タイトル: | 特許公報(B2)_新規なインドール配糖体 |
出願番号: | 1997113305 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C07H 17/02,A61K 8/60,A61K 31/7052,A61K 36/00,A61P 9/00,A61P 17/14,A61Q 7/00 |
久保 道徳 吉川 雅之 松田 秀秋 松田 久司 村上 敏之 島田 ひろみ 櫻間 哲生 野邨 学 JP 3890545 特許公報(B2) 20061215 1997113305 19970325 新規なインドール配糖体 株式会社ノムラ 396019907 衞藤 彰 100087228 久保 道徳 吉川 雅之 松田 秀秋 松田 久司 村上 敏之 島田 ひろみ 櫻間 哲生 野邨 学 20070307 C07H 17/02 20060101AFI20070215BHJP A61K 8/60 20060101ALI20070215BHJP A61K 31/7052 20060101ALI20070215BHJP A61K 36/00 20060101ALI20070215BHJP A61P 9/00 20060101ALI20070215BHJP A61P 17/14 20060101ALI20070215BHJP A61Q 7/00 20060101ALI20070215BHJP JPC07H17/02A61K8/60A61K31/7052A61K35/78A61P9/00A61P17/14A61Q7/00 C07H 17/02 A61K 8/60 A61K 31/7052 A61K 36/898 A61P 9/00 A61P 17/14 A61Q 19/02 CA(STN) CAOLD(STN) REGISTRY(STN) JSTPlus(JDream2) JST7580(JDream2) JMEDPlus(JDream2) 1 1998265493 19981006 10 20021203 特許法第30条第1項適用 1997年3月26日〜3月28日 社団法人日本薬学会主催の「日本薬学会第117年会」において文書をもって発表 新留 素子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、エビネラン(Calanthe discolor Lindl.)から単離した新規なインドール配糖体に関するものである。【0002】【従来の技術】エビネランのアルコール溶液抽出物が、発毛・育毛剤として著効を示すことは知られている(特開平5−294813号公報)。しかしながら、エビネラン抽出液含有成分は、まだ十分に分析されてなく、有効成分の特定にいたっていない現状である。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、エビネランアルコール抽出液の分画成分を精査し、生理的に有用な活性をもつ新規なインドール配糖体を単離することに成功し、本発明にいたった。【0004】すなわち、本発明は、エビネランから単離した血流促進作用を有する新規なインドール配糖体を提供することを目的としている。【0005】【課題を解決するための手段】上記目的を達成した本発明の新規なインドールな配糖体は、化1で示す2−S−β−D−グルコピラノシル−3−o−β−D−グルコピラノシル−2−メルカプトインドール(2−S−β−D−glucopyranosyl−3−o−β−D−glucopyranosyl−2−mercapto indol)(以下「カラントサイドB/calantoside B」という)からなることを特徴としている。【0006】【化1】【0007】【発明の実施の形態】本発明のカラントサイドBは、次のようにして製造できる。エビネランの根茎を細切りした後、例えばメタノールで熱時抽出し、メタノール抽出エキスを得る。得られたメタノール抽出エキスを酢酸エチルと水(1:1)で分配抽出する。次いで水移行部を逆相シリカゲルカラムクロマトガラフィーに付し、水、メタノールで順次溶出し、メタノール溶出部を得る。メタノール溶出部を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画し、さらに順相シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画し、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー及び逆相高速液相クロマトグラフィーを用いて分離することにより、カラントサイドBが単離される。【0008】カラントサイドBは、化学構造からみて染料として知られる既知物質インジルビン同様の染色性が推定され、加えて血流促進増加作用を有し、育毛剤などの用途が期待できる。【0009】【実施例】宮崎産エビネ新鮮根茎(10kg)を細切りした後、MeOH(18リットル)で熱時抽出を計3回おこなった。MeOH抽出液3回分をあわせて減圧下溶媒留去し、MeOH抽出エキス(360g,3.6%)を得た。