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タイトル:特許公報(B2)_タンパク質のラベル化組成物およびタンパク質のラベル化方法
出願番号:1998133170
年次:2009
IPC分類:C07H 19/207,C07H 21/02,C07H 21/04,C07K 1/13,C07K 14/00


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柳川 弘志 根本 直人 宮本 悦子 JP 4240574 特許公報(B2) 20090109 1998133170 19980515 タンパク質のラベル化組成物およびタンパク質のラベル化方法 三菱化学株式会社 000005968 長谷川 曉司 100103997 柳川 弘志 根本 直人 宮本 悦子 20090318 C07H 19/207 20060101AFI20090226BHJP C07H 21/02 20060101ALI20090226BHJP C07H 21/04 20060101ALI20090226BHJP C07K 1/13 20060101ALI20090226BHJP C07K 14/00 20060101ALI20090226BHJP JPC07H19/207C07H21/02C07H21/04 ZC07K1/13C07K14/00 C07H 19/207 C07K 1/00-19/00 C12N 1/00-15/90 REGISTRY(STN) CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) PubMed JSTPlus/JST7580(JDreamII) 特表平06−504427(JP,A) 特表平09−510218(JP,A) 国際公開第97/029372(WO,A1) 国際公開第97/508621(WO,A1) Biochemistry,1985年,Vol.24,pp.5781-5786 Biochemistry,1982年,Vol.21,pp.3797-3808 Chem. Ber.,1975年,Vol.108,pp.2959-2968 Biochim. Biophys. Acta.,1971年,Vol.240,pp.244-262 6 1999322781 19991124 10 20050408 特許法第30条第1項適用 平成9年11月15日 日本分子生物学会発行の「第20回日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集」に発表 新留 豊 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ピューロマイシンおよびピューロマイシン様化合物に蛍光色素を化学結合させた分子(蛍光ラベル化化合物)や種々の機能性化合物を化学結合させた分子(放射性であってもよい)に関するものである。特に、本発明の蛍光ラベル化化合物は、種々の無細胞翻訳系や生細胞で発現するタンパク質の検出および同定に有効である。今後、ゲノム解析によって集積する遺伝子の機能解析において、対応するタンパク質の同定は最も重要な課題である。本発明は、核酸ータンパク質相互作用やタンパク質ータンパク質相互作用のようなタンパク質の機能解析において、効率化、自動化する上で極めて有効な手段を提供する。【0002】【従来の技術】無細胞翻訳系や生細胞で発現させたタンパク質のラベル化には、35S、 3H、14Cといった放射能元素でラベルしたアミノ酸を翻訳産物に取り込ませる放射能ラベル化法が一般的である。この場合、放射能を利用するため安全管理上、特別な施設等が必要とされる。このため、放射性化合物を使わない方法としては次のようなものがある。アミノ酸のリジンのε- アミノ基にビオチンを共有結合させ、これをリジンのアンチコドンをもつtRNAにエステル結合させたもの(ビオチン- リジン-tRNA)を合成し、無細胞翻訳系に投入し、翻訳産物をビオチン化する。翻訳産物は、電気泳動後、メンブレンに移し、アルカリフォスファターゼとストレプトアビジンの融合タンパク質によって、翻訳産物をアルカリフォスファターゼにより化学発光させる。これを、X線フィルム等を使って、翻訳産物を同定する(Promega 社、(1993) Technical Bulletin, No.182, p2)。この方法は、合成したビオチン- リジン-tRNA が極めて不安定(−70℃で6ヵ月)であり、値段も高価である。さらに、同定までの手続きが繁雑で時間がかかるという問題点がある。これは、大量処理のための自動化には極めて不利である。