タイトル: | 特許公報(B2)_エステル可塑剤の製造方法 |
出願番号: | 1997165867 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07C 67/08,C07C 69/80,C08K 5/10,C08L 27/06,C07B 61/00 |
上石 邦明 武文 忠善 占部 悦生 川端 嗣二 JP 4054921 特許公報(B2) 20071221 1997165867 19970623 エステル可塑剤の製造方法 三菱瓦斯化学株式会社 000004466 上石 邦明 武文 忠善 占部 悦生 川端 嗣二 20080305 C07C 67/08 20060101AFI20080214BHJP C07C 69/80 20060101ALI20080214BHJP C08K 5/10 20060101ALN20080214BHJP C08L 27/06 20060101ALN20080214BHJP C07B 61/00 20060101ALN20080214BHJP JPC07C67/08C07C69/80 AC08K5/10C08L27/06C07B61/00 300 C07C 67/00-69/96 特開昭59−106439(JP,A) 特開昭51−113814(JP,A) 特開平04−149156(JP,A) 3 1999012226 19990119 9 20040611 井上 千弥子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明はエステル可塑剤の製造方法に関し、詳しくは塩化ビニル系樹脂用として用いられる着色度の小さいステル可塑剤を製造する方法に関する。【0002】【従来の技術】エステル可塑剤は塩化ビニル樹脂を始め、各種プラスチックに多く用いられ、種々の性質が重要視される。例えば、医療用器(血液バッグ、輸液セットなど)に広く用いられる可塑化軟質塩化ビニルには、毒性を有する着色不純物を含まない可塑剤、すなわち着色度の小さいエステル可塑剤が要求される。【0003】エステル可塑剤中の着色不純物の成因については、原料に由来するものと製造工程中に生成するものに分けられる。原料中の不純物、例えばアルコール中のアルデヒド、不飽和化合物、イオウ化合物等、或いは酸源からの物、例えば無水フタル酸中のキノン系物質等については、これらの不純物を除去する精製技術が開発されて純度がかなり向上されている。しかし、同一の原料から出発してもエステル化反応条件によってエステルの着色度が異なることがある。【0004】着色度の小さいエステル可塑剤を得る方法として、▲1▼常圧下で有機酸とアルコールを反応させ、モノエステル化を行なう際に、所要量の水を反応槽内に添加して反応液の表面を水蒸気で被覆した状態とすることによって、空気中の酸素が反応液に接触することを防止し、色相を向上させる方法(特開昭51−113814号)、▲2▼エステル反応系中に重亜硫酸を存在させることにより着色度の極めて小さいエステル可塑剤を製造する方法(特開昭51−41742号)、▲3▼有機金属化合物触媒の存在下で、有機酸またはその無水物とアルコールとをエステル化反応させる際に、蓚酸を添加することによって着色度の小さいエステル可塑剤を製造する方法(英国特許第 1,565,663号)、▲4▼カルボン酸エステルを過酸化水素や次亜塩素ソーダなどの酸化剤で処理した後、アルカリ水溶液で処理し、次いで水洗し、更に水素化硼素ナトリウムや次亜リン酸などの還元剤で処理して脱色する方法(特開昭55−22618号)、▲5▼カルボン酸類とアルコールとを反応させ、得られた反応生成物に特定の条件でオゾン化空気を通して精製する方法(特開昭56−39296号)、▲6▼Pd触媒の存在下でエステルを水素化条件にて連続的に脱色する方法(特開昭56−110650号)などが知られている。【0005】【発明が解決しようとする課題】以上の着色度の小さいエステル可塑剤を得る方法は、反応液の表面を水蒸気で被覆した状態とする▲1▼を除き、いずれの方法においても添加剤や触媒等を用いなければならない。▲1▼の反応液の表面を水蒸気で被覆する方法は効果が小さく、他の添加剤や触媒等を用いる方法では操作が煩雑で、そのコストが大きい。本発明の目的は、上記の如き添加剤や触媒等を用いずに、簡単な操作でかつ工業的に有利に着色度の小さいエステル可塑剤を製造する方法を提供することにある。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、エステル化反応前の原料供給工程において脱酸素処理を行うことによりエステル可塑剤の着色度が著しく低減されることを見出し、本発明に到達した。即ち本発明は、予め原料アルコール中の溶存酸素を除去した後、有機金属化合物触媒の存在下で、有機酸またはその無水物と該アルコールとをエステル化反応させることを特徴とするエステル可塑剤の製造方法である。【0007】本発明のエステル可塑剤は、予め原料アルコール中の溶存酸素を除去した後、有機金属化合物触媒の存在下で、有機酸またはその無水物と該アルコールとをエステル化反応させ、得られた反応生成物にアルカリ水溶液を加えて、未反応酸の中和と触媒の加水分解を行い、さらに炭酸ガスを吹き込んで残存アルカリを炭酸塩に転化させ、過剰アルコールを回収した後、精密濾過および/または吸着処理による精製を行うことにより好適に製造される。