生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_新規化合物又はその薬理上許容される塩並びにそれらを有効成分とする抗酸化剤
出願番号:1998158952
年次:2007
IPC分類:C07C 59/52,A61K 31/192,A61P 39/06,C09K 15/08


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八木 國夫 林 勝廣 幸村 定昭 大石 誠子 JP 3976890 特許公報(B2) 20070629 1998158952 19980608 新規化合物又はその薬理上許容される塩並びにそれらを有効成分とする抗酸化剤 財団法人応用生化学研究所 591235603 佐々木 功 100063174 川村 恭子 100087099 八木 國夫 林 勝廣 幸村 定昭 大石 誠子 20070919 C07C 59/52 20060101AFI20070830BHJP A61K 31/192 20060101ALI20070830BHJP A61P 39/06 20060101ALI20070830BHJP C09K 15/08 20060101ALI20070830BHJP JPC07C59/52A61K31/192A61P39/06C09K15/08 C07C 1/00-409/44 A61K 31/00-31/327 A61P 39/06 C09K 15/00-15/34 CA(STN) REGISTRY(STN) MARPAT(STN) 特開平8−268885(JP,A) 特開平9−141002(JP,A) Brown, G. D.,Phenylpropanoids and other secondary metabolites from Baccharis linearis,Phytochemistry,1994年,Vol.35,No.4,p.1037-1042 2 1999349526 19991221 11 20050531 中野 孝一 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、新規化合物並びに該化合物を有効成分として含有する抗酸化物質に関する。【0002】【従来の技術及びその課題】生体内において、活性酸素等の種々の因子により、脂質の過酸化が生じることは良く知られている。また、この過酸化脂質の生体内における増量が虚血性心疾患、動脈硬化症、虚血性脳障害、肝炎、白内障等の各種疾患並びに老化に深く関与していることが近年多数報告されている。しかしながら、現在までに報告されてきた上記疾患の予防並びに治療剤等は何れも製法が困難であったり、その安定性や作用の点で十分でなく、目的にかなうものはなかった。【0003】これらの事情に鑑み、本発明者等は従前から抗酸化作用を有し過酸化脂質の生成及び増量を抑制する化合物に関する検討を試みており、Astereae baccharis 属の植物又はプロポリスに含まれる 3,5-ジプレニル-4-ヒドロキシ桂皮酸及びその塩が優れた過酸化脂質増量抑制作用を有することを見出している (特開平 8 -268885 号公報)。【0004】一方、上記の化合物に類似した構造を有する化合物のうち、下記の式 (III) にて示されるカフェ酸【0005】【化3】【0006】及び下記の式 (IV) にて示されるフェルラ酸【化4】【0007】も抗酸化作用を有することが知られているが、何れの化合物も、その抗酸化作用は十分ではないことが報告されている ["J. Agric. Food Chem."、Vol.35、pages 808 - 812 (1987)]。その他、本発明に係る化合物 (I) に構造が類似する物質として、下記の式 (V) にて示される化合物【0008】【化5】(式中、R は -CH2-CH=C-(CH3)2 を意味する)【0009】["Indian J. Chem. Sect. B"、Vol.15B No.2、pages 200 (1977)]、並びに式 (VI) 及び (VII) にて示される化合物【0010】【化6】(式中、R は -CH2-CH=C-(CH3)2 を意味する)【0011】【化7】(式中、R は -CH2-CH=C-(CH3)2 を意味する)【0012】["Phytochemistry"、Vol.35、No.4、pages 1037 - 1042 (1994)] が知られているが、これらの化合物の抗酸化作用に関する報告はなされていない。【0013】抗酸化作用を有し、生体内において過酸化脂質の生成並びに増量を抑制する物質は、前記疾患の予防や治療並びに老化の予防に対して極めて有効なものと考えられる。従って本発明の課題乃至目的は、抗酸化作用を有し、過酸化脂質の生成並びに増量を効果的に抑制する新規な物質を提供することにある。