タイトル: | 特許公報(B2)_グリシンベタインモノマーの製法 |
出願番号: | 1998020834 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C07C 229/12,C07C 227/08,C07C 227/40 |
向山 高広 二ノ井 武嗣 奥田 尚宏 内山 雄二朗 JP 3878315 特許公報(B2) 20061110 1998020834 19980202 グリシンベタインモノマーの製法 大阪有機化学工業株式会社 000205638 朝日奈 宗太 100065226 佐木 啓二 100098257 向山 高広 二ノ井 武嗣 奥田 尚宏 内山 雄二朗 20070207 C07C 229/12 20060101AFI20070118BHJP C07C 227/08 20060101ALI20070118BHJP C07C 227/40 20060101ALI20070118BHJP JPC07C229/12C07C227/08C07C227/40 C07C229/12 C07C227/08 C07C227/40 特公昭46−030293(JP,B1) 特開平06−001762(JP,A) 特開平09−095473(JP,A) 5 1999222470 19990817 13 20030306 関 美祝 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、グリシンベタインモノマーの製法に関する。さらに詳しくは、おもに、整髪剤などの化粧料に用いる両性イオン性樹脂の製造に有用な純度の高い両性イオン性のグリシンベタインモノマーを容易に生産効率よく製造する方法に関する。【0002】【従来の技術】従来、整髪剤などの化粧料として有用な両性イオン性樹脂であるグリシンベタインポリマーの原料のグリシンベタインモノマーをうる方法としては、特開平9−95474号公報記載の製法が知られている。しかしながら、この方法では、反応溶媒に非水系溶媒を用いるために、反応工程後の脱塩などの精製工程までに非水系溶媒を水に置換することが必要である。そのため、作業工程が煩雑で長くなり生産効率が良くない上、濃縮などの工程が多くなり重合の恐れが出てくるので、品質的にも好ましくない。また、非水系溶媒を用いると、反応温度を高くしないと反応しにくいため重合の恐れが出て望ましくない。【0003】前記のように、非水系溶媒で反応を行うと生産効率と製品の品質の点で多くの問題が生じる。【0004】このように、両性イオン性樹脂の製造に有用なグリシンベタインモノマーを、生産効率よく重合させずに合成しうる方法が未だ見出されていないのが実情であり、かかるモノマーの製法の確立が待ち望まれている。【0005】【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、えられるグリシンベタインモノマーの品質を損なうことなしに水性媒体で反応を行い、要すれば、えられたモノマーの脱塩などの精製を行うことにより塩濃度を下げ、従来に比べて短時間で純度の高いグリシンベタインモノマーを容易にうることができる方法を提供することを目的とする。【0006】【課題を解決するための手段】本発明は、一般式(I):【0007】【化3】【0008】(式中、R1は水素原子またはメチル基を示す)で表わされるN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(A)と、一般式(II):XCH2COOM (II)(式中、Xはハロゲン原子、Mはアルカリ金属原子またはアンモニウムを示す)で表わされるハロ酢酸塩(B)とを水性媒体中で加熱して反応させることを特徴とする一般式(III):【0009】【化4】【0010】(式中、R1は前記と同じ)で表わされるグリシンベタインモノマーの製法であって、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(A)100重量部に対して水性媒体を40〜100重量部使用し、水性媒体が水、または水60〜99.9重量部と親水性有機溶媒0.1〜40重量部からなる混合物であるグリシンベタインモノマーの製法(請求項1)に関する。【0011】 さらに、本発明は、親水性有機溶媒が炭素数1〜4の脂肪族1〜4価アルコールである請求項1記載のグリシンベタインモノマーの製法(請求項2)、反応をハロ酢酸塩(B)を含有する水性媒体中にN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(A)を分割法または滴下法により添加することにより行う請求項1または2記載のグリシンベタインモノマーの製法(請求項3)、反応後、えられたグリシンベタインモノマーの精製を行う請求項1、2または3記載のグリシンベタインモノマーの製法(請求項4)、精製を電気透析またはイオン交換樹脂を用いることにより行う請求項4記載のグリシンベタインモノマーの製法(請求項5)に関する。