タイトル: | 特許公報(B2)_多価アルコール脂肪酸エステル組成物 |
出願番号: | 1998010741 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A61K 8/04,A61K 8/60,A61K 8/37,A61Q 19/00 |
西崎 勝一 谷奥 知子 JP 3916315 特許公報(B2) 20070216 1998010741 19980122 多価アルコール脂肪酸エステル組成物 第一工業製薬株式会社 000003506 朝日奈 宗太 100065226 佐木 啓二 100098257 西崎 勝一 谷奥 知子 20070516 A61K 8/04 20060101AFI20070419BHJP A61K 8/60 20060101ALI20070419BHJP A61K 8/37 20060101ALI20070419BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20070419BHJP JPA61K8/04A61K8/60A61K8/37A61Q19/00 A61K 8/00- 8/99 A61Q 1/00-99/00 A61K 9/00- 9/72 A61K 47/00-47/48 CA(STN) REGISTRY(STN) 英国特許出願公開第02195891(GB,A) 特開平07−284645(JP,A) 特開平09−278628(JP,A) 特開平06−225684(JP,A) 特開平07−173045(JP,A) 特表平02−500358(JP,A) 特開平09−065822(JP,A) 2 1999209230 19990803 9 20041006 小堀 麻子 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、HLB15〜18のショ糖と脂肪酸またはその低級アルコールエステルとからのエステル組成物を製造し、使用する技術分野に属する。【0002】【従来の技術および発明が解決しようとする課題】従来より、ショ糖脂肪酸エステルなどの多価アルコール脂肪酸エステルが製造され、界面活性剤などとして使用されてきている。【0003】製造される多価アルコール脂肪酸エステルは、酸価、水酸基価などを一定の範囲にすることによって、一定の性能の製品にするよう設計されているが、ショ糖などの原料が天然物のばあい、原料ソースによって性能がばらつくことがある。また、合成時や精製時の加熱温度やpHのばらつきなどの製造条件によっても性能がばらつくことがある。【0004】製造された多価アルコール脂肪酸エステルの性能がばらつくばあい、用途によって必要性能が異なることを利用して、えられた多価アルコール脂肪酸エステルの性能に応じた用途に供される。したがって、各製品の性能を評価し、貯蔵し、それぞれに応じた用途に供することが必要となり、煩雑である。【0005】【課題を解決するための手段】 本発明は、前記のごとき多価アルコール脂肪酸エステルが製造されたばあいに製品の性能がばらつきやすく、性能がばらついたばあいには各製品の性能に適した用途に供しなければならず、煩雑であるという問題を解決するためになされたものであり、(A)HLB15〜18のショ糖と脂肪酸またはその低級アルコールエステルとからのエステル80〜99.99重量%(重量%、以下同様)および(B)水酸基1個およびカルボキシル基1個を有する化合物またはその金属塩とカルボキシル基1個を有する化合物またはその金属塩とからのエステル0.01〜20%を含有することを特徴とするO/W型エマルジョン用多価アルコール脂肪酸エステル組成物(請求項1)、および水酸基1個およびカルボキシル基1個を有する化合物またはその金属塩とカルボキシル基1個を有する化合物またはその金属塩とからのエステルが、乳酸と脂肪酸とからのエステルである請求項1記載の組成物(請求項2)に関する。【0006】【発明の実施の形態】本発明の多価アルコール脂肪酸エステル組成物は、(A)成分であるHLB2〜18の多価アルコール脂肪酸エステル(A)と、(B)成分である水酸基1個およびカルボキシル基1個を有する化合物またはその金属塩とカルボキシル基1個を有する化合物またはその金属塩とからのエステル(B)とを含有する組成物である。