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タイトル:特許公報(B2)_抗ヘリコバクター・ピロリ剤
出願番号:1997085426
年次:2007
IPC分類:C07D 215/22,A61K 31/47,A61P 1/04,A61P 31/04


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田中 幸一 渡邊 正人 武田 靖代 小山 謙一 鷲崎 清司 JP 3879171 特許公報(B2) 20061117 1997085426 19970403 抗ヘリコバクター・ピロリ剤 アステラス製薬株式会社 000006677 森田 拓 100098501 田中 幸一 渡邊 正人 武田 靖代 小山 謙一 鷲崎 清司 20070207 C07D 215/22 20060101AFI20070118BHJP A61K 31/47 20060101ALI20070118BHJP A61P 1/04 20060101ALI20070118BHJP A61P 31/04 20060101ALI20070118BHJP JPC07D215/22A61K31/47A61P1/04A61P31/04 C07D215/00-215/60 A61K 31/47 A61P 1/04 A61P 31/04 BIOSIS(STN) CAOLD(STN) CAplus(STN) EMBASE(STN) MEDLINE(STN) REGISTRY(STN) MOON, Surk-Sik,Plant growth promoting and fungicidal 4-quinolinones from Pseudomonas cepacia,Phytochemistry,1996年,Vol.42, No.2,p.365-368 4 1998279561 19981020 15 20030610 今村 玲英子 【0001】【発明が属する技術分野】本発明は,医薬殊に抗ヘリコバクター・ピロリ作用を有する新規発酵生産物,並びにヘリコバクター・ピロリ感染が起因する種々の疾患の治療に有用な抗ヘリコバクター・ピロリ剤に関する。【0002】【従来の技術】ヘリコバクター・ピロリは(Helicobacter pylori)は,1983年に発見された病原性細菌であり,消化性潰瘍(例えば胃潰瘍又は十二指腸潰瘍等),炎症(例えば胃炎等)又は胃ガン等の消化管上部の疾患,もしくは慢性心疾患の病因と言われている。現在,ヘリコバクター・ピロリ感染症の治療に関する研究は活発になされており,該治療法としては,除菌を目的としたもの,再発防止を目的としたもの等下記の如く多数報告されている。例えば,ビスマス,抗生物質,プロトンポンプ阻害剤(PPI),抗潰瘍剤等の単剤投与又は前記薬物等を組み合わせた多剤併用法(2剤併用,3剤併用)が挙げられる(内科,特集,78巻1号(1996),南江堂)。しかしながら,上記治療法は,例えば投与回数の頻度の多さ,常用量以上の大量投与を要する場合があること,薬物投与による下痢・便秘等の発症,耐性菌の発生等まだまだ解決しなければならない点が多い。また,本発明に関連する抗ヘリコバクター・ピロリ剤として有用な下記化合物(II)は,公知化合物であり(Chem.Pharm.Bull.,15(5),718−720(1967),その用途は植物成長促進,又は抗植物病原菌作用であり(Phytochemistry,42,365−368,(1996))。ヒト病原菌,特にヘリコバクター・ピロリ菌に関する抗菌活性については何ら報告されていない。さらに,該化合物と構造類似の発酵生産物,Pseudonocardia sp.38489株産生物質が報告されている(第 回日本農芸化学会,要旨集,3Ea5(1997))。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は,優れた抗ヘリコバクター・ピロリ剤を提供することを目的とし,又抗ヘリコバクター・ピロリ作用を有する新規発酵生産物を提供することを目的とする。【0004】【課題を解決するための手段】本発明者らは,上記状況下天然に存在する多くの微生物が生産する物質について鋭意検討した結果,シュードモナス(Pseudomonas)属に属する細菌で,非常に優れた抗ヘリコバクター・ピロリ作用を有する物質を生産する能力を有する微生物を見いだし,該微生物を培養し,培養物から下記公知物質(II)及び新規物質(III)を単離することに成功し本発明を完成した。また,該培養物から単離した下記公知化合物(I及びII)の新規用途である優れた抗ヘリコバクター・ピロリ剤を見いだした。