タイトル: | 特許公報(B2)_耐熱性ジアホラーゼ遺伝子 |
出願番号: | 1997119966 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C12N 15/09,C07H 21/04,C12N 1/21,C12N 9/02,C12R 1/07,C12R 1/19 |
川瀬 至道 近藤 仁司 鈍寳 宗彦 JP 3953578 特許公報(B2) 20070511 1997119966 19970509 耐熱性ジアホラーゼ遺伝子 ユニチカ株式会社 000004503 西澤 利夫 100093230 川瀬 至道 近藤 仁司 鈍寳 宗彦 20070808 C12N 15/09 20060101AFI20070723BHJP C07H 21/04 20060101ALI20070723BHJP C12N 1/21 20060101ALI20070723BHJP C12N 9/02 20060101ALI20070723BHJP C12R 1/07 20060101ALN20070723BHJP C12R 1/19 20060101ALN20070723BHJP JPC12N15/00 AC07H21/04 BC12N1/21C12N9/02C12N15/00 AC12R1:07C12N1/21C12R1:19C12N9/02C12R1:19 C12N 15/00-15/90 PubMed JSTPlus(JDream2) BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) CA(STN) GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq SwissProt/PIR/Geneseq 特開昭60−078578(JP,A) 特開昭60−156381(JP,A) Focus, 17, p.45-49, (1995) Nature Genetics, vol.12, p.17-23, (1996) J. Biol. Chem., vol.272, p.1076-1081, (1997) Proc. Natl. Acad. Sci., vol.94, p.3229-3234, (1997) Biochimica et Biophysica Acta, vol.1038, p.29-38, (1990) 11 FERM P-16148 1998309192 19981124 9 20040316 田村 明照 【0001】【産業上の利用分野】この発明は耐熱性ジアホラーゼ遺伝子と、この遺伝子を含有する組換えベクター、組換えベクターによる形質転換体、並びにこの形質転換体による耐熱性ジアホラーゼの製造法に関するものである。【0002】【従来の技術】ジアホラーゼ[EC.1.6.99.-]は、生体内では電子伝達系において重要な役割を果たす酵素であるが、一方で、NDA(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)反応系が関与する臨床検査用組成物の必須成分として産業上有用な酵素である。このジアホラーゼは微生物から単離・精製して製造されているが、このジアホラーゼ産生能を有する微生物としてはクロストリジウム(Clostridium) 属(Kaplan, N.O.,et al.,Arch. Biochem. Biophys, vol132, p91-98, 1969) 、バチルス(Bacillus)属などに属する微生物が知られており、それぞれシグマ社、旭化成社より市販されている。しかし、これらの微生物から得られるジアホラーゼは生産量が少なく、また熱に不安定であるため精製には多大な労力を要していた。【0003】この発明者等は、好熱性微生物であるバチルスステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus) が熱に安定なジアホラーゼを菌体内に生産する事を見出し、この耐熱性ジアホラーゼ生産菌およびそのジアホラーゼ精製方法について特許を取得した(登録番号1715795号、1973434号)。【0004】【発明が解決しようとする課題】上記の特許発明により、熱および保存安定性に優れたジアホラーゼが得られ、その精製も容易に行うことが可能となった。しかしながら、上記特許発明において耐熱性ジアホラーゼを製造する場合には、通常50〜60℃の高温度で生産菌体を培養することにより得ているため、多量のエネルギーが必要であった。また、この微生物のジアホラーゼ生産量が少量であるために、耐熱性ジアホラーゼの大量生産が困難であるという問題点は依然として未解決であった。【0005】この発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであって、上記の耐熱性ジアホラーゼを遺伝子工学的に大量製造するための遺伝子操作材料と、この材料を用いた耐熱性ジアホラーゼの製造方法を提供することを目的としている。