タイトル: | 特許公報(B2)_抗男性ホルモン剤組成物 |
出願番号: | 1997195063 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | A61K 31/11,A61K 31/19,A61P 5/24,A61P 17/10,A61P 17/14,A61P 13/08,A61K 8/35,A61K 8/36,A61Q 7/00,A61K 8/02 |
木崎 淳 松山 芳浩 坂野 俊宏 藤原 延規 中口 修 JP 4091145 特許公報(B2) 20080307 1997195063 19970703 抗男性ホルモン剤組成物 株式会社マンダム 390011442 清原 義博 100082072 木崎 淳 松山 芳浩 坂野 俊宏 藤原 延規 中口 修 20080528 A61K 31/11 20060101AFI20080501BHJP A61K 31/19 20060101ALI20080501BHJP A61P 5/24 20060101ALI20080501BHJP A61P 17/10 20060101ALI20080501BHJP A61P 17/14 20060101ALI20080501BHJP A61P 13/08 20060101ALI20080501BHJP A61K 8/35 20060101ALI20080501BHJP A61K 8/36 20060101ALI20080501BHJP A61Q 7/00 20060101ALI20080501BHJP A61K 8/02 20060101ALI20080501BHJP JPA61K31/11A61K31/19A61P5/24A61P17/10A61P17/14A61P13/08A61K8/35A61K8/36A61Q7/00A61K8/02 A61K 31/11 A61K 31/19 A61P 1/00-43/00 A61K 8/02 A61K 8/35 A61K 8/36 A61Q 7/00 REGISTRY(STN) CAplus(STN) MEDLINE(STN) EMBASE(STN) BIOSIS(STN) JMEDPlus(JDream2) JST7580(JDream2) JSTPlus(JDream2) 特開昭58−057314(JP,A) 特開平07−109230(JP,A) 特開平04−342517(JP,A) 特開平05−194204(JP,A) ABRAMOVICI, A., et al.,Sebaceous Glands Changes Following Topical Application of Citral,Acta Dermto-Venereologica,1983年,63(5),pp. 428-431 1 1999021235 19990126 12 20040603 早乙女 智美 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、抗男性ホルモン剤原料及び組成物に関し、その目的は、脱毛やにきびの予防及び治療に有効で、また、場合によっては良性前立腺過形成の治療にも用いることができ、しかも天然物由来で安全性の高い抗男性ホルモン剤原料及び組成物を提供することにある。【0002】【従来の技術】男性ホルモンであるテストステロンの作用機構は複雑であり、本来のホルモンとして作用するだけでなく、プロホルモンとしても作用する。つまり、テストステロンは生体内で、還元酵素である5α−レダクターゼにより還元され、活性型男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(以下、DHTと称す)となり、このDHTもまた種々のホルモン作用を有する。DHTの主なホルモン作用としては、毛母細胞への栄養供給を阻害して脱毛を促進する作用、にきびを発生させる作用があり、その他に良性前立腺過形成を強く刺激する作用もあると言われている。【0003】これらの見地から、テストステロンをDHTに代謝する還元酵素5α−レダクターゼの活性を阻害することにより、脱毛やにきびの予防及び治療、また良性前立腺過形成の治療が可能であると考えられている。