タイトル: | 特許公報(B2)_インテグリン発現促進剤 |
出願番号: | 1998052075 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A61K 36/02,A61P 43/00,A61P 7/04,A61P 19/10 |
藤村 努 森脇 繁 武馬 吉則 JP 4331282 特許公報(B2) 20090626 1998052075 19980304 インテグリン発現促進剤 花王株式会社 000000918 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 藤村 努 森脇 繁 武馬 吉則 20090916 A61K 36/02 20060101AFI20090827BHJP A61P 43/00 20060101ALI20090827BHJP A61P 7/04 20060101ALI20090827BHJP A61P 19/10 20060101ALI20090827BHJP JPA61K35/80 ZA61P43/00A61P7/04A61P19/10 A61K 36/18 A61K 36/03 A61K 36/07 A61K 36/23 A61K 36/28 A61K 36/53 A61K 36/70 A61P 9/10 A61P 35/00 A61P 35/04 A61P 43/00 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 国際公開第97/026896(WO,A1) 特開平09−176009(JP,A) 特開平06−256207(JP,A) 特開平02−255622(JP,A) 特開平08−051950(JP,A) 特開昭64−066126(JP,A) 国際公開第96/002560(WO,A1) 特開平04−506089(JP,A) 特開平09−301821(JP,A) 特開平08−104696(JP,A) PATANKAR,M.S. et al,A revised structure for fucoidan may explain some of its biological activities,J Biol Chem,1993年,Vol.268, No.29,p.21770-6 BRANDLEY,B.K. et al,Multiple carbohydrate receptors on lymphocytes revealed by adhesion to immobilized polysaccharides,J Cell Biol,1987年,Vol.105, No.2,p.991-7 4 1999246428 19990914 6 20041020 菊池 美香 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、癌転移抑制あるいは動脈硬化症の予防、治療剤等として有用なインテグリンの発現促進剤に関する。【0002】【従来の技術】インテグリンは、細胞表面に発現し、細胞接着に関与する受容体である。かかるインテグリンの重要性は近年急速に増大しており、例えば白血球接着抑制、血小板凝集阻害、癌転移抑制、あるいは心筋梗塞、動脈硬化症、骨溶解性疾患等の治療、予防への応用が検討されている。【0003】ところでこれまでインテグリンの研究は、例えば白血球接着抑制等インテグリンの発現を抑制する研究が主体であった。例えばRGDペプチドを初めとするインテグリンに特異的な各種ペプチド(特開平8−301857号公報、特開平7−304795号公報、特開平7−149794号公報、特開平6−92282号公報、特開平8−208692号公報、特開平6−293659号公報)や抗インテグリン抗体(特開平6−54698号公報、特開平3−216666号公報)等がインテグリン阻害剤として知られている。【0004】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、インテグリンの発現を促進することに有用性があると考えられるものに癌転移抑制等が挙げられるにも係わらず、インテグリンの発現を促進するための研究はほとんど進捗していないのが現状である。【0005】したがって本発明は、インテグリンの発現促進剤を提供することを目的とする。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、特定の植物又はその抽出物がインテグリンの発現を促進することができることを見出し、本発明を完成させた。【0007】すなわち本発明は、ヒバマタ、ローズマリー、キウイ、ブクリョウ、ゴボウ、ニンジン及びコウソウからなる群より選ばれる1以上の植物又はその抽出物を有効成分とするインテグリン発現促進剤を提供するものである。【0008】【発明の実施の形態】本発明に用いるヒバマタ、ローズマリー、キウイ、ブクリョウ、ゴボウ、ニンジン及びコウソウは、すでに一般の皮膚外用剤、化粧料、医薬品の原料、基材、添加剤として知られているものである。また保湿効果、抗炎症効果、血行促進効果、養毛効果、美白効果等の効果があることが知られているものである。しかしこれらがインテグリンの発現を促進することについては全く知られていなかった。インテグリンは、αサブユニット、βサブユニットからなり、αサブユニットは更にα1からα5、αL等が存在し、βサブユニットはβ1、β2、β3等が存在するが、各種結合組織に存在するコラーゲン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ラミニン等マトリックスと線維芽細胞など結合組織に存在する細胞との相互作用を考えると、これらのうちα2サブユニット、α5サブユニット、β1サブユニットの発現が促進されるのが好ましく、更にはα2サブユニットの発現が促進され、同時にβ1サブユニットの発現が促進されることがより望ましい。また、特に、皮膚線維芽細胞に関してはコラーゲンとの相互作用の観点からα2β1インテグリンの発現が促進されることが好ましい。【0009】ここで植物とは、それらの全草又はそれらの葉、葉柄、茎、根、種子の1もしくは2以上の箇所(以下、「原体」と称する)又はこれを乾燥して粉砕したものである。