タイトル: | 特許公報(B2)_美白剤および美白化粧料 |
出願番号: | 1997245912 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A61K 8/34,A61Q 19/02 |
小川 進 田村 幸吉 小田 真弓 井元 知子 片岡 志津子 JP 3900388 特許公報(B2) 20070112 1997245912 19970828 美白剤および美白化粧料 丸善製薬株式会社 591082421 小島 隆司 100079304 重松 沙織 100114513 小林 克成 100120721 石川 武史 100124590 小川 進 田村 幸吉 小田 真弓 井元 知子 片岡 志津子 20070404 A61K 8/34 20060101AFI20070315BHJP A61Q 19/02 20060101ALI20070315BHJP JPA61K8/34A61Q19/02 A61K 8/34 A61Q 19/02 BIOSIS(STN) CAplus(STN) MEDLINE(STN) 特開平08−012548(JP,A) 特開平06−107539(JP,A) 特開平03−109319(JP,A) 特開平05−170626(JP,A) 特開平07−025730(JP,A) 特開平07−109225(JP,A) 特開平05−015355(JP,A) 特開平07−082133(JP,A) 特開平10−215813(JP,A) 特開平09−067225(JP,A) 特開平07−025743(JP,A) 特開平09−241128(JP,A) 特開平08−012565(JP,A) 特開平10−310532(JP,A) 特開平10−158177(JP,A) 特開平04−001148(JP,A) 特開平07−002643(JP,A) 特開平03−284612(JP,A) 特開平06−133733(JP,A) 3 1999071231 19990316 8 20040721 原田 隆興 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、新規な美白剤および美白作用を有する化粧料に関するものである。【0002】【従来の技術】人の皮膚の着色、黒化やシミ、ソバカスの増大は、ホルモンの分泌異常や代謝障害等の内的因子によって生じることもあるが、むしろ、太陽光由来の紫外線によって直接または間接的にメラノサイトが刺激され活性化されて生じる場合が圧倒的に多い。すなわち、メラノサイトの活性化により異常産生された生体黒色色素・メラニンが表皮細胞に受け渡されたり皮膚の特定箇所に集中的に蓄えられたりすることによって、皮膚の着色やシミ・ソバカスの増加が進む。【0003】上述のような機構による皮膚の着色、シミ、ソバカス等の増加を防止し白い肌を保つ手段として、従来、メラノサイトにおけるメラニン産生に強くかかわっている酵素・チロシナーゼの活性を阻害する物質の使用が検討され、有効な物質として、ビタミンCおよびその誘導体、コウジ酸、ハイドロキノン、アルブチン、エラグ酸等が確認されている。【0004】しかしながら、これらの薬剤は皮膚を刺激したりアレルギーの原因となったりすることがあるほか、熱や光に対する安定性、保存安定性などが十分でないこともあり、十分満足できるものではなかった。【0005】【発明が解決しようとする課題】そこで本発明の目的は、紫外線による皮膚の着色、シミ、ソバカス等の増加抑制と防止に有効で保存安定性にも優れ、化粧品、医薬品、医薬部外品等へ容易に配合可能な新規チロシナーゼ阻害物質を安全性が高い植物成分中から見いだし、美白剤および美白化粧料として提供することにある。【0006】【課題を解決するための手段】上記目的を達成することに成功した本発明の美白剤は、モノテンペンフェノール誘導体の一種であるバクチオールを有効成分として含有するものである。バクチオールは下記化1の構造を有する常温で無色油状の化合物である。エタノール、メタノール、アセトン、クロロホルム、塩化メチレン、酢酸エチル等によく溶けるが、水にはほとんど溶けない。【0007】【化1】【0008】本発明の美白剤および美白化粧料の有効成分であるバクチオールは、黒色色素メラニンの合成に関与するチロシナーゼの活性を阻害する作用があり、それによりメラニンの生成を抑制し、美白作用を示す。