タイトル: | 特許公報(B2)_アリルエーテル誘導体およびその製法並びに重合体 |
出願番号: | 1998279615 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07C 69/734,C07C 67/347,C08F 20/28,G03F 7/039 |
長野 英明 中 昭夫 JP 4274603 特許公報(B2) 20090313 1998279615 19981001 アリルエーテル誘導体およびその製法並びに重合体 株式会社日本触媒 000004628 特許業務法人 安富国際特許事務所 110000914 長野 英明 中 昭夫 JP 1997271061 19971003 20090610 C07C 69/734 20060101AFI20090521BHJP C07C 67/347 20060101ALI20090521BHJP C08F 20/28 20060101ALI20090521BHJP G03F 7/039 20060101ALI20090521BHJP JPC07C69/734 ZC07C67/347C08F20/28G03F7/039 601 C07C 67/347 C07C 69/734 CA(STN) REGISTRY(STN) 特開平10−017623(JP,A) 特開平08−295733(JP,A) Journal of Organometallic Chemistry,1990年,Vol.384,p.1−11 6 1999171836 19990629 14 20050526 野口 勝彦 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、新規なアリルエーテル誘導体およびその製法、並びに新規なアリルエーテル系重合体に関するものである。【0002】本発明のアリルエーテル誘導体およびアリルエーテル系重合体は、レジスト用材料、低収縮化材料等の各種材料に有用である。【0003】【従来の技術】ヒドロキシル基を有する化合物とオレフィン類とを反応させてエーテル化合物を製造する方法は公知である。例えば、エチレングリコールとジシクロペンタジエンとを反応させると、下記式(化4)に示すジシクロペンテンオキシエタノールが得られることが、特開昭54−36242号公報等に開示されている。【0004】【化4】【0005】また、イソブテンとメタノールとのエーテル化の製造方法については、特開平9−104650号公報等に開示されている。【0006】しかしながら、ヒドロキシ基を有している化合物とはいえ、性状が特異的であるオキシアクリル酸エステルに、オレフィン類を反応させて相当するエーテル化合物を製造する方法については知られていない。【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明は、種々の用途に利用され得る、新規なアリルエーテル類、その製造方法およびに新規なアリールエーテル系重合体を提供することを目的とする。【0008】【課題を解決するための手段】本願発明者等は、新規なアリルエーテル誘導体を提供すべく鋭意検討した結果、オキシアクリル酸エステル類とオレフィン類とを反応させることにより上記アリルエーテル誘導体が得られることを見い出して、本発明を完成させるに至った。【0009】即ち、本発明は、一般式(1):【0010】【化5】【0011】(式中、R1は水素原子または有機残基を表し、R2は酸触媒による易脱離性基を表し、R3は水素原子、有機残基または対イオンを表す。)で表わされるアリルエーテル誘導体に関する。【0012】前記アリルエーテル誘導体は、例えば、前記一般式(1)において、R1は水素原子であり、R2は炭素数5〜20の脂環式炭化水素基であり、R3は炭素数1〜8のアルキル基で表わされるアリルエーテル誘導体が挙げられる。【0013】本発明の他の発明は、下記一般式(2):【0014】【化6】【0015】(式中、R1は水素原子または有機残基を表し、R3は水素、有機残基または対イオンを表す。)で表されるオキシアクリル酸エステル化合物と、オレフィン類とを反応させることを特徴とするアリルエーテル誘導体の製法に関する。【0016】前記オレフィン類としては、例えば、反応して酸触媒による易脱離性基を生成するオレフィンが挙げられる。【0017】また前記オレフィン類が、炭素数5〜20の脂環式炭化水素基を有するオレフィンが挙げられる。【0018】また本発明の他の発明は、下記一般式(3):【0019】【化7】【0020】(式中、R1は水素原子または有機残基を表し、R2は酸触媒による易脱離性基を表し、R3は水素、有機残基または対イオンを表す。)で表わされる構造単位を有する数平均分子量1,000〜1,000,000のアリルエーテル系重合体に関する。【0021】前記アリルエーテル系重合体は、例えば、前記一般式(3)において、R1は水素原子であり、R2は炭素数5〜20の脂環式炭化水素基であり、R3は炭素数1〜8のアルキル基で表わされるアリルエーテル系重合体が挙げられる。【0022】【発明の実施の形態】以下に本発明を詳しく説明する。【0023】本発明にかかるアリルエーテル誘導体は、前記一般式(1)で表される化合物で特に限定されるものではない。一般式(1)中、R1で示される基は、水素原子または有機残基で、R2で示される基は、酸触媒による易脱離性基で、かつ、R3で示される基が水素原子、有機残基または対イオンである。