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タイトル:特許公報(B2)_核酸の単離方法および核酸抽出用組成物
出願番号:1998227157
年次:2009
IPC分類:C12N 15/00


特許情報キャッシュ

黒板 敏弘 小松原 秀介 川上 文清 川村 良久 JP 4257554 特許公報(B2) 20090213 1998227157 19980811 核酸の単離方法および核酸抽出用組成物 東洋紡績株式会社 000003160 黒板 敏弘 小松原 秀介 川上 文清 川村 良久 20090422 C12N 15/00 20060101AFI20090402BHJP JPC12N15/00 Z C12N 15/00-90 JSTPlus(JDreamII) BIOSIS/WPI(DIALOG) PubMed 特開平09−322777(JP,A) 特表平10−501246(JP,A) 特開平06−217775(JP,A) 特開平10−075784(JP,A) 特表平09−505724(JP,A) 米国特許第05155018(US,A) BioTechniques, 15[6] (1993) p.976,978 BioTechniques, 13[2] (1992) p.205-206 Molecular Biotech., 3 (1995) p.135-138 J Clin Microbiol., 28[3] (1990) p.495-503 6 2000125860 20000509 11 20050808 横田 倫子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ホウ酸含有物中に含有される核酸を単離するための試薬組成および方法に関する。より詳しくは、トリス−ホウ酸−EDTA緩衝液(以下、TBEという)により調製されたアガロースゲルもしくはアクリルアミドゲルなどの電気泳動担体より核酸を単離するための方法および核酸抽出用組成物に関する。該核酸抽出用組成物は、例えば、TBE緩衝液にて調製されたアガロースゲルを用いて核酸を電気泳動した後に、ある特定の核酸断片のみを切り出し、精製するためのキットやそのキットを用いた自動核酸抽出装置にも適用することができるものである。【0002】【従来の技術】近年、分子生物学の分野における核酸の分析方法として、電気泳動法が盛んに用いられている。特に、アガロースゲルを担体としたアガロースゲル電気泳動は核酸の分離に適しており、広く行われている。また、アガロースゲルにて分離したある特定のDNA(デオキシリボ核酸)断片を泳動後に切り出してそのゲルから核酸を回収し、次の実験に供することも有効な手段として研究者の間で盛んに行われている。【0003】一般的には、フェノール/クロロホルムなどの有機溶媒によりゲルからの核酸の回収が行われるが、カオトロピック物質を含む溶液中で、核酸がシリカ、ガラスなどに吸着する性質を使用した方法も報告されている〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,76,615 (1979)〕。この方法は、まずアガロースをヨウ化ナトリウム溶液中で溶解し、その後シリカ粒子を添加し、核酸を粒子表面に物理的に吸着させ、余分な成分のみを洗浄した後、低塩濃度溶液中に核酸を溶出するものであり、フェノールなどの危険な物質を使用しないことが特徴である。【0004】また、Boomらにより生体材料より同様な方法を用いて核酸を単離する方法も紹介されているが、この方法はカオトロピック物質としてグアニジンチオシアン酸塩を用いることが特徴である〔J.Clin.Microbiol.,28(3) 495-503 (1990)〕。この方法は、生体材料以外の、例えばアガロースゲルなどから核酸を単離する場合においても有効である。【0005】一方、核酸をシリカ担体に結合させて精製する方法においては、TBE緩衝液にて調製したゲルからの核酸の回収効率がトリス−酢酸−EDTA緩衝液(以下、TAEという)にて調製したゲルに比べて極端に低下することが知られている。これは、TBE緩衝液中のホウ酸に起因していることは明らかであり、ホウ酸が核酸と複合体を容易に形成する性質によるものである。TBE緩衝液はTAE緩衝液に比べて緩衝能が強く、TAE緩衝液より使用されることが多い電気泳動用緩衝液である。【0006】【発明が解決しようとする課題】上述したような理由から、シリカ表面への核酸の吸着を利用して核酸の精製を行う方法において、TBEゲルからの核酸を回収率を向上させる方法が求められている。すなわち、本発明の目的は、核酸結合性固相への核酸の吸着を利用して核酸を精製する方法において、ホウ酸含有物から核酸を効率良く単離することのできる核酸単離方法及びそれに用いる組成物を提供することにある。