さらに、翻訳されたタンパク質は、複数のリジン側鎖がビオチンで修飾されているために、機能および構造が本来のものと変化している可能性がある。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、無細胞翻訳系および生細胞における翻訳タンパク質のラベル化において、1)簡便である、2)経済的である、3)長期間安定である、4)翻訳産物の機能、構造に影響を与えないなどの条件を満たした方法論の確立である。【0004】【課題を解決するための手段】 本発明者等は上記課題を解決すべく研究の結果、ピューロマイシンまたはピューロマイシンの誘導体が、最終濃度10〜0.01μM で、翻訳タンパク質のC末端に結合することを見い出した。ピューロマイシンにフルオレセイン等の蛍光物質を化学結合させた化合物は、ピューロマイシンと同様、翻訳タンパク質のC末端に結合するため、これにより、放射能物質を使用せずにタンパク質を同定できることがわかった。すなわち、無細胞翻訳系にこの蛍光化ピューロマイシンを加え反応後、その反応物を電気泳動し、ゲルをそのまま蛍光イメージアナライザーで読み取ることで、容易に翻訳タンパク質を同定できる。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。 すなわち、本発明は標識物質よりなるラベル部と、ピューロマイシンまたは3'-N- アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシドの化学構造骨格を有し、タンパク質翻訳系で翻訳タンパク質のC末端に結合する能力を有する化合物よりなるアクセプター部よりなり、タンパク質翻訳系に共存させて翻訳タンパク質のラベル化に用いる化合物(ラベル化化合物)を含有するタンパク質のラベル化組成物に関するものである。【0005】【発明の実施の形態】本発明のラベル化化合物は、蛍光物質または放射能物質または非放射性標識物質からなる「ラベル部」と翻訳されたタンパク質のC末端に結合するヌクレオチド誘導体(例えば、ピューロマイシンまたはピューロマイシン様化合物)からなる「アクセプター部」よりなる。ラベル部とアクセプター部は化学結合で連結されている。【0006】1)「ラベル部」の蛍光物質としては、例えばフルオレセイン等が挙げられるがフルオレセイン系列以外にも、フリーの官能基(例えばカルボキシル基、水酸基、アミノ基など)をもち、スペーサーを介してピューロマイシンまたはピューロマイシン様化合物に連結可能な種々の蛍光色素(例えば、ローダミン系列、エオシン系列、NBD 系列など)であれば如何なるものであってもよい。【0007】2)「ラベル部」には、33P、32P、35Sのような放射性標識物質を含んだ、あるいは含まない非放射性標識物質、例えば、ビオチンのような補酵素、タンパク質、ペプチド、糖類、脂質類、色素、ポリエチレングリコールなど如何なる化合物を使ってもよい。その化合物の種類、大きさを問わない。【0008】3)本発明の「アクセプター部」としては、通常、ヌクレオチドもしくは核酸またはこれらに類似した化学構造骨核と塩基を有する物質あるいはその連続体とアミノ酸あるいはアミノ酸に類似した化学構造骨核を有する物質が化学的に結合したものを用いることができる。代表的な化合物として、化学結合としてアミド結合を有するピューロマイシン(Puromycin )、3'-N- アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド(3'-N-Aminoacylpuromycin aminonucleoside, PANS-アミノ酸)、たとえば、アミノ酸部がグリシンのPANS-Gly、バリンのPANS-Val、アラニンのPANS-Ala、その他、全アミノ酸に対応するPANS- 全アミノ酸が挙げられる。また、化学結合として3'- アミノアデノシンのアミノ基とアミノ酸のカルボキシル基が脱水縮合した結果形成されたアミド結合でつながった3'-N- アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシド(3'-Aminoacyladenosine aminonucleoside,AANS- アミノ酸)、たとえば、アミノ酸部がグリシンのAANS-Gly、バリンのAANS-Val、アラニンのAANS-Ala、その他、全アミノ酸に対応するAANS- 全アミノ酸が利用できる。また、ヌクレオシドあるいはヌクレオチドとアミノ酸のエステル結合したものなども利用できる。その他、核酸あるいは核酸に類似した化学構造骨核と塩基を有する物質と、アミノ酸に類似した化学構造骨核を有する物質を化学的に結合可能な結合様式ならすべて利用することができる。