生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_酵素を用いたマンノースの測定法
出願番号:1998095197
年次:2008
IPC分類:C12Q 1/26,C12P 19/02


特許情報キャッシュ

三輪 一智 田口 忠緒 JP 4039591 特許公報(B2) 20071116 1998095197 19980325 酵素を用いたマンノースの測定法 日本化薬株式会社 000004086 三輪 一智 田口 忠緒 20080130 C12Q 1/26 20060101AFI20080110BHJP C12P 19/02 20060101ALI20080110BHJP JPC12Q1/26C12P19/02 C12Q1/00-3/00 C12P19/00-19/64 CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN) JSTPlus(JDreamII) PubMed Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism,1986年,Vol.62, No.5,p.984-989 Clinical Chemistry,1984年,Vol.30, No.2,p.293-294 Clinical Chemistry,1997年,Vol.43, No.3,p.533-538 Biochimica et Biophysica Acta,1968年,Vol.167,p.501-510 6 1999266896 19991005 10 20040910 森井 隆信 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ピラノースオキシダーゼ、又はL−ソルボースオキシダーゼ等のグルコースの2位酸化酵素又は、これとグルコースオキシダーゼ等のグルコースの1位酸化酵素を組み合わせてグルコースを除去する前処理法と、マンノースをグルコース誘導体として検出するマンノース測定法を組み合わせた、簡便なマンノース測定法に関するものである。【0002】【従来の技術】マンノースは生体内では、主に糖タンパク質や糖脂質などの糖鎖合成に利用されており、糖タンパク質の生合成や分泌、さらには、糖タンパク質の機能発現に重要な役割を果たしている。マンノースは小腸からほとんど吸収されないので、生体内のマンノースは、主としてグルコース代謝系(即ち、グルコース→グルコース−6−リン酸→フルクトース−6−リン酸→マンノース−6−リン酸)から供給されている。また、マンノース−6−リン酸から合成されるGDP−マンノース(マンノース−6−リン酸→マンノース−1−リン酸→GDP−マンノース)は、マンノース糖鎖合成のドナーとして、重要な役割を果たしている。【0003】健常者血清中のマンノース濃度については、多くの報告があるが、平均値で16〜81μM、SDの範囲では11〜142μMとされている(日本臨牀 53(増刊号) p579-581(1995))。また、血清中のマンノース濃度は、糖尿病や真菌感染症で変動することが知られており、診断薬として期待されている。【0004】糖尿病患者では、空腹時の血清マンノースは健常者の3〜5倍に上昇し、グルコースとよく相関することが知られている(防衛医科大学校雑誌 15(4) p217-223 (1990)、Clin. Chim. Acta 251 p91-103(1996))。特に、ケトアシドーシスの症例においては約670μM(健常者平均値の50倍)に達し、治療で約50μMにまで改善した(防衛医科大学校雑誌 15(4) p217-223(1990))。糖尿病の合併症では、網膜症の発症群で、血清マンノースが有意に高値だった(糖尿病 33(Sup.) p144(1990)、糖尿病 34(Sup.) p277(1991))。白内障患者のレンズ中の糖鎖に含まれるマンノースの割合は、糖尿病群では非糖尿病群より高かった(防衛医科大学校雑誌 18(4) p308-315(1993))。妊娠糖尿病では、妊娠の初期、中期、後期を通じ、糖尿病群の血清マンノースは正常群より高く、妊娠初期のマンノース高値群で自然流産の頻度が高かった(糖尿病 33(9) p719-725(1990))などの報告がある。【0005】また、免疫力の低下した患者で問題になる真菌症、特に、カンジダ症においては血清マンノースが110〜1,315μM(健常者平均値の63倍)と、著しく上昇していたとの報告がある(日本臨牀 53(増刊号) p579-581(1995 )、日本医事新報 No.3286 p46-48(1987))。【0006】生化学検査のほとんどの項目は、生化学検査用の自動分析装置(汎用機)で測定されている。また、近年の医療費の高騰により、汎用機での自動測定に対応できない、即ち、特殊な分析装置を必要とし、人手が必要で人件費のかかる検査項目は、事実上、臨床応用が困難な状況にあると言える。