生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_アミノ酸の分析試薬及びアミノ酸の分析方法
出願番号:1997132823
年次:2008
IPC分類:C07D 207/404,G01N 33/68


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林 守正 安居 嘉秀 JP 4085443 特許公報(B2) 20080229 1997132823 19970507 アミノ酸の分析試薬及びアミノ酸の分析方法 株式会社島津製作所 000001993 岡田 正広 100100561 林 守正 安居 嘉秀 20080514 C07D 207/404 20060101AFI20080417BHJP G01N 33/68 20060101ALI20080417BHJP JPC07D207/404G01N33/68 C07D 207/00-207/50 G01N 33/68 CAplus(STN) REGISTRY(STN) 平井利生,二級アミンを含む新規イソプレノイド誘導体の高速液体クロマトグラフィーにおける高感度検出のための蛍光誘導体化試薬サクシニミド-2-フルオレニルカルバメートの開発,分析化学,1991年,第40巻 第5号,p.233-238 NIMURA,N. et al,Activated carbamate reagent as derivatizing agent for amino compounds in high-performance liquid chromatography,Analytical Chemistry,1986年,Vol.58, No.12,p.2372-2375 3 1998306075 19981117 9 20040401 佐久 敬 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、カルバミン酸スクシンイミジルを用いるアミノ酸の分析試薬及びアミノ酸の分析方法に関する。【0002】【従来の技術】アミノ酸はアミノ基とカルボキシル基とを同一分子内に有する有機化合物で、自然界に広く存在し、単体で或いはたんぱく質やペプチドの構成単位として、動植物の生理機能に深く関わっている。【0003】従来より、アミノ酸の分析には主として誘導体化法を応用した高速液体クロマトグラフィーが用いられている。この誘導体化法には、ポストカラム誘導体化法とプレカラム誘導体化法がある。【0004】これらのうち、ポストカラム誘導体化法は古くから知られ、現在でも、ニンヒドリンやo-フタルアルデヒドを試薬として用いる方法が広く利用されている。しかしながら、ポストカラム誘導体化法には、誘導体化のための特殊な装置が必要となるため、近年では、手軽に応用できるプレカラム誘導体化法が好まれるようになってきた。【0005】プレカラム誘導体化法においては、ハロスルホン酸系試薬(DABS−Cl、ダンシルクロライド等)、ハロぎ酸系試薬(FMOC等)、イソチオシアン酸系試薬(PITC、FITC等)など数多くの試薬が開発され、応用されている。また、ポストカラム誘導体化法でも用いられるo-フタルアルデヒドも、プレカラム誘導体化法における試薬として利用されている。【0006】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記試薬のうち、ハロスルホン酸系試薬、ハロぎ酸系試薬では、試薬自身又はその加水分解物がこれら試薬のアミノ酸誘導体と同様に分離、検出されるので、これらの近傍に溶出するアミノ酸誘導体の分析が困難になることが大きな課題であった。イソチオシアン酸系試薬にはこのような障害が認められないものもあるが、イソチオシアン酸系試薬は誘導体化反応が遅いことが課題であった。【0007】一方、o-フタルアルデヒドでは、プロリンやヒドロキシプロリンといったイミノ酸が誘導体化されず、これらイミノ酸が分析できないことが課題となっていた。【0008】 そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、比較的緩和な条件でイミノ酸を含めたアミノ酸と速やかに反応し、しかも、試薬自身及びその加水分解物の化学的・物理的性質が、反応の結果得られるアミノ酸誘導体と大きく異なるように設計されたアミノ酸分析試薬を提供することにある。 また、本発明の目的は、このアミノ酸分析試薬をプレカラム誘導体化法に応用し、感度と特異性に優れた簡便なアミノ酸の分析方法を提供することにある。