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タイトル:特許公報(B2)_甲状腺ナトリウム/ヨウ化物シンポータ及びそれをコードする核酸
出願番号:1997527680
年次:2009
IPC分類:C12N 15/09,C07K 16/18,C07K 14/47,C12N 1/15,C12N 1/19,C12N 1/21,C12N 5/10,C12P 21/02,C12Q 1/68,G01N 33/53,C12P 21/08


特許情報キャッシュ

カラスコ, ナンシー ダイ, ゲ レヴィー, オルリー JP 4223549 特許公報(B2) 20081128 1997527680 19970122 甲状腺ナトリウム/ヨウ化物シンポータ及びそれをコードする核酸 アルベルト アインシュタイン カレッジ オブ メディシン オブ エシヴァ ユニヴァーシティ アディヴィジョン オブ エシヴァ ユニヴァーシティ 508114971 志賀 正武 100064908 渡邊 隆 100089037 村山 靖彦 100108453 実広 信哉 100110364 カラスコ, ナンシー ダイ, ゲ レヴィー, オルリー US 08/595,553 19960201 20090212 C12N 15/09 20060101AFI20090122BHJP C07K 16/18 20060101ALI20090122BHJP C07K 14/47 20060101ALI20090122BHJP C12N 1/15 20060101ALI20090122BHJP C12N 1/19 20060101ALI20090122BHJP C12N 1/21 20060101ALI20090122BHJP C12N 5/10 20060101ALI20090122BHJP C12P 21/02 20060101ALI20090122BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20090122BHJP G01N 33/53 20060101ALI20090122BHJP C12P 21/08 20060101ALN20090122BHJP JPC12N15/00 AC07K16/18C07K14/47C12N1/15C12N1/19C12N1/21C12N5/00 AC12P21/02 CC12Q1/68 AG01N33/53C12P21/08 C12N 15/00 - 15/90 GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq UniProt/GeneSeq PubMed J.Biol.Chem., 1989年, 264(20), 11901-11903 Biochim.Biophys.Acta, 1993年, 1154, 65-82 Nature, 1996年 2月 1日, 379(6564), 458-460 Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 1994年, 91, 3789-3793 Biochem.Biophys.Res. Commun., 1996年, 226, 339-345 28 US1997000766 19970122 WO1997028175 19970807 2000515722 20001128 24 20031024 千葉 直紀 【0001】【発明の属する技術分野】政府利権の言明この発明は、NIH許諾番号DK-41544の下で政府の援助によって為された。従って、政府はこの発明に一定の権利を有する。【0002】【従来の技術】甲状腺の主な機能はホルモンであるチロキシン(テトラヨードチロニン、T4)及びトリ-ヨードチロニン(T3)を生産することであり、これらは共に、実質的に全ての組織の中間代謝の調節、及び、発育中の胎児及び新生児における神経系、骨格筋及び肺の成熟において必須の役割を果たす(Wener及びIngbar,The T hyroid:A fundamental and clinical text(Breverman及びUtiger,編)(1991)pp.1-1362,Lippincott,Philadelphia;DeGroot,Endocrimology(DeGroot,編)(1995)Grune and Stratton,Orlamdo,Florida)。チロキシン及びT3は独特のホルモンであり、ともに、ヨウ化物を必須成分として含有する。【0003】ホルモン産生甲状腺小胞細胞即ち甲状細胞(thyrocyte)は、ヨウ化物、ヨウ素のアニオン形態を輸送する高度に限定された能力を有する。この能力は、分離環境の欠乏ヨウ素に対する見かけの細胞調節であるので、殆どの場合に十分な甲状腺ホルモンの産生を確実にする。それにもかかわらず、ヨウ素の食餌による不十分な供給が、世界中の多くの領域で数百万の人々に見られ、しばしば通常より低い甲状腺ホルモン産生を伴う固有のヨウ素欠乏疾患(IDD)をもたらす(Mede iros-Neto,等,Thyroid Research,(Robbins及びBraverman,編)(1976)p.497,Excerpta Hedica,Amsterdam)。甲状腺ホルモン発生のための甲状腺へのヨウ化物の移動は、2つの分離した過程:ヨウ化物の蓄積及びヨウ化物の流出を含む。【0004】ヨウ化物の蓄積は、間隙から小胞細胞への基底外側形質膜を横切るヨウ化物の移動である。ヨウ化物の蓄積は、甲状細胞の基底外側末端に位置し、電気化学的勾配に従ってNa+を内部へ下方に輸送することによるエネルギーを、電気化学的勾配に抗してヨウ化物を内部に上方に輸送する刺激の駆動へ結びつける形質膜タンパク質であるナトリウム/ヨウ化物シンポータ(symporter)に触媒されるNa+依存性の能動輸送過程である(Carrasco,Biochim.Biophys.Acta,1154:65-82(1993))。ヨウ化物蓄積の駆動力として作用するNa+勾配は、ウアバイン感受性、K+out-活性化Na+/K+ATPアーゼによって生成される。よって、Na+-依存性ヨウ化物蓄積(即ち、ナトリウム/ヨウ化物シンポート活性)は、甲状腺ホルモンの生合成における第1かつ律速の段階である。甲状腺におけるナトリウム/ヨウ化物シンポート活性は、競合的な阻害剤である過塩素酸塩によって特徴的にブロックされる。【0005】ヨウ化物流出は、甲状細胞の細胞質からコロイドへの先端形質膜を横切るヨウ化物の移動である。ヨウ化物流出は、受動的拡散機構であり、甲状細胞の先端膜に位置するヨウ化物チャンネルによって媒介されると提唱されている(Nilsson,等,Acta Endocrinol,126:67-74(1992):Golstein,等,Am.J.Phisiol.,263:C590-C5975(1992))。大きなホルモン前駆体であるチログロブリン(Tg)が蓄えられているコロイドは、小胞内腔、細胞外区画に位置する。ヨウ化物は最終的に細胞/コロイド界面に必要とされるが、ここがホルモン生合成の大部分が起こる部位だからである(Werner及びIngbar,同上;Degroot,同上)。細胞/コロイド界面に到達した蓄積ヨウ化物は、酸化され、甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)に触媒される反応におけるTg分子内の幾つかのチロシル残基に取り込まれ、引き続き結合してヨードチロシン残基をもたらす。