生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_繊維の防虫加工方法
出願番号:1997363301
年次:2008
IPC分類:A01N 63/00,A01N 63/02,A01P 7/04,C12S 3/00,C12S 11/00,D06M 15/15,D06M 16/00,C12P 21/00


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北野 道雄 平石 直子 浜谷 徹 河野 敏明 尾山 和彦 JP 4132165 特許公報(B2) 20080606 1997363301 19971216 繊維の防虫加工方法 愛知県 000116622 河村 博司 598075136 明治製菓株式会社 000006091 北野 道雄 平石 直子 浜谷 徹 河野 敏明 尾山 和彦 20080813 A01N 63/00 20060101AFI20080724BHJP A01N 63/02 20060101ALI20080724BHJP A01P 7/04 20060101ALI20080724BHJP C12S 3/00 20060101ALI20080724BHJP C12S 11/00 20060101ALI20080724BHJP D06M 15/15 20060101ALI20080724BHJP D06M 16/00 20060101ALI20080724BHJP C12P 21/00 20060101ALN20080724BHJP JPA01N63/00 FA01N63/02 EA01P7/04C12S3/00C12S11/00D06M15/15D06M16/00 BC12P21/00 A A01N 63/00 D06M 15/15 D06M 16/00 特開平03−133911(JP,A) 10 FERM BP-6162 1999180811 19990706 11 20041125 太田 千香子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、タンパク質系繊維の防虫加工方法に関し、詳しくはタンパク質系繊維用防虫剤、該防虫剤で処理するタンパク質系繊維の防虫加工方法に関する。さらに詳しくはバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)の菌体(以下、BT菌体と略記することがある。)または該菌が産生する殺虫性タンパク質を有効成分とするタンパク質系繊維用防虫剤および該防虫剤で処理するタンパク質系繊維の防虫加工方法に関する。【0002】【従来の技術】タンパク質系繊維、特に羊毛および獣毛は、しわがよりにくく、型くずれもせず、多孔性であり、柔軟で軽く暖かいという特性を有している。また、該繊維は水分の吸収や発散が徐々に行われる上に、縮充性をもつことからフェルト製品にも利用されている。しかし、タンパク質系繊維であることから、虫害を受けやすいという欠点を有し、絹と並んで特に防虫加工が必要な繊維の代表となっている。【0003】タンパク質系繊維を食害する害虫として、鱗翅目に属するイガ,コイガ,モウセンガ、鞘翅目に属するヒメカツオブシムシ,ヒメマルカツオブシムシ等が知られており、幼虫時期に該繊維に対して加害する。これらの害虫のうち、ヒメカツオブシムシは日本に古くから定着しており、ヒメマルカツオブシムシは世界中に広く分布しており、これらは共に羊毛および獣毛産業に甚大な損害を与えている害虫である。【0004】これらのタンパク質系繊維を食害する害虫の防除法としては、大別すると、清掃等により害虫に生育環境を与えないこと、CA(Controlled Atmosphere)もしくは低温保管法、または高温処理法等の保管条件に留意する方法、さらには防除薬剤を用いる方法等がある。