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タイトル:特許公報(B2)_5員環及び6員環の選択的開環
出願番号:1997511394
年次:2007
IPC分類:C07C 6/10,B01J 27/224,C07C 5/27,C07B 61/00


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ハンツァー、シルベイン トウベル、ミケーレ エス. チェン、ジンガン シー. JP 3990727 特許公報(B2) 20070727 1997511394 19960905 5員環及び6員環の選択的開環 エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー 河備 健二 ハンツァー、シルベイン トウベル、ミケーレ エス. チェン、ジンガン シー. US 08/524,358 19950905 20071017 C07C 6/10 20060101AFI20070927BHJP B01J 27/224 20060101ALI20070927BHJP C07C 5/27 20060101ALI20070927BHJP C07B 61/00 20060101ALN20070927BHJP JPC07C6/10B01J27/224 XC07C5/27C07B61/00 300 C07C 6/10 B01J 27/224 C07C 5/27 C07B 61/00 特開昭49−117503(JP,A) 特開平04−244234(JP,A) 5 US1996014283 19960905 WO1997009289 19970313 1999512393 19991026 18 20030825 山田 泰之 本発明の分野本発明は、実質的に分解することなくC5環及びC6環を開環するための方法に関する。少なくとも1種のC5環、少なくとも1種のC6環又はその両者から成る化合物を含む供給原料は、水素の存在下で、炭化物、窒化物、オキシ炭化物、オキシ窒化物、及びオキシ炭窒化物から成る群から選ばれる遷移金属触媒と接触される。その遷移金属は、元素の周期表第IVa、Va、及びVIaの各族の金属から成る群から選ばれる。発明の背景環境に優しい炭化水素や、ディーゼル燃料油、ジェット燃料油等の留出燃料油のようなクリーン燃焼型高性能燃料油に対するニーズは、高まっている。留出燃料油は、一般的に、パラフィン、ナフテン及び芳香族を含む。セタン価、比重及び排出物のような燃料油品質パラメーターに対しては、パラフィンが最も望ましい成分であり、次いでナフテン、更には芳香族が続く。最も好ましくないのは、多環芳香族化合物である。留出燃料油は、各種の精油所プロセスにより製造されるが、これらのプロセスは、高品質の留出燃料油および/または高収率の留出燃料油を製造するのに一般的に限界がある。例えば、従来の水素化プロセスは、芳香環を飽和してナフテンにすることにより、セタン価を高め、そしてAPI比重を高める(密度を小さくする)。水素化をするだけの欠点は、ナフテンが概ね低いセタン価であり、炭素原子数が実質的に同じパラフィンよりも密度が高いことである。ナフテンの密度がより高いので、ナフテンに代わるパラフィンの同様な濃度を含む組成物と比較して留出燃料油ブレンド物の量が少なくなる。同様に、多環ナフテンは、炭素原子数が実質的に同じ単環ナフテンよりも概ね密度が高く、セタン価が低い。更に、ナフテンは、酸化反応によって芳香族に転換できる。燃料油中のナフテンの燃焼は、酸化条件のもとで起こるので、ナフテンが燃焼条件のもとで芳香族に戻る可能性があり、そのため、更に燃料油の品質が下がり、望ましくない成分の排出が増える。留出燃料油を製造するための別の従来からの精油所プロセスは、水素添加分解である。一般的に、水素添加分解触媒は、ゼオライトのような酸性担体に担持された水素化用金属から成る。これらの触媒は、芳香族を広範囲に水素化する場合、及び環構造の数を減らす場合の一般的なプロセス条件のもとでは有効である。しかしながら、ガスを含めた比較的低沸点の生成物までの激しい分解により、全体の沸点範囲が下がり、そして最終留出物生成物の量が限定されるという欠点も同時に起こる。事実、水素添加分解用原料と生成物の中の留出物沸点範囲のパラフィン含量を比較分析すると、水素添加分解によってパラフィンの正味の製造量は、殆ど増えなくて、むしろ留出物沸点範囲にはもはや存在しない比較的低分子量化合物に環構造体が分解されることにより、最終生成物中のパラフィンの濃度が高くなることが示唆される。そのため、留出物の沸騰範囲のパラフィンが見掛け上増加すること及び留出燃料油の品質の改良は、芳香族の水素化と減量した留出物生成物中のパラフィンの濃縮とを組み合わせことにより主として得ることができる。また、低毒性、生物分解性溶媒に対するニーズも多くなっていて、それについてはパラフィンは好ましい部類に入る。従って、一般的に炭化水素溶媒ブレンド物の環状化合物含量を減らすこと、特にナフテンをパラフィンへ転化することが好ましい。従来技術の中に開環反応の説明があるが、更に環境に優しい溶媒及びクリーン燃焼型高性能の燃料油に対するニーズが高まっているので、現在利用できるよりも開環に対して更に選択的であるプロセスを作り出すことが強く望まれる。開環の選択性は、元の分子よりも少ない炭素原子数の生成物分子となる結合の開裂よりも、同数の炭素原子を持ち、そして元の分子より1個少ない環を持つ生成物となる環結合の開裂のしやすさと関連がある。完全に選択的な開環では、環結合だけが開裂して、元の分子と同数の炭素原子と1個少ない環を持つ分子が生成する。例えば、n個の炭素原子で単環ナフテンを含む炭化水素ストリームから、完全な開環選択性による生成物は、n個の炭素原子のパラフィンのみである。従って、元の分子と同数の炭素原子でかつ1個少ない環を持つ、開環プロセスからの生成物分子の数は、多くなればなるほど、それだけ開環の選択性は大きい。開環の選択性が大きくなることは、次の理由から重要である。すなわち、a)生成物ストリーム中の環状構造の数が減る、b)環上のあらゆる垂れ下がり置換基が著しく脱アルキル化されることや、或いは、規定された沸騰範囲の生成物の量を減らす開環生成物が更に分解することが最小限に抑えられる、そしてc)生成物ストリームの密度が小さくなって、容積が増加する。