【0009】【課題を解決するための手段】 本発明者らは鋭意検討した結果、カルバミン酸スクシンイミジル化合物が、イミノ酸を含めたアミノ酸との反応性に優れ、これら化合物自身及びその加水分解物の化学的・物理的性質が、反応の結果得られるアミノ酸誘導体と大きく異なることを見いだし、本発明を完成するに至った。【0010】 すなわち、本発明は、一般式(I)で示されるアンスリルカルバミン酸スクシンイミジルのうちの1種を含む、アミノ酸の分析試薬である。【0011】【化5】【0012】一般式(I)において、R1 及びR2 は、同一又は異なっていても良く、水素原子、アルキル基、スルホ基又は−NR3 R4 基(ここで、R3 及びR4 は同一又は異なっていても良くアルキル基を表す)を表す。【0014】また、本発明のアミノ酸の分析方法は、複数種のアミノ酸を含有する分析すべき試料と、前記一般式(I)で示されるアンスリルカルバミン酸スクシンイミジルのうちの1種を含有する試薬液とを混合して反応させ、各々のアミノ酸のN−アンスリルカルバモイル誘導体を生成させ、その後、この反応液を高速液体クロマトグラフに付して、これらアミノ酸のN−アンスリルカルバモイル誘導体を分離し、検出することを特徴とする方法である。【0015】以下、本発明について詳しく説明する。まず、前記一般式(I)で示されるアンスリルカルバミン酸スクシンイミジルについて説明する。前記一般式(I)において、R1 及びR2 は、同一又は異なっていても良く、水素原子、アルキル基、スルホ基(−SO3 H)、又は−NR3 R4 基(ここで、R3 及びR4 は同一又は異なっていても良く、アルキル基を表す)を表す。R1 及びR2 が表すアルキル基としては、好ましくは、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の低級アルキル基が挙げられる。また、R3 及びR4 が表すアルキル基としては、好ましくは、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の低級アルキル基が挙げられる。【0016】アントラセン環上へのR1 基、R2 基、−NHCOO−スクシンイミジル基の置換位置は任意であるが、アミノ基を有する化合物の分析試薬やアミノ酸の分析試薬としては、R1 基及びR2 基が共に水素原子である化合物が好ましい。すなわち、アミノ基を有する化合物の分析試薬やアミノ酸の分析試薬として好ましいアンスリルカルバミン酸スクシンイミジルは、1−アンスリルカルバミン酸スクシンイミジル、2−アンスリルカルバミン酸スクシンイミジル及び9−アンスリルカルバミン酸スクシンイミジルである。また、これらは原料入手の点からも好ましい。【0017】前記一般式(I)で示されるアンスリルカルバミン酸スクシンイミジル化合物は、次式に示すように、例えば、対応するアミノアントラセンと炭酸N,N’−ジスクシンイミジルとを反応させることにより合成することができる。【0018】【化6】【0019】次に、前記一般式(I)で示されるアンスリルカルバミン酸スクシンイミジルを分析試薬として用いた、本発明のアミノ酸の分析方法について説明する。本発明のアミノ酸の分析方法は、複数種のアミノ酸を含有する分析すべき試料と、前記一般式(I)で示されるアンスリルカルバミン酸スクシンイミジルのうちの1種を含有する試薬液とを混合して反応させ、各々のアミノ酸のN−アンスリルカルバモイル誘導体(以下、AC−アミノ酸と略す。)を生成させるプレカラム誘導体化工程と、その後、この反応液を高速液体クロマトグラフィーに付して、これらAC−アミノ酸を分離し、検出する工程とを含む方法である。【0020】本発明におけるプレカラム誘導体化反応は、例えば2−アンスリルカルバミン酸スクシンイミジルの場合、次式のように示すことができる。ここで、R−NH2 は分析すべきアミノ酸である。【0021】【化7】【0022】従って、同様の反応によって、前記一般式(I)で示されるアンスリルカルバミン酸スクシンイミジルを用いて、アミノ酸のみならず、アミノ基を有する化合物(R’−NH2 )をも誘導体化しN−アンスリルカルバモイル誘導体を生成させ、高速液体クロマトグラフで分離し検出することが可能である。【0023】アンスリルカルバミン酸スクシンイミジル化合物は、アミノ基を有する化合物との反応性に富むので、比較的緩和な条件で速やかに、イミノ酸をも含めた各種アミノ酸をAC−アミノ酸へ誘導体化することができる。