【0006】【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題を解決するものとして、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる耐熱性ジアホラーゼをコードする好熱性バチルス(Bacillus)属細菌由来の遺伝子(請求項1)を提供する。またこの発明は、配列番号1で表されるアミノ酸配列における1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなる耐熱性ジアホラーゼをコードする好熱性バチルス(Bacillus)属細菌由来の遺伝子(請求項2)を提供する。【0007】さらにこの発明は、配列番号2の塩基配列からなるDNAを有し、かつ耐熱性ジアホラーゼをコードする好熱性バチルス(Bacillus)属細菌由来の遺伝子(請求項3)を提供する。さらにまたこの発明は、配列番号2の塩基配列における1もしくは複数の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなる耐熱性ジアホラーゼをコードする好熱性バチルス(Bacillus)属細菌由来の遺伝子(請求項4)を提供する。【0008】なお、これらの遺伝子においては、上記の好熱性バチルス(Bacillus)属細菌がバチルスス・テアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)であること(請求項5)を好ましい態様としている。この発明はまた、上記の遺伝子をベクターDNAに連結した組換えベクター(請求項6)を提供する。【0009】この組換えベクターにおいては、ベクターDNAとしてエッシェリヒア・コリを宿主とするプラスミド(請求項7)、さらにこのプラスミドとしてpKK233−3(請求項8)を例示することができる。この発明は、さらに、上記の組換えベクターを含む形質転換体(請求項9)、詳しくはエッシェリヒア・コリの形質転換体(請求項10)を提供する。【0010】この発明は、さらにまた、上記の形質転換体を培地中で培養し、培養物から耐熱性ジアホラーゼを採取することを特徴とする耐熱性ジアホラーゼの製造法をも提供する。【0011】【発明の実施の形態】この発明に係る耐熱性ジアホラーゼは、配列番号1に表したアミノ酸配列を有するタンパク質であり、あるいは、配列番号1のアミノ酸配列における1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質である。従って、この発明の遺伝子は上記アミノ酸配列をコードする遺伝子であって、具体的には、配列番号2の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子である。【0012】このような遺伝子は、例えば、配列番号2の一部配列を合成し、この合成DNAをプローブとしてDNAライブラリーから単離する方法、配列番号2の両端部分の合成DNAをプライマーとし、染色体DNAを鋳型とするPCR法によって目的遺伝子を増幅する方法等によって取得することもできる。好熱性バチルス属微生物としては、例えばUK-563(FERM P-7275)、ACTT-7953 (FERM P-4775)、ACTT-8005(FERM P-4776)、ACTT-10149(FERM P-4777)、NCA-1503(FERM P-4778)、SP-43(FERM P-12754)等を用いることができる。【0013】なお、上記バチルス属細菌からの耐熱性ジアホラーゼ遺伝子の単離、この遺伝子を含有する組換えベクターおよび組換えベクターによる形質転換体の作成、並びに形質転換体の培養等は公知の方法、例えばMolecular Cloning(Sambrook, J., et al., Cold Spring Harbor Laboratory Presss, Cold Spring Harbor, 1989)に記載されている方法を組み合わせて行なうことができる。また耐熱性ジアホラーゼは、集菌した形質転換体の菌体を超音波域はリゾチーム等で溶菌し遠心分離した後、遠心上清を市販のイオン交換樹脂、アフィニティー樹脂等を用いて分取することにより製造できる。【0014】以下、実施例を示してこの発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、この発明は以下の例によって限定されるものではない。【0015】【実施例】実施例1:耐熱性ジアホラーゼ遺伝子の同定(1) バチルスステアロサーモフィラス染色体DNAライブラリーの作製好熱性バチルス属細菌バチルスステアロサーモフィラスUK-563(FERM P-7275) の菌体1gを公知の方法(Saito & Miura, Biochim.Biophys., Acta, vol.72, p619, 1963) に従いリゾチーム(生化学工業社製)により溶菌後、SDS含有アルカリ性緩衝液とフェノールでDNAを抽出した。