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タイトル:特許公報(B2)_対物レンズ及び顕微鏡
出願番号:1997195951
年次:2007
IPC分類:G02B 21/02,G01N 21/27,G01N 21/64,G02B 21/10


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土屋 敦宏 JP 3872871 特許公報(B2) 20061027 1997195951 19970722 対物レンズ及び顕微鏡 オリンパス株式会社 000000376 鈴江 武彦 100058479 村松 貞男 100084618 風間 鉄也 100100952 水野 浩司 100097559 土屋 敦宏 JP 1996199184 19960729 20070124 G02B 21/02 20060101AFI20070104BHJP G01N 21/27 20060101ALI20070104BHJP G01N 21/64 20060101ALI20070104BHJP G02B 21/10 20060101ALI20070104BHJP JPG02B21/02 ZG01N21/27 EG01N21/64 EG02B21/10 G02B 7/28-7/40,21/00-21/36 特公昭45−027851(JP,B1) 実公昭12−003331(JP,Y1) 実開昭64−010729(JP,U) 特開昭61−015110(JP,A) 特開昭56−152249(JP,A) 6 1998096861 19980414 14 20040714 吉川 陽吾 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、落射照明を行なう光学顕微鏡用の対物レンズ及び顕微鏡に関し、例えば暗視野観察用の照明や落射蛍光観察用としてエバネッセント波を発生させるための照明を行なうために、観察光路の外側の空間を利用して照明を行なう対物レンズ及び顕微鏡に関する。【0002】【従来の技術】図7は、従来の光学顕微鏡の照明系の構成を示す断面図である。観察対象であるサンプル1の拡大像を得るために、観察光軸2上には、対物レンズ3、結像レンズ4、及び接眼レンズ(不図示)が配置されている。このうち対物レンズ3内には、レンズ系6が設けられている。【0003】一方、ランプ7が観察光軸2から所定距離離れた位置に配置されている。ランプ7は、観察光軸2に直交する光軸8を有する落射照明光を発する。光軸8上には、半球状をなすコレクタレンズ9及び環状のミラー10が配置されている。ミラー10は光軸2と光軸8に対して45°をなすよう傾けて配置され、かつその外周部に輪帯状の反射面が形成されている。【0004】ランプ7から出力された落射照明光は、コレクタレンズ9により集光されて円状の光線束になり、ミラー10に達する。落射照明光の一部はミラー10の空部を通過するとともに、一部は前記反射面にて下方へ反射し、観察光軸2と同軸である輪帯状の光線束をなす落射照明光11になる。この落射照明光11は、観察光路の外周側を通り、対物レンズ3内に導かれる。【0005】やがて落射照明光11は、対物レンズ3においてレンズ系6の外周側の光路を通り、ミラー12で反射し、サンプル1に集光される。サンプル1からの観察光5は、対物レンズ3内のレンズ系6を介して結像レンズ4を通り前記接眼レンズ等に導かれ、拡大像として得られる。【0006】図8は、当該光学顕微鏡に用いられる乾燥系の対物レンズ3の観察光軸2を含む面での縦断面図である。レンズ系6は、複数のレンズ6a〜6gを観察光軸2方向へ配列したものであり、レンズ6a〜6gはそれぞれレンズ保持枠20a〜20gに固着されている。これらレンズ保持枠20a〜20gは、それぞれレンズ6a〜6gを固着した状態で、外枠21の内径側に順次嵌入されて落し込まれ、さらに押え環22が外枠21内側面に螺合されることで固定されている。【0007】図9は、対物レンズ3に設けられた鍔25の構成を示す上面図であり、図8のA−A断面図の一部である。鍔25は、外枠21の外側面に取り付けられている。鍔25には、二つの弧状の孔23、24が形成されており、外周部と内周部が二カ所(あるいは一カ所以上)で繋がっている。鍔25には、外周にねじ部26が形成され、このねじ部26にカバー27が螺合固定される。