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タイトル:特許公報(B2)_有機酸とアミンの複合塩の製造法
出願番号:1997368738
年次:2009
IPC分類:C07C 51/09,C07C 51/41,C07C 59/01,C07B 57/00


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和田 繁 伊藤 信彦 長谷部 昭雄 JP 4218040 特許公報(B2) 20081121 1997368738 19971226 有機酸とアミンの複合塩の製造法 曽田香料株式会社 000201733 岩見 知典 100104950 和田 繁 伊藤 信彦 長谷部 昭雄 20090204 C07C 51/09 20060101AFI20090115BHJP C07C 51/41 20060101ALI20090115BHJP C07C 59/01 20060101ALI20090115BHJP C07B 57/00 20060101ALI20090115BHJP JPC07C51/09C07C51/41C07C59/01C07B57/00 346 C07C 51/09 C07B 57/00 C07C 51/41 C07C 59/01 特開昭61−205229(JP,A) 特開昭55−043053(JP,A) 特開平03−261743(JP,A) 特開平07−242859(JP,A) 特開昭63−139179(JP,A) 2 1999199542 19990727 9 20041215 安田 周史 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、香料および医薬などの各種化学原料中間体として有用な有機酸とアミンの複合塩の製造法に関するものである。詳しくは、本発明は、鏡像異性体の混合物である有機酸を光学分割するためにジアステレオマー法を実施する際の、ジアステレオマー誘導体の1つである有機酸と光学活性アミンの複合塩の製造法に関するものである。【0002】【従来の技術】従来、光学活性体を取得する方法として、ジアステレオマー法が広く行われてきた。ジアステレオマー法において、有機酸とアミンの複合塩は特に重要なジアステレオマー誘導体であり、この有機酸とアミンの複合塩のうち、鏡像異性体の混合物である有機酸と光学活性アミンの複合塩の製造法に関しては、これまでいくつかの方法が提案されている。【0003】特開昭55−43053号公報では、γ-ヒドロキシウンデカン酸とα-(1-ナフチル)エチルアミン、α-フェニルエチルアミン、もしくはβ-(p-トリル)-α- フェニルエチルアミンのいずれかの光学活性体とを反応させて、鏡像異性体の混合物である有機酸と光学活性アミンの複合塩であるジアステレオマー塩を製造する方法が提案されている。この方法では、目的の鏡像異性体の混合物である有機酸と光学活性アミンの複合塩をある程度の収率で製造することはできるが、γ- ヒドロキシウンデカン酸は安定性が悪く、γ-ウンデカラクトンが副生成してしまい収率の低下が起きることから、未だ十分な方法であるとはいえない。【0004】また、日本化学会第67春季年会1994年講演予稿集II、p728、1 C1 10 では、ジャスミンラクトンを水酸化ナトリウムで開環し、光学活性な2-アミノ-1,2-ジフェニルエタノールの塩酸塩を作用させて、鏡像異性体の混合物である有機酸と光学活性アミンの複合塩であるジアステレオマー塩を製造する方法が提案されている。しかしながら、鏡像異性体の混合物である有機酸と光学活性アミンの複合塩の製造については、詳細な製造方法や効果については記載されていない。また、この方法では、光学活性アミンの塩酸塩を合成するという工程が必要であり、操作的に複雑であるため未だ十分な方法であるとはいえない。【0005】特開平7−242589号公報には、ジャスミンラクトンを水酸化ナトリウムで開環し、中和した後、中和液に光学活性な2-アミノ-1,2-ジフェニルエタノールの塩酸塩を添加して、鏡像異性体の混合物である有機酸と光学活性アミンの複合塩であるジアステレオマー塩を製造する方法が提案されている。この方法は、中和後のδ-ヒドロキシ酸を単離する工程がないためある程度の効果があると思われるが、実際にどの程度の効果がえられるかについて具体的詳細な記載がない。また、この方法は、光学活性アミンの塩酸塩を合成するという工程が必要であり、操作的に複雑であるため未だ十分な方法であるとはいえない。