防除薬剤には予防剤と駆除剤があり、予防剤の具体例としては、昇華性防虫剤(パラジクロルベンゼン,ナフタリン,樟脳等)、蒸散剤(エムペンスリン,アレスリン,ジクロルボス等)、防虫加工紙(アレスリン,ペルメトリン,ダイアジノン,フェニトロチオン等)、防虫加工剤(ミッチンFF,オイランU33,ガードナ,アレスリン,ペルメトリン等)が挙げられる。また、駆除剤としては薫蒸剤(臭化メチル,リン化水素,酸化エチレン等)、燻煙剤(フェニトロチオン,ペルメトリン等)、接触殺虫剤(フェニトロチオン,フェンチオン,クロルピリホスメチル,ジクロルボス,ダイアジノン,ペルメトリン等)が知られている。【0005】上記した予防剤の中で防虫加工剤は、衣類やカーペット等のタンパク質系繊維製品の防虫対策の1つとして、製品の製造段階や製品の洗濯・クリーニング後に使用されるものである。この防虫加工剤として、従来よりディールドリン系化合物が用いられてきたが、人畜および魚類に対する毒性の問題から事実上使用禁止となっている。そのため、現在ではハロゲン化ジフェニル尿素誘導体(ミッチンFF)、ホスホニウム系化合物(オイランU33)、フェニルホスフェート系化合物(ガードナ)、ピレスロイド系化合物(アレスリン)等が主として用いられている。しかし、上記防虫加工剤よりもさらに人畜に対する毒性が少なく、かつ耐久性に優れた防虫加工剤の開発が求められており、含臭素有機化合物,含珪素有機化合物や界面活性剤等が研究されているが、特に人体に対する低毒性という観点からは十分に満足すべきものは得られていない。【0006】一方、羊毛および獣毛の防虫加工処理は、染色工程、スカーリング(洗い)工程、ヤーンフェルティング工程、バッチ式溶剤工程等において行われている。このうち染色工程における防虫加工処理は、染色浴中に防虫剤(防除薬剤)を添加し、染料と共に該防虫剤を羊毛および獣毛に付与するものである。また、スカーリング工程での該処理は、防虫剤を連続洗い工程の最終段階で投入し、羊毛等に付着させる方法である。これらの工程における防虫剤の付与は、経済的に優れているため、最も多く実施されている。これらの方法において、固着力の小さい防虫剤を上記の工程で使用するためには、適当な固着剤と混合して用いることが必要である。しかし、人畜および環境に悪影響がないという観点において、十分に満足すべき薬剤および方法は知られていないのが実情である。【0007】また、ヤーンフェルティング工程での防虫加工処理は、防虫剤の吸着が不均一になったり、特別な加工処理用容器の設置が必要になる場合がある。その上、この方法はフェルト時のみに適用される特殊な工程である。また、バッチ式溶剤工程は、特殊な防虫加工剤を用いるため、ドライクリーニング溶剤を使用して行う特別な方法である。しかも、この方法では溶剤を使用するため、人畜や環境面への悪影響が懸念される。【0008】【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、人畜および環境に悪影響を及ぼすことなく、タンパク質系繊維に防虫性を付与する手段の開発を目的とする。すなわち、人畜や環境に悪影響を及ぼすことなく前記害虫を有効に防除することができるタンパク質系繊維用防虫剤並びに該防虫剤を用いてタンパク質系繊維に防虫性を付与する方法を開発することである。【0009】本発明では、BT菌体または該菌が産生する殺虫性タンパク質を防虫剤として使用する。BT菌体は、1901年にカイコに対する病原菌として初めて分離されたものであり、結晶状の殺虫性タンパク質を産生することが知られている。該タンパク質は、昆虫の体液中に接種されても無毒であり、昆虫によって食下され、消化されることによって初めて毒性を発揮する。その上、BT菌体や殺虫性タンパク質は非常に特異性が高く、特定の昆虫に対して殺虫活性を示すため、人畜に対する安全性が高い。このような特性を有していることから、BT菌体は生物農薬の1種として使用されており、生菌剤をアブラナ科野菜などの生食用野菜に利用することが認可されている。