本発明は、現在の当業界で実施される規準よりも開環に対して極めて高い選択性を持ち、生成物ストリーム中の環状構造の数を減し、そして生成物ストリームの密度を小さくして、容積を増やすと同時に垂れ下がり置換基の脱アルキルを最小限に抑えて所望の沸騰範囲の生成物の容積を多く保つことを目的とし、開環プロセス及びそのプロセス用の触媒の選択のための規準を提供する。従来技術には、開環についての多くの引用文献がある。大抵の引用文献は、水素化分解と、水素化/水素添加分解との、2つの大きいカテゴリーに入る。本発明の目的に対する“水素化分解”は、主成分の貴金属触媒上で、分子量の小さい単環ナフテンの各開裂点で水素を用いて分子結合を開裂することとして定義される。分子量の大きい環状分子の“水素化/水素添加分解”は、主成分の酸性ゼオライト担持型貴金属及び他の第VIII族金属触媒上での開裂として定義される。従来よりも選択性の優れた本発明の開環プロセスは、触媒が従来から認められ又は期待されていたよりも開環に対して優れた水素化分解活性及び選択性を発現する触媒から選ばれるという点で異なっている。更に、前記の触媒での開環の際の置換基及び副生成物の分解は、従来の水素添加分解プロセスで観察されるよりも極めて少ない。多くの学術的研究を調査したところ、モデル化合物と特定の貴金属触媒グループを使った水素化分解反応及び水素添加分解反応における生成物分布の制御の主なメカニズムは、明らかになった。代表的な研究は、金属触媒上での炭化水素の骨格の異性化の説明や、開環反応のメカニズムの考察を含め、C6環異性体に特に注目した形で、Gault(Adv.Catal.,30巻、1−95頁、(1981年))によって総説された。そこには、C6シクロパラフィンと比べて、C5シクロパラフィンの方が開環し易いこと、及びC5環の結合が開裂するのと関連するメカニズム上の密接な関係が説明されている。C6環(シクロヘキサン)からC5環(メチルシクロペンタン)への異性化は、開環(ペンチル環の開環がヘキシル環の開環よりも遥かに速い)に先行する工程がSchultz及びその共同研究者達(Proc.5th Intl.Catal.Congr.,North−Holl and Publ.(Aidam)2巻、1229−39頁(1973年))によって立証されたように、認められた。環状構造体上の側鎖がフラグメントとなりメチル基が別の環の位置へ異性化する(所謂“ペアリング(paring)”反応)傾向も指摘された(Egan、等、J.Amer.Chem.Soc.,84巻、1204−1212頁(1962年))。環上で第三級炭素原子となる後者のプロセスは、その炭素原子の位置での開環を厳しく抑制し、そしてGaultの知見と合致している。これらのプロセスは、広範囲の金属水素化−酸性触媒を使うことが特徴である。例えば、いろいろな白金−カチオン交換型酸性ゼオライトは、短い側鎖を持つシクロパラフィンを使った異性化には有効であることが指摘されていて(Weitkamp、等、“Structure and Reactivity of Modified Zeolites”、Elsevier(Aidam)、279−290頁(1984年))、更に、C9−C12の比較的長い側鎖アルキルシクロナフテン(Egan、等、同書)(Egan、等、J.Amer.Chem.Soc.,84巻、1204−1212頁(1962年))に対する非貴金属、非ゼオライト触媒(無定形シリカ−アルミナに担持されたNiS)についても同様な指摘がされている。ペアリング異性化を制御することは、留出物の品質目標を満たし、開環に続いて起こるかも知れない低セタン価の高度に分岐したパラフィンの数を抑えるために特に重要である。開環に関する別の引用文献には、シクロパラフィンの開環に対して酸性の耐火酸化物、特にハロゲン助触媒型アルミナに担持されたロジウム又はルテニウムから成る触媒を教示している米国特許第3,617,511号が挙げられる。シクロヘキサン((CHx))よりもメチルシクロペンタン(MCP)の開環の選択性が大きいことが観察された。加えて、本質的に硫黄を含まない供給原料が推奨されている。更に、米国特許第4,783,575号及び第4,834,866号は、塩素化白金−アルミナ触媒を使って、供給原料中のC4−C6パラフィンを、より多く分岐した異性体に異性化し、そしてシクロパラフィンを開環することを開示している。触媒の酸性度を維持し、かつ分解を最小限に抑えるための厳しい条件を緩めるためには、塩化物を連続して添加することが好ましい。白金は、金属触媒のうちで最も適していることが判った。また、米国特許第3,631,117号は、環状物の水素異性化用のゼオライト担持型第VIII族金属触媒を使って環状炭化水素の水素異性化、特にC6環シクロパラフィンをC5環異性体へ異性化するためのプロセスを記載している。第VIII族金属単独又は第VIII族同志、又はタングステンと組み合わせた物が広範囲の特許請求の範囲となっている。注目すべきは、イリジウムがこのグループに入っていない。この水素異性化プロセスの条件によっても、或る程度の開環とパラフィンの異性化が行なわれた。水素添加分解を過剰に行なうと(元の環状分子中の炭素原子数を減らすこと)、C6環からC5環への水素異性化の条件のもとでは問題となることがあるという注記がなされた。炭素担持型白金触媒を用いてC5環からn−ブチル側鎖を分解する反応の選択性が報告された(Sergienko、等、Khim.Geol.Nauk、2巻、65−70頁(1976年))。比較的温和な条件(225℃ないし270℃)では、低収率ではあるが、C9パラフィンが優れた選択率で製造された。しかしながら、転化率が上がるにつれて、白金の負荷が大きくなるか、或いは高温になることにより相当量の水素添加分解物及び芳香族パラフィンが生成した。ナフサ供給原料における開環を教示している特許もある。例えば、米国特許第5,334,792号は、2段階プロセスを開示していて、ベンゼンのような芳香族を飽和して、環状炭化水素を開環する条件のもとで水素化成分を含むゼオライト触媒を用いて第1段階でナフサ供給原料を反応させる。