【0007】多価アルコール脂肪酸エステル(A)は、水酸基を2個以上、好ましくは3個以上有する多価アルコールと、炭素数8〜22、好ましくは12〜18の脂肪酸またはその低級アルコールエステルとからなるエステルであり、本発明の組成物の主成分の界面活性剤として、可溶化性、乳化性、分散性、洗浄性、起泡性などの性質を発現するために使用される成分である。【0008】前記多価アルコールとして高分子量化合物も使用しうるため、含まれる水酸基の数にはとくに上限はないが、エステルにしたばあいに分子内に親水性の水酸基を残した構造であって、水への溶解性または油脂への保水性をよくする点から2〜10、さらには3〜8のものが好ましく使用される。【0009】前記多価アルコールに含まれる水酸基の数が2個未満のばあいには、多価アルコールでない。さらに、生成するエステルは水系での界面活性能を示さず、油状で水不溶性となる。また、前記脂肪酸の炭素数が8未満のばあいには、疎水基が短かすぎるため界面活性能が不良となり、22をこえるものは工業的に入手するのが困難である。【0010】前記多価アルコールの具体例としては、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどの水酸基を2個有する多価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミンなどの水酸基を3個有する多価アルコール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、キシロース、ソルビタンなどの水酸基を4個有する多価アルコール、キシリトール、トリグリセリン、ブドウ糖、果糖などの水酸基を5個有する多価アルコール、ソルビトール、マルビトール、テトラグリセリンなどの水酸基を6個有する多価アルコール、水酸基を6個をこえて有するポリグリセリン、ショ糖、トレハロース、ラクトースなどの2糖類、マルトトリオースなどの3糖類などがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、いわゆる糖アルコールとよばれる水酸基を5個以上持つ、キシリトール、ソルビトール、トレハロース、ショ糖やポリグリセリンなどが、とくにショ糖、トレハロースが、HLBの幅の広い製品を製造することができる点から好ましい。とくに親水性の高い、高HLBの製品を製造することができる点から好ましい。【0011】前記脂肪酸の具体例としては、たとえばカプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、シリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ウンデシレン酸などの不飽和脂肪酸、イソステアリン酸などの合成脂肪酸などがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは炭素数8〜22の飽和脂肪酸が製品の外観に影響する色相や臭気が少なく、商品価値が高くなる点から好ましい。【0012】また、前記脂肪酸の低級アルコールエステルとしては、前記脂肪酸と低級アルコール、たとえばメチルアルコールなどの炭素数1〜3の脂肪酸アルコールとのエステルがあげられる。【0013】前記多価アルコールおよび脂肪酸またはその低級アルコールエステルからなる多価アルコール脂肪酸エステルの水酸基価(KOHmg/g)としては、100〜900であるのが使用するときに水に溶解しやすいことや、使用したばあいの性能が良好であるなどの点から好ましく、200〜800であるのがさらに好ましい。また、酸価(KOHmg/g)としては、10以下、さらに望ましくは5以下である。酸価5以下のものが純分が高く、使用したばあいの性能に影響をおよぼすことが少なく品質面から好ましい。【0014】なお、一価脂肪酸を使用してエステルを製造したばあいに酸価が高くなるのは、エステル化反応が充分進んでいない、または脂肪酸の使用量が多すぎるためである。このばあいには製品純度が低下し、不純物が増加するため、目的の性能がえられにくくなるなど問題となる。一方、脂肪酸のエステル化が充分進んでも水酸基2個以上の多価アルコールを使用することにより、水酸基が残存するようにすることができる。水酸基5個以上の多価アルコールのばあいには大きな水酸基価を有するエステルが生成しうる。