生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_痔疾患局所治療用軟膏組成物
出願番号:1997139261
年次:2009
IPC分類:A61K 9/06,A61K 31/7028,A61K 33/24,A61K 47/14,C07H 15/18,A61P 1/00


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立道 宏規 椿野 美和 野田 悦之助 JP 4246277 特許公報(B2) 20090116 1997139261 19970513 痔疾患局所治療用軟膏組成物 天藤製薬株式会社 592066572 岡本 昭二 100087815 竹内 卓 100062498 立道 宏規 椿野 美和 野田 悦之助 20090402 A61K 9/06 20060101AFI20090312BHJP A61K 31/7028 20060101ALI20090312BHJP A61K 33/24 20060101ALI20090312BHJP A61K 47/14 20060101ALI20090312BHJP C07H 15/18 20060101ALI20090312BHJP A61P 1/00 20060101ALI20090312BHJP JPA61K9/06A61K31/7028A61K33/24A61K47/14C07H15/18A61P1/00 A61K 9/06 A61K 31/33〜33/44 A61K 47/14 C07H 15/18 A61P 1/00 CAplus(STN) REGISTRY(STN) MEDLINE(STN) BIOSIS(STN) EMBASE(STN) WPIDS(STN) 米国特許第03594473(US,A) 特開平04−091036(JP,A) 特開昭61−212515(JP,A) 特開平08−259464(JP,A) 松本良二他,応用薬理,日本,応用薬理研究会,1991年 5月31日,Vol.41/No.5,p.475-479 松田芳久,医薬品添加剤要覧,日本,薬業時報社,1992年11月25日,p.74-75 岩田圭司他,応用薬理,日本,応用薬理研究会,1993年11月30日,Vol.46/No.5,p.299-304 11 1998316554 19981202 14 20040421 當麻 博文 【0001】【発明の属する技術分野】本発明はトリベノシドを含有する均質かつ安定な痔疾患局所治療用軟膏組成物に関する。【0002】【従来の技術】痔疾患は血管に富む肛門クッションが静脈循環障害(静脈うっ血)等により拡大し、さらに支持結合組織の脆弱化等により下降し、炎症性変化により症状を呈するに至ったものであり、痛み、出血、はれ、かゆみが主な症状である。【0003】発生部位や症状により、内痔核、外痔核、裂肛などに区分される。痔疾患治療剤に必要とされる薬理作用としては、痔疾患に対する(換言すれば直腸、肛門部に対する)次のような作用が挙げられる。即ち、抗浮腫作用、創傷治癒促進作用、血管循環障害改善作用、局所麻酔作用などが挙げられる。【0004】従来の痔疾治療薬には痛みを抑えるために鎮痛剤を、また炎症性変化を抑えるために抗炎症剤を配合している。【0005】抗炎症剤として一般的に使用されているカプロン酸ヒドロコルチゾン、吉草酸ジフルコルトロンなどのステロイド系抗炎症剤は、痔疾患における抗浮腫作用には優れているものの、痔疾患における創傷治癒を逆に遅滞させる作用がある。また、ステロイド系抗炎症剤は、痔疾患治療のため大量に使用または長期間連用すると、過敏症、刺激感、掻痒感、副腎・下垂体機能低下、免疫抑制、全身的創傷治癒、遅滞、眼圧亢進、緑内障などの種々の副作用が認められるという欠点がある。このため、ステロイド系抗炎症剤の投与は、患者の経過観察をしながら慎重に行う必要がある。【0006】そこで、抗浮腫作用のみならず創傷治癒促進作用などにも優れた効果を有し、さらに上記のような欠点のない非ステロイド系薬剤として、トリベノシド(tribenoside)が用いられてきた。【0007】トリベノシド(tribenoside)は、スイスチバガイギー社のHuberらにより1957(昭32年)に合成された六炭糖グルコフラノースの誘導体で下記の構造式で表わされ、薬理作用として血液循環障害改善作用、抗浮腫作用、創傷治癒促進作用などを有することが知られている。