タイトル: | 特許公報(B2)_マレイミド系樹脂の製造方法 |
出願番号: | 1998098788 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C08G73/10,C07D207/448 |
山森 義之 JP 3672217 特許公報(B2) 20050428 1998098788 19980410 マレイミド系樹脂の製造方法 住友ベークライト株式会社 000002141 山森 義之 20050720 7 C08G73/10 C07D207/448 JP C08G73/10 C07D207/448 7 C08G 73/00-26 C07D207/448 特開昭48−099296(JP,A) 特開昭46−003846(JP,A) 特開昭61−225215(JP,A) 3 1999292964 19991026 5 20021226 冨士 良宏 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、従来、線状ポリイミド樹脂がフィルムとして使用されていた、フレキシブルプリント回路基板用等に好適で、耐熱性,機械的強度,柔軟性等に優れたマレイミド系樹脂、およびその製造方法に関するものである。【0002】【従来の技術】従来からフレキシブルプリント回路板等に用いられる、高耐熱、高信頼性で、柔軟性を有する樹脂としては、カプトン(東レ・デュポン社製)やユーピレックスS(宇部興産社製)に代表される、線状ポリイミド樹脂のフィルムを挙げることができる。これら線状ポリイミドフィルムは、非常に優れた特性を持つ反面、原料モノマーが非常に高価で、しかも加工温度が400℃前後に達するために高価な設備を利用せざるを得ず、エンジニアリングプラスチックの中でも最高位に位置する高価なフィルムである。【0003】一方、従来のマレイミド樹脂は、マレイン酸無水物と芳香族ジアミンとを反応して、マレアミド酸とした後、閉環反応によりビスマレイミドを得ている。しかし、中間体であるビスマレアミド酸は溶解性が悪く、分子間脱水アミド化副反応によるゲル化を防ぐために、大量の溶剤中で反応せざるを得ないといった問題点があった。更に、ビスマレイミド樹脂単独の硬化物は非常に脆いので、単独での使用には耐えず、ジアミン、アリル化合物等の可撓性を備えた変性剤により変性した場合でも、完全に脆さを解消するには至らず、柔軟なフィルムは得られていなかった。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の線状ポリイミド樹脂やマレイミド系樹脂のこのような問題点に鑑み、鋭意検討の結果なされたもので、柔軟性を持つと共に、耐熱性、機械的強度に優れたマレイミド系樹脂、およびその合成方法を得ることを目的としたものである。【0005】【課題を解決するための手段】即ち本発明は、一般式(2)で表されるマレイン酸類縁体粉末と、ジアミン粉末とを、モル比が1:1になるように固体状態で混合した後、該混合物を固体状態のまま80〜200℃で加熱処理することを特徴とする、一般式(1)で表される繰返し単位を有する構造のマレイミド系樹脂の製造方法である。【0006】【化1】式中、R1,R2はそれぞれ、水素,アルキル基,フェニル基,または置換フェニル基を表し、R3は、炭素数2以上の脂肪族基,環式脂肪族基,単環式芳香族基,縮合多環式芳香族基,または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基からなる群より選ばれた架橋2価の芳香族有機基を表す。【0007】【化2】式中、R1,R2は、それぞれ、水素、アルキル基、フェニル基、または置換フェニル基を表す。【0008】【発明の実施の形態】本発明は、前記一般式(2)で表されるマレイン酸類縁体粉末と、ジアミン粉末とを、モル比が1:1になるように固体状態で混合した後、その混合物を固体状態のまま80〜200℃で加熱処理することにより、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する構造の、マレイミド系樹脂を得ることを骨子とするが、マレイン酸類縁体としては、マレイン酸、シトラコン酸を例示することができる。中でも特に、マレイン酸が好ましい。その理由は、加熱反応時における反応性が高いこと、および安価であることである。マレイン酸類縁体は、単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。