【0024】一般式(1)中のでR1示される基としては、例えば、水素原子、炭素数1〜18の直鎖状もしくは分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、アリール基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基、ナトリウム塩、カリウム塩、またはアンモニウム塩が挙げられる。【0025】一般式(1)中のR2で示される酸触媒による易脱離性基としては、プロトン酸を発生する一般的な酸触媒の存在下に温和な条件で加熱する等により簡単に脱離してしまう基を言い、具体的にはt−ブチル基、イソプロピル基等の分枝状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、3−オキソシクロヘキシル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−ブトキシエチル基、イソボルニル基、メチルアダマンチル基等の官能基や、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環等の脂環式骨格が一般式CnH2n(nは3以上の整数)で表される環状シクロ環残基や、これらに橋かけ炭化水素が導入されたスピロヘプタン、スピロオクタンなどのスピロ環、ノルボルニル環、アダマンチル環、ボルネン環、メンチル環、メンタン環などのテルペン環、ツジャン、サビネン、ツジョン、カラン、カレン、ピナン、ノルピナン、ボルナン、フェンカン、トリシクレン、コレステリック環などのステロイド骨格、胆汁酸、ジギタロイド類、ショウノウ環、イソショウノウ環、セスキテルペン環、サントン環、ジテルペン環、トリテルペン環、ステロイドサポニン類等の多環状シクロ化合物を挙げることができ、それぞれ水酸基、カルボキシル基、炭素数1から4のアルキル基、ヒドロキシアルキル基およびカルボキシアルキル基で置換されていても差し支えない。【0026】一般式(1)中のR3で示される基としては、水素、有機残基または対イオンであり、例えば水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、t−ブチル基、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、3−オキソシクロヘキシル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−ブトキシエチル基、イソボルニル基、メチルアダマンチル基、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環やこれらに橋かけ炭化水素が導入されたもの、スピロヘプタン、スピロオクタンなどのスピロ環、ノルボルニル環、アダマンチル環、ボルネン環、メンチル環、メンタン環などのテルペン環、ツジャン、サビネン、ツジョン、カラン、カレン、ピナン、ノルピナン、ボルナン、フェンカン、トリシクレン、コレステリック環などのステロイド骨格、胆汁酸、ジギタロイド類、ショウノウ環、イソショウノウ環、セスキテルペン環、サントン環、ジテルペン環、トリテルペン環、ステロイドサポニン類、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基、対イオンとしてナトリウム塩、カリウム塩、またはアンモニウム塩が挙げられる。上記有機残基は、水酸基、カルボキシル基、炭素数1から4のアルキル基、ヒドロキシアルキル基およびカルボキシアルキル基で置換されていても差しつかえない。また、特に前記一般式(1)におけるアリールエーテル誘導体としては、特にR1が水素原子であり、R2で示される基が、シクロペンタン基、シクロペンテン基、シクロヘキシル基、シクロヘキセン基、イソボルニル基等の炭素数5〜20の脂環式炭化水素残基、さらには炭素数6〜20のシクロアルキル基またはシクロアルキレン基であり、R3で示される基が炭素数1〜8のアルキル基、さらには炭素数1〜4のアルキル基である化合物が有用である。【0027】本発明にかかる前記アリールエーテル誘導体は、例えば、後記の本発明のアリールエーテル誘導体の製法により、収率よく製造できる。【0028】本発明のアリールエーテル誘導体の製法は、前記一般式(2)で表されるオキシアクリル酸化合物と、オレフィン類とを反応させることを特徴とする。【0029】前記一般式(2)で表されるオキシアクリル酸エステル類は特に限定されるものではないが、一般式(2)中、R1で示される基が水素原子または有機残基で構成され、かつ、R3で示される置換基が有機残基で構成される化合物である。上記R1で示される基としては、例えば炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基を示す。上記R3で示される基としては、例えば炭素数1〜18の直鎖状、枝分かれ鎖状、若しくは環状のアルキル基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基、アリール基を示す。【0030】前記一般式(2)で表されるオキシアクリル酸化合物としては、具体的には、例えば、メチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、ブチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、2−エチルヘキシル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、メチル−α−1−ヒドロキシエチルアクリレート、エチル−α−1−ヒドロキシエチルアクリレート、ブチル−α−1−ヒドロキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシル−α−1−ヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられる。