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タイトル:特許公報(B2)_モノクローナル抗体、抗体感作コロイド金及び抗体感作コロイド金を用いた抗原の検出方法
出願番号:1997202643
年次:2007
IPC分類:C07K 16/12,C12Q 1/04,C12N 15/02,C12P 21/08,G01N 33/553,G01N 33/569,G01N 33/577


特許情報キャッシュ

三毛 明人 長岡 紀子 大矢 陽子 大脇 眞 JP 3901291 特許公報(B2) 20070112 1997202643 19970714 モノクローナル抗体、抗体感作コロイド金及び抗体感作コロイド金を用いた抗原の検出方法 株式会社ヤクルト本社 000006884 佐藤 正年 100092082 佐藤 年哉 100099586 三毛 明人 長岡 紀子 大矢 陽子 大脇 眞 20070404 C07K 16/12 20060101AFI20070315BHJP C12Q 1/04 20060101ALI20070315BHJP C12N 15/02 20060101ALI20070315BHJP C12P 21/08 20060101ALI20070315BHJP G01N 33/553 20060101ALI20070315BHJP G01N 33/569 20060101ALI20070315BHJP G01N 33/577 20060101ALI20070315BHJP JPC07K16/12C12Q1/04C12N15/00 CC12P21/08G01N33/553G01N33/569 FG01N33/577 B C12Q 1/04 C07K 16/12 C12N 15/02 C12P 21/08 G01N 33/553 G01N 33/569 G01N 33/577 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) CA(STN) PubMed 特開平04−016764(JP,A) 特開平05−017363(JP,A) 特開平06−311894(JP,A) 特開平08−313527(JP,A) 特開平09−005326(JP,A) 特開平09−133684(JP,A) 3 FERM BP-1366 FERM P-16294 1999032791 19990209 14 20030912 深草 亜子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、抗体感作コロイド金を用いた抗原の検出方法、モノクローナル抗体及び抗体感作コロイド金に関するものである。【0002】【従来の技術】近年、生化学等の分野において、モノクローナル抗体やポリクローナル抗体を用いた実験が広く行われている。このような抗原−抗体反応を利用する分析には、その目的に応じて、様々な手法が試みられている。例えば、ELISA法による抗原同定や蛍光標識抗体を用いた生体内のタンパク質局在の確認等がそれである。【0003】抗原の検出を行う場合には、抗体をそのままの状態で使用してもよいが、抗体に種々の操作を施すことでより簡便に検出を行うこともできる。例えば、前記のように抗体を蛍光標識し、その発色を観察する方法、抗体にラテックス粒子を吸着させ、その凝集像を顕微鏡観察で確認する方法などである。【0004】しかしながら、これらの方法には、欠点もあった。即ち、担体の吸着を行っていないモノクローナル抗体を用いると、作業工程が複雑であり、作業時間がかかりすぎてしまう欠点があった。また、感作ラテックスを使用した場合には、自己凝集が起こり難く、短時間で検出を行えるなどの長所はあるが、洗浄時に担体(ラテックス)が固相から引き離されてしまう欠点があった。【0005】一方、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属細菌等の乳酸菌は、ヨーグルト、乳酸菌飲料、チーズなどに代表される発酵乳製品の製造、発酵法による乳酸の生産など様々な分野で利用されている有用微生物である。また、従来から、乳酸菌は腸管内の腐敗防止作用を有することが認識されており、近年では抗ガン作用、免疫賦活作用等種々の生理活性が存在することもわかっている。【0006】しかしながら、乳酸菌の中でも、その菌種、菌株によって菌体成分が与える生理活性に差があることも確かめられている。