生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_高密度細胞培養法
出願番号:1998242533
年次:2007
IPC分類:C12N 5/06,C12M 1/00,C12M 1/22,C12M 3/00


特許情報キャッシュ

安本 茂 國村 忠司 JP 3921679 特許公報(B2) 20070302 1998242533 19980813 高密度細胞培養法 ニプロ株式会社 000135036 安本 茂 國村 忠司 20070530 C12N 5/06 20060101AFI20070510BHJP C12M 1/00 20060101ALN20070510BHJP C12M 1/22 20060101ALN20070510BHJP C12M 3/00 20060101ALN20070510BHJP JPC12N5/00 EC12M1/00 ZC12M1/22C12M3/00 A C12N 1/00-7/08 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS/CA(STN) JMEDPlus(JDream2) JST7580(JDream2) JSTPlus(JDream2) 特開平03−247276(JP,A) 特表平07−505620(JP,A) 特開平10−174581(JP,A) 4 2000060542 20000229 7 20030221 六笠 紀子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は接着性細胞、特に上皮、表皮細胞を効率的で、かつ高密度に培養する高密度細胞培養法に関し、さらに詳細には接着性細胞の細胞懸濁ドロップレットを用いた高密度細胞培養法に関する。また、本発明は上記培養法により得られた高密度細胞シートに関する。【0002】【従来の技術】一般に研究室等で行われている細胞培養とは、培養皿等に満たしてある培地に細胞を散在的に蒔き、その後、個々の細胞を増殖させることによって行われる。増殖した細胞は、やがてコロニーを形成し、次第にそのコロニーは大きくなり、さらに増殖が進むとコロニー間で融合が起こり、最終的には培養皿一面を細胞が占めるようになる。このようなコンフルエントな状況が、無限増殖能を示す形質転換細胞や癌細胞の培養では一般的に見られる。しかし、増殖能力の低い、例えば分裂回数に限りがある正常細胞では、このようなコンフルエントな状態を作り出すためには、培養開始時に散在される細胞の数を増やす必要があり、そのために培養当初に多量の細胞が必要となる。【0003】従来から細胞を培養するには、細胞密度が低いときよりも細胞密度がある程度高くなったときの方が細胞の増殖速度が高くなることが、経験的に知られている。【0004】正常な接着性細胞が増殖するためには、培養容器などの表面に細胞が接着する必要がある。これを足場依存性とよぶ。また、一般的に用いられる培養法で、接着性細胞を培養する場合、培養開始時に散在された細胞の数は、約30%以下になるものもある。【0005】細胞培養の効率を上げる方法の1つに、予め調製されたコラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン等の細胞外接着物質を培養容器表面に被覆しておき、細胞をより接着しやすくする方法がある。しかしながら、多くの生体組織はヘテロな細胞集団で構成されており、すべての細胞がこれらの接着性物質に対する受容体を発現しているわけではない。したがって、これらの細胞外接着物質に対する接着効率は細胞間で異なる可能性があり、必ずしもすべての細胞で、接着効率よいとは言えない。また、場合によっては、所望の細胞培養に不利な点を生じることもある。【0006】【発明が解決しようとする課題】接着性細胞を浮遊状態にさせておくと、分化やアポトーシスが誘導される。これは結果として、細胞の接着効率を低下させ、ひいては培養効率の低下を招く。したがって、細胞の接着を迅速に行うことは、接着性細胞の培養を効率的に行うことに必須である。また、微量のサイトカイン類の効果検定に最適である。