【0014】【課題を解決するための手段】本発明者等は、既述の課題を解決するため、ミツバチの巣の強化に用いられている物質であり、花芽や樹皮から集めた成分とミツバチの唾液とが混じり合ったもので赤みがかった樹脂状物質であって「蜂蝋」、「蜂やに」とも称されるプロポリス (Propolis) の有する抗酸化物質について検討を行っている過程において、一般式 (I)【化8】(式中、Me はメチル基を意味する)にて示される 3-[3,4-ジヒドロキシ-5-(3-メチル-2-ブテニル)フェニル]-2-プロペノイック酸、又はその薬理上許容される塩が新規化合物であって且つ優れた抗酸化作用を有することを見出し、上記課題を解決すると共に本発明を完成するに至ったのである。【0015】本発明に係る化合物 (I) 並びにその塩を得るには、プロポリスを破砕し、単独或いは二種以上の溶媒を添加して所望化合物の抽出を行う。【0016】溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール、アセトン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、クロロホルム等の有機溶媒若しくは水を例示することができる。【0017】溶媒を添加した後、室温で撹拌し、溶媒中に目的とする化合物を溶出させる。その後濾過等により溶媒と残渣に分離し、抽出液の溶媒を減圧下に留去し、得られた濃縮液を採取する。また、必要に応じて該抽出液から溶媒を除去した残渣に上記の溶媒を添加し、再度抽出処理を行うことにより、目的とする化合物を含有する抽出物を得る。【0018】得られた抽出物はカラムクロマトグラフィーを用いて精製することができる。カラムクロマトグラフィーの担体としては、ポーラスポリマー [ダイヤイオン HP-20 (商品名) 三菱化学社製等]、セファデックス [セファデックス LH-20 (商品名) ファルマシアバイオテク社製等]、順相系シリカゲル、逆相系シリカゲル、ポリアミド、活性炭、セルロース等を例示することができる。【0019】各精製処理により得られた画分は、次の精製処理に付される前に、各画分毎に脂質過酸化抑制試験が行われ、その結果過酸化抑制作用の認められた画分が選択されて次の精製処理に付される。この画分の選択は、脂質過酸化抑制試験の他、薄層クロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーによる目的成分のピークを確認することによっても行うことができる。【0020】精製処理に際しては、各精製処理の段階に応じて適当な担体を適宜選択し、反復して行うことが望ましい。【0021】上記の操作を繰り返すことにより、最終的に 3-[3,4-ジヒドロキシ-5-(3-メチル-2-ブテニル)フェニル]-2-プロペノイック酸を得ることができる。また、必要に応じて再結晶化により所望化合物を精製することもできる。【0022】尚、精製は上記のカラムクロマトグラフィーを用いて行うことができるが、少量の試料を効率よく精製する場合は、分取高速液体クロマトグラフィー又は分取薄層クロマトグラフィーを用いて行うこともできる。【0023】上記のようにして得られた化合物 (I) は公知の抗酸化物質であるカフェ酸、フェルラ酸及び食品の酸化防止剤として使用されるブチルヒドロキシトルエン (BHT) よりも高い脂質過酸化抑制作用を有している。従って、優れた抗酸化剤として、虚血性心疾患、動脈硬化症、虚血性脳障害、肝炎、白内障等、過酸化脂質の増量を原因とする各種疾患の治療並びに老化予防において極めて有効なものと考えられる。【0024】本発明に係る化合物 (I) の塩は当然のことながら薬理的に許容し得る物であって、例えば、アルカリ金属化合物 (水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等) との塩、アルカリ土類金属化合物 (水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等) との塩、アンモニウム塩、有機塩基 (トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジベンジルアミン、α-フェネチルアミン等) との塩等を例示することができる。【0025】製剤化は常法により行うことができ、この場合の剤型に格別の制限はなく、基剤、賦形剤、添加剤等の補助剤を配合することができ、該補助剤の種類に応じて注射剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、軟膏剤等になされ る。投与量は投与目的(予防又は治療)、剤型、投与経路、疾患の種類や程度、患者の年齢、体重等のファクタに依存するが、有効成分である化合物又は塩の量として 1 日当たり 0.1 - 20mg/kg 程度が適当である。