タイトル: | 特許公報(B2)_乳幼児用栄養組成物 |
出願番号: | 1997278239 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A23L 1/30,A23C 9/13,A23C 9/152,A61K 31/01,A61P 1/12 |
菅原 牧裕 中埜 拓 佐藤 則文 井戸田 正 JP 3903399 特許公報(B2) 20070119 1997278239 19970925 乳幼児用栄養組成物 雪印乳業株式会社 000006699 児玉 喜博 100105061 菅原 牧裕 中埜 拓 佐藤 則文 井戸田 正 20070411 A23L 1/30 20060101AFI20070322BHJP A23C 9/13 20060101ALN20070322BHJP A23C 9/152 20060101ALN20070322BHJP A61K 31/01 20060101ALN20070322BHJP A61P 1/12 20060101ALN20070322BHJP JPA23L1/30 ZA23C9/13A23C9/152A61K31/01A61P1/12 A23L 1/29 - 1/308 A61K 31/01 JSTPlus(JDream2) 特開平09−002947(JP,A) 特開平08−239658(JP,A) 特開平06−189711(JP,A) 特開平06−205640(JP,A) 1 1999098972 19990413 7 20040622 飯室 里美 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、リコペンを含有することを特徴とする乳幼児用栄養組成物及びその製造方法に関する。本発明により、乳幼児の便性改善、特に緑色便の発生を抑制する栄養組成物が提供され、医薬あるいは食品として有用である。【0002】【従来の技術】ヒトの乳児にとって最良の栄養源は母乳であるが、種々の理由により母乳で育てられない乳児のために、乳児用調製粉乳(調製粉乳)が製造され、提供されている。現在、わが国で用いられている調製粉乳で哺育された乳児(人工栄養児)の発育は、母乳栄養児の発育と同等であることが知られており、この点では調製粉乳と母乳の差は小さいと言える(加藤則子、周産期医学、Vol.22増刊号、340 、1992年)。しかし、母乳には未だ調製粉乳には配合されていない様々な成分が存在し、これが母乳栄養児と人工栄養児の、機能の発達や感染症に対する抵抗性の差になると考えられている。このため、調製粉乳の生理的な機能をも母乳に近づけようとする努力が現在も続けられている。例えば、母乳中の微量成分を分析し、その機能を解明する研究とともに、これらの成分を自然界より抽出し活用する技術開発がなされてきた。これらの研究により、現在販売されている育児用粉乳は、感染防御に関与するシアル酸や、必須脂肪酸であるDHA、γ−リノレン酸の配合などにより、機能的にも母乳に近づいてきている。【0003】しかし、母乳栄養児と人工栄養児の便性状が異なることが指摘されている。便は乳児の健康状態を示す指標であり、色、形状、臭いなどの観察が日常的に行われている。この中で、例えば便の色は母乳栄養児では黄色が優勢であるのに対し、人工栄養児では緑色便の発生頻度の高いことが指摘されている(Weaver L.T. et al., J. Pediatr. Gastroenterol. Nutr., 7, 568 (1988) ;山本及び米久保、小児保健研究、52、465 、1993年)。緑色便の発生には腸内細菌叢が深く関わっており、人工栄養児の腸内ビフィズス菌を増やし母乳栄養児と同等にすることで、便性状の改善を図る方策がなされてきた。例えば、フラクトオリゴ糖の配合(特開平3−266937号)が開示されている。しかしこの場合も、乳児の緑色便を完全に改善することはできていないのが実状である。さらに、多価不飽和脂肪酸の一種であるDHAを配合した際に、β−カロチン単独あるいはβ−カロチンとラクトフェリンをともに添加することで、緑色便の発生を抑制する試みもなされている(特開平6−205640号)。しかし、この場合もDHAを配合していない調製粉乳やアレルギー疾患用の蛋白質加水分解粉乳に対する効果は示されておらず、完全な解決には至っていない。