タイトル: | 特許公報(B2)_β−ラクタム誘導体の製造法 |
出願番号: | 1997184414 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07D 501/04,C07D 499/08,A61K 31/431,A61K 31/546,A61P 31/04 |
亀山 豊 JP 4138911 特許公報(B2) 20080613 1997184414 19970624 β−ラクタム誘導体の製造法 大塚化学ホールディングス株式会社 000206901 田村 巌 100081536 亀山 豊 20080827 C07D 501/04 20060101AFI20080807BHJP C07D 499/08 20060101ALI20080807BHJP A61K 31/431 20060101ALN20080807BHJP A61K 31/546 20060101ALN20080807BHJP A61P 31/04 20060101ALN20080807BHJP JPC07D501/04C07D499/08A61K31/431A61K31/546A61P31/04 C07D 501/00-501/62 C07D 499/00-499/82 CAplus(STN) REGISTRY(STN) 特開昭52−106891(JP,A) 特開昭61−263984(JP,A) 特開昭61−118329(JP,A) 特開昭61−293987(JP,A) 1 1999012276 19990119 12 20040401 ▲高▼岡 裕美 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、β−ラクタム誘導体の製造法に関する。本発明のβ−ラクタム誘導体は例えばセファロスポリン系注射剤として有用なセファゾリン(最新抗生物質要覧第9版記載)の製造中間体として用いられる。【0002】【従来の技術】抗生物質として使用されるβ−ラクタム誘導体は、通常カルボキシル基を分子内に持ち、多くの場合その遊離カルボン酸またはその医薬品上許容される塩の形態で用いられる。しかしながら、β−ラクタム系抗生物質を合成する工程に於いて多くの場合、それらカルボキシル基は適当な保護基によって保護されており、最終的にその保護基を分子内の他の部分を破壊することなく収率よく脱離する必要がある。【0003】従来、一般式(1)A−COO−X (1)(式中Aはβ−ラクタム誘導体残基を示す。Xはフェニル環上に置換基として電子供与性基を有するベンジル基またはフェニル環上に電子供与性基を有することのあるジフェニルメチル基を示す。)で表されるカルボキシル基が保護されたβ−ラクタム誘導体のカルボン酸保護基Xを脱離して、一般式(2)A−COOH (2)(式中Aは前記と同じ)で表されるβ−ラクタム誘導体を得る方法としては、例えば一般式(1)のβ−ラクタム誘導体を貴金属触媒を用いて接触還元する方法、一般式(1)のβ−ラクタム誘導体を酸で処理する方法等が知られている。さらに後者の方法にはトリフルオロ酢酸を使用する方法〔J. Am. Chem. Soc.,91, 5674 (1969)〕、蟻酸を使用する方法〔Chem. Pharm. Bull., 30, 4545(1982)〕、アニソール存在下に塩化アルミニウムと反応させる方法〔tetrahedron Lett., 2793(1979)〕、フェノール類による方法〔J. org, Chem., 56, 3633(1991)〕等がある。しかるにこれら従来の方法には以下に示す欠点がある。【0004】貴金属触媒を用いて接触還元する方法では、通常β−ラクタム抗生物質はスルフィド結合を分子内に有しているため、それが触媒毒となり結果的に高価な貴金属触媒を多量に使用する必要がある。しかも、該方法は、同じ分子内にニトロ基や炭素ー炭素多重結合のような還元され得る基を有しているβ−ラクタム誘導体には適用できない。更に保護基がフェニル環上に置換基として電子供与性基を有するベンジル基もしくはフェニル環上に置換基として電子供与性基を有するジフェニルメチル基である場合はこれらの基を脱離できない場合が多い。