タイトル: | 特許公報(B2)_再帰反射用ガラスビーズおよびその熱処理方法 |
出願番号: | 1998241434 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C03C12/02,C03B32/00,G02B5/128 |
鈴木 宏幸 松浦 良彦 木野 達 JP 3564303 特許公報(B2) 20040611 1998241434 19980827 再帰反射用ガラスビーズおよびその熱処理方法 旭テクノグラス株式会社 000158208 大胡 典夫 100081732 竹花 喜久男 100075683 鈴木 宏幸 松浦 良彦 木野 達 20040908 7 C03C12/02 C03B32/00 G02B5/128 JP C03C12/02 C03B32/00 G02B5/128 7 C03C1/00-14/00 C03B32/00 G02B5/128 WPI 特開2000−86290(JP,A) 特開平7−315871(JP,A) 7 2000072481 20000307 8 20010613 塩見 篤史 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、不純物により着色された再帰反射用ガラスビーズおよびその熱処理方法に関する。【0002】【従来の技術】周知の通り、再帰反射シートなどの反射材に使用されるガラスビーズは、高屈折率酸化物であるTiO2 とBaOを主成分とするTiO2 −BaO系ガラスからなっている。このガラスビーズはシート構造により一般に屈折率の異なる2種類に大別される。一つは屈折率が2.2〜2.3のガラスビーズであり、これは光透過性の合成樹脂材料によってガラスビーズが完全に覆われた反射シートに使用される。他の一つは屈折率が1.9〜2.0のガラスビーズであり、表面がフィルムで覆われ空気層が中にあるカプセル中にガラスビーズが配置された高反射性能を有する反射シートに使用される。【0003】ところで、TiO2 −BaO系ガラスでなる屈折率が2.2〜2.3のガラスビーズを工業的規模で直接生産するには、失透を起こしやすい組成系であるため、一般には屈折率が2.0〜2.2程度のガラスビーズを生産し、特公昭48−17844号公報,特公昭57−28375号公報に記載の方法によつて加熱処理を施し屈折率を2.2〜2.3に向上させる手段がとられている。これに対し、屈折率1.9〜2.0のガラスビーズでは比較的失透を起こしにくい組成系となるため、特に加熱処理を施さずに直接生産されている。【0004】近年、再帰反射性能の高い屈折率が1.8〜2.1、より好ましくは1.9〜2.0のガラスビーズを使用した反射シートの需要が急速に伸びてきており、ガラスメーカーでは増産対応してきた。ところが、生産性重視のために製造工程を合理化し製造設備を増強していくことにより、着色性不純物である鉄分などのガラスビーズ中への混入が目立ってきた。そのため、この着色性不純物によりガラスビーズが着色されて透過率が減少し、三色表色系におけるY値(明度)が低下してしまう問題点があった。【0005】そして、着色性不純物のうちの鉄分が再帰反射シートなどの反射材に使用されるTiO2 −BaO系ガラスに混入した場合の発色度合いは、一般に赤茶色に変色する。このため、鉄分が着色性不純物として混入したTiO2 −BaO系ガラスで形成したガラスビーズでは、三色表色系におけるY値(明度)が低下してしまう。この時の発色の度合いは鉄分の増加に伴い直線的に増加していくが、0.1質量%を越えると淡褐色であったものが赤茶色に変色する。【0006】また、ガラスビーズの明度が低下すると再帰反射シートとしてシート化した際の明度も低下し、再帰反射シートとして所定の特性が満足できず品質面で不適合なものとなってしまう。このため、再帰反射シートとしたときの明度が向上するように、製造工程では再帰反射シートの表面フィルムの支柱となっている白線を太くし、これによつて明度を補正するが、このような操作をすることによりガラスビーズの充填率が低下してしまい、反射性能の低下の点で問題となる。【0007】また、上記のような鉄分等の不純物による着色問題に対しては、着色性不純物の混入を防止するように管理すれば可能である。