【0008】【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。本発明のエステル化反応に用いられる有機金属化合物触媒には、エステル化反応の温度で触媒活性を示すテトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−2−エチルヘキシルチタネートのようなアルキルチタネート類や、スズシトラエチレート、ブチルスズマレトのような有機スズ化合物が好適に用いられる。【0009】またエステル化反応に用いられる有機酸またはその無水物として、安息香酸、トルイル酸で代表される芳香族モノカルボン酸;フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメシン酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸で代表される芳香族多価カルボン酸またはその無水物;アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の脂肪族多価カルボン酸;マレイン酸、フマル酸等の脂肪族不飽和多価カルボン酸;オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。【0010】更にエステル化反応に用いられる脂肪族飽和一価アルコールとして、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、イソオクタノール、ブテン二量体のオキソ反応により製造されるイソノニルアルコール、デカノール、プロピレン三量体のオキソ反応により製造されるイソデシルアルコール、ウンデカノール、トリデカノール等;脂肪族多価アルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等が挙げられる。これらのアルコールは任意に混合して使用することもできる。【0011】エステル化反応は、通常、有機酸またはその無水物に予め脱酸素したアルコールを加え、有機金属化合物触媒の存在下、不活性ガス雰囲気中、150〜220℃で生成水を系外に除去しながら3〜4時間反応させることにより行われる。得られた反応生成物にアルカリ水溶液を加え、未反応酸の中和と触媒の加水分解を行い、炭酸ガスを吹き込んで残存アルカリを炭酸塩に転化させ、過剰アルコールを回収した後、精製することによりエステル可塑剤が得られる。反応後のエステル精製を容易にするために、反応率をできるだけ99.8%以上とすることが望ましい。【0012】本発明のエステル可塑剤の製造方法は、あらかじめ原料アルコール中の溶存酸素を除去することによって、エステル化反応中酸素の混入により促進される着色不純物の生成を実質的に低減させることができ、着色度の小さいエステル可塑剤を製造することが特徴である。アルコール中の溶存酸素の除去については、例えば酸素を含有しない不活性ガスでバブリングさせる方法、減圧により脱酸素を行なう方法、蒸留による脱酸素法等が挙げられる。本発明においては、いずれの酸素除去法でも適用できる。不活性ガスでバブリングさせる場合では、窒素などの不活性ガスをアルコール 1リッター当たり20Nリッター以上とすることが好ましく、不活性ガス使用量がこれより少ないと、脱酸素処理の所要時間が長くなる。減圧により脱酸素を行なう場合の圧力はアルコールの種類により異なり、アルコールが蒸発しないための適当な圧力、温度を選定する必要がある。脱酸素処理温度は、アルコールの種類により異なるが、一般的に30〜100℃である。30℃未満では長時間の脱酸素処理が必要となる。100℃以上の温度では、アルコールが蒸発するので、蒸発したアルコールを回収するための設備が必要となり、経済的ではない。【0013】本発明のエステル可塑剤の製造方法は、濾過助剤を用いた精密濾過や吸着処理により精製することによって、可塑剤としての特性を低下させる不純物、例えば半エステル塩、炭酸塩、酸化チタン等を除去し、色相が改善されると共に、優れた体積固有抵抗値を有するエステル可塑剤が得られる。精密濾過に用いられる濾過助剤としては、一般に市販されている珪藻土から製造された濾過助剤〔例えばラジオライト(昭和化学工業株式会社製)、セライト(ジョンズ・マンビル社製)等〕;真珠岩から製造された濾過助剤〔例えばトプコパーライト(昭和化学工業株式会社製)、ダイカライトパーライト(ダイカライトオリエント社製)〕等が挙げられる。【0014】濾過助剤は粒度が異なる助剤の混合使用や、他の種類の助剤との併用で最適助剤を選定することができるが、精密濾過を行うために、粒度5ミクロン以下の濾過助剤が全体の20%以上を占める必要があり、全体の30%以上を占める割合であることが望ましい。濾過助剤の使用量は濾過面積1m2 当り1〜5kg、好ましくは2〜4kgであり、濾過速度は濾過面積1m2 当り10リットル/min 以下、好ましくは3〜7リットル/min である。【0015】吸着処理に用いられる吸着剤としては、活性アルミナ、活性白土、活性炭、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等があげられる、これらは単独で用いても併用してもよい。吸着剤の使用量は、一般に粗エステルの重量に対して0.1重量%〜1重量%が好適である。