【0004】リコペンはカロテノイドの一種類であり、非常に強い一重項酸素除去能を有することが知られている。母乳中のリコペンを含むカロテノイド含量は、表1に示すように、カロテノイドを配合していない従来の調製粉乳と比較して、著しく多いことが知られている。【0005】【表1】【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、乳幼児の便性を改善する物質を求めて鋭意探索の結果、母乳中に微量に含まれるカロテノイドの一種であるリコペンが、緑色便発生に対し優れた抑制活性を有することを見出した。従って本発明は、リコペンを含有することを特徴とする乳幼児用栄養組成物、及びその製造方法を提供することを課題とする。【0007】【課題を解決するための手段】本発明は、リコペンを含有することを特徴とする乳幼児用栄養組成物に関する。本発明により、乳幼児の便性改善、特に緑色便発生を抑制する栄養組成物が提供され、医薬あるいは食品として有用である。【0008】【発明の実施の形態】本発明の乳幼児用栄養組成物は、固形状、液状、粉末状あるいはゲル状などの使用しやすい形態であればその形態は特に限定されないが、特に乳幼児用として調製された調製乳、蛋白質分解乳、特殊栄養調製乳あるいは幼児用として調製された離乳食や食品であり、またこれらの乾燥粉末化された粉乳類や離乳食として用いることが好ましい。又、乳幼児が摂取するアイスクリーム、発酵乳、ゼリーなどの一般食品であってもよい。本発明で用いられるリコペンは、微生物、植物等の天然物起源の物質、化学的または生化学的に合成された物質などいずれであっても使用することができる。天然物からリコペンを調製する方法としては、例えばトマトジュース中のパルプからアセトンおよびベンゼン抽出し、これをHPLCで精製する方法が知られている(東医大誌、43、21、1985年)。又、パーム油カロチンのように、リコペンと他のカロテノイドとの混合物であってもよい。植物からのカロテノイド類の調製法としては、例えばリコペンを3〜5重量%含有するパーム油カロチンの調製法(特開平6−189711号)などが挙げられる。本発明の栄養組成物に配合されるリコペンの量は、好ましくは乳幼児に供される栄養組成物の全固形分100g当たり5μg以上であり、特に好ましくは全固形分100g当たり10μg以上である。又、リコペンの過剰摂取による弊害は知られていないが、母乳中のリコペン含量が240μg/100ml以下であることことから、栄養組成物の全固形分100g当たり1800μg以下が好ましい。又、β−カロチンと併用することにより、作用が増強される。この時、全固形分100g当たりのリコペン含量が2μg以上かつβ−カロチン含量は30μg以上であることが好ましい。さらに母乳のβ−カロチン含量が230μg以下であることから、本発明の栄養組成物に添加するβ−カロチン量は栄養組成物の全固形分100g当たり1.8mg以下が好ましい。本発明のリコペンは、製造工程の任意の段階で他の原材料あるいは製品に配合することができるが、これらカロテノイド類は水には溶解しにくい特性を有するので、任意の油脂に溶解した後配合することが好ましい。【0009】本発明の栄養組成物は、蛋白質、脂質、糖質、ビタミン類およびミネラル類を主成分として構成されるが、これらの成分とともにリコペンが、さらに必要に応じさらにβ−カロチンが配合される。本発明栄養組成物を構成する蛋白質としては、脱脂乳、カゼイン、チーズホエー、ホエー蛋白質濃縮物(WPC)、ホエー蛋白質分離物(WPI)等の乳蛋白質や、これらの分画物であるαs−カゼイン、β−カゼイン、α−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリンなどであり、また卵黄蛋白質、卵白蛋白質、オボアルブミン等の卵蛋白質、あるいは脱脂大豆蛋白質、分離大豆蛋白質、濃縮大豆蛋白質などの大豆蛋白質を用いることができる。又、これら以外の蛋白質、例えば小麦グルテン、魚肉蛋白質、畜肉蛋白質、コラーゲンなどの蛋白質を用いてもよい。さらにこれらの蛋白質の分画物や、酸又は酵素で処理したペプチド、あるいは遊離アミノ酸であってもよい。遊離アミノ酸は、窒素源としての目的の他に、特定の生理作用を付与するために用いることもでき、このような遊離アミノ酸として、例えばタウリン、アルギニン、システイン、シスチン、グルタミン等をあげることができる。