このばあいの水酸基価は200〜800であるものが、水への溶解性が高く、透明性と乳化性の点から好ましく、200〜700であるものがさらに好ましい。【0015】HLB2〜18の多価アルコール脂肪酸エステル(A)の具体例としては、たとえばプロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、キシリトール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、トレハロース脂肪酸エステルなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは糖アルコール脂肪酸エステル、とくにショ糖脂肪酸エステルであるショ糖カプリン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステルなどが優れた生分解性と安全性が高く、広い範囲の乳化剤として使用できる点から好ましい。【0016】HLB2〜18の多価アルコール脂肪酸エステル(A)の製法にはとくに限定はなく、常法にしたがって製造すればよい。たとえば多価アルコールと脂肪酸とのエステル化反応、多価アルコールと牛脂や綿実油、パーム油、ヤシ油などとのエステル交換反応、多価アルコールと脂肪酸低級アルコール(たとえばメチルアルコールなどの炭素数1〜3の脂肪族アルコール)エステルとのエステル交換反応などが具体的な方法としてあげられる。【0017】(B)成分である水酸基1個およびカルボキシル基1個を有する化合物またはその金属塩とカルボキシル基1個を有する化合物またはその金属塩とからのエステル(B)は、多価アルコール脂肪酸エステルが、モノエステル、ジエステル、トリエステルなどの混合物であるため、水溶液で会合ミセル状に溶解したり凝集する傾向があるので、これらの溶液性を改善するために使用される成分である。【0018】前記水酸基1個およびカルボキシル基1個を有する化合物の具体例としては、たとえば乳酸、2−ヒドロキシヘキサン酸などがあげられる。これらはナトリウム塩などの金属塩として使用してもよい。これらのうちでは乳酸が一般に入手しやすく、安全性の点から好ましい。【0019】前記カルボキシル基1個を有する化合物の具体例としては、たとえば(A)成分の製造に使用される脂肪酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸などがあげられる。これらはナトリウム塩などの金属塩として使用してもよい。【0020】前記水酸基1個およびカルボキシル基1個を有する化合物またはその金属塩とカルボキシル基1個を有する化合物またはその金属塩とのエステル(B)において、酸価は10〜160のものが、本発明の組成物の水溶液の安定性をよくすることができる。好ましい酸価は40〜100である。なお、エステル(B)の酸価は中性エタノールに試料を溶解して、遊離のカルボン酸基をフェノールフタレン指示薬でアルカリ滴定により求められる。【0021】エステル(B)の具体例としては、たとえばステアロイル乳酸エステルNa塩、パルミトイル乳酸エステルNa塩、ミリストイル乳酸エステルNa塩、ラウロイル乳酸エステルNa塩などがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、乳酸塩と脂肪酸とのエステルであるステアロイル乳酸エステル塩、パルミトイル乳酸エステル塩などが水溶液の耐酸性や乳化性を改善する点から好ましい。【0022】本発明の組成物に含有される多価アルコール脂肪酸エステル(A)の割合は80〜99.99%、好ましくは95〜99.99%、さらに好ましくは97〜99.8%であり、エステル(B)の割合は0.01〜20%、好ましくは0.01〜5%、さらに好ましくは0.2〜3%である。なお、該組成物には、その他の成分として、未反応の乳酸と脂肪酸およびこれらの塩などがエステル(B)に対して合計20%以下の範囲で含有されていてもよい。エステル(B)の割合が0.01%未満になると、組成物を水に溶解または分散させたばあいの液の安定性、とくに酸性領域での安定性がよくないばあいが生じ、HLB2〜18の多価アルコール脂肪酸エステルの水溶液性能を改善できなくなる。また、エステル(B)は品質向上剤のため少量の配合で効果があり、5%で効果が飽和状態になる。