鍔25の孔23、24により、外枠21とカバー27の間に落射照明光11を通すための輪帯状の空間、すなわち照明用光路が確保される。また、カバー27の先端部には、ミラー12が設けられ、このミラー12の反射面12aで落射照明光11をサンプル1側に導光する。【0008】図8において、29はサンプル面、30はカバーガラスである。対物レンズ3全体は、カバー27に形成されたねじ部27aを介して顕微鏡本体に着脱でき、顕微鏡本体に螺合固定される。なお、上述した構成では、ランプ7を光源とし、コレクタレンズ9及びミラー10を介して対物レンズ3内に落射照明光11を導光している。【0009】以上のように、サンプル1に照射された落射照明光11は、観察光の開口数NAよりも大きなNAでサンプル1に照射される。正反射した0次光は、対物レンズ3内の観察光路に入らず、高次の回折光や散乱光のみが観察光路のレンズ6a〜6gに入り、結像レンズ4にて結像して接眼レンズやビデオカメラ等に導かれることで、暗視野観察が可能になる。【0010】一方、例えば対物レンズ3が液浸系の油浸対物レンズである場合、カバーガラス30の屈折率が1.5、油浸対物レンズ用のオイルの屈折率が1.5、サンプル1の屈折率が1.3であれば、1.3以上のNAで照明された照明光は、カバーガラス30とサンプル1との境界面で全反射し、サンプル1側にエバネッセント光が発生する。【0011】このエバネッセント光を励起光として利用することより、高いNAを有する液浸対物レンズにおいても、観察系と独立した照明光路における蛍光観察を行なうことが可能である。これは近年、主に1分子蛍光観察を目的とした対物レンズを用いた自家蛍光の少ない高SN比の要求される分野で利用されている。【0012】【発明が解決しようとする課題】図8に示す対物レンズ3のように、乾燥系でNAが小さく、かつカバーガラス30と対物レンズ3の先端との間の作動距離WDの大きい対物レンズ3の場合は特に問題ない。しかし、液浸系、特に油浸対物レンズの場合、NAが1〜1.45程度で大きく、作動距離WDが0.1mm程度で小さい仕様のものが多い。この場合、対物レンズ先端部やレンズ保持枠、外枠に邪魔されるため、照明用光路を確保するためのスペースが少ないという問題がある。【0013】この種の対物レンズにおいて明るい照明を得るためには、できるだけ落射照明光の光線束のNAを大きく取る必要がある。しかし、NAが観察光の光線束に近い、すなわちマージナル比の大きい観察光の光線束の外側近傍の照明光は、特にレンズ保持枠に邪魔され、落射照明の光線束のNAを大きく確保することはできない。【0014】そこで、レンズ保持枠20a〜20gの横方向の肉厚を薄くすれば、落射照明光11を通すための輪帯状の空間が広くなり、落射照明の光線束のNAを少しでも大きく確保できる。しかし、レンズ保持枠20a〜20gの肉厚を薄くすると、僅かな偏心も許されないレンズ保持枠自体の剛性が確保できず、寸法の精度を高く確保することも困難になる。また実際には、対物レンズ3全体の大きさに制約があり、例えば通常全長は45mm以下である。よって、単純に各レンズやレンズ保持枠を大きくし作動距離WDを大きくすることで照明用光路を確保するためのスペースを大きくすることは、現実的ではない。【0015】 本発明の目的は、油浸対物レンズのような高いNAを有し作動距離WDの短い対物レンズにおいて、観察光路の外周側の空間でレンズやレンズ保持枠に邪魔されずに落射照明の光路を確保できる対物レンズ及び顕微鏡を提供することにある。【0016】【課題を解決するための手段】 上記課題を解決し目的を達成するために、本発明の対物レンズ及び顕微鏡は以下の如く構成されている。(1)本発明の対物レンズは、観察対象からの観察光を入射するレンズの外周側に形成された照明用光路に照明光が入射される対物レンズにおいて、前記照明用光路を介した前記照明光を前記観察対象に導くとともに、前記観察光を前記レンズに導く共用レンズと、前記共用レンズを保持するレンズ保持枠と、を備え、前記レンズ保持枠は、前記照明光を前記共用レンズへ向けて通過させる、少なくとも一つの貫通孔または溝が形成されている。(2)本発明の対物レンズは、観察対象からの観察光を入射するレンズの外周側に形成された照明用光路に照明光が入射される対物レンズにおいて、前記照明用光路を介した前記照明光を前記観察対象に向けて導光するための、少なくとも一つの貫通孔または溝を有するレンズ保持枠と、前記レンズ保持枠に保持され、前記貫通孔または溝を通して導光された前記照明光を前記観察対象に導くとともに、前記観察光を前記レンズに導く共用レンズと、から構成されている。