蛋白質やペプチドあるいは遊離アミノ酸の配合量は、栄養組成物の全固形分当たり5〜30重量%である。脂質としては、乳脂肪、ラード、牛脂および魚油等の動物性油脂、大豆油、菜種油、コーン油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、サフラワー油、エゴマ油、アマニ油、月見草油、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、綿実油などの植物性油脂、微生物の産成する油脂、さらにはこれらの分別油、水添油、エステル交換油などが用いられる。脂質は、その用途によって配合量が異なるが、栄養組成物の全固形分当たり40重量%以下とすることが好ましい。糖質としては、例えばデンプン、可溶性多糖類、デキストリン、ショ糖、乳糖、麦芽糖、ブドウ糖、果糖等の単糖類、6’−ガラクトシルラクトース、4’−ガラクトシルラクトース、フラクトオリゴ糖、ラクチュロース、その他のオリゴ糖類などが挙げられ、又、これら混合して用いても良い。糖質の配合量は、栄養組成物の全固形分当たり40〜80重量%が好ましい。又、アスパルテームなどの人工甘味料を用いても良い。この時、人工甘味料の配合量は、栄養組成物の全固形分当たり0.05〜1.0重量%が適当である。【0010】本発明栄養組成物で用いられるビタミン類及びミネラル類は、「日本国際酪農連盟発行、乳幼児食品を含む特殊用途食品のCODEX規格及び関連衛生作業規則、CAC/VOL/IX−第一版及びSupplement 1,2,3,4(1993)」、「1993年版指定品目食品添加物便覧(改訂第31版)」(食品と科学社発行、及び「届け出制食品添加物・食品素材天然物便覧(第12版)」(食品と科学社発行(1992))に記載されているビタミン類及びミネラル類のうち、栄養組成物に使用可能なものであれば特に限定されないが、リコペンを必須成分とし、その他例えばビタミンA、B類、C、D、E、K類、葉酸、パントテン酸、ニコチン酸アミド、カルニチン、コリン、イノシトール、ビオチンなどが挙げられる。これらの配合量は、栄養組成物の全固形分当たり10mg〜5g重量%が好ましい。又、ミネラル類については、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、鉄、銅、亜鉛、リン、塩素、マンガン、セレン、ヨウ素などが挙げらる。これらの配合量は、栄養組成物の全固形分当たり1mg〜5g重量%が好ましい。さらに本発明の栄養組成物は、上記の成分の他に、栄養組成物に配合することが可能な成分、例えば食物繊維、ヌクレオチド、核酸、フレーバー類、着色料などを配合してもよい。【0011】【実施例】以下の実施例をもって本発明をより詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。【0012】【実施例1】リコペン配合調製粉乳の製造脱脂乳50.4kgに、乳清蛋白質濃縮物(WPC)1.58kgと乳糖9.24kg添加溶解した。これに水溶性ビタミン類(ビタミンB1 、B2 、B6 、B12、C、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、コリン、イノシトール)混合物及びミネラル類(炭酸カルシウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、クエン酸第一鉄ナトリウム、硫酸銅、硫酸亜鉛)混合物をそれぞれ75g添加溶解し、さらに脂溶性ビタミン類(ビタミンA、D、E、K)混合物、並びに5%リコペン溶液(マクテシム ケミカル ワークス社)0.03gを溶解した調製脂肪5.78kgを添加混合した。これらを均質化し、常法により殺菌処理した後、濃縮、乾燥して調製粉乳21kgを得た。得られた調製粉乳中のリコペン含量は、粉乳100g当たり7.0μgであった。【0013】【実施例2】リコペン及びβ−カロチン配合蛋白質加水分解粉乳の製造カゼイン粉末7kgを93kgの温湯に溶解し、pHを3.9に調整した後、56万単位のプロテアーゼM(天野製薬社)を添加し、46℃にて攪拌しながら6時間処理した。この溶液のpHを6.1に調整した後、3,000万単位のペプチダーゼR(天野製薬社)を添加し、46℃にて攪拌しながら16時間処理した。