しかしながら、タンパク質系繊維を食害するカツオブシムシ類に対して効果のあるBT菌体または殺虫性タンパク質は未だ見出されていない。本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、バチルス・チューリンゲンシスSSK−10株(FERM BP−6162)が、カツオブシムシ類に対して強力な防虫活性を有すること、該菌により産生される殺虫性タンパク質も同様な作用を有していること、さらにはこれらを適当な固着に用いる物質(バインダー)と混合して用いることによって、タンパク質系繊維に効果的に固着させることができることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。【0010】【課題を解決するための手段】 請求項1に記載の本発明は、バチルス・チューリンゲンシスSSK−10株(FERM BP−6162)の菌体もしくは該菌が産生する殺虫性タンパク質を有効成分として含有し、カツオブシムシ類に対して防虫効果を有するタンパク質系繊維用防虫剤である。請求項2に記載の本発明は、 バチルス・チューリンゲンシスSSK−10株(FERM BP−6162)の菌体もしくは該菌が産生する殺虫性タンパク質を天然タンパク質に混合または分散させたものを有効成分として含有し、カツオブシムシ類に対して防虫効果を有するタンパク質系繊維用防虫剤である。請求項3に記載の本発明は、天然タンパク質が、羊毛ケラチン、絹フィブロインおよびコラーゲンのうちの少なくとも1種である請求項2記載の防虫剤である。請求項4に記載の本発明は、天然タンパク質が、羊毛ケラチン、絹フィブロインおよびコラーゲンのうちの少なくとも1種にプロテアーゼ処理を施した平均分子量5000〜30000のものである請求項2記載の防虫剤である。請求項5に記載の本発明は、タンパク質系繊維を請求項1または2記載の防虫剤で処理することを特徴とするタンパク質系繊維の防虫加工方法である。請求項6に記載の発明は、タンパク質系繊維をあらかじめプロテアーゼ処理することを特徴とする請求項5記載の方法である。請求項7に記載の発明は、請求項1または2記載のカツオブシムシ類に対して防虫効果を有するタンパク質系繊維用防虫剤を配合することを特徴とするタンパク質系繊維の製造方法である。請求項8に記載の発明は、カツオブシムシ類が、ヒメカツオブシムシおよび/またはヒメマルカツオブシムシである請求項7記載の方法である。請求項9に記載の発明は、請求項1または2記載の防虫剤で処理した、カツオブシムシ類に対して防虫効果を有するタンパク質系繊維である。請求項10に記載の発明は、請求項9記載のタンパク質系繊維を原料として用いた繊維加工品である。【0011】【発明の実施の形態】本発明のタンパク質系繊維用防虫剤は、BT菌体もしくは該菌体が産生する殺虫性タンパク質を有効成分とするものである。BT菌体の中でも、特にバチルス・チューリンゲンシスSSK−10株(FERM BP−6162)が好ましい。BT菌体は、本菌が十分に生育し得る培地を用いて常法により培養することによって得ることができる。BT菌体は、通常乾燥して粉末状として用いる。また、殺虫性タンパク質は該菌体から適当な手段によって分離することにより得ることができる。【0012】BT菌体または該菌体が産生する殺虫性タンパク質の使用量は、その使用目的や対象のタンパク質系繊維の種類などを考慮して適宜決定すればよいが、一般的にはBT菌体を用いる場合は、タンパク質系繊維1kgあたり50〜50000mg、好ましくは200〜10000mg程度、殺虫性タンパク質を用いる場合は、タンパク質系繊維1kgあたり5〜12500mg、好ましくは20〜2500mg程度を目安とすればよい。【0013】BT菌体や殺虫性タンパク質は、単独では十分量をタンパク質系繊維に固着させることができない。そのため、人畜および環境に悪影響を及ぼすことがなく、十分量のBT菌体や殺虫性タンパク質をタンパク質系繊維に固着させるためには固着剤と併用することが好ましい。