これらオキシアクリル酸エステル系化合物は、一種類のみ用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合してもよい。上記例示の化合物のうち、メチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、ブチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、2−エチルヘキシル−α−ヒドロキシメチルアクリレートが重合性に優れるので好ましい。尚、上記オキシアクリル酸エステル系化合物は、従来公知の方法、例えば、相当するアクリル酸エステルとアルデヒド化合物とを塩基性触媒の存在下で反応させることにより、容易に得ることができる。【0031】前記オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、ブタジエン等の炭素数4〜20の鎖状オレフィン類;シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロペンタジエン等のシクロオレフィン類;ノルボルニレン、ビシクロ[2,2,1]ヘプタ−2−エン、ビシクロ[2,2,1]ヘプタ−2,5−ジエン、5−ノルボルネン−2−メタノール、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン、ビシクロ[2,2,2]オクト−2,5−ジエン、ビシクロノナジエン、ジシクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンダイマー、ビシクロペンタジエンアセテート、2−メチレンアダマンタン等の多環式シクロオレフィン類;カンフェン、ターピネオール、ターピネン−4−オール、α−ターピネン、γ−ターピネン等のオレフィンテルペン類;アリルアルコール、クロチルアルコール、アリルカルビノール等のオレフィンアルコール類;アクロレイン、メタクロレイン、クロトンアルデヒド等のオレフィンアルデヒド類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、コハク酸等のオレフィンカルボン酸;アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、クロトン酸エステル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル等のオレフィンカルボン酸エステル類;メチルビニルケトン、エチリデンアセトン、メシチルオキシド等のオレフィンケトン類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらオレフィン類は、アルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子等で置換されたものであっても良い。これらオレフィン類は一種類のみ用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合してもよい。【0032】前記のオレフィン類の中でも、炭素数4〜20の脂環式オレフィン類が好ましく、さらにはシクロペンテン、シクロヘキセン、イソボルネン、カンフェン等の炭素数4〜20のシクロオレフィン類が好ましい。【0033】また、前記オレフィン類は、前記オキシアクリル酸化合物との反応後に酸触媒による易脱離性基となるオレフィンは、反応して得られたアリルエーテル誘導体が、前記易脱離性基が酸触媒により脱離することにより、極性が変化するのでその特性を生かす用途の材料として好ましい。具体的には、イソブチレン、シクロヘキセン、カンフェン、メチレンアダマンタン等のオレフィンが挙げられる。【0034】前記オキシアクリル酸エステル類と前記オレフィン類との反応方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の種々の方法(つまり、ヒドロキシル基を有する化合物とオレフィンとを反応させてエーテルを製造する従来公知の方法)を転用することができるが、これら反応方法のうち、例えば、オキシアクリル酸エステル類とオレフィン類とを加温して反応させる方法が好適である。【0035】前記オキシアクリル酸エステル類に対する前記オレフィン類の添加量は、オキシアクリル酸エステル1モルに対し、オレフィン類を0.01〜100モルの範囲とすればよい。オレフィン類の添加量が0.01モルより少ない場合には、反応後に残る未反応のオキシアクリル酸エステルが多くなる場合があり、また、オレフィン類の添加量が100モルより多い場合には、反応後に残る未反応のオレフィン類が多くなる場合がある。【0036】上記の反応を行う際の反応条件は、特に限定されるものではないが、原料であるオキシアクリル酸エステル、並びに、生成物であるアリルエーテル誘導体は、分子中にビニル基を含有しているので、重合しやすい性質を有している。従って、オキシアクリル酸エステルやアリルエーテルの重合を抑制するために、反応系に重合防止剤(または重合禁止剤)および/または分子状酸素を添加することが好ましい。【0037】前記重合防止剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン、メチルヒドロキノン、t−ブチルヒドキノン、ジ−t−ブチルヒドロキノン、t−ブチルカテコール、フェノチアジン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら重合防止剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合してもよい。