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、副反応を抑制し反応収率を向上させるとともに、製造工程を短縮し、効率よく簡便に有機酸とアミンの複合塩を製造する方法を提供することにある。【0007】【問題点を解決するための手段】 前記課題を達成する本発明の有機酸とアミンの複合塩の製造法は、有機酸とアミンの複合塩を製造する方法において、一般式(III)【化4】 ・・・(III)(式中、nは1〜3の整数、R1は炭素数1〜9の飽和あるいは不飽和の脂肪族基、R5は有機残基)で示されるエステル類、または一般式(IV)【化5】 ・・・(IV)(式中、nは1〜3の整数、R1は炭素数1〜9の飽和あるいは不飽和の脂肪族基)で示されるラクトン類をアルカリ加水分解した反応液に光学活性アミンを添加後、無機酸を添加して水素イオン濃度をpH値で5〜10に調整することを特徴とするものである。【0008】そして、本発明で好ましく使用されるエステル類、ラクトン類およびアミン類については、後で詳しく説明される。【0009】【発明の実施の形態】 本発明における有機酸とアミンの複合塩の製造法は、エステル類またはラクトン類をアルカリ加水分解し、その後フリーな有機酸を単独に製造する工程を経ずに、有機酸のアルカリ金属塩の状態でアミンを添加した後、無機酸を添加することによって、有機酸とアミンの複合塩を簡便な操作で高収率に製造できるものである。有機酸のアルカリ金属塩をアミンの存在下に無機酸で中和することによって、生成したフリーな有機酸はその存在時間を最大限に短くでき、ほぼ同時にアミンと作用して複合塩を生成する。そのため、フリーな有機酸が不安定なものであっても、副反応を最大限に抑制することができる。フリーな有機酸が不安定なものの例としては、γ−ヒドロキシ酸類、δ−ヒドロキシ酸類等を挙げることができる。【0010】 また、本発明でアルカリ加水分解によって得られるγ−ヒドロキシ酸類の原料としては、γ−ヒドロキシ酸エステル類やγ−ラクトン類を挙げることができ、δ−ヒドロキシ酸類の原料としてはδ−ヒドロキシ酸エステル類やδ−ラクトン類を挙げることができる。【0011】本発明で得られる有機酸とアミンの複合塩としては、一般式(V)【0012】【化6】 ・・・(V)(式中、R1は水素、または水酸基を持つあるいは持たない有機残基、R2は水素または有機残基、R3は水素または有機残基、R4は水素または有機残基)で示される複合塩が挙げられる。【0013】また、有機酸とアミンの複合塩として、一般式(VI)【0014】【化7】 ・・・(VI)(式中、nは1〜3の整数、R1は炭素数1〜9の飽和あるいは不飽和の脂肪族基、R2は水素または有機残基、R3は水素または有機残基、R4は不斉炭素が含まれる有機残基)で示される鏡像異性体の混合物である有機酸と光学活性アミンの複合塩が挙げられる。【0015】以下、本発明の有機酸とアミンの複合塩の製造法について詳細に説明する。【0016】まず、エステル類またはラクトン類のアルカリ加水分解反応の方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法で実施することができる。例えば、加熱したアルカリ化合物の水溶液にエステル類またはラクトン類を滴下する方法などを使用することができる。【0017】 本発明で好ましく用いられるエステル類としては、一般式(III)【0018】【化8】 ・・・(III)(式中、nは1〜3の整数、R1は炭素数1〜9の飽和あるいは不飽和の脂肪族基、R5はメチル、エチルなどの有機残基)で示されるヒドロキシ酸エステル類が挙げられる。【0019】 エステル類の具体例としては、エチル 5−ヒドロキシデカノエート、エチル 5−ヒドロキシウンデカノエート、エチル 5−ヒドロキシヘキサノエート、n−プロピル 5−ヒドロキシデカノエート、イソプロピル 5−ヒドロキシデカノエート、2−メチルプロピル5−ヒドロキシデカノエート、エチル 5−ヒドロキシ−9−メチルデカノエートなど挙げられる。【0020】また、本発明で好ましく用いられるラクトン類としては、一般式(IV)【0021】【化9】 ・・・(IV)(式中、nは1〜3の整数、R1は炭素数1〜9の飽和あるいは不飽和の脂肪族基)で示される単環の中環状ラクトン類や、大環状ラクトン類を挙げることができる。