(3)本発明の対物レンズは、上記(1)または(2)に記載の対物レンズであり、前記貫通孔または溝には、光透過性を有する透明部材が挿設されている。(4)本発明の対物レンズは、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の対物レンズであり、前記レンズ保持枠は、さらに、前記貫通孔または溝、及び前記共用レンズを通して導光され前記観察対象にて反射された前記照明光を前記照明用光路へ導く貫通穴を有する。(5)本発明の対物レンズは、観察対象からの観察光を入射するレンズの外周側に形成された照明用光路に照明光が入射される対物レンズにおいて、前記照明光を前記観察対象に導くとともに、前記観察光を前記レンズに導く共用レンズと、前記共用レンズを保持するレンズ保持枠であり、前記照明用光路に入射される前記照明光を前記共用レンズへ向けて通過させる透明部材で形成されたレンズ保持枠と、から構成されている。(6)本発明の顕微鏡は、観察対象を照明する光源と、前記観察対象からの観察光を入射するレンズと、前記レンズの外周側に形成され照明光が入射される照明用光路と、を有する対物レンズと、前記光源から出射された照明光を、前記対物レンズの前記照明用光路に導光する照明光学系と、を備え、前記対物レンズは、前記照明光を前記観察対象に導くとともに、前記観察対象からの前記観察光を前記レンズに導く共用レンズと、前記共用レンズを保持するとともに、前記照明光を前記共用レンズへ向けて通過させる、少なくとも一つの貫通孔または溝が形成されたレンズ保持枠と、を有する。【0017】上記手段を講じた結果、それぞれ次のような作用が生じる。(1)本発明の対物レンズによれば、照明光と観察光の通過を共用レンズにより共用することで、構成が簡単になりスペースの有効利用ができ、照明専用のレンズを設けることなく落射照明光を容易に観察対象に集光でき、観察光路の外周側の空間でレンズやレンズ保持枠に邪魔されずに落射照明の光路を確保できる。(2)本発明の対物レンズによれば、照明光が前記レンズ保持枠の前記導光機能手段により導光されることで、前記レンズ保持枠により照明光を遮光することなく観察対象に落射照明でき、前記レンズ保持枠に邪魔されることなく、落射照明光路で有効光線束を確保することが容易になる。(3)本発明の対物レンズによれば、照明光が前記レンズ保持枠の前記導光機能手段により導光されることで、前記レンズ保持枠により照明光を遮光することなく観察対象に落射照明でき、前記レンズ保持枠に邪魔されることなく、落射照明光路で有効光線束を確保することが容易になるとともに、観察光路の外側から観察光軸に対して例えば輪帯状に全周に亘って落射照明光を観察対象に照明することが可能になる。(4)本発明の対物レンズによれば、前記レンズ保持枠は、前記観察対象にて反射された照明光を前記照明用光路へ導く貫通穴を有するので、前記観察対象にて反射された照明光が周辺のレンズ保持枠などで散乱し、観察光路にフレアーなどの有害なノイズとして混入することがなくなり、高いコントラスト、高いSN比による観察が可能になる。【0018】【発明の実施の形態】(第1の実施の形態)図1は、本発明の第1の実施の形態に係る対物レンズの観察光軸を含む面での縦断面構成図である。図1に示す対物レンズ31は、図7に示した光学顕微鏡の照明系に、対物レンズ3に代えて配置される。図1において図8と同一な部分には同一符号を付してある。対物レンズ31は、オイル40が対物レンズ先端部とカバーガラス30との間に充填された油浸対物レンズであり、その作動距離WDは0.1mm程度である。スライドガラス70上にはサンプル1が載置されており、サンプル1はカバーガラス30によりカバーされている。【0019】対物レンズ31先端側のサンプル1側には、共用レンズ41及びレンズ保持枠42が設けられている。外観が中空部を有する円柱状をなし中央部に円状の開口を有するレンズ保持枠42には、輪帯状の落射照明光11を通過させるための貫通孔42aが形成されている。貫通孔42aは、レンズ保持枠42の外径面から内径面へ貫通している。貫通孔42aはレンズ保持枠42の全周に亘って形成されているのではなく、レンズ保持枠42自身の形状を保つよう、全周のうち少なくとも一部には貫通孔42aが形成されていない。すなわち貫通孔42aは、レンズ保持枠42の周面に沿って一つまたは複数形成されている。