有機分子へのヨウ化物の取り込みは、「ヨウ化物有機化(iodide organification)」と呼ばれ、6-n-プロピル-2-チオウラシル(PTU)等の抗甲状剤によって反応薬理学的にブロックされる。甲状腺ホルモン生合成経路の全ての過程は、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって刺激される。TSHの効果は、ホルモンが、やはり小胞細胞の基底外側膜にTSHレセプターに結合することによってもたらされる。【0006】【発明が解決しようとする課題】ナトリウム/ヨウ化物シンポータは、甲状腺に、その最も容易に区別できる機能的特性、即ち、能動的にヨウ化物を蓄積する能力を与える。ナトリウム/ヨウ化物シンポータは、甲状腺の放射性ヨウ化物取り込み試験、及び、甲状腺シンチグラフィに対する分子的基礎を与え、2つの甲状腺機能試験は、甲状腺病理学的状態における診断目的として相当な意義を有する(Werner及びIngbar,同上;Deg root,同上)。例えば、甲状腺癌が存在する可能性は、甲状腺結節が検出されたときはいつでも除外されなければならない。シンチグラフィによって、周囲の正常細胞と同等以上にヨウ化物を蓄積していると測定された甲状腺結節は、一般的には良性だが、殆どの甲状腺癌は、健常組織に比較して顕著に低減したヨウ化物蓄積活性を示す。また、ナトリウム/ヨウ化物シンポータは、ある種の甲状腺癌及び転位においては十分に活性であり、放射性ヨウ素での治療を受けやすくする(Werner及びIngbar,同上;Degroot,同上)。反対に、ヨウ素同位体の形態のナトリウム/ヨウ化物シンポータを介した大量の腺に到達する放射能の投与は、甲状腺癌を起こすこともある。このことの最も劇的な例は、ウクライナ及びペラルーシの、1986年のチェルノブイリ原発事故の跡における甲状腺癌の発生の警告的な増加である(Linkhtarev,等,Nature,375:365(1995))。この例において、核降下物中の131Iは、ミルクを通して主に若年児に大量に摂取され、ナトリウム/ヨウ化物シンポータを介して甲状腺に蓄積された。ホルモン産生に含まれる主要な甲状腺タンパク質の中で、TSHレセプター、Tg及びTPOは、全て分子的な詳細がかなり特性化されている(Parmentier,等,Science,246:162 0-1622(1989);Mercken,等,Nature,316:647-651(1985);Magnusson,等,J.Bio l.Chem.,262:13885-13888(1987))。しかし、本発明以前には、ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードするcDNAは、クローン化されておらず特性化もされていない。【0007】【課題を解決するための手段】本発明は、ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする精製され単離された核酸、この核酸を含むベクター、及び、このベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。また、本発明で提供されるのは、ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸にハイブリダイズする核酸プローブ、各々がナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸にハイブリダイズする核酸プローブの混合物、および、ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸にハイブリダイズする1つ又はそれ以上の核酸プローブを含んでなるキットである。また本発明は、ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸を含むベクターで形質転換された宿主細胞を培地中で成長させ、前記培地からナトリウム/ヨウ化物シンポータを回収することを含んでなる組み換えナトリウム/ヨウ化物シンポータの製造方法を提供する。さらに本発明は、精製されたナトリウム/ヨウ化物シンポータまたはその類似物、ナトリウム/ヨウ化物シンポータまたはその類似物と免疫反応する抗体、及び、ナトリウム/ヨウ化物シンポータと免疫反応する抗体を含んでなるキットを提供する。【0008】また、本発明は、患者のナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸における1つ又はそれ以上の突然変異、突然変異したナトリウム/ヨウ化物シンポータ、または、ナトリウム/ヨウ化物シンポータの正常な生理学的レベルに比較して、患者からのナトリウム/ヨウ化物シンポータの低下した濃度を検出することを含んでなる患者の甲状腺疾患の診断方法を提供する。【0009】さらに、本発明は、突然変異したナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸によって生じた甲状腺疾患の治療万法であって、ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸を患者の実質的に全ての甲状腺細胞に導入し、前記ナトリウム/ヨウ化物シンポータの前記甲状腺細胞において前記甲状腺疾患を治療するのに有効な量が発現されることを含んでなる方法を提供する。【0010】また、本発明は、ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸を標的細胞に導入し、前記標的細胞が前記ナトリウム/ヨウ化物シンポータを発現することができる組み換えウイルス性ベクターであって、前記ベクターは、(a)ウイルスの核酸または少なくとも前記標的細胞を感染することのできるウイルスのゲノム部分に相当する核酸、及び、(b)前記ウイルス性核酸に機能的に結合したナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸を含む組み換えウイルス性ベクターを提供する。【0011】さらに、本発明は、患者における標的組織を選択的に切除する方法であって、(a)ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸を前記組織の実質的に全ての細胞に導入して、前記細胞にナトリウム/ヨウ化物シンポート活性を発揮させ、(b)前記標的組織量前記細胞に、放射活性ヨウ化物を、細胞によって前記放射活性ヨウ化物が取り込まれたとき、前記標的組織を切除するのに十分な量供給することを含んでなる方法を提供する。【0012】また本発明は、非甲状腺組織からのヨウ化物輸送タンパク質を同定する方法であって、前記非甲状腺組織からの核酸を、ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸から生成した核酸プローブと接触させ、そのハイブリダイゼーションを検出することを含んでなる方法を提供する。【0013】最後に、本発明は、動物の甲状腺細胞に導入された突然変異したナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸を含む甲状腺疾患用の非ヒトのトランスジェニック動物モデルを提供する。