この加水分解処理液100kgに、タピオカ澱粉6kg、デキストリン30kg、ショ糖2.5kg、及び実施例1と同様の水溶性ビタミン類混合物及びミネラル類混合物をそれぞれ0.18kg添加溶解し、さらにパーム油カロチン懸濁液(ライオン社)80mgを添加した実施例1と同様の脂溶性ビタミン類を溶解したサフラワー油5kgを加えて混合した。これらを均質化し、常法により殺菌処理後濃縮乾燥し、蛋白質加水分解粉乳50kgを得た。得られた蛋白質加水分解粉乳の全固形分100g当たりのリコペン含量は2.3μg、及びβ−カロチン含量は30.4μgであった。【0014】【実施例3】ヨーグルトの製造脱脂粉乳10kgを50kgの温湯に溶解し、これに5%リコペン溶液1gを添加、混合した牛乳クリーム1kgを加え、均質化した後常法により殺菌した。これにラクトバチルス ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)及びストレプトコッカス サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)をスターターとして接種し、500ml容の容器に分注し、常法によりヨーグルトを製造した。このヨーグルトのリコペン含量は、製品全固形分100g当たり5.0μgであった。【0015】【試験例1】便性改善効果確認試験・1牛乳16kgに乳清蛋白質(WPC)0.49kgと乳糖2.43kgを添加溶解し、これに水溶性ビタミン類およびミネラル類(実施例1に同じ)を0.04kg添加溶解した。さらに脂溶性ビタミン類(ビタミンA、D、E、K)混合物を溶解した調製脂肪を1.33kg混合して均質化した後、常法に従って殺菌、濃縮、乾燥し、粉乳5.8kgを得た。尚、脂肪当たりのDHA含量が0.15%となるように、調製脂肪に魚油を配合した。この作業を、添加する脂溶性ビタミン中のリコペン(シグマ社)含量を変化させて行い、表2に示すリコペン含量の異なる5種類の調製粉乳を得た。これらの調製粉乳を固形分率13重量%となるように温湯に溶解し、それぞれ試験乳とした。生後3ヵ月以内のカニクイザル30頭を5頭ずつ6群に分け、うち1群には母乳を、残り5群には前述の試験乳1〜5をそれぞれ5日間与えて、目視により便色の評価を実施した。表2に示した結果より、調製粉乳にリコペンを添加することで、緑色便の発生割合は低下し、母乳栄養児の便の色に近づくことが明らかとなった。特にリコペン含量が5.0μg/100g粉乳以上で緑色便発生は全く認められなかった。【0016】【表2】【0017】【試験例2】便性改善効果確認試験・2実施例2で得られた蛋白質加水分解粉乳5.0kgを用い、リコペン及びβ−カロチンを含有する栄養組成物の便性改善効果の試験を行った。尚、添加配合する脂溶性ビタミン類中のリコペン(シグマ社)及びβ−カロチン(日本ロシュ社)含量をそれぞれ表3に示すように変化させ、6種類の蛋白質加水分解粉乳を得た。これら粉乳を固形13重量%となるように温湯に溶解し、それぞれ試験乳6〜11とした。これを試験例1と同様に、30頭のカニクイザルを5頭ずつ6群に分け、それぞれに上記試験乳6〜11を5日間与え、目視により便色の評価を実施した。表3に示した結果より、蛋白質加水分解乳では緑色便の発生が顕著であることが分かった。このような蛋白質加水分解乳においても粉乳固形100g当たり2。0μg以上のリコペンと30μg以上のβ−カロチンを配合することで、緑色便の発生は顕著に抑制され、便性改善効果のあることが明らかとなった。【0018】【表3】【0019】【発明の効果】本発明により、リコペンを含有することを特徴とする乳幼児用栄養組成物が提供される。本発明により、乳幼児の便性改善、特に緑色便発生を抑制する栄養組成物が提供され、医薬あるいは食品として有用である。 5〜30重量%(全固形分当たり)の蛋白質、40〜80重量%(全固形分当たり)の糖質、10mg〜5g(全固形分100g当たり)のビタミン類及び1mg〜5g(全固形分100g当たり)のミネラル類を含み、かつ40重量%(全固形分当たり)までの脂質を含む乳幼児用栄養組成物に対して、リコペン含有量が2μg〜1800μg(全固形分100g当たり)となるよう配合したことを特徴とする乳幼児用便性改善栄養組成物。