タイトル: | 特許公報(B2)_腎疾患予防及び/又は治療剤 |
出願番号: | 1997094989 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A61K 38/00,C07K 14/47,A61P 13/12 |
木野崎 雅彦 小川 浩美 升永 博明 小林 文枝 山口 京二 東尾 侃二 JP 3961064 特許公報(B2) 20070525 1997094989 19970328 腎疾患予防及び/又は治療剤 第一製薬株式会社 000002831 藤野 清也 100090941 吉見 京子 100113837 藤野 清規 100076244 木野崎 雅彦 小川 浩美 升永 博明 小林 文枝 山口 京二 東尾 侃二 20070815 A61K 38/00 20060101AFI20070726BHJP C07K 14/47 20060101ALN20070726BHJP A61P 13/12 20060101ALN20070726BHJP JPA61K37/02C07K14/47A61P13/12 A61K 38/00 BIOSIS(STN) CA(STN) EMBASE(STN) MEDLINE(STN) 国際公開第96/020214(WO,A1) 特開平06−040935(JP,A) 特開平06−040934(JP,A) 竹原 豊浩,肝細胞増殖因子(HGF)の構造と生理作用,蛋白質・核酸・酵素,1991年,Vol.36, No.7,Pages 265-274 GAILIT James,Redistribution and dysfunction of integrins in cultured renal epithelial cells exposed to oxidative stress,American Journal of Physiology,1993年,Vol.264, No.1, Pt.2,Pages F149-F157 1 1998273446 19981013 7 20040219 長部 喜幸 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、TCF−II変異体を有効成分とする、腎疾患予防及び/又は治療剤に関する。本発明の腎疾患予防及び/又は治療剤は、虚血性腎障害、薬物性腎障害、糖尿病性腎症、糸球体腎症、糸球体硬化症、膜性腎症、自己免疫疾患に関連した慢性腎症、及びネフローゼなどの腎疾患、あるいはこれらの疾患を原因とする腎不全の予防及び/又は治療に有用である。【0002】【従来の技術】従来、虚血性腎障害、薬物性腎障害、糖尿病性腎症、糸球体腎症、糸球体硬化症、膜性腎症、自己免疫疾患に関連した慢性腎症、及びネフローゼなどの腎疾患、あるいはこれらを原因とする腎不全などに対する有効な治療剤は見つかっておらず、臨床の現場では保存療法、即ち症状に合わせた透析、栄養管理、利尿剤あるいは強心剤の投与による悪化因子の除去、あるいはステロイド療法などが行われており、腎臓疾患領域での有効な薬剤が切望されていた。【0003】TCF−IIは、本発明者らにより見出された、ヒト線維芽細胞IMR−90の産生する腫瘍細胞壊死因子として知られる糖蛋白質であり(WO 90/10651号)、優れた肝臓細胞増殖活性、腎臓細胞増殖活性、抗腫瘍活性などの薬理活性を有することが知られている。TCF−IIは、天然型TCF−IIあるいは遺伝子組換えによるTCF−II等が知られている。さらに、この蛋白質の糖鎖欠失変異体(特表平7-507328号)、あるいは点変異体(WO 96/20214号)などのTCF−II変異体が知られている。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上述の状況に鑑み、これらの腎臓疾患に対し有効な物質を求め鋭意探索した結果、TCF−II変異体、特に点変異体であるTCF−IIのN末端2番目からのアミノ酸配列Arg-Lys-Arg-Arg をAla-Ala-Ala-Ala に変異させたTCF−II変異体、又はN末端27番目からのアミノ酸配列Lys-Ile-Lys-Thr-Lys-Lys をAla-Ile-Ala-Thr-Ala-Ala に変異させたTCF−II変異体が腎臓疾患の予防または治療に対して有効であることを見出した。従って、本発明は、TCF−II変異体を有効成分とする新規な腎疾患予防及び/又は治療剤を提供することを課題とする。【0005】【課題を解決するための手段】本発明は、TCF−II変異体、特にTCF−IIのN末端2番目からのアミノ酸配列Arg-Lys-Arg-Arg をAla-Ala-Ala-Ala に変異させたTCF−II変異体、又はN末端27番目からのアミノ酸配列Lys-Ile-Lys-Thr-Lys-Lys をAla-Ile-Ala-Thr-Ala-Ala に変異させたTCF−II変異体を有効成分とする、腎疾患予防及び/又は治療剤に関する。