タイトル: | 特許公報(B2)_薬物の苦味の隠蔽経口剤 |
出願番号: | 1997284268 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | A61K 47/02,A61K 9/08,A61K 9/107 |
原田 努 鵜飼 宏治 JP 3770515 特許公報(B2) 20060217 1997284268 19971002 薬物の苦味の隠蔽経口剤 エーザイ株式会社 000000217 原田 努 鵜飼 宏治 20060426 A61K 47/02 20060101AFI20060406BHJP A61K 9/08 20060101ALI20060406BHJP A61K 9/107 20060101ALI20060406BHJP JPA61K47/02A61K9/08A61K9/107 A61K 47/00-48 A61K 9/00-72 CA(STN) 特開昭63−243035(JP,A) 特開平09−143065(JP,A) 特開平07−126188(JP,A) 特開昭47−030826(JP,A) 特開平05−017362(JP,A) 特開昭52−041214(JP,A) 特開平02−036130(JP,A) 2 1999106354 19990420 5 20030227 上條 のぶよ 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、薬物の不快な味を隠蔽した経口剤に関する。【0002】【発明の背景及び従来技術】投与剤の剤形の一つとしてシロップ等の経口液剤が知られており、小児、老人等に適した剤形として広く使用されている。シロップ剤は、甘味を有する剤形であるが、溶解する薬物が不快な味を有していると、単に甘味だけでは隠蔽できず服用し難く、コンプライアンスも低下する。【0003】一方、不快な味を有する薬物のマスキングには多くの技術が開発されている。例えば、顆粒剤を水溶性の皮膜によりコーティングする方法、融点40℃〜100℃のワックス類を溶融し、その中に不快な風味を呈する薬物を分散後、固化させて散剤などを得る方法等が知られている。【0004】【発明が解決しようとする課題】不快な味を有する薬物のマスキングを目的として前述のような多くの技術が検討されているが、多くは固形薬剤に関するものであり、経口用液剤に適用できるものは知られていない。【0005】【課題を解決するための手段】本発明は、不快な味を有する薬物に無水ケイ酸を配合して成る、不快な味を隠蔽した経口剤である。【0006】本発明における、不快な味を有する薬物としては、例えば、塩酸ドネペジル、塩酸ビフェメラン、塩酸ホモクロルシクリジン、塩酸ブナゾシン又はビタミンB1 、B2 、B6 、パントテン酸カルシウム、ニコチン酸アミド、或いはそれらの誘導体、並びに塩酸チクロピジン、塩化ベルベリン、ジギトキシン、スルピリン、塩酸アゼラスチン、塩酸エチレフリン、塩酸ジルチアゼム、塩酸プロプラノロール、クロラムフェニコール、アミノフィリン、エリスロマイシン、フェノバルビタール、パントテン酸カルシウム、塩酸インデロキサジン、塩酸アミノグアニジンなどを挙げることができる。これらのうち、特に、塩酸ドネペジルの場合に優れた効果を奏する。塩酸ドネペジルは、次の構造式【0007】【化1】【0008】によって表される1−ベンジル−4−(5,6−ジメトキシインダノン−2−イル)メチルピペリジン塩酸塩である。このものは、軽度から中等度のアルツハイマー治療剤であるが、その水溶液は激しい苦味、口腔内のしびれがある。【0009】本発明者等は鋭意検討の結果、意外にも、不快な味を有する薬物に無水ケイ酸を配合することにより、不快な味が顕著に隠蔽されることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明においては、隠蔽剤として無水ケイ酸を使用するものである。【0010】無水ケイ酸の製法には、気相法と液相法とが知られている。気相法による製剤(気相製)は特に軽質無水ケイ酸と称されている。代表的にはアエロジル(Aerosil)が、市場で入手可能である。これら軽質無水ケイ酸は従来、例えば、軟膏などの増粘剤、乳化液の安定剤として使用されている。しかしながら、経口用液剤として不快な味を有する薬物に配合した場合に、その不快な味を隠蔽する作用、効果があることについての記載は皆無である。【0011】本発明における経口剤とは、溶液又はゼリーとして経口的に服用される剤形を意味し、溶液の具体例としてはシロップ剤、エリキシル剤、乳剤等を挙げることができるが、シロップ剤が特に好ましい。