【0012】【発明の実施の形態】本発明の製法によって製造されるモノマーは、一般式(III):【0013】【化5】【0014】(式中、R1は水素原子またはメチル基を示す)で表わされるグリシンベタインモノマーであり、かかるグリシンベタインモノマーの原料として一般式(I):【0015】【化6】【0016】(式中、R1は前記と同じ)で表わされるN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(A)と、一般式(II):XCH2COOM (II)(式中、Xはハロゲン原子、Mはアルカリ金属原子またはアンモニウムを示す)で表わされるハロ酢酸塩(B)が用いられる。【0017】前記一般式(II)で表わされるハロ酢酸塩(B)の代表例としては、たとえば、モノクロロ酢酸ナトリウム、モノクロロ酢酸カリウム、モノブロモ酢酸ナトリウム、モノクロロ酢酸アンモニウムなどがあげられるが、工業的に安価で入手できる点から、モノクロロ酢酸ナトリウムおよびモノクロロ酢酸カリウムが好ましい。【0018】本発明の製法における、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(A)とハロ酢酸塩(B)との割合は、未反応のN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(A)が過剰に残存し、反応生成物が目的とするグリシンベタインモノマーと未反応のN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(A)との混合物となるおそれをなくすためには、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(A)1モルに対してハロ酢酸塩(B)が0.7モル以上、好ましくは0.9モル以上となるように調整することが望ましい。また、未反応のハロ酢酸塩(B)が不純物として残存し、反応生成物が目的とするグリシンベタインモノマーと未反応のハロ酢酸塩(B)との混合物となるおそれをなくすためには、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(A)1モルに対してハロ酢酸塩(B)が1.3モル以下、好ましくは1.1モル以下となるように調整することが望ましい。【0019】反応媒体として用いられる水性媒体としては、基本的に水、または反応時に副生する塩をろ過除去しやすくするためには、必要に応じて親水性有機溶媒を0.1〜40重量%の割合で水と均一に混和した状態の混合溶媒を使用する。親水性有機溶媒は単独であるいは2種以上を混合して使用してもよい。ここでいう親水性溶媒とは、水に対する溶解度が20g/100g(25℃)以上である有機溶媒をいう。かかる親水性有機溶媒の代表例としては、たとえば炭素数が1〜4の脂肪族1〜4価アルコール、アセトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジオキサンおよび酢酸メチルなどがあげられるが、本発明のベタインモノマーがたとえば化粧料の原料として使用されることを考慮すると、1〜2価アルコールが好ましい。かかる1〜2価アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノールおよびプロピレングリコールなどがあげられる。また、化粧料のなかでも整髪剤などは人体の皮膚に付着することがあるので、その際の安全性を考慮すると前記1〜2価アルコールのなかでもエタノールおよびイソプロパノールがとくに好ましい。【0020】水性媒体の使用量は、原料のN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(A)100重量部に対して、好ましくは40〜100重量部、より好ましくは50〜90重量部である。水性媒体の使用量が原料のN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(A)100重量部に対して40重量部未満のばあいは、反応液の粘度が上昇するため撹拌しにくくなり、反応熱を除くことが困難となるため、反応温度が制御できなくなる。さらに、温度上昇によるN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(A)の加水分解を促進し、望ましくない重合反応を併発する恐れがある。