【0009】バクチオールは化学的に合成することも可能であるが、マメ科植物・オランダビユ(Psoralea corylifolia L.)の種子(“補骨脂”の名で生薬として利用されている)に含まれているので、それを上記溶媒で抽出して利用することができる。【0010】但し、補骨脂には光感作作用を有しアレルギーの原因になるフロクマリン誘導体(たとえばプソラレン、イソプソラレン)が含まれていてこれらはバクチオールと共に抽出されて来るので、美白剤中に混入しないよう、抽出物を精製する過程で除去することが望ましい。【0011】補骨脂にはまたフラボノイド類のババキン、ババキニン、イソババキン等が含まれていてこれらはチロシナーゼ活性阻害作用を有することが知られている。これらのフラボノイド類はバクチオールと共に抽出されて来るのでそのまま美白剤構成成分として活用することもできるが、着色物質であるため美白剤の用途を制限することがあり、したがってこれも精製工程で除去することが望ましい。【0012】バクチオールを有効成分とする本発明の美白剤には、それが固形剤の場合、セルロース、デキストリン等の糖類;ソルビトール、マンニトール等の糖アルコール;その他無水硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、カオリン、白土等の無機化合物を賦形剤として、また液剤の場合は、エタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等のアルコール類;各種植物性油脂、鉱物油、ワックス等の油脂類を溶剤として、適宜配合することにより、製剤化作業が容易になると共に製剤も使いやすいものとなる。【0013】本発明の美白剤は、塗布、散布、その他任意の方法で皮膚に適用される医薬品、各種医薬部外品、化粧料等に添加して、皮膚の黒化防止、紅斑防止等のための利用に供することができる。好ましい添加量は、バクチオールとして0.005〜5.0重量%である。その場合、必要ならば他の美白剤その他任意の薬効成分、生理活性物質等を併せて含有させることができる。【0014】本発明の美白剤と併用して化粧料等に含有させることができる生理活性物質等の例としては、プロゲステロン、コルチコステロン、ハイドロコーチゾン、17β-エストラジオール、エチニルエストラジオール、エストロン等のホルモン類;ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ヘパリン、コンドロイチン硫酸類、キチン、キトサン等のムコ多糖類;グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質等の複合脂質;スーパーオキサイドディスムターゼ、カタラーゼ、β−カロチン、油溶性甘草抽出物、グラブリジン、リコカルコンA、バイカリン、バイカレイン、イチョウ抽出物、ソウハクヒ抽出物、クジン抽出物、ハマメリス抽出物その他の活性酸素消去作用を有する物質;アラントイン、グアイヤアズレン、カマアズレン、ステアリルイプシロンアミノカプロン酸、インドメタシン、酸化亜鉛等の抗炎症作用を有する物質;アルニカ抽出物、インチンコウ抽出物、オウゴン抽出物、オウバク抽出物、カミツレ抽出物、カンゾウ抽出物(水抽出物)、サンシシ抽出物、シコン抽出物、シャクヤク抽出物、ボタンピ抽出物、ジュウヤク抽出物、シラカバ抽出物、西洋トチノキ種子抽出物、トウキンセンカ抽出物、ムクロジ抽出物、ローズマリー抽出物、セイヨウノコギリ草抽出物、ヨモギ抽出物、ヨクイニン抽出物、アロエ抽出物、ジオウ抽出物、センキュウ抽出物、サイコ抽出物、ボウフウ抽出物、ヨクイニン抽出物、ヘチマ抽出物等の抗炎症・抗アレルギー作用を有する植物抽出物;コラーゲン、加水分解コラーゲン、エラスチン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、プラセンターエキス、ロイヤルゼリー、コンキオリン加水分解物等の動物性抽出物;レチノール、レチナール、レチノイックアシッド、パントテン酸、パンテノール、リボフラビン、ピリドキシン、トコフェロール、アスコルビン酸、葉酸、ニコチン酸等のビタミン類;核酸およびその塩基類;アミノ酸類;コレステロール類;植物ステロール類;リポプロテイン類;ビフィズス菌発酵物、乳酸菌発酵物、酵母抽出物、レイシ菌糸体抽出物等の微生物由来のもの;グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、ステアリルグリチルレチン酸等のグリチルレチン酸誘導体;α−ヒドロキシ酸等の有機酸;等がある。