また、前記重合防止剤の添加量は、特に限定されるものではないが、例えば、得られるアクリル酸エステルに対する割合が、0.001重量%〜10重量%の範囲内となるようにすればよい。【0038】前記分子状酸素としては、例えば、空気を用いることができる。この場合、反応系、つまり、オキシアクリル酸とオレフィンの混合液中に空気を吹き込む(いわゆる、バブリング)ようにすればよい。そして、上記重合を充分に抑制するために、重合防止剤と分子状酸素とを併用することが好ましい。【0039】上記の反応を行う際には触媒を用いても良く、該触媒としてはヒドロキシル基とオレフィンとの反応に用いられる公知の触媒が使用できる。例えば、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸等のヘテロポリ酸、強酸性イオン交換樹脂等のプロトン酸およびそれらの部分金属塩および3弗化ホウ素エチルエーテル錯体等のルイス酸等が挙げられる。前記触媒を使用する場合の使用量としては、使用されるオキシアクリル酸エステルに対し50重量%以下、好ましくは30重量%以下が好ましい。使用量が多いと経済的に有利ではない。【0040】上記の反応を行う際には、溶媒は特に用いる必要は無いが、使用しても差し支えない。使用される溶媒としては、反応を阻害しない溶媒であれば良いが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤やn−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族系溶剤が好適に使用される。【0041】上記の反応を行う際の反応温度は、特に限定されるものではないが、前記した重合を抑制するために、0℃〜150℃の範囲内が好ましく、30〜120℃の範囲内が特に好ましい。反応温度が0℃よりも低い場合には、反応時間が長く成り過ぎ、アリルエーテルを効率的に製造することができなくなる場合があり、また、反応温度が150℃よりも高い場合には、前記した重合を抑制することができなくなる場合がある。【0042】上記の反応を行う際の反応時間は、上記反応が完結するように、反応温度やオキシアクリル酸系化合物およびオレフィンの種類や組み合わせ、使用量等に応じて、適宜設定すればよい。【0043】また、上記の反応を行う際の反応圧力は、特に限定されるものではなく、常圧(大気圧)、減圧、加圧の何れであってもよい。【0044】上記の反応終了後、触媒を使用した場合は所定の方法によって反応系から触媒を除去することにより、所望するアクリル酸エステル誘導体が容易に得られる。尚、触媒の除去方法は、特に限定されるものではない。例えば、水洗する方法;アルカリ水溶液で洗浄する方法;酸吸着剤を添加し、吸着剤に反応溶液中の触媒を吸着させて不溶物を形成し、次いで、反応溶液の濾過等を行う方法等により、触媒を除去することができる。【0045】触媒除去の後、未反応原料中の中から目的物を取り出す方法としては、特に限定されるものではないが、蒸留による方法、抽出による方法、カラムによる分離などの方法が採用される。【0046】本発明にかかる前記一般式(3)で示される構造単位を有するアリールエーテル系重合体は、特に限定されるものではないが、これら式中、R1で示される基が水素原子または有機残基であり、R2で示される基が有機残基であり、かつ、上記R3で示される基が水素原子、有機残基または対イオンである重合体である。【0047】特に前記アリールエーテル系重合体としては、R1が水素原子であり、R2で示される基が、炭素数5〜20の脂環式炭化水素残基、さらには炭素数6〜20のシクロアルキル基またはシクロアルキレン基であり、R3で示される基が炭素数1〜8のアルキル基、さらには炭素数1〜4のアルキル基である重合体が有用である。【0048】前記アリールエーテル系重合体の数平均分子量は、1,000〜1,000,000の範囲である。特に、数平均分子量5,000〜500,000のアリルエーテル系重合体は、通常のラジカル重合により容易に得られると共に、取り扱い易いので有用である。【0049】本発明にかかるアリルエーテル系重合体は、前記一般式(1)で表わされるアリルエーテル誘導体を単独で重合させるか、或いは、前記アリルエーテル誘導体と共重合可能な他の単量体とを共重合させる等により、容易に製造される。【0050】前記アリールエーテル誘導体と共重合可能な単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸およびそのエステル類、スチレン、α−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−tert−ブトキシスチレン等のスチレン系化合物;(メタ)アクリロニトリル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸およびそのエステル類、5−ノルボルネン−2−カルボン酸およびそのエステル類、無水−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸およびそのエステル、5−ノルボルネン−2−メタノール、無水マレイン酸およびそのエステル類、マレイミド類等が挙げられる。【0051】前記アリルエーテル系重合体の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、過酸化物やアゾ化合物などのラジカル重合開始剤等の重合開始剤を用いる重合方法;イオン化放射線、電子線等の放射線や紫外線を照射する重合方法;加熱による重合方法等、従来公知の種々の方法を採用することができる。