BT菌体や殺虫性タンパク質をタンパク質系繊維に固着させるための固着剤としては天然タンパク質が有効である。使用できる天然タンパク質には特別な制限はなく様々なものを用いることができるが、例えば羊毛ケラチン、絹フィブロイン、コラーゲン等が好適なものとして挙げられる。特に、天然タンパク質をプロテアーゼにより処理し、平均分子量を5000〜30000にしたものが有効である。平均分子量が30000を超えるものは繊維への固着効率が低くなり、平均分子量が5000未満のものはタンパク質系繊維内部に浸透してしまうため、タンパク質系繊維表面への固着量が低減し、防虫剤を効率よく繊維に固着させることができないので、好ましくない。【0014】これら天然タンパク質を、タンパク質系繊維の各種加工時に、BT菌体や殺虫性タンパク質と共存させることにより、タンパク質系繊維の風合い等を悪化させることなく、しかも人畜や環境に悪影響を及ぼさないで防虫加工を実施できる。防虫剤であるBT菌体もしくは該菌が産生する殺虫性タンパク質を天然タンパク質と組み合わせて用いる場合、その方法には特に制限はなく、例えば両者を混合、好ましくはBT菌体等を天然タンパク質によく分散させたものを、吸尽法やパッド法等によりタンパク質系繊維へ固着させることによって行うことができる。ここで、固着剤である天然タンパク質の使用量には特に制限はないが、例えば吸尽法(染色工業、43(4)、20(1995))では5〜50%o.w.f.、パッド法(染色工業、43(4)、20(1995))では0.1〜10%(w/w)が適当である。なお、タンパク質系繊維をあらかじめプロテアーゼ等により酵素処理を行うことにより、天然タンパク質の固着量を高めることができる。【0015】タンパク質系繊維への上記防虫加工を実施する場合、工程上の制限はなく、スカーリング工程、染色工程、仕上加工工程等の任意の段階で実施することができる。さらに、防虫性を付与するタンパク質系繊維の形態についても制限はなく、繊維状のばら毛やトップ、粗糸、織糸、編糸等糸状のもの、フェルトのような不織布から織物や編地まで加工できる他、縫製品への加工も可能である。このような繊維加工品に対して防虫加工を実施する場合、BT菌体等、好適には固着剤と混合または分散させたものを噴霧したり浸漬すること等により該繊維加工品に固着させればよい。さらに、上記繊維加工品のドライクリーニング時に、ドライクリーニング液に本発明の防虫剤を微量含有させることによって防虫加工を行うことも可能である。【0016】本発明の方法により防虫性を付与したタンパク質系繊維は、ヒメカツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシ等のカツオブシムシ類の食害を著しく低減させることができ、しかも人畜および環境に無害である。その上、本発明の防虫剤並びに固着剤がいずれもタンパク質であるため、これらを固着させる前後でタンパク質系繊維の外観上および風合いの変化が少ない。さらに、固着後の該繊維は強伸度が大きくなるという特徴を有している。しかも、本発明による防虫加工を施したタンパク質系繊維で縫製品等の繊維加工品を製造する場合、縫い目の近辺に発生する縫いじわであるパッカリングの発生を抑えることができ、しわ回復性や寸法安定性が高い上に、形態安定性の優れた繊維製品の製造が可能となる。【0017】【実施例】次に、本発明を実施例等により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。製造例1バチルス・チューリンゲンシスSSK−10(FERM BP−6162)をペプトン2.25%、ブドウ糖0.3%、リン酸一カリウム1.2%、リン酸二カリウム1.5%、硫酸マグネシウム7水和物0.0123%、硫酸マンガン7水和物0.002%、硫酸亜鉛7水和物0.00014%、硫酸第一鉄7水和物0.002%および塩化カルシウム2水和物0.0184%を含有する液体培地で30℃にて2日間培養した。