また、水性媒体をN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(A)100重量部に対して100重量部を超えて使用することも可能であるが、副生する塩がほとんど反応液に溶解してしまい、ろ過により前記塩を除去することが困難となる。その結果、脱塩処理はイオン交換樹脂あるいは電気透析装置に負荷をかける必要が出てくる。【0021】N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(A)とハロ酢酸塩(B)との反応は、たとえば大気雰囲気中で行い、ばあいによっては、反応液中にエアーを吹き込みながら、反応液が滞ることのないように適宜撹拌し、加熱しながら行われる。【0022】反応温度は、重合や副反応を起こさないために、70℃以下、好ましくは60℃以下とし、反応収率を低下させないために、40℃以上、好ましくは50℃以上にすることが望ましい。【0023】反応は、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(A)、ハロ酢酸塩(B)および反応媒体に、メトキノン、4−メトキシフェノールまたは4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルなどの公知の重合禁止剤を適宜添加して行ってもよい。前記原料は一括で仕込んで反応させてもよいが、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(A)の加水分解を抑制し、反応熱の発生を少なくするために、ハロ酢酸塩(B)にN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(A)をハロ酢酸塩(B)を含有する水性媒体(反応系内)のpHが10以下、好ましくは9以下となるように分割あるいは滴下を行い添加するのが好ましい。前記水性媒体のpHが10を超えるばあいは、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの加水分解が促進されやすくなり反応熱の発生を抑制しにくくなるので、収率が低下しやすい。pHが10以下で反応温度が50〜60℃の範囲であればN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートをどのように添加しても構わない。また、このときの反応時間は、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの添加がすべて終了した時点より2〜12時間、好ましくは4〜10時間の反応(熟成)を行うことが望ましい。【0024】反応の完結は高速液体クロマトグラフィーまたはガスクロマトグラフィーにより原料のN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(A)またはハロ酢酸塩(B)の減少量を調べることにより確認することができる。【0025】本発明の製法ではN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(A)とハロ酢酸塩(B)の反応の際に、目的であるグリシンベタインモノマーのほかにアルカリ金属ハロゲン化物またはアンモニウムハロゲン化物といった塩が副生する。前記塩は、グリシンベタインモノマーに比べて水への溶解度が低いために、大部分が反応系から析出してくる。この析出した塩は反応終了後に濾過あるいは遠心分離などの方法で容易に除去することができる。えられる濾液は、若干の塩を含んだグリシンベタインモノマー水性液であるので、この水性液を水で脱塩しやすい粘度まで希釈し、たとえば電気透析あるいはイオン交換樹脂などで脱塩などの精製を行う。【0026】脱塩に電気透析を用いるばあいは、ジュール熱による前記モノマーの重合を避け、電気透析膜の寿命を短くさせないために、透析膜1セルペアーあたりの印加電圧は3V以下、好ましくは1〜2Vにすることが望ましく、電気透析温度は膜の耐久性を考慮すると、10〜30℃になるように冷却しながら行うことが望ましい。電気透析による脱塩の終点はグリシンベタインモノマーを含むサンプル液を電位差滴定などにより残留ハロゲン分を測定することにより確認することができるが、簡易的に確認するならば水性液の電気伝導度を測定し脱塩が進行していることを確認してもよい。【0027】脱塩にイオン交換樹脂を用いるばあいは、とくに限定はないが、カチオン交換樹脂としては、たとえばオルガノ(株)製のアンバーライト200C、アンバーライトIRC−50などを用い、アニオン交換樹脂としては、たとえばオルガノ(株)製のアンバーライトIRA−94S、アンバーライトIRA−904などを用いる。