尚、上記した良性前立腺過形成とは、前立腺の中葉の成長のことで、これにより尿道が圧迫され塞ぎはじめる。良性前立腺過形成の治療としては、前立腺の全部または一部の外科的切除が最も有効とされているが、最近では、5α−レダクターゼの活性阻害体が良性前立腺過形成の治療に導入されている。【0004】上記した還元酵素5α−レダクターゼの活性阻害物質としては、従来より2−メチル−5−イソプロペニルシクロヘキセン−3−オン(以下、l−カルボンと称す)が一般に用いられている。【0005】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記したl−カルボンは、その含有率が低いとき、5α−レダクターゼの活性を阻害する効果が著しく低下するという問題点が存在する。一方、l−カルボンの含有率を高くすると、その効果は高くなるが、l−カルボン特有の香りが強くなりすぎたり、また、粘稠性があるため、化粧品等に添加すると、その使用感が悪くなるという問題点が生じ、l−カルボンの使用量を多量とすることも、少量とすることもいずれも好ましくなかった。そこで、低含有率でも優れた5α−レダクターゼの活性阻害効果を発揮する抗男性ホルモン剤原料及び抗男性ホルモン剤組成物の創出が望まれていた。【0006】【課題を解決するための手段】 本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、請求項1に係る発明は、次式3(化3)で示されるシトラール及び/又は次式4(化4)で示されるゲラニウム酸からなる抗男性ホルモン剤原料が含有されてなる化粧品、医薬品あるいは医薬部外品であることを特徴とする抗男性ホルモン剤組成物に関する。【化3】【化4】【0007】【発明の実施の形態】本発明者は、シトラール及びゲラニウム酸が、5α−レダクターゼの活性阻害能を有することを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明においては、シトラール及び/又はゲラニウム酸を抗男性ホルモン剤原料とする。尚、後記実施例において、シトラール及びゲラニウム酸が優れた活性阻害能を有することをより明確にする。【0008】 シトラールとは、レモンの香気を持つ種々の精油中に存在する物質で、例えば、レモングラス油、レモン油、マンダリン油等に存在し、特に、レモングラス油には多く存在する(70〜80%)。このシトラールは、次式5(化5)で示され、2つの立体異性体(シス型及びトランス型)が存在する。尚、天然物としてのシトラールは、この2つの異性体の混合物で、混合率はトランス型が80〜90%、シス型が10〜20%である。【化5】【0009】天然物としてのシトラールを上記レモングラス油から得る場合、まず、葉茎を刈り取ったレモングラス(Cymbopogon flexuous (D.C.) Staps) を水に浸漬して加熱し、その後水蒸気蒸留を行うことによりレモングラス油を得る。その後、このレモングラス油を分留することにより得ることができる。【0010】シトラールは、上述したように、レモングラス油等の精油を分留することにより得ることができるが、工業的にはゲラニオール又はネロールを金属銅上で接触空気酸化することにより製造される。また、ゲラニオール合成反応の中間物質であるデヒドロリナロールを異性化することにより、或いは同じくゲラニオール合成反応の中間物質であるミルセンを異性化したのち加水分解することにより得ることもできる。【0011】 ゲラニウム酸は上記シトラールを酸化銀で酸化することにより得られる物質で、次式6(化6)で示される。【化6】【0012】本発明においては、上記シトラール及びゲラニウム酸を単独で、或いは混合して抗男性ホルモン剤原料とすることができる。混合して使用する場合、その混合比は特に限定されない。【0013】抗男性ホルモン剤組成物中のシトラール及び/又はゲラニウム酸の配合量は、組成物中0.01〜10重量%が好ましいが、特に限定はされない。0.01重量%未満ではシトラール及び/又はゲラニウム酸による効果が十分発揮されず、また10重量%を超えてもそれ以上の効果は期待できず、いずれの場合も好ましくないからである。