【0009】4)ピューロマイシン(図1のI の化合物)は細菌(Nathans,D. (1964) Proc.Natl.Acad.Sci.USA,51,585-592; Takeda,Y. et al. (1960) J.Biochem. 48,169-177)および動物細胞(Ferguson,J.J. (1962) Biochim.Biophys.Acta 57,616-617; Nemeth,A.M. & de la Haba,G.L. (1962)J.Biol.Chem. 237,1190-1193)のタンパク質合成を阻害することが知られている。ピューロマイシンの構造はアミノアシルtRNAの構造と類似していて、リボソームのPサイトに結合しているペプチジルtRNAと反応し、ペプチジルピューロマイシンとしてリボソームから遊離するためタンパク質合成が中断される(Harris, R.J. (1971) Biochim.Biophys.Acta240,244-262 )。【0010】5)しかし本発明によれば、タンパク質合成において、低濃度のピューロマイシン存在下では、リボソームのAサイトに終止コドンが来たときペプチジルトランスフェラーゼの作用により、ピューロマイシンが終止因子と競合しながらタンパク質のC末端と結合すると期待される。【0011】6)このことを検証するために、まずアミノ酸あるいはアミノ酸に類似した化学構造骨核を有する物質と共有結合し得る、核酸あるいは核酸に類似した化学構造骨核と塩基を有する物質、例えば、リボシチジルピューロマイシン(rCpPur 、図1のIIの化合物)、デオキシシチジルピューロマイシン(dCpPur 、図1のIII の化合物)、デオキシウリジルピュイーロマイシン(dUpPur 、図1のIVの化合物)を合成する必要がある。【0012】7)rCpPurを合成するためには、ピューロマイシンとrC- ベータアミダイトをカップリングさせた後、保護基を脱保護させることにより得ることができる。同様な方法により、dCpPurやdUpPurも合成できる。これらの化合物をγ−33P−ATP存在下でT4ポリヌクレオチドキナーゼによりリン酸化すると、核酸の5'末端の水酸基が33Pでラベル化されたラベル化化合物が調製できる。【0013】8)原核または真核生物の無細胞転写翻訳系、例えば大腸菌の無細胞転写翻訳系において、プロモーターと種々のタンパク質のコーディング領域を含むプラスミド、例えばT7プロモーターとチオレドキシンのコーディング領域を含むプラスミド存在下で上記のラベル化合物による翻訳されたタンパク質のラベル化について調べてみると、チオレドキシンの全長タンパク質(見掛けの分子量12kDa)のC末端に33P-rCpPurが、0.1-1 μM の濃度範囲で明確に結合していることがわかった(図3)。33P-rCpPurなどによるチオレドキシンの全長タンパク質の放射能ラベル化は、ウサギ網状赤血球抽出液(Nuclease treated Rabbitreticulocyte lysate)や小麦胚芽抽出液を用いた無細胞転写翻訳系でも確認された。放射能ラベル化に必要なFluorpurとFluorthiopurの最適濃度は、ウサギ網状赤血球抽出液の系では0.3-1.0 μM 、小麦胚芽抽出液の系では10-50 μM であった。【0014】9)次に、ラベル部の種々の物質への拡張性を検証するために、ラベル部として蛍光性の色素、例えばフルオレセイン、アクセプター部としてアミノ酸あるいはアミノ酸に類似した化学構造骨核を有する物質、例えばピューロマイシンを選び、両者を化学結合で連結した蛍光性のラベル化化合物、例えばFluorpur(図2のI の化合物)とFluorthiopur(図2のIIの化合物)を化学合成した。10)FluorpurとFluorthiopurはピューロマイシンとフルオレダイトをカップリングさせた後、保護基を脱保護させることにより得ることができる。【0015】11)原核または真核生物の無細胞転写翻訳系、例えば大腸菌の無細胞転写翻訳系において、プロモーターと種々のタンパク質のコーディング領域を含むプラスミド、例えばT7プロモーターとチオレドキシンのコーディング領域を含むプラスミド存在下で上記の蛍光ラベル化合物による翻訳されたタンパク質の蛍光ラベル化について調べてみると、チオレドキシンの全長タンパク質(見掛けの分子量12kDa)のC末端にFluorpurあるいはFluorthiopurが、0.3-1.5 μM の濃度範囲で明確に結合していることがわかった(図4)。