本発明のさらなる目的は、以下の説明から明らかになる。【0014】【発明の実施の形態】本発明は、ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする精製かつ単離された核酸を提供する。ここで用いられる核酸は、ゲノムDNA、cDNA、RNA又はアンチセンスRNAであってよく、任意の種、例えばヒト、ラット、ヤキ、ブタ、マウスまたはウシから誘導された核酸を含む。遺伝子コードの縮退により、本発明の核酸は、ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする多くの核酸置換も含む。【0015】また本発明は、ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸を含むベクターも提供する。このようなベクターは、ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸の保存または核酸の多重コピー及び組み換えナトリウム/ヨウ化物シンポータの調製に用いることができる。このベクターは、ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸を、適当なベクターの核酸に挿入することによって構築できる。ここで用いる「挿入」という用語は、外来DNAフラグメント及びベクターDNAの、制限エンドヌクレアーゼ消化によって生ずる融和性接着性末端のアニーリング等の技術または平滑末端結合技術の使用による結合を意味する。DNA分子を結合させる他の方法は、当業者には明らかであろう。【0016】ベクターは、多くの異なる起源、例えば、プラスミド、ウイルス性ゲノム、ファージラムダ(λ)から誘導された溶菌バクテリオファージ、コスミド、または、M13等の糸状一本鎖バクテリオファージから誘導することができる。ベクターが誘導される核酸は、通常は極めて小さなサイズとなり、その自己複製領域に必要な遺伝子のみが残される。サイズの縮小は、ベクターが外来DNAの大きなセグメントに適応することを可能にする。核酸の多重コピーの保存または製造のための好適なベクターの例は、pBR322、pUC18、pUC19、pHSV106、pJS97、pJS98、M13mp18、M13mp19、pSPORT 1、pGem、pSPORT 2、pSV・SPORT 1、pBluescript II、λZapII、λgt10、λgt11、λgt22A、及び、λZIPLOXを含むが、これらに限定されない。【0017】宿主細胞内でナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸を発現するために好適なベクターは、この分野で良く知られており、pET-3d(Novagen)、pProE x-1(Life Technologies)、pFastBac 1(Life Technologies)、pSFV(Life Technol ogies)、pcDNA II(Invitrogen)、pSL301(Invitrogen)、pSE280(Invitrogen)、pS E380(Invitrogen)、pSE420(Invitrogen)、pTrcHis A,B,C(Invitrogen)、pRSET A,B,C(Invitrogen)、pYES2(Invitrogen)、pAC360(Invitrogen)、pVL1392及びpVl1 392(Invitrogen)、pCDM8(Invitrogen)、pcDNA I(Invitrogen)、pcDNA I(amp)(In vitrogen)、pZeoSV(Invitrogen)、pcDNA 3(Invitrogen)、pRc/CMV(Invitrogen)、pRc/RSV(Invitrogen)、pREP4(Invitrogen)、pREP7(Invitrogen)、pREP8(Invit rogen)、pREP9(Invitrogen)、pREP10(Invitrogen)、pCEP4(Invitrogen)、pEBVHi s(Invitrogen)、及び、λPop6を含む。これらのベクターは、高レベルの発現を指示する多くの強力なプロモータ、例えば、lacオペレータ-プロモータまたはta cプロモータ、メタロチオニンまたはマウス乳腺腫瘍ウイルスプロモータの一つを利用する。【0018】ベクターは、多くの技術、例えば、電気穿孔、DEAEデキストラン、カチオン性リポソーム融合、プロトプラスト融合、DNA被覆マイクロ発射衝突、及び、組み換え複製欠陥レトロウイルスとの注入によって宿主細胞内に導入される。「形質転換」という用語は、細菌または原核宿主細胞へのベクターの導入を表す。即ち、細菌細胞の形質転換、及び、真核細胞におけるトランスフェクション、形質導入及び関連する方法を含む。【0019】多くの細菌または真核細胞宿主細胞の任意のモノが、本発明のベクターで形質転換されうる。好適な宿主細胞は当業者に知られており、E.coliの株c600、c600 hf1、HB101、LE392、Y1090、JM103、JM109、JM101、JM107、Y1088、Y1089、Y109 0(ZZ)、DM1、PH10B、DH11S、DH125、RR1、TB1及びSURE、Bacillus subtilis、Aq robacterium tume faciens、Bacillus megaterium等の細菌細胞;及び、Picia p astoris、Chlamydonomas reinhardtii、Cryptococcus neoformans、Neurospora crassa、Podospare anserina、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces pom be、Uncinula necator、培養した昆虫細胞、培養したニワトリ繊維芽細胞、培養したハムスター細胞、HT1080、HCF7、143B等の培養したヒト細胞、及びEL4及びN IH3T3細胞等の培養したマウス細胞等の真核細胞を含むがこれらに限定されるものではない。【0020】また、本発明は、精製されたナトリウム/ヨウ化物シンポータ及びその類似物を提供し、患者から得た甲状腺から単離したナトリウム/ヨウ化物シンポータまたは組み換えによって生成したナトリウム/ヨウ化物シンポータを含む。ここで用いる「類似物」は、ナトリウム依存性のヨウ化物の細胞内への輸送を触媒する能力を持つナトリウム/ヨウ化物シンポータのアミノ酸置換誘導体を意味する。【0021】本発明はまた、ナトリウム/ヨウ化物シンポータまたはその類似物と免疫反応する抗体、並びに、非機能性ナトリウム/ヨウ化物シンポータ、例えば、in viv oで不活性または低下したヨウ化物輸送活性しか示さないナトリウム/ヨウ化物シンポータと免疫反応する抗体を提供する。本発明の抗体によって認識される非機能性ナトリウム/ヨウ化物シンポータは、ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸の1つ又はそれ以上の突然変異、あるいは、細胞のタンパク質合成及び例えば二次又は三次構造の変化によって不活性となるナトリウム/ヨウ化物シンポータを突然変異過程における1つ又はそれ以上の欠陥によって得られる。