タイトル: | 特許公報(B2)_分析装置 |
出願番号: | 1998182197 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,G01N35/00,G01N30/84,G01N35/10 |
伊藤 正人 出口 喜三郎 藤井 芳雄 佐竹 尋志 森 聖年 JP 3554194 特許公報(B2) 20040514 1998182197 19980629 分析装置 株式会社日立製作所 000005108 三品 岩男 100084032 伊藤 正人 出口 喜三郎 藤井 芳雄 佐竹 尋志 森 聖年 20040818 7 G01N35/00 G01N30/84 G01N35/10 JP G01N35/00 C G01N30/84 A G01N35/06 A 7 G01N 30/00-35/10 JICSTファイル(JOIS) 特開昭63−148162(JP,A) 特開昭58−221(JP,A) 特開平9−113494(JP,A) 特開平8−226921(JP,A) 特開平6−324050(JP,A) 実開昭62−199675(JP,U) 実開昭60−41852(JP,U) 実開平4−30039(JP,U) 2 2000009734 20000114 12 20001211 ▲高▼見 重雄 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は定量および/または定性分析に係り、特に、酸化されやすい反応試薬を用いる液体クロマトグラフ分析に適する分析装置に関する。【0002】【従来の技術】ポストカラム誘導体化法を用いる液体クロマトグラフ装置の代表的なものに、アミノ酸分析計が挙げられる。これは、アミノ酸分析に一般的に用いられている分析装置であり、イオン交換樹脂などを用いてアミノ酸を分離した上で、分析試薬(発色試薬)により誘導体化して検出する。このアミノ酸のポストカラム誘導体化法による検出には、発色試薬としてニンヒドリンが一般的に用いられている。【0003】【発明が解決しようとする課題】アミノ酸等の検出に用いられるニンヒドリン試薬は、非常に酸化されやすく、空気に触れると速やかに変質してしまう。そこで、従来から、ニンヒドリンを用いるアミノ酸分析計においては、発色試薬が空気と直接接触しないようにするための対策が採られてきた。【0004】このため対策としては、まず、ニンヒドリン試薬を入れる発色試薬びんを不活性ガス(窒素ガスまたはヘリウムガス)で封入し、試薬の消費により生じる空隙を満たすように、ボンベから発色試薬びんに不活性ガスを供給する方法が挙げられる。しかし、この方法では、分析装置への不活性ガス供給源としてガスボンベかガス供給配管が必要となり、さらに、発色試薬びんに窒素を供給するために分析装置内部にガス配管系を設ける必要があるため、装置構成がかなり複雑になってしまう。【0005】また、発色試薬びんの中のニンヒドリン溶液が空気と接する界面に、パラフィンなど比較的比重の軽い油性の薄層を設け、酸素と隔離する方法も、従来から採られている。しかし、この方法では、油性薄層の取扱いが著しくやっかいであり、また、この油性薄層は、発色試薬びんの洗浄を困難にする。さらに、この方法を採った場合、ニンヒドリン溶液をすべて消費し尽くすと、油性薄層が吸引されて分析系に導入されてしまい、検出信号が異常になるのみならず、分析系の配管を洗浄することが非常に困難になる。【0006】そこで、本発明は、アミノ酸分析計やカテコールアミン分析計などの酸化されやすい試薬を用いる分析装置においても、配管や機構を複雑にすることなく、また、洗浄を困難にするような物質を使用することなく、試薬の変質を防止することのできる技術を提供することを目的とする。【0007】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明では、試料を分析する分析機構と、該分析機構に分析用の試薬を供給するための試薬供給機構とを有する分析装置であって、試薬供給機構が、(1)試薬を保持するための試薬容器と、試薬容器および分析機構を連通可能に接続する試薬流路と、除酸素剤を用いて酸素を除去した空気を試薬容器に供給するための脱酸素機構とを有するか、または、(2)試薬を保持するための試薬容器と、試薬容器および分析機構とを連通可能に接続する試薬流路とを備え、試薬容器が、該容器の内圧に応じて柔軟に変形可能な可撓性材料からなる気密容器である、分析装置が提供される。