【0015】バクチオールを含有させる美白化粧料等としては、液剤、軟膏剤、乳液剤、パック剤、ハップ剤、散布剤、石鹸、クリーム、リンス、浴剤等、任意の剤形のものが可能である。それを製造する場合に使用する助剤にも制限はなく、各種動植物性油脂、ワックス、高級脂肪酸、鉱物油、エタノール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール等のアルコール類、界面活性剤、増粘剤、酸化防止剤、防腐剤、香料、着色剤等、通常使用される助剤をいずれも使用することができる。【0016】【実施例】バクチオール抽出・精製例1補骨脂1kgを10リットルの無水エタノールに浸漬し、2時間還流下に加熱した。その後、濾過し、残渣は再び10リットルの無水エタノールに浸漬し、同様に処理した。上記2回の処理で得られた抽出液を合わせて減圧下に濃縮、乾燥し、140.8gの抽出物を得た。【0017】この抽出物に水500mlとクロロホルム500mlを加え、液−液向流分配によりクロロホルム層を得た。水層にはさらに500mlのクロロホルムを加え、同様に2回処理した。クロロホルム層を合わせて減圧下に濃縮し乾燥した結果、127.2gの抽出物を得た(以下、この抽出物を抽出物Aという)。【0018】抽出物A全量を4リットルのシリカゲルカラムに載せ、ヘキサン:酢酸エチル=2:1の混合溶剤7リットルを通液し、通過液を減圧下に濃縮し、固形物30.4gを得た(以下、これを抽出物Bという。バクチオールと共に抽出されたフラボノイド類はここまでの精製で除去された。)。【0019】抽出物B28.7gを5リットルのシリカゲルカラムに載せ、ヘキサン:酢酸エチル=7:1の混合溶剤5リットルを通液したのちカラムを洗浄した(バクチオールと共に抽出されたフロクマリン誘導体はここまでの精製で除去された)。次いで、ヘキサン:酢酸エチル=6:1の混合溶剤5リットルを通液し、通過液を減圧下に濃縮し、淡褐色油状のバクチオール画分8.6gを得た(以下、これをバクチオール画分▲1▼という。)。【0020】バクチオール抽出・精製例2補骨脂200gを90重量%エタノール水溶液2リットルに浸漬し、還流下に2時間加熱した。濾過後、残渣を再び90重量%エタノール水溶液2リットルに浸漬、同様に操作した。得られた抽出液を合わせて減圧下に濃縮し、37.3gの抽出物を得た。この抽出物に50重量%エタノール水溶液を500ml加え、十分に撹拌溶解したのちケイソウ土を濾過助材に用いて濾過し、澄明液を得た。これを、合成高分子吸着体(ダイヤイオンHP−20;三菱化学株式会社製品)500mlを充填したカラムにSV=1で通液し、次にカラムを50重量%エタノール水溶液2.5リットルで洗浄した(バクチオールと共に抽出されたフロクマリン誘導体およびフラボノイド類はここまでの精製で除去された)。【0021】この後、カラムに85重量%エタノール水溶液3リットルを通液し、通過液を減圧下に濃縮して、褐色のペースト状物を得た(収量8.3g;以下、バクチオール画分▲2▼という)。【0022】上記各例の抽出物およびバクチオール画分について、高速液体クロマトグラフィーによりバクチオールおよびプソラレンの定量分析を行なった。分析結果を表1に示す。【0023】【表1】【0024】バクチオール画分▲1▼の一部はさらに精製して、純度99.8%の精製バクチオールを得た。【0025】実施例1前記各例によるバクチオール画分▲1▼,▲2▼および精製バクチオールについて、下記の試験法でチロシナーゼに対する阻害活性を調べた。その結果は表2のとおりであった。【0026】チロシナーゼ阻害活性試験法:0.05%チロシン溶液に試料を溶解した試料溶液0.5ml、チロシナーゼ溶液〔シグマ社製チロシナーゼ製剤(力価3,400unit/mg)の濃度60μg/mlの溶液〕0.7ml、および1/15Mリン酸緩衝液(pH6.8)1.8mlを混合し、37℃で1時間反応させ、475nmにおける吸光度A1を測定する。