【0052】本発明にかかるアリルエーテル系重合体を構成する前記一般式(4)で示される構造単位以外の構造単位は、特に限定されるものではない。また、共重合体の使用量や種類、即ち、アリルエーテル誘導体と共重合体との構造単位の比率は、特に限定されるものではない。【0053】本発明のアリルエーテル系重合体を重合反応で製造する際の重合開始剤としては、例えば、過酸化物;2、2’−アゾビスイソビチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。【0054】本発明のアリルエーテル系重合体の重合度は、数平均分子量が1000〜1,000,000の範囲内となるような重合度が好ましい。尚、上記の重合反応は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。【0055】【発明の効果】本発明にかかる前記一般式(1)で表されるアリルエーテル誘導体は、例えば、前記一般式(2)で表されるオキシアクリル酸エステル類と、オレフィン類とを反応させることにより容易に得られる。【0056】本発明の他の発明にかかる前記一般式(3)で表されるアリルエーテル系重合体は、例えば、前記一般式(1)で表されるアリルエーテル誘導体を重合させることにより容易に得られる。【0057】前記アリルエーテル誘導体およびアリルエーテル系重合体は、 例えば、エッチングレジスト、フォトレジスト等のレジスト用材料、低収縮化材料等の各種材料に有用である。【0058】【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。【0059】なお、生成物の同定は、1H−NMR、13C−NMRおよびIRで行なった。【0060】実施例1撹拌機、温度計およびガス吹き込み管を備えた500mlの反応容器に、(+)−カンフェン(トリシクレン20%含有品)425.8g、触媒としてリンタングステン酸13.8g、重合防止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.046gを仕込んだ。反応液の温度を50℃とし、攪拌しながら、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル130gを1時間かけて滴下した。さらに30分間、50℃で熟成し反応を完結させた。【0061】この液に溶媒としてシクロヘキサン300g、酸吸着剤としてキョウーワード1000(協和化学社製)47gを入れ、50℃2時間保持をすることにより、触媒を吸着させた。この液を吸引ろ過して淡黄色透明液体720gを得た。さらに、溶媒であるシクロヘキサンを蒸発除去後、過剰のカンフェン及びカンフェンの不純物であるトリシクレンを、10torrの減圧下内温100℃で留去することにより、アリルエーテル誘導体を得た。得られたアリルエーテル誘導体は、NMR分析の結果、エチル(α−イソボルニルオキシメチル)アクリレートと特定された。該アリルエーテル誘導体の1H−NMRを図1に、13C−NMRスペクトルを図2に示す。【0062】実施例2撹拌機、温度計およびガス吹き込み管を備えた500mlの反応容器に、(+)−カンフェン(トリシクレン20%含有品)324.4g、触媒としてリンタングステン酸12g、重合防止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.046gを仕込んだ。反応液の温度を50℃とし、攪拌しながらα−ヒドロキシメチルアクリル酸−ter−ブチル140gを1時間かけて滴下した。さらに30分間50℃で熟成し反応を完結させた。【0063】この反応後の液に、溶媒としてシクロヘキサン300g、酸吸着剤としてキョウーワード1000(協和化学社製)47gを入れ、50℃2時間保持をすることにより触媒を吸着させた。この液を吸引ろ過して淡黄色透明液体720gを得た。さらに、溶媒であるシクロヘキサンを蒸発除去後、過剰のカンフェン及びカンフェンの不純物であるトリシクレンを、10torrの減圧下内温100℃で留去することにより、アリルエーテル誘導体を得た。得られたアリルエーテル誘導体は、NMR分析の結果、ter−ブチル(α−イソボルニルオキシメチル)アクリレートを含むと分析された。【0064】実施例3攪拌機、温度計、滴下ロートおよびガス吹き込み管を備えた50mLの反応容器に、実施例1で得られたアリルエーテル誘導体3g、およびメタクリル酸0.929gを入れ、窒素雰囲気下で65℃に加温した。さらに実施例1で得られたアリルエーテル0.62gに、重合開始剤としての2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.0337gを溶解させた溶液を入れ、65℃で前記アリルエーテル誘導体の重合反応を行った。5分後、さらに実施例1で得られたアリルエーテル誘導体8.44g、およびメタクリル酸0.68gの混合溶液に、重合開始剤としての2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.0786gを溶解させた溶液を10分かけて滴下した。その後、65℃で3時間重合反応を行い重合体を得た。さらに得られた重合体のうち4gを、80mLのエタノールに溶解し、800mLのヘキサンを用いて再沈させ精製を行い、1.6gのアリルエーテル系重合体を得た。GPC分析により数平均分子量11,300(標準スチレン換算)、Mn/Mw=2.84であった。