これまで、マンノースの測定法として数多くの報告はあるが、何れも煩雑な操作を必要とするため、汎用機での測定は困難であった(Clin. Chem. 43(3) p533-538(1997))。【0007】最も信頼できるマンノースの測定法として、キャピラリィー・ガスクロマトグラフィー(GC)法(防衛医科大学校雑誌 15(4) p217-223(1990) )やガスクロマトグラフィー・マススペクトロメトリィー(GC−MS)法(Clin. Chim. Acta 251 p91-103(1996 ))などの分離分析法が報告されているが、何れも、煩雑な前処理と高度なメンテナンス技術を要する特殊な装置を必要としていた。【0008】また、酵素を用いたマンノースの測定法も幾つか報告されている。これらは、何れも、マンノースをヘキソキナーゼ(EC2.7.1.1)でリン酸化してマンノース−6−リン酸を生成させ、生成したマンノース−6−リン酸をマンノースリン酸イソメラーゼ(EC5.3.1.8)でフルクトース−6−リン酸へ異性化し、さらに、フルクトース−6−リン酸をグルコースリン酸イソメラーゼ(EC5.3.1.9)でグルコース−6−リン酸に異性化後、検体中のマンノース量に応じて生成したグルコース−6−リン酸を、補酵素の存在下にグルコース−6−リン酸脱水素酵素(EC1.1.1.49)を用いて酸化し、この反応によって生じた補酵素の還元体を分光光度計で測定するものである(Clin. Chem. 30(2) p293-294(1984))。【0009】この酵素系でマンノースを測定する場合、ヘキソキナーゼはグルコースもリン酸化するため、多量のグルコース−6−リン酸を生じ、これがグルコース−6−リン酸脱水素酵素と反応することになる。特に、ヒト血清中においては、グルコース量はマンノース量の100倍ぐらいに達するため、測定前に、効率的に除去しておく必要がある。Soyama等(Clin. Chem. 30(2) p293-294(1984))と Akazawa等(J. Clin. Endocrinol. Metab. 62(5) p984-989(1986))は、グルコースオキシダーゼを用いてグルコースを除去する方法を報告しているが、グルコースの除去が不完全であったり、長時間に反応するとマンノースまで反応してしまうという問題があった(Clin. Chem. 43(3) p533-538(1997))。また、James等は、グルコキナーゼ(EC2.7.1.2)を用いてグルコースを選択的にリン酸化し、生じたグルコース−6−リン酸をアニオン交換樹脂を充填した遠心型のミニカラムで吸着除去後、吸着されずに通過液中に回収されたマンノースを、前記の酵素を用いたマンノース測定法で検出している(Clin. Chem. 43(3) p533-538(1997))が、煩雑な遠心操作を必要としていた。【0010】【発明が解決しようとする課題】このように、1液の中でグルコースを効率的に除去し、そのまま引続きマンノースを測定する簡便な方法は未だ完成しておらず、生化学検査用の汎用機に適用できていない。【0011】【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記したような問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、検体中に存在するマンノースを、グルコースの誘導体として検出するマンノース測定法において、予め、検体をピラノースオキシダーゼ又はL−ソルボースオキシダーゼ等のグルコースの2位酸化酵素、又は、ピラノースオキシダーゼ又はL−ソルボースオキシダーゼ等のグルコースの2位酸化酵素とグルコースオキシダーゼ等のグルコースの1位酸化酵素を組み合わせて処理し、検体中に存在するグルコースを完全に除去してからマンノースを測定すれば、簡便にマンノースを定量できることを見いだし、本発明に至ったものである。【0012】即ち、本発明は、(1)検体中のマンノースを測定する際に、予め検体中に含まれるグルコースをグルコースの2位酸化酵素を用いて除去することを特徴とするマンノースの定量法(2)グルコースの2位酸化酵素がピラノースオキシダーゼ又はL−ソルボースオキシダーゼである(1)記載のマンノースの定量法(3)検体中に含まれるグルコースをグルコースの2位酸化酵素を用いて除去する際に、グルコースの1位酸化酵素を併用する(1)又は(2)の方法(4)グルコースの1位酸化酵素がグルコースオキシダーゼである(3)に記載のマンノースの定量法(5)検体中のマンノースの定量を、予めグルコースを除去した検体中のマンノースを、酵素を用いて順次マンノース−6−リン酸、フルクトース−6−リン酸、グルコース−6−リン酸に変換し、生成するグルコース−6−リン酸をグルコース−6−リン酸脱水素酵素を用いて検出し、定量する(1)から(4)のいずれかの方法(6)検体中に含まれるグルコースを除去する際に、ピラノースオキシダーゼ又はL−ソルボースオキシダーゼとグルコースオキシダーゼを併用することを特徴とするグルコースの除去方法、に関する。