エビネMeOH抽出エキス(360g)をAcOEt−H2O(1:1)で分配し、AcOEt移行部(110g,1.1%)、H2O移行部(250g,2.5%)を得た。得られたH2O移行部エキスを逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー[1.0kg,H2O→MeOH]で糖除去し、MeOH流出部エキス(15g,0.15%)を得た。MeOH流出部エキス(15g)を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー[130g,MeOH:H2O(50:50→80:20,v/v)]で分画し、Fr.1(1.5g,0.015%)、Fr.2(3.0g,0.030%)、Fr.3(3.4g,0.034%)、Fr.4(0.5g,0.005%)、Fr.5(0.7g,0.007%)、Fr.6(3.1g,0.031%)、Fr.7(3.4g,0.034%)を得た。Fr.1(1.5g)をさらに順相シリカゲルカラムクロマトグラフィー[15g,CHCl3:MeOH:H2O=7:3:1(下層)→65:35:10(下層)→6:4:1]で分画し、Fr.1−1〜Fr1−8を得た。Fr.1−5(210mg,0.0022%)を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー[130g,MeOH:H2O(40:60,v/v)]、逆相高速液体クロマトグラフイー(HPLC)[カラム;YMC−Pack R&D ODS−5(250×20mmi.d.),溶媒;MeCN−H2O(25:75,v/v),流速;9.0ml/min]で分離精製し、カラントサイドB(化1,15mg,0.00015%)、アデノシン(adenosin)(化2,8.8mg,0.00009%)を得た。【0010】【化2】【0011】【分析例】カラントサイドBは負の旋光性を示す淡黄色粉末で、分析結果は下記のとおりである。カラントサイドB:非品粉末旋光性:[α]D25−12.0゜(c=0.2,MeOH)高分解能FAB−MS(m/z)次式計算値 C20H28NO11S(M+H)+:490.1301実測値 :490.1342IR(KBr,cm−1):3453,1620,1560,1448,1043UV(c=0.0006,MeOH,nm,logε):289(4.0),221(4.4)1H−NMR(CD3OD,500MHz,δ):4.43(1H,d,J=9.2Hz,1’−H),4.92(1H,d,J=7.3Hz,1”−H)7.00(1H,ddd,J=1.2,7.9,7.9Hz,5−H),7.13(1H,ddd,J=1.2,7.9,7.9Hz,6−H)7.26(1H,dd,J=1.2,7.9Hz,7−H),7.79(1H,dd,J=1.2,7.9Hz,4−H)13C−NMR(CD3OD,125MHz,δc):C−1 , C−2 113.3,C−3 142.0, C−4 119.5,C−5 120.3, C−6 124.2,C−7 112.2, C−8 136.3,C−9 121.5, C−10 ,C−1’ 89.4 C−2’ 73.7,C−3’ 78.0 C−4 71.2,C−5’ 81.9 C−6’ 62.7,C−1” 112.2 C−2” 75.4,C−3” 77.8 C−4” 71.2,C−5” 79.1 C−6” 62.4,Positive−mode FAB−MS(m/z):512(M+Na)+【0012】カラントサイド B オクタアセテイト(化6)1H−NMR(CD3OD,500MHz,δ):1.98,2.03,2.03,2.04,2.08,2.15,2.15,2,20(3H,s)(O−Acx8)7.09(1H,ddd,J=0.9,8.2,8.2Hz,5−H),7.24(1H,ddd,J=0.9,8.2,8.2Hz,6−H)7.33(1H,dd,J=0.9,8.2Hz,7−H),7.73(1H,dd,J=0.9,8.2Hz,4−H)13C−NMR(CD3OD,125MHz,δc):20.5,20.6,20.6,20.7,20.8,20.9,21.0,21.0,61.6,62.2,67.6,68.6,70.0,71.3,71.8,74.1,76.5,83.7,102.7,110.8(C−2),111.1(C−7),119.0(C−4),119.9(C−5),120.8(C−9)123.8(C−6),135.1(C−7),141.0(C−3)【0013】【分析例2】(糖の同定)カラントサイドB(3mg)の5%H2SO4−ジオキサン(dioxane)(1:1,v/v,1.0ml)溶液を窒素気流下、加熱還流し、2時間攪拌した。反応液を陰イオン交換樹脂IRA−400(OH−form)で中和し、樹脂を濾別後、溶媒を減圧留去し、粗生成物(2.8mg)を得た。粗生成物を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.2g,H2O→MeOH)で分離精製し、溶媒を減圧留去し、粗生成物(1.0mg)を得た。