【0020】なお、貫通孔42aは、レンズ保持枠42の外径面から内径面へ貫通していればよく、レンズ保持枠42の底部において溝状をなしていても、穴状をなしていてもよい。【0021】共用レンズ41はレンズ保持枠42下方の内径面に固着されている。レンズ保持枠42は共用レンズ41を固着した状態で円筒状の外枠21の内径側に嵌入される。レンズ保持枠42は、外枠21の内側面最端部の突起部211と係合することで外枠21に固定される。さらに、各レンズ保持枠20a〜20gは、それぞれ各レンズ6a〜6gを固着した状態で、外枠21の内径側に順次嵌入されて落し込まれ、さらに押え環22が外枠21内径面に螺合されることで固定されている。また、ミラー43は外観が中空部を有する円柱状をなし中央部に円状の開口を有し、傾斜した内壁の曲面全周に亘って、反射面43aが形成されている。輪帯状の落射照明光11が反射面43aで反射し、レンズ保持枠42の貫通孔42aを通ってサンプル1に略集光される。【0022】以下、共用レンズ41及びレンズ保持枠42について具体的に説明する。対物レンズ31は、上述したように油浸対物レンズであり、NAが大きい。このため、先端部の共用レンズ41は、球体の一部を切った形状をなし、その大きさが半球を越えており、その切り口は前記球体の直径より小さな直径を有する円になっている。レンズ保持枠42には、前記円の直径と同一の内径を有する開口が形成されている。共用レンズ41は、レンズ保持枠42の前記開口に嵌入され固着されている。またレンズ保持枠42には、前述したように外径面と内径面すなわち共用レンズ41の保持面とを貫通する貫通孔42aが形成されている。【0023】次に、上述したように構成された対物レンズの作用について説明する。図7に示すようにランプ7から出力された落射照明光は、コレクタレンズ9により集光されて円状の光線束になる。落射照明光の一部は、ミラー10の反射面にて下方へ反射し、観察光軸2と同軸である輪帯状の光線束をなす落射照明光11になる。この落射照明光11は、観察光路の外周側を通り、対物レンズ31内へ導かれる。【0024】やがて落射照明光11は、対物レンズ31においてレンズ系すなわちレンズ6a〜6gの外周側において外枠21とカバー27の間に形成された輪帯状の空間すなわち照明用光路を通ってミラー43に到達する。落射照明光11は、ミラー43の反射面43aで略集光し反射され、貫通孔42aを通過し、共用レンズ41に到達する。落射照明光11は、共用レンズ41にて屈折し、オイル40、カバーガラス30を経て、スライドガラス70上のサンプル1に照射される。サンプル1からの観察光5は、カバーガラス30、オイル40、共用レンズ41、各レンズ6a〜6g及び結像レンズ4を通って接眼レンズ(不図示)等に導かれ、拡大像として得られる。【0025】なお、レンズ保持枠42における貫通孔42aが形成されていない箇所に、二点鎖線lに示すように貫通孔を設けてもよい。これにより、共用レンズ41の切り口にて屈折し、サンプル1とカバーガラス30の境界面で全反射した落射照明光11を前記貫通孔を通して照明用光路へ導くことができる。【0026】上記第1の実施の形態によれば、油浸対物レンズのようにNAが大きく、作動距離WDが短いために対物レンズ先端部付近のスペースがない場合でも、レンズ保持枠に邪魔されることなく、落射照明光路で有効光線束を確保することが容易になる。また、落射照明光11を対物レンズ先端部のレンズ保持枠42に遮光されることなく、観察光路の外側からサンプル1に導くことができる。【0027】共用レンズ41により、観察用のレンズと落射照明用のレンズとを共通にしたので、構成が簡単でスペースの有効利用が可能になり、落射照明専用のレンズを設ける必要がなく安価に構成できる。さらに、元来観察用に観察光軸2付近のサンプル1を投影するために設計された共用レンズ41を照明用にも利用するので、落射照明光11を容易にサンプル1に集光できる。【0028】また、レンズ保持枠42に形成された貫通孔42aは観察光軸2の周りに全周に亘って開けられているのではないため、共用レンズ41を保持するための嵌合の内径を確保でき、もともと僅かしかない共用レンズ41との接着面積を殆ど損なうことなく確保できる。また、レンズ保持枠42は高い寸法精度が要求されるが、部分的に貫通孔42aを形成することで、レンズ保持枠自体の部品の剛性を損なうことはなく、加工時の切削抵抗等に十分に耐え、高い寸法精度を確保できる。