【0013】【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の検体とは、臨床的にマンノース濃度を測定する意義のあるものであれば何であってもよいが、特に、血清、血漿、尿、髄液などの体液があげられる。【0014】本発明のグルコースを除去する方法とは、グルコースの2位酸化酵素、又は、グルコースの2位酸化酵素とグルコースの1位酸化酵素とを組み合わせてグルコースを効率的に完全に酸化し、マンノースの測定には妨害しないような物質に変換する方法である。本発明のグルコースの2位酸化酵素とは、酸素を電子受容体とするピラノースオキシダーゼやL−ソルボースオキシダーゼや、酸素やNAD(P)以外のものを電子受容体とする脱水素酵素がある。NAD(P)は酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)及び/又は酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)のことを意味する。本発明のグルコースの1位酸化酵素とは、酸素を電子受容体とするグルコースオキシダーゼ、NAD(P)を電子受容体とするグルコース脱水素酵素(EC1.1..1.47, EC1.1.1.118, EC1.1.1.119)や酸素やNAD(P)以外のものを電子受容体とするグルコース脱水素酵素(EC1.1.99.10)などがある。グルコースの除去に必要なそれぞれの酵素の量は、グルコースの2位酸化酵素については0.1〜500単位/mL、好ましくは、1〜10単位/mL濃度になるように添加すればよい。グルコースの1位酸化酵素ついては0.1〜5000単位/mL、好ましくは、1〜100単位/mL濃度になるように添加すればよい。なお、グルコースの1位酸化酵素が脱水素酵素の場合には、0.1〜500単位/mL好ましくは0.5〜10単位/mL濃度になるように添加する。又、ピラノースオキシダーゼ又はL−ソルボースオキシダーゼ等のグルコースの2位酸化酵素とグルコースオキシダーゼ等のグルコースの1位酸化酵素との相対活性比は通常1:100〜100:1、好ましくは1:10〜10:1であればよい。なお、ピラノースオキシダーゼ又はL−ソルボースオキシダーゼとグルコースの1位酸化酵素として脱水素酵素を用いる場合の相対活性比は通常1:10〜100:1、好ましくは、1:1〜10:1であればよい。【0015】本発明のピラノースオキシダーゼとは、グルコースの2位を酸化する酵素で、国際生化学連合(I.U.B.)の酵素委員会でEC1.1.3.10と分類されるものであれば何であってもよく、酵素の由来については特に限定されないが、グルコースと比較した場合のマンノースの相対反応性が1.5%以下で、グルコース除去の際に、実質上、マンノースと反応しないものが好ましい。具体的には、Polyporus obtusus由来のピラノースオキシダーゼがあげられる。【0016】本発明のL−ソルボースオキシダーゼとは、L−ソルボースの5位を酸化する酵素で、かつグルコースの2位も効率よく酸化する性質があり、I.U.B.の酵素委員会でEC1.1.3.11と分類されるものであれば何であってもよく、酵素の由来については特に限定されないが、グルコースと比較した場合のマンノースの相対反応性が1.5%以下で、グルコース除去の際に、実質上、マンノースと反応しないものが好ましい。【0017】本発明のグルコースオキシダーゼとは、グルコースの1位酸化酵素で、I.U.B.の酵素委員会でEC1.1.3.4と分類されるものであれば何であってもよく、酵素の由来については特に限定されない。【0018】本発明の検体中のマンノースを測定する方法としては、検体中に存在する物質のうちで、グルコース以外には反応する成分が実質的にない程度にマンノースに対して特異性の高い酵素を用いるマンノースの定量法が好ましい。マンノースに対して特異性の高い酵素を用いる方法であれば、マンノース酸化酵素単独でも、複数の酵素を組み合わせた系でもよく、公知の方法に従って行うことができる。複数の酵素を組み合わせるマンノースに特異的な方法としては、例えば、検体中のマンノースを、酵素を用いて順次マンノース−6−リン酸、フルクトース−6−リン酸、グルコース−6−リン酸に変換し、生成するグルコース−6−リン酸をグルコース−6−リン酸脱水素酵素(EC1.1.1.49)を用いる方法が使用できる(Clin. Chem. 30(2) p293-294(1984))。ここでは、マンノースをリン酸化してマンノース−6−リン酸を生成させるためにはヘキソキナーゼ(EC2.7.1.1)を、マンノース−6−リン酸からフルクトース−6−リン酸への異性化にはマンノースリン酸イソメラーゼ(EC5.3.1.8)を、フルクトース−6−リン酸からグルコース−6−リン酸への異性化にはグルコースリン酸イソメラーゼ(EC5.3.1.9)を使用している。