【0008】また、本発明では、試薬を用いて試料を分析する方法として、(1)試薬の容器に吸引される空気から、あらかじめ除酸素剤を用いて酸素を除去しておくこと、または、(2)試薬を保持するための試薬容器として、内圧に応じて柔軟に変形可能な可撓性材料からなる気密容器を用いること、を特徴とする分析方法が提供される。【0009】さらに、本発明では、上述の分析装置および分析方法に用いるための脱酸素機構および試薬容器が提供される。【0010】【発明の実施の形態】本発明では、脱酸素機構により試薬容器に供給する空気から酸素を除去することで、試薬の酸素による劣化を回避する。【0011】上述の脱酸素機構は、空気から酸素を除去する除酸素剤を保持するための除酸素剤容器と、外部の空気を、上記除酸素剤容器内部を経由して上記試薬容器に導入するための、空気の流路とを備えることが望ましい。除酸素剤容器の容量は、十分な酸素吸収量を確保するため、試薬容器の容量の1/10以上とすることが望ましい。なお、除酸素剤容器には、あらかじめ除酸素剤が保持されていてもよい。【0012】除酸素剤は、効果を1ヶ月程度持続させるために、少なくとも、試薬容器の容量と同量の酸素吸収能を有することが望ましい。除酸素剤としては、例えば、還元鉄粉、還元銅粉、ピロガロールのアルカリ水溶液、または、亜ジチオン酸塩水溶液などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、また、組み合わせて用いてもよい。これらのうち、入手の容易さおよびコストなどの点からは、還元鉄粉が好ましい。還元鉄からなる除酸素剤としては、例えば、三菱瓦斯化学(株)製「エージレス」が市販されている。除酸素剤として還元鉄粉を用いる場合、その全体の体積が、試薬容器の容量の1/10以上であれば、通常、効果を1ヶ月程度持続させることができるため好ましい。【0013】また、本発明では、このような脱酸素機構を設ける代わりに、試薬容器として内圧に応じて柔軟に変形可能な可撓性材料からなる気密容器を用いてもよい。このようにすれば、試薬の送出に伴って容器内圧が低下すると、内圧に応じて容器自体が変形し、容器内圧と大気圧とを均衡させるため、容器内に空気を供給しなくても、滞りなく試薬を供給することができる。このようにすれば、消費された試薬分の体積をいかなるガスによっても置き換える必要がなく、容器内に酸素が侵入しないため、試薬が酸化により劣化するのを回避することができる。このようにする場合、試薬容器内壁は、耐薬品性の点からポリテトラフルオロエチレンまたはその誘導体などの、含フッ素樹脂とすることが望ましい。また、この試薬容器に、試薬供給用チューブを連通可能に接続するための開口部と、この開口部を封止する封止部材とを設け、試薬供給用チューブの一方の先端を中空の針とすれば、この針を封止部材に貫通させることにより、簡便に、ほとんど空気を侵入させることなく試薬流路を連通させることができるため、好ましい。【0014】なお、本発明は、分析試薬の供給が試料の分離の前後いずれであるかを問わず、適用可能である。すなわち、上述したポストカラム誘導体法のみならず、プレカラム誘導体化法にも適用することができる。【0015】本発明は、液体クロマトグラフ装置に特に適しており、上述したニンヒドリンを用いるアミノ酸分析計や、ジフェニルエチレンジアミンを用いるカテコールアミン分析計、あるいは、血液生化学自動分析装置など、酸化されやすい試薬を用いる分析装置および分析方法に、特に有効である。【0016】【実施例】以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。<実施例1>A.装置構成本実施例のアミノ酸分析計は、図1に示すように、分離系100と、分析系110、試薬供給系120とを備える。