その第1段階からの反応生成物が、異性化触媒を含む第2段階に通されると、パラフィンが異性化してオクタン価が高くなった生成物が得られる。また、米国特許第5,345,026号のプロセスは、環状炭化水素を充分な開環条件のもとで或る触媒と接触させることから成っていて、その場合の触媒は、(i)水素化/脱水素成分;(ii)第VIb族金属のオキシアニオン(oxyanion)で変性された第IVb族金属酸化物から成る酸成分から成っている。水素添加分解によってセタン価が付随的に増えて、最終留出生成物中の環化合物の数は減ることがある一方で、ガスを含めて、低沸点生成物への過剰の分解によって、留出物範囲で沸騰する生成物の収率は減る。過剰の分解の1つの理由は、パラフィン、及び既に開環しているナフテンから誘導されるパラフィン系側鎖が残りのナフテンよりも簡単に分解することである。水素添加分解供給原料と生成する生成物との両方の留出物沸騰範囲のパラフィン含量を比較分析すると、パラフィンの正味の増加は、殆どんなくて、むしろ最終生成物中の前記のパラフィンの濃度が増加するということが示唆される。何故ならば、開環したナフテンの2次分解により、結局のところ留出物範囲外の低沸点留分が生成するからである。従って、留出物パラフィンの見かけの増加、及び留出物燃料油の品質向上は、芳香族の飽和、及び与えられた沸騰範囲内の生成物の減少した容積中のパラフィンの濃度との組み合わせが主な原因である。水素添加分解触媒の最近の開発の大半は、触媒作用の貴金属による水素化と、酸分解作用とを調和させることに焦点を合わせてきた。酸分解作用は、初期の触媒では無定形のアルミナ又はシリカ−アルミナによって、そして極く最近では結晶性ゼオライトによって付与された。特許業界では、全ての貴金属が機能は等価であるとして取り扱われるが、金属の作用は、一般的にPtおよび/またはPdによって付与される。ゼオライト成分は、一般的には、変性Y型(米国特許第3,130,007号)、普通、“超安定型(ultrastable)Y”、即ち、略してUS−Y(米国特許第3,449,070号)と命名されたスチーム処理型変種から誘導される。当業界は、これら2つの“調和された”成分の多数の組み合わせ品を持っていて、その大半は、触媒を変えて生成物スレートの取り扱いを詳細に説明したWard(Fuel Process.Technol.,35巻、55−85頁(1993年))によって最近、総説が出された。差別化の重要な特徴は、PtとPd(一方又は両方の金属、相対負荷、分散、ゼオライトとマトリックスとの分配)の多様な組み合わせ、及びUS−Yが利用された特定の方法の中にある。後者の成分は、通常、単位格子の値、Si/Al比、残留交換カチオン含量及び時には空孔容積により定義される。この最後の特性は、残留ゼオライト結晶内部のメソ細孔の分布や保持された結晶性ミクロ細孔容積を決める脱アルミニウムの方法と強さとによって決まる。Ward(同書)は、これらの多種多様なプロセスの種類のゼオライト製品間の選択性のいろいろな差を確固たる裏付けで総説を書いた。水素化開環により水素化の選択率を高める試みは、行なわれてきた。例えば、ヨーロッパ特許出願第0512652 A1号は、“水素化開環”プロセスを記載し、その中では留出燃料油が水素の存在で高温で或る好適な触媒と接触されるが、その触媒は、24.20Åと24.40Åの間の単位格子寸法で、かつSiO2/Al2O3のモル比が10ないし150の変性Y型ゼオライト担体物質に担持された1種以上の第VIII族貴金属から成っている。同様に、ヨーロッパ特許出願第0519573 A1号は、アルカリ又はアルカリ土金属も存在することを除いて、前記のヨーロッパ特許出願と類似の環状構造を減らすプロセスを教示している。この目的は、過剰の分解を行なうことなく、開環(水素化開環)により留出燃料油のセタン価を高めることである。これら2つのヨーロッパ特許出願は、開環が起こることを示唆しているが、選択的開環が留出物生成物の品質向上の理由であることを示唆するような明確な証拠は、これらヨーロッパ出願に見当たらない。実施例の中に記載されたプロセス条件、生成物の収率と品質によると、記載されている留出物沸騰範囲のパラフィンの増加及び留出燃料油の品質向上は、芳香族の広範囲にわたる水素化と減量生成物中におけるパラフィンの濃縮とを組み合わせることにより主として起こるように思われる。このことは、Yゼオライト担持型白金触媒上で水素添加分解条件のもとでナフテン系分子の開環を研究したMignard、等の観察と一致している(“Catalytic Hydroprocessingof Petroleum and Distillates”、M.Decker(New York)、447−459頁、(1994年))。シクロパラフィンの開環の反応経路は、逐次的に、C6環からC5環への異性化、次に炭素−炭素結合の開裂による開環、その次に更なる炭素−炭素結合の開裂反応による急速な分解として記載されている。これらの結果によると、炭素数が増えるにつれて分解の可能性は高まり、そして開環生成物は、更に分解を極めて受け易くなることが判った。得られた結論は、分解を最小限に抑える開環選択性を制御するのは難しいということであった。実際、これらの著者等は、当業界の現状が許容可能なプロセス条件のもとでの水素添加分解に含まれる競合反応に固有の限界を示していることを示唆している。水素添加分解触媒は、本来、金属機能性も酸性機能性も含んだ2つの機能性を持っている。相対的活性機能をバランスさせることは、生産性と選択率を高く維持するのに極めて重要である。当業界の水素添加分解触媒の状況は、酸成分によって概ね左右される。酸触媒による化学反応は、パラフィン系又はシクロパラフィン系前駆体からオレフィン系中間体を発生させることにより当該触媒中の金属の機能によって開始する。文献では、第VIII族金属がこの目的に本質的に最適であるという共通の認識がある。開環によって生じる1次生成物は、より低分子量の生成物となる酸分解を極めて受け易いため、酸機能が支配的に働くと、過剰の分解を引き起こす。そのため、このような2つの水素添加分解触媒の機能を高める際には、酸機能を最適化することに先ず焦点を合わせてきた。こういう訳で、当業界の触媒の状況の中で過剰の分解を一様に制御することの難しさは依然として残っている。