【0029】さらに、二点鎖線lに示すように、サンプル1とカバーガラス30の境界面で全反射した落射照明光11を照明光路へ戻すための貫通穴42aが設けられている。このため、全反射した照明光11が周辺の枠などで散乱し、観察光路にフレアーなどの有害なノイズとして混入することがなくなり、高いコントラスト、高いSN比による観察が可能になる。【0030】(第2の実施の形態)図2は、本発明の第2の実施の形態に係る対物レンズの観察光軸を含む面での縦断面構成図である。図2に示す対物レンズ32は、図7に示した光学顕微鏡の照明系に、対物レンズ3に代えて配置される。図2において図1,図8と同一な部分には同一符号を付してある。対物レンズ32は、オイル40が対物レンズ先端部とカバーガラス30との間に充填された油浸対物レンズであり、その作動距離WDは0.1mm程度である。【0031】対物レンズ32先端側のサンプル1側には、共用レンズ41及びレンズ保持枠50が設けられている。外観が中空部を有する円柱状をなし中央部に円状の開口を有するレンズ保持枠50には、輪帯状の落射照明光11を通過させるための貫通孔50aが形成されている。貫通孔50aは、レンズ保持枠42の外径面から内径面へ貫通している。貫通孔50aはレンズ保持枠50の全周に亘って形成されているのではなく、レンズ保持枠50自身の形状を保つよう、全周のうち少なくとも一部には貫通孔50aが形成されていない。すなわち貫通孔50aは、レンズ保持枠50の周面に沿って一つまたは複数形成されている。この貫通孔50a内に後述するプリズム51が挿設されている。【0032】なお、貫通孔50aは、レンズ保持枠50の外径面から内径面へ貫通していればよく、レンズ保持枠50の底部において溝状をなしていても、穴状をなしていてもよい。【0033】共用レンズ41はレンズ保持枠50下方の内径面に固着されている。レンズ保持枠50は共用レンズ41を固着した状態で円筒状の外枠21の内径側に嵌入される。レンズ保持枠50は、外枠21の内径側最端部の突起部211と係合することで外枠21に固定される。さらに、各レンズ保持枠20a〜20gは、それぞれ各レンズ6a〜6gを固着した状態で、外枠21の内径側に順次嵌入されて落し込まれ、さらに押え環22が外枠21内径面に螺合されることで固定されている。【0034】また、ミラー52は外観が中空部を有する円柱状をなし中央部に円状の開口を有し、傾斜した内壁の曲面全周に亘って、反射面52aが形成されている。輪帯状の落射照明光11は反射面52aで反射し、レンズ保持枠50の貫通孔50aを通ってプリズム51を透過してサンプル1に略集光される。以下、プリズム51、共用レンズ41及びレンズ保持枠50について具体的に説明する。【0035】図3の(a),図3の(b)は、プリズム51の外観図である。図3の(a)のプリズム51は、その外観が切頭円錐形状をなし、中央部に円状の開口を有している。このプリズム51は、その内径511に円筒面を、外径512に円錐面を形成したものであり、その屈折率が共用レンズ41の屈折率よりも高い材質により形成されている。プリズム51の内径511とこの内径511と同一面をなすレンズ保持枠50の内径とに、共用レンズ41の半球を越える部分が嵌入され、固着されている。またレンズ保持枠50には、その外径面と内径面すなわち共用レンズ41の保持面とを貫通する貫通孔50aが形成されている。【0036】図3の(b)は、図3の(a)のプリズム51を8分割した場合の一片を示す図である。なお、プリズム51を8分割に限らず、任意の数に分割してもよい。この分割されたプリズム51の一片あるいは複数片を、それぞれレンズ保持枠50の貫通孔50aに埋設することができる。このとき貫通孔50aは、設けられるプリズム51の分割片の数と同数分レンズ保持枠50の所定箇所に設けられ、各貫通孔50aの大きさはプリズム51の一片に適合する大きさで形成される。【0037】図4の(a),図4の(b),図4の(c)は、プリズム51と共用レンズ41の結合状態を示す図である。図4の(a)では、円筒面であるプリズム51の内径面と球面である共用レンズ41の表面とが、プリズム51と同じ屈折率を有する接合剤cにより接着されている。図4(b)では、共用レンズ41の球面と同じ径を有するプリズム51の内径面と共用レンズ41の表面とが光学的に接合すなわちオプティカル・コンタクトがなされている。図4の(c)では共用レンズ41の球面と同じ径を有するプリズム51の内径面と共用レンズ41の表面とが、プリズム51と同じ屈折率を有する接合剤cにより接着されている。