【0017】分離系100は、緩衝液びん1〜4およびカラム再生液びん5(容量各1L)と、緩衝液ポンプ7と、アンモニアフィルタカラム8と、オートサンプラ9と、分離カラム10とを備え、これらはこの順に配管によって接続されている。緩衝液びん1〜4およびカラム再生液びん5と、緩衝液ポンプ7との間の配管には、それぞれ電磁弁6が設けられている。【0018】分析系110は、内部の液体を加熱するためのヒータを備える反応管14と、反応によって発色したアミノ酸を検出するための検出器15と、データ処理装置16とを備える。検出器15はフローセル18とランプ19とを備える。この検出器15と、分離系100の分離カラム10との間は、反応管14を介して配管により接続されており、分離カラム10と反応管14の間の配管には、ミキサ13が設けられている。データ処理装置16は、表示装置と、外部記憶装置と、主記憶装置と、中央演算処理装置とを備える情報処理装置である。【0019】試薬供給系120は、ニンヒドリンを供給するための発色試薬供給部11と、ニンヒドリン用緩衝液を供給するための発色試薬緩衝液供給部17と、発色試薬ポンプ12とを備える。発色試薬供給部11および発色試薬緩衝液供給部17は、発色試薬ポンプ12を介して、分析系110のミキサ13に配管により接続されている。また、発色試薬供給部11および発色試薬緩衝液供給部17と、発色試薬ポンプ12との間の配管には、それぞれ電磁弁6が設けられている。【0020】この装置の使用時には、緩衝液びん1〜4にはそれぞれ緩衝液が、カラム再生液びん5にはカラムの再生液が保持されており、この中から、電磁弁シリーズ6によって選択された緩衝液または再生液が、緩衝液ポンプ7によってアンモニアフィルタカラム8およびオートサンプラ9を経由して分離カラム10に送られる。試料の分析においては、分析対象の試料は、オートサンプラ9によって配管中の移動相(緩衝液)に導入され、移動相とともに分離カラム10中を移動しつつ、分離される。【0021】また、試薬供給系120の発色試薬供給部11にはニンヒドリン試薬が保持され、発色試薬緩衝液供給部17には緩衝液が保持される。これらの液は電磁弁シリーズ6を介し、発色試薬ポンプ12によってミキサ13に送られて、分離カラム10により分離された試料を含む移動相と混合された後、反応管14において加熱される。これにより、移動相に含まれた試料のアミノ酸は、発色試薬であるニンヒドリンと反応して発色する。つぎに、移動相は、検出器15に送られる。検出器15は、ニンヒドリン反応によって発色したアミノ酸を連続的に検出し、検出結果を示す信号をデータ処理装置16に通知する。データ処理装置16は、通知された検出結果を基に、検出データと、図6に示すようなクロマトグラムとを表示装置に出力するとともに、外部記憶装置に格納して保存する。【0022】B.試薬供給系(1)発色試薬本実施例において使用したニンヒドリン試薬およびニンヒドリン用緩衝液は、つぎのようにして調製した。すなわち、ニンヒドリン試薬は、プロピレングリコールモノメチルエーテル979mLにニンヒドリン39gを加え、窒素ガスで5分以上バブリングして溶解させた後、得られた溶液に水素化ホウ酸ナトリウム81mgを添加し、30分以上窒素ガスでバブリングして調製した。また、ニンヒドリン用緩衝液は、蒸留水336mLに酢酸リチウム二水和物204gと氷酢酸123mlとプロピレングリコールモノエチルエーテル401mLを加えて全量を1Lとした後、窒素ガスで10分以上バブリングして調製した。【0023】なお、上述のように、ニンヒドリン試薬は、酸素に触れると酸化される還元剤(本実施例では水素化ホウ酸ナトリウム)を含んでいるため、空気に接することによって速やかに劣化する。【0024】(2)発色試薬供給部本実施例で用いた発色試薬供給部11は、図2に示すように、試薬容器(発色試薬びん:容量1L)50と、脱酸素機構58とを備える。なお、ここではニンヒドリン試薬を供給するための発色試薬供給部11について説明するが、ニンヒドリン用緩衝液を供給するための発色試薬緩衝液供給部17も、同様の構成となっている。【0025】試薬容器50の開口部は、シリコーンゴム製の蓋57により密閉されており、蓋57には、2本のポリテトラフルオロエチレン製チューブ51,52が挿入されている。