タイトル: | 特許公報(B2)_テストステロン5α−レダクターゼ阻害剤 |
出願番号: | 1998155390 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | A61K 8/97,A61K 36/18,A61P 17/08,A61P 17/14,A61Q 7/00,A61Q 19/00 |
神原 敏光 岸田 直子 JP 4455682 特許公報(B2) 20100212 1998155390 19980521 テストステロン5α−レダクターゼ阻害剤 丸善製薬株式会社 591082421 早川 裕司 100108833 鈴木 啓靖 100112830 神原 敏光 岸田 直子 20100421 A61K 8/97 20060101AFI20100401BHJP A61K 36/18 20060101ALI20100401BHJP A61P 17/08 20060101ALI20100401BHJP A61P 17/14 20060101ALI20100401BHJP A61Q 7/00 20060101ALI20100401BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20100401BHJP JPA61K8/97A61K35/78 CA61P17/08A61P17/14A61Q7/00A61Q19/00 A61K8/00-99 Planta Medica,第63巻,第6号,p.582 Yaoxue Xuebao,第28巻,第1号,p.40−44 特開昭62−93215号公報 特開平9−157139号公報 特開平7−10722号公報 特開昭60−126218号公報 特開昭58−193689号公報 特開昭60−81122号公報 3 1999335232 19991207 9 20050517 2006021512 20060925 内田 淳子 上條 のぶよ 穴吹 智子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、テストステロンを5α−ジヒドロテストステロンに還元する酵素・テストステロン5α-レダクターゼの作用を阻害する新規なテストステロン5α-レダクターゼ阻害剤、ならびにそれを含有させてなる頭髪化粧料および皮膚化粧料に関するものである。【0002】【従来の技術】多くのステロイドホルモンは産生臓器から分泌された分子型で受容体と結合してその作用を発現するが、アンドロゲンと総称される男性ホルモンの場合、たとえばテストステロンは標的臓器の細胞内に入ってテストステロン5α−リダクターゼにより5α−ジヒドロテストステロン(5α−DHT)に還元されてから受容体と結合し、アンドロゲンとしての作用を発現する。【0003】アンドロゲンは重要なホルモンではあるが、それが過度に作用すると男性型禿頭、多毛症、脂漏症、座瘡、前立腺肥大症、前立腺腫瘍、男児性早熟等、さまざまな好ましくない症状を誘発する。そこで、過剰のアンドロゲンの作用を抑制することによりこれら好ましくない症状を改善することが考えられるが、その手段としては、テストステロンを5α−DHTに還元するテストステロン5α−リダクターゼの作用を阻害することにより活性な5α−DHTを生じるのを抑制する方法と、テストステロンから生じた5α−DHTが受容体と結合するのを阻害することにより男性ホルモン作用を発現させない方法とが有り得る。【0004】これらの方法については多くの生薬抽出物が有効であることが知られている。たとえば、特開昭60−146829号公報に記載されているテストステロン5α-レダクターゼ阻害剤は、アセンヤク、ウイキョウ、カンゾウ、ケンゴシ、ゴバイシ、シャクヤク、シャゼンシ、センソ、ダイオウ、チョウジ、ビンロウジ、ロジン、カッコウアザミ、ゲンノショウコ、カゴソウ、サイコ、インチン、エイジツ、ヨクイニン、ソヨウ、ニガキ、ケイガイ、キササゲ、ジョウザン、カノコソウ等のエキスを有効成分とするものである。【0005】【課題を解決するための手段】 本発明は、ランタナ(Lantana camara L.)の根部のエタノールまたはエタノールと水との混合物による抽出物を有効成分とするテストステロン5α-レダクターゼ阻害剤、ならびにこれを含有させてなる頭髪化粧料および皮膚化粧料を提供するものである。【0006】【課題を解決するための手段】本発明は、ランタナ(Lantana camara L.)