タイトル: | 特許公報(B2)_ジルコニウム基合金製部材への水素添加方法 |
出願番号: | 1998162874 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C23C 8/08,G01N 1/00,G01N 1/28 |
木戸 俊哉 小澤 正明 和田 諭 JP 3808629 特許公報(B2) 20060526 1998162874 19980527 ジルコニウム基合金製部材への水素添加方法 ニユークリア・デベロップメント株式会社 390031152 川井 治男 100075133 木戸 俊哉 小澤 正明 和田 諭 20060816 C23C 8/08 20060101AFI20060727BHJP G01N 1/00 20060101ALI20060727BHJP G01N 1/28 20060101ALI20060727BHJP JPC23C8/08G01N1/00 102BG01N1/28 NG01N1/28 K C23C 8/00-12/02 H01M 4/00-4/62 G01N 1/28 特開平06−345409(JP,A) 特開平05−144435(JP,A) 特開昭61−019063(JP,A) 特開平06−281764(JP,A) 特開平04−104096(JP,A) 特開平04−167362(JP,A) 特開平09−227974(JP,A) 8 1999335807 19991207 5 20050415 瀬良 聡機 【0001】【産業上の利用分野】この発明はジルコニウム基合金製部材に水素を添加する方法に関するものである。ジルコニウム基合金製の部品に水素を添加する必要がある場合がある。例えば原子炉の燃料被覆管等の炉心構成要素をジルコニウム基合金で形成する場合に、ジルコニウム基合金は中性子照射中に水素を吸収して組織が変化し、物理的特性、例えば機械的な特性が変化する。そこで、水素を吸収した燃料被覆管の機械的特性を測定すれば、新たな燃料被覆管の設計に反映させることができ、また、水素を吸収した燃料被覆管を模擬した試験片を入手することができれば、そのような測定が容易になる。このようなことから、水素を吸収したジルコニウム基合金製部材を忠実に再現した試験片を製造することが必要とされている。【0002】【従来の技術】ジルコニウム基合金への水素添加方法については、これまでに3種類が報告されている。(1)水素ガスまたは水素および不活性ガスの混合ガス中にてジルコニウム基合金を高温に保持する方法(ガス法)(2)水酸化リチウムを多量に添加した水中にジルコニウム基合金を浸し、高温高圧に保持する方法(浸漬法)(3)電解質中にジルコニウム基合金を陰電極として保持し、水の分解により生成される水素を吸収させる方法(電解法)【0003】【発明が解決しようとする課題】上記の(1)または(2)を用いた場合、ジルコニウム基合金に吸収された水素はその合金の肉厚方向に均一に分布し、室温状態では水素化物として一様に分布する。また、上記(3)を用いた場合は吸収された水素はジルコニウム基合金の極く表面のみに水素化物の偏析層を形成する。【0004】これに対し、原子炉で使用するジルコニウム基合金を用いた燃料被覆管では水素吸収による水素化物は管外面側に近付くほど濃度(析出量)が増大する分布を示すため、上記の(1)〜(3)の手法で製作された試験片では原子炉炉心内で中性子照射を受けて水素を吸収したジルコニウム基合金の表面を忠実に再現することにはならないので、有効かつ現実的な結果を得るのは困難である。【0005】この発明は上記の如き事情に鑑みてなされたものであって、適度な水素の濃度勾配をもったジルコニウム基合金製部材の製作方法、例えば原子炉で使用するジルコニウム基合金の機械的特性を、その合金で製作した試験片を使用して調べる方法において、実際に原子炉で使用された場合の水素の分布状態を簡便に再現し、より有効かつ現実的な測定結果を得るための試験片の製作方法を提供することを目的とするものである。【0006】【課題を解決するための手段】 この目的に対応して、この発明のジルコニウム基合金製部材への水素の添加方法は、その水素添加すべき外表面に水素透過性金属またはその合金を薄膜状に固着させた後、水素を含む雰囲気中に高温にて保持して水素の濃度勾配を持ったジルコニウム基合金製部を得ることを特徴としている。以下この発明の詳細を一実施例を示す図面について説明する。【0007】この発明のジルコニウム基合金製部材の水素添加方法は図1に示すように、薄膜形成過程2と水素吸収過程3とを含んでいる。【0008】薄膜形成過程2はジルコニウム基合金製のワ−ク4の表面のうちの水素を吸収させようとする部位に水素透過性金属の薄膜5を形成する過程である。