さらに、RNAをRNアーゼで分解して染色体DNAを1 mg精製した。【0016】得られた染色体DNAのうち100μgを制限酵素Sau3AI(東洋紡社製)で部分分解して染色体DNA断片80 μgを得た。それとは別にベクターpUC19 1μg(宝酒造社製)を制限酵素BamH I(東洋紡社製)で完全分解し、細菌由来のアルカリファスファターゼ(宝酒造社製)で処理してベクターDNA断片0.8μgを得た。得られた染色体DNA断片0.28μgとベクターDNA断片0.1μgとをT4ファージ由来のDNAリガーゼ(宝酒造社製)を用い16℃、30分間連結反応を行い、組換え体DNAを得た。得られた組換え体を大腸菌JM109コンピテントセル200μg(東洋紡社製)に混合し、0℃下で1時間静置した後、42℃、120秒間加温することにより、形質転換を行なった。【0017】得られた形質転換体を1 mlのL培地に植菌し37℃下で1時間培養後、培養液をアンピシリンを含むL寒天平板培地に塗抹したところアンピシリン耐性菌株が得られた。これら菌株をアンピシリン50μg/mlを含むL培地に植菌後一晩培養し、集菌後プラスミドをアルカリ−SDS法により調製し、バチルスステアロサーモフィラス染色体DNAライブラリーとした。(2) 耐熱性ジアホラーゼの遺伝子の単離上記のバチルスステアロサーモフィラス染色体DNAライブラリーに、エンドヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼIII(GIBCO BRL社製)を順次作用させ、一本鎖DNAライブラリーを作製した。この一本鎖DNAライブラリーに、ビオチン化したジアホラーゼプローブ(Di-IFおよびDi-IR)およびストレプトアビジンを固定化したマグネティックビーズ(GIBCO BRL社製)とを混合し、ビオチンとアビジンが特異的かつ強固に結合することを利用し、磁石によってプローブがハイブリダイズした一本鎖プラスミドを選別した。選別された一本鎖プラスミドを、Di-IFおよびDi-IRをプライマーとして二本鎖プラスミドとした後、大腸菌JM109コンピテントセル200μg(東洋紡社製)に混合し、0℃で1時間静置後、42℃、120秒間加温し、形質転換を行なった。得られた形質転換体を1 mlのL培地に植菌し37℃で1時間培養後、培養液をアンピシリンを50μg/ml含むL寒天平板培地に塗抹し、アンピシリン耐性菌株のコロニーを10個得た。【0018】上記コロニーから耐熱性ジアホラーゼ遺伝子を含む菌株を選別するため、公知の方法(Simpson et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., vol.151. p487, 1988) に従って、Di-IFおよびDi-IRをプライマーとしてサーマスアクアティカス由来のDNAポリメラーゼ(東洋紡社製)を用いたコロニーPCRを行った結果、4つの菌株にジアホラーゼ遺伝子が含まれていることが示唆された。実施例3:耐熱性ジアホラーゼ遺伝子の塩基配列の決定上記4株の形質転換体から1株を選び、アンピシリンを50μg/ml含むL培地100mlに植菌した。37℃にて一晩培養した後、アルカリ−SDS法によりプラスミドを調整し、このプラスミドをpSDIとした。pSDI 10μgをアルカリ変性した後、M13ユニバーサルプライマーおよびM13リバースプライマーを用い、公知の方法(Sanger, Nicklen & Coulson, Proc. Natl. Acad. Sci., vol.74, p5463, 1977) に従い、チェーンターミネーション反応を行った。反応にはAuto Read Sequence Kit(ファルマシア社製)を用いた。上記反応物をALF DNAシーケンサー(ファルマシア社製)を用いて分析した結果、配列番号2に示した633塩基対の塩基配列を決定した。実施例4:組換えベクターおよび形質転換大腸菌の作成上記プラスミドpSDIを、ジアホラーゼ遺伝子の上流1塩基に位置するEcoT22I(東洋紡社製品)認識部位で切断して直鎖状とし、T4ファージ由来DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)によって平滑末端化した後、さらにHindIII(東洋紡社製品)で切断した。切断した直鎖状プラスミドの各断片をアガロースゲル電気泳動にかけ、ジアホラーゼ遺伝子を含むDNA断片を回収した。一方、pKK223-3(ファルマシア社製)を、SD配列下流12塩基に位置するSmaI(東洋紡社製品)認識部位およびマルチクローニングサイトのHindIII(東洋紡社製品)認識部位で切断した。【0019】上記のジアホラーゼ遺伝子を含むDNA断片0.1μgとベクターDNA断片0.1μgを、T4ファージ由来のDNAリガーゼ(宝酒造社製品)を用い16℃、30分間連結反応を行い、耐熱性ジアホラーゼ遺伝子を含有する組換えプラスミドベクター pSDEIを得た。図1はこの組換えベクターpSDEI の作製概要図である。