【0016】濾過方法については、予め濾過助剤のスラリーを濾過して濾材表面に濾過助剤のケーキ層を形成させ、これを濾材として原液のスラリーを濾過するプリコート法、或いはスラリー原液に適量の濾過助剤を混入して濾過するボディフィード法等がある。一方、吸着操作については、吸着剤を溶液に加え、撹拌して吸着を行なう方法、即ち接触濾過吸着法、或いは吸着剤を充填して層を溶液を通して吸着させる方法、即ち固定相吸着法等がある。本発明においては、いずれの濾過方法および吸着法でも適用できる。吸着温度及び濾過温度は、可塑剤の種類により異なるが、一般的に30〜120℃、好ましくは50〜100℃である。【0017】【実施例】次に実施例により本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。なお以下の実施例および比較例において、得られた可塑剤の色相はJIS K−6751によりAPHAを測定した。【0018】実施例12−エチルヘキシルアルコール5980g(46モル)を予め30mmHG(絶対圧)に減圧し、50℃で攪拌しながら30分間の脱酸素処理を行った。該アルコールと無水フタル酸2960g(20モル)を無酸素窒素ガスで置換された反応器に入れて、これにテトライソプロピルチタネート6gを添加して、撹拌加熱190℃〜220℃で3時間エステル化反応を行った。ジエステル化率は99.9%であった。該反応液を冷却し、これに水酸化ナトリウム2%水溶液160gを添加し、80〜90℃で撹拌しながら30分間中和及び触媒の加水分解を行なった後、炭酸ガスを吹き込んで残存アルカリを炭酸塩に転化させ、スチームストリッピングにより過剰の2−エチルヘキシルアルコールを完全に除去回収した。得られた粗エステルの1000gを分取し、6gのラジオライトR−#100(昭和化学工業(株)製・濾過助剤)を用いて、ガラス濾過器17G−4でプリコートを行なった後、上記の粗エステルを50℃で1時間かけて濾過して塩化ビニル用のエステル可塑剤を製造した。得られた可塑剤の色相を測定し、結果を表1に示す。【0019】実施例2実施例1の粗エステルの1000gを、6gのラジオライトR−#100と1gの活性炭を用い、実施例1と同様の条件で精製した。結果を表1に示す。【0020】実施例3実施例1の粗エステルの1000gを、6gのラジオライトR−#100と6gのセカードKW(品川白焼瓦(株)製・アルミナ−シリカ系吸着剤)と1gの活性炭を用い、実施例1と同様の条件で精製した。結果を表1に示す。【0021】実施例4〜52−エチルヘキシルアルコール2990g(23モル)を予め常温で1時間、攪拌しながら酸素を含有しない窒素ガス100Nl/hでバブリングによる脱酸素処理を行った。該アルコールと無水フタル酸1480g(10モル)とテトライソプロピルチタネート3gをとり、実施例1〜2と同様の精製した。結果を表1に示す。【0022】比較例1〜3実施例1において、2−エチルヘキシルアルコール中の溶存酸素を除去しないこと以外は実施例1と同様にして粗エステルを得た。この粗エステルの1000gを実施例1〜3と同様の条件で精製した。結果を表1に示す。【0023】【表1】【0024】実施例6〜10実施例1において、アルコールとしては2−エチルヘキシルアルコールの代りに、イソノニルアルコールを使用した以外は実施例1と同様にして粗エステルを得た。この粗エステル1000gを実施例1〜5と同様の条件で精製した。結果を表2に示す。【0025】比較例4〜6実施例6において、イソノニルアルコール中の溶存酸素を除去しないこと以外は実施例6と同様にして粗エステルを得た。この粗エステル1000gを用い、実施例1〜3と同様の条件で精製した。結果を表2に示す。【0026】【表2】【0027】実施例11〜13実施例1において、用いた無水フタル酸の代りに無水トリメリット酸を用い、それ以外は実施例1と同様にして粗エステルを得た。この粗エステルの1000gをとり、80℃で実施例1〜3と同様に精製した。結果を表3に示す。【0028】比較例7〜9実施例11において、2−エチルヘキシルアルコール中の溶存酸素を除去しないこと以外は実施例11と同様にして粗エステルを得た。この粗エステルの1000gをとり、実施例11〜13と同様の条件で精製した。結果を表3に示す。【0029】【表3】【0030】【発明の効果】以上の実施例及び比較例の結果から明らかなように、本発明により予め原料アルコール中の溶存酸素を除去することによって、エステル化反応における着色不純物の生成を実質的に低減させることができ、着色度の小さいエステル可塑剤が容易に得られる。本発明の方法により添加剤や触媒等を用いずに、簡単な操作で着色度の小さいエステル可塑剤を得ることができるので、本発明の工業的意義が大きい。 予め原料アルコール中の溶存酸素を不活性ガスでバブリングさせる方法、減圧により脱酸素を行う方法で除去した後、有機金属化合物触媒の存在下で、有機酸またはその無水物と該アルコールとをエステル化反応させることを特徴とするエステル可塑剤の製造方法。 原料アルコール中の溶存酸素の除去を30〜100℃の温度で行う請求項1記載のエステル可塑剤の製造方法。 エステル化反応により得られた反応生成物にアルカリ水溶液を加えて、未反応酸の中和と触媒の加水分解を行い、さらに炭酸ガスを吹き込んで残存アルカリを炭酸塩に転化させ、過剰アルコールを回収した後、精密濾過および/または吸着処理による精製を行う請求項1または請求項2記載のエステル可塑剤の製造方法。