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記事情に鑑み、シリカ表面への核酸の吸着を利用して核酸の精製を行う方法において、TBEアガロースゲル担体などのホウ酸含有物から核酸を効率よく回収する効果のある添加剤の検討を行った結果、吸着液にD−グルシトール(ソルビトール)などの糖アルコールを添加することにより、ホウ酸の影響を受けにくくなる現象を見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下のような構成からなる。【0008】(1)ホウ酸含有物から核酸を単離する方法であって、核酸を含むホウ酸含有物に糖アルコールを含有する吸着液および核酸結合性担体を添加する工程、核酸結合性担体を分離する工程、核酸結合性担体より核酸を溶離する工程を少なくとも含まれることを特徴とする核酸の単離方法。(2)ホウ酸含有物がゲル状物質である(1)記載の核酸の単離方法。(3)吸着液がカオトロピック物質を含有する(1)または(2)に記載の核酸の単離方法。(4)糖アルコールがソルビトール(グルシトール)、マンニトール、キシリトールよりなる群から選ばれた少なくとも1種である(1)〜(3)のいずれかに記載の核酸の単離方法。(5)核酸結合性担体がシリカである(1)〜(4)のいずれかに記載の核酸の単離方法。(6)糖アルコールがカオトロピック物質を含有する溶液中に含まれることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の核酸の単離方法において用いられる核酸抽出用組成物。(7)糖アルコールがソルビトール(グルシトール)、マンニトール、キシリトールよりなる群から選ばれた少なくとも1種である(6)記載の核酸抽出用組成物。(8)カオトロピック物質を含有する溶液中に有機溶媒が含有される(6)または(7)に記載の核酸抽出用組成物。【0009】【発明の実施の形態】本発明において用いられる糖アルコールとしては、例えば、ソルビトール(グルシトール)、マンニトール、キシリトール等が挙げられる。なかでも、ソルビトール(グルシトール)が特に好ましい。その含有濃度は吸着液1mlあたり10〜80mg程度が好ましいが、糖アルコールの種類によって多少溶解度が異なるので、用いる糖アルコールの種類により至適濃度を見出す必要がある。【0010】本発明において用いられるカオトロピック剤としては、例えば、グアニジンチオシアン酸塩、グアニジン塩酸塩、ヨウ化ナトリウム等が挙げられる。より好ましくは、グアニジンチオシアン酸塩を4.0〜5.2Mの範囲で用いる。また、カオトロピック剤溶液はpH4〜6の酸性溶液であることが好ましい。さらに、該カオトロピック剤溶液に、必要に応じてエチレングリコール、エタノール、ベンジルアルコール、アセトニトリル等の有機溶媒を添加することも回収量を上昇させるのに効果的である。【0011】本発明の主用途は、アガロースゲル電気泳動によって分離した核酸を精製することであるが、精製する際にはアガロースゲルを溶解する必要がある。本発明において好適に使用されるグアニジンチオシアン酸塩およびヨウ化ナトリウムはアガロースゲルを溶解する能力が高いことが知られており、本発明においては特に好ましいカオトロピック剤である。さらには、グアニジンチオシアン酸塩溶液は糖アルコールの溶解度も高く、本発明においてはグアニジンチオシアン酸塩を使用することが好ましい。【0012】本発明において用いられる核酸結合性担体としては、シリカ粒子が挙げられる。好ましくは、二酸化珪素結晶及び他の珪素酸化物、珪藻土、ガラス粉末、化学修飾シリカ及びシリカと超常磁性金属酸化物などとの複合体などからなる。また、本発明の方法は、ラテックス粒子などのシリカ粒子以外の粒子およびフィルター、カラムなどを用いる方法にも応用可能である。【0013】本発明の方法は、ホウ酸を含有する物質中から核酸を単離する方法であって、該物質に糖アルコールを含有するカオトロピック剤溶液および核酸結合性担体を添加し、必要に応じて洗浄を行い、核酸結合性担体を分離する工程よりなる核酸の単離方法である。上記洗浄工程は必ずしも必要ではないが、回収した核酸の用途によっては、洗浄を行った方が良好な解析結果をもたらす場合が多い。洗浄は、カオトロピック剤溶液、アルコール溶液などが用いられる。好ましくは、カオトロピック剤溶液にて洗浄を行った後に、アルコール溶液を用いて洗浄を行う。これは、残留したアガロースがアルコールに不溶性であるためである。【0014】洗浄工程で使用されるカオトロピック剤としては、例えば、グアニジンチオシアン酸塩、グアニジン塩酸塩、ヨウ化ナトリウム等が挙げられる。好ましくはグアニジン塩酸塩を使用する。これは、回収した核酸の吸光度における濃度測定を容易とするためである。チオシアン酸は紫外領域に強い吸収を有する。