の根部から水、脂肪族低級アルコール、1,3-ブチレングリコール、またはこれらの混合物等により抽出されるテストステロン5α-レダクターゼ阻害物質を有効成分とするテストステロン5α-レダクターゼ阻害剤、ならびにこれを含有させてなる頭髪化粧料および皮膚化粧料を提供するものである。【0007】【発明の実施の形態】ランタナはくまつづら科に属する小低木であって、その花が開花後少しずつ色を変えることにより日本では七変化(しちへんげ)とも呼ばれる。【0008】この植物は葉部が有毒物質を含み、そのため草食性家畜の牧場では有害な植物とされている。しかし、この有毒物質は本発明のテストステロン5α-レダクターゼ阻害剤の原料となる根部には含まれていないし、また、本発明のテストステロン-5α-レダクターゼ阻害剤の有効成分となるものが毒性を示すこともない。【0009】ランタナの根部が含有するテストステロン5α-レダクターゼ阻害物質の詳細は不明であるが、乾燥し細切りまたは粉砕した根部を水、脂肪族低級アルコール(例えばエタノール)、1,3-ブチレングリコール、またはこれらの混合物を用いて抽出処理すると容易に溶出して来る。得られる抽出液は、適宜濃縮、乾燥すればそのまま本発明のテストステロン5α-レダクターゼ阻害剤として使用可能であるが、テストステロン5α-レダクターゼ阻害作用に必要に応じて簡単な精製処理を施してもよい。【0010】得られた抽出物は、この種の植物抽出物製剤化の常法に従って単独で、あるいは適当な助剤を用いて、外皮用剤、内服剤、注射剤、座薬等の形に製剤化する。外皮用剤の剤形としてはトニック、リンス、ローション、クリーム、乳液、パック、軟膏、浴用剤等、任意の剤形が可能であり、また、内服剤としては錠剤、カプセル剤、散剤、液剤等が可能である。【0011】本発明のテストステロン5α-レダクターゼ阻害剤は、男性型禿頭、多毛症、脂漏症、座瘡、前立腺肥大症等、テストステロン-5α-レダクターゼの作用を抑制することが意味あるすべての用途に単独で利用するほか、任意の皮膚外用剤、化粧料、医薬品等の構成成分として広く利用することができるが、特に頭髪化粧料、皮膚化粧料等の皮膚外用剤、および前立腺肥大治療剤の主剤として好適なものである。【0012】皮膚外用剤構成成分として用いる場合は、用途に応じた任意の生理活性物質や助剤、たとえば収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素消去剤等を併用すれば、より一般性のある製品となる。また、それにより、併用された他の有効成分との間の相乗作用が通常期待される以上の優れた効果をもたらすことがある。【0013】本発明によるテストステロン5α-レダクターゼ阻害剤およびそれを含有させた皮膚外用剤に配合することにより好結果が期待できるものの具体例としては次のようなものがある。【0014】収斂剤:クエン酸,酒石酸,乳酸またはこれら有機酸類の塩;塩化アルミニウム,硫酸アルミニウム・カリウム,アラントインクロルヒドロキシアルミニウム,アラントインジヒドロキシアルミニウム,パラフェノールスルホン酸亜鉛,硫酸亜鉛,ワレモコウエキス,エイジツエキス,ハマメリスエキス,ゲノショウコエキス,チャカテキン類,ヨモギエキス,オドリコソウエキス,オトギリソウエキス,ダイオウエキス,ヤグルマソウエキス,スギナエキス,キズタエキス,キューカンバーエキス,マロニエエキス,サルビアエキス,メリッサエキス。【0015】殺菌・抗菌剤:安息香酸,安息香酸ナトリウム,パラオキシ安息香酸エステル,塩化ジステアリルメチルアンモニウム,塩化ベンゼトニウム,塩化アルキルジアミノエチルグリシン,塩酸クリルヘキシジン,オルトフェニルフェノール,感光色素101号,感光色素201号,サリチル酸サリチル酸ナトリウム,ソルビン酸,ハロカルバン,レゾルシン,パラクロロエノール,フェノキシエタノール,ビサボロール,ヒノキチオール,メントール,キトサン,キトサン分解物,ワレモコウエキス,クジンエキス,エンメイソウエキス,ビワエキス,ウワウルシエキス,ホップエキス,ユッカエキス,アロエエキス,ケイヒエキス,ガジュツエキス等。