【0008】【化1】【0009】このトリベノシドを用いる痔疾患治療剤としては坐剤が知られているが、軟膏は未だ知られていない。一方、最近になって下記のとおり適応症、使用性ならびに利便性の点で坐剤よりも優れる軟膏がより局所治療剤として繁用されるようになってきた。1)坐剤の適応は内痔核であるが、軟膏化によって外痔核、裂肛、肛門部手術創にも適用範囲が拡がる。2)温度による変形がなく、携帯に便利である。3)内痔核への適用に際し、指を汚すおそれがなく使用できる。また疼痛を伴うなどで径の太い坐剤の挿入が困難な症例にも使用できる。【0010】【発明が解決しようとする課題】ところがトリベノシドは六単糖グリコフラノースの誘導体でグリコフラノースの水酸基一個が残基として残っているため油脂性軟膏基剤、とりわけワセリン、ラノリンなどとの相溶性が小さく、そのため油脂性軟膏中でトリベノシドの均質性を保持できない課題があり、これまでこれを解決する手段がなく、トリベノシドを含有してなる油脂性軟膏が臨床の場で要望されているのにかかわらず安定な製品を提供し得なかった。【0011】【課題を解決するための手段】本発明者は上記問題を解決するため鋭意研究を行った結果、中鎖脂肪酸トリグリセリドに相溶性賦与剤を組み合せすることでトリベノシドが軟膏剤を調製するのに核になるワセリン、精製ラノリンなどの油脂性軟膏基剤と均質に相溶することを知り、この知見に基づいて本発明を確立すると知った。【0012】本発明は油脂性軟膏基剤(A成分)、中鎖脂肪酸トリグリセリド(B成分)、トリベノシドの軟膏基剤への相溶性賦与剤(C成分)及びトリベノシドを均質に含有してなる痔疾患局所治療用軟膏組成物である。【0013】【発明の実施の形態】A成分の油脂性軟膏基剤は通常油脂性軟膏の基剤として用いられるものであればよく、その例としては、ヤシ油、パーム核油、オリーブ油、大豆油、ゴマ油などの植物性油脂、ワセリン、流動パラフィンなどの鉱物性油脂、牛脂、豚脂などの動物性油脂等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。【0014】B成分の中鎖脂肪酸トリグリセリドは長鎖と短鎖の中間位の鎖長を有する脂肪酸のトリグリセリドで、脂肪酸の炭素数は8ないし12が好ましく、その例としては、カプロン酸(C8 )、カプリル酸(C8 )、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)等の中鎖脂肪酸のトリグリセリドが挙げられ、とりわけカプリル酸(C8 )、カプリン酸(C10)のトリグリセリドが好適である。【0015】C成分の相溶性賦与剤はA成分とB成分で構成される軟膏基剤において、B成分の存在下でトリベノシドの油脂性軟膏基剤への相溶性を賦与する作用を有する。この相溶性賦与剤としては高級アルコールまたはロウ類が用いられる。高級アルコールは炭素数12以上のアルコールが好ましく、その例としては、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコールなどのような高級鎖状アルコールが挙げられる。ロウ類としては、例えば鯨ロウ、ミツロウ、サラシミツロウなどが挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。【0016】A成分、B成分ならびにC成分の好適な配合比はトリベノシドの配合比によって異なるが、トリベノシドを痔疾患の各種病態、症状に対し、有効性を発揮するに適当な比率で配合する場合は、組成物全量に対して、トリベノシド5〜15%、A成分50〜65%、B成分20〜30%、C成分1〜7%とするのが好ましい。【0017】本発明の組成物はA、B、C各成分をトリベノシドと混和して得られるが、均質な組成物を得るためにはA成分とB成分を加熱溶解混合し、この混和物にC成分とトリベノシドを加えて混和するのが望ましい。例えば、A成分とB成分を加温溶解混合し、さらにC成分およびトリベノシドを加え、加温溶解混合し、均一な溶液とした後常温まで冷却し、トリベノシドを均質にかつ安定に含有する組成物を得ることができる。この際A成分、B成分、C成分のいずれも必要であればあらかじめ加温溶解したものを混合してもよい。【0018】調製した組成物は、例えば、アルミニウム製のチューブに充填してもよく、あるいはポリエチレンなどの合成高分子製の肛門内注入用の容器に1回使用に必要な量を充填してもよい。【0019】本発明の組成物には、トリベノシド以外の薬物を配合、含有させることができる。