例えば、同じラクトバチルス・カゼイ菌でもYIT9018株(FERM P-1766株)は抗腫瘍活性が強く、ATCC 7469株は活性が弱い(乳酸菌の科学と技術、p328,1996)。これは、菌体表面のタンパク質、糖鎖等の組成や酵素等の菌体成分の違いに由来しているものと考えられている。【0007】本出願人の保有するラクトバチルス・カゼイYIT9029株は乳酸菌の中でも酸耐性、胆汁酸耐性、ファージ耐性等の製造用菌株としての特性も優れており、更に、抗ガン作用、血圧降下作用、血中コレステロール低下作用、整腸作用等の生体内における種々の生理効果を特に増強する菌株であり、食品や医薬品、化粧品など広範囲な用途が期待されているものである。【0008】このため、この菌株に対しては、生体内での動向や作用の確認など多岐にわたる研究がなされている。そして、その際には培地や糞便中の細菌叢から該菌株を同種又は類似の種の他菌株と区別して、菌株レベルで同定する必要がある。現状では、菌株の同定は、選択培地による選別や表現形質、即ち、糖分解性状、発酵生産物などを検査することにより行われている。また、これに加えてDNA−DNAホモロジーによる判定も行われている。しかし、これらの解析は煩雑で時間がかかり、中には試験者の熟練を要する操作もある。そこで、より迅速且つ簡便に該菌株を検出する方法が望まれている。【0009】ところが、微生物の中でも、同一菌種で菌株の異なる細菌は、表面形質、DNAの塩基配列等が酷似しており、これらを菌株レベルで検出することは困難である。また、菌株レベルの検出を行う場合でも、継代培養により極わずかな性状の違いを有するに至った近縁の菌株群(以下「関連株」と記す)は同一の菌株として認識する必要がある。これは、関連株群に属する菌株の生理活性が各々同等であるためである。【0010】【発明が解決しようとする課題】以上のように、本発明は、求める抗原を、作業工程が複雑でなく、簡便、迅速、確実且つ安価に抗原−抗体反応を利用して検出するに好適な担体及びこれを用いた検出方法を新たに得ることを目的とする。【0011】更に、本発明では、微生物の検出において、特にラクトバチルス・カゼイYIT9029株及びその関連株において、求める微生物及びその関連株以外の属、種、株に属する微生物とは反応せず、ラクトバチルス・カゼイYIT9029株及びその関連株に特異的に結合するモノクローナル抗体を得た上で、これを簡便、迅速、確実且つ安価に抗原−抗体反応を利用して検出するに好適な担体及びこれを用いた検出方法を新たに得ることを別の目的とする。【0012】【課題を解決するための手段】 即ち、本請求項1に記載された発明に係るモノクローナル抗体は、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei) YIT9029株菌体で免疫された動物の抗体産生細胞とミエローマ細胞とのハイブリドーマ細胞L8(FERM P−16294)より得られたものである。【0015】 また、本請求項2に記載された発明に係る抗体感作コロイド金は、請求項1に記載のモノクローナル抗体(クローンL8)に感作させたものである。【0016】 また、本請求項3に記載された発明に係る抗原の検出方法は、請求項2に記載の抗体感作コロイド金を用意し、 被検抗原群に前記抗体感作コロイド金を反応させた後、洗浄して抗体感作コロイド金が固着した赤色の被検抗原を目視により検出するものである。【0017】【発明の実施の形態】一般に、特定の抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体を用いた免疫測定原理は、基本的に競合法と非競合法との2つが知られている。競合法は標識抗原と抗体との平衡系に未標識抗原を加えることにより、平衡系を変化させ、この変化を検出することにより、行われる。また、非競合法は、多くの場合、固相担体に抗体(又は抗原)を固定し、測定する試料抗原(又は抗体)と反応させた後、洗浄操作によって結合した抗原を固相に分離し、標識2次抗体と反応させることにより、結合抗原量を測定する。【0018】この非競合法の担体としては、一般にラテックス粒子が用いられていた。ラテックス粒子へ抗体を感作して感作ラテックスを作製する。ラテックス粒子への抗体の感作は、Tsuda.S.らの方法が知られている(Tsuda,S.et al.,Plant Disease,76,466-469,(1992))。