【0005】酸を使用する方法、例えばトリフルオロ酢酸を使用する方法では、通常高価なトリフルオロ酢酸を多量に使用する必要があり、しかも脱保護反応後、トリフルオロ酢酸の回収再使用をする際にも多量のロスを見込まねばならず、また回収を行っている間に酸に不安定なβ−ラクタム誘導体が分解するため生成したカルボン酸化合物の収率が低下するという欠点がある。また、蟻酸を使用する方法でも高価な98〜99%蟻酸を反応溶媒として大過剰に使用する必要があり、上記トリフルオロ酢酸での反応と同様、回収、再使用を行うと、その間に酸に不安定なβ−ラクタム誘導体が分解するため生成したカルボン酸化合物の収率が低下する。また、アニソール存在下に塩化アルミニウムを使用する方法やフェノール類を使用する方法ではアニソールやフェノール類が脱離した基Xの補足を行うため保護基の再使用は不可能である。このため置換基を有する高価な保護基を使用することはできない。このように、従来の方法では上記一般式(1)で表されるカルボキシル基が保護されたβ−ラクタム誘導体のカルボン酸保護基の脱離を収率よく行い、しかも脱離した保護基の再使用も行える、効率の良い工業的製造法が未だ確立していないのが現状である。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、一般式(1)で表されるカルボキシル基が保護されたβ−ラクタム誘導体のカルボン酸保護基Xを再使用可能なアルコール体として脱離して上記一般式(2)で表されるβ−ラクタム誘導体を高価な試薬を使用することなく効率の良いβ−ラクタム誘導体のカルボン酸を製造し得る新規な技術を提供することにある。本発明の課題はアニソールやフェノール等の脱離基の捕捉剤が不必要で、その結果脱離基がアルコールの状態で回収でき再び保護基の導入反応に使用できる効率の良いβ−ラクタム誘導体のカルボン酸を製造し得る方法を提供することにある。本発明の課題はエーテル系溶媒を使用できるため溶媒の回収が容易となり、且つ、β−ラクタム誘導体が脱保護を受けると同時に反応液中で析出するため、反応液を濾別するのみで容易にβ−ラクタム誘導体を単離できる効率の良いβ−ラクタム誘導体のカルボン酸を製造し得る方法を提供することにある。【0007】【課題を解決するための手段】 本発明は一般式(1)A−COO−X (1)(式中Aはβ−ラクタム誘導体残基を示す。Xはフェニル環上に置換基として電子供与性基を有するベンジル基またはフェニル環上に電子供与性基を有することのあるジフェニルメチル基を示す。)で表されるカルボキシル基が保護されたβ−ラクタム誘導体を、ジオキサン、ジオキソラン及びテトラヒドロフランから選ばれる環状エーテルの少なくとも1種の溶媒中、ハロゲン化アルミニウムで処理して一般式(2)A−COOH (2)(式中Aは前記と同じ)で表されるβ−ラクタム誘導体を得、脱離基XがX−OHとして回収再使用できることを特徴とするβ−ラクタム誘導体の製造法に係る。【0008】本発明の方法によれば、酸に不安定なβ−ラクタム誘導体を脱保護を受けると同時に反応液中から析出させることにより、β−ラクタム誘導体本体の安定性を確保することができ、さらに脱離基が再び保護基の導入反応に使用可能なアルコールの状態で回収される。また、ジオキサンやTHFのようなエーテル系溶媒を使用するため溶媒回収が容易となるほか、β−ラクタム誘導体が反応液中で析出するため、β−ラクタム誘導体の単離も容易になる。【0009】【発明の実施の形態】本明細書においてAで示されるβ−ラクタム誘導体残基としては、下記一般式(3)で表される基を例示できる。【0010】【化1】より具体的には以下に示す基が例示できる。【0011】【化2】【0012】本明細書において示される各基は、具体的には各々次の通りである。ハロゲン原子とは、弗素、塩素、臭素、ヨウ素などを意味する。低級アルキル基とは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの直鎖又は分枝状のC1〜C4アルキル基を意味する。又、アリール基とは、例えば、フェニル、トリル、キシリル、ナフチルなどを意味する。R1としては公知のセファロスポリンの7位の置換基を例示でき、より具体的には例えば、水素原子、メトキシ基、エトキシ基等の低級アルコキシ基、ホルムアミド基等を挙げることができる。