【0023】前記のごとき本発明の組成物は、たとえば化粧用乳化クリーム、ローション、トリートメントクリーム、コンディショニングシャンプーのごとき用途に好適に使用される。【0024】本発明の組成物が、たとえばO/Wエマルジョンのトリートメント、クリームの用途に使用されるばあいには、なめらかでリッチな粘性をもち、皮膚になめらかでベトベトしない皮膜を残すなどの性能が必要となるため、ショ糖ステアリン酸エステルとステアロイル乳酸エステルNa塩のごとき組成を有し、弱酸性で水溶性を向上させ、均一なエマルジョン粒子で乳化が安定するというような特性を有するものが好ましい。【0025】【実施例】つぎに本発明の組成物を実施例にもとづいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。【0026】なお、実施例における評価は、以下の方法により行なった。【0027】(乳化性)O/W型乳化液中の水の分離状態の識別を容易にするために、食用色素(青色1号)を添加した蒸留水400gに所定量(20g)の多価アルコール脂肪酸エステル組成物を加熱溶解後、65℃でTKホモミキサーM型(特殊機化工業(株)製)により8,000rpmに撹拌しつつ大豆白絞油を30g/min.の速度で所定量(合計266g)滴下し、さらに5分間白絞油を完全乳化させるために撹拌してO/W型乳化液を調製した。【0028】なお、調製した乳化液の型の確認は稀釈法(乳化液に連続相と同じ液体を加えると乳化液は一様に薄められる。たとえば乳化液の一滴を水中に落としたばあい、それが水で薄められて全体に広がっていくときにはO/W型であり、滴がそのまま水面にかたまっているようなばあい、W/O型である)により行なった。【0029】一方、えられた乳化液を100ml容シリンダーに移し、室温で1〜7日間放置したのちに分離した蒸留水の容量を測定し、次式にしたがって乳化系より分離した水の分離率を求め、組成物のO/W型乳化安定性を評価した。【0030】【数1】【0031】なお、多価アルコール脂肪酸エステル組成物および単品の濃度(活性剤濃度)は水と白絞油の総量に対する重量%で表示する。【0032】(水溶性)多価アルコール脂肪酸エステル組成物1.5gを80mlの蒸留水に室温で均一に分散後、65℃の温水中で30分間撹拌し、さらに撹拌を続けながら蒸留水を加えて500mlとする。この0.3%活性剤水溶液を25℃で一夜放置後、水をブランクとして、分光光度計を用いて720mμの波長における濁度を透光度(T%)で測定する。【0033】(耐酸性)前記水溶性の測定のために調製した液のpHをクエン酸を使用して調整した酸性の0.15%活性剤水溶液を調製し、720mμの波長における透光度(T%)を測定し、評価した。【0034】実施例1〜9および比較例1〜7表1記載の多価アルコール脂肪酸エステル(A)およびエステル(B)を表1に記載の割合で含有する多価アルコール脂肪酸エステル組成物を製造した。【0035】なお、比較のために、表1記載の多価アルコール脂肪酸エステル(A)およびエステル(B)の単品計6種も準備した。【0036】【表1】【0037】表1記載の組成物および単品を用いてO/W型乳化液を製造し、1日後および7日後の水の分離率を求めた。また、水溶性および耐酸性を求めた。結果を表2、表3に示す。【0038】【表2】【0039】【表3】【0040】【発明の効果】本発明では、多価アルコール脂肪酸エステル(A)とともに少量の水酸基1個およびカルボキシル基1個を有する化合物またはその金属塩とカルボキシル基1個を有する化合物またはその金属塩とのエステル(B)を使用することにより、使用したばあいの酸性における凝集、分離が改善され水溶液性が向上する。この結果、多価アルコール脂肪酸エステル(A)の性能がばらついたばあいでも広い用途に使用することができる。 (A)HLB15〜18のショ糖と脂肪酸またはその低級アルコールエステルとからのエステル80〜99.99重量%および(B)水酸基1個およびカルボキシル基1個を有する化合物またはその金属塩とカルボキシル基1個を有する化合物またはその金属塩とからのエステル0.01〜20重量%を含有することを特徴とするO/W型エマルジョン用多価アルコール脂肪酸エステル組成物。 水酸基1個およびカルボキシル基1個を有する化合物またはその金属塩とカルボキシル基1個を有する化合物またはその金属塩とからのエステルが、乳酸と脂肪酸とからのエステルである請求項1記載の組成物。