【0007】【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は細胞密度が1×102 〜1×104 個/μlである接着性細胞の懸濁液をドロップレットにして、培養容器上に設置し、培地を添加し、次いで該接着性細胞を培養することを特徴とする高密度細胞培養法である。【0008】また、本発明は上記高密度細胞培養法により培養された高密度細胞シートである。【0009】【発明の実施の形態】本発明において使用する接着性細胞とは、上皮細胞である。上皮細胞としては、ヒト表皮角化細胞、子宮上皮細胞、乳腺上皮細胞、角膜上皮細胞、血管内皮細胞、神経細胞などが例示される。本発明において培養する細胞の中には、幹細胞を含むものが好ましい。幹細胞を含む場合、それらの細胞を維持することができれば、さらに長期培養が可能である。本発明において培養する上皮細胞は、組織片をコラーゲンタイプI,IVを分解する酵素であるDispaseなどで処理することにより、分離した上皮層をさらにトリプシン−EDTAなどの溶液で処理することが好ましい。【0010】本発明において使用する幹細胞の一例としては、低親和性神経成長因子受容体、例えばNGFDP75 を発現している細胞がある。NGFDP75 は幹細胞が有する様々な特性、子宮や食道などの上皮組織の基底層に局所的に存在し、その数が上皮細胞集団の約1%以下であり、ごくゆっくり増殖しているか、あるいは休止しているなどの性質を有する。また、該細胞は抗NGFP75 抗体により、磁気ビーズやFACS(励起蛍光細胞分取法)などを用いて分離、同定が可能である。【0011】本発明において使用する培地としては、上記接着性細胞を培養する培地であれば、特に制限はなく、例えば、MCDB153培地、MCDB152培地、MCDB170培地、HamF12培地などが例示される。【0012】本発明において、ドロップレットとは、極微量の液滴のことである。ドロップレットを形成するには、通常、マイクロピペッター等の器具を使用することにより行う。ドロップレットの形状は、使用する器具により任意の形状が可能である。ドロップレットの量としては、好ましくは10〜50μlである。ドロップレットの数と形状を同時に制御することにより、時間的にも、より効率的で、より複雑な形状の高密度細胞シートの作製が可能となる。ドロップレットにより接着された細胞は、下記培養条件下で培養できる。【0013】本発明において、懸濁液中の接着性細胞は、細胞密度が1×102 〜1×104 個/μlである。細胞密度が1×102 個/μl未満であると、細胞同士の相互作用が弱くなり、培養効率が低下する。また、1×104 個/μlを越えると、細胞の接触阻害が生じ、培養効率が低下する。【0014】本発明における培養容器としては、培養皿、培養フラスコ、カバーグラス上などが例示される。【0015】本発明においてドロップレットが直接設置される培養容器は、前以て、別の培養容器で細胞培養を行い、細胞を除去した後、培養容器表面から回収された細胞外接着物質および細胞分泌物質がコートされているものが好ましい。本発明では、培養開始当初から局所的に比較的細胞密度の高い状況下で、接着性細胞を培養する。培養条件としては、37℃、100%湿度、5%炭酸ガスが好ましい。【0016】【実施例】次に本発明を実施例を用いて詳細に説明する。実施例1 ヒト皮膚角化細胞(形質変換細胞)の培養ヒト表皮ケラチノサイトをパピローマウイルス16DNAでトランスフェクションして作成されたPHK16Ob(Journal of Viorogy, Vol.65:2000-2009)5×105 個を下記組成を有する培地1mlに懸濁した。その懸濁液40μl(細胞2×104 個を含む)をマイクロピペッターを用いて、ドロップレットとして、直径5cmの培養皿の真ん中に設置し、炭酸ガス・インキュベーター内(37℃)で、24時間培養した。次いで、下記組成を有する培地4mlをさらに加え、2週間、37℃にて培養した。培地:MCDB153培地(ただしCa2+濃度は1mM)上皮細胞成長因子 最終濃度 5ng/mlインシュリン 最終濃度 5μg/mlヒドロコルチゾン 0.5μg/mlエタノールアミン 0.1mMホスホエタノールアミン 0.1mM0.5%透析された牛胎児血清【0017】エタノールで5分間、培養細胞を固定した後、ギザム染色液で染色した。