該抗ヘリコバクター・ピロリ剤は,選択性が高く,他の細菌に影響を与えないことをも見いだした。さらに,本発明を詳述する。本発明は,下記式(I)で示される2−(2−ヘプテニル)−3−メチル−4(1H)−キノロンを有効成分とする抗ヘリコバクター・ピロリ剤,【0005】【化4】【0006】下記式(II)で示される2−(2−cis−ヘプテニル)−3−メチル−4(1H)−キノロン(以下Q33160−Bという)を有効成分とする抗ヘリコバクター・ピロリ剤,【0007】【化5】【0008】下記式(III)で示される2−(2−trans−ヘプテニル)−3−メチル−4(1H)−キノロン(以下Q33160−Aという)を有効成分とする抗ヘリコバクター・ピロリ剤,【0009】【化6】【0010】もしくはQ33160−A又はその塩である。【0011】【発明の実施の形態】以下本発明につき詳述する。本発明に包含されるQ33160−A及びQ33160−Bは,シュードモナス属に属する上記化合物生産菌を栄養培地にて培養し,該化合物を蓄積させた培養物から常法により得られる。本発明の製造方法において使用する微生物は,シュードモナス属に属し,上記化合物の生産能を有する微生物であればいずれも用いることができる。このような微生物としては,具体的には例えば,奄美大島で採取された土壌から分離された微生物シュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)Q33160株を挙げることができる。以下,この菌学的性状を説明する。【0012】シュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)Q33160株の微生物学的性質1)形態肉汁寒天培地上で,28℃,5日間培養した細胞は,0.2〜0.5×0.5〜1.6μmの桿菌でグラム染色は陰性であり,運動性を有する。また胞子,ミクロシストなどの形成は認められない。2)各種培地における生育状態肉汁寒天培地上で,うす黄茶色のコロニーを形成する。コロニーの周辺はスムースで顕著な粘調性及び遊走性は認められない。また,可溶性色素の生成は認められない。肉汁穿刺培養では培地全体が懸濁し,皮膜を形成する。リトマスミルクでの培養では,弱酸性を示す。3)生理学的性質【0013】【表1】硝酸塩の還元 陽性脱窒反応 陰性MRテスト 陰性VPテスト 陰性インドールの生成 陰性硫化水素の生成 陰性デンプンの加水分解 陰性クエン酸の利用 陽性色素の生成 陰性ウレアーゼ 陰性オキシターゼ 陽性カタラーゼ 陽性ゼラチンの液化 陽性生育温度範囲 10〜37℃至適生育温度 20〜32℃生育pH範囲 pH5〜9至適生育pH pH6〜8嫌気条件での生育 陰性OFテスト 酸化型アルギニン分解反応 陰性ポリ−β−ハイドロキシブチレートの 陽性菌体内蓄積NaCl添加肉汁培地での生育 3%では生育するが,6%では生育しない【0014】4)炭素源の利用性【0015】【表2】L−アラビノース +D−キシロース +D−グルコース +D−マンノース +シュークロース +イノシット +ラムノース −ラフィノース +D−マンニット +D−ガラクトース +マルトース +トレハロース +ラクトース ±D−ソルビット +サリシン +メリビオース +グリセリン +スターチ −キサンチン ±キチン −【0016】5)菌体成分の化学分析菌体イソプレノイド・キノンとして,Q−8を有する。6)DNAのGC含量(HPLC法による)mol%G+C=69.3以上の微生物学的性質をまとめると,本菌株はグラム陰性好気性の桿菌で運動性を有する。生育温度範囲は10〜37℃で,オキシターゼ試験,カタラーゼ試験,硝酸塩の還元性は陽性であり,OFテストの結果は酸化型である。また,ポリ−β−ハイドロキシブチレートの菌体内蓄積が認められる。一方,デンプンの分解性,硫化水素の生成,インドールの生成,VP試験結果は陰性である。菌体イソプレノイド・キノンとして,Q−8を有する。また,DNAの塩基組成は69.3mol%である(HPLC法)。このような性質を有する菌をバージーズ・マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジィ(Bergey'S Manual of Systematic Bacteriology,1989)及びその他の文献によって検索した結果,本菌株はシュードモナス(Pseudomonas)属に属する細菌であると判断した。さらに上に記した性質に基づき本菌株とシュードモナス属の既知菌種とを各種文献により比較検討した結果,類似菌種としてシュードモナス セパシア(Pseudomonas cepacia)があげられる。