【0009】本発明において用いるジアミンとしては、3,3’―ジメチルー4,4’―ジアミノビフェニル、4,6―ジメチル−m―フェニレンジアミン、2,5―ジメチル−p―フェニレンジアミン、2,4―ジアミノメシチレン、4,4’―メチレンジ−o−トルイジン、4,4’―メチレンジ−2,6―キシリジン、4,4’―メチレン−2,6―ジエチルアニリン、2,4―トルエンジアミン、m―フェニレンジアミン、p―フェニレンジアミン、4,4’―ジアミノジフェニルプロパン、3,3’―ジアミノジフェニルプロパン、4,4’―ジアミノジフェニルエタン、3,3’―ジアミノジフェニルエタン、4,4’―ジアミノジフェニルメタン、3,3’―ジアミノジフェニルメタン、4,4’―ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’―ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’―ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’―ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’―ジアミノジフェニルエーテル、3,3’―ジアミノジフェニルエーテル、ベンジジン、3,3’―ジアミノビフェニル、3,3’―ジメチル−4,4’―ジアミノビフェニル、3,3’―ジメトキシベンジジン、ビス(p―アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p―β―アミノ−t―ブチルフェニル)エーテル、ビス(p―β―メチル−δ―アミノペンチル)ベンゼン、p―ビス(2―メチル−4―アミノペンチル)ベンゼン、1,5―ジアミノナフタレン、2,6―ジアミノナフタレン、2,4―ビス(β―アミノ−t―ブチル)トルエン、2,4―ジアミノトルエン、m―キシレン−2,5―ジアミン、p―キシレン−2,5―ジアミン、m―キシリレンジアミン、p―キシリレンジアミン、2,6―ジアミノピリジン、2,5―ジアミノピリジン、2,5―ジアミノ−1,3,4―オキサジアゾール、1,4―ジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,5―ジメチルヘキサメチレンジアミン、3―メトキシヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、2,5―ジメチルヘプタメチレンジアミン、3―メチルヘプタメチレンジアミン、4,4―ジメチルヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、5―メチルノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,3―ビス(3―アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2―ビス[4―(4―アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3―ビス(4―アミノフェノキシ)ベンゼン、ビスー4―(4―アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、ビス−4―(3―アミノフェノキシ)フェニルスルフォンなどを挙げることができる。中でも、4,4’―ジアミノジフェニルプロパン、3,3’―ジアミノジフェニルプロパン、4,4’―ジアミノジフェニルエタン、3,3’―ジアミノジフェニルエタン、4,4’―ジアミノジフェニルメタン、3,3’―ジアミノジフェニルメタン、4,4’―ジアミノジフェニルエーテル、3,3’―ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。その中でもさらに、4,4’―ジアミノジフェルメタンが、反応性、コストの点からより好ましい。上記のジアミンは、単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。【0010】本発明におけるマレイミド系樹脂の合成は、マレイン酸類縁体とジアミンの1:1粉体混合物を、固体状態のまま80〜200℃の範囲で加熱・反応させることによって行なわれるが、200℃以上の高温で加熱処理するときは、反応は早いが、副反応による部分ゲル化が顕著になり、溶剤に不溶な部分を含むものとなる。一方、加熱温度が80℃未満では、反応速度が急激に低下し、未反応物の残存が起こり高分子量の樹脂が得られない。得られた樹脂は、従来のマレイミド樹脂と同様に粉砕して粉末状レジンとして、溶剤に溶かしてワニスとして使用できる。樹脂は更に加熱することにより硬化するが、ビスマレイミド単独の硬化物やジアミンを添加したビスマレイミドの硬化物に比べて、靱性のある硬化物が得られる。【0011】【実施例】以下、具体例を挙げて本発明を一層具体的に説明するが、本発明はこれらによってなんら限定されるものではない。