【0015】洗浄工程で使用される上記アルコール溶液としては、エタノール溶液もしくはイソプロパノール溶液が使用される。好ましくは70〜90%エタノール溶液を使用する。エタノールで洗浄することにより、粒子表面に残留した塩の成分を除去することができる。エタノールは必要に応じて、乾燥させることにより溶出液への残留を防ぐことが可能である。【0016】粒子からの核酸の溶出に際しては、低塩濃度溶液が使用される。該低塩濃度溶液としては、水、低濃度トリス緩衝液等が好ましい。また、溶出の効率を高めるために、50〜70℃にて加熱することも効果的である。【0017】本発明は、TBEアガロースゲル以外にも、ホウ酸を含有する溶液からの核酸の分離にも応用可能である。ホウ酸は、構造中に隣接したシス型配置の水酸基を有する化合物と反応して、負に帯電した錯体を形成することが知られており、溶液中で核酸中のリボースもしくはデオキシリボースと何らかの相互作用をしていることが予想される。よって、この溶液に糖などの水酸基を有する物質を添加することにより、ホウ酸と核酸の相互作用を低減させることは可能である。【0018】しかしながら、上述したように、本発明の特徴は糖アルコールを用いることにある。すなわち、糖アルコールは、糖のアルデヒド基がアルコール基に置換したものである。本発明者らの検討により、糖もしくは糖酸においては効果が低かったことから、糖アルコールの有する何らかの性質が効果的に作用しているものと考えられる。特に、グルシトール、キシリトールおよびマンニトールにおいて効果が顕著である。このことは、糖アルコールの特定の立体構造がホウ酸と核酸の相互作用の低減効果に大きく影響することを示唆するものである。特に、グルシトール、キシリトールは一部共通の構造を有しており、OH基の立体配位が重要であることが示唆される。【0019】本発明の一実施形態としては、10〜80mg/mlで糖アルコールを含有するpH4〜6に調整された4.5〜5.5Mグアニジンチオシアン酸塩水溶液からなる組成物である。該組成物は、アガロースゲルの溶解および吸着用溶液として使用されうる。糖アルコールとしては、グルシトール、キシリトール、マンニトール等が選択される。【0020】本発明の方法により単離された核酸は優れた純度を有しており、制限酵素反応、ライゲーション反応、アルカリホスファターゼ反応、シーケンス反応、PCR、逆転写反応などに用いることができる。【0021】【実施例】以下、本発明の実施例を例示することによって、本発明の効果をより具体的に示す。【0022】実施例1 TBEアガロースゲルからのDNA断片の回収における糖類の影響(1)TBE及びTAE緩衝液の調製TBE緩衝液は、10.8gのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン〔ナカライテスク製〕、0.75gのエチレンジアミン四酢酸二水素ナトリウム二水和物〔ナカライテスク製〕を1Lの蒸留水に溶解した後、5.5gのホウ酸〔ナカライテスク製〕を溶解することにより調製した。TAE緩衝液は4.84gのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン〔ナカライテスク製〕、0.372gのエチレンジアミン四酢酸二水素ナトリウム二水和物〔ナカライテスク製〕を1Lの蒸留水に溶解した後、0.412gの酢酸ナトリウム〔ナカライテスク製〕を溶解することに溶解することにより調製した。【0023】(2)アガロースゲルの調製1gのNuSieve GTGアガロース(FMC社製)および1gのSeaKem GTGアガロース(FMC社製)を100mlのTBE緩衝液に懸濁した後、電子レンジで加温することによりアガロースを溶解させた。完全に溶解した後、電気泳動用のゲル作成容器(GelMate:東洋紡績製)に流し込み、室温にて固化させた。TAEアガロースゲルも同様に調製した。【0024】(3)吸着液の調製6Mグアニジンチオシアン酸塩溶液800μl、2M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)37.5μl、ベンジルアルコール418μlおよび糖類粉末35mgを混合し溶解した。試薬は全てナカライテスク社製のものを使用した。今回使用した糖類は以下の通りである。1.D−グルシトール(ソルビトール)2.D−マンノース3.D−ガラクシトール(ズルシトール)4.D−キシリトール5.D−リビトール6.D−グルコース7.D−グルコン酸ナトリウム【0025】(4)洗浄液の調製8Mグアジニン塩酸塩溶液700μl、1Mトリス緩衝液(pH6.4)40μlおよび蒸留水60μlを混合し、調製した。【0026】(5) 80%エタノールの調製エタノール80mlと蒸留水20mlを混合し、調製した。