次いで、 pSDEIを大腸菌JM109コンピテントセル200μg(東洋紡社製)に混合し、0℃下で1時間静置後、42℃、120秒間加温し、形質転換を行なった。得られた形質転換体を1mlのL培地に植菌し37℃下で1時間培養後、培養液をアンピシリンを50μg/ml含むL寒天平板に塗抹したところ、耐熱性ジアホラーゼ遺伝子を含む形質転換大腸菌100個のコロニーを得た。これを大腸菌(エシェリチア・コリ)JM109/pSDEI(FERM P−16148)として平成9年3月21日付けで工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託した(受託番号:FERM P-16148)。実施例5:大腸菌での耐熱性ジアホラーゼの製造実施例4で作成した形質転換大腸菌JM109/pSDEIをアンピシリン50μg/mlを含むL培地300mlに植菌後、37℃にて一晩前培養を行なった。前培養液をアンピシリン50μg/mlを含むL培地30リットルに植菌し、37℃にて10時間培養後イソプロピルβチオガラクトピラノシドを1mM加え、さらに15時間培養した後集菌した。得られた菌体は1000mlの25mMリン酸緩衝液(pH8.0)に懸濁後、超音波処理した。菌体破砕物を除いた上澄より、DEAE−セファロースを用いたイオン交換クロマトグラフィーおよびBlue−セファロースを用いたアフィニティークロマトグラフィーにて耐熱性ジアホラーゼの精製を行なったところ、耐熱性ジアホラーゼを18万ユニット回収した。これらは、バチルスステアロサーモフィラスUK-563(FERM P-7275)を30リットル培養した場合に得られるジアホラーゼの10倍の酵素量である。【0020】得られたジアホラーゼの性質を調べたところ、50℃、1時間処理後の残存活性は100%、至適作用pHはpH8.0、NADHに対するKmは0.5mMであった。これらの結果から、この発明の方法によって得られた耐熱性ジアホラーゼが、バチルスステアロサーモフィラスUK-563(FERM P-7275)由来のジアホラーゼと同じ性質を有するものでることが確認された。【0021】なお、ジアホラーゼの活性測定法並びに活性表示法は以下の通りである。すなわち、活性測定はトリス塩酸緩衝液(pH8.5)50mM、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)1mM、2,6-ジクロロフェノールインドフェノール(DCIP)0.06mMを含む溶液1.0mlに酵素液10μlを混合し、30℃にて600nmにおける吸光度変化の初速度を測定することにより行った。また、酵素活性の単位は前述の条件下で1分間に1μmolのDCIPが還元されるのに要する酵素量を1ユニットとした。【0022】【発明の効果】以上詳しく説明したとおり、この発明によって、耐熱性ジアホラーゼを簡便な方法で大量に、しかも低コストで製造することが可能となる。【0023】【配列表】【図面の簡単な説明】【図1】この発明の組換えベクターの一実施例であるpSDEI の作製概要図である。図中、ERはEcoR、ETはEcoT22、NはNaeI、SはSmaI、HはHindIII、TerminaterはRNAポリメラーゼ離脱配列、SDはリボゾーム結合配列、TACプロモーターはRNAポリメラーゼ結合部位を示す。 配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる耐熱性ジアホラーゼをコードする好熱性バチルス(Bacillus)属細菌由来の遺伝子。 配列番号1で表されるアミノ酸配列における1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなる耐熱性ジアホラーゼをコードする好熱性バチルス(Bacillus)属細菌由来の遺伝子。 配列番号2の塩基配列からなるDNAを有し、かつ耐熱性ジアホラーゼをコードする好熱性バチルス(Bacillus)属細菌由来の遺伝子。 配列番号2の塩基配列における1もしくは複数の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなる耐熱性ジアホラーゼをコードする好熱性バチルス(Bacillus)属細菌由来の遺伝子。 好熱性バチルス(Bacillus)属細菌がバチルスス・テアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)である請求項1ないし4の遺伝子。 請求項1ないし4の遺伝子をベクターDNAに連結した組換えベクター。 ベクターDNAがエッシェリヒア・コリを宿主とするプラスミドである請求項6の組換えベクター。 プラスミドがpKK233−3である請求項7の組換えベクター。 請求項6の組換えベクターを含む形質転換体。 請求項7または8の組換えベクターを含むエッシェリヒア・コリの形質転換体。 請求項9または10の形質転換体を培地中で培養し、培養物から耐熱性ジアホラーゼを採取することを特徴とする耐熱性ジアホラーゼの製造法。