【0013】またR2としてはMary C. Griffiths著 USAN and the USP dictionary of drugs namesに記載の公知のペニシリンの6位またはセファロスポリンの7位の置換基を例示でき、より具体的には例えば水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アミド基等を挙げることができる。またアミド基としては、フェノキシアセトアミド、p−メチルフェノキシアセトアミド、p−メトキシフェノキシアセトアミド、p−クロロフェノキシアセトアミド、p−ブロモフェノキシアセトアミド、フェニルアセトアミド、p−メチルフェニルアセトアミド、p−メトキシフェニルアセトアミド、 p−クロロフェニルアセトアミド、p−ブロモフェニルアセトアミド、フェニルモノクロロアセトアミド、フェニルジクロロアセトアミド、フェニルヒドロキシアセトアミド、フェニルアセトキシアセトアミド、α−オキソフェニルアセトアミド、チエニルアセトアミド、ベンズアミド、p−メチルベンズアミド、p−t−ブチルベンズアミド、p−メトキシベンズアミド、p−クロロベンズアミド、p−ブロモベンズアミド、或いは Theodora W. Greene著の”Protective Groups in Organic Synthesis、1981 by John Wiley & Sons. Inc.”(以下、単に「文献」という)の第7章(p218〜287)に記載されている基、或いはフェニルグリシルアミド及びアミノ基の保護されたフェニルグリシルアミド、p−ヒドロキシフェニルグリシルアミド及びアミノ基、水酸基又はその両方が保護された p−ヒドロキシフェニルグリシルアミドを例示できる。フェニルグリシルアミドおよび p−ヒドロキシフェニルグリシルアミドのアミノ基の保護基としては上記文献の第7章(p218〜287)に記載されている基を例示できる。又、p−ヒドロキシフェニルグリシルアミドの水酸基の保護基としては上記文献の第2章(p10〜72)に記載されている基を例示できる。【0014】R3としてはUSAN and the USP dictionary of drugs namesに記載の公知のセファロスポリンの3位の置換基を例示でき、より具体的には例えば水素原子、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等の低級アルコキシ基、ビニル、プロペニル、2,2−ジブロモビニル等の置換及び非置換低級アルケニル基、エチニル基、メチル、エチル等の低級アルキル基、メトキシメチル、エトキシメチル基等の低級アルコキシメチル基、アセトキシメチル基、カルバモイルオキシメチル基、1,2,3−トリアゾール−4−イルチオメチル、5−メチル−1,3,4−チアジアゾール−2−イルチオメチル、1−メチルテトラゾール−5−イルチオメチル、1−スルホメチルテトラゾール−5−イルチオメチル、1−カルボキシメチルテトラゾール−5−イルチオメチル、1−(2−ジメチルアミノエチル)テトラゾール−5−イルチオメチル、1,3,4−チアジアゾール−5−イルチオメチル、1−(2−ヒドロキシエチル)テトラゾール−5−イルチオメチル等のヘテロ環チオメチル基、1−メチルピロリジノメチル基、ピリジニウムメチル基、1,2,3−トリアゾール基等を挙げることができる。【0015】R4としては公知の1−カルバセフェムの2位の置換基を例示でき、より具体的には例えば水素原子、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、メチル、エチル基等の低級アルキル基、メトキシ、エトキシ基等の低級アルコキシ基、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ基等の低級アシルオキシ基、メチルチオ、エチルチオ等の低級アルキルチオ基、1,2,3−トリアゾール−4−イルチオ、5−メチル−1,3,4−チアジアゾール−2−イルチオ、1−メチルテトラゾール−5−イルチオ基等のヘテロ環チオ基等を挙げることができる。【0016】R5としては上記R3で示される基がすべて使用できる。nは0、1または2を示す。また上記オキサセフェム誘導体残基において、破線は2位と3位の炭素が二重結合または3位と4位の二重結合になることを示す。【0017】本明細書に於いて、Xで示されるベンジル基及びジフェニルメチル基のフェニル環上に置換されている電子供与性基としては、たとえばヒドロキシ基、メチル、エチル、tert−ブチル等の低級アルキル基、メトキシ、エトキシ等の低級アルコキシ基を挙げることができる。