FluorpurとFluorthiopurによるチオレドキシンの全長タンパク質の蛍光ラベルは、ウサギ網状赤血球抽出液(Nuclease treated Rabbit reticulocyte lysate )や小麦胚芽抽出液を用いた無細胞転写翻訳系でも確認された。蛍光ラベル化に必要なFluorpurとFluorthiopurの最適濃度は、ウサギ網状赤血球抽出液の系では0.3-1.0 μM 、小麦胚芽抽出液の系では10-50 μM であった。【0016】【発明の効果】本発明により、原核細胞と真核細胞を問わず無細胞翻訳系および生細胞を利用して翻訳合成されたタンパク質のC末端に蛍光や放射能でラベルすることが可能になった。本発明は、遺伝子から発現されるタンパク質の同定と機能解析をより迅速に、安全かつ経済的に実施することを可能にする。【0017】【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、下記の実施例は本発明についての具体的認識を得る一助とみなすべきものであり、本発明の範囲は下記の実施例により何ら限定されるものでない。【0018】実施例1ラベル化化合物の調製とその化合物を用いてのタンパク質のラベル化〈1〉ラベル化化合物の調製(a)rCpPur (ribocytidyl (3' → 5') puromycin(II)の合成材料:ピューロマイシン(puromycin, 3'-[ α-Amino-p-methoxyhydrocinnamamido]-3'-deoxy-N,N'-dimethyladenosine, I)はシグマから、rC- ベータアミダイト(N4 -benzoyl-5'-O-(4, 4'-dimethoxytrityl)-2'-O-tert-butyldimethylsilyl)-cytidine-3'-O-[O-(2-cyanoethyl)-N, N'-diisopropyl-phosphoramidite] )、dC- ベータアミダイト(N4-benzoyl-5'-O-(4, 4'-dimethoxytrityl)-2'-deoxycytidine-3'-O-[O-(2-cyanoethyl)-N, N'-diisopropyl-phosphoramidite])、dU- ベータアミダイト(5'-O-(4, 4'-dimethoxytrityl)-2'-deoxyuridine-3'-O-[O-(2-cyanoethyl)-N, N'-diisopropyl-phosphoramidite])はそれぞれ日本パーセプティブから、テトラゾールは日本ミリポアから、フッ化テトラブチルアンモニウムはアルドリッチから、QAE-セファデックスはファーマシアから、クロマト用シリカゲルはメルクからそれぞれ購入した。【0019】方法:ピューロマイシン(50 mg 、92μmol )を2 mlの乾燥ピリジンに溶かし、減圧下で蒸発させ、脱水させる。この操作を3回繰り返す。これに15 ml の4%テトラゾール/ アセトニトリル溶液とrC- ベータアミダイトを加え、室温で撹拌させる。反応はシリカゲルの薄層クロマトグラフィー(TLC 、展開溶媒:クロロフォルム:メタノール=9:1)でモニターする。通常、反応は1日で終了する。反応後、溶媒を減圧下で追い出し、これに0.1Mのヨウ素をテトラヒドロフラン/ ピリジン/ 水=80:40:2に溶かした溶液3 ml加え、室温で撹拌させながら生成したホスファイト- トリエステルを酸化させる。1時間半後、溶媒を減圧下で追い出し、残部をクロロフォルムで抽出する。抽出液は無水硫酸マグネシウム存在下で乾燥させた後、減圧下で溶媒を追い出す。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、クロロフォルム/ メタノール=90:10で溶出させる。保護基のついたリボシチジルピューロマイシン(CpPur )はシリカゲルTLC (展開溶媒:クロロフォルム:メタノール=9:1)でRf 0.32 のところに溶出される。次に保護基の脱保護を行う。保護基のついたリボシチジルピューロマイシンを最初80% 酢酸水溶液0.5 mlで室温で1時間処理し、脱トリチル化する。酢酸を減圧下で追い出した後、濃アンモニア水/ エタノール=2:1の混合溶液0.5 mlを加え、β- シアノエチル基とベンゾイル基を除去する。室温で15時間放置した後、溶媒を減圧下で追い出し、残部に1Mのフッ化テトラブチルアンモニウムのテトラヒドロフラン溶液0.5 mlを加え、2'-OH 基についているt-butyldimethylsilyl基を脱保護する。30分後溶媒を減圧下で追い出し、残部をQAE-セファデックスのカラムクロマトグラフィーにかけ、0-0.5 M のトリエチルアミン炭酸塩の直線グラージエントで溶出させる。