本発明の抗体はモノクローナルでもポリクローナルでもよく、この文Ileの当業者に周知の技術によって生成され、例えば、ポリクローナル抗体は、ラビット、マウス、またはラットを精製したナトリウム/ヨウ化物シンポータで免疫化することにより生成でき、モノクローナル抗体は、免疫化したラビット、マウスまたはラットから脾臓細胞を取り出し、その脾臓細胞を骨髄細胞と融合させ、培地で成長させたときにモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを形成することによって得られる。本発明の抗体のラベル化は、この分野で知られている種々の異なる化学発光及び放射活性ラベルの1つを用いて標準的な技術によってなし得る。本発明の抗体は、適当なラベル化系、バッファー、及び、種々の検出及び診断的応用で用いられる他の必要な試薬を含むキットの組み込んでもよい。【0022】また、本発明は、ナトリウム/ヨウ化物シンポータにハイブリダイズする核酸プローブ及びそれらの混合物を提供する。核酸プローブは、ナトリウム/ヨウ化物核酸のPCR及ひ制限酵素消化などのこの分野で当業者に周知の種々の技術、あるいは、Applled Blosystems Model 392 DNA/RNA synthesizerといった市販のオリゴヌクレオチド合成装置を用いたナトリウム/ヨウ化物シンポータの核酸のヌクレオチド配列の選択された部分に相当する配列のオリコヌクレオチドの自動合成によって製造できる。本発明の核酸プローブは、ナトリウム/ヨウ化物シンポータ遺伝子の突然変異に相当する1つ又はそれ以上の点、挿入、または欠失突然変異、あるいはそれらの組み合わせを含むように調製してもよい。【0023】本発明の核酸プローブは、DNAでもRNAでもよく、約8ヌクレオチドからナトリウム/ヨウ化物シンポータの全長まで長さが変化しうる。核酸プローブのラベル化は、例えば、PCR、ニック転位、末端ラベル化、充填末端ラベル化、ポリヌクレオチドキナーゼ交換反応、ランダムプライミング、または(リボプローブ調製のための)SP6ポリメラーゼ等のこの分野で多くの周知の方法の1つを用い、例えば、35S、35Pまたは3H等の放射活性ラベル、ビオチン、フルオレセイン(FITC)、アクリジン、コレステロール、またはカルボキシ-X-ローダミン(ROX)等の日放射活性ラベル等の種々のラベルの1つを用いてなすことができる。ナトリウム/ヨウ化物シンポータ核酸の異なるまたは重複する領域に相当する2つ以上の核酸プローブの組み合わせも、種々の検出及び診断応用で使用されるキットに含めることができる。【0024】また、本発明は、患者の甲状腺細胞における低下した又は検出不能なヨウ化物輸送活性を伴う患者の甲状腺疾患の診断方法を提供する。ここで用いる「患者」は、胎児、新生児、乳児、幼児または成人である。甲状腺細胞におけるヨウ化物輸送活性の低下した又は検出不能なレベルは、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、甲状腺癌、または、ヨウ化物輸送系の先天的欠乏等の多くの疾患を伴う。ヨウ化物輸送活性の変化は、甲状腺細胞におけるナトリウム/ヨウ化物シンポータの濃度の低下、または、非機能的ナトリウム/ヨウ化物シンポータの存在によると思われる。【0025】ナトリウム/ヨウ化物シンポータの濃度低下による甲状腺疾患は、核酸ハイブリダイゼーション及び/またはこの分野で周知の免疫学的技術によって診断できる。例えば、ナトリウム/ヨウ化物特異的核酸プローブによって甲状腺細胞から抽出されたmRNAの核酸ハイブリダイゼーション研究は、細胞内に存在するナトリウム/ヨウ化物シンポータmRNAの濃度の測定に用いられ、そのようにして得られた濃度は、清浄なレベルのヨウ化物輸送活性を示す甲状腺細胞で得られる値と比較される。細胞からのRNAの単離は多くの技術によって為され、例えば、全細胞RNAは、グアニジンチオシアナートを用いて抽出でき、細胞質RNAはフェノール抽出法をによって調製でき、ポリアデニル化RNAはオリゴ-dTセルロースを用いて選択できる。あるいは、細胞内のナトリウム/ヨウ化物シンポータ濃度は、ナトリウム/ヨウ化物シンポータと免疫反応する抗体を用いた結合実験から決定することもできる。【0026】ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸の突然変異による甲状腺疾患は、例えば、患者の甲状腺からの組織または細胞のサンプルから抽出した核酸の、ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸における突然変異の存在を検出するために設計された核酸プローブを用いたハイブリダイゼーション分析などの多くの方法の1つによって検出できる。あるいは、甲状腺疾患は、ナトリウム/ヨウ化物シンポータと免疫反応する抗体及びウェスタンプロットなどの標準的な免疫学的検出技術を用いて検出してもよい。【0027】また、本発明は、非機能的ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードするナトリウム/ヨウ化物核酸における突然変異によって生じた患者における甲状腺疾患の治療方法も提供する。本発明の方法は、機能的ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸を、患者の甲状腺の実質的に全ての細胞に導入することを含む。ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸は、RNA又はDNAであり、患者の甲状腺細胞に、例えば、DNA又はRNAウイルスあるいは機能的ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸を含むレトロウイルスから誘導された組み換え細菌性ベクターによる細胞の感染といった多くの技術のうちの任意のものによって導入される。本発明の方法では、機能的ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸は、患者の細胞に導入され、その細胞が機能的ナトリウム/ヨウ化物シンポータを発現し、患者の疾患を治療するのに十分活性なヨウ化物の輸送が可能になるようにされる。【0028】本発明はまた、遺伝子治療のような応用に用いるための組み換えウイルス性ベクターを提供する。本発明の組み換えウイルス性ベクターは、少なくともウイルスゲノムのウイルスを標的細胞に感染可能にする部分を含む。本発明の組み換えウイルス性ベクターでは、ウイルス核酸配列が、ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸に機能的に結合し、組み換えウイルス性ベクターを標的細胞に導入したとき、標的細胞でナトリウム/ヨウ化物シンポータが発現され、標的細胞がヨウ化物を輸送できるようにされる。本発明の組み換えウイルス性ベクターは、特異的に処理したプロモーター−エンハンサー配列をさらに含み、標的細胞のみに局在化したナトリウム/ヨウ化物シンポータの発現及び/または標的細胞におけるナトリウム/ヨウ化物シンポータの高レベルな発現を達成するようにしてもよい。プロモーター−エンハンサー配列は、ヘルペスプロモーターIE4/5、サイトメガロウイルス-1プロモーター及びラウス肉腫ウイルス長末端リピートを含むが、これらに限定されない。