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タイトル:特許公報(B2)_前立腺特異抗原の阻害剤
出願番号:1997278190
年次:2007
IPC分類:A61K 38/55,A61P 13/08,A61P 43/00


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柴田 こずえ 梶原 淳一 平野 和行 JP 3904689 特許公報(B2) 20070119 1997278190 19970924 前立腺特異抗原の阻害剤 日本ケミカルリサーチ株式会社 000228545 竹内 卓 100062498 柴田 こずえ 梶原 淳一 平野 和行 20070411 A61K 38/55 20060101AFI20070322BHJP A61P 13/08 20060101ALI20070322BHJP A61P 43/00 20060101ALI20070322BHJP JPA61K37/64A61P13/08A61P43/00 111 A61K 38/00-55 A61P 13/00 BIOSIS(STN) CAplus(STN) EMBASE(STN) MEDLINE(STN) REGISTRY(STN) SwissProt/PIR/Geneseq JMEDPlus(JDream2) JST7580(JDream2) JSTPlus(JDream2) COHEN, P., et.al.,Jorunal of Clinical Endocrinology and Metabolism,1992年,Vol.75, No.4,p.1046-1053 FIELDER, P.J., et.al.,Growth Regulation,1994年,Vol.1,p.164-172 LEINONEN, J., et.al.,The Journal of Urology,1996年 3月,Vol.155,p.1099-1103 5 1999092397 19990406 7 20030924 特許法第30条第1項適用 平成9年7月25日 社団法人日本生化学会発行の「生化学 Vol.69 No.7 1997」に発表 齋藤 恵 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は前立腺特異抗原の阻害剤に関する。前立腺特異抗原は本来、前立腺癌及び前立腺肥大症患者の血中診断マーカーとしてよく知られているものであるが、近年、同物質がIGF(Insulin−like Growth Factor)結合蛋白3を特異的に分解するために前立腺組織内のIGF濃度が増加し、その結果、前立腺癌の発症や進行あるいは前立腺肥大症に至るとの説が唱えられている。よって、同物質を阻害する薬剤は前立腺癌及び前立腺肥大症の治療に有効であるとの期待が高まっている。【0002】【従来の技術】前立腺特異抗原(=Prostate Specific Antigen)(以下PSAと略称する)は1971年に原らによって人精漿からγ−セミノプロテインとして単離されたが(Jap. J. Legal Med.,25:322, 1971)、その後、Wangらが前立腺組織から精製したものが同一の物質であったこと、本物質が前立腺で特異的に発現していたことから(Invest. Urol.,17:159−163, 1979、Oncology,99:1, 1982)、上記名称で統一されるようになった。また、Wangらは前立腺肥大症、前立腺癌患者においてPSAの血中濃度が上昇することを見い出し(Prostate,2:89−95, 1981)、現在ではPSAが血中診断マーカーとして汎用されている。PSAの生体内での作用については不明な点が多かったが、Wattらはその全アミノ酸配列を明らかにし、PSAがセリンプロテアーゼの1種であるカリクレインのファミリーに属するプロテアーゼであることを示した(Proc. Natl. Acad. Sci. USA,83:3166−3170, 1986)。また、彼らはPSAにキモトリプシン活性があることも明らかにしている。【0003】近年、CohenらやLeeらはPSAの生体内における基質がIGF結合蛋白3であることを示したが(J. Endocrinol.,142:407−415, 1994、J. Clin. Endocrinol. Metab.,79:1367−1372, 1994)、このことから、前立腺癌などで前立腺組織内のPSA濃度が上昇すると選択的にIGF結合蛋白3の分解が起こり、その結果、遊離のIGF量が増加することに起因して前立腺癌、前立腺肥大などの疾患が誘発されるという関係が考えられるようになった。よってPSAの有するプロテアーゼ活性を抑制することができれば前立腺癌、前立腺肥大症などの治療薬になる可能性があるが、そのような試みはこれまで皆無であった。【0004】【発明が解決しようとする課題】前立腺癌、前立腺肥大症患者は近年、増加する傾向にあるが、これらに対して有効な治療薬はまだ例がないことから、特異性が高く、副作用の少ない治療薬の開発が望まれている。よって、本発明者らはPSAの阻害剤の開発が上記目的を達成する一手段になると考え、該阻害剤を探究することにした。【0005】【課題を解決するための手段】本発明者らはPSAによるIGF結合蛋白3の切断部位を明らかにし、その周辺のアミノ酸配列を基に鋭意検討した結果、Gly−Phe−Tyr−Lys−Lys−Lys−Gln−Ser−Argから成るペプチドにPSAの阻害活性があることを見い出し、本研究を確立するに至った。