【0022】 ラクトン類の具体例は、4−ペンタノリッド、4−ヘキサノリッド、4−ヘプタノリッド、4−オクタノリッド、4−ノナノリッド、4−デカノリッド、4−ウンデカノリッド、4−ドデカノリッド、4−トリデカノリッド、4−テトラデカノリッド、γ−ジャスモラクトン、cis−ジャスモンラクトン、cis−6−ドデセン−4−オリドなどのγ−ラクトン類、5−ヘキサノリッド、5−ヘプタノリッド、5−オクタノリッド、5−ノナノリッド、5−デカノリッド、5−ウンデカノリッド、5−ドデカノリッド、5−トリデカノリッド、5−テトラデカノリッド、ジャスミンラクトンなどのδ−ラクトン類、6−ヘプタノリッド、6−オクタノリッド、6−ノナノリッド、6−デカノリッド、6−ウンデカノリッド、6−ドデカノリッド、6−トリデカノリッド、6−テトラデカノリッドなどのε−ラクトン類、シクロペンタデカノリッドなどの大環状ラクトン類などが挙げられる。【0023】本発明において、これらのエステル類またはラクトン類が液体であれば、希釈することなくそのまま滴下してもよいし、また結晶性のものであれば酸・アルカリ・有機酸・アミンのいずれにも安定な溶媒で十分に溶解性のあるものであれば希釈しても構わない。本発明においてアルカリ化合物は、通常のエステル類、ラクトン類のアルカリ加水分解で使用されるものであれば特に限定されることはないが、なかでも水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムが好ましい。【0024】また、アルカリ化合物の使用量は特に限定されるものではないが、好ましくはエステル類またはラクトン類に対して1倍モルから10倍モルで、より好ましくは1倍モルから3倍モルの範囲で用いられる。アルカリ化合物は水溶液として使用することが好ましい。その際の濃度はアルカリ化合物の種類によっても適宜選択でき、特に限定されるものではないが、0.1重量%から40重量%が好ましく、特に、1重量%から20重量%がより好ましい。反応の温度は使用するアルカリ化合物の種類や使用する量、濃度によって適宜選択することができるが、0℃から100℃が好ましく、特に10℃から80℃がより好ましい。【0025】 本発明で好ましく用いられるアミン類としては、一般式(I)【0026】【化10】 ・・・(I)(式中、R2は水素または有機残基、R3は水素または有機残基、R4は不斉炭素が含まれる有機残基)で示される光学活性アミン、または一般式(II)【0027】【化11】 ・・・(II)(R2は水素、メチル基、またはp−トリル基を示す,R3は水素またはベンジル基を示す、R4は水素またはメチル基を示す。)で示される光学活性アミン類、または、1−(1−ナフチル)エチルアミン、(cis−2−ベンジルアミノシクロヘキサン)メタノール、2−アミノ−1−ブタノール、3−メチル−2−フェニルブチルアミンから選ばれた光学活性体を挙げることができる。【0028】 アミン類の具体例としては、キニーネ、キニジン、シンコニン、シンコニジン、ブルシン、エフェドリン、L−(+)−リジン、(+)−デヒドロアビエチルアミン、L−(+)−アルギニン、(+)−α−フェニルエチルアミン、(−)−α−フェニルエチルアミン、(+)−1−(p−トリル)エチルアミン、(−)−1−(p−トリル)エチルアミン、(+)−α−エチルベンジルアミン、(−)−α−エチルベンジルアミン、(+)−1−フェニル−2−(p−トリル)エチルアミン、(−)−1−フェニル−2−(p−トリル)エチルアミン、(+)−erythro−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、(−)−erythro−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、(+)−1−(1−ナフチル)エチルアミン、(−)−1−(1−ナフチル)エチルアミン、(+)−cis−2−(ベンジルアミノシクロヘキサン)メタノール、(−)−cis−2−(ベンジルアミノシクロヘキサン)メタノール、(+)−α−メチル−p−ニトロベンジルアミン、(−)−α−メチル−p−ニトロベンジルアミン、(+)−2−アミノ−1−ブタノール、(−)−2−アミノ−1−ブタノール、(+)−3−メチル−2−フェニルブチルアミン、(−)−3−メチル−2−フェニルブチルアミンなどの光学活性アミン類などが挙げられる。【0029】反応系へのアミンの添加方法は特に限定されるものではないが、アミンが液体であればそのまま添加しても良いし、結晶性のものであれば酸・アルカリ・有機酸・アミンのいずれにも安定な溶媒で十分に溶解性のあるものであれば希釈しても良い。添加するアミンの量は特に限定されるものではないが、好ましくはエステル類またはラクトン類に対して0.3倍モルから5倍モル、より好ましくは0.5倍モルから3倍モルの範囲である。