溶出液を集め、凍結乾燥させる。リボシチジルピューロマイシンが10 mg 得られた。合成品がリボシチジルピューロマイシンであることは、ヌクレアーゼP 1消化でシチジンとピューロマイシン-5'-リン酸が等量得られることと、MALDI/TOF マススペクトロメトリーで[M+H]+ の分子イオンがm/z 777 に現われることから同定された。dCpPur (deoxycytidyl (3'→ 5')puromycin(III)とdUpPur (deoxyuridyl (3' → 5') puromycin(IV)はdC- ベータアミダイト(N4-benzoyl-5'-O-(4, 4'-dimethoxytrityl)-2'-deoxycytidine-3'-O-[O-(2-cyanoethyl)-N, N'-diisopropyl-phosphoramidite])およびdU- ベータアミダイト(5'-O-(4, 4'-dimethoxytrityl)-2'-deoxyuridine-3'-O-[O-(2-cyanoethyl)-N, N'-diisopropyl-phosphoramidite])とピューロマイシンをそれぞれ出発原料にして上記のrCpPurと全く同様な方法で合成、同定された。【0020】(b)フルオレセニルフォスホピューロマイシン(Fluorpur, V)とフルオレセニルチオフォスホピューロマイシン(Fluorthiopur, VI)の調製材料:ピューロマイシン(puromycin )はシグマから、フルオレダイト(6-N-carboxy-di-O-pivaloyl-fluorescein-hexyl-O-(2-cyanoethyl)-(N,N'-diisopropyl)-phosphoramidite)は日本パーセプティブから、テトラゾールは日本ミリポアから、TETD(tetraethylthiuram disulfide)はABI から、クロマト用シリカゲルはメルクからそれぞれ購入した。【0021】方法:ピューロマイシン(26 mg 、48μmol )を3 mlの乾燥ピリジンに溶かし、減圧下で蒸発させ、脱水させる。この操作を3回繰り返す。これに5 mlの4%テトラゾール/ アセトニトリル溶液とフルオレダイトを加え、室温で撹拌させる。反応はシリカゲルの薄層クロマトグラフィー(TLC 、展開溶媒:クロロフォルム:メタノール=9:1)でモニターする。通常、反応は2 時間で終了する。反応後、溶媒を減圧下で追い出し、これに0.1 M のヨウ素をテトラヒドロフラン/ ピリジン/ 水=80:40:2に溶かした溶液 2 ml 加え、室温で撹拌させながら生成したホスファイト- トリエステルを酸化させる。1時間半後、溶媒を減圧下で追い出し、残部をクロロフォルムで抽出する。抽出液は無水硫酸マグネシウム存在下で乾燥させた後、減圧下で溶媒を追い出す。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、クロロフォルム/ メタノール=90:10で溶出させる。保護基のついたFluorpurはシリカゲルTLC (展開溶媒:クロロフォルム:メタノール=9:1)でRf 0.26 のところに溶出される。次に保護基の脱保護を行う。保護基のついたFluorpurを濃アンモニア水/ エタノール=2:1の混合溶液 1 ml に加え、β- シアノエチル基を除去するとFluorpur(V)が7mg 得られる。合成品がFluorpur(V)であることは、そのpH 9の溶液の紫外可視吸収スペクトルが272 nm(ピューロマイシン部由来)と494 nm(フルオレセイン部由来)に現われることと、MALDI/TOF マススペクトロメトリーで[M+H] + の分子イオンがm/z 1010に現われることから同定された。【0022】FluorthiopurはFluorpurと同様な方法で合成されるが、ピューロマイシンとフルオレダイトをカップリングさせた後、ヨウ素の代わりにTETDのアセトニトリル溶液 1 ml を加え、室温で30分撹拌させながらホスファイト- トリエステルを硫化させるところが異なる。反応後、溶媒を減圧下で追い出し、残部をクロロフォルムで抽出する。抽出液は無水硫酸マグネシウム存在下で乾燥させた後、減圧下で溶媒を追い出す。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、クロロフォルム/ メタノール=90:10で溶出させる。保護基のついたFluorthiopurはシリカゲルTLC (展開溶媒:クロロフォルム:メタノール=9:1)でRf 0.33 のところに溶出される。