【0029】遺伝子治療に好適な組み換えウイルス性ベクターは、HSV、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、Semiliki Forestウイルス、サイトメガロウイルス及びワクシニアウイルス等のウイルスのゲノムから誘導されたベクターを含むが、これらに限定されない。標的細胞へのナトリウム/ヨウ化物シンポータの導入に適したウイルス性ベクターの例は、HSVprPUC、pZeoSV(Invitrogen)、pcDNA3(Invit rogen)、pRc/CMV(Invitrogen)、pRc/RSV(Invitrogen)、pSVT7(Life Technologie s)、p91023(Life Tevhnologies)、pMB1(Clonthech)、pEUK-cl(Clonthech)、pMAM neo(Clonthech)、pMAHneo-CAT(Clonthech)、pMAMneo-LUC(Clonthech)、pDR2(Clo nthech)、pADα(Clonthech)、pADβ(Clonthech)、pCMVβ(Clonthech)、及び、pG FP(Clonthech)である。組み換えウイルス性ベクターの選択は、標的細胞群の特性によって決定され、例えば、アデノウイルス及びヘルペスウイルスに基づくような組み換えウイルス性ベクターは、ゲノム中に組み込まれないので最小有糸分裂活性を持つ標的細胞に適しているが、逆に、アデノ関連ウイルスに基づくベクター等のゲノムに組み込まれる組み換えウイルス性ベクターは、有糸分裂活性な細胞群において好ましい。組み換えウイルス性ベクターのストックの調製技術は、この分野において周知であり、例えば、組み換えウイルス性ベクターを持つ「パッケージング細胞系(packaging cell line)」及びヘルパーウイルスの共感染(co-infection)を必要とする。ヘルパーウイルス及びパッケージング細胞系は、ウイルス性ベクターの複製に必要な全ての遺伝子を含み、それをビリオンにパッケージングする。【0030】また、本発明は、患者の甲状腺または非甲状腺組織を選択的に切除する方法も提供し、手術不能な腫瘍の摘出のために、または、外科手術に代わる非侵襲方法として用いられる。本発明の方法は、ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸を、標的組織の実質的に全ての細胞に導入し、それらの細胞がナトリウム/ヨウ化物シンポータを発現し、ヨウ化物輸送ができるようにすることを含む。ナトリウム/ヨウ化物シンポータを細胞に導入する方法は上記で議論した。標的組織の切除は、ナトリウム/ヨウ化物シンポータの導入に続く、ヨウ素の放射性同位体での患者の処理を伴う。ヨウ素の放射性同位体の使用は、この分野で周知であり、例えば、131Iは、臨床実務で最も通常に用いられる同位体である。用いられるヨウ素の同位体、その投与量、及び分配手段は、例えば、患者間の薬物速度論パラメータの変動及び評定組織のタイプといった多くの要因に依存するが、当業者には明らかである。特に、本発明の方法は、患者の甲状腺癌の治療に用いられる。甲状腺癌の大多数は、極めて低下したヨウ化物輸送活性を示し、ヨウ素の放射性同位元素による放射線治療を妨げる。本発明の方法は、甲状腺腫瘍の細胞に酔うか物輸送活性を付与することにより、潜在的に生存可能な治療様式として放射活性ヨウ化物の使用を復活させる。【0031】また、本発明は、唾液腺、胃粘膜、乳汁分泌性乳腺、コロイド叢、及び、眼の毛様体を含むがこれらに限定されない非甲状腺組織からのヨウ化物輸送タンパク質を同定する方法を提供する。非甲状腺組織からのヨウ化物輸送はタンパク質は、この分野で周知の多くの技術、例えば、ナトリウム/ヨウ化物シンポータの全部または一部をコードする核酸をプローブとして用いた対象とする組織から調製したcDNAライブラリーのスクリーニング、及び、そのようにして同定されたcDNAのCOS細胞またはアフリカツメガエル卵母細胞においてヨウ化物輸送活性を付与することができる能力を評価することにより同定される。核酸プローブのラベル化は既に議論し、COS細胞やアフリカツメガエル卵母細胞への核酸の導入方法および機能的スクリーニング法は、後述の実験の詳細な説明において議論する。【0032】最後に、本発明の方法は、甲状腺疾患用の非ヒトのトランスジェニック動物モデルを提供する。本発明の動物モデルは、甲状腺組織に導入された突然変異したナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸を有する非ヒトのトランスジェニック動物である。突然変異したナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸は、非機能的ナトリウム/ヨウ化物シンポータを伴う甲状腺疾患に罹患した患者の甲状腺細胞から単離した核酸であってもよい。【0033】突然変異したナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする核酸は、トランスジェニック動物を得るために、マウス、ラット、ヤギ、ヒツジまたは他の種といった非ヒトの生殖細胞系に組み込まれる。組み込まれた核酸の発現は、組織特異的プロモーターの利用により、トランスジェニック動物において、甲状腺組織に制限される。トランスジェニック動物の製造方法は、この分野では知られている。例えば、突然変異したナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードするDNAは、HSV等の複製欠陥ウイルス、またはレトロウイルスまたはトランスポゾンのゲノムに挿入でき、得られた構築物は、幼児性幹細胞に注入される。トランスジェニック動物は、突然変異したナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードするDなを非ヒト動物の受精卵の雄の前核に注入し、その「トランスジェニック胚を疑似妊娠した雌に移植し、次いで、それらのゲノムにおいて注入されたDNAの存在を子孫に渡って分析することによっても製造できる。トランスジェニック動物を製造する他の方法は、この分野の当業者には明らかである。【0034】本発明は、以下の実験の詳細な説明で詳述するが、これらは発明の理解を目的とするものであって、後述の請求の範囲に定義された発明を、いかなる方法によっても制限するように解釈すべきではない。【0035】【実施例】1.材料及び方法A.ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードするcDNAの単離FRTL-5細胞から単離したポリA+RNAからのsPORT(BRL)ベクターにおいて、指向性cDNAを調製した。cDNAは、cDNAクローンのプールからのm7GpppGの存在下で、T7RNAポリメラーゼを用いてin vit roで合成した。転写物を卵母細胞に注入し、卵母細胞は、Weiss等,同上,に記載されたように、過塩素酸感受性Na+/I-シンポータ活性を検定した。1つの正のプールからのクローンを再分し、単一のナトリウム/ヨウ化物シンポータcDNAが単離されるまで続けて検定した。cos−7細胞は、6ウェルプレート(37℃、5℃)において、10%のウシ胎児血清を添加した高グルコースのダルベッコの修正イーグル媒質(DMEM)中で成長させた。