【0019】感作ラテックス作製に使用するラテックス粒子としては、比重が1.0〜1.5g/cc、好ましくは1.5g/cc前後の高比重ラテックス粒子が好適なものとして用いられ、更に、平均粒子径は約0.1〜2.0μm、好ましくは1.0μm前後のラテックス粒子が好適なものとして用いられる。【0020】このようなラテックス粒子としては、例えば、バクトラテックス0.81(Difco社製、平均粒子径0.81μm、比重1.0g/cc)、及びH0901,H0902,H2002(日本合成ゴム社製、平均粒径・比重は、それぞれ、0.94μm・1.5g/cc、0.98μm・1.5g/cc、2.22μm・1.5g/cc)等の市販製品が例示されるが、これに限らず、これらと同効のものであればその種類を問わず使用することが可能である。【0021】これに対して、本発明では、ラテックス粒子を用いず、抗体にコロイド金粒子を吸着して、コロイド金粒子と抗体とを感作した抗体感作コロイド金を用いた。ここでコロイド金粒子とは、沈殿が生じないコロイド状の金粒子(赤色)のことである。感作コロイド金の作製に用いる金コロイドとしては、平均粒子径が、0.01μm〜0.02μm程度が好適である。また、コロイド金粒子は容易にしかも安価に自作できる。【0022】本発明の抗原の検出方法は、抗体にコロイド金粒子を吸着させた抗体感作コロイド金を用意し、被検抗原を含む抗原群に前記抗体感作コロイド金を反応させた後、洗浄して抗体感作コロイド金が固着した赤色の被検抗原を検出する。【0023】即ち、モノクローナル抗体及び該抗体で感作されたコロイド金を用い、免疫学的手法により、抗原の同定を行ったところ、ラテックス粒子を用いたものよりもバックがきれいで、抗原−抗体複合体が安定しており、操作も簡便であった。また、コロイド金は容易に作製できるので、自己で作ったコロイド金を用いれば、ラテックス等よりもコスト安である。なお、ラテックス粒子としては種々の色彩を持つものを使用できるので、細菌叢の解析等色の組合せを用いると便利な場合には、感作ラテックスが好適である。【0024】本発明では、具体的には、検出する抗原を微生物、更に具体的にはラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei) YIT9029株及び関連株として、これを検出する方法を確立した。【0025】本発明のラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei) YIT9029株(以下「L株」と記す)とは、本出願人が保有している菌株であり、受託番号FERM BP-1366株として工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されているものである。この菌株及びその関連株は、抗ガン作用の増強、血圧降下作用の増強、血中コレステロール低下作用の増強、整腸作用の増強等様々な生理活性を有し、食品、医薬品等としても使用されている最も有用な菌株の1つである。【0026】一方、本発明の関連株とは、元来同系統に属していた菌株群のことである。即ち、継代培養等に伴う変異のために、表面形状等を極わずかに変化させた、所謂「親子間係」の菌株群を指し、お互いに極わずかな表現形質の差を有しているものの、人体に与える活性には変わりがないものを指す。具体的には、YIT9029株の親株であるYIT9018株(FERM BP-665株)を始めとして、これら2つの株の何れかと親子関係にあるYIT0001株、YIT0091株、YIT0092株、YIT0093株、YIT0094株、YIT0095株、YIT0130株、YIT0149株、YIT0150株、YIT9001株、YIT9003株、YIT9005株、YIT9007株、YIT9012株、YIT9019株、YIT9020株、YIT9021株、YIT9022株、YIT9023株、YIT9024株、YIT9026株、YIT9027株、YIT9028株、YIT9030株、YIT9031株、YIT9032株、YIT9033株、YIT9034株、YIT9035株が挙げられる。【0027】L株及び関連株に特異的なモノクローナル抗体を作製するためには、まず、被験動物に、L株をホルマリン処理等で得られた菌体で免疫した。そして、免疫された動物を解剖し、該菌株特異的抗体を産生する細胞(以下、「抗体産生細胞」と記す)を得た。次に、得られた抗体産生細胞とミエローマ細胞(骨髄腫細胞)とを融合させハイブリドーマ(融合細胞)を得た後、これらのハイブリドーマを培養した。