得られた粗生成物のピリジン溶液に、L−システィンメチルエステルヒドロクロライド(0.3mg)を加え60℃で1時間攪拌し、つづいてN,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(0.3ml)を加え60℃で1時間攪拌し、濾別後、GC用サンプルとして以下に示す条件でGC分析を行った。CG条件カラム:Supeluco STBTM−1(0.25mm×30m)Injector temp:230℃Detector temp:230℃Column temp :230℃He流速 :15ml/min保持時間(tr)D−グルコース:24.15L−グルコース:25.46【0014】前記分析結果から、カラントサイドBは、IRスペクトルにおいて、水酸基(3453cm−1)及びピロール環(1560cm−1)の存在が示唆された。またカラントサイドBは、ポジティーブモードFAB−MSにおいて、疑似分子イオンピークがm/z512(M+Na)+に観測され、高分解能FAB−MSから分子式C20H27NO11Sを有する化合物であることが判明した。そして、カラントサイドBを、H2SO4−ジオキサンで酸加水分解すると、D−グルコースが得られた。グルコースの結合様式は、アノメリック水素のカップリング定数及びアノメリック炭素の化学シフト[δ4.43(d,J=9.2),δc89.4]、[δ4.92(d,J=7.3),δc106.5]から2個のグルコースを有し、いずれもβ結合していることが明らかとなった。1H−NMR及び13C−NMRデータを新規カラントサイドA(化3)と比較すると、糖鎖構造は異なるが、インドール環部は類似しており、カラントサイドBは、インドール配糖体であることが推定された。さらに、各種2次元NMR(1H−1H、13C−1HCOSY、HMBC)スペクトルの詳細な解析により、グルコースが2分子結合していることが判明するとともに、インドール環部の2位炭素にチオエーテル基を有することが明らかとなった。【0015】【化3】【0016】また糖部については、1H−1H,13C−1HOHAHAスペクトルの解析の結果、糖部のシグナルが完全に帰属され、グルコースの結合位置については、HMBCスペクトルにおいて、1個のグルコースのアノメリック水素[δ4.92,(1H,d,J=7.3)]から、インドール環の3位炭素(δc142.0)間に相関が観測され、またもう1個のグルコースのアノメリック水素[δ4.43,(1H,d,J=9.2)]から、インドール間の2位炭素(δc113.0)の間に相関が認められた。その結果、2個のグルコースは、インドール環の2,3位に結合していると決定した。【0017】さらに、既知S配糖体であるボレアバンA(voreavanA,化4)とN配糖体であるDF−P(化5)の13C−NMRデータをカラントサイドBと比較すると、カラントサイドBは、1位炭素が[δc89.4(C−1)]と高磁場へ、5位炭素が[δc81.9(C−5)]と低磁場へシフトしており、S配糖のボレアバンA(化4)と比較的類似していることなどから、グルコースの結合位置は、インドール環部の2位にグルコースが結合していることが示唆された。またカラントサイドBを、無水酢酸−ピリジンでアセチル化すると、オクタアセチル体(化6)が得られ、オクタアセチル体の各種2次元NMRを測定したところ、同様の相関が認められたことからも、カラントサイドBの構造が確認され、カラントサイドBを、2−S−β−D−グルコピラノシル−3−o−β−D−グルコピラノシル−2−メルカプトインドール(化1)と決定した。【0018】【化4】【0019】【化5】【0020】【化6】【0021】【試験例】(ラット皮膚血流促進作用)実験動物として、SLc:ウィスター系雄性ラット(体重180〜200g)を用いた。皮膚血流量は、レーザードップラー血流計(Laser Doppler Flowmeter PF2B,Perimed)を用いて測定した。ラットの背部を剪毛し、翌日にウレタン(1g/kg)麻酔下でラットの皮膚血流量を測定し、前値とした。前値測定直後に被験液25μl(50%エタノール溶液)を前値測定部位に塗布し、その20分後に塗布部位の皮膚血流量を再度測定し、前値に対する増加率を算出した。なお、対照群には50%エタノール溶液を塗布した。被験液には、実施例で得られた本発明のカラントサイドB(CDH3)(0.2%)、参考例の既知物質インジルビン(indirubin,化7)(0.2%)を用いた。結果を図1に示す。【0022】【化7】【0023】図1に示すように、本発明のカラントサイドBは、20分で皮膚血流量を有意に増加させた。インジルビンにも同様の促進作用は認められるが、有意ではなかった。【0024】【発明の効果】本発明によれば、新規なカラントサイドBは皮膚血流促進作用を有し、育毛剤等の有用な用途が期待できる。【図面の簡単な説明】【図1】エビネランから単離されたカラントサイドBとインジルビンのラット皮膚血流促進効果を示すグラフである。【化1】【化2】【化3】【化4】【化5】【化6】【化7】 2−S−β−D−グルコピラノシル−3−o−β−D−グルコピラノシル−2−メルカプトインドールからなる新規なインドール配糖体。