このジフェニルメチル基には、置換又は非置換のフェニル基がメチレン鎖あるいはヘテロ原子を介して分子内で結合しているタイプのものも含有される。具体例としては、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、ジフェニルメチル基、3,4,5−トリメトキシベンジル基、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシベンジル基、2,4,6−トリメチルベンジル基、ピペロニル基、ジトリルメチル基、ナフチルメチル基、9−アントリル基等を挙げることができる。【0018】本発明で使用される上記一般式(1)のβ−ラクタム誘導体としては、上記一般式に包含されている限り従来公知のものはいずれも使用できる。本発明で使用できるハロゲン化アルミニウムとしては、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム等が使用できるが、塩化アルミニウムを使用するのが好ましい。ハロゲン化アルミニウムの使用量としては、上記化合物(1)に対し、通常1当量用いればよいが、1〜20倍モル当量の範囲で上記の化合物(1)がなくなるまで加えるのがよい。本発明で使用できるエーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等の鎖状ジアルキルエーテル、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジグライム、トリグライム等のエチレングリコールジアルキルエーテル類を挙げることができる。特に好ましい溶媒としては、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフランが挙げられる。また、これらの溶媒は、単独もしくは混合溶媒として用いることも可能である。これら溶媒の使用量は、一般式(1)の化合物1kg当たり0.5〜200リットル程度、好ましくは1〜50リットル程度とするのがよい。反応は−10〜80℃、好ましくは0〜50℃の範囲で行なわれる。【0019】一般式(2)の化合物は、反応終了後、反応液より析出した析出物を濾取するか、もしくは通常の抽出操作或いは晶析操作を行なうことによりほぼ純品として得ることができるが、その他の方法によっても勿論精製することができる。通常の抽出操作の例としては、例えば炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムと疎水性有機溶媒とを加え、一般式(2)のβ−ラクタム誘導体を水層に抽出し、通常の操作により一般式(2)の化合物を高収率で得ることができる。反応液より析出した析出物を濾取する方法でも、通常の抽出操作を行う方法でも、濾液、もしくは疎水性有機溶媒層を濃縮、蒸留もしくは晶析を行うことにより脱離基Xを再生可能なアルコール体(X−OH)として回収できる。【0020】【実施例】以下に実施例、比較例及び参考例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。実施例1一般式(1)の化合物(Aがセファロスポリン誘導体残基、Xがp−メトキシベンジル、R1が水素原子、R2がフェニルアセトアミド基、R3が5−メチル−1,3,4−チアジアゾール−2−イルチオメチル基、nが0、1a)200mg、塩化アルミニウム 200mgを秤り取り、ジオキサン 4mlを加える。この溶液を室温下1時間30分撹拌する。この反応液を酢酸エチル−炭酸水素ナトリウム水溶液にて抽出を行い、有機層は再び炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出する。得られた水溶液は一つにまとめて2規定塩酸によりpH=1〜2とした後、酢酸エチルにより2回抽出を行う。酢酸エチル溶液を減圧下濃縮すると目的のカルボン酸2aが151mg(95%)得られた。1H NMR(Acetone−d6) d 2.70(s, 3H),3.65(s, 2H),3.75(bs,2H),4.35(d,J=14Hz,1H),4.53(d,J=14Hz,1H),5.08(d,J=5Hz,1H),5.78(dd,J=5,9Hz,1H),7.20〜7.45(m,5H),7.87(d,J=9H,1H).