【0026】試薬送出用チューブ51(内径2.0mm、外径3.0mm)は、試薬容器50と発色試薬ポンプ12との間を連通可能に接続する配管であり、試薬容器50内部に保持されるニンヒドリン試薬56を発色試薬ポンプ12に送るための送液パイプである。試薬送出用チューブ51には、耐薬品性の高いポリテトラフルオロエチレンのような材料を用いることが望ましい。試薬容器50内部の試薬送出用チューブ51先端には、フィルタ53が取り付けられている。分析作業時には、このフィルタ53を発色試薬溶液56中に沈めて使用する。【0027】また、空気導入用チューブ52(内径0.5mm、外径1.6mm)は、脱酸素機構58を介して大気開放されており、試薬の消費に伴って試薬容器50内部が減圧されるのを、酸素を除去した空気を導入することによって解消するための配管である。分析作業時には、空気導入用チューブ52の両端のうち、試薬容器50内の端部は、発色試薬溶液56に触れないよう、試薬液面の上に配置する。また、空気導入用チューブ52の他端には、ねじが形成されている。【0028】なお、試薬容器(試薬用緩衝液容器を含む)50は、試薬吸引ポンプ12より高い場所に配置することが望ましい。このようにすれば、自重により加圧することになり、特に粘性の高い反応試薬用緩衝液を送液するために有効である。好ましくは、試薬容器50は、図1に示したように、試薬吸引ポンプ12より50cm以上高くする。このようにすれば、通常の試薬(緩衝液とニンヒドリン溶液)では、0.05atm以上加圧するのと同等の効果が得られる。【0029】(3)脱酸素機構脱酸素機構58は、除酸素剤54を保持するための除酸素剤容器55を備える。本実施例では、酸素導入用チューブ52を介して試薬容器50内に導入される空気は、この除酸素剤54を通過することによって、酸素が除去されている。従って、本実施例によれば、試薬容器50内部の発色試薬(および同様の構成を有する発色試薬緩衝液供給機構17に保持された発色試薬用緩衝液)が酸素と接触するのを回避することができ、試薬の劣化を防止することができる。【0030】除酸素剤54は、十分な酸素除去能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ピロガロールのアルカリ溶液、亜ジチオン酸塩水溶液、加熱した還元銅などの酸素吸収剤を用いることができる。本実施例では、比表面積の大きい還元鉄からなる鉄粉(例えば、三菱瓦斯化学(株)製「エージレス」(商品名))100mLを用いた。還元鉄粉は酸素の吸着能力が著しく高いため本発明に適している。【0031】本実施例では、脱酸素機構58として、袋入りの除酸素剤54を除酸素剤容器55に封入したものを用いた。除酸素剤54の袋は、不織布などの通気性の高い材料からなる。除酸素剤容器55は、一端に開口部を有する突起部59が設けられている。突起部59には空気導入用チューブの端部に設けられたねじに螺合可能なようにねじ山が形成されている。この突起部59の開口部は、未使用時にはキャップ(図示せず)で密封されている。使用時には、このキャップを取り除いて開口部を開け、突起部59のねじに空気導入用チューブ52のねじを螺合させ、容器55の他端に孔60を開けて空気吸引口とする。孔60は、空気の流路がなるべく長くなるように開けることが望ましい。また、空気吸入口60は、十分な量の空気を吸入することができる限りは、空気が確実に除酸素剤54内を通過するように、小さいことが望ましく、本実施例では直径1〜2mm程度にした。これにより、本実施例の脱酸素機構58は、吸引された空気が、除酸素剤内を通過することなく直接突起部59の開口部に届くことのないような構造になっている。【0032】なお、本実施例では、あらかじめ除酸素剤容器55に除酸素剤54を封入したものを用いたが、ファスナなどにより開閉可能かつ密封可能な除酸素剤の出し入れ口を除酸素剤容器55に設け、使用時に除酸素剤を入れるようにしてもよい。【0033】螺合により密閉可能な蓋を有する容器55の例を、図3に示す。ここに示した容器55は、互いに螺合可能なねじ30を有する本体55bおよび蓋55aからなり、本体55b底部には、空気吸入用チューブ52の先端に設けられたねじ部材52aのねじと螺合可能なねじ31が形成されている。