【0065】GC(ガスクロマトグラフィー)分析により、アリルエーテル系重合体の組成は、エチル(α−イソボルニルオキシメチル)アクリレート: 18.4mol%メタクリレート : 37.9mol%であった。【0066】実施例4攪拌機、温度計、滴下ロートおよびガス吹き込み管を備えた50mLの反応容器に、実施例2で得られたアリルエーテル誘導体5.94g、溶媒としてのエチルアルコール1.54gを入れ、窒素雰囲気下で65℃に加温した。さらに共重合成分としてt−ブチルメタクリレート0.395g、メタクリル酸0.48g、および重合開始剤としての2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.0552g、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.0107gを入れ、65℃で該アクリル酸エステル誘導体の重合反応を行った。2時間後、反応温度を80℃に上げ更に2時間反応を行い重合体を得た。さらに得られた重合体のうち2.29gを10mLのトルエンに溶解し、200mLのヘキサンを用いて再沈させ精製を行い0.72gのアリルエーテル系重合体を得た。【0067】該重合体の数平均分子量は、GPC分析により、6,000(標準スチレン換算)、Mn/Mw=1.87であった。【0068】該重合体の組成は、GC分析の結果、(α−イソボルニルオキシメチル)アクリレート:18.4mol%t−ブチル(α−イソボルニルオキシメチル)アクリレート:10.0mol%イソボルニル(α−イソボルニルオキシメチル)アクリレート:14.2mol%t−ブチルメタクリレート:19.5mol%メタクリレート:37.9mol%得られた重合体の1H−NMRを図3に、赤外吸収スペクトルを図4に示す。【図面の簡単な説明】【図1】実施例1で得られたアリールエーテル誘導体の1H−NMRチャート図である。【図2】実施例1で得られたアリールエーテル誘導体の13C−NMRチャート図である。【図3】実施例3で得られたアリールエーテル系重合体の1H−NMRチャート図である。【図4】実施例3で得られたアリールエーテル系重合体の赤外吸収スペクトルチャート図である。 下記一般式(1):(式中、R1は水素原子、炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、アリール基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、または、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基を表す。R2は酸触媒による易脱離性基であり、分枝状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、3−オキソシクロヘキシル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−ブトキシエチル基、イソボルニル基、メチルアダマンチル基、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、これらの環に橋かけ炭化水素が導入されたスピロヘプタン環、スピロオクタン環若しくはテルペン環、ショウノウ環、イソショウノウ環、セスキテルペン環、サントン環、ジテルペン環、トリテルペン環、または、ステロイドサポニン環を表す。なお、R2で表される基は、水酸基、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはカルボキシアルキル基で置換されていてもよい。R3は水素原子、有機残基または対イオンを表し、有機残基は、炭素数1〜8のアルキル基、t−ブチル基、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、3−オキソシクロヘキシル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−ブトキシエチル基、イソボルニル基、メチルアダマンチル基、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、これらの環に橋かけ炭化水素が導入されたスピロヘプタン環、スピロオクタン環若しくはテルペン環、ショウノウ環、イソショウノウ環、セスキテルペン環、サントン環、ジテルペン環、トリテルペン環、ステロイドサポニン環、または、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基であり、対イオンは、ナトリウム塩、カリウム塩、または、アンモニウム塩である。なお、R3で表される有機残基は、水酸基、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはカルボキシアルキル基で置換されていてもよい。)で表されることを特徴とするアリルエーテル誘導体。 前記一般式(1)において、R1は水素原子であり、R2は炭素数5〜20の脂環式炭化水素基であり、R3は炭素数1〜8のアルキル基で表わされることを特徴とする請求項1記載のアリルエーテル誘導体。 下記一般式(2):(式中、R1は水素原子、炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、アリール基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、または、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基を表す。