培養物から採取したBT菌体に結晶タンパク質が存在することを顕微鏡観察によって確認した後、常法により遠心分離を行い、集菌した。こうして得た菌体をスプレードライヤーで乾燥して粉末状のBT菌体を得た(以下、BT乾燥物と称する。)。【0018】実施例1JIS 染色堅牢度試験用添付白布(羊毛)を25mm×12.5mmに切断し、この白布に製造例1で得たBT乾燥物または市販されている各種防虫剤の水希釈液0.50.mlをスプレーガン(0.8kg/m2)にて散布した。なお、使用した市販の防虫剤はクロルニコチル系(商品名:アドマイヤー水和剤、日本バイエルアグロケム社製)、合成ピレスロイド系(商品名:アグロスリン水和剤、住友化学工業社製)および有機リン系(商品名:オルトラン水和剤、武田薬品工業社製)である。この白布を一昼夜風乾した後、重量を測定し、直径5cmのプラスチックカップに入れ、5頭のヒメカツオブシムシ幼虫を放虫した。次いで、カップに蓋をして温度25℃、湿度65%の暗黒下で18日の飼育試験を行った飼育終了後、白布の重量を測定し、実験開始時の白布の重量と比較して減量率を求め、これを食害率とした。また、穴評価はIWS法により行い、A:検出可能な損傷がないもの、B:糸あるいは繊維が部分的に切断されているもの、C:小さな穴が少しあるもの、D:幾つかの大きな穴があるもののいずれかに判定した。結果を第1表に示す。表から明らかなように、市販の防虫剤に比べ、BT乾燥物には優れた羊毛の食害抑制効果が認められた。【0019】【表1】【0020】製造例2羊毛1gに8M尿素溶液100mlおよび2−メルカプトエタノール0.5mlを加え、水酸化カリウム溶液でpHを10.5に調整した。この羊毛懸濁液を40℃、100r.p.m.にて72時間旋回振とうした。その後、分画分子量3500の透析チューブ(スペクトラム社製)を用い、72時間透析した。透析終了後、透析チューブ内容液を集め、プロテアーゼN(天野製薬社製)を羊毛重量当たり1%添加し、50℃で80r.p.m.にて2時間処理した。続いて、90℃で10分処理して酵素を失活させ、羊毛分解物を得た。得られた羊毛分解物の分子量分布を液体クロマトグラフ(インテリジェントHPLCシステム/Gulliverシリーズ、日本分光社製)、ゲル濾過カラム(Biofine PO-700K-L カラム、日本分光社製)にて調べたところ、羊毛分解物の平均分子量は22000であった。このものを羊毛ケラチンと称する。【0021】製造例3絹20gに40%塩化カルシウム溶液100mlを加え、5時間煮沸した。その後、分画分子量3500の透析チューブ(スペクトラム社製)を用いて、72時間透析した。次に、透析チューブ内容液を集め、プロテアーゼS(天野製薬社製)を絹重量当たり1%添加し、50℃、80r.p.m.にて2時間処理した。続いて、90℃で10分処理して酵素を失活させた。得られた絹分解物の分子量分布を製造例2と同様にして調べたところ、分子量分布に3つのピークがあり、平均分子量はそれぞれ18000,12300および6000であった。これらを絹フィブロインと称する。【0022】試験例1羊毛布帛(200mm×200mm)にプロテアーゼNL(天野製薬社製)を酵素添加量10%o.w.f.、浴比1:30で添加し、50℃で80r.p.m.の条件で30分間振とう処理した。続いて、90℃で15分処理して酵素を失活させた。この布帛に対し吸尽法またはパッド法により、製造例2で得た羊毛ケラチン、製造例3で得た絹フィブロインまたは平均分子量29000の市販コラーゲン(商品名:HCP M−15、新田ゼラチン社製)を固着させた。使用した天然タンパク質の濃度は、羊毛ケラチン2.63%、絹フィブロイン3.85%、コラーゲン5.00%とした。【0023】吸尽法は、固着剤使用量50%o.w.f.、浴比1:30、処理温度50℃、処理時間30分の条件で振とう培養機(120r.p.m.)