本菌株とシュードモナス セパシア(P.cepacia)との文献値を比較した。以下に相違点の概略を示す。【0017】【表3】【0018】上記の表に示したように,可溶性色素の産生,40℃における生育,細胞の大きさの点で本菌株は,シュードモナス セパシア(P.cepacia)とは異なっていた。従って,本菌株をシュードモナス属の新種と判断し,シュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)Q33160と命名した。なお,本菌株は工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM P−16177として寄託されている。なお,微生物は人工的に,また自然に変異を起こしやすいが,本発明において用いられるシュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.) Q33160株は,天然から分離された菌株の他に,これを紫外線,X線,化学薬剤などで人工的に変異させたもの,及びそれらの天然変異株についても包含するものである。【0019】(製造法)本発明の新規抗生物質の製造法を実施するに当たり,該物質の生産菌株シュードモナス エスピー Q33160株を各種栄養源を含有する培地に接種し,好気的に発育させることにより本発明の新規物質を含む培養物が得られる。培養に用いられる培地は,使用する微生物が生育可能な培地であればよく,合成培地,半合成培地あるいは天然培地を用いることができる。培地に添加する栄養物としては,細菌の栄養源として公知のものを使用できる。例えば窒素源(炭素源)としては,市販されているペプトン類,肉エキス類,コーンスティープリカー,綿実粕,落花生粉,大豆粉,酵母エキス,NZ−アミン,小麦胚芽,カゼイン類,魚粉,デンプン類,オウギ,及び硝酸ナトリウム,硝酸アンモニウム等の無機又は有機物,炭素源としては市販されている糖蜜,グルコース,マルトース,フルクトース,マンニトール,ポテトスターチ,コーンスターチ,デキストリン,可溶性デンプン等の炭水化物あるいは油脂,脂肪類などが使用できる。また金属塩としては,Na,K,Mg,Ca,Zn,Fe,Mn,Co,Cu,等の硫酸鉛,塩酸塩,硝酸塩,燐酸塩,炭酸塩等を必要に応じて添加できる。さらに必要に応じてバリン,ロイシン,イソロイシン,フェニルアラニン,トリプトファン,メチオニン,リジン,アルギニン,グルタミン酸,アスパラギン酸等のアミノ酸や,ビタミン類,オレイン酸,オレイン酸メチル,ラード油,シリコン油,海面活性剤等の二次代謝物生産促進物質又は消泡剤を適宜使用できる。これらのもの以外でも,本発明化合物生産菌が利用し,本発明化合物の生産に役立つものであれば,いずれの添加物も使用することができる。培養法としては,一般の抗生物質などの培養法と同様に行えば良く,その培養方法は固体培養でも液体培養でも良い。液体培養の場合は静置培養,振とう培養,攪拌培養のいずれを実施してもよいが,特に通気攪拌培養が望ましい。培養条件として,培養温度は生産菌が発育し,本発明の抗生物質を生産しうる温度,すなわち15℃〜37℃の範囲で適宜適用できるが約28℃が好ましい。pHは,pH4〜9の範囲で適宜適用できるが,pH6〜8が好ましい。培養時間は種々の条件によって異なり,10時間〜168時間であるが,通常24〜120時間程度で培養液中に蓄積される本発明の物質が最高力価に達する。【0020】培養物から目的とする化合物を単離するには,微生物の産生する代謝産物を単離する際に用いる通常の抽出,精製の手段が適宜利用できる。培養物中の該物質は培養液をそのままか,又は遠心分離あるいは培養物に濾過助剤を加えて濾過して得られた培養濾液に酢酸エチル,クロロホルム,ベンゼン,トルエン等の水と混和しない有機溶剤を加えて抽出する。また,培養液を適宜の坦体に接触させ,濾液中の生産物質を吸着させ,次いで適当な溶媒で溶出することにより該物質を抽出することができる。例えば,アンバーライトXAD−2,ダイヤイオンHP−20,ダイヤイオンCHP−20,又はダイヤイオンSP−900のような多孔性吸着樹脂に接触させて該物質を吸着させる。次いでメタノール,エタノール,アセトン,アセトニトリル等の有機溶媒と水の混合液を用いて該物質を溶出させる。このときの有機溶媒の混合比率を低濃度より段階的に又は連続的に高濃度まで上げていくことにより,該物質の含まれる比率のより高い画分を得ることができる。