収体の内部情報の計測方法。 前記吸収係数差算出ステップにおいて用いられる前記所定の関係は、マイクロ・ベア・ランバート則から導出される前記光路長平均、前記分散、及び前記2種類以上の所定波長における前記吸収係数差の関係であることを特徴とする請求項1記載の散乱吸収体の内部情報の計測方法。 前記光入射ステップにおいて用いられる前記パルス光は、n+1種類(ただし、nは1以上の整数)の前記所定波長の前記パルス光であり、 前記光検出ステップにおいて検出される前記光検出信号は、n+1種類の前記光検出信号であり、 前記信号処理ステップにおいて取得される前記波形データは、n+1種類の前記波形データであり、 前記光路長平均及び分散演算ステップにおいて演算される前記光路長平均及び前記分散は、n+1種類の前記光路長平均及び前記分散であり、 前記吸収係数差算出ステップにおいて算出される前記吸収係数差は、n+1種類の前記所定波長におけるn種類の前記吸収係数差であること、を特徴とする請求項1記載の散乱吸収体の内部情報の計測方法。 前記吸収係数差算出ステップは、n+1種類の前記所定波長におけるn種類の前記吸収係数差及びn種類の吸収成分の吸光係数差に基づいてn種類の前記吸収成分の濃度をさらに算出することを特徴とする請求項5記載の散乱吸収体の内部情報の計測方法。 所定周波数で変調された2種類以上の所定波長の変調光を、ヒトを除く散乱吸収体中に光入射位置から入射する光入射ステップと、 前記散乱吸収体内部を伝播した前記2種類以上の所定波長の光を光検出位置で検出して光検出信号を取得する光検出ステップと、 前記光検出信号から前記所定周波数成分の信号を抽出する信号処理ステップと、 前記所定周波数成分の信号に基づいて、前記所定周波数成分の信号の群遅延と、振幅の対数の変調周波数に対する2階偏微分値とを演算する群遅延及び振幅の対数の2階偏微分値演算ステップと、 前記群遅延、前記振幅の対数の変調周波数に対する2階偏微分値、及び前記2種類以上の所定波長における吸収係数差の間に成立する所定の関係に基づいて、前記所定波長における前記吸収係数差を算出する吸収係数差算出ステップと、を含むことを特徴とする、散乱吸収体の内部情報の計測方法。 前記吸収係数差算出ステップは、前記2種類以上の所定波長における前記吸収係数差及び吸収成分の吸光係数差に基づいて、前記吸収成分の濃度をさらに算出することを特徴とする請求項7記載の散乱吸収体の内部情報の計測方法。 前記吸収係数差算出ステップにおいて用いられる前記所定の関係は、マイクロ・ベア・ランバート則から導出される前記群遅延、前記振幅の対数の変調周波数に対する2階偏微分値、及び前記2種類以上の所定波長における前記吸収係数差の関係であることを特徴とする請求項7記載の散乱吸収体の内部情報の計測方法。 前記光入射ステップにおいて用いられる前記変調光は、n+1種類(ただし、nは1以上の整数)の前記所定波長の前記変調光であり、 前記光検出ステップにおいて検出される前記光検出信号は、n+1種類の前記光検出信号であり、 前記信号処理ステップにおいて抽出される前記所定周波数成分の信号は、n+1種類の前記所定周波数成分の信号であり、 前記群遅延及び振幅の対数の2階偏微分値演算ステップにおいて演算される前記群遅延及び前記振幅の対数の変調周波数に対する2階偏微分値は、n+1種類の前記群遅延及び前記振幅の対数の変調周波数に対する2階偏微分値であり、 前記吸収係数差算出ステップにおいて算出される前記吸収係数差は、n+1種類の前記所定波長におけるn種類の前記吸収係数差であること、を特徴とする請求項7記載の散乱吸収体の内部情報の計測方法。 前記吸収係数差算出ステップは、n+1種類の前記所定波長におけるn種類の前記吸収係数差及びn種類の吸収成分の吸光係数差に基づいてn種類の前記吸収成分の濃度をさらに算出することを特徴とする請求項10記載の散乱吸収体の内部情報の計測方法。 2種類以上の所定波長のパルス光を散乱吸収体中に光入射位置から入射する光入射手段と、 前記散乱吸収体内部を伝播した前記2種類以上の所定波長の光を光検出位置で検出して光検出信号を取得する光検出手段と、 前記光検出信号に基づいて、検出光の強度の時間変化を示す波形データを取得する信号処理手段と、 前記波形データに基づいて、前記検出光を構成する複数光子の光路長平均と、分散とを演算する光路長平均及び分散演算手段と、 前記光路長平均、前記分散、及び前記2種類以上の所定波長における吸収係数差の間に成立する所定の関係に基づいて、前記所定波長における前記吸収係数差を算出する吸収係数差算出手段と、を備えることを特徴とする、散乱吸収体の内部情報の計測装置。 