【0014】上記抗男性ホルモン剤原料を含有する抗男性ホルモン剤組成物は化粧品、医薬部外品あるいは医薬品として用いることができる。例えば、育毛・養毛を目的とするヘアトニック、ヘアクリーム、ヘアトリートメント等の化粧品、にきびの予防、しみ、そばかすの緩和等特定の使用目的を有した化粧用クリーム、乳液等の化粧品或いは薬用化粧品(医薬部外品)、更には、にきびや良性前立腺過形成の治療を目的とした医薬品として用いることができる。医薬品として使用する場合には、1mg〜1000mg/日を2〜3回に分けて施用すればよい。【0015】本発明に係る抗男性ホルモン剤組成物には、上記抗男性ホルモン剤原料以外に、以下のような物質が適宜配合される。例えば、育毛・養毛成分として、ビタミンE及びその誘導体、センブリエキス、ニンニクエキス、セファランチン、塩化カルプロニウム、アセチルコリン等の血行促進剤、トウガラシチンキ、カンタリスチンキ、ショウキョウチンキ、ノニル酸バニルアミド等の局所刺激剤、サリチル酸、レゾルシン、乳酸などの角質溶解剤、プラセンタエキス、ペンタデカン酸グリセリド、パントテニルエチルエーテル、ビオチン、ヒノキチオール、アラントイン等の代謝賦活剤、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸等の消炎剤、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、ジンクピリチオン、ヒノキチオール等の殺菌剤、メントール、カンフル等の清涼剤、その他女性ホルモン等が適宜配合される。また、アスコルビン酸やその誘導体、イオウ製剤、グルタチオン等の美白剤、或いは保湿剤、紫外線吸収剤、ビタミン類等、通常使用されている公知の添加剤を適宜配合することもできる。【0016】更に、本発明の効果を損なわない範囲で、アルコ−ル、多価アルコール、水溶性高分子、酸化防止剤、pH調整剤、紫外線防止剤、金属イオン封鎖剤、増粘剤、界面活性剤、精製水、香料、防腐剤、抗菌剤、油剤、高級脂肪酸、脂肪酸エステル、保湿剤、清涼剤、色素等の通常の化粧品成分、或いはホルモン類、ビタミン類、アミノ酸類、収れん剤及び胎盤抽出物、エラスチン、コラーゲン、ムコ多糖、アロエ抽出物、ヘチマ水、ローヤルゼリー、バーチ、ニンジンエキス、カモミラエキス、甘草エキス、サルビアエキス、アルテアエキス、セイヨウノコギリソウエキス等の生薬成分をはじめとする動植物抽出成分等特殊配合成分を、目的に応じて適宜任意に配合してもよい。【0017】本発明に用いられるシトラール及びゲラニウム酸は天然物を由来としており、安全性の高い物質である。以下、シトラール及びゲラニウム酸についての試験結果に基づいて、シトラール及びゲラニウム酸の安全性について説明する。毒性試験として、ラット、マウス、ウサギを用いて、シトラール及びゲラニウム酸の50%致死量(LD50)を調べた。シトラールについての結果を表1に、ゲラニウム酸についての結果を表2に示す。【表1】【表2】【0018】次に、刺激性試験について説明する。シトラール及びゲラニウム酸をヒト、ウサギ、ブタ、ギニアピッグの皮膚に塗布した後1〜2日放置し、肌の状態を調べて以下の基準で評価した。○;非常に滑らかな状態である。△;一部に肌荒れが起きている。×;刺激性が強く全体に肌荒れがおきている。シトラールについての結果を表3に、ゲラニウム酸についての結果を表4に示す。【表3】【表4】【0019】また、シトラールの生殖試験として、妊娠前及び妊娠後のラットを用い、胎児に異常が起こる最小投与量(TDL0 )を調べた。結果を表5に示す。【表5】【0020】更に、シトラールの変異原性試験として、枯草菌を用いて、DNA複製の際の塩基配列の変化を調べた結果、塩基配列に変化が起こる最小投与量は2222μg/discであった。【0021】上記試験結果から、シトラール及びゲラニウム酸は安全性の高い物質であると言える。【0022】【実施例】以下、本発明を実施例及び比較例に基づき詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。