を用いて実施した。また、パッド法は、固着剤濃度5%(w/w)で、ピックアップ率80%(マングル絞率)で行った。続いて、加熱固着は乾熱加熱法(90℃で30分)または湿熱加熱法(バキューム6分、スチーム80℃で30分、バキューム6分)で行った。羊毛布帛への天然タンパク質の固着量は、処理前後における羊毛布帛の重量変化を絶乾法により測定して求めた。すなわち、試料を温度105±2℃の乾燥機中に放置して恒温に至らせることにより求めた。その結果、第2表に示したように、すべての試験区で羊毛布帛への天然タンパク質の固着が認められた。特に、羊毛ケラチンおよび絹フィブロインはプロテアーゼNLによる酵素処理を行うことにより固着量が高まること、固着方法としては吸尽法よりもパッド法が高い固着量を示すことが分かった。なお、表中のE0はプロテアーゼNLによる酵素処理を行わなかったもの、E10は酵素処理を行ったもの、Qは吸尽法、Pはパッド法を表している。【0024】【表2】【0025】試験例2製造例2で得た羊毛ケラチン、製造例3で得た絹フィブロインおよび平均分子量29000の市販コラーゲン(商品名:HCP M−15、新田ゼラチン社製)を固着剤として用い、羊毛糸の強伸度を測定した。まず、前記固着剤を梳毛糸(2/60)に対して20%o.w.f.添加し、試験例1と同様に吸尽法で固着させた。続いて、湿熱加熱法(バキューム6分、スチーム80℃で30分、バキューム6分)で加熱固着させた。このようにして得た固着剤を固着させた羊毛糸の強伸度を、JIS L1095 7.5.1 (定速伸長型)に従って求めた。結果を第3表に示す。第3表に示すように、天然タンパク質を付着させることにより羊毛糸の強力および伸度が向上した。【0026】【表3】【0027】試験例3製造例2で得た羊毛ケラチンを固着剤として用い、試験例1と同様にパッド法(固着剤濃度5%(w/w))および乾熱加熱法(90℃で30分)により、製造例1で得たBT乾燥物をJIS 染色堅牢度試験用添付白布(羊毛)に8%濃度で付着させた。このBT乾燥物が付着した羊毛を590℃で3秒間の熱分解処理(JHP−22型キュリーポイントパイロライザー、日本分析工業社製)を行った後、ガスクロマトグラフ(GC−14APTF、島津製作所製)により分析した。なお、対照として酵素処理のみの羊毛および固着剤を使用せずBT乾燥物を固着処理した羊毛についても同様に分析した。結果を図1に示す。図は、熱分解ガスクロパイログラムである。図中のAとBは対照区で、Aは酵素処理のみの羊毛、Bは固着剤を使用せずBT乾燥物を固着処理した羊毛を示し、Cは試験区の羊毛を示す。また、対照区の固着剤を使用せずBT乾燥物を固着処理した羊毛について、JIS L 0217 105法により10回洗濯した後のものについても同様に熱分解ガスクロパイログラムで分析した。結果を図2に示す。図1Cに示すように、試験区の場合は羊毛にBT乾燥物が固着していることが確認された。また、図2に示すように、固着剤を使用せずBT乾燥物を付着処理した羊毛を10回洗濯した後は、BT乾燥物の残存が認められなかった。これに対して、図示していないが、試験区(C)の場合は、同様に洗濯した後においても、洗濯前と同等量のBT乾燥物が残存しており、強固に固着していることが確認された。【0028】実施例2本発明により毛織物を試作し、縫製することにより製品化する実用化試験を行った。原反には、経糸に梳毛糸(番手:2/72)、緯糸に梳毛糸(番手:1/40)を用いたカルゼ組織の毛織物を洗絨や煮絨等の標準的な整理方法で処理した後、酵素処理をプロテーゼNL(天野製薬社製)を10%o.w.f.用いて、50℃で30分間液流染色機で行った。続いて、酵素の失活処理を兼ねてレベリングタイプの酸性染料により反染めを行った。染色条件は、染料がサンドブルー E−HRNL(サンド社製)を0.037%o.w.f.、サンドイエロー E−2GSN(サンド社製)を0.253%o.w.f.