本発明の腎疾患及び/又は治療剤は、虚血性腎障害、薬物性腎障害、糖尿病性腎症、糸球体腎症、糸球体硬化症、膜性腎症、自己免疫疾患に関連した慢性腎症、及びネフローゼなどの腎疾患、あるいはこれらの疾患を原因とする腎不全の予防及び/又は治療に有用である。【0006】【発明の実施の形態】本発明の有効成分であるTCF−II変異体は、TCF−II変異体の変異導入部位に対応する塩基配列に置き換えたオリゴヌクレオチドを合成し、TCF−IIcDNAを鋳型としたPCR(ポリメラーゼチェーンリアクション)法による部位特異的変異法により調製することができる。このようにして得られたcDNAは適当な発現プロモーター(サイトメガロウィルス(CMV),SRα (Mole. Cell. Biol. vol.8, No.1 pp466-472(1988) 及び特開平1-277489号公報)を有したベクター(例えばWO 92/01053 号公報)に挿入し、哺乳動物細胞などの真核細胞をトランスフェクトし、この細胞を培養することにより、培養液から目的とするTCF−II変異体を回収、調製することができる。用いられるTCF−II変異体は、TCF−IIに対し人為的に変異を加えたものであればどのようなものでも用いられるが、特に好ましくは、WO 96/20214 号公報に開示されるTCF−IIのN末端2番目からのアミノ酸配列Arg-Lys-Arg-Arg をAla-Ala-Ala-Ala に変異させた変異体、又はN末端27番目からのアミノ酸配列Lys-Ile-Lys-Thr-Lys-Lys をAla-Ile-Ala-Thr-Ala-Ala に変異させた変異体が用いられる。【0007】本発明の腎疾患予防及び/又は治療剤は、注射剤として静脈、筋肉内、あるいは皮下に投与することができる。これらの製剤は公知の製剤学的製法に準じ製造され、必要に応じpH調整剤、緩衝剤、安定化剤等を添加することができる。本発明の製剤を患者に投与する場合、投与患者の症状の程度、健康状態、年齢、体重等の条件によって異なり、特に限定されないが、成人1日当たり精製TCF−IIとして 0.6mg〜600mg 、好ましくは 6mg〜60mgを含有する製剤を1日1回若しくはそれ以上投与すれば良い。【0008】以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。しかし、これらは単なる例示であって、本発明はこれらにより限定されるものではない。【0009】【実施例1】TCF−II変異体の調製WO 96/20214 号公報に開示される方法に従って、天然型TCF−IIのN末端2番目からのアミノ酸配列Arg-Lys-Arg-Arg をAla-Ala-Ala-Ala に変異させた変異体(以下、RKRR2AAAA と表す)、及びN末端27番目からのアミノ酸配列 Lys-Ile-Lys-Thr-Lys-LysをAla-Ile-Ala-Thr-Ala-Ala (以下、KIKTKK27AIATAAと表す)に変異させた変異体の点変異体2種を調製した。即ち、RKRR2AIAA cDNAの発現ベクターを含む大腸菌(FERM BP-5266)、および KIKTKK27AIATAA cDNAの発現ベクターを含む大腸菌(FERM BP-5265)を50μg/mlのアンピシリンを含むL培地(400ml) 中37℃で振盪培養し、OD 600が 1.0になったところで終濃度が0.3 mg/ml となるようにスペクチノマイシン(シグマ社) を添加し、一晩培養した。Maniatisの方法(Molecular Cloning 2nd ed. pp 1.21-1.52(1989), Cold Spring Harbor Laboratory発行) に従い、アルカリSDS法によりプラスミドDNAを分離し、塩化セシウム密度勾配遠心法によりそれぞれの変異体発現プラスミドを精製した。【0010】得られたこれらの発現プラスミドをCHO細胞に導入した。あらかじめ25μlのTE(10mM Tris-HCl(pH8.0)-1mM EDTA)に溶かしておいた、 200μg の発現プラスミドと10μg のブラストサイジン耐性遺伝子発現プラスミドpSV2 bsr(フナコシ社)DNAを、10%牛胎児血清(ギブコ社)を含んだIMDM培地(ギブコ社)0.8ml に懸濁した 2×106 個のCHO細胞にエレクトロポレーション法で遺伝子導入した。330V,960μF の条件でエレクトロポレーションを行った後、細胞懸濁液を10分間室温で放置し、10mlの10%牛胎児血清を含むIMDM培地に懸濁し2日間37℃の炭酸ガスインキュベーター(5%CO2)中で培養した。2日後細胞をトリプシン(ギブコ社)処理によりフラスコ底面より剥がし、生細胞数を数えた後、10,000個/ウエルになるように96ウエルプレート(Nunc社)にまき、5μg/mlのブラストサイジン(フナコシ社)を含んだ選択培地 200μl /ウエル中で37℃の炭酸ガスインキュベーター(5%CO2)中で培養した。