更に、培養物中に得られる抗体のL株に対する特異性を指標として抗体を産生するハイブリドーマをクローニングし、これを培養することによりL株及びその関連株に特異的なモノクローナル抗体を作製するハイブリドーマを取得した。【0028】前記のハイブリドーマは、L株の菌体を免疫された動物より得られた抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることによって形成された。使用する抗体産生細胞としてはL株の菌体を免疫された動物の脾臓細胞が好ましい。前記の抗体産生細胞及びミエローマ細胞としては、これらが融合可能な限りにおいて供給源である動物の種類を特定する必要はないが、離合効率や抗体産生の安定性の面からみて同じ種族であって動物由来のものを使用することが望ましい。【0029】前記のハイブリドーマのうち、好ましいハイブリドーマはL株の菌体を免疫したマウスの脾臓細胞とマウスのミエローマ細胞とを融合させて得られるものであり、その例としては、予めL株の菌体を免疫したBALB/Cマウスの抗L株抗体産生細胞と、BALB/Cマウスのミエローマ細胞との融合ハイブリドーマが挙げられる。【0030】細胞融合直後には、他種類の抗体を産生するハイブリドーマが混ざり合っている。そこで、L株及びその関連株の抗原決定部位に対し特異性を示す抗体を産生する細胞を選択(スクリーニング)し、目的とする抗体産生細胞を得る必要がある。抗体の検出にはVollerら〔Bull.WHO.,53巻,55-56頁,(1976)〕が報告している酵素免疫測定法(ELISA法)が好ましくは用いられる。【0031】スクリーニングについて、更に具体的に説明すると、組織培養プレート(例えば96穴マイクロタイタープレート)の穴壁に固定化したL株抗原にハイブリドーマ培養液又はハイブリドーマを接種したマウスの腹水を加え、次いで、これにペルオキシダーゼを標識した抗マウス抗体を加えた後、そのペルオキシダーゼ活性をオルトフェニレンジアミン(OPD)の発色で検定する。このOPDの発色は抗体の存在を意味する。ハイブリドーマ培養液及びその濃縮液、あるいはハイブリドーマを接種した腹水の抗L株抗体の力価は、OPDの発色(吸光度492nmにおける測定値)が0.5又は1.0を与える検体の最終希釈倍率で求められる。BALB/Cマウスのミエローマ細胞の培養液並びに同細胞をBALB/Cマウスに接種して得られる血清及び腹水は、L株に対する抗体活性を有していない。【0032】L株に対するモノクローナル抗体の製造は、前記の抗体産生クローン(ハイブリドーマ)を培地中において、又は組織適合性動物もしくはヌードマウス等の免疫不全動物の体内において維持生育させることにより行われる。又は、動物の血清もしくは腹水から回収される[回収方法に関しては、例えば、岩崎辰夫ら、単クローン抗体,88-94頁(1983)参照]。【0033】次に、こうして得たL株特異的モノクローナル抗体を用い、L株をより簡便に検出するために必要なモノクローナル抗体の担体を検討した。吸着させる担体としては、一般的なラテックス粒子と、本発明のコロイド金粒子とを用いることとし、感作ラテックス及び感作コロイド金を作製した。ラテックス粒子への抗体の感作はTsuda.S.らの方法に従った。また、コロイド金粒子は自作し、後に示す方法を用いて抗体の感作を行った。【0034】前記のようにして得られたL株特異的モノクローナル抗体及び該抗体で感作されたラテックスもしくはコロイド金を用い、免疫学的手法によりL株の同定を行ったところ、感作コロイド金を用いた系が、ラテックスよりもバックがきれいで、抗原−抗体複合体が安定しており、最も好適であった。【0035】即ち、担体の吸着を行っていないモノクローナル抗体を用いると、作業時間がかかりすぎる欠点があり、感作ラテックスを使用した場合には、自己凝集が起こり難く、短時間で検出を行えるなどの長所はあるが、洗浄時に担体が固相から引き離されてしまう欠点があった。これに対し、感作コロイド金を使用すると、ラテックスよりもバックがきれいで、抗原−抗体複合体も安定しており、操作も簡便であった。【0036】本発明において作製したモノクローナル抗体は、ELISA法等により菌株の同定、定量に用いることができる。また、本発明の感作ラテックスを用いれば、感作ラテックスと被検サンプルとをスライドグラス上で混合し、光学顕微鏡下に凝集像の正否を判断する方法(顕微鏡ラテックス法)等様々な同定、定量方法を行える。【0037】また、本発明では、感作コロイド金を用いた菌株検出の簡便法(コロイド金法)についても検討した。