しかし、実際の製造現場において着色が見られない程度に不純物含有量を抑制することは、原料の高品質化によるコスト高や、製造設備の非鉄化に伴う経費の増加により、ガラスビーズの製造コストを上昇させてしまい、市場での競争力を低下させることになって好ましくない。このため、再帰反射用ガラスビーズについては、不純物である鉄分の含有量を製造工程で管理し得る範囲としつつ、コスト上昇をきたさずに明度を向上させることが要望されている。【0008】【発明が解決しようとする課題】上記のような状況に鑑みて本発明はなされたもので、その目的とするところは鉄分を不純物として含有しながらも三色表色系におけるY値(明度)が向上し、また低コスト化を図ることができる再帰反射用ガラスビーズおよびその熱処理方法を提供することにある。【0009】【課題を解決するための手段】本発明の再帰反射用ガラスビーズおよびその熱処理方法は、再帰反射用ガラスビーズが、TiO2 とBaOとを合量で60質量%以上含有し、かつ着色性不純物であるFe2 O3 の含有量が0.005〜0.1質量%のガラスをビーズ状に形成してなるものにおいて、ガラス中のバリウムチタン酸化物の網目構造にFeを結合させたことを特徴とするものであり、さらに、バリウムチタン酸化物に結合するFeが、ガラスを加熱処理することにより生じさせたものであることを特徴とするものであり、さらに、三色表色系のY値(明度)を50以上75以下としたことを特徴とするものであり、また、TiO2 とBaOを含有し、かつ着色性不純物であるFe2 O3 の含有量が0.005〜0.1質量%の淡褐色を帯びたガラスビーズにおいて、加熱処理により淡黄色に発色させると共に三色表色系のY値(明度)を加熱処理前より大きくしたことを特徴とするものであり、さらに、加熱処理前に帯びているガラスビーズの淡褐色は、三色表色系のY値(明度)で45〜68であり、加熱処理後に帯びているガラスビーズの淡黄色は、三色表色系のY値(明度)で50〜75であることを特徴とするものであり、さらに、ガラスビーズの屈折率が、1.8〜2.1であることを特徴とするものであり、再帰反射用ガラスビーズの熱処理方法が、TiO2 とBaOを含有し、かつFe2 O3 の含有量が0.005〜0.1質量%のガラスビーズの加熱処理に際し、加熱処理温度を300〜650℃として、ガラスビーズの屈折率を1.8〜2.1とし、かつ三色表色系のY値(明度)を加熱処理前より大きくしたことを特徴とする方法である。【0010】【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明する。説明に先立ち、先ず本発明をするに至った発明者等が得た知見につき説明する。【0011】発明者等が、ガラスビーズ着色の原因について調査したところ、TiO2 −BaO系ガラスではガラスの網目構造中に鉄分が取り込まれて分散していることが分かつた。そしてガラスの網目構造中で鉄分は、Fe−O−Feのような単体の架橋構造で存在しているため、これによって電荷移動吸収帯を生じ、その吸収スペクトルに応して淡褐色に発色していることが判明した。【0012】そして、こうした調査の結果に得たTiO2 −BaO系ガラスにおいてはガラスの網目構造中に鉄分が取り込まれて淡褐色に発色していることに着目した。すなわち、着色の要因はFe−O−Feがガラス中に単体で存在し電荷移動吸収帯を生じていることにあり、適当な条件下で架橋構造を切断する、もしくは何らかの化合物としてしまうことで吸収帯のバランスを崩し、消色あるいは変色できるのではと考えた。そして、この変色効果により三色表色系におけるY値(明度)を向上させることができるのではないかと考えた。【0013】一方、一般に物質の結合状態を変化させるためには光、熱、電気などのエネルギーが必要である。特開平7−315871号公報によれば加熱処理によって屈折率を増加されたガラスビーズにおいて、ガラスビーズ中に存在する高屈折率結晶の粒径が0.3μm以下であると着色を防止し、白色度の高いガラスビーズを得られるとある。しかしこのことは、本来最適化されているはずのガラスビーズの光学特性を変化させてしまうことになり好ましくない。【0014】そこで、TiO2 −BaO系ガラスでの高屈折率物質であるバリウムチタン酸化物の結晶化温度以下で加熱処理を長時間行なったところ、ガラスの網目構造中に存在した鉄分が移動してバリウムチタン酸化物と結合、すなわちFe2 O3 の結合が加熱により切断され、Fe原子がバリウムチタン酸化物の網目構造と結合することが透過型電子顕微鏡撮影像からわかった。