タイトル: | 特許公報(B2)_O,O’―ビスアロイル酒石酸類によるメチルフェニデートの光学分割 |
出願番号: | 1997526649 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07D 211/34,A61K 31/4458,A61P 25/28 |
ハリス,マイケル・クリストファー・ジェームズ ザバレー,フーシャン・シャーリアリ JP 4163748 特許公報(B2) 20080801 1997526649 19970122 O,O’―ビスアロイル酒石酸類によるメチルフェニデートの光学分割 メデバ・ユアラプ・リミテッド 青山 葆 北原 康廣 ハリス,マイケル・クリストファー・ジェームズ ザバレー,フーシャン・シャーリアリ GB 9601228.1 19960122 AT PCT/GB97/00156 19970120 20081008 C07D 211/34 20060101AFI20080918BHJP A61K 31/4458 20060101ALI20080918BHJP A61P 25/28 20060101ALN20080918BHJP JPC07D211/34A61K31/4458A61P25/28 C07D211/00 - 34 CAplus(STN) 米国特許第02957880(US,A) 国際公開第95/031436(WO,A1) PATRICK, K.S. et al., Pharmacology of the Enantiomers of the threo-methylphenidate, The Journal Pharmcology and Experimental Therapeutics, 1987年, Vol.241, No.1, p.152-158 DING, Y.-S. et al., SYNTHESIS OF THE RACEMATE AND INDIVIDUAL ENANTIOMERS OF [11C]METHYLPHENIDATE FOR STUDYING PRESUNAPTIC DOPAMINERGIC NEURON WITH POSITION EMISSION TOMOGRAPHY, Journal fo Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals, Vol.XXXIV, No.10, p.989-997 4 GB1997000185 19970122 WO1997027176 19970731 2000517288 20001226 5 20040108 齋藤 恵 発明の分野本発明はジアステレオマー塩類の結晶を介したトレオ−メチルフェニデートの分割、および特にそれにより得られた純粋な鏡像体に関する。発明の背景メチルフェニデートは注意欠陥機能亢進症の治療に広く使用されている処置剤である。これは一種の制御物質である。メチルフェニデートはまずエリトロ−およびトレオ−ラセミ体の混合物として調製される。米国特許第A2957880号明細書は2種類のラセミ体混合物に関する研究を開示されており、治療活性がトレオ−ジアステレオマーに存することが示されている。現在では好ましい治療活性を有するのはd−トレオ[または(R,R)]鏡像体であると考えられている。この鏡像体の使用はPCT/GB96/01688、PCT/GB96/01689およびPCT/GB96/01690に開示されており、その内容は本明細書の一部とする。トレオ−メチルフェニデートの分割は高価な分割溶剤である1,1−ジナフチル−2,2’−ジイル燐酸水素塩を用いて達成され、この方法はパトリックらのザ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー・アンド・エクスペリメンタル・セラピューティックス、241:152−158(1987)に報告されており、次いでこの分野の他の研究者により使用された(例えばアオヤマら、ジャーナル・オブ・クロマトグラフィー、494:420(1989))。これは、エリトロ−メチルフェニデートの相当するアミド(即ち、R−CON2MeよりもむしろR−CONR2)を、アミドの加水分解とベンジリック・センターにおける平衡に先立って酒石酸で分割し、次いで得られたトレオ酸をエステル化している、米国特許第A2957880号明細書に記載された方法よりもより効率的な方法であると認められている。発明の要約本発明はトレオ−メチルフェニデートのラセミ体が安価なカルボン酸、特に、O,O’−ジアロイル酒石酸類を用いることにより、驚くべき効率で分割出来ることを見出したことに基づく。本発明の一態様ではD−またはL−O,O’−ジトルオイル酒石酸がトレオ−メチルフェニデートとジアステレオマー塩を形成し,それらの塩が非常に簡単に分離できる。この発見の重要な結果は所望のエナンチオマーが従来の方法に比べて化学的により高純度で得られるということである。即ち、パートリックらの方法では所望の生成物が分割剤で汚染され、この汚染物はエステルの加水分解を引き起こす繰り返し抽出でしか除去できず、汚染物質としてリタリン酸を残す。言うまでも無く、人への投与を目的とする物質は出来るだけ純粋であるべきである。驚くべきことにこの発明の方法は非常に高い化学的純度で、および鏡像異性体純度で所望の鏡像体を与える。特に、生成物は実質的に分割剤および/またはリタリン酸(および/またはその反対のエナンチオマー)を含まない。この純度は少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.5%、および最も好ましくは少なくとも99.9%である。生成物は遊離塩基形であっても良く、あるいは医薬用に許容し得る塩、たとえば、塩酸塩であってよい。発明の説明本発明の方法は古典的な塩分割方法の分野において通常知られている条件で実施しても良い。例えば、トレオ−メチルフェニデートとD−O,O’−ジトルオイル酒石酸1モル当量の混合物を不活性溶媒中で加熱し、次いで冷却し、得られた沈殿を濾過し、適当な溶媒で洗浄し、乾燥して、少なくとも97%eeのd−トレオ−メチルフェニデートに富んだ、即ち、1.5%より少ない反対の鏡像体を含む塩を直接得た。