その薬物は特に制限されるものではないが、例えば、局所麻酔剤としては、例えばリドカイン、ジブカイン、プロカイン、テトラカイン、メピバカイン、アミノ安息香酸エチル、塩酸リドカイン、塩酸ジブカイン、塩酸プロカイン、塩酸テトラカイン、塩酸メピバカイン、ロートエキス等;止血剤として次没食子酸ビスマス、次硝酸ビスマス、乳酸アルミニウム、エスクロシド、塩酸ナファゾリン、タンニン酸等;抗菌剤としてはセトリミド、硫酸フラジオマイシン、スルフイソミジン等;鎮痒剤としてジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェニルピラリン等が挙げられる。これらの薬物は単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。【0020】【実施例】以下実施例、比較例および実験例を挙げて本発明をさらに説明する。白色ワセリンと中鎖脂肪酸トリグリセリドを加温溶解しさらにステアリルアルコール、トリベノシドならびにリドカインを加え、加温溶解混合し、均一な溶液とした後冷却し、トリベノシドならびにリドカインを均質に含有する組成物を調製する。その組成物2.4gをポリエチレン製注入容器に充填する。【0021】精製ラノリンと中鎖脂肪酸トリグリセリドを加温溶解混合し、さらにセチルアルコール、トリベノシド、ならびにジブカインを加え、加温溶解混合し、均一な溶液とした後、冷却し、トリベノシドならびにジブカインを均質に含有する組成物を調整する。その組成物2.4gをポリエチレン製注入容器に充填する。【0022】白色ワセリンと中鎖脂肪酸トリグリセリドを加温溶解混合し、さらにセトステアリルアルコール、トリベノシド、ならびにアミノ安息香酸エチルを加え、加温溶解混合し、均一な溶液とした後、冷却し、トリベノシドならびにアミノ安息香酸エチルを均質に含有する組成物を調製する。その組成物2.4gをポリエチレン製注入容器に充填する。【0023】白色ワセリンと中鎖脂肪酸トリグリセリドを加温溶解混合し、さらにミツロウ、トリベノシド、ならびにリドカインを加え、加温溶解混合し、均一な溶液とした後、冷却し、トリベノシドならびにリドカインを均質に含有する組成物を調製する。その組成物2.4gをポリエチレン製注入容器に充填する。【0024】精製ラノリンと中鎖脂肪酸トリグリセリドを加温溶解混合し、さらにサラシミツロウ、トリベノシドを加え、加温溶解混合し、均一な溶液とした後、冷却し、トリベノシドを均質に含有する組成物を調製する。その組成物2.4gをポリエチレン製注入容器に充填する。【0025】白色ワセリンを取り加温溶解し、この液にステアリルアルコール、トリベノシドならびにリドカインを加え、加温溶解混合し、均一な溶液とした後、冷却し、トリベノシドならびにリドカインを含有する組成物を調製する。その組成物2.4gをポリエチレン製注入容器に充填する。【0026】白色ワセリンを取り加温溶解し、この液にミツロウ、トリベノシドならびにリドカインを加え、加温溶解混合し、溶液とした後、冷却し、トリベノシドならびにリドカインを含有する組成物を調製する。その組成物2.4gをポリエチレン製注入容器に充填する。【0027】白色ワセリンと中鎖脂肪酸トリグリセリドを加温溶解混合し、さらにトリベノシドならびにリドカインを加え、加温溶解混合し、溶液とした後、冷却し、トリベノシドならびにリドカインを含有する組成物を調製する。その組成物2.4gをポリエチレン製注入容器に充填する。【0028】白色ワセリンを加温溶解し、さらにトリベノシドならびにリドカインを加え、加温溶解混合し、溶液とした後、冷却し、トリベノシドならびにリドカインを含有する組成物を調製する。その組成物2.4gをポリエチレン製注入容器に充填する。【0029】白色ワセリンと中鎖脂肪酸トリグリセリドを加温溶解混合し、さらにミツロウならびにリドカインを加え、加温溶解混合し、均一な溶液とした後、冷却し、リドカインを均質に含有する組成物を調製する。その組成物2.4gをポリエチレン製注入容器に充填する。【0030】実験例1実施例1,2,3,4,5及び比較例1,2,3,4,5について軟膏剤としての特性を示すかの官能試験と、以下に記述する実験方法を用いてトリベノシドと軟膏基剤との相溶性試験を行った。即ち試料を白色試験管に入れ、40℃の恒温器に保存し、試験管の下面に分離した液状層長を測定し、試験管の上層の軟膏状保持層の層長との比を算出し、トリベノシドと軟膏基剤との相溶性の評価を行った。実験成績を表1と表2に示す。