生成物の分子量を維持し、かつ低分子量留分の量を減らすためには、酸成分による環状化合物の側鎖の開裂を最小限に抑えるなければならない。ゼオライト中の酸性度を制御する最近の試みには、残留酸位置のカチオン滴定によるSi/Al比を下げることが挙げられる。しかしながら、所望の物質を得るのに必要な何回ものストリーム処理法や交換法やアルミニウム抽出法のような余分の加工処理は、収率と結晶性を大きく損なうことになるため、Y型の脱アルミニウムによって低酸性度触媒に近づこうとすると、収穫逓減点に達する。従って、カチオン交換法は、酸性度を制御するための代替の比較的簡単な方法である(Si/Alの制御のような効果的又は安定的ではないけれども)。酸性度を制御する方法には、プロセスストリーム中のアンモニア滴定によるプロトン位置の交換(PCT WO/92/13045)、アルカリ及びアルカリ土カチオンによる塩基交換(Euro.Pat.Appl.0,519 573 A1)、及びLutz(Cryst.Res.Technol.,25巻、921−6頁(1990年))及び別の研究者(PCT WO/93/25477)によって開発された再アルミニウム化交換法が挙げられる。先行の多くの触媒やプロセスは、或る程度は市場性を獲得してきたが、分解が実質的になくって脂環式環を選択的に開環出来るものは何もない。せいぜい、開環は起こるかも知れないが、環上の置換基が切断されるか、および/またはパラフィン生成物が分解する。例えば、ブチルシクロペンタンのような分子の場合、従来技術のプロセスは、ブチル基を切断し易く、或いはシクロペンタン環を開環するよりもむしろその分子からその1部分を切断しやすい。更に、従来技術の触媒は、全て、アルミナ及びゼオライト物質のような従来からの担体に担持された金属から成っている。従って、当業界では、生成物ストリームの沸点を実質的に下げることなく炭化水素供給原料中の5員環及び6員環の脂環式環を開環するためのプロセスが依然として必要である。本発明の要約本発明によれば、実質的に分解することなしに5員環及び6員環を含む化合物の5員環及び6員環を選択的に開環するための方法が提供される。そして、その方法は、1種又はそれ以上の5員環、6員環、又はその両方を有する化合物を含む原料ストリームを、約300℃〜約450℃の温度、約200psig〜約2000psigの水素圧下に、有効な時間の間、1種又はそれ以上の遷移金属触媒と接触させることからなり、かつ、該遷移金属触媒は、炭化物、窒化物、オキシ炭化物、オキシ窒化物、及びオキシ炭窒化物からなる群から選ばれ、また、該遷移金属は、元素の周期表の第IVA、第VA、及び第VIaの各族の金属からなる群から選ばれることを特徴とする。本発明の好ましい実施態様では、前記遷移金属触媒は、オキシ炭化物、オキシ窒化物、及びオキシ炭窒化物から成る群から選ばれる。本発明の別の好ましい実施態様では、前記遷移金属触媒は、炭素、炭化物、耐火酸化物、及び窒化物から成る群から選ばれる担体物質に担持される。本発明のさらに別の実施態様では、前記遷移金属は、Mo及びWから選ばれる。本発明の好ましい実施態様では、第VIII族貴金属がさらに存在する。第VIII族貴金属としては、Ir又はRuが好ましい。【図面の簡単な説明】図1は、Mo2COx/SiC上における全メチルシクロヘキサン転化率の関数としてC5環異性体生成物の選択率を示す図である。図2は、Mo2COx/SiC上における全メチルシクロヘキサン転化率の関数としてC5環異性体生成物の収率を示す図である。図3は、温度対5%Pt/USY水素添加分解触媒の関数としてオキシ炭化モリブデンの反応選択率を比較する図である。このデータは、Mignard、等の(“Catalytic Hydroprocessing of Petroleum and Distillates”、M.Decker(New York)、447−459頁、(1994年))から得た。本発明の詳細な説明本プロセスは、少なくとも1種の5員環、又は少なくとも1種の6員環、又はその両方を有する化合物を含む供給原料に対して実施する。好適な5員環化合物の非限定的な例には、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、プロピルシクロペンタン、ブチルシクロペンタン、ペンチルシクロペンタン、及びインダン型化合物が挙げられる。好適な6員環化合物の非限定的な例には、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、ペンチルシクロヘキサン、及びデカリンが挙げられる。前記化合物を含む好ましい供給原料は、留出物範囲で沸騰する石油原料であり、その留出物範囲には、一般的に多環化合物も多く含まれる。そのような原料の非限定的例には、ディゼル燃料油、ジェット燃料油又は加熱用油が挙げられ、それらは、約175℃〜約400℃の平均沸点を有する。ナフテンをパラフィン、或いはより小さい環を含むナフテンへ転換することを説明するのに文献で広く使用される3つの用語は、“水素化分解(hydrogenolysis)”、“水素化開環(hydrodecyclization)”及び“開環(ring opening)”である。水素化分解反応は、開裂の各点で水素の添加によって炭素−炭素結合の開裂が起こる反応である。水素化開環は、環状構造が水素の環境で開裂されるという点でより特異である。このような反応は、大きい有機分子の水素添加分解で起こり、或る適当な触媒の存在下、比較的高温で水素と反応すると、フラグメントの生成が伴う。このようなフラグメントは、一般的に環が開裂された分子か、或るは開裂されたアルキル置換基か、或るはそれらの両者である。この結果、元の分子よりも少ない炭素原子を含む生成物となる。勿論、これにより低沸点生成物が生成する。“開環”は、簡単に言えば、水素化開環を説明するための別の方法に過ぎない。しかしながら、本発明の目的に対しては、選択的開環は、元の分子と実質的に同数の炭素原子の生成物分子及び元の分子より小さい環の生成物分子をもたらすような、環結合の開裂が高い確率で起こることを意味している。前記の用語に関する文献は、実際の供給原料によるデータと、モデル化合物によるデータとの2種類の実験データに基づいている。