吸光度A1は、チロシンから生成したメラニン等一連の着色成分の濃度に比例する。試料無添加の場合についても同様に操作して、475nmにおける吸光度A0を測定し、下記の式からチロシナーゼ阻害率を算出する。チロシナーゼ阻害率(%)=(1−A1/A0)×100【0027】試料溶液の試料濃度を段階的に変更して上記阻害率を測定し、阻害率が50%を示す試料濃度を内挿法により求め、それをIC50として表示する。【0028】【表2】【0029】実施例2美白剤として前記バクチオール画分▲2▼を用いた下記処方の本発明クリームおよびバクチオール画分▲2▼を添加しないほかは同様組成の対照品を常法により製造した(数値は重量%)。【0030】【0031】次に、上記クリームA,Bについて下記の方法により美白作用の試験を行なった。【0032】試験法:褐色モルモットの背部を除毛し、そこに0.1%のオクソラレンを塗布し、30分後にPUVAを1J/cm2照射する。PUVAを照射した領域の一部を2cm×2cmの3区画に区切り、そのうちの二つの区画には上記クリームA,Bのいずれか一方をPUVA照射直後と12時間後に塗布する。1区画には何も塗布しない。照射24時間後、生じた紅斑の濃度を肉眼観察により判定する。さらに、上記PUVA照射領域のうち上記紅斑抑制効果確認試験に用いなかった部分で1週間後に色素の沈着が認められた部位を2cm×2cmの3区画に区切り、二つの区画に上記クリームA,Bのいずれか一方を朝夕各1回、7日間連続で塗布する(1区画には何も塗布しない)。クリームの塗布開始から7日後、各区画について色素沈着による着色増加度を肉眼観察で比較し、クリーム塗布開始後も進行する色素沈着がクリームにより抑制された程度を判定する。【0033】試験結果は下記のとおりであった。紅斑抑制効果:無塗布≦クリームB≪クリームA色素沈着抑制効果:無塗布≦クリームB≪クリームA【0034】実施例3下記の原料を乳液製造の常法により均一に乳化させて、美白作用を有する乳液を製造した(数値は製品に対する重量%)。ステアリン酸 2.0セタノール 1.5ワセリン 3.0ラノリンアルコール 2.0流動パラフィン 10.0ポリオキシエチレンモノオレイン酸エステル 2.01.3-ブチレングリコール 3.0グリセリン 2.0トリエタノールアミン 1.0ポリエチレングリコール2000 2.0パラオキシ安息香酸エステル 0.1バクチオール画分▲1▼ 0.05グリチルリチン酸ステアリル 0.1香料 0.1精製水 残量【0035】対照品として、バクチオール画分▲1▼を配合しないほかは同じ組成の乳液を製造した。【0036】上記本発明実施例品および対照品について、下記の方法によりヒト皮膚への使用試験を行なった。試験結果を表3に示す。【0037】試験法:20〜45歳の健康な被験者15名を選び、2日間連続で1日2時間、左右上腕部に直射日光を受けさせた。その後、毎日朝夕の2回、左腕日光照射部の一定区画に本発明品を、右腕日光照射部の一定区画に対照品を、一カ月間塗布させた(この間、試験部位は直射日光を受けないよう衣服で覆わせた。)。この後、乳液を塗布した区画とその周辺の乳液非塗布部を肉眼観察で比較し、乳液による色素沈着抑制効果を下記の判定基準により評価した。【0038】◎:色素沈着がほとんどない。○:非塗布部と比べると色素沈着がかなり少ない。△:非塗布部と比べると色素沈着がやや少ない。×:非塗布部と比べて色素沈着に差がない。【0039】【表3】【0040】バクチオールを配合した本発明品は明らかに色素沈着抑制効果が優れていた。なお、一カ月間の連続塗布によりかゆみ等の皮膚刺激やアレルギー等の症状を訴えた被験者はなく、塗布面皮膚における外観異常も全く観察されなかった。 バクチオールを有効成分として含有することを特徴とする美白剤。 バクチオールを含有する補骨脂有機溶媒抽出物にフロクマリン誘導体およびフラボノイド類を除去する精製処理を施してなるチロシナーゼ阻害物質を有効成分として含有することを特徴とする美白剤。 請求項1または請求項2のいずれかに記載の美白剤を含有することを特徴とする美白化粧料。