【0031】【表1】【0032】【表2】【0033】実験例2実施例1、実施例4で調製した検体について直腸粘膜刺激性試験を行った。試験方法は48時間絶食させたWistar系雄性ラット(体重135g〜200g)に試験物質を直腸投与し、5時間後に放血致死させて、直腸部を摘出し、肉眼により粘膜の観察を行った。粘膜の状態は表3の判定基準により数値化し中央値と平均値を求め、この値から表4に示す刺激性判定基準により試験物質の刺激性の区分を行った。なお直腸粘膜刺激性試験の陽性対照としてクエン酸を8%配合した白色ワセリン軟膏を用いた。【0034】【0035】【0036】【0037】その結果を表5に示す。表5から明らかなように、実施例1、実施例4は直腸粘膜に対する刺激性が認められなかった。【0038】実験例3クロトン油混合液により惹起させた直腸肛門部浮腫に対する実施例1の抑制効果を試験した。ア.使用動物:Wistar系雄性ラット(体重140〜250g)イ.クロトン油混合液:組成:蒸留水:ピリジン:ジエチルエーテル:6%クロトン油ジエチルエーテル液=1:4:5:10調製方法:ピリジンに水と少量のジエチルエーテルを加え混合した後、6%クロトン油ジエチルエーテル溶液を加え、さらに残りのジエチルエーテルを加えて激しく振とうした。ウ.起炎方法:綿棒の綿球部にクロトン油混合液160μlを浸み込ませ、綿球部全体を10秒間直腸内に挿入した。エ.浮腫の判定:起炎24時間後ラットを放血致死させ、肛門上皮の毛の輪状生え際から5mmより15mmの長さに切り出した直腸肛門部の重量を測定した。その重量(Wra)と体重(Wb)をもとに直腸肛門係数(Recto−anus coefficient、RAC=Wra・Wb-1・103 )を算出し、炎症形成の指標とした。試験物質は、起炎直後に直腸内に投与し、漏出を防ぐためクリップで肛門を4時間塞いだ。その結果を表6に示す。表6から明らかなように、実施例はクロトン油混合液による痔疾患モデルに有意な抗浮腫作用を示し、痔疾患治療剤として有用であることが判った。【0039】表6 本化合物のクロトン油混合液誘発ラット痔疾患モデルに対する効果【0040】【発明の効果】本発明の方法により得られるトリベノシドを含有する油脂性軟膏製剤はトリベノシドが均質に油脂性軟膏中で長時間保持され、トリベノシドを軟膏剤として使用可能にする。 油脂性軟膏基剤(A成分)、中鎖脂肪酸トリグリセリド(B成分)、鯨ロウ、ミツロウ、サラシミツロウの一種または2種以上から選ばれる相溶性賦与剤(C成分)、及びトリベノシドを均質に含有してなり、ステアリルアルコールを含まない痔疾患局所治療用軟膏組成物。 トリベノシド以外の薬物を含有してなる請求項1記載の軟膏組成物。 油脂性軟膏基剤(A成分)がヤシ油、パーム核油、オリーブ油、大豆油、ゴマ油、ワセリン、流動パラフィンの一種または2種以上を含有してなる請求項1記載の軟膏組成物。 中鎖脂肪酸トリグリセリド(B成分)がC8ないしC12脂肪酸のトリグリセリドである請求項1の軟膏組成物。 中鎖脂肪酸トリグリセリド(B成分)がカプロン酸(C8)、カプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)から選ばれる脂肪酸のトリグリセリドである請求項1または4記載の軟膏組成物。 軟膏組成物全量に対してトリベノシド5〜15%、油脂性軟膏基剤(A成分)50〜65%、中鎖脂肪酸トリグリセリド(B成分)20〜30%、相溶性賦与剤(C成分)1〜7%が配合される請求項1記載の軟膏組成物。 トリベノシド以外の薬物が局所麻酔剤、止血剤、抗菌剤、鎮痒剤よりなる1種または2種以上の薬物である請求項2記載の軟膏組成物。 局所麻酔剤がリドカイン、ジブカイン、プロカイン、テトラカイン、メピバカイン、アミノ安息香酸エチル、塩酸リドカイン、塩酸ジブカイン、塩酸プロカイン、塩酸テトラカイン、塩酸メピバカイン、ロートエキスである請求項7記載の軟膏組成物。 止血剤が次没食子酸ビスマス、次硝酸ビスマス、乳酸アルミニウム、エスクロシド、塩酸ナファゾリン、タンニン酸である請求項7記載の軟膏組成物。 抗菌剤がセトリミド、硫酸フラジオマイシン、スルフイソミジンである請求項7記載の軟膏組成物。 鎮痒剤がジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェニルピラリンである請求項7記載の軟膏組成物。


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