プリズム51と共用レンズ41の光学的な結合は、図4の(a),図4の(b),図4の(c)のいずれの手法でも用いることができる。【0038】次に、上述したように構成された対物レンズの作用について説明する。図7に示すようにランプ7から出力された落射照明光は、コレクタレンズ9により集光されて円状の光線束になる。落射照明光の一部は、ミラー10の反射面にて下方へ反射し、観察光軸2と同軸である輪帯状の光線束をなす落射照明光11になる。この落射照明光11は、観察光路の外周側を通り、対物レンズ32内へ導かれる。【0039】やがて落射照明光11は、対物レンズ32においてレンズ系すなわちレンズ6a〜6gの外周側において外枠21とカバー27の間に形成された輪帯状の空間すなわち照明用光路を通ってミラー52に到達する。落射照明光11は、ミラー52の反射面52aで略集光し反射され、貫通孔50aを通過し、プリズム51を透過し、共用レンズ41に到達する。【0040】ここで、屈折率はプリズム51の方が共用レンズ41よりも高いので、落射照明光11は、プリズム51と共用レンズ41との境界面で観察光軸2に対して外側へ屈折する。その後、落射照明光11は共用レンズ41にて屈折し、オイル40、カバーガラス30を経て、スライドガラス70上のサンプル1に照射される。サンプル1からの観察光5は、カバーガラス30、オイル40、共用レンズ41、各レンズ6a〜6g及び結像レンズ4を通って接眼レンズ(不図示)等に導かれ、拡大像として得られる。【0041】上記第2の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様の効果を奏するとともに、レンズ保持枠50に共用レンズ41の屈折率よりも高い屈折率を有するプリズム51を設けたので、同一のNAを有する照明光であっても、以下に示すように観察光軸2に対してより大きな角度をもって落射照明光11を導くことができる。【0042】図5の(a),図5の(b)は、落射照明光と観察光との成す角度を示す図である。例えば、上記第1の実施の形態では、図5の(a)に示すようにレンズ保持枠42や外枠21に邪魔されて落射照明光11の光線束を観察光軸2に対してより内側にすなわち落射照明光11と観察光5との成す角度αを小さくすることに制限がある。しかし第2の実施の形態では、図5の(b)に示すように観察光路の有効光線束のぎりぎりのところまで内側に落射照明光11の光束を確保できる。すなわち、落射照明光11と観察光5との成す角度αを小さくし、落射照明光11の光束を大きくして、観察光路の各レンズ6a〜6g、外枠21と離れた位置で落射照明光路を形成できる。このように対物レンズ33では先端部付近がスペース的に有利になり、同一スペースであれば、より大きな光線束で導光でき、サンプル1に対してより明るい落射照明ができる。【0043】また、図4の(a)の如く、プリズム51と共用レンズ41をプリズム51と同一の屈折率を有する接合剤により接着している。このため、プリズム51における共用レンズ41との接着面の面精度を精度よく加工せずとも、照明光線の所望される入射角度を精度よく維持し導光することが可能である。一方、プリズム51と共用レンズ41とをオプティカルコンタクトにより接合することで、プリズム51と共用レンズ41との接合面の接合剤による散乱光が観察光路に進入することを防げるため、より高いSN比(観察光/散乱光)による観察が可能になる。【0044】また、プリズム51における落射照明光11の入射面すなわち外径面は、上記第2の実施の形態では殆ど屈折作用を受けないが、周囲の枠等の配置に合わせ入射面を変えることで、入射角を大きくし屈折作用を生じさせることもできる。この入射面を球面で構成してもよい。また、プリズム15と共用レンズ41との境界面での屈折による収差を減らすために、プリズム51の屈折率を共用レンズ41の屈折率と同一にするか、もしくは同一ガラスで形成してもよい。【0045】(第3の実施の形態)図6は、本発明の第3の実施の形態に係る対物レンズの観察光軸を含む面での縦断面構成図である。図3に示す対物レンズ33は、図7に示した光学顕微鏡の照明系に、対物レンズ3に代え配置される。図6において図1,図2,図8と同一な部分には同一符号を付してある。対物レンズ33は、オイル40が対物レンズ先端部とカバーガラス30との間に充填された油浸対物レンズであり、その作動距離WDは0.1mm程度である。