次に保護基の脱保護を行う。保護基のついたFluorpurを濃アンモニア水/ エタノール=2:1の混合溶液 1 ml に加え、β- シアノエチル基を除去するとFluorthiopur(VI)が6mg 得られる。合成品がFluorthiopur(VI)であることは、そのpH 9の溶液の紫外可視吸収スペクトルが272 nm(ピューロマイシン部由来)と494 nm(フルオレセイン部由来)に現われることと、MALDI/TOF マススペクトロメトリーで[M+H] + の分子イオンがm/z 1026に現われることから同定された。【0023】〈2〉プラスミドの調製T7プロモーターと大腸菌のチオレドキシン(アミノ酸135 残基、分子量14 kDa、見掛けの分子量12kDa)のコーディング領域を含むプラスミド(pT-Trx)は理化学研究所の石井俊輔氏より恵与されたものを用いた。宿主は大腸菌のBL21(DE3)株である。プラスミド(pT-Trx)を有する大腸菌のBL21(DE3)株をLB培地でクロラムフェニコール(最終濃度34μg/ml)存在下、37℃、10時間培養し、遠心分離により菌体を採取した。プラスミドDNA は塩化セシウム密度勾配遠心法(野沢・海老原著、組換えDNA実験ノート・基本操作編、pp. 63-67 、現代工学舎、1991) により精製した。【0024】〈3〉タンパク質のラベル化の方法(a)rCpPurを用いたタンパク質のラベル化rCpPur(30 pmol)をγ-33 P-ATP(9.25 MBq)の存在下でT4ポリヌクレオチドキナーゼ(10 ユニット)によりリン酸化する。反応条件は37℃で1 時間。反応後、70℃で20分加熱処理し、酵素を失活させる。大腸菌の無細胞転写翻訳系の反応液(25 μl)の組成:大腸菌S30 抽出液(含T7RNA ポリメラーゼ) 7.5 μl 、大腸菌S30 プレミックス 10 μl 、アミノ酸混液 2.5μl 、RNase 阻害剤 1μl 、プラスミド(チオレドキシン) 1 μg 、上記33P-rCpPur 0.0003-0.3 μM(最終濃度)。コントロールとして35S-メチオニン(1.2μM)を加えた系でも反応を行った。37℃で30分反応を行った後、アセトンで沈殿させ、沈殿物に1%SDS を含む緩衝液(pH 8)を加え、90℃、5 分加熱処理して溶解させ、SDS-15% ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、イメージアナライザー(富士フィルム BAS 2000)で分析した。33P-rCpPurによるチオレドキシンのラベル化を調べた結果が図3である。33P-rCpPurが0.3 μM の濃度のとき、12kDa の見掛けの分子量の位置に全長のチオレドキシンに相当する明確なバンドが検出された。この結果は33P-rCpPurがチオレドキシンのC末端に結合していることを示している。見掛けの分子量12 kDaのバンドは35S-メチオニン(最終濃度 1.2μM)でラベル化した場合でも検出された(図3)。同様な方法により、33P-dCpPurや33P-dUpPurもチオレドキシンのC末端に連結することが確認された。【0025】(b)FluorpurとFluorthiopurを用いたタンパク質の蛍光ラベル化FluorpurとFluorthiopurの存在下でタンパク質の蛍光ラベル化を調べた。大腸菌の無細胞転写翻訳系の反応液(25 μl)の組成:大腸菌S30 抽出液(含T7RNA ポリメラーゼ) 7.5 μl 、大腸菌S30 プレミックス 10 μl 、アミノ酸混液 2.5μl 、RNase 阻害剤 1μl 、プラスミド(チオレドキシン) 1 μg 、Fluorpur(最終濃度 0.036-1.44 μM)あるいはFluorthiopur(最終濃度 0.036-1.44 μM)。37℃で30分反応を行った後、アセトンで沈殿させ、沈殿物に1%SDS を含む緩衝液(pH 8)を加え、90℃、5 分加熱処理して溶解させ、SDS-15% ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、蛍光ゲルスキャナー(FluorImager 585、Molecular Dynamics)でタンパク質の蛍光バンドを検出した。励起波長は488 nm、発光波長は520 nmで測定した。FluorpurとFluorthiopurでチオレドキシンを蛍光ラベル化した結果が図4である。FluorpurとFluorthiopur共に0.36-1.44 μM の濃度範囲で矢印の見掛けの分子量12kDa の位置に蛍光性のバンドが検出された(図4の上段と中段)。