しかも、アンスリルカルバミン酸スクシンイミジル試薬自身及びその加水分解物(アミノアントラセン類、N−ヒドロキシスクシンイミド)は中性物質であるので、高速液体クロマトグラフィーにより、誘導体化されたイオン性のAC−アミノ酸と容易に分離することができる。【0024】本発明のアミノ酸の分析方法についてさらに詳しく述べる。アンスリルカルバミン酸スクシンイミジル試薬液は、任意量のアンスリルカルバミン酸スクシンイミジルを、水と任意の割合で混和し得る非プロトン性有機溶媒に溶解して調製することができる。非プロトン性有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えばジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。試薬液におけるアンスリルカルバミン酸スクシンイミジルの濃度は任意であるが、通常は1mM〜5mM程度である。また、試薬液の調製は、試薬液の劣化を避けるため、使用の都度行うことが望ましい。【0025】プレカラム誘導体化反応は、アミノ酸を含有する分析すべき試料と、アンスリルカルバミン酸スクシンイミジル試薬液とを任意の割合で混合して行う。アミノ基へのプロトン付加を抑制するために、混合後のpHは7以上であることが好ましい。従って、必要に応じて、予め試料に緩衝液を混合してpHを調整しておき、次いで、これに試薬液を混合する。この際用いる緩衝液は、試料のpHを7以上に調整できるものであれば何でも良いが、例えば、ほう酸緩衝液、炭酸緩衝液、りん酸緩衝液等が望ましい。試料のpHが7以上のものであれば、特にpH調整の必要はない。また、プレカラム誘導体化反応は、一般に10℃〜30℃程度の温度で、1分〜10分程度の時間で行うことができる。【0026】次に、誘導体化反応液を高速液体クロマトグラフィーに付して、これらAC−アミノ酸を分離し、蛍光光度計又は吸光光度計で検出する。カラムとしては、例えば Shima-pack VP-ODS(内径4.6mm、長さ150mm)等の逆相クロマトグラフィー用カラムを用いることができる。ただし、カラムは、分析すべき各種AC−アミノ酸を分離することができるものであれば、どのようなものであっても良い。移動相としては、例えば、アセトニトリル等の有機溶媒と緩衝液との混合液を用いて、グラジエント溶出法によって各種AC−アミノ酸を分離することができる。一例として、20mMくえん酸(カリウム)緩衝液<pH5.9>とアセトニトリルとの混合液が挙げられる。ただし、移動相は、分析すべき各種AC−アミノ酸を分離することができるものであれば、その種類や濃度、pHなどに何らの制約はない。【0027】分離された各種AC−アミノ酸の検出は、蛍光光度計又は吸光光度計を用いて行うことができる。例えば、蛍光光度計では励起波長370nm、蛍光波長450nmで、また、吸光光度計では検出波長370nmで検出することができる。ただし、蛍光光度計又は吸光光度計のいずれの場合においても、各種AC−アミノ酸を検出し得る波長であれば、どの波長で検出しても良い。【0028】 本発明において、アンスリルカルバミン酸スクシンイミジル化合物は、アミノ酸との反応性に富み、プロリンやヒドロキシプロリンといったイミノ酸との反応性にも富む。従って、本発明において、アンスリルカルバミン酸スクシンイミジル化合物をアミノ酸のプレカラム誘導体化反応に用いると、比較的緩和な条件で速やかに、イミノ酸をも含めた各種アミノ酸をAC−アミノ酸へ誘導体化することができる。しかも、アンスリルカルバミン酸スクシンイミジル試薬自身及びその加水分解物(アミノアントラセン類、N−ヒドロキシスクシンイミド)を中性物質として取り扱えるので、これらをイオン性のAC−アミノ酸と容易に分離することができる。【0029】 このように、本発明において、アンスリルカルバミン酸スクシンイミジル化合物は、試薬自身又はその加水分解物がアミノ酸誘導体の分析を困難にする、誘導体化反応が遅い、イミノ酸が分析できない、といった従来のプレカラム誘導体化試薬の問題点が解決されたアミノ酸の分析試薬として非常に優れる。【0030】本発明において、アミノ酸の分析試薬として好適なアンスリルカルバミン酸スクシンイミジルとしては、1−アンスリルカルバミン酸スクシンイミジル、2−アンスリルカルバミン酸スクシンイミジル、9−アンスリルカルバミン酸スクシンイミジルが挙げられる。【0031】【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。