【0021】参考例1(保護基Xの回収)上記実施例1の酢酸エチル−炭酸水素ナトリウム水溶液による抽出操作で得られた酢酸エチル溶液(中性成分を含む溶液)を減圧下濃縮し、得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ベンゼン/酢酸エチル=4/1)により精製を行うと、保護基p−メトキシベンジル基がp−メトキシベンジルアルコールとして42mg(90%)得られる。1H NMR(DMSO−d6) d 3.72(s, 3H),4.40(d,J=6Hz,2H),5.02(t,J=6Hz,1H),6.87(d,J=8Hz,2H),7.21(d,J=8Hz,2H).このものは、濃塩酸と処理するのみで容易にp−メトキシベンジルクロリドとなり再びカルボン酸の保護基導入剤として利用される。【0022】比較例1(アニソール/塩化アルミニウム法による保護基Xの回収)一般式(1)の化合物1a 200mgをニトロメタン 2mlに溶解し、アニソール 75mlを加えて3℃に冷却する。これとは別に塩化アルミニウム 200mgを秤り取り、ニトロメタン 2mlを加えて溶解したのち3℃に冷却する。塩化アルミニウムのニトロメタン溶液に1a及びアニソールのニトロメタン溶液をブリッジを用いて滴下する。この温度で2時間反応した後上記実施例1と同様の後処理を行うと2aが145mg(91%)得られた。このときの中性及び塩基性成分を含む酢酸エチル溶液を濃縮し、カラムクロマトグラフにより精製するとp−メトキシベンジル基とアニソールがカップリングした化合物(CH3O−C6H4−CH2C6H4−OCH3、o, p−混合物)が65mg(80%)得られた。【0023】実施例2〜4実施例1と同様の反応を塩化アルミニウムの量と反応時間を変えて行った結果を示す。【0024】【表1】【0025】実施例5〜7実施例1と同様の反応を溶媒と反応時間を変えて行った結果を示す。【0026】【表2】【0027】実施例8一般式(1)の化合物(Aがセファロスポリン誘導体残基、Xがp−メトキシベンジル、R1が水素原子、R2がフェニルアセトアミド基、R3が1−メチルテトラゾールゾール−5−イルチオメチル基、nが0、1b)200mg、塩化アルミニウム 200mgを秤り取り、ジオキサン 4mlを加える。この溶液を室温下1時間撹拌する。この反応液を酢酸エチル−炭酸水素ナトリウム水溶液にて抽出を行い、有機層は再び炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出する。得られた水溶液は一つにまとめて2規定塩酸によりpH=1〜2とした後、酢酸エチルにより2回抽出を行う。酢酸エチル溶液を減圧下濃縮すると目的のカルボン酸2bが 142mg(90%)得られた。1H NMR(Acetone−d6) d 3.65(s, 2H), 3.75(s, 2H), 3.98(s, 3H),4.37(s, 2H),5.06(d, J=5Hz, 1H),5.74(dd,J=5, 9Hz, 1H),7.27〜7.40(m,5H),7.90(d,J=9Hz,1H).【0028】実施例9一般式(1)の化合物(Aがセファロスポリン誘導体残基、Xがp−メトキシベンジル、R1が水素原子、R2がフェニルアセトアミド基、R3がアセトキシメチル基、nが0、1c)200mg、塩化アルミニウム 200mgを秤り取り、ジオキサン 4mlを加える。この溶液を室温下2時間撹拌する。この反応液を酢酸エチル−炭酸水素ナトリウム水溶液にて抽出を行い、有機層は再び炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出する。得られた水溶液は一つにまとめて2規定塩酸によりpH=1〜2とした後、酢酸エチルにより2回抽出を行う。酢酸エチル溶液を減圧下濃縮すると目的のカルボン酸2cが147mg(96%)得られた。1H NMR(Acetone−d6) d 2.04(s, 3H),3.52(d, J=17Hz,1H),3.61(d, J=17Hz, 1H),3.67(s, 2H),4.86(d, J=14Hz, 1H),5.04(d, J=14Hz,1H),5.08(d, J=5Hz,1H),5.35〜5.60(bs, 3H),5.80(dd,J=5,8Hz,1H),7.27〜7.45(m, 5H),7.87(d, J=8Hz,1H).