【0046】対物レンズ33先端側のサンプル1側には、共用レンズ41及びレンズ保持枠60が設けられている。外観が中空部を有する円柱状をなし中央部に円状の開口を有するレンズ保持枠60は、光学的に高透光性の材質により形成され、一種のプリズムとして作用する。レンズ保持枠60の内径には、共用レンズ41の半球を越える側の球面が嵌入され、共用レンズ41が固着され保持されている。【0047】共用レンズ41はレンズ保持枠60下方の内径面に固着されている。レンズ保持枠60は共用レンズ41を固着した状態で円筒状の外枠21の内径側に嵌入される。レンズ保持枠60は、外枠21の内径側最端部の突起部211と係合することで外枠21に固定される。さらに、各レンズ保持枠20a〜20gが、それぞれ各レンズ6a〜6gを固着した状態で、外枠21の内径側に順次嵌入されて落し込まれ、さらに押え環22が外枠21内径面に螺合されることで固定されている。また、ミラー43は外観が中空部を有する円柱状をなし中央部に円状の開口を有し、傾斜した内壁の曲面全周に亘って、反射面43aが形成されている。輪帯状の落射照明光11は反射面43aで反射し、プリズムであるレンズ保持枠60を透過してサンプル1に略集光される。【0048】次に、上述したように構成された対物レンズの作用について説明する。図7に示すようにランプ7から出力された落射照明光は、コレクタレンズ9により集光されて円状の光線束になる。落射照明光の一部は、ミラー10の反射面にて下方へ反射し、観察光軸2と同軸である輪帯状の光線束をなす落射照明光11になる。この落射照明光11は、観察光路の外周側を通り、対物レンズ33内へ導かれる。【0049】やがて落射照明光11は、対物レンズ33においてレンズ系すなわちレンズ6a〜6gの外周側において外枠21とカバー27の間に形成された輪帯状の空間すなわち照明用光路を通ってミラー43に到達する。落射照明光11は、ミラー43の反射面43aで略集光し反射され、プリズムであるレンズ保持枠60を透過し、共用レンズ41に到達する。その後、落射照明光11は共用レンズ41にて屈折し、オイル40、カバーガラス30を経て、スライドガラス70上のサンプル1に照射される。サンプル1からの観察光5は、カバーガラス30、オイル40、共用レンズ41、各レンズ6a〜6g及び結像レンズ4を通って接眼レンズ(不図示)等に導かれ、拡大像として得られる。【0050】上記第3の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様の効果を奏するとともに、レンズ保持枠60を光透過性を有する材質により形成したので、レンズ保持枠60により落射照明光を遮光することはなく、観察光路の外側から観察光軸2に対して例えば輪帯状に全周に亘って落射照明光11をサンプル1に照明できる。【0051】例えば、輪帯状の落射照明光11のように観察光軸2を中心に同心円状に全周に近い照明の場合でも、レンズ保持枠60に孔等の空隙を形成する必要がなく、高剛性のレンズ保持枠により確実に共用レンズ41を保持でき、かつレンズ保持枠60により落射照明光11を遮ることなく、落射照明光11を導光できる。また、レンズ保持枠60の全体が光透過性を有するので、落射照明光11の光線束を観察光軸2に対してより外側に、すなわち図5の(b)に示したと同様に、落射照明光11から観察光5までのなす角度βを広げることができ、より明るい照明が得られる。なお、レンズ保持枠60を複数個に分割し、分割片のいくつかをレンズ保持枠60に代えて配設してもよい。【0052】なお、本発明は上記各実施の形態のみに限定されず、要旨を変更しない範囲で適時変形して実施できる。例えば、第1〜第3の実施の形態では、対物レンズの先端部の共用レンズとこれを保持するレンズ保持枠により落射照明光11を導光しているが、対物レンズの先端から数えて第2番目のレンズ6aとそのレンズ保持枠20aにより落射照明光11を導光してもよい。【0053】さらに、上記第1〜第3の実施の形態では、落射照明光と観察光との両方を通過させる共用レンズ41を使用しているが、この共用レンズ41の開口を観察光だけに限り、落射照明光には作用しないように設定してもよい。すなわち、例えば前記落射照明光として、エバネッセント照明光を含む暗視野照明光を適用することができる。また、上記第1〜第3の実施の形態では、液浸系の油浸対物レンズの例を示したが、本発明は乾燥系の対物レンズにも適用できる。この場合の構成は、図1,図2,図5の構成からオイル40を削除したものになる。