R3は水素原子、有機残基または対イオンを表し、有機残基は、炭素数1〜8のアルキル基、t−ブチル基、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、3−オキソシクロヘキシル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−ブトキシエチル基、イソボルニル基、メチルアダマンチル基、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、これらの環に橋かけ炭化水素が導入されたスピロヘプタン環、スピロオクタン環若しくはテルペン環、ショウノウ環、イソショウノウ環、セスキテルペン環、サントン環、ジテルペン環、トリテルペン環、ステロイドサポニン環、または、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基であり、対イオンは、ナトリウム塩、カリウム塩、または、アンモニウム塩である。なお、R3で表される有機残基は、水酸基、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはカルボキシアルキル基で置換されていてもよい。)で表されるオキシアクリル酸化合物と、オレフィン類とを反応させるアリルエーテル誘導体の製法であって、該オレフィン類は、炭素数4〜20の鎖状オレフィン、炭素数4〜20のシクロオレフィン、ノルボルニレン、ビシクロ[2,2,1]ヘプタ−2−エン、ビシクロ[2,2,1]ヘプタ−2,5−ジエン、5−ノルボルネン−2−メタノール、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン、ビシクロ[2,2,2]オクト−2,5−ジエン、ビシクロノナジエン、ジシクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンダイマー、ビシクロペンタジエンアセテート、2−メチレンアダマンタン、カンフェン、ターピネオール、ターピネン−4−オール、α−ターピネン、および、γ−ターピネンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であって、かつ該オレフィン類はアルキル基、水酸基、カルボキシル基またはハロゲン原子で置換されていてもよいものであることを特徴とするアリルエーテル誘導体の製法。 前記オレフィン類が、反応して酸触媒による易脱離性基を生成するオレフィンであって、該オレフィンは、イソブチレン、シクロヘキセン、カンフェンまたはメチレンアダマンタンであることを特徴とする請求項3記載のアリルエーテル誘導体の製法。 前記オレフィン類が、炭素数4〜20のシクロオレフィンであることを特徴とする請求項3記載のアリルエーテル誘導体の製法。 下記一般式(3):(式中、R1は水素原子、炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、アリール基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、または、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基を表す。R2は酸触媒による易脱離性基であり、分枝状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、3−オキソシクロヘキシル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−ブトキシエチル基、イソボルニル基、メチルアダマンチル基、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、これらの環に橋かけ炭化水素が導入されたスピロヘプタン環、スピロオクタン環若しくはテルペン環、ショウノウ環、イソショウノウ環、セスキテルペン環、サントン環、ジテルペン環、トリテルペン環、または、ステロイドサポニン環を表す。なお、R2で表される基は、水酸基、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはカルボキシアルキル基で置換されていてもよい。R3は水素原子、有機残基または対イオンを表し、有機残基は、炭素数1〜8のアルキル基、t−ブチル基、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、3−オキソシクロヘキシル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−ブトキシエチル基、イソボルニル基、メチルアダマンチル基、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、これらの環に橋かけ炭化水素が導入されたスピロヘプタン環、スピロオクタン環若しくはテルペン環、ショウノウ環、イソショウノウ環、セスキテルペン環、サントン環、ジテルペン環、トリテルペン環、ステロイドサポニン環、または、炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基であり、対イオンは、ナトリウム塩、カリウム塩、または、アンモニウム塩である。なお、R3で表される有機残基は、水酸基、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはカルボキシアルキル基で置換されていてもよい。)で表される構造単位を有し、かつ数平均分子量1,000〜1,000,000であることを特徴とするアリルエーテル系重合体。