アミンを添加するときの温度は、特に限定されるものではないが、前述のアルカリ加水分解の温度と同程度であればより操作が簡便となる。【0030】 また本発明において、無機酸の添加は特に限定されるものではないが、そのままでも、水で希釈したものでも適宜選択することができる。本発明において、無機酸は通常の酸アルカリ中和で使用されるもので、有機酸のpKa(酸解離指数)より小さい酸あれば特に限定されることはなく、なかでも塩酸、硫酸が好ましい。無機酸の添加量は、使用したアルカリ化合物とほぼ同価値となる量であるが、厳密には無機酸の滴下によって反応液のpH値が希望する値となる量である。このときの希望する反応液のpH値は、5から10の範囲で任意の値を選択することができる。また、無機酸を添加するときの温度は−10〜100℃が好ましいが、特に0〜60℃がより好ましい。【0031】このようにして製造された有機酸とアミンの複合塩の単離取得方法は、目的に応じて適宜選択することができ特に限定されるものではないが、濃縮や再結晶などの方法がある。溶媒として水のみを使用した場合は、pH値調整後の反応液を冷却するだけで有機酸とアミンの複合塩を析出させ分離することができる場合もある。【0032】【実施例】水酸化ナトリウム3.0g(75.6mmol)と水24.2gの溶液を80℃に加熱し、これに4-ドデカノリッド(4-オクチル-4-ブタノリッド)5.0g(25.2mmol)を滴下し,1時間反応させた。同温度で、(S)-1-フェニル-2-(p-トリル)エチルアミン5.3g(25.2mmol)を添加後、引き続いて10%塩酸で反応液をpH8に調整した。水25gを添加し、室温に冷却した。析出した結晶を濾過し、濾物を水20g、ヘキサン20gで洗浄し、減圧ポンプで乾燥してγ-ヒドロキシドデカン酸と(S)-1-フェニル-2-(p-トリル)エチルアミンの複合塩10.3gを得た。【0033】このようにして得られた複合塩1.0gを、トルエン10g中で加熱して完全に溶解した後、室温で再結晶した。析出した結晶を濾過し、減圧ポンプで乾燥して、γ-ヒドロキシドデカン酸と(S)-1-フェニル-2-(p-トリル)エチルアミンの複合塩0.88gを得た。収率は、4-ドデカノリッドに対して84モル%であった。【0034】水酸化ナトリウム3.0g(75.6mmol)と水24.2gの溶液を80℃に加熱し、これに4-ドデカノリッド(4-オクチル-4-ブタノリッド5.0g(25.2mmol)を滴下し、1時間反応した。氷冷下、10%塩酸で反応液をpH1に調整した。エーテルで抽出し有機相を飽和食塩水で洗浄した。有機相を減圧濃縮し、減圧ポンプにて残渣を40℃で乾燥しγ-ヒドロキシドデカン酸5.4gを得た。【0035】この得られたγ-ヒドロキシドデカン酸全量に、トルエン204.9gと(S)-1-フェニル-2-(p-トリル)エチルアミン5.3g(25.2mmol)を添加し、加熱して完全に溶解した後、室温で再結晶した。析出した結晶を濾過し、減圧ポンプで乾燥して、γ-ヒドロキシドデカン酸と(S)-1-フェニル-2-(p-トリル)エチルアミンの複合塩6.6gを得た。収率は、4-ドデカノリッドに対して61モル%であった。【0036】【発明の効果】本発明によれば、有機酸とアミンの複合塩の製造法において、製造工程の短縮と収率の向上ができ、製造コストの抑制ができ大量製造に相応しくすることができる。この製造法は、特に、鏡像異性体の混合物である有機酸を光学分割するためにジアステレオマー法を実施する際の、ジアステレオマー誘導体の1つである有機酸と光学活性アミンの複合塩の製造法に有利に用いられる。これらの複合塩は、香料および医薬などの各種化学原料中間体として有用である。 有機酸とアミンの複合塩を製造する方法において、一般式(III) ・・・(III)(式中、nは1〜3の整数、R1は炭素数1〜9の飽和あるいは不飽和の脂肪族基、R5は有機残基)で示されるエステル類、または一般式(IV) ・・・(IV)(式中、nは1〜3の整数、R1は炭素数1〜9の飽和あるいは不飽和の脂肪族基)で示されるラクトン類をアルカリ加水分解した反応液に光学活性アミンを添加後、無機酸を添加して水素イオン濃度をpH値で5〜10に調整することを特徴とする有機酸とアミンの複合塩の製造方法。 前記アミンが、一般式(I) ・・・(I)(式中、R2は水素または有機残基、R3は水素または有機残基、R4は不斉炭素が含まれる有機残基)で示される光学活性アミンである請求項1記載の有機酸とアミンの複合塩の製造法。


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