【0016】美白剤:アスコルビン酸およびその誘導体,イオウ,胎盤抽出物,コウジ酸およびその誘導体,グルコサミンおよびその誘導体,アゼラインおよびその誘導体,アルブチンおよびその誘導体,ヒドロキシケイヒ酸およびその誘導体,グルタチオン,アルニカエキス,オウゴンエキス,センキュウエキス,ソウハクヒエキス,サイコエキス,ボウフウエキス,ハマボウフウエキス,マンネンタケ菌糸体培養物またはその抽出物,ギムネマエキス,シナノキエキス,モモ葉エキス,ダイオウエキス,ボタンピエキス,ハマメリスエキス,セイヨウトチノキエキス,オトギリソウエキス,オドリコソウエキス,油溶性甘草エキス(カンゾウ疎水性フラボン,グラブリジン,グラブレン,リコカルコンA)等。【0017】紫外線吸収剤:β−イソプロピルフラノン誘導体,ウロカニン酸,ウロカニン酸エチル,オキシベンゾン,オキシベンゾンスルホン酸,テトラヒドロキシベンゾフェノン,ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン,ジヒドロキシベンゾフェノン,シノキサート,ジイソプロピルケイ皮酸メチル,メトキシケイ皮酸オクチル,パラアミノ安息香酸およびそのエステル,ブチルメトキシジベンゾイルメタン,酸化チタン,β−カロチン,γ−オリザノール,米ヌカエキス,アロエエキス,カバノキエキス,シラカバエキス,カミツレエキス,コゴメグサエキス,セイヨウサンザシエキス,ヘンナエキス,キョウチグルミエキス,セイヨウトチノキエキス,イチョウ葉エキス,カミツレエキス,油溶性甘草エキス等。【0018】保湿剤:セリン,グリシン,スレオニン,アラニン,コラーゲン,加水分解コラーゲン,ヒドロネクチン,フィブロネクチン,ケラチン,エラスチン,ローヤルゼリー,コンドロイチンヘパリン,グリセロリン脂質,グリセロ糖脂質,スフィンゴリン脂質,スフィンゴリン糖脂質,リノール酸またはそのエステル類,エイコサペンタエン酸またはそのエステル類,ペクチン,アルゲコロイド,ビフィズス菌発酵物,乳酸菌発酵物,酵母抽出物,レイシ菌糸体培養物またはその抽出物,小麦胚芽油,アボガド油,コメハイガ油,ホホバ油,大豆リン脂質,γ−オリザノール,ビロウドアオイエキス,ヨクイニネキス,ジオウエキス,タイソウエキス,カイソウエキス,キダチアロエエキス,ゴボウエキス,セイヨウトチノキエキス,マンネンロウエキス,アルニアエキス,小麦フスマ,コメヌカエキス等。【0019】細胞賦活剤:リボフラビンまたはその誘導体,ピリドキシンまたはその誘導体,ニコチン酸またはその誘導体,パントテン酸またはその誘導体,α−トコフェロールまたはその誘導体,アルニカエキス,ニンジンエキス,オタネニンジンエキス,エゾウコギエキス,ヘチマエキス,ベニバナエキス,アシタバエキス,ビワ葉エキス,ヒキオコシエキス,ユキノシタエキス,黄杞エキス,サルビアエキス,ニンニクエキス,マンネンロウエキス等。【0020】消炎・抗アレルギー剤:アズレン,アラントイン,アミノカプロン酸,インドメタシン,塩化リゾチーム,イプシロンアミノカプロン酸,オキシベンゾン,グリチルリチン酸またはその誘導体,グリチルレチン酸またはその誘導体,感光色素301号,同401号,塩酸ジフェンヒドラミン,トラネキサム酸またはその誘導体,アデノシンリン酸,エストラジオール,エスロン,エチニルエストラジオール,コルチゾン,ヒドロコルチゾン,プレドニゾロン,プロゲステロン,コルチコステロン,アルニカエキス,インチンコウエキス,サンシンエキス,ジュウヤクエキス,セイヨウトチノキエキス,カンゾウエキス,トウキエキス,ヨモギエキス,ワレモコウエキス,リンドウエキス,サイコエキス,センキュウエキス,ボウフウエキス,セイヨウノコギリソウエキス,シソエキス等。【0021】抗酸化・活性酸素消去剤:ジブチルヒドロキシトルエン,ブチルヒドロキシアニソール,没食子酸プロピル,バイカリン,バイカレイン,スーパーオキサイドディスムターゼ,カタラーゼ,ローズマリーエキス,メリッサエキス,オウゴンエキス,エイジツエキス,ビワ葉エキス,ホップエキス,ハマメリスエキス,シャクヤクエキス,セージエキス,キナエキス,カミツレエキス,ユーカリエキス,シソエキス,イチョウ葉エキス,タイムエキス,カルダモンエキス,キャラウェイエキス,ナツメグエキス,メースエキス,ローレルエキス,クローブエキス,ターメリックエキス,ヤナギタデエキス等。【0022】【実施例】製造実施例1細切りしたランタナの根部乾燥物100gに抽出溶媒800mlを加え、還流抽出器で2時間加熱抽出し、熱時濾過する。残渣についてさらに2回同様の抽出処理を行う。得られた抽出液を合わせて減圧下に濃縮し、さらに乾燥して、ランタナ抽出物を得る。