より高いee、例えば少なくとも99%の富化は新しい溶媒中で再スラリー化し、濾過することにより簡単に達成できる。これは、パトリックらの文献に記載された1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル燐酸水素塩を用いる方法(この方法では第1の結晶化で85−90%ee物質に相当する塩が得られ、このee物質を95−97%に高めるためには更に再結晶が必要である)を著しく改良するものである。本発明では1回の結晶化で後のレベルの光学的純度がより高い収率で達成される。したがって,本発明の方法はパトリックらの方法に比べて、より効率的であり、かつ、より経済的である。メチルフェニデートは最初、分割剤の塩として得ても良い。これを直接塩酸塩に変換し、あるいは塩交換反応によって、他の医薬的に許容し得る他の塩に変えても良い。塩分解により、遊離の塩基を解離させるのが好ましい。所望ならば、次いで遊離の塩基は塩に変えても良い。これらの全ての方法は当業者によく知られている。本発明の別の利点は以下の通りである。(i)水酸化ナトリウム水溶液を加え、pH9−10で塩分解を行う。これに対し、より塩基不安定な1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル水素燐酸塩の塩の場合は稀炭酸ナトリウム水溶液が必要であり、従って、本新規発明はより容積効率が高い。(ii)(i)における水性媒体の容積が小さいことは、メチルフェニデート遊離塩基を単離するための有機溶剤(ジエチルエーテルよりむしろTBME)への抽出量がより少なくなることを意味する。(iii)DTTAの対薬品性によりクリーンで効率的な回収が可能となる。メチルフェニデートのどちらの異性体も、例えば必要とされるジアロイル酒石酸誘導体のD−またはL−異性体を単に使用することにより、本発明方法により容易に得ることができる。本発明のメチルフェニデート単一異性体、特に純粋なd−トレオ−メチルフェニデートはそのラセミ体と同じ目的、例えばADHDまたはナルコレプシーの治療に使用することができる。この化合物はこの技術分野における通常の知識を有する者にとって自明の、あらゆる適当なキャリアーと適当な投与量において配合できる。この点に関し、上述の3件のPCT出願はいずれも参照して良い。以下の実施例により本発明を説明する。実施例ジトルオイル−D−酒石酸(5.033g、12.4mmol)を2%メタノール含有アセトン(10ml)溶液に懸濁し、トレオ−メチルフェニデート(2.9g、12.4mmol)をと同じ溶媒(10ml)に溶解した溶液に加えた。この溶液を緩やかに加温して、環流させ、試薬の全てを溶解させた。溶液を速やかに冷却すると、結晶が析出し始めた。溶液を4℃で17時間放置し、次いで濾過した。結晶をアセトン(3x15ml)で洗浄し、真空で乾燥し、d−トレオ−メチルフェニデートのジトルオイル−D−酒石酸塩(3.516g,44.3重量%;塩分解後、キラルHPLCにより測定したとき97%eed−トレオ−メチルフェニデートに相当)を得た。母液を真空で乾燥し、l−トレオ−メチルフェニデートのジトルオイル−D−酒石酸塩を固体の乾燥体(4.508g,収率50.5%、88%ee)として得た。上述のごとくして得たd−トレオ−メチルフェニデートのジトルオイル−D−酒石酸塩(3.486g)を2%メタノール含有アセトン中に懸濁し、c.40℃に加温し、冷却した。これは、室温で24時間攪拌したが、この固体は溶解しなかった。懸濁液を濾過し、固体をアセトン(10ml)で洗浄し、真空で乾燥し、ジアステレオイソマー純物質(3.209g、回収率92%、>99%eed−トレオ−メチルフェニデートに相当)を得た。溶媒としてイソプロパノール:メタノールを用いこの方法を繰り返し、最初の結晶化で,少なくとも98%に増加した同じ塩を得た。再スラリー化によりこれが増加した。比較のため、USPグレードのdl−トレオ−メチルフェニデート塩酸塩(3.36g)炭酸ナトリウム水溶液(45ml,2w/v%)に溶解し、この透明溶液をジエチルエーテル(3x50ml)で抽出した。エーテル層を合わせ、MgSO4で乾燥し、濾過し、蒸留して,乾燥させた。得られた淡黄色油状物質を(R)−(−)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル水素燐酸塩(3.36g)と共に、加熱アセトン/メタノール(95:5)混合溶媒に溶解した。溶液をゆっくりと攪拌し、5℃に冷却し、12時間維持した。得られた白色結晶(2.98g)を濾過により単離し、アセトン/メタノール(98:2)から再結晶した。この生成物を次いで炭酸ナトリウム2%水溶液で処理し、ジエチルエーテルで抽出した(4x50ml)。エーテル層を合わせ、MgSO4で乾燥し、濾過した。塩化水素過飽和エーテル溶液を加え、得られた塩酸塩を濾過し、エーテルですすぎ、メタノール/エーテルから再結晶した。得られた白色結晶生成物をHPLCおよびプロトンNMRで分析した。%w/wl−トレオ:3.7%e.e.:92.6%リタリン酸:痕跡量、但しHPLCまたはNMRによって定量しなかった。分割剤:NMRにより約4% 分割剤としてD−またはL−O,O’−ジトルオイル酒石酸を用いる鏡像体混合物の分割を含む、実質的に単一のd−またはl−トレオ−メチルフェニデート鏡像体の製法。 分割剤がD−O,O’−ジトルオイル酒石酸であり、生成物がd−トレオ−メチルフェニデートである請求項1記載の製法。 請求項1記載の実質的に単一のd−トレオ−メチルフェニデート鏡像体の製法であって、下記の工程1)〜3)を含む該製法:1)トレオ−メチルフェニデートおよび1モル当量のD−O,O’−ジトルオイル酒石酸の混合物を不活性溶剤に溶解させた溶液を加熱した後、冷却させ、2)得られた沈殿物を濾過した後、適当な溶媒で洗浄し、次いで3)沈殿物を乾燥することによって、少なくとも97%eeのd−トレオ−メチルフェニデートに富む塩を直接的に得る。 更にアルカリ金属水酸化物水溶液を使用する塩分解を含む請求項1から3いずれかに記載の製法。