前記吸収係数差算出手段は、前記2種類以上の所定波長における前記吸収係数差及び吸収成分の吸光係数差に基づいて、前記吸収成分の濃度をさらに算出することを特徴とする請求項12記載の散乱吸収体の内部情報の計測装置。 前記光路長平均及び分散演算手段において行われる前記演算は、前記光検出信号の光路長平均と分散、及び装置関数の光路長平均と分散、とを用いる演算であることを特徴とする請求項12記載の散乱吸収体の内部情報の計測装置。 前記吸収係数差算出手段において用いられる前記所定の関係は、マイクロ・ベア・ランバート則から導出される前記光路長平均、前記分散、及び前記2種類以上の所定波長における前記吸収係数差の関係であることを特徴とする請求項12記載の散乱吸収体の内部情報の計測装置。 前記光入射手段において用いられる前記パルス光は、n+1種類(ただし、nは1以上の整数)の前記所定波長の前記パルス光であり、 前記光検出手段において検出される前記光検出信号は、n+1種類の前記光検出信号であり、 前記信号処理手段において取得される前記波形データは、n+1種類の前記波形データであり、 前記光路長平均及び分散演算手段において演算される前記光路長平均及び前記分散は、n+1種類の前記光路長平均及び前記分散であり、 前記吸収係数差算出手段において算出される前記吸収係数差は、n+1種類の前記所定波長におけるn種類の前記吸収係数差であること、を特徴とする請求項12記載の散乱吸収体の内部情報の計測装置。 前記吸収係数差算出手段は、n+1種類の前記所定波長におけるn種類の前記吸収係数差及びn種類の吸収成分の吸光係数差に基づいてn種類の前記吸収成分の濃度をさらに算出することを特徴とする請求項16記載の散乱吸収体の内部情報の計測装置。 所定周波数で変調された2種類以上の所定波長の変調光を散乱吸収体中に光入射位置から入射する光入射手段と、 前記散乱吸収体内部を伝播した前記2種類以上の所定波長の光を光検出位置で検出して光検出信号を取得する光検出手段と、 前記光検出信号から前記所定周波数成分の信号を抽出する信号処理手段と、 前記所定周波数成分の信号に基づいて、前記所定周波数成分の信号の群遅延と、振幅の対数の変調周波数に対する2階偏微分値とを演算する群遅延及び振幅の対数の2階偏微分値演算手段と、 前記群遅延、前記振幅の対数の変調周波数に対する2階偏微分値、及び前記2種類以上の所定波長における吸収係数差の間に成立する所定の関係に基づいて、前記所定波長における前記吸収係数差を算出する吸収係数差算出手段と、を含むことを特徴とする、散乱吸収体の内部情報の計測装置。 前記吸収係数差算出手段は、前記2種類以上の所定波長における前記吸収係数差及び吸収成分の吸光係数差に基づいて、前記吸収成分の濃度をさらに算出することを特徴とする請求項18記載の散乱吸収体の内部情報の計測装置。 前記吸収係数差算出手段において用いられる前記所定の関係は、マイクロ・ベア・ランバート則から導出される前記群遅延、前記振幅の対数の変調周波数に対する2階偏微分値、及び前記2種類以上の所定波長における前記吸収係数差の関係であることを特徴とする請求項18記載の散乱吸収体の内部情報の計測装置。 前記光入射手段において用いられる前記変調光は、n+1種類(ただし、nは1以上の整数)の前記所定波長の前記変調光であり、 前記光検出手段において検出される前記光検出信号は、n+1種類の前記光検出信号であり、 前記信号処理手段において抽出される前記所定周波数成分の信号は、n+1種類の前記所定周波数成分の信号であり、 前記群遅延及び振幅の対数の2階偏微分値演算手段において演算される前記群遅延及び前記振幅の対数の変調周波数に対する2階偏微分値は、n+1種類の前記群遅延及び前記振幅の対数の変調周波数に対する2階偏微分値であり、 前記吸収係数差算出手段において算出される前記吸収係数差は、n+1種類の前記所定波長におけるn種類の前記吸収係数差であること、を特徴とする請求項18記載の散乱吸収体の内部情報の計測装置。 前記吸収係数差算出手段は、n+1種類の前記所定波長におけるn種類の前記吸収係数差及びn種類の吸収成分の吸光係数差に基づいてn種類の前記吸収成分の濃度をさらに算出することを特徴とする請求項21記載の散乱吸収体の内部情報の計測装置。


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