次に,上記の各操作法を用いて得た該物質含有画分は,シリカゲル,ODS等を用いたカラムクロマトグラフィー,遠心液々分配クロマトグラフィー,ODSを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の常法により,さらに純粋に分離精製することができる。本発明化合物は,二重結合を有するのでcis体,trans体又は互変異性体が存在する。本発明化合物の塩としては,無機酸若しくは有機酸との酸付加塩,あるいは無機若しくは有機塩基との塩であり,製薬学的に許容しうる塩が好ましい。これらの塩としては,具体的には塩酸,臭化水素酸,ヨウ化水素酸,硫酸,硝酸若しくはリン酸等の鉱酸,又は,ギ酸,酢酸,プロピオン酸,シュウ酸,マロン酸,コハク酸,フマル酸,マレイン酸,乳酸,リンゴ酸,酒石酸,クエン酸,メタンスルホン酸若しくはエタンスルホン酸等の有機酸,又はアスパラギン酸若しくはグルタミン酸などの酸性アミノ酸との酸付加塩,ナトリウム,カリウム,マグネシウム,カルシウム,アルミニウムなど無機塩基,メチルアミン,エチルアミン,エタノールアミンなどの有機塩基,リジン,オルニチンなどの塩基性アミノ酸との塩等を挙げることができる。また,本発明化合物の水和物,各種溶媒和物,また互変異性体等が含まれる。更に,本発明化合物には,結晶多形を有する化合物もあり,それらの結晶形をすべて包含するものである。以下に本発明化合物の製剤化法,投与方法を詳述する。式(I),(II)又は(III)で示される化合物やその製薬学的に許容される塩の1種又は2種以上を有効成分として含有する医薬組成物は,通常用いられている製剤用の担体や賦形剤,その他の添加剤を用いて,錠剤,散剤,細粒剤,顆粒剤,カプセル剤,丸剤,液剤,注射剤,坐剤,軟膏,貼付剤等に調製され,経口的又は非経口的に投与される。本発明化合物のヒトに対する臨床投与量は適用される患者の症状,体重,年令や性別等を考慮して適宜決定される。通常成人1日当り経口で0.1〜500mg,非経口で0.01〜100mgであり,これを1回あるいは数回に分けて投与する。投与量は種々の条件で変動するので,上記投与量範囲より少ない量で十分な場合もある。【0021】本発明による経口投与のための固体組成物としては,錠剤,散剤,顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては,一つ又はそれ以上の活性物質が,少なくとも一つの不活性な希釈剤,例えば乳糖,マンニトール,ブドウ糖,ヒドロキシプロピルセルロース,微結晶セルロース,デンプン,ポリビニルピロリドン,メタケイ酸,アルミン酸マグネシウムと混合される。組成物は,常法に従って,不活性な希釈剤以外の添加剤,例えばステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤や繊維素グリコール酸カルシウムのような崩壊剤,ラクトースのような安定化剤,グルタミン酸又はアスパラギン酸のような可溶化乃至は溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要によりショ糖,ゼラチン,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどの胃溶性あるいは腸溶性物質のフィルムで被膜してもよい。経口投与のための液体組成物は,薬剤的に許容される乳濁剤,溶液剤,懸濁剤,シロップ剤,エリキシル剤等を含み,一般的に用いられる不活性な希釈剤,例えば精製水,エチルアルコールを含む。この組成物は不活性な希釈剤以外に可溶化乃至溶解補助剤,湿潤剤,懸濁剤のような補助剤,甘味剤,風味剤,芳香剤,防腐剤を含有していてもよい。非経口投与のための注射剤としては,無菌の水性又は非水性の溶液剤,懸濁剤,乳濁剤を包含する。水性の溶液剤,懸濁剤の希釈剤としては,例えば注射剤用蒸留水及び生理食塩水が含まれる。非水溶性の溶液剤,懸濁剤の希釈剤としては,例えばプロピレングリコール,ポリエチレングリコール,オリーブ油のような植物油,エチルアルコールのようなアルコール類,ポリソルベート80(商品名。ポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル)等がある。このような組成物は,さらに等張化剤,防腐剤,湿潤剤,乳化剤,分散剤,安定化剤(例えば,ラクトース),可溶化乃至溶解補助剤のような添加剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過,殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。