即ち、ニトロセルロース膜等にL株及び(同菌種の)他菌株をスポットし、これに本発明の感作コロイド金を反応させた後洗浄を行うと、L株をスポットした部分のみが染色され、コロイド金由来の赤い発色が認められるのである。スポットする際に、発酵乳のような他種類の菌種や成分を含む溶液を直接用いても、菌株を特異的に検出できる。このような検出方法によれば、簡便、迅速且つ安価に菌株を検出することが可能であり、作業者の熟練もさほど必要はない。また、感作コロイド金は前記の他にも従来感作ラテックス等で行われていた検出方法等にも好適に使用できる。【0038】コロイド金法において使用する抗体は、本発明のモノクローナル抗体に限らず、他のモノクローナル抗体も使用することができる。また、ポリクローナル抗体を用いても良い。【0039】【実施例】実施例1 ハイブリドーマの作製及び腹水抗体の製造純粋培養したラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)YIT9029株(L株)を生理食塩水にて洗浄し、次いで、吸光度660nmでの値が0.5となるように生理食塩水に懸濁した。得られた懸濁液0.2mlをBALB/Cマウスの尾静脈に注射し、10日後にも同様に調製した懸濁液0.2mlを追加注射した。更に、10日毎に合計で4〜5回懸濁液を注射した。マウスを屠殺する前に、同様に調製した懸濁液0.2mlを注射し最終免疫とした。最終免疫後4日目にマウスの脾臓を摘出し、その脾臓細胞をRPMI1640培地(シグマ社製〉に懸濁させた。脾臓細胞浮遊液を塩化アンモニウムの0.82%水溶液で室温で10分間処理した後、無血清培地中で遠心分離(250×g)により2回洗浄し、次いで、無血清培地中に懸濁させた。【0040】一方、細胞(ミエローマ)を牛胎児血清を15%含むRPMI1640培地で増殖させた後、無血清培地で遠心分離により2回洗浄し、次いで、無血清培地に懸濁させた。懸濁状態の脾臓細胞4.0×107個とミエローマ細胞1.0×107個とを混合した後、遠心分離して沈渣とし、これにポリエチレングリコール6000を45%含む無血清培地を1ml加え、6分間、37℃で細胞を融合させた。得られた細胞混合物を無血清培地での遠心分離により洗浄した後、牛胎児血清を15%含むRPMI1640培地中に1.0×105脾臓細胞/mlとなるように浮遊させ、その0.1mlを96穴プラスティックマイクロタイタープレートに分注し、7%炭酸ガス存在下のインキュベーター中に培養した。【0041】培養開始1日目にHAT培地を0.1ml加え、2日目、4日目、7日目、10日目には培養液の半分を吸引し、その代わりにHAT培地を追加した。96穴プラスティックマイクロタイタープレート60〜90%の培養穴に1穴あたり平均1〜2個のハイブリドーマの集落が生育した。ハイブリドーマが充分増殖した時点(培養開始より約2週間後)で、培養上清のL株に対する抗体力価をELISA法で検定した。総計621穴中、102穴のハイブリドーマ培養上清にL株に対する抗体が認められた。抗体を産生している各穴のハイブリドーマについて、限界希釈法によるクローニング操作2回繰り返し行った。かくして、抗体を安定に産生するクローン1株を単離し「L8」と命名した。このクローンについて培養液、腹水及び硫安沈殿画分よりL株に特異的モノクローナル抗体を得た。尚、このクローンのアイソタイプはIgMであった。このクローンL8は受託番号FERM P-16294として工業技術院生命工学工業技術研究所に平成9年7月1日付けで寄託されている。【0042】実施例2 モノクローナル抗体の特異性の確認(2-1)モノクローナル抗体マウスモノクローナル抗体として、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)YIT9029株及びその関連株に特異的なL8を使用した。ハイブリドーマクローンの細胞培養上清、あるいは部分精製したものをモノクローナル抗体試料として実験に用いた。【0043】(2-2)菌体抗原ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)YIT9029株及び該菌株が属する種の標準菌株を使用した。