水素透過製金属としてはニッケル、パラジウム、鉄、コバルト、白金等が使用可能である。【0009】薄膜の形成方法としてはメッキ、プレ−ティング等を使用することができる。この場合の薄膜の膜厚は材料によっても相違するが、1〜5μ程度である。【0010】薄膜形成過程2が終了したワ−クは水素吸収過程3に移される。水素吸収過程3では反応炉6内で水素を含む雰囲気中で所定の温度で所定時間保持される。雰囲気は水素または水素と不活性ガスとの混合体を使用する。雰囲気中の水素濃度は1%以上、好ましくは安全ガスの範囲または純水素までである。【0011】炉の温度は100℃〜1000℃、特に200℃〜500℃が好ましい。保持時間は雰囲気の成分との関係によって決定されるが240時間程度が好ましい。ワ−クはその後室温まで徐冷される。【0012】以上の過程によるジルコニウム基合金製部材への水素添加方法においては、ワ−クの表面に水素透過性の高いニッケル、パラジウム等の薄膜を生成することで、水素の表面での解離反応を助長することにより、解離・吸収された水素のジルコニウム合金内での拡散反応を上回る速度で水素を吸収させ、表面近傍での水素濃度を上昇させる。【0013】【実験例】図2は、原子炉で使用するジルカロイ−4燃料被覆管の表面に1〜5μmのニッケルをメッキした後、水素を50分の1気圧、アルゴンを50分の49気圧とした環境中で、300℃、100時間保持した結果得られた材料の横断面の金相写真である。図3に示す従来の高温法、図4に示す従来の浸漬法によるものに比べて水素化物8が適度にジルコニウム基合金7の表面近傍に分布をもって析出した材料が得られることがわかる。【0014】【発明の効果】以上の説明から明らかな通り、本発明によれば、適度な水素の濃度勾配を持ったジルコニウム基合金材料の製作が可能となり、従来、得ることができなかった原子炉で使用するジルコニウム基合金の機械的特性評価用の試験片が容易に取得可能となる。【図面の簡単な説明】【図1】この発明のジルコニウム基合金製部材の水素添加方法の過程を示すブロック図【図2】本発明の実施例により得られたジルコニウム基合金材料の顕微鏡写真【図3】従来の技術(ガス法)により製作されたジルコニウム基合金材料の顕微鏡写真【図4】従来の技術(電解法)により製作されたジルコニウム集合金材料の顕微鏡写真【符号の説明】2 薄膜形成過程3 水素吸収過程4 ワ−ク5 薄膜6 反応炉7 ジルコニウム基合金被覆管(横断面)8 水素化物 ジルコニウム基合金製部材への水素添加において、その水素添加すべき外表面に水素透過性金属またはその合金を薄膜状に固着させた後、水素を含む雰囲気中に高温にて保持して水素の濃度勾配を持ったジルコニウム基合金製部材を得ることを特徴とするジルコニウム基合金製部材への水素添加方法。 前記水素透過性金属はニッケル、パラジウム、鉄、コバルト、白金等またはそれらの合金であることを特徴とする請求項1記載のジルコニウム基合金製部材への水素添加方法。 前記水素透過性金属を前記ジルコニウム基合金製部材にメッキ、プレーティング、スパッタリングその他の金属薄膜形成法で固着させることを特徴とする請求項1記載のジルコニウム基合金製部材の水素添加方法。 前記雰囲気中における水素濃度は安全ガスの範囲または純水素であることを特徴とする請求項1記載のジルコニウム基合金製部材の水素添加方法。 前記加熱の温度は200〜500℃であることを特徴とする請求項1記載のジルコニウム基合金製部材の水素添加方法。 前記雰囲気中における保持時間は1時間〜20日間であることを特徴とする請求項1記載のジルコニウム基合金製部材の水素添加方法。 前記ジルコニウム基合金製部材は原子炉構成材の試験片であることを特徴とする請求項1記載のジルコニウム基合金製部材の水素添加方法。 ジルコニウム基合金製部材への水素添加において、その水素添加すべき外表面に水素透過性金属またはその合金を薄膜状に固着させた後、水素を含む雰囲気中に高温にて保持して水素の濃度勾配を持ったジルコニウム基合金製部材を得るジルコニウム基合金製部材への水素添加方法であって、前記水素透過性金属はニッケル、パラジウム、鉄、コバルト、白金等またはそれらの合金であり、前記水素透過性金属を前記ジルコニウム基合金製部材にメッキ、プレーティング、スパッタリングその他の金属薄膜形成法で固着させ、前記雰囲気中における水素濃度は安全ガスの範囲または純水素であり、前記加熱の温度は200〜500℃であり、前記雰囲気中における保持時間は1時間〜20日間であり、前記ジルコニウム基合金製部材は原子炉構成材の試験片であることを特徴とするジルコニウム基合金製部材への水素添加方法。