データが文献に報告されている供給原料の例には、水素添加分解された生成物、芳香族水素化生成物及び脱れき油のような環状構造を含む水素化原料油が挙げられる。主に芳香族を含む原料油は、最初に水素化する必要がある。実際の供給原料の場合に、当業界で報告する実験データは、特定のプロセス、或いは回収された全液体生成物の場合の問題の生成物の中での環の消滅に言及するのが普通である。適当な分析技術やキャラクタリジェーションを決める手段がないため、環の消滅に到る反応過程やメカニズムは、明確に確認したり、定量化したりすることはできない。しかしながら、生成物の沸点および/または分子量が実質的に下るようなことは、そのような反応ではよく見かける。沸点の降下や分子量の低下は、選択的でない開環の証拠である。即ち、それは、開裂された環のアルキル置換基である。モデル化合物の開環に関する文献は、相当数あるが、それは、僅かに1個又は2個の炭素原子のアルキル基を持つ簡単な環に一般的に限られている。例えば大部分の実験データは、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、及びメチルシクロヘキサンの転化に関するものである。比較的少数のデータのみが、ブチルシクロヘキサン、ジメチルシクロペンタン、及びトリメチルシクロペンタンのような比較的長い炭素置換基を持つ化合物の転化率に関するものである。本発明で説明する水素化分解は、開環の重要な経路である。水素化分解は、次の2つの反応によって本質的に説明できる;即ち、(1)環内炭素−炭素結合の切断と、(2)環外炭素−炭素結合の切断である。開環の時のように、環内結合の切断は、1個の環のナフテンの場合には同じ炭素数のパラフィンになるし、また、多環ナフテンの場合には、1個少ない環を含む同じ炭素原子のアルキルナフテンとなる。脱アルキルの時のように、環外炭素−炭素結合の切断は、はるかに低沸点の2個の分子を生成することにより分子量の低下が生じるアルキル置換基の喪失をもたらすことになる。この2つの反応は、並行して又は連続して起こるかも知れないことを考えると、選択的及び非選択的の開環、及び脱アルキルの概念を定義することが必要になる。その概念は、環上のアルキル置換基が実質的に脱アルキルしない選択的開環と、開環が環の置換基の実質的脱アルキルを伴う非選択的開環である。そのため、環とかなり多くの環外炭素原子を有する置換基との両方を含むブチルシクロヘキサンのようなモデル化合物を使うことが選択的開環触媒の選択には必要である。さほど多数の環外炭素原子でない置換基を含む、例えば、メチルシクロヘキサンのような環状化合物の場合には、触媒がアルキル置換基を切断して選択的に開環するか否かを決めるのは難しい。一方、3個以上の炭素原子を持つ環置換基を含むブチルシクロヘキサンのような化合物の場合には、触媒が選択的に開環し、環置換基を切断しないか否かを決めるのは、比較的簡単である。本発明のプロセスは、(i)生成物ストリーム中の環状構造の数を減らすこと;(ii)規定された沸騰範囲の生成物の量を減らす環上のあらゆる垂れ下がり置換基の著しい脱アルキルを起こなさいこと;及び(iii)生成物ストリームの密度を下げることにより増量することの3つの点で、これらの供給原料の燃料油特性に影響を及ぼす。また、セタン価が約40以上、好ましくは約45以上、更に好ましくは約50以上の留出燃料油を製造することは望ましい。セタン価は、留出燃料油中にある分子の種類と直接関連がある。例えば、或る種類(例えば、ノルマルパラフィン)の分子のセタン価は、その分子内の炭素原子の数と共に増える。更に、分子の種類は、或る特定の炭素原子数のそのセタン価によって分類できる:即ち、ノルマルパラフィンは、最もセタン価が大きく、次にノルマルオレフィン、その次がイソパラフィンで、そして更に単環ナフテンが続く。芳香族分子、特に多環芳香族は、最もセタン価が小さい。例えば、ナフタレンは、約5−10のブレンド用のセタン価であり、テトラヒドロナフタレン(テトラリン)は、約15、デカヒドロナフタレン(ダカリン)は、約35−38、ブチルシクロヘキサンは、約58−62、そしてデカンは、約72−76である。本発明の研究と関連してエンジン試験により行なったこれらのセタン価測定値は、別の文献(引用文献を参照されたい)で報告された値と少し差があるが、環の飽和及び開環が進むにつれてセタン価が大きくなる傾向は一致している。更に、留出物ストリームの芳香族含量は、その出所によって変動する。例えば、留出物ストリームが原油蒸留塔からの生成物留分の場合、そのストリームは、芳香族、特に多環芳香族が比較的少なく、そして比較的セタン価が大きい。一方、流動接触分解装置からの生成物留分である留出物ストリームは、比較的多量の芳香族、特に多環芳香族を含むため、セタン価は比較的小さい。セタン価及びセタン指数の増加は、API比重の増加と対応させることができることは通常の当業者には公知である。従って、選択的開環により環の数を減らすことが特に望まれる。本発明の実施に当たって使用される触媒は、遷移金属の炭化物、窒化物、オキシ炭化物、オキシ窒化物、及びオキシ炭窒化物から成る群から選ばれ、その遷移金属は、Ti及びZrのような第IVa族;V及びNbのような第Va族;並びにMo、Cr及びWのような第VIa族から成る群から選ばれる。最も好ましい遷移金属は、Mo及びWで、Moがより好ましい。参照する周期表の族は、Sargent−Welch Scientific Company、Skokie、イリノイ州:版権1979年、カタログ番号S−18806、によって提供された周期表からのものである。第IVa族金属、特にMoは、好ましい。また、オキシ窒化物及びオキシ炭化物は、好ましく、オキシ炭化物は、より好ましい。上記の触媒は、その組成物の中に、少なくとも1種の前記の遷移金属、炭化物の場合は炭素、及び窒化物の場合は窒素、さらにそれ以外に、オキシ炭化物、オキシ窒化物及びオキシ炭窒化物の場合は酸素を含む。そのような組成物は、侵入型で安定な固体化合物であり、炭素、窒素、及び酸素が複雑な配置で侵入位置を占めている。これらの化合物は、金属原子が面心(fcc)、六方最密(hcp)又は単純六方(hex)の各格子を形成する単純な結晶構造を採ることが多い。酸素は、特に遍在型であり、そして公称純粋な炭化物、窒化物、及び炭窒化物の物質でさえも相当量の溶解酸素を含むことがある。