細胞は、それらが約70%の密度に達したときにトランスフェクションした。細胞は、血清無しの媒質で洗浄し、0.5mg/mLのDEAE-デキストラン(MW 2×106)及び0.66μg/ウェルのカラム精製(Qiagen)プラスミドDNAを含むopti-MEM1(Gibco)とともに、37℃で30分間インキュベーションし、次いで、EMEM中の0.1mg/mlクロロホルムとともにインキュベーションした。ヨウ化物蓄積アッセイは、上述の方法を用い、トランスフェクションの48時間後に実施した(Kaminsky,等,同上)。【0036】B.配列分析ナトリウム/ヨウ化物シンポータcDNAの両方の鎖を、Sequenase version 2.0(U.S.Biochemical)を用いて配列分析した。【0037】C.ノーザンブロット分析30μgの全RNAは、変性0.66Mホルムアルデヒド、1.5%アガロースゲル(1×MOPSバッファー)サイズ分画され、終夜の10XSSCでのキャピラリーブロットによってナイロン膜に移した。ナイロン膜は、6×SSC、5×Denhardtの試薬、0.5%SDS、100μg/mlの変性salmon sperm DNA及び50%のホルムアルデヒド中の[32P]αdCTPラベルしたナトリウム/ヨウ化物シンポータcDNAで、42℃で終夜ハイブリダイズした。膜は、室温において30分間、2×SSC/0.1%SDSで2回洗浄し、次いで、0.1%SSC/0.1%SDS中、55℃で分周洗浄した。ナトリウム/ヨウ化物シンポータ及びシクロフイリンcDNAは、ランダムプライム合成(Amersham)によって32P−dCTP放射線ラベルした。【0038】II.結果A.ナトリウム/ヨウ化物シンポータcDNAクローンの単離及び特性化pSPORTベクターで構築されたラット甲状腺cDNAライブラリーは、サイズ分画され、2.5−4.5kb挿入物を含む分画は、卵母細胞において機能的スクリーニングを施した。この分画からのcRNAクローンのブールからin v itroで合成したcRNAは、卵母細胞にマイクロインジェクションされ、過塩素酸感受性ナトリウム/ヨウ化物(Na+/I-)シンポータ活性について検定された。図1Aに示すように、連続的に少なくなるcDNAクローンを含む正のプールは、単一の正のクローンが同定されるまで検定した。FRTL-5細胞からのmRNAによって顕現された活性も示した(レーン2)。対照検定は、水をマイクロインジェクションした卵母細胞において行った(レーン1)。Na+依存性は、Na+に換えてコリンを用いて確認し、過塩素酸感受性は、Na+と過塩素酸塩の両方の存在下で検定を行って試験した。全ての場合において、Na+の不存在または過塩素酸塩の存在下における活性は、バックグラウンドから実質的に区別できなかった。図1Aの底辺において、試験した各プールのクローン数は、Na+/I-シンポータ活性を最初に試験したときのマイクロインジェクション後の経過した日数(括弧内)の上段に示した。【0039】Na+/I-シンポート活性の最大発現は、インジェクションの2−3日後に観察された。ヨウ化物蓄積の経時変化は、ナトリウム/ヨウ化物シンポータcDNAクローンからの転写物を卵母細胞にインジェクションした後60時間測定した。図1Bに示すように、ヨウ化物蓄積は、約90分の飽和点において、卵母細胞当たり約800pmolに達した。輸送溶液におけるヨウ化物濃度を50μM、機能的容量を0.5μl/卵母細胞とすると、精製されたヨウ化物濃度勾配は>30倍であり、in vivoでの甲状腺において観察されたものと実質的に一致した(Carrasco,Biochim.Biophys.Acta.,同上)。このシグナルは、過塩素酸感受性Na+/I-シンポート活性において、バックグラウンドの>700倍の増加に相当する。シンポータcDNAクローンからの転写物をインジェクションした卵母細胞におけるNa+/I-シンポート活性の速度論的分析を図1Cに示す。Na+/I-シンポート活性の初期速度は、種々のヨウ化物濃度(1.25から250μM)において、2分の時点で測定した。Na+/I-シンポート速度は、飽和速度を示すことがわかった(図1C)。同じデータの両逆数プロットを挿入図に示した。ヨウ化物の見かけのKmは36μMであり、この値は、FRTL-5細胞について報告された値の範囲に一致する(Vilijn及びCarrasco,J.Biol.Chem,264:119 01-11903(1989);Carrasco,同上)。図1Dに見られるように、ナトリウム/ヨウ化物シンポータcDNAクローンでトランスフェクションされたCOS細胞は、過塩素酸感受性Na+/I-シンポート活性を示すが、対照の非トランスフェクション細胞または無関係な挿入物を含む同じプラスミドでトランスフェクションされた細胞は、いずれもシンポート活性を示さなかった。これらの結果は、ナトリウム/ヨウ化物シンポータcDNAクローンの生成が、卵母細胞及び哺乳類細胞の両方で過塩素酸感受性Na+/I-シンポート活性を顕現させるのに十分であることの疑う余地のない証拠を提供し、シンポータが単一サブユニットまたは同一のサブユニットのオリゴマーとして機能することを示唆している。【0040】ベクターpSPORTに含まれる核酸は、ラットナのトリウム/ヨウ化物シンポータの全コード領域を含むものと同定され、設計されたpNISである。pNISは、ブタペスト条約の規定に基づいて、1996年2月1日に、American Tissue Culture Collection(ATCC)に、受託番号97431で寄託された。【0041】B.ナトリウム/ヨウ化物シンポータ分子の主要配列及び予測される二次構造クローンされたナトリウム/ヨウ化物シンポータの完全なヌクレオチド配列及び論理的に予測されるアミノ酸配列を図2に示す。ナトリウム/ヨウ化物シンポータクローンの核酸配列は、挿入物が2839塩基対の長さであり、予測されるオープンリーディングフレームは1854ヌクレオチド、5’非翻訳領域は109ヌクレオチド、3’非翻訳領域は876ヌクレオチドである。3’非翻訳領域の中に、潜在的なAシグナルが、2795位置に同定された。論理的に推測される開始コドンATGは113位置にプリンを含むので、正当なKozak共通配列を表現する(Kozak,J.Biol.Chem,266:19867-19870(1991))。1位置のMetから始まる長いオープンリーディングフレームが、618アミノ酸(相対分子量65196)のタンパク質をコードする。タンパク質のハイドロパシー概略図(図3A)及び二次構造予測(Kyte及びDoolittle,同上;Chou及びFasman,Biochemistry,13:222-245)(図示せず)は、クローンされたcDNAが、12の論理的に予測される膜貫通ドメイン固有膜タンパク質をコードすることを示唆している(図3B)。図3Bにおいて、NH2末端は、細胞質側に位置し、シグナル配列は存在しない。COOH末端も細胞質側に位置すると予測され、約70アミノ酸の大きな親水性領域を含み、その中に1つの潜在的なcAMP依存性の分子のPKAリン酸化ドメインが見られる(位置549−552)。【0042】3つの潜在的なAsnグリコシル化部位が、論理的に予測されるアミノ酸配列の225、485、及び497の位置に同定された。後者の2つは、12番目の親水性配列内、膜の細胞外部界面に予測されるドメインに位置する。