【0029】実施例10一般式(1)の化合物(Aがペニシリン誘導体残基、Xがジフェニルメチル、R1が水素原子、R2が水素原子、R5が1,2,3−トリアゾール−1−イル基、nが2、1d)200mg、塩化アルミニウム 200mgを秤り取り、ジオキサン4mlを加える。この溶液を室温下1時間撹拌する。この反応液を酢酸エチル−炭酸水素ナトリウム水溶液にて抽出を行い、有機層は再び炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出する。得られた水溶液は一つにまとめて2規定塩酸によりpH=1〜2とした後、酢酸エチルにより2回抽出を行う。酢酸エチル溶液を減圧下濃縮すると目的のカルボン酸2dが118mg(92%)得られた。1H NMR(DMSO−d6)d 1.31(s, 3H),3.29(dd, J=1, 16Hz, 1H), 3.68(dd, J=4, 16Hz, 1H), 4.76(s, 1H),4.89(d, J=15Hz, 1H),5.16(dd, J=1, 4Hz, 1H),5.22(d, J=15Hz, 1H),7.76(d, J=1Hz, 1H), 8.07(d, J=1Hz, 1H).【0030】参考例2(保護基Xの回収)上記実施例10の酢酸エチル−炭酸水素ナトリウム水溶液による抽出操作で得られた酢酸エチル溶液(中性成分を含む溶液)を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ベンゼン/酢酸エチル=5/1)により精製を行うと保護基ジフェニルメチル基がベンズヒドロールとして72mg(92%)得られる。1H NMR(DMSO−d6) δ5.67(d,J=4Hz,1H),5.87(d,J=4Hz, 1H),7.14〜7.38(m,10H)【0031】実施例11一般式(1)の化合物(Aがセファロスポリン誘導体残基、Xがジフェニルメチル、R1が水素原子、R2がフェニルアセトアミド基、R3が塩素原子、nが0、1e)200mg、塩化アルミニウム 200mgを秤り取り、ジオキサン 4mlを加える。この溶液を室温下2時間撹拌する。この反応液を酢酸エチル−炭酸水素ナトリウム水溶液にて抽出を行い、有機層は再び炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出する。得られた水溶液は一つにまとめて2規定塩酸によりpH=1〜2とした後、酢酸エチルにより2回抽出を行う。酢酸エチル溶液を減圧下濃縮すると目的のカルボン酸2eが122mg(90%)得られた。1H NMR(DMSO−d6) d 3.47(d, J=14Hz, 1H),3.55(d, J=14Hz, 1H),3.68(d,J=18Hz,1H),3.95(d, J=18Hz,1H),5.15(d, J=5Hz,1H),5.68(dd, J=5, 8Hz,1H),7.18〜7.32(m, 5H), 9.17(d, J=8Hz,1H)【0032】実施例12一般式(1)の化合物(Aがセファロスポリン誘導体残基、Xがp−メトキシベンジル、R1が水素原子、R2がフェニルアセトアミド基、R3が塩素原子、nが0、1f)200mg、塩化アルミニウム 200mgを秤り取り、ジオキサン 4mlを加える。この溶液を室温下2時間撹拌する。この反応液を酢酸エチル−炭酸水素ナトリウム水溶液にて抽出を行い、有機層は再び炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出する。得られた水溶液は一つにまとめて2規定塩酸によりpH=1〜2とした後、酢酸エチルにより2回抽出を行う。酢酸エチル溶液を減圧下濃縮すると目的のカルボン酸2eが131mg(88%)得られた。得られたカルボン酸2eの1H NMRは実施例11で得られた化合物のそれに完全に一致した。【0033】実施例13一般式(1)の化合物(Aがエキソメチレンセファム誘導体残基、Xがp−メトキシベンジル、R1が水素原子、R2がフェニルアセトアミド基、nが0、1g)200mg、塩化アルミニウム 200mgを秤り取り、ジオキサン 4mlを加える。この溶液を室温下2時間撹拌する。