【0019】マンノースを定量する方法としては、マンノースを変換する最終酵素としてマンノースデヒドロゲナーゼやグルコース−6−リン酸脱水素酵素などの脱水素酵素を用いて、これらの酵素反応の結果生じる補酵素の還元体、還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)や還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)(両方を合わせてNAD(P)Hと略す)の吸光度を直接測定したり、ジアホラーゼや1−メトキシ−5−メチルフェナジウムメチルサルフェイト(1m−PMS)の存在下にNAD(P)Hでテトラゾリウム塩類を還元し、生じたフォルマザンの吸光度を測定する高感度な方法が用いられる。さらに、NAD(P)Hのより高感度な測定法としては、1m−PMSなどの電子伝達体の存在下にNAD(P)Hを溶存酸素で酸化し、スーパーオキシドラジカルや過酸化水素を発生させ、これらをルミノールやイソルミノールなどを用いる化学発光により測定する方法や、従来から汎用されている過酸化水素を高感度で測定する方法がある。また、微生物由来の生物発光酵素系で、NAD(P)Hを測定する方法もまた使用できる。【0020】【実施例】以下に、参考例、実験例及び実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例1 グルコース除去法の検討健常者の血清を、3つの方法(表1)で処理後、残存するグルコースを液体クロマトグラフィー法(HPLC)で定量し、グルコース残存割合を求めて比較した。微生物由来のグルコースオキシダーゼ(G1OD)(オリエンタル酵母(株)社製)を用いた「方法1」では、約30%のグルコースが残存し、前処理法としては、不完全であった。一方、Polyporus obtusus 由来のピラノースオキシダーゼ(G2OD)(宝酒造(株)社製)を用いた「方法2」と、G1ODとG2ODを組み合わせた「方法3」では、グルコースは完全に除去されていた。【0021】1)略号は、CAT:カタラーゼ(シグマ社製)、M−T緩衝液:トリス−マレイン酸緩衝液。2)方法3で、G1ODとG2ODを蒸留水に変えたものを対象(100%)とし、グルコースの残存割合を計算した。【0022】なお、残存するグルコースの分析には、デガッサー(880-50)、カラムオーブン(860-CO)、移動相ポンプ(880-PU)からなる日本分光(株)のHPLCシステムを用いた。分画分子量3万の遠心限外濾過チューブ(Ultrafree-MC、ミリポア社)で除蛋白した反応液20μLを、80℃に保温した糖分析用カラム(Waters Sugar Pak、ウォターズ社製)にチャージし、移動相として蒸留水を0.5mL/分の流速で流しグルコースを分離した。検出には、示差屈折率検出器(Shodex RI SE-51、昭和電工(株)製)を用い、ピークの解析には、クロマト・インテグレータ(D-2500、日立製作所(株)製)を用いた。【0023】実施例2 血清中のマンノースの定量患者血清を想定し、400μMのマンノースを添加した健常者血清を検体として、実施例1のグルコース除去法の「方法2」及び「方法3」で処理後、この反応液260μLに、250mMのトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)300μL、酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)6.7mM、アデノシントリフォスフェイト(ATP)15mM、MgCl2 を30mM含む「補酵素溶液(NAM)」20μL、酵母由来のヘキソキナーゼ(HK、シグマ社製)、Leuconostoc mesenteroides由来のグルコース−6−リン酸脱水素酵素(G6PDH、シグマ社製)、酵母由来のグルコースリン酸イソメラーゼ(GPI、シグマ社製)をそれぞれ50Uずつ取り、4℃で12,000g×10分間遠心分離後、上清の硫酸アンモニウム溶液を取り除いた残査に25mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.8)1mLを加えて調製した「HK/G6PDH/GPI溶液」15μL、酵母由来のマンノースリン酸イソメラーゼ(MPI、シグマ社製)を100U取り、4℃で12,000g×10分間遠心分離後、上清の硫酸アンモニウム溶液を取り除いた残査に25mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.8)1mLを加えて調製した「MPI溶液」5μLを加え、37℃で15分間反応させた。【0024】検体中のマンノースに由来するグルコース−6−リン酸の酸化反応によって生じた補酵素の還元体NADPHの340nmにおける吸光度を、分光光度計(JASCO V-530、日本分光(株)製)と記録計(JASCO RC-150、日本分光(株)製)で測定した。同時に、微量に存在する内因性フルクトースの影響を差し引くため検体ブランクとして、MPI溶液を蒸留水に変え、検体と同様に処理した反応液の吸光度も測定した。