詳しくは、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei);39株、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus);1株、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus);1株、ラクトバチルス・アミロボラス(Lactobacillus amylovorus);1株、ラクトバチルス・クリスパツス(Lactobacillus crispatus);1株、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri);1株、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii);1株、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bididobacterium breve);3株、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bididobacterium bifidum);2株、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bididobacterium adolescentis);1株、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bididobacterium infantis);1株、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bididobacterium longum);1株、及び大腸菌(Eschearichia coli);1株、ストレプトコッカス・アウレウス(Streptococcus aureus);1株、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa);1株である。【0044】(2-3)ELISA法上記の菌体抗原各々について純粋培養したものを、1.0×109/ml程度に希釈し、その0.1mlを96穴マイクロタイタープレートの各穴中に分注し、37℃で2時間コーティングを行った。次にプレート上の各穴をELISA用洗浄液(PBSにTriton X-100を0.05%添加したもの)にて3回洗浄し、ブロッキング剤(ブロックエース、大日本製薬社製)を添加して、抗原未吸着部分を被膜した。被膜処理は37℃で1時間行った。これをELISA用洗浄液にて3回洗浄し、1次抗体としてL8を添加し、37℃で1時間半反応させた。更に、3回洗浄を行い、2次抗体として酵素(ペルオキシダーゼ)標識抗マウス免疫グロブリン抗体(Cappel)を37℃で1時間半反応させた。3回洗浄をした後、発色(光)基質(オルトフェニレンジアミン(OPD))を添加して、その発色の度合いから、各抗原とL8との反応性を確認した。【0045】実験に供された菌株は、基準株や当社において継代培養された親子関係の株等であるので、L株の関連株であるかどうかは既知である。そこで、この知見を元にELISA法の結果を検討した。結果を次の表1及び表2に示す。表1及び表2に示すとおり、L8はL株及びその関連株に特異的であった。尚、表1において、検出がされている株は、以前に当社で継代培養されたものであり、菌株は全て微生物保存試験室から分与された。【0046】【表1】【表2】【0047】(2-4)ドットブロットアッセイL8のL株に対する反応性を確認するため、L8を抗原としてドットプロットアッセイを行った。図1はDAB法及びECL法のドットブロットアッセイの工程を示す説明図である。ニトロセルロース膜(商品名;Hybond-C,アマシャム(Amersham)社製)を適当な大きさに切断し、種々の菌体含有試料、もしくは寒天平板上の細菌集落を膜上に転写(5μl or 1 colony/spot)した。室温で風乾した後、ニトロセルロース膜をブロッキング剤(商品名;ブロックエース、大日本製薬社製)に浸して、膜上の抗原未吸着部分を被覆した。被覆処理は37℃で1時間、もしくは5℃で一夜以上行った。ELISA用洗浄液(PBSにTriton X-100を0.05%添加したもの)にて膜を3回洗い、対応するモノクローナル抗体溶液に浸し、1時間反応させた。【0048】モノクローナル抗体溶液に浸した膜は、再び洗浄して未反応のモノクローナル抗体を除去した後、酵素(ペルオキシダーゼ)標識抗マウス免疫グロブリン抗体(Cappel)溶液に移した。一定時間反応させた後、ペルオキシダーゼに対応した種々の発色(光)基質を添加して膜上の菌体抗原を検出した。