【0006】本発明はGly−Phe−Tyr−Lys−Lys−Lys−Gln−Ser−Argから成るペプチドを最小単位とするPSAの阻害剤に関する。【0007】【実施の態様】本発明者らはヒト尿あるいは精漿から精製したPSAを用い、基質としてヒト組換え型IGF結合蛋白3(以下r−IGFBP3と略称する)を用いてその切断部位を同定した。まず、PSA50μg、r−IGFBP3 20μgを0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に溶解し、37℃で16時間反応させた後、逆相HPLCに供し、PSAにより切断されたペプチド断片を分取した。次に分取した各ペプチド断片のアミノ酸配列を調べたところ、切断部位はArg97、Arg132、Lys198、Lys220、Arg230の5箇所であることがわかった。この結果をさらに確実にするため、切断部位5箇所周辺のペプチドを合成し、それらに対するPSAの切断活性について検討したところ、すべてのペプチドが切断されたことから、上記5箇所はPSAにより特異的に認識、切断される部位であることが確実となった。なお、実験に用いたペプチドは以下の通りであり、実験系としてはPSA10μg、各ペプチド10nmolを0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に溶解し、37℃で16時間反応させた後、逆相HPLCで分析する方法をとった。【0008】ペプチド1:Val(88)−Asn−Ala−Ser−Ala−Val−Ser−Arg−Leu−Arg−Ala−Tyr−Leu−Leu−Pro(102)ペプチド2:Val(127)−Ser−Ser−Thr−His−Arg−Val−Ser−Asp−Pro−Lys−Phe(138)ペプチド3:Leu(194)−Asn−His−Leu−Lys−Phe−Leu−Asn−Val−Leu(203)ペプチド4:Gly(217)−Phe−Tyr−Lys−Lys−Lys−Gln−Ser−Arg(225)ペプチド5:Pro(226)−Ser−Lys−Gly−Arg−Lys−Arg−Gly−Phe−Met(235)【0009】次にこれらのペプチドがPSA活性を阻害するかどうかについて検討した。詳細については実施例で説明するが、PSA活性を測定する基質としてはカリクレインの測定に用いられるPro−Phe−Arg−MCA(4−methylcoumarin amides)を使用し、各ペプチドを共存させた時の残存活性について調べた。その結果、ペプチド4のみがPSA活性を濃度依存的に阻害したことから、本ペプチドがPSAに対する特異的な阻害剤になり得ることがわかった。PSAによるr−IGFBP3の切断部位の内、ペプチド1,2に相当する部分についてはFielderらがすでに報告しているが(Growth Regulation, 1:164−172, 1994)、ペプチド3,4,5に相当する部分は本発明者らが初めて見い出したものである。ペプチド4は9残基のアミノ酸から成るが、N末端側の2残基あるいはC末端側の2残基を欠失したものでは阻害活性がかなり減少したことから、この9残基は必須であると考えられる。【0010】また、PSAはr−IGFBP3を分解し、断片化するが、この過程をSDS電気泳動及びウエスタンブロッティングで確認することができる。この系にペプチド4を添加するとr−IGFBP3の分解が有意に抑制されたことから、本ペプチドはPSA活性をブロックすることにより、r−IGFBP3の分解を実際に抑制することがわかった。ペプチド製剤は生体内に投与するとペプチダーゼで分解されることが多いので、本ペプチドを投与するにはN末端アミノ酸のαアミノ基をアシル化して、たとえば、ベンジルオキシカルボニル(Z)基、アセチル基、t−ブトキシカルボニル(Boc)基、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基などで修飾したり、C末端アミノ酸のカルボキシル基をアミド化あるいはエステル化しておくことが好ましい。【0011】【実施例】次に本発明を実施例の形でさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。【0012】実施例1前記のペプチド1〜5をペプチド合成機432A SynergyTM(Perkin−Elmer Japan, Applied Biosystems社)にて作製し、作製後のペプチドのアミノ酸配列はプロテイン シーケンサー476A(Perkin−Elmer Japan, Applied Biosystems社)により確認した。以下にペプチド4を例に取り、その作製方法について説明する。C末端アミノ酸であるArgを固定したFmoc−L−Arg(Pmc)樹脂(25μmol)をパックしたカラムを取り付け、装置のホイール上にFmoc−L−Ser(tBu),Fmoc−L−Gln(Trt),Fmoc−L−Lys(Boc),Fmoc−L−Lys(Boc),Fmoc−L−Lys(Boc),Fmoc−L−Tyr(tBu),Fmoc−L−Phe,Fmoc−L−GlyのFmocアミノ酸誘導体(各75μmol)をパックしたカラムをこの順に置き、自動合成を行った。