方法は、バッチ式でも連続式のどちらでもよい。【0028】この脱塩工程までで脱塩されたグリシンベタインモノマー水性液をえることができるので、たとえば化粧料用の両性整髪用樹脂をうるための重合反応に用いてもよいし、また、媒体を除去し結晶の状態で重合反応に用いてもよい。【0029】反応液または濾液の濃縮は、通常、大気中で常圧または減圧下で行う。このときの濃縮温度は、濃縮中の結晶の析出を避けるためには40℃以上、好ましくは50℃以上、濃縮中に前記モノマーの重合を避けるためには80℃以下、好ましくは70℃以下が好ましい。【0030】以上のようにして、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(A)とハロ酢酸塩(B)とを反応させることにより、一般式(III):【0031】【化7】【0032】で表わされるグリシンベタインモノマーがえられる。かかるグリシンベタインモノマーの構造は1H−核磁気共鳴スペクトル(以下、1H−NMRという)、13C−核磁気共鳴スペクトル(以下、13C−NMRという)などによって確認することができる。【0033】なお、精製したグリシンベタインモノマーは、ばあいによって、一水和物の構造を有することがある。【0034】このように、本発明の製法によれば、従来に比べて反応温度を低くおさえることができ、従来よりも短い製造時間で高純度のグリシンベタインモノマーを容易にうることもできる。また、えられたグリシンベタインモノマーと、このグリシンベタインモノマーと共重合可能な他のモノマーとを重合させることにより、たとえば整髪剤などの化粧料用の両性イオン性樹脂を好適に製造することができる。【0035】【実施例】つぎに、本発明のグリシンベタインモノマーの製法を実施例にもとづいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。また、各工程での所用時間を記しているが、これはあくまで目安であり、実験のやり方では増減するばあいもある。【0036】実施例1撹拌機、冷却管、温度計、エアー導入管および滴下ロートを備えた、1L容5口フラスコに、精製水85gおよびイソプロピルアルコール15gを仕込み、撹拌しながらモノクロロ酢酸ナトリウム116.5gを塊にならない程度に徐々に加え、4−メトキシフェノール0.69gを加えたのち(反応系内のpH:5.6)、50℃に加熱した。このフラスコにN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート157gを滴下ロートにより5時間かけて滴下し(滴下中の反応液のpHは8.2であった)、滴下終了後7時間反応(熟成)を行った。この間、反応温度は50〜60℃に調節した(反応に要した時間:13時間)。ついで、反応液を濾過し析出した塩を濾別し濾液315.5gをえた(濾過に要した時間:1時間)。この濾液を精製水280gで希釈し(希釈に要した時間:0.5時間)、希釈液(全量595.5g)を電気透析にかけた。電気透析装置はユアサアイオニクス(株)製、MEDIMAT M−220(10セルペアー、陽イオン交換膜 型番CR67、陰イオン交換膜 型番AR103)を用いた。塩回収液には精製水500gを用い、電極液には0.1mol/lの硫酸ナトリウム水溶液を用いた。電圧15Vで電気透析を始めた。電気透析前のサンプル液の電気伝導度は27000μS/cmであった。19〜22℃で4.5時間電気透析を行い最終的にサンプル液の電気伝導度は9μS/cmとなった(電気透析に要した時間:5時間)。つぎに、この溶液を50℃で濃縮し(濃縮に要した時間:5.5時間)、室温まで冷却後アセトン500gを添加し晶析を行った(晶析に要した時間:3時間)。系内はスラリー状となり濾過でウェットな結晶のみを分離し(濾過に要した時間:2.5時間)、40℃で3時間乾燥を行い、白色結晶を178.1gをえた(収率:82.8%)。【0037】えられた白色結晶を精製水またはエタノールで10倍希釈し、それぞれの様子を目視により観察したが、両方とも透明であった。【0038】えられた白色結晶を高速液体クロマトグラフィーで純度を確認した。高速液体クロマトグラフィーは、島津製作所(株)製、LC−10ASを用い、カラムには(株)ケムコ製、CHEMCOBOND 5−ODS−Hを用いた。展開溶媒は、MeOH/H2O=300ml/700ml+酢酸ナトリウム0.4g+酢酸0.23mlで、内部標準物質はパラオキシ安息香酸メチルを用いた。