酸素の効果は、必ずしも不活発ではなく、それがあると分解(水素化分解)生成物から異性化まで幅広く選択率が変動する。前記の炭化物、窒化物、オキシ炭化物、オキシ窒化物、及びオキシ炭窒化物を調製するための幾つかの方法は、当業界では公知である。例えば、炭化物及び窒化物の調製方法は、引用して本明細書に組み入れられている米国特許第5,200,060号に開示されている。その手順は、第VIa族金属の酸化物前駆体を調製して、適当な反応器の中で或る特定の温度プログラムで反応体ガス流と接触させることから成る。本発明の触媒を調製するのに適する触媒調製の別の方法は、引用して本明細書に組み入れられている米国特許第4,325,842号に開示されている。この方法は、有機溶媒に溶解したヘキサモリブデンドデカクロリド溶液で多孔質の不活性担体を含浸した後、この含浸担体を非酸化型雰囲気の中で加熱して有機溶媒を除去し、次に水素並びに1種以上の低分子量アルカン、アルケン、一酸化炭素及び貴ガスから成る炭化用(carbiding)ガス混合物の中で約1200°−1382°F(650−750℃)に加熱することから成る。本発明の触媒を調製するのに適するもう1つの方法は、引用して本明細書に組み入れられている米国特許第4,325,843号に見ることができる。この方法は、加熱すると酸化物に分解可能なタングステン塩の溶液で酸化物担体物質を含浸し、この含浸担体を乾燥して溶媒を除去し、得られた担体を約840°−1292°F(450−700℃)の非還元性雰囲気の中で加熱してタングステン塩を酸化物に変え、次いで得られた担体を約1292°−1472°F(700−800℃)のアンモニアの中で加熱して、このタングステン酸化物を窒化物に変えることから成る。引き続き、この窒化物物質は、水素及び低分子量のアルケン/アルカン又は一酸化炭素から成る炭化用ガス混合物の中で約1292°−1472°F(700−800℃)で加熱することにより炭化物に変えることができる。上記の方法で調製された全ての炭化物及び窒化物は、その後、好適な通常の酸化処理によりオキシ炭化物及びオキシ窒化物に変えることができる。本発明での使用に適する遷移金属炭化物及びオキシ炭化物触媒の好ましい調製方法は、両方とも引用して本明細書に組み入れられているヨーロッパ特許第396,475号及びフランス特許第2,657,603号に記載されている。ヨーロッパ特許第396,475号によると、重金属の炭化物は、固体又はガス状の遷移金属酸化物を、比表面積が大きくて(少なくとも200m2/gに等しい)概ね過剰の炭素量を含む反応性炭素と、900℃〜1400℃の間の温度で反応させることにより得られる。いずれの活性炭のタイプでも適しており、顆粒状又は凝集型活性炭が更に特に適している。このような炭素は、Ce、Ti、U、Zr、Hf又はランタニドのような金属元素で予めドーピングすることができる。更に重要なことは、遷移金属炭化物の表面を活性化する2つのプロセスが、両方とも引用して本明細書に組み入れられている米国特許第5,139,987号及び第5,308,597号に記載されている。米国特許第5,308,597号に記載されている改良型活性化手順は、合成後に空気と接触した時に、ポリマー状の炭素が実質的に生成することなく又は金属へ必ずしも還元することなく、炭化物の表面を一時的に不動態化する酸化物又はオキシ炭化物層を調合することにある。この方法は、金属含量が約0.001重量%ないし0.05重量%の間の少なくとも1種の第VIII族貴金属の塩の希薄溶液で前記の炭化物を含浸することに特徴がある。米国特許第5,139,987号に記載された活性化手順は、第VIII族貴金属を使用しないで化学反応及び石油化学反応の触媒用の高活性レベル品を得ることを目的とする。酸化処理の条件は、重要事項として記載されている。酸化用ガスは、一般的に空気であるが、純酸素、或るいは不活性ガスにより或る程度は希釈された酸素が使用できる。好ましいのは、少なくとも10%の酸素を含むガスを使用することである。好ましい温度は、250℃と450℃の間である。酸化用ガスとしての空気を使用する炭化モリブデンの場合、温度範囲は、更に特定されて、約350℃である。或る反応時間が過ぎると、酸素原子の消失と、より深い層からの酸素原子の表面への拡散と、反応体の表面への到達との間の安定した平衡が、触媒の表面で成立する。これによって、多かれ少なかれ酸素に富む炭化物相(オキシ炭化物)が得られ、この相は、パラフィン異性化に対しては比較的高い反応性を持っている。本発明での使用に適する遷移金属オキシ炭窒化物を作るための好ましい調製方法は、引用して本明細書に組み入れられている米国特許第4,418,154号に見ることができる。この方法は、約650℃で大気圧の不活性ガス流のもとでエチレン−ジアンモニウム遷移金属錯体を熱分解することから成る。得られた自然発火性物質は、次いで、室温で酸素とヘリウムとのガス混合物に接触させることにより不動態化される。本発明者等は、このような遷移金属のオキシ炭化物、オキシ窒化物及びオキシ炭窒化物が、分子量の低下を最小限に抑えながら、C6ナフテン環からC5ナフテン環へ異性化する反応に特に活性な触媒であることを見出した。Ir、Pt(Gault等、Adv.Catal.,30巻、1−95頁、(1981年))、及びRuのような第VIII族貴金属上では、C5ナフテン環がC6ナフテン環よりも簡単に開環すると考えられるため、前記のオキソ物質を使って、C6環をC5環へ異性化し、続いて第VIII族貴金属触媒を用いてC5環を開環して対応するパラフィンにすることができた。本発明の目的に対して、第VIII族貴金属は、遷移金属(オキシ炭化物等)触媒組成物と同じ触媒粒子上で使用してもよいし、或いは別の触媒粒子上で使用してもよく、そして遷移金属触媒との混合床の中で使用することもできる。第VIII族貴金属を遷移金属と同じ触媒粒子上で使用する場合、第VIII族貴金属が含浸された炭化ケイ素又は窒化ケイ素のような耐火担体上で遷移金属成分を使用することが好ましい。第VIII族貴金属は、Ir及びRuから、更に好ましくはIrから選ばれることが好ましい。