【0049】基質の調製は次のように行った。10mgのジアミノペンジジン(DAB)を40mlのPBSに溶解後、10μ1の過酸化水素水を添加したものにニトロセルロース膜を浸した。室温で発色が観察されるまで静置し、膜を水で洗って反応を停止した(DAB法)。また発光法としてECLシステム(アマシャム(Amersham)社製)を用いた。操作はシステムに添付されているマニュアルに従った。即ち検出試薬1と検出試薬2を等量混合したものをニトロセルロース膜にのせて(0.125ml/cm2)、1分間反応させた。余分な試薬を除去してから膜をラップに包み、X線フィルムに感光(30秒〜10分間)させた。フィルムを現像して結果を判定した(ECL法)。結果的にL8はL株に対する反応性を有していた。【0050】実施例3 着色担体微粒子への抗体感作(3-1)感作ラテックス作製図2は抗体感作着色ラテックスの調製工程及びそれを用いた菌体検出工程を示す説明図である。着色ラテックスとしては、ピンク色に着色されたラテックス粒子(IMMUTEX,G0304R,0.30μm,日本合成ゴム)を使用した。ラテックス粒子への抗体の感作は、Tsuda,S.らの方法に従い、図2に示す通り、0.02Mトリス緩衝食塩水(pH7.2, 0.15M NaCl、以下「TBS」と記す)で1%に調製したラテックス溶液と、TBSにて0.5mg/mlに調製したモノクローナル抗体溶液を等量ずつ混合し、時々攪拌しながら室温で2時間静置した。生血清アルブミン(「BSA」と記す)を1%添加したTBSにてラテックス粒子を遠心洗浄(3回)後、同溶液にラテックス粒子を1%となるように懸濁した。これを抗体感作着色ラテックスとし、TBSにて1/20〜1/40(ラテックス濃度0.025〜0.05%)に希釈して使用した。【0051】(3-2)感作コロイド金の作製免疫反応用コロイド金は自作した。まず、純水(ミリQ水を0.22μmのフィルターで濾過したもの)を用意し、使用する全ての器具をよく洗浄した。塩化金酸(添川理化学社製)の0.01%溶液を純水にて調製し、三角フラスコに入れてガスバーナーで加熱した。溶液が沸騰したら、1/20容の1%クエン酸三ナトリウム溶液(純水にて調製)を加えて5分間加熱を続けた。もう一度1/20容の1%クエン酸三ナトリウム溶液を加え、更に10分間加熱して火を止めた。こうして出来上がったコロイド金は赤銅色をしていた。コロイド金溶液は防腐剤等を添加せずに、密封して使用時まで5℃に保存した。【0052】図3は抗体感作コロイド金の調製工程及びそれを用いた菌体検出工程を示す説明図である。図3に示すように、コロイド金粒子への抗体の感作は前記で作製したコロイド金溶液と、PBS(0.22μmのフィルターで濾過したもの)で0.1〜1mg/mlに調製したモノクローナル抗体溶液を等量ずつ混合し、室温で2時間以上静置した。10%BSA溶液を1/20容加えた後、遠心(12,000rpm、30分間)してコロイド金粒子を沈殿として回収した。0.1%BSA、0.2%ポリエチレングリコール及び0.1%アジ化ナトリウムを含むPBSにコロイド金粒子を懸濁(0.01%:もとのコロイド金溶液の濃度)したものを、抗体感作コロイド金として実験に用いた。【0053】実施例4 感作ラテックス及び感作コロイド金を使用したL株の検出(4-1)モノクローナル抗体実施例3において作製したL8感作ラテックス及び感作コロイド金を使用した。【0054】(4-2)菌体抗原実施例2と同じ菌株を使用した。【0055】(4-3)ドットブロットアッセイニトロセルロース膜(商品名;Hybond-C,アマシャム(Amersham)社製)を適当な大きさに切断し、寒天培地上の細菌集落を膜上に転写(1 colony/spot)した。室温で風乾した後、ニトロセルロース膜をブロッキング剤(商品名;ブロックエース、大日本製薬社製)に浸して、膜上の抗原未吸着部分を被覆した。被覆処理は37℃で1時間、もしくは5℃で1晩以上行った。これを水で1回洗浄し、L8感作ラテックステックス及び感作コロイド金適量を5〜30分間室温で反応させた。その後、未反応のL8感作ラテックス及び感作コロイド金を取り除き、発色の有無により結果を判定した。その結果、前記表1と全く同一の結果が得られ、やはりL8はL株及びその関連株に特異的であることが確認された。【0056】実施例5 感作コロイド金を使用したL株の簡便検出(5-1)モノクローナル抗体実施例3で作製したL8感作コロイド金を使用した。