[実施例1](2−アンスリルカルバミン酸スクシンイミジルの合成)炭酸N,N’−ジスクシンイミジル307mg(1.2mmol)をアセトニトリル10mLに溶解し、また2−アミノアントラセン193mg(1.0mmol)をアセトン10mLに溶解した。この炭酸N,N’−ジスクシンイミジル溶液にアミノアントラセン溶液を攪拌しながら徐々に加えた後、50℃以下でさらに2時間攪拌した。析出した結晶をグラスフィルタを用いて濾取し、アセトニトリル5mLで5回、繰り返して洗浄した後、結晶を乾燥させ、2−アンスリルカルバミン酸スクシンイミジルの黄緑色結晶180mgを得た。収率54%。【0032】2−アンスリルカルバミン酸スクシンイミジル:融点:207℃(dec.)MS:m/z 334(M+ )IR:1782cm-1(−O−CO−N−)【0033】[実施例2](アミノ酸の誘導体化)2−アンスリルカルバミン酸スクシンイミジル10mgをジオキサン10mLに溶解し、これを試薬液とした。一方、分析すべきアミノ酸を含有する試料100μLに200mMほう酸(カリウム)緩衝液<pH9.2> 100μLを加え、次いで、上記試薬液200μLを室温で加えて振とうし、5分間放置した。【0034】(分析)この反応液を、次の条件の高速液体クロマトグラフィーにより分離し、蛍光光度計により検出した。(1)分離条件カラム: Shima-pack VP-ODS(内径4.6mm、長さ150mm)移動相:20mMくえん酸(カリウム)緩衝液<pH5.9>とアセトニトリルとの混合液アセトニトリル25%から60%までの直線的グラジエント溶出流量:1.0mL/min温度:35℃(2)検出条件検出器:蛍光光度計検出波長:励起波長370nm、蛍光波長450nm【0035】(分析結果)得られた分析結果を図1に示す。すなわち、図1は、上記の分析によって得られたアミノ酸標準試料のクロマトグラムである。このクロマトグラムにおいて、各ピークは、各々、対応するアミノ酸10pmolに相当する。2−アンスリルカルバミン酸スクシンイミジル試薬及びその加水分解物はカラムに強く保持され、各AC−アミノ酸よりも遅く溶出した。このように、試薬及びその加水分解物の影響を受けることなく、アミノ酸を高感度で特異的に分析することができた。【0036】【発明の効果】 本発明において、アンスリルカルバミン酸スクシンイミジル化合物は、イミノ酸を含めたアミノ酸との反応性に富むので、比較的緩和な条件で速やかにこれらをアンスリルカルバモイル誘導体に導くことができる。しかも、アンスリルカルバミン酸スクシンイミジル試薬自身及びその加水分解物は中性物質であるので、イオン性の前記誘導体と容易に分離することができる。 このように、本発明において、アンスリルカルバミン酸スクシンイミジル化合物は、アミノ酸の分析試薬として非常に優れる。【0037】本発明のアミノ酸の分析方法は、アンスリルカルバミン酸スクシンイミジル化合物を分析試薬として用いた方法であり、分析のための特殊な装置は不要であり、汎用される高速液体クロマトグラフィーを使用でき、簡便かつ信頼性の高いアミノ酸の分析が可能になる。【図面の簡単な説明】【図1】 本発明の方法による、アミノ酸標準試料のクロマトグラムである。 下記一般式(I)で示されるアンスリルカルバミン酸スクシンイミジルのうちの1種を含む、アミノ酸の分析試薬:(一般式(I)において、R1及びR2は、同一又は異なっていても良く、水素原子、アルキル基、スルホ基又は−NR3R4基(ここで、R3及びR4は同一又は異なっていても良くアルキル基を表す)を表す。)。 アンスリルカルバミン酸スクシンイミジルが、1−アンスリルカルバミン酸スクシンイミジル、2−アンスリルカルバミン酸スクシンイミジル又は9−アンスリルカルバミン酸スクシンイミジルである、請求項1項に記載の分析試薬。 複数種のアミノ酸を含有する分析すべき試料と、下記一般式(I)で示されるアンスリルカルバミン酸スクシンイミジルのうちの1種を含有する試薬液とを混合して反応させ、各々のアミノ酸のN−アンスリルカルバモイル誘導体を生成させ、その後、この反応液を高速液体クロマトグラフィーに付して、これらアミノ酸のN−アンスリルカルバモイル誘導体を分離し、検出することを特徴とする、アミノ酸の分析方法。(一般式(I)において、R1及びR2は、同一又は異なっていても良く、水素原子、アルキル基、スルホ基又は−NR3R4基(ここで、R3及びR4は同一又は異なっていても良くアルキル基を表す)を表す。)。


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