(実施例1〜3及び比較例1)シトラールの標準品(和光純薬製)を実施例1、ゲラニウム酸の標準品(Fluka製)を実施例2、シトラールとゲラニウム酸を3:1の割合で混合したものを実施例3、l−カルボン(和光純薬製)を比較例1の試料とし、以下に記す試験方法に基づき5α−レダクタ−ゼを触媒とするテストステロンをDHTに代謝する酵素反応の阻害率を調べた。【0023】(試験方法)テストステロン−5α−レダクタ−ゼ液として、ラット肝臓のホモジネ−トの9000×g上清画分(以下、S−9と称す)を用いた。また、試験に用いるテストステロンとしては、0.576mg/mlのテストステロン−プロピレングリコ−ル溶液1.5mlに、1mg/mlのβ−NADPH/5mM−Tris−HCl緩衝液を5.0ml加えた溶液(以下、溶液Aと称す)を準備した。【0024】実施例1〜3及び比較例1の試料それぞれ7.75mgにエタノール0.25mlを添加して試料溶液とした。前述の溶液A5.0mlにこの試料溶液を添加し、更にS−9を1.0mlずつ加えたものを反応液とした。この時、試料の濃度は反応液中で0.1重量%であった。同様に、試料の反応液中での濃度が0.001重量%の反応液を得た。【0025】上記の反応液を、十分に攪拌したあと、37℃で30分間インキュベートし、その後、ジクロロメタン5.0mlを反応停止剤として添加して反応を止めた。次に、内部標準物質として、5.0mg/mlのプロゲステロン−エタノール溶液を0.1ml加え、十分に攪拌した。攪拌後、ジクロロメタン層を分取し、濃縮した後に、試料中の残留テストステロン、反応生成物であるDHT、アンドロスタンジオールをガスクロマトグラフィーを用いて、定量分析した。このガスクロマトグラフィーによる定量分析の条件は、DB−17をカラムに用い、カラム温度を240℃とした。また、検出はFIDを用いて行った。【0026】ガスクロマトグラフィーの各成分のピーク面積から、各成分の化合物量を求め、次式(数1)に基づいて、5α−レダクタ−ゼを触媒とするテストステロンをDHTに代謝する酵素反応の阻害率を算出した。【数1】a;検体を添加しないときの残留テストステロン量b;検体を添加しないときのDHT、アンドロスタンジオールの総量a’;検体添加時の残留テストステロン量b’;検体添加時のDHT、アンドロスタンジオールの総量【0027】試験結果を表6に示す。【表6】【0028】表6の結果から、シトラール及びゲラニウム酸は、低含有率でも優れた5α−レダクタ−ゼ活性阻害能を発揮することがわかる。【0029】以下、本発明に係る抗男性ホルモン剤原料剤配合した抗男性ホルモン剤組成物を示す。【0030】【0031】【0032】【発明の効果】 以上詳述した如く、請求項1に係る発明は、次式7(化7)で示されるシトラール及び/又は次式8(化8)で示されるゲラニウム酸からなる抗男性ホルモン剤原料が含有されてなる化粧品、医薬品あるいは医薬部外品であることを特徴とする抗男性ホルモン剤組成物に関するものであるから、以下のような効果を奏する。【化7】【化8】【0033】即ち、シトラール及びゲラニウム酸は低含有率でも優れた5α−レダクタ−ゼ活性阻害能を発揮するため、このシトラール及び/又はゲラニウム酸からなる抗男性ホルモン剤原料は、男性ホルモンであるテストステロンを活性型男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT)に代謝する還元酵素である5α−レダクターゼの活性を阻害して、DHTによる脱毛促進や、にきびの発生を抑えることができる。従って、この抗男性ホルモン剤原料が含有されてなる化粧品、医薬品、医薬部外品は、脱毛やにきびの予防や治療に有効で、また、場合によっては良性前立腺過形成の治療にも用いることができるという優れた効果を奏する。また、シトラール及びゲラニウム酸は天然物を由来とする物質であるから、安全性の高い化粧品、医薬品あるいは医薬部外品とすることができる。 次式1(化1)で示されるシトラール及び/又は次式2(化2)で示されるゲラニウム酸からなる抗男性ホルモン剤原料が含有されてなる化粧品、医薬品あるいは医薬部外品であることを特徴とする抗男性ホルモン剤組成物。