2−3週間後、ウエルあたり50μlの培養上清を取り、エンザイムイムノアッセイ(N.Shima 他、Gastrpenterologia Japonica, Vol. 26, No.4, pp 477-482 (1991)) を行いTCF−II変異体生産細胞を選びだした。生産細胞を1枚当たり100ml の培地中、50-200枚の225cm2フラスコを用い、一枚あたり100ml の培地を用い37℃の炭酸ガスインキュベーター(5%CO2)中で4−7日培養し、5-20L の培養上清を回収した。この培養上清から、ヘパリンーセファロース CL-6Bカラム (25mm×120mm,ファルマシア社)、Mono Sカラム(5mm×50mm, ファルマシア社)、及びヘパリン5-PWカラム(8mm×75mm, 東ソー社)により各変異体を精製した。得られたTCF−II変異体は、0.01% Tween20を含むリン酸緩衝液(PBS)に対して透析し最終精製品とした。最終精製品については、ローリー法による蛋白質量定量、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による純度検定、及びアミノ酸シークエンサーによるアミノ酸配列決定により構造を確認した。【0011】【実施例2】TCF−II変異体製剤の製造前述の実施例1で得られたTCF−II変異体の注射剤の製造例を示す。上記組成をpH6.03のクエン酸緩衝液に溶解し全量を20mlに調製し、滅菌後バイアル瓶に2mlづつ分注したものを凍結乾燥後密封した。【0012】上記組成を注射用生理食塩水に溶解し全量を20mlに調製し、滅菌後バイアル瓶に2mlづつ分注したものを凍結乾燥後密封した。【0013】上記組成をpH6.03のクエン酸緩衝液に溶解し全量を20mlに調製し、滅菌後バイアル瓶に2mlづつ分注したものを凍結乾燥後密封した。【0014】上記組成を注射用生理食塩水に溶解し全量を20mlに調製し、滅菌後バイアル瓶に2mlづつ分注したものを凍結乾燥後密封した。【0015】上記組成を注射用生理食塩水に溶解し全量を20mlに調製し、滅菌後バイアル瓶に2mlづつ分注したものを凍結乾燥後密封した。【0016】上記組成を pH6.03 のクエン酸緩衝液に溶解し全量を20mlに調製し、滅菌後バイアル瓶に2mlづつ分注したものを凍結乾燥後密封した。【0017】上記組成を注射用生理食塩水に溶解し全量を20mlに調製し、滅菌後バイアル瓶に2mlづつ分注したものを凍結乾燥後密封した。【0018】上記組成をpH6.03のクエン酸緩衝液に溶解し全量を20mlに調製し、滅菌後バイアル瓶に2mlづつ分注したものを凍結乾燥後密封した。これらの凍結乾燥品は、使用時に滅菌蒸留水に溶解して用いられる。【0019】【実施例3】塩化第二水銀による腎不全死防御効果実施例1に従って得られた、TCF−IIの2番目からのアミノ酸を変異させた RKRR2AAAA、及び27番目からのアミノ酸を変異させた KIKTKK27AIATAA を用いて、塩化第二水銀による腎不全死に対する防御効果を試験した。即ち、ICR系雄マウス(体重30〜35g;一群20匹)に1日2回、計9回各TCF-II 変異体(それぞれ25μg/匹/回)、陽性対照としてTCF−II(25,50,100μg/匹/回)、及び溶媒を静脈内投与した。最終投与の6時間後、5mg/kgの塩化第二水銀 (和光純薬社) を静脈内投与し、塩化第二水銀による腎不全死に対するTCF−II変異体の防御効果を生存匹数として経時的に観察した。結果を図1及び図2に示す。この結果より、溶媒投与群と比較して、TCF−II及びTCF−II変異体投与群は、明らかに塩化第二水銀による腎不全死を防御した。さらに、TCF−II変異体投与群はTCF−II投与群と比較して、低用量で同等の活性を示すことが確認された (RKRR2AAAA では天然型TCF−IIの4分の1量、KIKTKK27AIATAAでは2分の1量) 。【0020】【発明の効果】本発明により優れた腎疾患予防及び/又は治療剤が提供される。本発明は、TCF−IIのN末端2番目からのアミノ酸配列Arg-Lys-Arg-Arg をAla-Ala-Ala-Ala に変異させたTCF−II変異体、又はN末端27番目からのアミノ酸配列Lys-Ile-Lys-Thr-Lys-Lys をAla-Ile-Ala-Thr-Ala-Ala に変異させたTCF−II変異体を有効成分とする、腎疾患予防及び/又は治療剤に関し、虚血性腎障害、薬物性腎障害、糖尿病性腎症、糸球体腎症、糸球体硬化症、膜性腎症、自己免疫疾患に関連した慢性腎症、及びネフローゼなどの腎疾患、さらにこれらの疾患を原因とする腎不全の予防及び/又は治療に有用である。【図面の簡単な説明】【図1】塩化第二水銀による腎不全死に対する、TCF−II変異体(RKRR2AAAA)の防御効果を示す。【図2】塩化第二水銀による腎不全死に対する、TCF−II変異体 (KIKTKK27AIATAA) の防御効果を示す。 TCF−IIのN末端2番目からのアミノ酸配列Arg-Lys-Arg-Arg をAla-Ala-Ala-Ala に変異させたTCF−II変異体を有効成分とする、腎不全死防御剤。