また植物抽出物とは、原体を乾燥し又は乾燥することなく粉砕した後、常温又は加温下で溶剤により抽出するか又はソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出することにより得られる、溶媒抽出液、その希釈液もしくは濃縮液、又はその乾燥末をいう。【0010】抽出に用いる溶剤としては水、有機溶媒及びこれらの混合物が挙げられるが、特に有機溶媒、又は水と有機溶媒との混合物が好ましい。有機溶媒としては、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エステル類、アルコール類が挙げられるが、特にメタノール、ブタノール、プロパノール、エタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のアルコール類が好ましい。【0011】原体からの抽出は例えば以下のように行う。すなわち原体そのもの又は乾燥物もしくは乾燥粉砕物に溶媒を加え、1〜100℃、好ましくは3〜70℃で0.5〜30日間、好ましくは1〜15日間抽出する。次いで得られた抽出液を適宜濾過、静置、濾過等することにより植物抽出物を得ることができる。当該抽出物は希釈、濃縮もしくは凍結乾燥した後、粉末又はペースト状に調製し、適宜製剤化してもよい。また、必要により公知の方法で脱臭、脱色等の精製処理を行ってもよい。植物抽出物は、このようにして抽出したものを用いてもよく、市販品を利用してもよい。【0012】前記の種々の植物又はその抽出物は、そのままでインテグリン発現促進剤として用いることもできるが、適宜製剤化して用いることもできる。【0013】本発明のインテグリン発現促進剤中、前記植物又はその抽出物の含有量は、効果、配合性、使用感の観点から通常有効成分の乾燥固形分として0.00001〜10重量%が好ましく、0.0001〜3重量%が特に好ましい。【0014】本発明のインテグリン発現促進剤には、前記種々の植物又はその抽出物の他、通常使用される外用基材、他の薬効成分を配合できる。ここで用いられる外用基材としては、油性基剤をベースとするもの、油/水、水/油型の乳化系基剤をベースとするもの、水をベースとするもののいずれであってもよい。油性基剤としては、特に制限はなく、例えば植物油、動物油、合成油、シリコーン油、脂肪酸、天然又は合成のグリセリド等が挙げられる。また、保湿剤、紫外線吸収剤、アルコール類、キレート類、pH調整剤、防腐剤、増粘剤、色素、香料等を任意に組み合わせて配合することができる。また、上記薬効成分としては特に制限はなく、例えば鎮痛消炎剤、殺菌消毒剤、ビタミン類、皮膚柔軟化剤等を必要に応じて適宜使用できる。皮膚外用剤の形態としては、軟膏、クリーム、乳液、化粧水、ジェル、パック剤、パップ剤、ファンデーション等が挙げられる。【0015】インテグリン発現促進剤は外用及び内服のいずれの方法でも投与することができるが、外用投与が好ましく、皮膚外用剤の形態とすることが特に好ましい。【0016】なお、インテグリンの検出には種々の方法があり、抗体を用いる方法としては例えばフローサイトメトリー(FACScan)、イムノブロッティング、ウエスタンブロッティング、抗体染色法などが挙げられ、mRNAを用いる方法としては例えばPCR、ノーザンブロッティングなどが挙げられる。インテグリンの検出に用いる細胞としては実際に皮膚真皮組織に存在する皮膚線維芽細胞が最も好ましいが、肺線維芽細胞等他の組織の線維芽細胞でもよく、また、軟骨細胞等でも良い。【0017】【実施例】次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。【0018】製造例1〜12表1に示す各植物の部位の粉砕物1kgを抽出溶媒5リットルに室温で1週間浸漬し、溶媒可溶成分を抽出した。抽出液を分離した残渣について同様の操作を繰り返し、合計10リットルの抽出液を得た。この抽出液の溶媒を留去し、減圧乾固し、抽出物を得た。なお、以下において、Wは水を、BGは1,3−ブチレングリコール、ETはエタノールを示す。【0019】【表1】【0020】試験例1 インテグリン発現促進活性の測定インテグリン発現活性は、Riikonenらの方法(J.Biol.Chem.,270,13548(1995))に従い行った。ヒト皮膚線維芽細胞(ヒト包皮由来)を90mm培養ディッシュに播種し、(5%牛胎児血清(FCS)含有DMEM(GIBCO))、24時間後、製造例15、 、10、11及び12で得られた各エキスを最終濃度が0.01〜0.001重量%(乾燥固形換算重量%)をとなるように加え培養した。またコントロールとして用いた溶媒を加え培養した。48時間後、細胞をトリプシン/EDTAを作用させて細胞を剥がし、FCSにてトリプシンを中和し、遠心して上清を廃棄するなどして洗浄した。0.1%FCS及び0.02%NaN3 含有PBSにて同様に2回洗浄したのち、細胞に抗ヒトインテグリンα2抗体(mouse,GIBCO社)、抗ヒトインテグリンβ1抗体(mouse,GIBCO社)及び抗ヒトインテグリンα2β1抗体(mouse,CHEMICON社)各1/100〜1/200濃度を4℃で30分間作用させた。2度洗浄後、二次抗体としてFITC標識抗マウスIgG1抗体を1/100濃度で、4℃で30分間作用させたのち、3度洗浄を繰り返した後FACScan(Becton Dickinson)を用いて分析した。FACScanのブランクとしては一次抗体にmouseIgG(1μg/ml)を用いた。各蛍光強度よりブランク分を差し引き、コントロールを100%としたときの相対蛍光強度を算出した。結果を表2に示す。【0021】【表2】【0022】表2より、上記植物抽出物の作用により、インテグリンの発現が促進することが確認された。【0023】【発明の効果】本発明のインテグリン発現促進剤は、優れたインテグリン発現促進剤を有するものであり、癌転移抑制等へ利用することが可能である。 ヒバマタ又はその抽出物を有効成分とするインテグリン発現促進剤(但し、がん細胞に対するアポトーシス誘発剤、制がん剤、抗転移剤、発がん予防剤、腫瘍細胞転移阻害剤、動脈硬化症の予防・治療剤及び心筋梗塞の予防・治療剤として使用する場合を除く)。 インテグリンのβサブユニットがβ1である請求項1記載のインテグリン発現促進剤。 インテグリンのαサブユニットがα2、α5である請求項1記載のインテグリン発現促進剤。 インテグリンがインテグリンα2β1である請求項1記載のインテグリン発現促進剤。