【0057】(5-2)菌体抗原ラクトバチルス・カゼイYIT9029(FERM BPカゼイYIT0209(NCDO 151)株、ビフィドバクテリウム・ブレーベYIT4065(FERM P-15488)株、ビフィドバクテリウム・ブレーベYIT4014(ATCC 15700)株、ビフィドバクテリム・ビフィダムYIT4007(FERM BP-791)株、ビフィドバクテリウム・ビフィダムYIT4039(IFO 14252)株を使用した。【0058】(5-3)コロイド金法による検出図4はコロイド金法による検出操作を模式的に示す説明図であり、a図はニトロセルロース膜への菌株のスポットを示し、b図は染色後の状態を示す説明図である。図4のa図に示す通り、前記の6菌株をニトロセルロース膜(40)上にスポットし、ブロッキング剤で被膜した。図において、点線で囲まれた(41)はラクトバチルス・カゼイYIT9029株、(42)はビフィドバクテリウム・ブレーベYIT4065株、(43)はビフィドバクテリム・ビフィダムYIT4007株、(44)はラクトバチルス・カゼイYIT0209株、(45)はビフィドバクテリウム・ブレーベYIT4014株、(46)はビフィドバクテリウム・ビフィダムYIT4039のスポットを示す。【0059】各スポットへL8感作コロイド金を反応させた。これを水で1回洗浄したところ、図4のb図に示す通り、L8に特異的なクトバチルス・カゼイYIT9029株のスポット(1)のみが染色されていた。【0060】実施例6 感作コロイド金を使用した乳製品中のL株の検出糖質、タンパク質等菌体以外の成分の混ざった溶液中でもL8感作コロイド金を用いたL株の検出が可能であるかを検討するため、以下の実験を行った。【0061】まず、ラクトバチルス・カゼイYIT9029株を108/ml含有する発酵乳を調製し、これを10倍毎に段階希釈し、これらをニトロセルロースフィルター上へスポットした。これにL8感作コロイド金を室温、10分間反応させ、水にて1洗浄を行った。図5は希釈率を変化させた場合のL株の検出結果を示す説明図であり、図において、(50)はニトロセルロースフィルター、(51)は10倍希釈のスポット、(52)は100倍希釈のスポット、(53)は1000倍希釈のスポットを示す。コロイド金による発色の有無を検討したところ、100倍希釈(菌数として106/ml)で検出可能であった。尚、より高倍率の希釈を行っても検出可能にするためには、アルカリによるミルク成分の可溶化等の処理も有用であると思われた。【0062】【発明の効果】本発明のモノクローナル抗体にコロイド金粒子を吸着させた抗体感作コロイド金を用いて、被検抗原を含む抗原群に前記抗体感作コロイド金を反応させた後、洗浄して抗体感作コロイド金が固着した赤色の被検抗原を検出することにより、従来の免疫学的手法よりも簡便、迅速且つ安価に抗原を検出することができる。【0063】また、L株及びその関連株に特異的に結合するモノクローナル抗体を用いれば、L株及びその関連株を簡便且つ迅速に検出することが可能となる。L株及びその関連株は食品、医薬品等に供されている有用微生物であるので、その検出が簡便、迅速に行われれば、生体への作用の確認等様々な研究を補助できる等の効果を有する。【図面の簡単な説明】【図1】DAB法及びECL法のドットブロットアッセイの工程を示す説明図である。【図2】抗体感作着色ラテックスの調製工程及びそれを用いた菌体検出工程を示す説明図である。【図3】抗体感作コロイド金の調製工程及びそれを用いた菌体検出工程を示す説明図である。【図4】コロイド金法による検出操作を模式的に示す説明図であり、a図はニトロセルロース膜への菌株のスポットを示し、b図は染色後の状態を示す説明図である。【図5】希釈率を変化させた場合のL株の検出結果を示す説明図である。 ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei) YIT9029株菌体で免疫された動物の抗体産生細胞とミエローマ細胞とのハイブリドーマ細胞L8(FERM P−16294)より得られたモノクローナル抗体。 請求項1に記載のモノクローナル抗体にコロイド金粒子を感作させたことを特徴とする抗体感作コロイド金。 請求項2に記載の抗体感作コロイド金を用意し、 被検抗原群に前記抗体感作コロイド金を反応させた後、洗浄して抗体感作コロイド金が固着した赤色の被検抗原を目視により検出することを特徴とする抗原の検出方法。


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