この反応液を酢酸エチル−炭酸水素ナトリウム水溶液にて抽出を行い、有機層は再び炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出する。得られた水溶液は一つにまとめて2規定塩酸によりpH=1〜2とした後、酢酸エチルにより2回抽出を行う。酢酸エチル溶液を減圧下濃縮すると目的のカルボン酸 2gが128mg(87%)得られた。1H NMR(Acetone−d6) d 3.35(d, J=14Hz, 1H), 3.69(d, J=14Hz, 1H), 3.65(s, 2H),5.08(s, 1H),5.28(s,2H),5.34(d, J=5Hz, 1H), 5.57(dd, J=5,9Hz,1H),7.05〜7.45(m, 5H),7.75(d, J=9Hz,1H)【0034】実施例14一般式(1)の化合物(Aがエキソメチレンセファム誘導体残基、Xがジフェニルメチル、R1が水素原子、R2がフェニルアセトアミド基、nが0、1h)200mg、塩化アルミニウム 200mgを秤り取り、ジオキサン 4mlを加える。この溶液を室温下1.5時間撹拌する。この反応液を酢酸エチル−炭酸水素ナトリウム水溶液にて抽出を行い、有機層は再び炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出する。得られた水溶液は一つにまとめて2規定塩酸によりpH=1〜2とした後、酢酸エチルにより2回抽出を行う。酢酸エチル溶液を減圧下濃縮すると目的のカルボン酸 2gが119mg(89%)得られた。得られたカルボン酸 2gの1H NMRは実施例13で得られた化合物のそれに完全に一致した。【0035】実施例15一般式(1)の化合物(Aがエキソメチレンセファム誘導体残基、Xがp−メトキシベンジル、R1が水素原子、R2がフェニノキシアセトアミド基、nが1、1i)200mg、塩化アルミニウム 200mgを秤り取り、ジオキサン 4mlを加える。この溶液を室温下3時間撹拌する。この反応液を酢酸エチル−炭酸水素ナトリウム水溶液にて抽出を行い、有機層は再び炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出する。得られた水溶液は一つにまとめて2規定塩酸によりpH=1〜2とした後、酢酸エチルにより2回抽出を行う。酢酸エチル溶液を減圧下濃縮すると目的のカルボン酸2iが128mg(85%)得られた。1H NMR(Acetone−d6) d 3.80(s, 2H),4.53(s,2H),5.05(s,1H),5.10(d, J=5Hz, 1H),5.40(s,1H),5.70(s, 1H),5.90(dd,J=5,9Hz, 1H),6.85〜7.50(m, 5H),9.65(d, J=9Hz,1H)【0036】参考例3 (セファゾリンの合成)例えば実施例1で得られたカルボン酸2aは以下の手順によりセファゾリンへと誘導することができる。【0037】【化3】【0038】【発明の効果】本発明の方法によれば、カルボキシル基の保護されたβ−ラクタム誘導体(1)から該保護基を簡便な操作で脱離することができる。また本発明では、従来法のごとく高価な試薬を必要とせず、また、アニソールやフェノール等の脱離基の補足剤が不必要なため、脱離基がアルコールの状態で回収でき保護基導入剤を再生可能な形で回収できる。また、本発明の方法では、エーテル系溶媒を使用するため溶媒の回収が容易となるほか、β−ラクタム誘導体が脱保護を受けると同時に反応液中で析出するため、反応液を濾別するのみでβ−ラクタム誘導体を単離でき、当該酸性条件下での高い安定性を確保し、その結果、β−ラクタム誘導体(2)を高収率、高純度で製造できる。 一般式(1)A−COO−X (1)(式中Aはβ−ラクタム誘導体残基を示す。Xはフェニル環上に置換基として電子供与性基を有するベンジル基またはフェニル環上に電子供与性基を有することのあるジフェニルメチル基を示す。)で表されるカルボキシル基が保護されたβ−ラクタム誘導体を、ジオキサン、ジオキソラン及びテトラヒドロフランから選ばれる環状エーテルの少なくとも1種の溶媒中、ハロゲン化アルミニウムで処理して一般式(2)A−COOH (2)(式中Aは前記と同じ)で表されるβ−ラクタム誘導体を得、脱離基XがX−OHとして回収再使用できることを特徴とするβ−ラクタム誘導体の製造法。