培養開始から1日、5日、8日および14日後の染色した、それぞれの培養細胞を位相差顕微鏡を用いて40倍の倍率で撮影した。その結果を図1左欄に示す。図1中、右下の直線はスケールを示す。また、図1左欄、8日と14日の写真に見られる黒い帯場の部分は、細胞の広がりを記録するために設けられたサインペンのマークである。【0018】比較例1上記組成を有する培地4mlが入った5cmの培養皿に、実施例1と同様な形質変換細胞(PHK16Ob)2×104 個を散在的に蒔き、その後、24時間毎に培地を交換しながら、炭酸ガス・インキュベーターで、2週間培養した。実施例1と同様にして、該細胞をエタノールで5分間固定した後、ギザム染色液で染色した。その結果を図1右欄に示す。【0019】図1から明らかなように、細胞が増殖している領域で、単位面積当たりの細胞数を比較したところ、どの時間経過においても、本発明のドロップレット培養法の方が従来の培養法よりも細胞数が多い。また、従来の培養法では培養皿全体に分布しているが、隙間がかなり見られ、その密度はあまり高くないが、本発明のドロップレット培養法では細胞が増殖している領域では、ほとんど細胞間のすき間はなく、高密度に細胞が分布していることが明らかである。【0020】本発明のドロップレット培養法での培養時間の経過に伴う同心円状の細胞増殖を図2に示す。培養開始から2週間後の細胞の分布状態を図3に示す。左図は、本発明のドロップレット培養法、右図は従来の培養法である。【0021】実施例23種の培地を有する各培養皿に、4.2×105 個のパピローマウイルスで形質変換されたヒト皮膚角化細胞(PHKOb)を散在的に蒔き、5分または15分後にそれぞれ接着している細胞数を測定した。具体的には、接着していない細胞を回収して、その数を計測し、最初に蒔かれた細胞数から測定細胞数を差し引いて、接着している細胞数を計算した。使用した培養皿は、商品名、Non-coated dish (60mm dish Greiner) 、商品名、Collagen IV-coated dish(岩城硝子製) 、商品名、used-dish (Non-coated dishに一度、0.03mMのCa2+濃度でob細胞を18日間培養した後、0.1%トリプシン−0.1mM EDTA溶液で細胞を取り除いた後の培養皿)である。各培養皿の接着効率を下記表1に示す。【0022】【表1】【0023】【発明の効果】本発明の培養法では、ドロップレットを中心とした同心円状の細胞の増殖が起こり、効率的な細胞培養が可能となり、従来の培養法に比べて、効率的に高密度な細胞培養が可能となる。特にドロップレットに幹細胞が含まれれば、同心円状の細胞の広がりはさらに拡大する。したがって、細胞間の相互作用やある細胞が分泌する特定の物質の他の細胞への作用を可能とする。さらに、微量のドロップレットは培地等へ添加される成長因子などの栄養素の使用量を節約でき、また、極微量のサイトカイン類の効果判定に利用できる利点を有する。また、生体適合性物質および培地を有する担体から得られた高密度細胞シートは、火傷等の皮膚移植等の治療に利用可能である。【図面の簡単な説明】【図1】培養開始から時間経過に伴う細胞密度の変化を示す図面に代わる写真である。【図2】本発明のドロップレット培養法での培養時間の経過に伴う同心円状の細胞増殖を示す図面に代わる写真である。【図3】培養開始から2週間後の細胞の分布状態を示す図面に代わる写真である。左図は、本発明のドロップレット培養法、右図は通常の培養法である。【図4】各細胞皿の接着効率を示すグラフである。 細胞密度が1×102〜1×104個/μlである接着性細胞の懸濁液をドロップレットにして、培地が添加されていない培養容器上に設置し、前記接着性細胞が前記培養容器に接着するまで培養した後、培地を添加し、次いで該接着性細胞を培養することを特徴とする高密度細胞培養法。 接着性細胞が上皮細胞である請求項1記載の高密度細胞培養法。 ドロップレットの量が5〜100μlである請求項1記載の高密度細胞培養法。 培養容器がコラーゲン、ラミニン、エラスチン、プロテオグリカン、テネイシンまたはフィブロネクチンで被覆された請求項1記載の高密度細胞培養法。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る