グリシンベタインモノマーの純度は99.9%以上で、原料であるN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートとモノクロロ酢酸ナトリウムはそれぞれ0.1%未満であった。【0039】つぎに、えられた白色結晶の残留塩素分を電位差滴定により測定した。電位差滴定装置は、京都電子工業(株)製、AT−410を用い、滴定試薬は1/500N硝酸銀水溶液を用いて測定したところ、残留塩素分は8.83ppmであった。【0040】つぎに、えられた白色結晶の強熱残分を測定した。測定方法は化粧品原料基準の強熱残分測定法の第1法で測定を行ったところ、強熱残分は0.1重量%以下であった。【0041】さらに、えられた白色結晶の1H−NMRおよび13C−NMRをJOEL−GSX−270FT−NMRスペクトルメーター(日本電子(株)製)を用いて測定したところ、以下のような結果であった。【0042】1H−NMR(CD3OD,δ(ppm)):1.94(br−s,CH3,3H)、3.30(br−s,N−(CH3)2,6H)、3.91(s,N−CH2−COO,2H)、4.04〜4.09(m,N−CH2−CH2またはN−CH2−CH2,2H)、4.55〜4.62(m,N−CH2−CH2またはN−CH2−CH2,2H)、5.67〜5.69(m,C=CH2,1H)、6.14〜6.17(m,C=CH2,1H)、13C−NMR(CD3OD,δ(ppm)):18.38(H2C=C−CH3)、52.63(N−(CH3)2)、59.38(CH2−COO)、63.30(N−CH2−CH2またはN−CH2−CH2)、65.75(N−CH2−CH2またはN−CH2−CH2)、127.34(H2C=C−CH3)、139.96(H2C=C−CH3)、167.80(N−CH2−COOまたはCH2−CH2−OOC)、168.42(N−CH2−COOまたはCH2−CH2−OOC)これらの結果から、えられた白色結晶がグリシンベタインモノマーであり、式(IV)【0043】【化8】【0044】で表わされるN−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインであることが確認された。【0045】実施例2実施例1と同様の操作で反応(反応に要した時間:13時間)、濾過(濾過に要した時間:1時間)および希釈(希釈に要した時間:0.5時間)を行い、希釈液を、再生済みカチオン交換樹脂(オルガノ(株)製、アンバーライト200C)1000mlを充填したカラムに通し、さらに再生済みアニオン交換樹脂(オルガノ(株)製、アンバーライトIRA−94S)1000mlを充填したカラムに通し処理した(脱塩精製に要した時間:6時間)。処理後の液について実施例1と同様に濃縮(濃縮に要した時間:6時間)、晶析(晶析に要した時間:3時間)、濾過(濾過に要した時間:2時間)および乾燥(乾燥に要した時間:3時間)を行ったところ、131.7g(収率61.3%)の白色結晶をえた。【0046】えられた白色結晶を実施例1と同様に精製水またはエタノールで10倍希釈し、それぞれの様子を目視により観察したが、両方とも透明であった。【0047】えられた白色結晶の純度を実施例1と同様に高速液体クロマトグラフィーで確認した。グリシンベタインモノマーの純度は99.9%以上で、原料であるN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートとモノクロロ酢酸ナトリウムはそれぞれ0.1%未満であった。【0048】つぎに、えられた白色結晶の残留塩素分を電位差滴定により測定したところ残留塩素分は25.4ppmであった。【0049】つぎに、えられた白色結晶の強熱残分を測定したところ強熱残分は0.1重量%以下であった。【0050】さらに、えられた白色結晶の1H−NMRおよび13C−NMRを測定したところ実施例1と同様の結果となった。【0051】これらの結果から、えられた白色結晶がグリシンベタインモノマーであり、式(IV):【0052】【化9】【0053】で表わされるN−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインであることが確認された。【0054】実施例3撹拌機、冷却管、温度計、エアー導入管および滴下ロートを備えた、1L容5口フラスコに、精製水100gを仕込み、撹拌しながらモノクロロ酢酸カリウム132.5gを塊にならない程度に徐々に加え、4−メトキシフェノール0.69gを仕込み(反応系内のpH5.6)、50℃に加熱した。そののち、滴下ロートよりN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート157gを4時間かけて滴下し、滴下終了後50〜60℃で5時間反応(熟成)を行った(反応に要した時間:10時間)。