この結果はFluorpurとFluorthiopurがチオレドキシンの全長タンパク質(見掛けの分子量12 kDa)(下段の大量発現チオレドキシンのバンド参照)のC末端に結合していることを示している。また、FluorthiopurはFluorthiopurより多少効率よく取り込まれる。【0026】FluorpurとFluorthiopurによるチオレドキシンの全長タンパク質の蛍光ラベルは、ウサギ網状赤血球抽出液(Nuclease treated Rabbit reticulocyte lysate )や小麦胚芽抽出液を用いた無細胞転写翻訳系でも確認された。蛍光ラベル化に必要なFluorpurとFluorthiopurの最適濃度は、ウサギ網状赤血球抽出液の系では0.3-1.0 μM 、小麦胚芽抽出液の系では10-50 μM であった。【図面の簡単な説明】【図1】ピューロマイシンおよびその誘導体の化学構造。I はPuromycin 、IIはrCpPur、III はdCpPur、IVはdUpPurである。【図2】ピューロマイシンの蛍光性化合物の化学構造。V はFluorpur、VIはFluorthiopurである。【図3】チオレドキシンのC末端への33P-rCpPurの結合を示す電気泳動写真である。ラベル化は、大腸菌の無細胞転写翻訳系を用い、0.0003、0.003 、0.03、0.3 μM の33P-rCpPur存在下、37℃、30分間の反応により行われた。一番右のレーンは同様の条件で35S−メチオニン存在下によりチオレドキシンのラベル化を行ったものである。【図4】チオレドキシンのC末端へのピューロマイシンの蛍光性化合物の結合を示す電気泳動写真である。ラベル化は、大腸菌の無細胞転写翻訳系を用い、0.036 、0.072 、0.18、0.36、0.72、1.44μM のFluorpurあるいはFluorthiopur存在下、37℃、30分間の反応により行われた。上段はFluorpurの濃度の影響を示し、中段はFluorthiopurの濃度の影響を示す。矢印はチオレドキシンの全長タンパク質の見掛けの分子量12 kDaの位置を示す。下段は上段のゲルを蛍光検出の後、通常のタンパク質染色色素であるCBB で染色したものである。下段の一番左のレーンは、T7プロモーターと大腸菌のチオレドキシン(アミノ酸135 残基、分子量14 kDa、見掛けの分子量12kDa)のコーディング領域を含むプラスミド(pT-Trx)を有する大腸菌のBL21(DE3)株をLB培地でクロラムフェニコール(最終濃度34μg/ml)存在下、37℃でIPTG添加によりチオレドキシンを大量発現させた菌体の破砕上清で、見掛けの分子量12KDa の位置にチオレドキシンが大量発現しているのがわかる。 標識物質よりなるラベル部と、ピューロマイシンまたは3'-N- アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシドの化学構造骨格を有し、タンパク質翻訳系で翻訳タンパク質のC末端に結合する能力を有する化合物よりなるアクセプター部よりなり、タンパク質翻訳系に共存させて翻訳タンパク質のラベル化に用いる化合物を含有することを特徴とするタンパク質のラベル化組成物。 ラベル部が、蛍光性物質、放射性物質、または非放射性標識物質である請求項1に記載の組成物。 翻訳タンパク質が、全長タンパク質である請求項1または2に記載の組成物。 ピューロマイシンまたは3'-N- アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシドの化学構造骨格が、さらに塩基を有するものである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の組成物。 無細胞または生細胞タンパク質翻訳系に、標識物質よりなるラベル部と、ピューロマイシンまたは3'-N- アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシドの化学構造骨格を有し、翻訳タンパク質のC末端に結合する能力を有する化合物よりなるアクセプター部よりなるタンパク質のラベル化化合物を共存させてタンパク質の翻訳を行うことを特徴とする翻訳タンパク質のラベル化方法。 ピューロマイシンまたは3'-N- アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシドの化学構造骨格が、さらに塩基を有するものである請求項5に記載のラベル化方法。


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