上記抽出を5種類の抽出溶媒により行なった。各例による抽出物の収量は表1のとおりであった。【0023】【表1】【0024】試験例1製造実施例1による各ランタナ抽出物について、下記の試験法によりテストステロン5α-レダクターゼ阻害作用および蛋白変性作用を試験した。【0025】テストステロン5α-レダクターゼ阻害作用:テストステロン(東京化成)4.2mgをプロピレングリコール1mlに溶解し、その20μlに、NADPH(オリエンタル酵母社製)を濃度が1mg/mlになるように溶解した5mMトリス塩酸緩衝液(pH7.2)825μlを加えて混合する。さらに、試料のエタノール溶液80μlおよびS-9(ラット肝ホモジネート;オリエンタル酵母社製)75μlを混合し、37℃で30分間インキュベートする。その後、塩化メチレン1mlを加えて反応を停止させ、塩化メチレン層を分取して、反応生成物であるジヒドロキシテストステロン、アンドロスタンジオール等をガスクロマトグラフィーにより定量する。別にコントロールとして、試料溶液の代わりにその溶媒だけを同量添加した場合について同様に処理し分析する。試料無添加時の反応生成物量に対する試料添加時の反応生成物量の比率を求め、テストステロン5α-レダクターゼ阻害率とする。【0026】上記方法において、反応液中の試料濃度を種々変更して各濃度におけるテストステロン5α-レダクターゼ阻害率を求め、その結果から内挿法により、酵素活性を50%阻害する試料濃度IC50を求める。【0027】蛋白変性作用:胎児血清アルブミン(Fr.V:SIGMA)を0.02%溶解したリン酸緩衝液(pH6.8)9mlにランタナ抽出物溶液1mlを加え、10分間撹拌した後、メンブランフィルターで濾過し、液体クロマトグラフィーにより残存アルブミンを定量する。試験結果を表2に示す。【0028】【表2】【0029】試験例2:皮脂分泌抑制作用の試験健常被験者10名の前額部の左側部に製造実施例1によるランタナ抽出物の0.2%エタノール溶液を含浸させた脱脂綿を絆創膏で固定し、右側部にはエタノールを含浸させた脱脂綿を固定する。8時間経過後、各脱脂綿を取り外し、エタノールで抽出して脱脂綿に吸収された皮脂を回収し、その中のスクワレンをガスクロマトグラフィーで定量する。左右の脱脂綿について定量されたスクワレンの量の差から、試料の皮脂分泌抑制率を算出する。3種類のランタナ抽出物について上記試験を行なった結果を表3に示す。【0030】【表3】【0031】試験例3:養毛育毛作用の試験男性型脱毛症および頭部脂漏性皮膚炎の症状を有する25歳から45歳までの男性10人を5人ずつの使用群と不使用群に分け、使用群には製造実施例1によるランタナ80%エタノール抽出物を0.2重量%含有する50%エタノール水溶液を一カ月間、一日2回、朝と夜に、通常使用しているヘアトニックに換えて使用させた。不使用群には、通常使用しているヘアトニックに換えて50%エタノール水溶液を、同じ条件で使用させた。試験開始日と試験終了日に同一条件で全員に洗髪させて、そのときの脱毛本数を計測させた。なお、条件を揃えるため、これら脱毛本数計測のための洗髪の24時間前にも同一条件で洗髪させた。試験結果は表4のとおりであった。【0032】【表4】脱毛本数【0033】【0034】上記の原料Aを60℃の精製水70.0重量部に溶解し、そこに原料Bの混合液を加えて撹拌、冷却して、ヘアトニックを製造した(ランタナ抽出物は製造実施例1によるものである。以下の各例において同じ。)。【0035】【0036】アルニカエキスは1,3-ブチレングリコールに溶解してから、残りの原料は直接、精製水70重量部に投入して、原料Aの水溶液を調整する。そこに原料Bの混合液を加えて撹拌し、ローションを製造した。【0037】【0038】上記原料Bを精製水34.0重量部に加えて70℃に加熱、溶解させる。そこに、70℃に加熱した原料Aの混合物を加え、ホモジナイザーを用いて乳化し、クリームを製造した。 ランタナ(Lantana camara L.)の根部のエタノールまたはエタノールと水との混合物による抽出物を有効成分として含有することを特徴とするテストステロン5α−レダクターゼ阻害剤。 請求項1に記載のテストステロン5α−レダクターゼ阻害剤を含有することを特徴とする頭髪化粧料。 請求項1に記載のテストステロン5α−レダクターゼ阻害剤を含有することを特徴とする皮膚化粧料。