以下は実施例1と同様に濾過(濾過に要した時間:1時間)、希釈(希釈に要した時間:1時間)および電気透析を行った。19〜22℃電圧15Vでの電気透析で、粗グリシンベタインモノマー水溶液の電気伝導度の初期値が33000μS/cmであったが、5.5時間の脱塩で13.9μS/cmまで減少した(脱塩精製に要した時間:5.5時間)。以下実施例1と同様に操作し(濃縮に要した時間:6.5時間、晶析に要した時間:3時間、濾過に要した時間:2時間、乾燥に要した時間:3時間)、白色結晶168.2g(収率78.2%)をえた。【0055】えられた白色結晶を実施例1と同様に精製水またはエタノールで10倍希釈し、それぞれの様子を目視により観察したが、両方とも透明であった。【0056】えられた白色結晶の純度を実施例1と同様に高速液体クロマトグラフィーで確認した。グリシンベタインモノマーの純度は99.9%以上で、原料であるN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートとモノクロロ酢酸カリウムはそれぞれ0.1%未満であった。【0057】つぎに、えられた白色結晶の残留塩素分を電位差滴定により測定したところ残留塩素分は10.3ppmであった。【0058】つぎに、えられた白色結晶の強熱残分を測定したところ強熱残分は0.1重量%以下であった。【0059】さらに、えられた白色結晶の1H−NMRおよび13C−NMRを測定したところ実施例1と同様の結果となった。【0060】これらの結果から、えられた白色結晶がグリシンベタインモノマーであり、式(IV):【0061】【化10】【0062】で表わされるN−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインであることが確認された。【0063】以上のように本発明のグリシンベタインモノマーの製造法によれば、従来の方法に比べて低温度で、かつ短時間で、純度の高いグリシンベタインモノマーを容易に製造することができ、工業的に有用である。【0064】比較例1撹拌機、冷却管、温度計、エアー導入管および滴下ロートを備えた、1L容5口フラスコに、イソプロピルアルコール100g、モノクロロ酢酸ナトリウム116.5g、4−メトキシフェノール2.23gを加え均一に撹拌分散させ(上澄み液を精製水で5倍に希釈したpH:5.2)、50℃に加熱した。このフラスコにN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート157gを滴下ロートにより4時間かけて滴下し(滴下終了時の反応上澄み液を精製水で5倍に希釈したpH:10.8)、滴下終了後8時間反応(熟成)を行った。この間、反応温度は50〜60℃に調節した。その後、上澄み液を高速液体クロマトグラフィーで分析を行ったが、グリシンベタインモノマーの転化率は0%であり、反応はまったく起こっていなかった。【0065】モノクロロ酢酸ナトリウムのイソプロピルアルコールへの溶解度が低いので、50〜60℃程度の低い温度では反応は進行しにくいことがわかる。【0066】比較例2比較例1と同様の装置にイソプロピルアルコール100g、モノクロロ酢酸ナトリウム116.5g、4−メトキシフェノール2.23gを加え均一に撹拌分散させ(上澄み液を精製水で5倍に希釈したpH:5.2)、82℃まで加熱した。このフラスコにN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート157gを滴下ロートにより4時間かけて滴下し(滴下終了時の反応上澄み液を精製水で5倍に希釈したpH:10.2)、滴下終了後11時間反応(熟成)を行った。この間、反応温度は80〜82℃に調節した。反応終了後の上澄み液をサンプリングし高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、グリシンベタインモノマーの転化率は85.2%であり、原料のN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートは13.5%が残存していた(反応に要した時間:15時間)。この溶液をイソプロピルアルコール400gで希釈し(希釈に要した時間:0.5時間)、濾過処理を施した(濾過に要した時間:1時間)が、濾液は霞を有していた。反応の際に一部重合したかあるいは副生成物を生じたようであった。そのため、この濾液を全量の5重量%の活性白土で処理し、副生成物を除去した(精製に要した時間:5時間)。