モデルにおける12の膜貫通ドメインの長さは、18残基を含むヘリックスVを除いて、20から28アミノ酸残基の範囲にある。膜貫通ドメイン内には、3つの荷電残基、即ち、ヘリックスIのAsp 16、ヘリックスIIのGlu 79、及びヘリックスVIのAr g 208のみが予測された。3つの荷電残基は全て、対応するドメインの細胞質側に近く配置され、その中心に向いてはいない。膜に見られる8つのTrp残基のうち6つは膜貫通ドメインの端近くに位置する。ナトリウム/ヨウ化物シンポータ二次構造モデルにおいて提唱されている膜貫通ドメインの長さ及びTrp残基の位置は、R.viridis光反応中心結晶構造に見られるものに類似している(Deisenho fer及びMichel,EMBO J.,8:2149-2170(1989))。4つのReu残基(位置199、206、213及び220)は、ロイシンジッパーモチーフを含むことがわかった。このモチーフは、膜におけるサブユニットのオリゴマー化において役割を果たすことが提唱されており、全てのクローン化神経伝達物質トランスポーターに保持されている(Surratt,等,Curr.Opin.Nephrol.Hypertens,2:744-760(1993))。ナトリウム/ヨウ化物シンポータと入手可能なデータベース(Swissprot.)における他のNa+依存性コトランスポーターとの予測されたアミノ酸配列の比較により、ヒトのNa+/グルコースコトランスポーター(Hediger,等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:5748-5752(1989))と最も相同性が高いことが明らかになった(24.6%アミノ酸一致)。Na+依存性コトランスポーターの、それらのアミノ酸配列に基づくクラスター分析を示す樹状図において、ナトリウム/ヨウ化物シンポータを、他のアニオントランスポーターに並べて記載した(図4)。【0043】単離されたナトリウム/ヨウ化物シンポータcDNAクローンにハイブリダイズする2.9kbのmRNA転写物は、FRTL-5細胞及びラット甲状腺組織の両方においてノーザン分析(図示せず)によって同定されたが、ラット脳、腸、心臓、腎臓及び肝臓といった非甲状腺組織では同定されなかったことから、ナトリウム/ヨウ化物シンポータは甲状腺細胞で主に発現されることか示唆された。予想したように、ナトリウム/ヨウ化物シンポータ転写物は、甲状腺組織より上皮細胞系において容易に検出できる。【0044】C.ヒトのナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードするcDNAの同定ヒトのナトリウム/ヨウ化物シンポータを同定するために、ヒト甲状腺から調製されたcDNAライブラリーが、ラットのナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードするDNAをプローブとして用いてスクリーニングされる。cDNAは、M7 GpppG存在下で、T7RNAポリメラーゼを用いてin vitroでヒトナトリウム/ヨウ化物シンポータ特異的配列を潜在的に含むと同定されたcDNAクローンからin vitroで合成される。転写物は卵母細胞にインジェクションされ、次いで、過塩素酸感受性Na+/I-シンポート活性について検定される。【0045】III.結論要約すると、ラットのナトリウム/ヨウ化物シンポータcDNAクローンが単離され、ナトリウム/ヨウ化物シンポータ分子の二次構造モデルが設計された。ナトリウム/ヨウ化物シンポータcDNAクローンの産物は、卵母細胞及び哺乳類細胞の両方においてNa+/I-シンポート活性を顕現させるのに十分であり、ナトリウム/ヨウ化物シンポータは、おそらく単一のサブユニットとして機能する。ここで提示したデータは、ラットのナトリウム/ヨウ化物シンポータが六−八アミノ酸(相対分子量65,196)のNa+依存性固有膜タンパク質であって、論理的に予測される12の膜貫通α-ヘリックスドメインを有することを確認した。ヨウ化物蓄積のメディエータとしてのナトリウム/ヨウ化物シンポータの役割は、その論理的に推理されたアミノ酸配列と、他のトランスポーターの論理的に推理された配列との間のクラスター形成関係に基づく、他のNa+依存性アニオントランスポーターに並んだその位置と一致する。幾つかの膜トランスポーターにおける機能に重要な残基の幾つかが、諭理的に推理された膜貫通ドメインに位置する荷電されたアミノ酸であるとすると(Carrasco,等,Biochemistry,25:4486-4488(1986);Zhang,等,J.Biol.Chem.,269:19573-19577(1994);Pantanowitz,等,J.Biol.Chem.,268:3222-3225(1993))、ナトリウム/ヨウ化物シンポータにおけるそのような3つの残基、即ち、Asp 16、Glu 79及びArg 208のうちの1つ又は2つが、Na+/I-シンポート活性において役割を演ずることが示唆された。ナトリウム/ヨウ化物シンポータcDNAクローンをプローブとして用いたノーザンブロット分析において、FRTL-5細胞及び甲状腺に2.9kbの転写物が存在するが、脳、腸、心臓、腎臓または肝臓には存在しないことが観察された。【0046】ナトリウム/ヨウ化物シンポータのクローニング及び特性化は、甲状腺におけるヨウ化物蓄積、即ち、甲状腺ホモゲネシスの鍵となる最初の段階を媒介するタンパク質の全分子の同定を為す。ラットのナトリウム/ヨウ化物シンポータのこの特性化の推論は、甲状腺ヨウ化物蓄積系の病態生理学が、もはや分子レベルで研究できるということである。異なる種からの真核細胞輸送タンパク質の間の高度な相同性を考慮すると、ヒトのナトリウム/ヨウ化物シンポータcDNAクローンは、近い将来に容易に単離されると思われる。従って、甲状腺機能低下症又は亢進症、甲状腺癌、及び、ヨウ化物輸送系の先天的欠乏のような甲状腺の病理学的状態におけるヒトのナトリウム/ヨウ化物シンポータの発現を探索することが可能である。個々に報告した結果は、甲状腺活性ヨウ化物蓄積及びその調節の分子的機構の解明が手の届く範囲内にあるにことを示唆している。【0047】これまでに挙げた全ての文献は、その全体を参考としてここに取り入れるものとする。【0048】以上、明確化及び理解を目的として、本発明の幾つかの詳細を説明したが、当業者は、この開示を読むことにより、添付する請求の範囲における発明の真の範囲から離れることなく、形態及び詳細における種々の変形が可能であることを認めるであろう。【図面の簡単な説明】【図1】図1は、図1A、1B、1C及び1Dからなり、Xenopus laevis卵母細胞及びCOS細胞におけるナトリウム/ヨウ化物シンポータの発現を示す。図1Aにおいて、卵母細胞は、水(レーン1)、FRTL-5細胞からのmRNAの50ng(レーン2)、または、表示した数のcDNAクローンを含むプールからin v itroで製造したcRNA翻訳物の20ng(レーン3−7、図1Aの底辺の括弧無しの数)とともにマイクロインジェクションした。ヨウ化物蓄積は、Na+存在下(無地の棒)、Na+不存在下(例えば、塩化物存在下、斜線棒)、または、Na+及び過塩素酸の存在下(点線棒)において、標準的な方法を用いて45分に行った(Weiss,等,Endocrinology,114:1090-1098(1984))。