この結合による相互作用としてガラスビーズは淡黄色に呈色するが、淡褐色から淡黄色への変色によってガラスビーズの透過率が上昇し、三色表色系におけるY値(明度)も向上することが知見でき、これに基づき本発明をするに至った。【0015】次に本発明の実施形態を比較例と対比して説明する。以下に一例として記す実施形態と比較例におけるTiO2 −BaO系ガラスは、例えば質量百分率で、TiO2 :35%、BaO:42%、SiO2 :14%、CaO:5%、ZnO:4%を基本組成としたガラスに、Fe2 O3 が表−1に示す量となるように原料を調合したものを用いた。【0016】【表1】そして、所定通り原料を調合した調合物を均一に混合した後、白金るつぼに収容して電気炉内で1300℃の雰囲気で1時間溶融した。次に、この溶融物を水砕し、さらに乾燥させた後ボールミルで粉砕して微粒状とし、微粒状となった粉砕物を篩分機にて45〜90μmの粒度になるように調整した。その後、この篩分けされた粉砕物を火炎中に投入してガラスビーズに成形した。得られたガラスビーズは耐火物の容器に収容し、それぞれ電気炉にて表−1に示す温度まで加熱し、その加熱した状態のまま3時間保持し、その後自然放冷させて試料の再帰反射ガラスビーズとした。【0017】以上のようにして作成した各試料について熱処理前後の三色表色系におけるY値(明度)を色差計算機(スガ試験機(株)製デジタル側色色差計算機AUD−CH−2)を用いて計測した。また、ベッケライン法により加熱処理前後の屈折率を測定した。そして、これらの計測結果は表−1に示す通りとなった。なお、表−1において、試料NO.4、NO.5、NO.8、NO.9、NO.12、NO.13、NO.16、NO.17は本発明の実施形態であり、その他は、鉄分含有量、すなわちFe2 O3 の含有量、熱処理温度を変化させた比較例である。【0018】以上の結果から、本発明の実施形態である試料NO.4、NO.5、NO.8、NO.9、NO.12、NO.13、NO.17では屈折率を上昇させることなく三色表色系におけるY値(明度)を60以上に向上させることができる。また、試料NO.12、NO.16では三色表色系におけるY値(明度)を60以上に向上させることはできなかったが、熱処理温度を上げるか熱処理時間を長くすることにより60以上に向上させることは可能である。【0019】これに対し比較例の試料NO.1、NO.2では着色の原因となる鉄分が少ないため、熱処理前の三色表色系におけるY値(明度)は7Oを超えており品質的には十分に満足できるものである。次に比較例の試料NO.3、NO.7、NO.11、NO.15では、熱処理温度が低いために三色表色系におけるY値(明度)を向上させることはできない。さらに比較例の試料NO.6、NO.10、NO.14、NO.18では熱処理温度が高いため、高屈折率結晶が発生して屈折率が上昇してしまう。また比較例の試料NO.19、NO.20、NO.21では、鉄分含有量が多いために熱処理前の三色表色系におけるY値(明度)は他と比較して著しく低く、熱処理後でも三色表色系におけるY値(明度)を60以上に向上させることはできない。【0020】そして上記のように本実施形態は構成されているので、着色性不純物の鉄分を含有するTiO2 −BaO系ガラスで形成したガラスビーズでは、当初淡褐色を帯びていたものでも、これを加熱処理することによってガラス構造を変化させ、淡黄色に変色させて三色表色系におけるY値(明度)を向上させることができる。そのため、設備の劣化などによってガラスビーズ中の鉄分が異常に増加し、三色表色系におけるY値(明度)が急激に低下した際にも加熱処理を行うことによって本来の数値に戻すことができる。また、高品質の原料の使用や製造設備の非鉄化を行わなくても、加熱処理によって三色表色系におけるY値(明度)を向上させられるため、熱処理工程の導入によるコスト増を含めても十分に低コスト化することができる。【0021】なお、上記実施形態ではガラスビーズを構成するTiO2 −BaO系ガラスの組成の一例について示したがこれに限定されるものではなく、着色性不純物の鉄分を含有するTiO2 −BaO系ガラスで形成したガラスビーズで、これを加熱処理することによってガラス構造を変化させ、淡黄色に変色させて三色表色系におけるY値(明度)を向上させるためには、Feが結合するバリウムチタン酸化物の存在が必須であり、またTiO2 とBaOを含む組成であれば十分効果のあることが確認された。