【0026】尚、公知化合物であってプロポリスから得られる 3,5-ジプレニル-4-ヒドロキシ桂皮酸及びその塩は、該化合物を 1.0g/kg 含有する製剤を ddy 系マウスに経口投与した急性毒性試験においてマウスの挙動に変化はなく、死亡例もなかったことが既に確認されている (特開平 8 - 268885 号公報)。一方、本発明による化合物もプロポリスから分離精製された化合物であり、化学構造も類似しているために上記化合物と同様にその毒性は極めて低く、安全性は高いものと推定される。【0027】【実施例】次に、製造例及び薬理試験例等により、本発明を更に詳細に且つ具体的に説明する。【0028】製造例ブラジル産プロポリス 230g をカッターミキサー [「ロボクープ」(商品名)、エフエムアイ社製] により破砕し、得られた破砕プロポリス 216g に 70%(v/v)エタノール溶液を添加し、室温で約 1 日間撹拌することにより抽出処理を行い、次いで得られた抽出液の溶媒を減圧下留去することにより、抽出エキス 103g を得た。【0029】この抽出エキスを水 7.5 L に懸濁した後、ジエチルエーテル 16 L を添加して抽出処理を行い、そのジエチルエーテル層を蒸発乾固させることにより、残渣71g を得た。この残渣をシリカゲル (ヤトロン社製) カラムクロマトグラフィーに付し、クロロホルム、クロロホルム-メタノール混合溶媒にて順次溶出した。【0030】得られた画分について、リノール酸の過酸化反応に対する抑制試験を行い (詳細については後述の薬理試験例を参照)、このうち過酸化抑制作用が認められたクロロホルム-メタノール混合比 (v/v) が 10 : 1 である溶媒で溶出された画分を分取し、これをシリカゲル (富士シリシア化学社製) カラムクロマトグラフィーに付し、得られた画分について前記と同様にリノール酸過酸化抑制試験を行い、展開溶媒として用いたクロロホルム-メタノール混合比が 20 : 1 - 10 : 1 である溶媒で溶出された画分 4.7g を分取した。【0031】この画分を、展開溶媒として 55〜65%(v/v) メタノール溶液を使用した逆相系 DMS シリカゲルカラムクロマトグラフィー及び、70%(v/v) メタノール溶液を使用した逆相系 ODS シリカゲルカラムクロマトグラフィー(何れの担体も富士シリシア化学社製) に順次付し、前記のリノール酸過酸化抑制試験を行い、 150mg の目的成分を含有する画分を得た。【0032】更にこの画分をシリカゲル (メルク社製) カラムクロマトグラフィーに付し、クロロホルム-メタノール混合比 (v/v) が 10 : 1 - 5 : 1 である溶媒で溶出された画分を分取した。ついでこの溶液の溶媒部分を留去し、乾燥させた後、得られた濃縮乾燥残渣について、70%(v/v) メタノール溶液を展開溶媒として使用したセファデックス LH-20 カラムクロマトグラフィーで精製することにより、所望の 3-[3,4-ジヒドロキシ-5-(3-メチル-2-ブテニル)フェニル]-2-プロペノイック酸 [以下、化合物 (I) と略記する] 24mg を得た。【0033】得られた化合物 (I) の理化学的性質を以下に示す。(1) 性状 : 淡黄色粉末(2) 融点 : 178〜180℃(3) 分子量 : 248(4) 分子式 : C14H16O4【0034】(5) FAB (+) 質量スペクトル (m/z): 249 [M+H]+【0035】(6) 核磁気共鳴スペクトル (CD3OD):1H (270MHz)δppm:1.72 (3H, s),1.74 (3H, s),3.29 (2H, m),5.31 (1H, m),6.17 (1H, d, J = 15.8Hz),6.79 (1H, d, J = 2.0Hz),6.89 (1H, d, J = 2.0Hz),7.48 (1H, d, J = 15.8Hz)【0036】13C (68MHz)δppm:17.9 (q),26.0 (q),29.1 (t),112.4 (d),115.6 (d),123.3 (d),123.7 (d),127.0 (s),129.9 (s),133.3 (s),146.3 (s),147.2 (d),147.4 (s),171.6 (s)【0037】(7) 赤外部吸収スペクトル (KBr 錠剤法):ν(cm-1) : 3551, 3290, 3100〜2800, 1668, 1607, 1593, 1518, 1445, 1306, 1281, 1234, 1198, 978【0038】(8) 薄層クロマトグラフィー:シリカゲル薄層:HPTLC Silica gel 60 F254s Art5628 メルク社製展開溶媒 :クロロホルム/メタノール = 10 : 1 (v/v)検出 :紫外部吸収 (波長 254nm)Rf :0.19【0039】逆相系シリカゲル薄層:HPTLC RP-18 WF254s Art13124 メルク社製展開溶媒 :80%(v/v) メタノール溶液検出 :紫外部吸収 (波長 254nm)Rf :0.66【0040】(9) 高速液体クロマトグラフィー:カラム :東ソー TSKgel-ODS80TM, 4.6mm ID×150mm, 5μm溶離液 :水/メタノール/酢酸 = 47 : 50 : 3 (v/v)流速 :1ml/min温度 :37℃検出 :紫外部吸収 (波長 275nm)保持時間:13.7min【0041】尚、上記の物理化学データは、以下の機器により測定した。