第VIII族貴金属を同様な粒子上で使用する場合、遷移金属成分は、C6環をC5環へ異性化すると直ちに、新たに生成したC5環が、周期表で極めて近い第VIII族金属によって直ちに開環される確率が高くなる。第VIII族貴金属を別の粒子上に置く場合は、2種類の触媒の混合床を使用することが出来、その1種類は、遷移金属触媒であり、もう1種類は、第VIII族貴金属、好ましくはアルミナのような実質的に非酸性担体上に担持されたIr、Ru又はそれらの混合物触媒である。第1種類の触媒粒子、即ち遷移金属物質は、更に第VIII族貴金属も含むことができることは理解しなければならない。供給原料も段階的プロセスで処理できる。即ち、第1段階では、その原料が遷移金属型触媒と接触すると、C6ナフテンからC5ナフテンへの異性化が起こり、次の第2段階では、前の第1段階の生成物ストリームであって、今はC5環に富む化合物が第VIII族貴金属(類)を含む別の型の触媒と接触する。段階的プロセスの1つの利点は、反応条件を段階毎に変更できることである。オキシ炭化物および/またはオキシ窒化物および/またはオキシ炭窒化物触媒物質は、また好ましい。何故ならば、それらの触媒物質は、母材遷移金属炭化物又は窒化物物質の金属的性質を或る程度保持し、そのため、水素化分解のような触媒特性を或る程度示すからである。しかしながら、オキシ炭化物、オキシ窒化物及びオキシ炭窒化物触媒のこのような水素化分解機能は、表面の酸素によって低下する。遷移金属オキシ炭化物、オキシ窒化物及びオキシ炭窒化物物質は、触媒特性、異性化及び水素添加分解の調和がとれているため、ナフテン及び芳香族環の異性化及び開環用触媒として優れた候補物となる。次の実施例は、単に説明を目的としたものであって、決して限定を意味するものではない。実施例1(参考例)高比表面積のバルク状(130m2/g)のオキシ炭化モリブデン(Mo2COx)、及び炭化ケイ素担持型オキシ炭化モリブデン(15%Mo2COx/SiC)を、ヨーロッパ特許出願第396,475号の実施例1の調製方法、及び米国特許第5,139,987号に記載の活性化手順によって得た。現場での再活性化の手順は、次の通りである。300psigの標準純度の水素気流のもとで、この触媒を250℃まで加熱した。所定の温度に達したのち、液時空間速度(LHSV)が1、及び水素処理ガス速度(TGR)が8800 SCF/B/bで、n−ヘプタンを装入した。次に温度を350℃まで上げたのち、n−ヘプタンの異性化が定常状態活性に達して少なくとも2時間になるまで、触媒には前記の条件を維持した。次に、活性化した炭化モリブデンをナフテンの異性化と開環に使用した。全ての運転の生成物は、オンライン、及びオフライン型ガスクロマトグラフィにより分析し、そして生成化合物は、ガスクロマトグラフィ/質量分析により同定した。この目的のために、高表面積活性化SiC担持型オキシ炭化モリブデン、Mo2COx/SiC 2.2057g(3cc)を流下式ステンレススチール製反応器に入れた。一連の反応を行なって、メチルシクロヘキサン(MCH)の異性化生成物の選択率と収率に及ぼす転化率の影響を図示した。運転は、350°〜400℃の温度、200〜1000psigの圧力で、1〜2.4のLHSV、及び2280〜5055SCF/BのTGRで行なった。これらの結果を図1及び2に示している。図1に示す通り、エチルシクロペンタン(EtCP)の選択率は、低下しているのに対して、1,2−、及び1,3−ジメチルシクロペンタン(1,2−、及び1,3−DMCP)生成物の選択率は、上昇している。MCHの転化率が上昇しても、1,1−ジメチルシクロペンタン(1,1−DMCP)生成物の選択率は、低いままである。Mo2COxを使って得られたナフテンの異性化生成物の選択率は、表Iに示すように約350℃と400℃の間の温度での熱力学的平衡計算によって予測した選択率とは違うことが判った。表IのA列のデータは、V.A.Zakharenki等による「Relative Thermodynamic Stability of C7−C8 Cyclopentanes and Cyclohexanes At 295−600°K」(Neftekhimiya 8 No.5、675−680頁、1968年)という題名の論文から採ったものである。B列のデータは、F.D.Rossini等による「Selected Values of Physical andThermodynamic Properties of Hydrocarbon and Related Compounds」(CarnegyPress、Pittsburgh、1953年)という題名の論文から採ったものである。C列のデータは、本発明の実施例のデータである。我々の場合、EtCPの選択率は、かなり良好であることが判る。図2で見るように、EtCP収率は、MCHの転化率で約40ないし50%付近で最高に達する。実施例2(参考例)実施例1に記載した同じ触媒及び装置を用いて、n−ヘキサン中の20%アルキルシクロペンタン溶液の混合物を使って一連の運転を行なった。4回の運転は、375℃の温度、500psigの圧力、及び5000SCF/Bの水素TGRで行なった。これらの結果を表IIに示している。表から明らかなように、アルキルシクロペンタンの異性化が主反応である。1,2−DMCPを使うと、ジアルキルシクロペンタンからメチルシクロヘキサンへの環拡大は、比較的少ないことが判る。しかしながら、1,3−DMCPの場合は、かなり多くなる。アルキルシクロペンタン開環反応は、本実施例では、両モデル化合物共に少なくとも約20%とかなり多いことが判った。実施例3(参考例)実施例1の調製法で得た非担持型の高比表面積のオキシ炭化モリブデン触媒(Mo2COx)に対して、MCHの異性化及び開環の触媒活性を操作温度と圧力の関数として決めるための一連の運転を行なった。MCHをバルク状のオキシ炭化モリブデン上で反応させ、生成物選択率を従来の水素添加分解触媒である0.5%Pt/USY、の生成物選択率と比較した。これらの結果を図3に示している。この比較は、S.Mignard及びN.Marchalによって提供された「Opening of Naphthenic Molecules Under Hydrocracking Conditions」(1994年4月、Spring National Meeting of the AmericanInstitute of Chemical Engineers Atlanta、ジョージア州)という題名の未刊行論文の中の、InstitutFrancais du Petrole(IFP)によって刊行されたデータを用いて行なった。