また、上記第1〜第3の実施の形態の構成要素を複合、組み合わせて構成することもできる。【0054】さらに、上述した構成に限らず、対物レンズ3の外枠21とカバー27との間の輪帯状の空間に、観察光軸2と略平行に落射照明光11が導光されるのであればよく、例えば輪帯状の光ファイバーを前記空間上方に設け、前記空間に上方からレーザ光を直接投射するようにしてもよい。【0055】【発明の効果】 本発明によれば、油浸対物レンズのような高いNAを有し作動距離WDの短い対物レンズにおいて、観察光路の外周側の空間でレンズやレンズ保持枠に邪魔されずに落射照明の光路を確保できる対物レンズ及び顕微鏡を提供できる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の第1の実施の形態に係る対物レンズの観察光軸を含む面での縦断面構成図。【図2】本発明の第2の実施の形態に係る対物レンズの観察光軸を含む面での縦断面構成図。【図3】本発明の第2の実施の形態に係る図であり、(a)はプリズムの外観図、(b)はプリズムを8分割した図。【図4】本発明の第2の実施の形態に係るプリズムと共用レンズの結合状態を示す図。【図5】本発明の第2の実施の形態に係る図であり、落射照明光と観察光との成す角度を示す図。【図6】本発明の第3の実施の形態に係る対物レンズの観察光軸を含む面での縦断面構成図【図7】従来例に係る光学顕微鏡の照明系の構成を示す断面図。【図8】従来例に係る光学顕微鏡に用いられる乾燥系の対物レンズの縦断面図。【図9】従来例に係る対物レンズに設けられた鍔の構成を示す上面図。【符号の説明】1…サンプル6a〜6g…レンズ20a〜20g…レンズ保持枠21…外枠27…カバー40…オイル41…共用レンズ42,50,60…レンズ保持枠42a,50a…貫通孔51…プリズム 観察対象からの観察光を入射するレンズの外周側に形成された照明用光路に照明光が入射される対物レンズにおいて、 前記照明用光路を介した前記照明光を前記観察対象に導くとともに、前記観察光を前記レンズに導く共用レンズと、 前記共用レンズを保持するレンズ保持枠と、を備え、 前記レンズ保持枠は、前記照明光を前記共用レンズへ向けて通過させる、少なくとも一つの貫通孔または溝が形成されていることを特徴とする対物レンズ。 観察対象からの観察光を入射するレンズの外周側に形成された照明用光路に照明光が入射される対物レンズにおいて、 前記照明用光路を介した前記照明光を前記観察対象に向けて導光するための、少なくとも一つの貫通孔または溝を有するレンズ保持枠と、 前記レンズ保持枠に保持され、前記貫通孔または溝を通して導光された前記照明光を前記観察対象に導くとともに、前記観察光を前記レンズに導く共用レンズと、 を具備したことを特徴とする対物レンズ。 前記貫通孔または溝には、光透過性を有する透明部材が挿設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の対物レンズ。 前記レンズ保持枠は、さらに、前記貫通孔または溝、及び前記共用レンズを通して導光され前記観察対象にて反射された前記照明光を前記照明用光路へ導く貫通穴を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の対物レンズ。 観察対象からの観察光を入射するレンズの外周側に形成された照明用光路に照明光が入射される対物レンズにおいて、 前記照明光を前記観察対象に導くとともに、前記観察光を前記レンズに導く共用レンズと、 前記共用レンズを保持するレンズ保持枠であり、前記照明用光路に入射される前記照明光を前記共用レンズへ向けて通過させる透明部材で形成されたレンズ保持枠と、 を具備したことを特徴とする対物レンズ。 観察対象を照明する光源と、 前記観察対象からの観察光を入射するレンズと、前記レンズの外周側に形成され照明光が入射される照明用光路と、を有する対物レンズと、 前記光源から出射された照明光を、前記対物レンズの前記照明用光路に導光する照明光学系と、を具備し、 前記対物レンズは、 前記照明光を前記観察対象に導くとともに、前記観察対象からの前記観察光を前記レンズに導く共用レンズと、前記共用レンズを保持するとともに、前記照明光を前記共用レンズへ向けて通過させる、少なくとも一つの貫通孔または溝が形成されたレンズ保持枠と、を有することを特徴とする顕微鏡。


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