【0027】(6)磁性シリカ溶液磁性シリカ粒子(粒径1〜10μm、Fe3 O4 粒子30%含有、比表面積280m2 /g、表面細孔直径2〜6nm、細孔容積0.025ml/g:鈴木油脂製)0.25gを5M塩化リチウム溶液1mlに懸濁し調製した。【0028】(7)核酸断片の調製以下の試薬を混合し、PCRによる増幅反応を行い調製した。蒸留水:70.2μl2mM dNTPs:10μl100μM SKHT primer (GGCCGCTCTAGAACTAGTGGATC):0.4μl100μM T3SK primer(AATTAACCCTCACTAAAGGGAAC):0.4μl25mM 塩化マグネシウム溶液:6μl10×taq polymerase用緩衝液:10μlrTaq polymerase (5U/μl):1μl1ng/μl pBluescript II SK(+) (Stratagene社製):2μl【0029】PCR反応には、Perkin-Elmer社製サーマルサイクラー(GeneAmp PCR System 2400 )を用いた。温度条件としては、94℃(45秒間)、55℃(45秒間)、72℃(1分間)の条件を30サイクル繰り返して行なった。この条件により増幅された約120bpの核酸断片を、PCR増幅産物として以下の実験に使用した。【0030】(8)核酸の抽出2%アガロースゲル75mgを1.5mlマイクロチューブにはかり取り、PCR増幅産物25μlを添加した。次に、100μlの吸着液を添加し、55℃にて約5分間ゲルが溶解するまで加温した。ゲルが完全に溶解したことを確認した後、磁性シリカ懸濁液12μlを添加し、20秒間攪拌した後、40秒間静置し、核酸を磁性シリカの表面に吸着させた。【0031】その後、マイクロチューブをMCP磁性スタンド(DYNAL社製)に立て、磁性ビーズを分離した。上清をピペットにて除去した後、洗浄液を120μl添加し、ボルテックスミキサーにて10秒間攪拌した。磁気分離を行い、上清を除去した後、80%エタノール溶液450μlを添加し、10秒間攪拌した。この操作をもう一度繰り返した後、軽く遠心してピペットにてエタノールを完全に除去した。マイクロチューブの蓋をあけ、55℃にて約5分間エタノールを完全に蒸発させた後、蒸留水25μlを添加し攪拌した。55℃にて2分間加温した後、磁気分離を行い、上清を回収した。今回試した組み合わせは表1に示す通りである。【0032】【表1】【0033】(9)電気泳動解析回収液9μlと色素液(50%グリセロール、0.25% Orange G)1μlを混合し、2%TAEアガロースゲルにて色素が端に移動されるまで、100Vにて泳動を行った。その後、ゲルをエチジウムブロマイド溶液に約10分間浸し、蒸留水で軽く洗浄した後、UV照射下で写真撮影を行った(図1)。【0034】(10)バンドの定量UV照射下で写真撮影を行った後に、写真画像をPDIシステムにて画像取り込みを行った後、バンド強度の測定を行った。【0035】(11)結果上記結果を表2に示す。回収率は電気泳動のバンド強度より算出した。【0036】【表2】【0037】糖類無添加の吸着液を用いた場合、TBEゲルにおいてはTAEゲルに比べて顕著に回収量が少ない結果となった。これはTBEゲル中に含まれるホウ酸の影響であると推察される。【0038】TBEゲルからの核酸の回収における、吸着液への糖類の添加の影響についてはD−グルシトール(ソルビトール)、D−キシリトールおよびマンニトールに効果がみられた。しかし、D−ガラクチトールおよびD−リビトールには効果がみられなかった。また、D−グルシトールと同様の水酸基の配置を有するD−グルコースおよびD−グルコン酸ナトリウムにも効果がみられなかった。このことは、特定の構造を有する糖アルコールのみが効果的であることを示唆している。特に効果的であったD−グルシトールとD−キシリトールは、部分的に同様な立体配置を有していることからも裏付けられる。なお、吸着液にベンジルアルコールを添加しているが、これは糖類の影響を見やすくするためである。【0039】実施例2 D−グルシトール濃度と回収量の検討(1)吸着液の調製6Mグアニジンチオシアン酸塩溶液800μl、2M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)37.5μl、ベンジルアルコール418μlおよびD−グルシトール0、15、30、60mgをそれぞれ混合し吸着液を調製した。試薬は全てナカライテスク社製のものを使用した。【0040】(2)核酸の抽出核酸の抽出は実施例1の方法に従って行った。アガロースゲルはTBEにて調製したものを75mg使用した。【0041】(3)電気泳動、バンドの定量電気泳動、バンドの検出は実施例1の方法に従って行った。UV照射下で写真撮影を行った後に、写真画像をPDIシステムにて画像取り込みを行った後、バンド強度の測定を行った。