ペプチドレジンを50mlのコニカルチューブに入れ、50μlのチオアニソールと50μlのエタンジチオールを加え、最後に900μlのトリフルオロ酢酸(TFA)を加えた。チューブにふたをし、15分ごとに軽く振とうして室温で1時間反応させた。反応終了後、15mlのt−ブチルメチルエーテル(MTBE)を加え、激しく振とうした後、吸引濾過した。さらに10mlのMTBEで数回洗浄した後、膜上に残ったペプチドを2N酢酸で溶解し、吸引濾過した。回収したペプチドを凍結乾燥後、0.1%TFAで平衡化したCosmosil 5C18カラム(ナカライテスク社製)に供し、アセトニトリルの直線濃度勾配により溶出した。精製したペプチドを凍結乾燥後、その一部を上記自動分析機に供して精製ペプチドのアミノ酸配列がGly−Phe−Tyr−Lys−Lys−Lys−Gln−Ser−Argであることを確認した。ペプチド1〜3および5も、同様にしてそれぞれ対応する各Fmocアミノ酸誘導体を用いて自動合成し、その配列を確認した。【0013】実施例2100μMあるいは10μM Pro−Phe−Arg−MCA(ペプチド研究所製)0.1mlを基質としこれと100μMの前記ペプチド(1〜5)0.1mlを0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)0.7mlと混合し、37℃で5分間反応させた後、0.12mg/ml PSA溶液0.1mlを添加した。37℃で3分間、蛍光強度(Ex380nm,Em460nm)を経時的に測定し、直線の傾きから活性値を求めた。また、抑制が見られたペプチドについてはPSAの代わりに40ng/mlカリクレイン溶液0.1mlを添加した場合についても同様の実験を行った。なお、Pro−Phe−Arg−MCA、ペプチド1〜5、PSA及びカリクレインは0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に溶解して用いた。結果を表1に示す。A,B欄がPSAを加えた場合で、Aが基質のPro−Phe−Arg−MCAとペプチドを等モルずつ混合した場合、Bが基質とペプチドを1:10のモル比で混合した時の結果を示しているが、ペプチド4を加えた場合のみ、濃度依存的にPSA活性の抑制が認められた。また、C欄はカリクレインを加えた場合で、基質とペプチドを等モルずつ混合した時の結果を示しているが、ペプチド4はカリクレイン活性も抑制した。この結果はPSAがカリクレインファミリーに属するプロテアーゼである事実と一致している。【0014】【表1】【0015】実施例3PSA 0.57μg、r−IGFBP3(Upstate社製)2.0μgを0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に溶解し、37℃で16時間反応させた試料及びPSA 0.57μg、r−IGFBP3 2.0μg、ペプチド4 4nmolを0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に溶解し、37℃で16時間反応させた試料を各々調製した。各試料を4〜20%グラジェントゲルに供し、非還元下、Laemmliら(Nature,227:680−685, 1970)の条件でSDS電気泳動を行った。泳動後、ニトロセルロース膜に転写し、一次抗体として抗IGFBP3抗体(Biogenesis社製)、二次抗体としてHorseradish peroxidase(HRP)標識抗ウサギ抗体(Promega社製)を用いてウエスタンブロッティングを行った。HRP活性の検出はケミルミネッセンス(Renaissance Western Blot Chemiluminescence Reagent,NENTM Life Science Products社製)により行い、検出された蛋白バンドの定量はデンシトメーターにより行った。【0016】結果を表2に示すが、r−IGFBP3のみを泳動した時に検出される分子量50kDaのバンドを未分解のバンドとし、各試料で検出される50kDaのバンドの面積を測定した。r−IGFBP3のみを泳動した時の面積値に対し、各試料中の50kDaバンドの残存率を算出したところ、ペプチド4を添加した場合では添加しない時と比べ、r−IGFBP3の分解を約30%抑制した。このことから、ペプチド4はPSAの活性を抑制することにより、r−IGFBP3の分解を抑制していることがわかった。【0017】【表2】【0018】【発明の効果】本発明によれば前立腺特異抗原の阻害剤が提供され、それは前立腺癌や前立腺肥大症の治療剤として期待される。 Gly−Phe−Tyr−Lys−Lys−Lys−Gln−Ser−Argから成るペプチドを含む前立腺特異抗原のプロテアーゼ活性の阻害剤。 N末端アミノ酸のアミノ基がアシル化されている請求項1記載の阻害剤。 N末端アミノ酸のα−アミノ基にベンジルオキシカルボニル(Z)基、アセチル基、t−ブトキシカルボニル(Boc)基、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基が導入されている請求項1または2記載の阻害剤。 C末端アミノ酸のカルボキシル基がアミド化又はエステル化されている請求項1または2記載の阻害剤。 N末端アミノ酸のアミノ基がアシル基され、かつC末端アミノ酸のカルボキシル基がアミド化又はエステル化されている請求項1記載の阻害剤。


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