つぎにこの溶液を50℃で濃縮し(濃縮に要した時間:6時間)、アセトン600gと28gの水で晶析を行った(晶析に要した時間:3時間)。このスラリー溶液を濾過し(濾過に要した時間:2時間)、40℃で3時間乾燥を行い(乾燥に要した時間:3時間)、ベタインモノマー粗結晶157.9gをえた。えられたベタインモノマー粗結晶の残留塩素量は6621ppmであった。つぎにこの結晶を精製水300gに溶かし(溶解に要した時間:1時間)、電気透析を行った(電気透析装置、塩回収液および電極液については実施例1と同様のものを使用)。電圧15Vの電気透析で粗グリシンベタインモノマー水溶液の電気伝導度の初期値が6050μS/cmであったが、2時間の脱塩で53.4μS/cmまで減少した(電気透析に要した時間:2時間)。精製処理後の液を50℃で濃縮し(濃縮に要した時間:9時間)、アセトン600gで晶析を行った(晶析に要した時間:3時間)。晶析により析出した結晶を濾過し(濾過に要した時間:2時間)、40℃で3時間乾燥を行い(乾燥に要した時間:3時間)、白色結晶98.1g(収率=45.6%)をえた。【0067】えられた白色結晶を実施例1と同様に精製水またはエタノールで10倍希釈し、それぞれの様子を目視により観察したが、両方とも透明であった。【0068】えられた白色結晶を実施例1と同様に高速クロマトグラフィーで純度を確認した。グリシンベタインモノマーの純度は99.9%以上で、原料であるN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートとモノクロロ酢酸ナトリウムはそれぞれ0.1%未満であった。【0069】つぎに、えられた白色結晶の残留塩素分を電位差滴定により測定したところ、残留塩素分は36.4ppmであった。【0070】つぎに、えられた白色結晶の強熱残分を測定したところ、強熱残分は0.1重量%以下であった。【0071】さらに、えられた白色結晶の1H−NMRおよび13C−NMRを測定したところ、実施例1と同様の結果となった。【0072】これらの結果から、えられた白色結晶がグリシンベタインモノマーであり、式(IV)で表わされるN−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインであることが確認された。【0073】【表1】【0074】以上のように本発明のグリシンベタインモノマーの製造法は、比較例に示す従来の方法に比べて反応温度を低くおさえることができ、従来よりも短い製造時間で純度の高いグリシンベタインモノマーを高収率で容易に製造することができ、工業的に有用である。【0075】【発明の効果】本発明によれば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートとハロ酢酸塩から、容易に生産効率よく、所望の両性イオン性のグリシンベタインモノマーを製造することができる。【0076】また、本発明の製法によってえられたグリシンベタインモノマーを、該モノマーと共重合可能な他のモノマーと重合させることにより、たとえば整髪剤などの化粧料用の両性イオン性樹脂を好適にうることができる。 一般式(I):(式中、R1は水素原子またはメチル基を示す)で表わされるN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(A)と、一般式(II): XCH2COOM (II)(式中、Xはハロゲン原子、Mはアルカリ金属原子またはアンモニウムを示す)で表わされるハロ酢酸塩(B)とを水性媒体中で加熱して反応させることを特徴とする一般式(III):(式中、R1は前記と同じ)で表わされるグリシンベタインモノマーの製法であって、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(A)100重量部に対して水性媒体を40〜100重量部使用し、水性媒体が水、または水60〜99.9重量部と親水性有機溶媒0.1〜40重量部からなる混合物であるグリシンベタインモノマーの製法。 親水性有機溶媒が炭素数1〜4の脂肪族1〜4価アルコールである請求項1記載のグリシンベタインモノマーの製法。 反応をハロ酢酸塩(B)を含有する水性媒体中にN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(A)を分割法または滴下法により添加することにより行う請求項1または2記載のグリシンベタインモノマーの製法。 反応後、えられたグリシンベタインモノマーの精製を行う請求項1、2または3記載のグリシンベタインモノマーの製法。 精製を電気透析またはイオン交換樹脂を用いることにより行う請求項4記載のグリシンベタインモノマーの製法。