融点 :柳本製作所 ミクロ融点測定装置FAB(+)質量スペクトル:日本電子 JEOL-Mstation JMS700 質量分析装置核磁気共鳴スペクトル:日本電子 JEOL-EX270 核磁気共鳴装置赤外部吸収スペクトル:島津製作所 FTIR-8300 赤外分光光度計高速液体クロマトグラフィー:島津製作所 LC-4A 高速液体クロマトグラフ装置【0042】薬理試験例(本発明に係る化合物の脂質過酸化抑制作用の検討)a) 各試薬液の調製20mM リン酸ナトリウム緩衝液 (pH7.4) 80ml に、非イオン界面活性剤 [「ルブロール PX」(商品名)、アムレスコ社製] を 0.24g 溶解させ、0.3%ルブロールPX-20mMリン酸ナトリウム緩衝液を調製した。この緩衝液 62ml に、600mM リノール酸エタノール溶液 0.35ml を添加し、超音波発生器 (ブランソン社製) にて超音波処理し、均一に分散されたリノール酸ルブロール溶液を調製した。ま た、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン) 2 塩酸塩 (以下、AAPH と略記する) 13.6mg を上記のルブロールPX-リン酸ナトリウム緩衝液 10ml に溶解し、5mM AAPH 溶液を調製した。【0043】b) 測定ガラスチューブに上記のリノール酸ルブロール溶液 0.89 ml を採取し、次いで被検物質として、既述の製造例で得られた化合物 (I)、又は比較物質であるカフェ酸、フェルラ酸並びにブチルヒドロキシトルエン (以下、BHT と略記する) を種々の濃度でジメチルスルホキシド (以下、DMSO と略記する) に溶解した検体溶液 10μl を加え、ボルテックスミキサーで攪拌した。更に 5mM AAPH 溶液 100μl を添加、攪拌した後、37℃ にて遮光静置し、1 時間反応させた (反応溶液の最終濃度:リノール酸 3mM、AAPH 0.5mM)。【0044】反応後、該溶液にメタノール 1ml を加えて攪拌し、この溶液より 1ml を別の試験管にとり、更に 70%(v/v) メタノール溶液 4ml を加えて攪拌し、被験溶液とした。この被験溶液について、紫外分光光度計「島津分光光度計 UV-250」(島津製作所製) により 234nm の吸光度を測定し、生成したリノール酸ヒドロペルオキシド量を求めた。【0045】尚、被験溶液と同容量の DMSO を添加して同様に処理したものを対照とし、各検体のリノール酸ヒドロペルオキシド生成抑制率を算出することにより 50%生成抑制率 (IC50) を求めた。【0046】結果は下記の表1に示す通りであり、本発明に係る化合物 (I) は、公知の抗酸化物質であるカフェ酸、フェルラ酸及び BHT よりも優れた脂質過酸化抑制作用を有することが明らかとなった。【0047】【表1】【0048】製剤例1(局皮用注射剤)下記の表2に示す諸成分を配合し、常法により局皮用注射剤を調製した。【0049】【表2】【0050】製剤例2(錠剤)下記の表3に示す諸成分を配合し、常法により錠剤を調製した。【0051】【表3】【0052】製剤例3(ソフト・カプセル剤)下記の表4に示す諸成分を配合し、常法によりソフト・カプセルを調製した。【0053】【表4】【0054】【発明の効果】本発明に係る化合物である、3-[3,4-ジヒドロキシ-5-(3-メチル-2-ブテニル)フェニル]-2-プロペノイック酸及びその塩は、優れた抗酸化作用及び過酸化脂質の増量抑制作用を有しており、活性酸素等の種々の因子による脂質の過酸化が発症の要因の一つとされている虚血性心疾患、動脈硬化症、虚血性脳障害、肝炎、白内障等の各種疾患の予防や治療並びに老化の予防に対して極めて有効なものと考えられる。 式 (I)(式中、Me はメチル基を意味する)にて示される 3-[3,4-ジヒドロキシ-5-(3-メチル-2-ブテニル)フェニル]-2-プロペノイック酸、又はその薬理上許容される塩。 式 (II)(式中、Me はメチル基を意味する)にて示される 3-[3,4-ジヒドロキシ-5-(3-メチル-2-ブテニル)フェニル]-2-プロペノイック酸、又はその薬理上許容される塩を有効成分として含有する抗酸化剤。


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