蓋55aには、空気取り入れ用の貫通孔32が設けられている。【0034】この容器55は、使用時には、図3に示したように、本体55b底部のねじ31に空気吸入用チューブ52のねじ部材52aを締結し、内部に不織布の袋入りの除酸素剤54を入れた状態で蓋55bを締結して用いる。このような容器55によっても、本実施例の脱酸素機構58と同様の効果が得られる。【0035】C.本実施例の効果本実施例では、一定量(2.0nm)のアスパラギン酸を含むアミノ酸混合溶液(蛋白質加水分解物)を試料として用い、常法によりアスパラギン酸を分離・検出して、検出されたアスパラギン酸の信号強度のピーク面積を基に、発色試薬の劣化の有無を検討した。なお、分離カラム10には(株)日立製作所製「2622SC」(内径4.6mm、長さ60mm)を、アンモニアフィルタカラムには8には(株)日立製作所製「2650L」(内径4.6mm、長さ40mm)を、緩衝液には三菱化学(株)製「PH−KIT」をそれぞれ用いた。また、反応管14としては、内径4.6mm、長さ40mmのものを用い、反応温度は135℃とした。【0036】発色試薬ボトル交換直後(すなわち、開封直後のニンヒドリン試薬およびニンヒドリン用緩衝液をそれぞれ2本の試薬容器50に供給した直後)に測定した結果を、図4に示す。なお、発色試薬を交換する際、同時に除酸素剤54も新品に交換した。図4では、各ピークの成分名をつぎのような略号を用いて示した。Asp:アスパラギン酸、Thr:トレオニン、Ser:セリン、Glu:グルタミン酸、Gly:グリシン、Ala:アラニン、Cys:システイン、Val:バリン、Met:メチオニン、Ile:イソロイシン、Leu:ロイシン、Tyr:チロシン、Phe:フェニルアラニン、Lys:リシン、NH3:アンモニア、His:ヒスチジン、Trp:トリプトファン、Arg:アルギニン。【0037】つぎに、同じ試料を、同様の測定条件で、試薬交換後15日および33日後にそれぞれ測定し、アスパラギン酸のピーク面積を測定した結果を、試薬交換直後の値を100%とした相対値として図5に示す。なお、比較のため、脱酸素機構58を設けず、空気導入用チューブ52の先端を大気中に開放した場合の結果も、図4に合わせて示した。図5のグラフからわかるように、脱酸素機構58を用いると、大気開放した場合に比べてはるかに試薬の劣化が少なく、安定した測定結果が得られた。すなわち、本実施例では、発色試薬交換の2週間後まではピーク面積が一定で、試薬の活性にほとんど変化はなく、発色試薬交換から約1ケ月経過した時点でも、90%以上の面積値が確保された。このことから、本実施例によれば、発色試薬を1ケ月継続使用しても実用上問題のないことがわかった。【0038】なお、本実施例で用いた除酸素剤54の酸素吸収量は、1000mLであった。 本実施例で用いた発色試薬びん50は、使用に際してあらかじめ窒素ガスで封入されているが、発色試薬を試薬びん50ごと交換する際の開栓時やチューブ51,52の挿入時に、若干の空気がびんに侵入する。ここで侵入した空気中の酸素も本実施例では、脱酸素機構58の除酸素剤54により吸収される。そこで、用いる除酸素剤54に要求される酸素吸収量は、発色試薬びん50内の試薬が消費されて空になることで吸引される空気容積(本実施例では1L)以外に、交換時に侵入する酸素の量や、大気中の酸素との接触時間などを含めて計算することが望ましい。通常、発色試薬びん50のびん容積程度(すなわち、びん内に吸引される酸素量の約5倍)の酸素吸収量を有する除酸素剤であれば、1ケ月程度使用可能である。【0039】なお、発色試薬および/または除酸素剤を交換する場合は、試薬容器に侵入する酸素を極力減らすために、脱酸素機構58を取り付けた状態のまま、あらかじめ窒素封入された試薬容器55ごと、試薬供給部11全体を交換することが望ましい。【0040】<実施例2>上述の実施例1では、脱酸素機構58と発色試薬容器50との間を、空気吸入用チューブ52を用いて接続したが、本発明はこのような構成に限られず、例えば本実施例に示すように、発色試薬容器50(および発色試薬用緩衝液容器)に直接脱酸素機構58を装着するようにしてもよい。