実施例1に記載した同じ装置及び同じ普通の再活性化手順を使って、約3.8cc(5.15g)の触媒をMCH反応性試験の前に処理した。操作条件は、300°〜425℃の温度、500psigの全圧力、1.0のLHSV、及び8800 SCF/BのTGRであった。これらの結果を表IIIに示している。表IIIの結果によると、400℃未満で操作すると、バルク状Mo2COxでは、異性化及び開環生成物の収率は高く、分解は極めて少ないことが判る。異性化生成物の選択率は、あらゆる温度で一定であり、熱力学的平衡計算で予測した選択率と極めて近いことが判る。このことは、Mo2COx/SiC(実施例1)を用いた結果とは異なる。この実施例の場合、開環生成物の収率は、無視できないため、異性化生成物の選択率に影響を及ぼすことがあるかも知れない。実施例4(参考例)実施例3に記載した同じ触媒、装置及び普通の手順を使って一連の運転を行い、反応選択率に及ぼす全圧の影響を図示した。375℃の温度、1.0のLHSV、8800 SCF/Bの水素TGR、及び100〜1000psigの範囲の全圧で、4回の運転を行なった。これらの結果を表IVに示している。表IVの結果では、工程の全圧を下げると、全転化率がやや上昇することが判る。しかしながら、主要反応生成物であるトルエンへMCHが脱水素する反応選択率に大きい変化も観察された。実施例5(参考例)実施例4に記載した同じ触媒(バルク状Mo2COx)、装置及び普通の手順を使って、一連の運転を行ない、ブチルシクロヘキサン(BCH)の異性化及び開環活性、並びに生成物の選択率を操作温度の関数として決定した。これらの結果を表Vに示している。表から明らかなように、比較的長いアルキル基、ブチル対メチル(実施例3)の効果は、異性化及び開環反応活性、並びに選択率には殆ど影響を与えない。400℃未満では、分解物(C9-)は、従来の水素添加分解触媒と比較して低レベルのままであることが判る(Mignard他著「Catalytic and Hydroprocessing of Petroleum and Distillates」、M.Decker(NewYork)、447−459頁(1994年))。実施例6一連の運転を行なって、開環活性及び選択率に及ぼす第VIII族金属の影響を決めた。実施例1の調製法と活性化法によって得たバルク状の高比表面積オキシ炭化モリブデン(Mo2COx)を、0.9重量%Ir/Al2O3触媒の一部分と物理的に混合した。Ir/Al2O3触媒は、次の普通の手順を用いて調製した。大きいフリットガラス製の濾斗の出口には、ガラスフリットを通してCO2ガスを上方へ流すことができるCO2ガス供給管を取り付けた。この濾斗の中に脱イオン水375ml及び改質用グレードのアルミナ押出し粒状物250gを入れた。30分間、CO2をこの混合物の中に吹き込んだ。Ir原料溶液は、1リッターの脱イオン水に溶解した42.9gのクロロイリジウム酸六水和物の溶液から調製した。その際、この原料溶液には16mg Ir/ml、及び18mg Cl/mlが含まれていた。押出し粒状物/水の混合物に141mlのIr溶液を加えて、CO2を4時間連続して通した。水層は、デカンテーションにより分離し、これで得られた触媒をペーパータオルの上に並べて室温で1晩中、乾燥した。この触媒は、続いて100℃で4時間真空で乾燥したのち、400℃で3時間の空気流の中でカ焼した。仕上がった触媒は、0.9重量%のIrを含んでいた。実施例1に記載した同じ装置及び普通の手順を使って、約5.0cc(7.1253g)のバルク状Mo2COxと約0.1000g(0.18cc)の0.9重量%Ir/Al2O3を物理的に混合した。触媒床全体の金属Irの全量は、0.012重量%、即ち125ppmと等価である。操作条件は、325°〜350℃の温度、500〜700psigの全圧力、0.5〜2.5のLHSV、及び3000 SCF/Bの水素TGRであった。これらの結果を下記の表VIにまとめている。表から明らかなように、少量のIr(125ppm)を触媒系に添加すると、全活性触媒がほぼ等しくて開環活性が急激に上昇した。液時空間速度(LHSV)を増やすと、C10開環生成物の収率、即ち開環選択率にさほど影響をおよばすことなく、分解物(C9)収率が下がることも観察された。 実質的に分解することなしに5員環及び6員環を選択的に開環するための方法において、該方法は、5員環化合物、6員環化合物、又はそれらの混合物を含む原料ストリームを、300℃〜450℃の温度、200psig〜2000psigの水素圧下に、有効な時間の間、1種又はそれ以上の遷移金属触媒と接触させることからなり、その際、該遷移金属触媒は、炭化物、窒化物、オキシ炭化物、オキシ窒化物、及びオキシ炭窒化物からなる群から選ばれ、かつ、該遷移金属は、モリブデン(Mo)であり、また、該遷移金属触媒は、該遷移金属に加え、イリジウム(Ir)を更に含み、かつ、該遷移金属触媒は、温度325〜350℃、全圧力500〜700psig、液時空間速度0.5〜2.5及び水素流速3000標準立方フィート/バレルにおいてブチルシクロヘキサンと反応させるとき、少なくとも50%の開環選択率(ここで、開環選択率とは、C10パラフィン収率%/C10環消失%と定義される。)を示すことを特徴とする開環方法。 上記遷移金属触媒が、オキシ炭化物、オキシ窒化物、及びオキシ炭窒化物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の開環方法。 上記遷移金属触媒が、オキシ炭化物であることを特徴とする請求項2に記載の開環方法。 上記遷移金属触媒が、炭素、炭化物、耐火性酸化物、及び窒化物から選ばれる担体物質に担持されていることを特徴とする請求項1に記載の開環方法。 上記担体物質が、シリコンカーバイドであることを特徴とする請求項4に記載の開環方法。


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