そして、TiO2 とBaOを合量で60質量%以上含有するものが好ましく、BaOを35質量%以上含有しかつTiO2 とBaOを合量で60質量%以上含有するものがより好ましい。【0022】また、Fe2 O3 含有量については、0.005%以下の場合には鉄分含有量が少なくて着色はわずかであり実質的に三色表色系におけるY値(明度)を向上させる必要がなく、0.005〜0.1質量%の範囲である場合に三色表色系におけるY値(明度)の向上が顕著であることが判明した。そして、0.1質量%を越えた場合には鉄分含有量が多過ぎて三色表色系におけるY値(明度)を向上させることは可能であるが、60以上まで向上させることはできない。【0023】なおまた、ガラスビーズの加熱処理に際し、加熱温度が650℃より高い温度であるとバリウムチタン酸化物の高屈折率結晶が発生して屈折率が上がるため、650℃以下の温度で加熱処理を行なう必要があり、また300℃より低い温度の場合には長時間加熱してもガラス構造の変化はおこらないことから、300〜650℃で熱処理を行なうことが必要である。さらにまた、上記実施形態では加熱して後の保持時間を3時間に設定したが、これに限定されるものではなく、ガラス組成、電気炉の熱分布、ガラスビーズの粒径によって変色速度が異なることから、屈折率を上昇させない条件のもとで適宜保持時間を変化させても同様の効果を得ることができる。【0024】さらに、三色表色系におけるY値(明度)は、実用上から50以上75以下であることが好ましく、より好ましくは60以上75以下であるとよい。またさらに、再帰反射用ガラスビーズが、高反射用シートをその用途とするもので十分な高屈折率が求められるものであるから、屈折率は1.8〜2.1、好ましくは1.9〜2.0であることを要する。【0025】【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によれば鉄分を不純物として含有することで着色されているガラスビーズであっても、三色表色系におけるY値(明度)が向上することになり、また製造工程の設備の劣化などによってガラスビーズ中の鉄分が異常に増加して着色した場合でも、本来の三色表色系におけるY値(明度)に戻すことができ、高品質原料の使用、製造設備の非鉄化を行わなくてもよいため、低コスト化を図ることができる等の効果を奏する。 TiO2 とBaOとを合量で60質量%以上含有し、かつ着色性不純物であるFe2 O3 の含有量が0.005〜0.1質量%のガラスをビーズ状に形成してなるものにおいて、前記ガラス中のバリウムチタン酸化物の網目構造にFeを結合させたことを特徴とする再帰反射用ガラスビーズ。 バリウムチタン酸化物に結合するFeが、ガラスを加熱処理することにより生じさせたものであることを特徴とする請求項1記載の再帰反射用ガラスビーズ。 三色表色系のY値(明度)を50以上75以下としたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の再帰反射用ガラスビーズ。 TiO2 とBaOを含有し、かつ着色性不純物であるFe2 O3 の含有量が0.005〜0.1質量%の淡褐色を帯びたガラスビーズにおいて、加熱処理により淡黄色に発色させると共に三色表色系のY値(明度)を加熱処理前より大きくしたことを特徴とする再帰反射用ガラスビーズ。 加熱処理前に帯びているガラスビーズの淡褐色は、三色表色系のY値(明度)で45〜68であり、加熱処理後に帯びているガラスビーズの淡黄色は、三色表色系のY値(明度)で50〜75であることを特徴とする請求項4記載の再帰反射用ガラスビーズ。 ガラスビーズの屈折率が、1.8〜2.1であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載された再帰反射用ガラスビーズ。 TiO2 とBaOを含有し、かつFe2 O3 の含有量が0.005〜0.1質量%のガラスビーズの加熱処理に際し、加熱処理温度を300〜650℃として、前記ガラスビーズの屈折率を1.8〜2.1とし、かつ三色表色系のY値(明度)を加熱処理前より大きくしたことを特徴とする再帰反射用ガラスビーズの熱処理方法。