【0042】(4)結果結果を図2に示した。グラフよりD−グルシトールの濃度を増すとDNA断片の回収量の増大が認められた。【0043】実施例3 TBEアガロースゲル量と糖アルコール添加の効果(1)吸着液の調製6Mグアニジンチオシアン酸塩溶液800μl、2M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)37.5μl、D−グルシトール40mgを混合し溶解した。また、D−グルシトールを含まないものについても調製を行った。試薬は全てナカライテスク社製のものを使用した。他の試薬については、実施例1の方法に従って調製した。【0044】(2)核酸の抽出2%アガロースゲル(TBE)100、150、200mgおよびPCR増幅産物25μlを1.5mlマイクロチューブにはかり取った。次に、200μlの吸着液を添加し、55℃にて約5分間ゲルが溶解するまで加温した。ゲルが完全に溶解したことを確認した後、磁性シリカ懸濁液15μlを添加し、約3分間攪拌し核酸を磁性シリカの表面に吸着させた。その後、マイクロチューブをMCP磁性スタンド(DYNAL社製)に立て、磁性ビーズを分離した。上清をピペットにて除去した後、洗浄液を350μl添加し、ボルテックスミキサーにて10秒間攪拌した。【0045】磁気分離を行い上清を除去した後、80%エタノール溶液450μlを添加し、10秒間攪拌した。この操作をもう一度繰り返した後、軽く遠心してピペットにてエタノールを完全に除去した。マイクロチューブの蓋をあけ、55℃にて約5分間エタノールを完全に蒸発させた後、蒸留水25μlを添加し攪拌した。55℃にて2分間加温した後、磁気分離を行い上清を回収した。【0046】(3)電気泳動、バンドの定量電気泳動、バンドの検出は実施例1の方法に従って行った。UV照射下写真撮影を行った後に、写真画像をPDIシステムにて画像取り込みを行った後、バンドのシグナル強度の測定を行った。【0047】(4)結果上記結果を図3に示した。100mgのアガロースからの核酸断片の回収においては、D−グルシトール添加の有無に関わらず同等の回収率であったが、アガロースゲル量が増加するに従い、D−グルシトール無添加の場合では核酸の回収率が直線的に低下したのに対し、D−グルシトールを添加した場合においては回収率の低下は顕著ではなかった。このことは、吸着液にD−グルシトールを添加することにより、より多くのホウ酸を含有する物質からのDNAの回収が可能になることを示している。D−グルシトールを添加しなかった場合は、ホウ酸の量が増加するに従い、濃度依存的にDNAの回収量が低下する現象がみられ、ホウ酸の量が許容量を越えるとDNAの回収量の急激な低下が観察されることが確認された。【0048】【発明の効果】上述したように、本発明により核酸をシリカ担体に結合させて精製する方法においては、TBE緩衝液にて調製したゲルからの核酸の回収効率を顕著に向上させることが可能である。また、本方法の組成物は、TBE緩衝液にて調製されたアガロースゲルから核酸を精製するキットおよび、核酸抽出装置などへの適用が可能である。そして、本発明の方法を用いることにより、従来からの方法に比べ、再現性のある確実な結果が得られる。【図面の簡単な説明】【図1】 TBEアガロースゲルからの核酸の回収率に及ぼす吸着液への糖類の添加の影響を示す図である。【図2】 D−グルシトール濃度とTBEアガロースゲルからのDNAの回収量の関係を示す図である。【図3】 吸着液へのD−グルシトールの添加の有無とTBEアガロースゲル量と回収率の関係を示す図である。 ホウ酸含有物から核酸を単離する方法であって、(1)核酸を含むホウ酸含有物にソルビトール(グルシトール)、マンニトール、キシリトールよりなる群から選ばれた少なくとも1種の糖アルコールを含有する吸着液および核酸結合性担体を添加する工程、(2)核酸結合性担体を分離する工程、(3)核酸結合性担体より核酸を溶離する工程を少なくとも含まれることを特徴とする核酸の単離方法。 ホウ酸含有物がゲル状物質である請求項1記載の核酸の単離方法。 吸着液がカオトロピック物質を含有する請求項1または2に記載の核酸の単離方法。 核酸結合性担体がシリカである請求項1〜3のいずれかに記載の核酸の単離方法。 ソルビトール(グルシトール)、マンニトール、キシリトールよりなる群から選ばれた少なくとも1種の糖アルコールがカオトロピック物質を含有する溶液中に含まれることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の核酸の単離方法において用いられる核酸抽出用組成物。 カオトロピック物質を含有する溶液中に有機溶媒が含有される請求項5に記載の核酸抽出用組成物。


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