つぎに、本実施例の脱酸素機構58の構成について説明する。なお、本実施例のアミノ酸分析計の、ここに示した以外の構成は、実施例1と同様である。また、ここでは、発色試薬供給部11についてのみ説明するが、本実施例においても、発色試薬供給部11と、発色試薬緩衝液供給部17とは同様の構成を有している。【0041】本実施例の脱酸素機構58は、図6に示すように、発色試薬容器61開口部65の蓋をなしている。すなわち、発色試薬容器61の開口部には、ねじが形成されており、これと螺合可能なねじが除酸素剤容器62に設けられ、これらを締結すると、除酸素剤容器62が発色試薬容器61開口部65を覆うようになっている。【0042】除酸素剤容器62は、図6に示すように、一方の底面に凹部を有する円筒形をなしており、内部に、不織布の袋に入った除酸素剤54が封入されている。凹部内壁には、発色試薬容器61の開口部65に設けられたねじと螺合可能なねじが形成されている。また、凹部が形成された底面の、凹部以外の面には、空気取り入れ用の貫通孔63が設けられており、凹部底面、すなわち、発色試薬容器61のねじと除酸素剤容器62のねじとを締結したとき、発色試薬容器61開口部65を覆うことになる面には、発色試薬容器61に空気を供給するための貫通孔64が設けられている。また、除酸素剤容器62は、試薬送出用チューブ51を嵌挿するための貫通孔(図示せず)が設けられている。【0043】本実施例においても、実施例1と同様に、発色試薬の劣化を回避することができる。この脱酸素機構58を用いれば、試薬容器61と脱酸素機構58との間に配管を設ける必要がなく、装置構成を単純にすることができるため好ましい。【0044】<実施例3>上述の各実施例では、除酸素剤54として還元鉄を用いたが、本実施例では還元銅を用いた。還元銅を用いて酸素を吸着させる場合、加熱することが望ましい。そこで、本実施例の脱酸素機構70は、図7に示すように、恒温装置72を備える。使用時には、筒状の容器73に入れた還元銅粉71を恒温装置72に装着し、銅粉71を常時加熱するようにする。除酸素剤容器73の両端には、それぞれチューブ75,76が取り付けられており、一方のチューブ76は大気中に開放されて空気取り入れ口となっている。また、他方のチューブ75は、分配器74を介して、発色試薬容器50および発色試薬用緩衝液容器への空気導入用チューブ52に接続されている。空気取り入れ用チューブ76から導入された空気は、恒温装置72により加熱された容器73内の還元銅粉71により酸素が除去された上で、空気送出用チューブ75および分配器74を経由して、各試薬容器および試薬用緩衝液容器に供給される。このように、本実施例においても、各試薬容器および試薬用緩衝液容器に供給される空気からは、酸素が除去されている。従って、本実施例においても、実施例1,2と同様に、試薬の劣化を回避することができる。【0045】なお、本実施例においては、使用済みの酸化銅を、容器73ごと恒温装置72から取り出し、再生処理を行って還元銅に戻すことにより、除酸素剤を再利用することができる。【0046】本実施例のアミノ酸分析計の、ここに示した以外の構成は、実施例1と同様である。また、ここでは、発色試薬供給部11についてのみ説明するが、本実施例においても、発色試薬供給部11と、発色試薬緩衝液供給部17とは同様の構成を有している。【0047】<実施例4>以上の各実施例では、容器に外気を導入する手段と、導入する外気から酸素を除去する手段とを設けていたが、本実施例では、柔軟性の高い材料からなる容器を発色試薬容器および発色試薬用緩衝液容器として用いることにより、試薬容器中に外気を導入することなく、試薬を供給することができる。つぎに、本実施例における発色試薬供給部11について説明する。なお、本実施例のアミノ酸分析計の、ここに示した以外の構成は、実施例1と同様である。また、ここでは、発色試薬供給部11についてのみ説明するが、本実施例においても、発色試薬供給部11と、発色試薬緩衝液供給部17とは同様の構成を有している。【0048】本実施例の発色試薬供給部11は、図8に示すように、発色試薬の封入された柔軟性の高い袋状の容器80(10cm×20cm)からなる。