ナトリウム/ヨウ化物(Na+/I-)シンポータ活性を最初に測定したマイクロインジェクション時の後に経過した日数を、括弧で示した。ヨウ化物蓄積の経時変化(図1B)及び速度論的分析(図1C)は、卵母細胞を、ナトリウム/ヨウ化物シンポータcRNAクローンからの翻訳物とともにマイクロインジェクションした後60時間評価した。図1Cにおいて、ナトリウム/ヨウ化物シンポータ活性の初期速度は、種々のヨウ化物濃度(0.25から250μM)において2分の時点で測定した。挿入図:両逆数プロット。図1A、1B及び1Cにおいて、各棒及び実験点は、>5卵母細胞の平均±S.E.を示す。図1Dは、ナトリウム/ヨウ化物シンポータcDNA(実線)、又は無関係な挿入(破線)を含む、又はDNA無し(点線)のpsv.SPORTプラスミドでトランスフェクションされたCOS細胞におけるヨウ化物蓄積の経時変化を示す。ヨウ化物蓄積は、Na+存在下(■)、Na+不存在下(例えば、塩化物存在下、●)、または、Na+及び過塩素酸の存在下(▲又は△)において、表示した時点で行った(Kaminsky,等,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,91:3789-3793(1984))。各点は、3回の測定の平均±S.E.を表す。【図2】図2は、ラットのナトリウム/ヨウ化物シンポータcDNAの相補的ヌクレオチド及び論理的に推理したアミノ酸配列を示す。ヌクレオチドは、クローン化CDNAの最初の塩基から開始して5’から3’の方向に番号を付した。非翻訳配列は上段、翻訳配列は下段である。論理的に推理したアミノ酸(一文字コード)をヌクレオチドの下に示した。12の推定膜スパン(membrane-spanning)領域は灰色に陰影を付した。3つの潜在的グリコシル化部位は、太字タイプで示した(225、485及び497の位置)。cAMP依存性タンパク質キナーゼAリン酸化のための一つの推定細胞内コンセンサス配列はボックスで囲んだ(位置549−552)。3’非翻訳ドメインのポリアデニル化シグナルは下線を施した(位置2795)。【図3】図3は、図3A及び3Bからなる。図3Aは、推論したアミノ酸配列のヒドロパシープロットを示す。ヒドロパシー分析は、9残基のウィンドウについてKite-Doolittleアルゴリズム(Kite及びDoolittle,J.Mol.Biol.,157:105-132(198 2))に基づいた。ヒドロパシー値(正は疎水性、負は親水性涼気に対応する)は、アミノ酸位置に対してプロットした。推論した膜スパンドメインは、プロット線の下の塗りつぶした面積として示した。図3Bは、ラットの膜内におけるナトリウム/ヨウ化物シンポータの推論したトポロジーを示す。ローマ数字は、推論した膜スパンドメインを示す。潜在的なN結合グリコシル化部位は星印で示した。cAMP依存性タンパク質キナーゼAリン酸化のための推論した細胞内コンセンサス配列は矢印で示した。【図4】図4は、Na+依存性コトランスポータ(共役輸送)タンパク質ファミリーの膜のクラスター分析を示す樹状図である。Genetic Computer GroupのPILEUPプログラムを用いて多重分析を行った。樹状図は、分析に用いたcDNAの推論したアミノ酸配列の間のクラスター形成関係を示す樹である。括弧内の数字は、ラットナトリウム/ヨウ化物シンポータcDNAに対する相同性のパーセントを示す。【配列表】 配列番号2に含まれるアミノ酸配列をコードする精製及び単離した核酸。 配列番号1に含まれるヌクレオチド配列を有する請求項1記載の核酸。 ATCC受託番号97431で寄託されたベクターに含まれる請求項1記載の核酸。 1)配列番号2に示されたアミノ酸82からアミノ酸86のアミノ酸配列を含む、第2及び第3膜貫通ドメインの間の細胞質ループ;2)配列番号2に示されたアミノ酸157からアミノ酸163のアミノ酸配列を含む、第4及び第5膜貫通ドメインの間の細胞質ループ;3)配列番号2に示されたアミノ酸438からアミノ酸444のアミノ酸配列を含む、第10及び第11膜貫通ドメインの間の細胞質ループ;4)配列番号2に示されたアミノ酸341からアミノ酸367のアミノ酸配列を含む、第9膜貫通ドメイン;並びに5)配列番号2に示されたアミノ酸182からアミノ酸191のアミノ酸配列を含む、第5及び第6膜貫通ドメインの間の細胞外ループによって特徴づけされる、ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする請求項1から3のいずれか一項記載の単離された核酸。 請求項1から4のいずれか一項記載の核酸またはその相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする単離された核酸分子であって、ラット哺乳動物ナトリウム/ヨウ化物シンポータをコードする単離された核酸。 請求項1から5のいずれか一項記載の核酸を含むベクター。 請求項6記載のベクターで形質転換された宿主細胞。 請求項6記載のベクターで形質転換された宿主細胞を培養して増殖させる工程、及び前記培養物からナトリウム/ヨウ化物シンポータを回収する工程を含む、組み換えナトリウム/ヨウ化物シンポータの製造方法。 検出可能なラベルでラベルされた請求項1から5のいずれか一項記載の核酸。 前記ラベルが放射活性ラベル、ビオチン、及び蛍光ラベルからなる群から選択される、請求項9記載の核酸。 DNAである請求項1から5のいずれか一項記載の核酸。 RNAである請求項1から5のいずれか一項記載の核酸。 配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する精製されたナトリウム/ヨウ化物シンポータ。 請求項13記載のナトリウム/ヨウ化物シンポータと免疫反応する抗体。 検出可能なラベルでラベルされた請求項14記載の抗体。 前記ラベルが放射活性ラベル及び/または化学発光ラベルである請求項15記載の抗体。 モノクローナルである請求項14から16のいずれか一項記載の抗体。 ポリクローナルである請求項14から16のいずれか一項記載の抗体。 請求項14から18のいずれか一項に記載の抗体とサンプルを接触させる工程を含む、哺乳動物ナトリウム/ヨウ化物シンポータがサンプル中に存在するかを決定する方法であって、前記哺乳動物ナトリウム/ヨウ化物シンポータに対する前記抗体の結合の検出が、哺乳動物ナトリウム/ヨウ化物シンポータがサンプル中に存在することを示す方法。 前記サンプルが組織を含む請求項19記載の方法。 前記組織が甲状腺組織である請求項20記載の方法。 前記組織が非甲状腺組織である請求項20記載の方法。 哺乳動物ナトリウム/ヨウ化物シンポータが組織中で発現されているかを決定するプローブとしての、請求項1から5のいずれか一項記載の核酸に結合する核酸配列の使用。 前記組織が甲状腺組織である請求項23記載の使用。 前記組織が非甲状腺組織である請求項23記載の使用。 ナトリウム/ヨウ化物シンポータが組織中で発現されているかを検出するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の核酸の使用。 前記組織が甲状腺組織である請求項26記載の使用。 前記組織が非甲状腺組織である請求項26記載の使用。


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