、サンドレッド E−HU(サンド社製)を3.4%o.w.f.、助剤として無水亡硝(四国化成社製)を8%o.w.f.、濃硫酸(関東化学社製)を2.5%o.w.f.、アラボンSCN−150(バイエル社製)を1.0%o.w.f.用い、100℃で50分間染色した。さらに、染色終了後に防虫加工を施した。加工条件は、製造例1で調製したBT乾燥物の0.5%溶液を5%o.w.f.用いて、試験例1と同様に吸尽法で布に固着させた。このとき、布へのBT乾燥物の固着効果を上げる目的で、製造例2で得た羊毛ケラチンの加水分解物(平均分子量22,000)を5%o.w.f.加工浴に添加した。防虫加工終了後の布は、固着処理加熱を兼ねた乾燥を行った後、シャーリング、蒸絨等の整理を施して防虫加工生地に仕上げた。【0029】次に、上記の防虫加工したタンパク質系繊維の生地を原料として、婦人用スーツ上下を試作した。この生地の風合いはソフトでしなやかであるため、縫い目のパッカリングが発生しにくく、結果として可縫性が優れた、仕立てばえのよい縫製品を作成することができた。さらに、本発明の防虫加工法はタンパク質のみを用いているため、繊維製品を作成した場合に、シワ回復性や寸法安定性が高く、形態安定性の優れた繊維製品の製造が可能となった。【0030】【発明の効果】本発明によりバチルス・チューリンゲンシスの菌体もしくは該菌が産生する殺虫性タンパク質を有効成分とした防虫剤が提供され、この防虫剤でタンパク質系繊維を処理することにより、カツオブシムシ類に対して防虫効果を有するタンパク質系繊維を製造できる。その上、防虫加工したタンパク質系繊維の外観や風合の変化が少なく、強伸度が大きくなる特徴を有している。本発明の防虫剤は、人畜および環境に悪影響を及ぼすことなく害虫にのみ高い毒性を発揮する。この防虫剤を固着作用のある天然タンパク質と混合または分散して用いることにより、繊維への固着性が改善される。【図面の簡単な説明】【図1】 Aは酵素処理のみの羊毛、Bは固着剤を使用せずBT菌体の固着加工をした羊毛、Cは固着剤を使用してBT菌体の固着加工をした羊毛の、それぞれの熱分解ガスクロパイログラムである。【図2】 BT菌体の固着加工をした羊毛(固着剤不使用)の洗濯後の熱分解ガスクロパイログラムである。 バチルス・チューリンゲンシスSSK−10株(FERM BP−6162)の菌体もしくは該菌が産生する殺虫性タンパク質を有効成分として含有し、カツオブシムシ類に対して防虫効果を有するタンパク質系繊維用防虫剤。 バチルス・チューリンゲンシスSSK−10株(FERM BP−6162)の菌体もしくは該菌が産生する殺虫性タンパク質を天然タンパク質に混合または分散させたものを有効成分として含有し、カツオブシムシ類に対して防虫効果を有するタンパク質系繊維用防虫剤。 天然タンパク質が、羊毛ケラチン、絹フィブロインおよびコラーゲンのうちの少なくとも1種である請求項2記載の防虫剤。 天然タンパク質が、羊毛ケラチン、絹フィブロインおよびコラーゲンのうちの少なくとも1種にプロテアーゼ処理を施した平均分子量5000〜30000のものである請求項2記載の防虫剤。 タンパク質系繊維を請求項1または2記載の防虫剤で処理することを特徴とするタンパク質系繊維の防虫加工方法。 タンパク質系繊維をあらかじめプロテアーゼ処理することを特徴とする請求項5記載の方法。 請求項1または2記載のカツオブシムシ類に対して防虫効果を有するタンパク質系繊維用防虫剤を配合することを特徴とするタンパク質系繊維の製造方法。 カツオブシムシ類が、ヒメカツオブシムシおよび/またはヒメマルカツオブシムシである請求項7記載の方法。 請求項1または2記載の防虫剤で処理した、カツオブシムシ類に対して防虫効果を有するタンパク質系繊維。 請求項9記載のタンパク質系繊維を原料として用いた繊維加工品。


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