本実施例の発色試薬容器80としては、柔軟性および耐薬品性が高いことが望ましく、例えば、内壁がポリテトラフルオロエチレンでコーティングされたポリエステル製の袋などを用いることができる。【0049】本実施例の発色試薬容器80は、開口部がシリコーンゴムのシール81により封止されており、一方、本実施例の試薬送出用チューブ82の先端は、中空の針83になっている。本実施例の発色試薬容器80を使用する際は、この中空の針83を容器80のシール81に突き刺し、貫通させて用いるが、上述の各実施例と同様、ねじにより締結するようにしてもよい。なお、本実施例のアミノ酸分析計には、脱酸素機構58および空気導入用チューブ52は設けられていない。【0050】本実施例の発色試薬容器80は、発色試薬ポンプ12への配管82のみが接続され、大気開放されていない。このため、試薬が吸引されると、吸引により削減される体積を圧縮するように容器自体が縮小変形する。これにより、いかなるガスも容器内に侵入することがなく、試薬は酸素に触れることがない。従って、本実施例によっても、試薬の劣化を回避することができる。本実施例によれば、脱酸素機構58を設ける必要がないため、装置の構成を単純にすることができ、好ましい。【0051】【発明の効果】本発明によれば、配管や機構を複雑にすることなく、また、洗浄を困難にするような物質を使用することなく、液体クロマトグラフ装置において用いられる酸化されやすい発色試薬の変質を防止することができる。【図面の簡単な説明】【図1】アミノ酸分析計のシステム構成図である。【図2】実施例1における発色試薬供給部の構成例を示す模式図である。【図3】脱酸素機構の構成例を示す断面図である。【図4】検出結果の例を示すクロマトグラムである。【図5】時間経過に伴うピーク面積の推移を示すグラフである。【図6】実施例2における脱酸素機構の構成を示す断面図である。【図7】実施例3における脱酸素機構の構成を示す模式図である。【図8】実施例4における発色試薬供給部の構成を示す模式図である。【符号の説明】1〜4…緩衝液びん、5…カラム再生液びん、6…電磁弁、7…緩衝液ポンプ、8…アンモニアフィルタカラム、9…オートサンプラ、10…分離カラム、11…発色試薬供給部、12…発色試薬ポンプ、13…ミキサ、14…反応管、15…可視検出器、16…データ処理装置、17…発色試薬緩衝液供給部、18…フローセル、19…ランプ、30,31…ねじ、32…空気取り入れ用貫通孔、50…発色試薬容器、51…試薬送出用チューブ、52…空気導入用チューブ、52a…空気吸入用チューブ締結用ねじ部材、53…フィルタ、54…除酸素剤、55…除酸素剤容器、55a…除酸素剤容器蓋、55b…除酸素剤容器本体、56…発色試薬溶液(ニンヒドリン試薬)、57…試薬容器の蓋、58…脱酸素機構、59…空気導入用チューブ締結用突起部、60…空気取り入れ口、61…発色試薬容器、62…除酸素剤容器、63…空気取り入れ用貫通孔、64…空気供給用貫通孔、65…発色試薬容器開口部、70…脱酸素機構、71…還元銅粉、72…恒温装置、73…除酸素剤容器、74…分配器、75…空気送出用チューブ、76…空気取り入れ用チューブ、80…発色試薬容器、81…シール、82…試薬送出用チューブ、83…中空針、100…分離系、110…分析系、120…試薬供給系。 試料を分析する分析機構と、該分析機構に分析用の試薬を供給するための試薬供給機構とを有する分析装置において、上記試薬供給機構は、上記試薬を保持するための試薬容器と、上記試薬容器と上記分析機構とを連通可能に接続する試薬流路と、上記試薬容器から試薬を吸引し、上記試薬流路に供給する試薬吸引ポンプと、外部の空気を上記試薬容器に供給するための脱酸素機構とを有し、上記試薬容器は、上記試薬吸引ポンプよりも高い位置に配置され、且つ、上記脱酸素機構は、還元銅を保持するための除酸素剤容器と、上記除酸素剤容器を加熱する恒温装置と、外部の空気を上記除酸素剤容器内部に導入する空気流路と、を備えることを特徴とする分析装置。 上記試薬容器は、上記ポンプよりも50cm以上高い位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載の分析装置。