マンノース濃度の計算は、標準液を検体としたときの標準液の吸光度差(標準液−標準液ブランク)をプロットした検量線に基づき、検体の吸光度差(検体−検体ブランク)から求めた。【0025】G2ODを用いた「方法2」と、G1ODとG2ODを組み合わせた「方法3」で前処理した検体のマンノース値は、それぞれ、理論値の96.0±0.5%(n=8)、97.0±3.2%(n=21)であった。何れの方法でも、ほぼ満足できる結果が得られ、どちらも血清マンノースの測定に利用できることが分かった。【0026】実施例3 マンノース測定に影響する成分マンノースの測定に干渉する物質を調べるため、マンノース400μMを添加した健常者血清に、各種血清成分を過剰となるように添加した。これらの血清を、実施例2に示した2つの方法で測定し、添加したマンノースの回収率を求めた。その結果を、表2にまとめた。アスコルビン酸、尿酸、ビリルビンとヘモグロビンは、いずれの測定法に対しても、ほとんど干渉しなかった。しかしながら、溶血は、両測定法に強く干渉した。一方、グルコースの添加は、G1ODとG2ODで前処理した「方法3」では正確に測定できていたのに対し、G2ODのみで前処理した「方法2」では、強く干渉し、添加したマンノースの約60%しか回収できなかった。このことから、マンノース測定に干渉するグルコースの除去には、G1ODとG2ODの両者を組み合わせた方が、好ましいことが分かる。【0027】1)測定値は平均値±SD、括弧内は測定回数。2)ビリルビン添加血清は、市販の標準血清「アナセラム−BIL」(第一化学薬品社製)を健常者血清で希釈して調製した。3)ヘパリン採血決液を、液体窒素で凍結後、融解して溶血し、ヘモグロビン濃度が500mg/dLとなるように、この溶血液を健常者血清に添加して調製した。【0028】実施例4 自動分析装置への適用検討患者血清を想定し、400μMのマンノースを添加した健常者血清を、実施例1の「方法3」で前処理し、次のようにして測定した。ミクロセルに、血清30μL、G1OD(100U/mL)10μL、G2OD(100U/mL) 10μL、CAT(500U/mL) 10μL、 50mM M−T緩衝液(pH5.5) 200μLを加えて攪拌してから、分光光度計の恒温装置付きセルホルダーにセットし、37℃で5分間反応した。さらに、この反応液に、実施例2の「補酵素溶液(NAM)」20μL、「HK/G6PDH/GPI溶液」15μL、250mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)300μLの割合で混合した「試薬混液」335μLを加えてさらに2分間反応後、「MPI溶液」5μLを加え、37℃で20分間反応させた。【0029】結果を図1に示した。図から明らかなように、「試薬混液」添加後の吸光度の上昇は無く、内因性のフルクトースはなく、且つ「方法3」によるグルコースの前処理は完全であることが分かる。また、「MPI溶液」の添加により、血清に添加したマンノース+内因性マンノースに相当する吸光度の増加がみられ、マンノースの定量が可能であることが分かった。このように、検体の入った同一のセルに、連続して試薬を添加するだけでマンノースの測定が可能であることが示され、このマンノース測定法は、広く臨床で使用されている生化学検査用の自動測定装置(汎用機)へ適用することができる。【0030】【発明の効果】本発明のグルコースの2位酸化酵素又は、これとグルコースの1位酸化酵素を組み合わせてグルコースを除去する前処理法は、マンノースをグルコース誘導体として検出するマンノース測定法に対し、測定を妨害する内因性グルコースの除去に有効であり、マンノースの生化学検査用の自動分析装置(汎用機)での測定を可能にした。【0031】【図面の簡単な説明】【図1】血清中のマンノース測定における反応のタイムコース 検体中のマンノースを測定する際に、予め検体中に含まれるグルコースをグルコースの2位酸化酵素を用いて除去することを特徴とするマンノースの定量法。 グルコースの2位酸化酵素がピラノースオキシダーゼ又はL−ソルボ−スオキシダーゼである請求項1に記載のマンノースの定量法。 検体中に含まれるグルコースをグルコースの2位酸化酵素を用いて除去する際に、グルコースの1位酸化酵素を併用する請求項1又は2の方法。 グルコースの1位酸化酵素がグルコースオキシダーゼである請求項3に記載のマンノースの定量法。 検体中のマンノースの定量を、予めグルコースを除去した検体中のマンノースを、酵素を用いて順次マンノース−6−リン酸、フルクトース−6−リン酸、グルコース−6−リン酸に変換し、生成するグルコース−6−リン酸をグルコース−6−リン酸脱水素酵素を用いて検出し、定量する請求項1から4のいずれかの方法。 検体中に含まれるグルコースを除去する際に、ピラノースオキシダーゼ又はL−ソルボースオキシダーゼとグルコースオキシダーゼを併用することを特徴とするグルコースの除去方法。


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