【0012】シロップ剤とは、白糖の溶液又は白糖、その他の糖類若しくは甘味剤を含む医薬品を比較的濃稠な溶液又は懸濁液などとした液状の内用剤であり、通常、白糖やその他の甘味剤の溶液又は単シロップに医薬品を加えて溶解、混和、懸濁又は乳化し、必要に応じて混液を煮沸した後、熱時濾過して製造する。【0013】エリキシル剤とは、通常、甘味及び芳香のあるエタノールを含む澄明な液状の内用剤であり、通常、医薬品にエタノール、精製水、芳香剤及び白糖、その他の糖類又は甘味剤を加えて溶かし、濾過又はその他の方法によって澄明な液を製する。【0014】ゼリー剤とは、あらゆる溶媒に不溶の三次元網目構造をもつ高分子およびその膨潤体(高分子学会編新版高分子辞典)であり、多量の溶媒を吸収した膨潤ゲルは固体と液体の中間の物質形態であり、その組成や種々の要因によって粘性のある液体からかなり固い固体にまで変化する。ゼリーには寒天ゼリー、ゼラチンゼリー、ペクチンゼリー等がある。【0015】本発明に係る経口用者への投与方法は特に限定されず、薬物の性質により、食前、食後又は食間に1日当り1から3回経口的に投与することができる。【0016】本発明における、薬剤と、無水ケイ酸(隠蔽剤)の割合は、一般に、薬剤1重量部に対し、隠蔽剤25から70重量部であり、好ましくは40から70重量部である。【0017】不快な味を隠蔽した経口液剤中の薬剤の濃度は、一般に0.2から50mg/ml である。例えば、塩酸ドネペジルの場合は、その濃度は1〜2mg/ml 又はゼリー剤の場合は1〜2mg/gが好ましい。【0018】また本発明に係る不快な味を隠蔽した経口液剤の製造方法は、特に限定されず、薬剤及び隠蔽剤を水に溶解して製造することができる。更に、ショ糖、マンニトール、グルコース、アスパルテーム、ソルビトール、グリシン、サッカリン等の甘味剤、バニラエッセンス、ストロベリーエッセンス、オレンジエッセンス、グレープエッセンス、アップルフレーバー等の矯味剤等を加えることもできる。【0019】【発明の効果】 本発明に係る経口液剤は、薬剤特有の苦味、しびれ、収斂性等の不快な味が隠蔽されているため、非常に服用し易く、特に幼児、老齢者のコンプライアンスが向上する。本発明に係る経口液剤が、不快な味を隠蔽するメカニズムは次のように考えられる。即ち、水溶液中の不快な味を有する薬物が、隠蔽剤と相互作用を起こし、溶液中の遊離体が減少することにより、舌の苦味レセプターへの結合率を減少させると共に、しびれの発現も低減させるものと考えられる。【0020】試験例11mg/ml の塩酸ドネペジル水溶液を調整し、その10mlにアエロジル400mgを溶解後、2名の被験者が全量を口に含み、苦味と、しびれの程度を5段階で評価した。結果を表1に示した。表1により明らかなように、隠蔽剤の添加によって塩酸ドネペジルの苦味は顕著に抑制された。【0021】【表1】【0022】【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。【0023】実施例1塩酸ドネペジル1gを精製水約100gに溶解した。別途、アエロジル40g、クエン酸ナトリウム5gおよびアスパルテーム(パルスイートダイエット)3gを精製水300gに溶解した。次いで、両溶液を均一になるまで混合した。さらにメチルパラベン1g及びプロピルパラベン0.1gをプロピレングリコール10gに溶解し、これを主薬溶液にゆっくり添加した。赤色40号3mgおよびストロベリーエッセンス0.5gを加えた後、クエン酸を用いpH5に調整し、最後に総重量500gになるように精製水で調整したペースト状のシロップを製造した。【0024】実施例2塩酸ドネペジル1gを精製水約50gに溶解した。別途、アエロジル12.5g、アルギン酸ナトリウム15g、クエン酸ナトリウム5gおよびソルビトール125gを精製水250gに溶解した。次いで、両溶液を均一になるまで混合した。さらにメチルパラベン1g及びプロピルパラベン0.1gをプロピレングリコール10gに溶解し、これを主薬溶液にゆっくり添加した。赤色40号3mgおよびストロベリーエッセンス0.5gを加えた後、クエン酸を用いpH5に調整し、最後に総重量500gになるように精製水で調整し、ゼリー剤を製造した。 不快な味を有する薬物、および薬物1重量部に対して25〜70重量部の無水ケイ酸を配合した液剤、ペ−スト剤、ゼリー剤、シロップ剤、エリキシル剤または乳剤である経口剤。 不快な味を有する薬物に、薬物1重量部に対して25〜70重量部の無水ケイ酸を配合し、液剤、ペ−スト剤、ゼリー剤、シロップ剤、エリキシル剤または乳剤とする薬物の不快味の隠蔽方法。