【0012】(実施例1)マレイン酸116重量部(1mol)の粉体と、4,4’―ジアミノジフェニルメタン198重量部(1mol)の粉体を、乳鉢で均一に混合して、マレイン酸/4,4’―ジアミノジフェニルメタンの固体混合物を得た。この混合物を130℃で1時間、乾燥機中で加熱し、マレイミド樹脂を得た(合成した)。【0013】得られた溶剤可溶性マレイミド樹脂150重量部に対して、N−メチル−2―ピロリドン350重量部を加え、樹脂濃度が30重量%となるように、マレイミド樹脂溶液を調製した。この樹脂溶液を用いて、離型処理を施したステンレス箔(厚さ50μm)の離型面上に、乾燥後の厚みが25μmとなるように、ダイコーターを用いて塗布し、連続的に100℃/3分、150℃/3分、200℃/3分加熱処理した後、ステンレス箔から剥離してマレイミド樹脂フィルムを得た。【0014】得られたマレイミド樹脂フィルムは、耐折性(MIT法、加重:500g,R=0.38mm)が300000回と高く、柔軟性に富んだ優れた特性を持つフィルムであった。【0015】(実施例2)マレイン酸116重量部(1mol)の粉体と、4,4’―ジアミノジフェニルエーテル200重量部(1mol)の粉体を、乳鉢で均一に混合して、マレイン酸/4,4’―ジアミノジフェニルエーテルの固体混合物を得た。この混合物を120℃で2時間、乾燥機中で加熱して、マレイミド樹脂を得た。【0016】溶剤として、N,N―ジメチルホルムアミドを用いた以外は、実施例1と同様に操作して、マレイミド樹脂フィルムを得た。得られたマレイミド樹脂フィルムの耐折性(MIT法、加重:500g,R=0.38mm)は400000回と高く、柔軟性に富んだ優れた特性を持つフィルムであった。【0017】(比較例1)N,N’−4,4’―ジフェニルメタン−ビスマレイミド358重量部(1mol)、および4,4’―ジアミノジフェニルメタン198重量部(1mol)を、樹脂濃度が20重量%になるように、N−メチル−2―ピロリドンに溶解し、140℃で1時間、更に180℃で1時間加熱し、ビスマレイミド樹脂溶液を得た。このビスマレイミド樹脂溶液を用いて、実施例1と同様の工程で、厚さ25μmのフィルムを得ようとしたが、フィルムが脆いため、ステンレス箔から剥離を試みただけで破砕してしまい、自立性のフィルムを得ることができなかった。【0018】(比較例2)比較例1において、N,N’−4,4’―ジフェニルメタン−ビスマレイミド358重量部(1mol)の代わりに、N,N’−4,4’―ジフェニルエーテル−ビスマレイミド360重量部(1mol)を、また、4,4’―ジアミノジフェニルメタン198重量部(1mol)の代わりに、4,4’―ジアミノジフェニルエーテル200重量部(1mol)を用いたこと以外は、すべて比較例1と同じに操作して、ビスマレイミド樹脂溶液を調製し、フィルムの作成を試みた。その結果、比較例1と同様にフィルムが脆く、剥離時に破砕してしまい、自立性のフィルムを得ることができなかった。【0019】【発明の効果】本発明の方法によれば、取り扱い易く単純なモノマー混合物を出発物質として用いることにより、工程も極めて簡便で、容易にマレイミド系樹脂を得ることができる。しかも、このマレイミド系樹脂溶液を用いて容易にフィルムを製造することが出来るばかりか、得られたマレイミド系樹脂フィルムは、従来のビスマレイミド樹脂に比べて、極めて柔軟性に富む耐熱フィルムであり、原料が安価で、工程(処理温度が低い)もマイルドなことから、従来の線状ポリイミドフィルムと比べて非常に安価で、フレキシブルプリント回路板用等に好適なフィルムを得ることが出来る。 一般式(2)で表されるマレイン酸類縁体粉末と、ジアミン粉末とを、モル比が1:1になるように固体状態で混合した後、該混合物を固体状態のまま80〜200℃で加熱処理することを特徴とする、一般式(1)で表される繰返し単位を有する構造のマレイミド系樹脂の製造方法。式中、R1,R2はそれぞれ、水素,アルキル基,フェニル基,または置換フェニル基を表し、R3は、炭素数2以上の脂肪族基,環式脂肪族基,単環式芳香族基,縮合多環式芳香族基,または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基からなる群より選ばれた2価の芳香族有機基を表す。式中、R1,R2は、それぞれ、水素、アルキル基、フェニル基、または置換フェニル基を表す。 一般式(2)で表されるマレイン酸類縁体が、マレイン酸であることを特徴とする、請求項1記載のマレイミド系樹脂の製造方法。 ジアミンが、4,4’−ジアミノジフェニルメタンであることを特徴とする、請求項1もしくは請求項2に記載のマレイミド系樹脂の製造方法。