これらは又無菌の固体組成物を製造し,使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解して使用することもできる。【0022】本発明化合物の溶解性が低い場合には,可溶化処理を施してもよい。可溶化処理としては,医薬製剤に適用できる公知の方法,例えば界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類,ポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類,ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール類,ショ糖脂肪酸エステル類等)を添加する方法,薬物と可溶化剤例えば高分子(ハイドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC),ポリビニルピロリドン(PVP),ポリエチレングリコール(PEG)等の水溶性高分子,カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC),ハイドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP),メタアクリル酸メチル−メタアクリル酸共重合体(オイドラギットL,S,商品名;ローム・アンド・ハース社製)等の腸溶性高分子)との固体分散体を形成する方法が挙げられる。更に必要により,可溶性の塩にする方法,サイクロデキストリン等を用いて包接化合物を形成させる方法等も採用できる。可溶化の手段は,目的とする薬物に応じて適宜変更できる[「最近の製剤技術とその応用」,内海勇ら,医薬ジャーナル157−159(1983)及び「薬学モノグラフNo.1,生物学的利用能」,永井恒司ら,ソフトサイエンス社,78−82(1988)]。このうち,好ましくは,薬物と可溶化剤との固体分散体を形成させ溶解性を改善する方法が採用される(特開昭56−49314号,FR2460667号)。【0023】本発明によれば前記活性化合物を単独ばかりでなく,他の抗菌剤と組み合わせて(好ましくは1〜3種)使用することができる。このような他の抗菌剤とは,例えば,ニトロイミダゾール抗生物質(例えばチニダゾール及びメトロニダゾール),テトラサイクリン系薬剤(テトラサイクリン,ミノサイクリン,ドキシサイクリン),ペニシリン系薬剤(例えばアモキシリン,アンピシリン,タランピシリン,バカンピシリン,レナンピシリン,メズロシリン,スルタミシリン),セファロスポリン系薬剤(例えば,セファクロル,セファドロキシル,セファレキシン,セフポドキシムプロキセチル,セフィキシム,セフジニル,セフチブテン,セフオチアムヘクセチル,セフタメットピボキシル,セフロキシムアクセチル),ペネム系薬剤(例えば,フロペネム,リチペネムアコキシル),マクロライド系薬剤(例えば,エリスロマイシン,オレアンドマイシン,ジョサマイシン,ミデカマイシン,ロキタマイシン,クラリスロマイシン,ロキシスロマイシン,アジスロマイシン),リンコマイシン系薬剤(例えば,リンコマイシン,クリンダマイシン),アミノグリコシド系薬剤(例えば,パロモマイシン),キノロン系薬剤(例えば,オフロキサシン,レボフロキサシン,ノルフロキサシン,エノキサシン,シプロフロキサシン,ロメフロキサシン,トスフロキサシン,フレロキサシン,スパフロキサシン,テマフロキサシン,ナジフォキサシン,グレパフロキサシン,パズフォキサシン)並びにニトロフラントインを上げることができる。また,酸に関連した疾患の治療に用いられる医薬化合物{例えば,酸ポンプ阻害剤(オメプラゾール及びランソプラゾール)}又はH2アンタゴニスト(例えば,ラニチジン,シメチジン及びファモチジン)と前記活性化合物との組み合わせも,本発明の範囲内に含まれる。【0024】【実施例】以下,本発明を製造例,試験例により,さらに詳しく説明するが,本発明はもちろんこれらの例に限定されるものではない。【0025】実施例1グルコース1.0%,ポテトスターチ2.0%,酵母エキス0.5%,ポリペプトン0.5%,炭酸カルシウム0.4%を含む種培地(pH7.0)を作成し,500mlの三角フラスコに100mlずつ分注した。この培地を121℃で20分間滅菌した後,ベネット寒天上に良く生育させたシュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)Q33160株の菌体をかき取って接種し,28℃で72時間振盪培養を行って種培養液とした。次に生産培地として,グリセロール4.0%,コンスティプリカー3.0%,硝酸ナトリウム0.4%,炭酸カルシウム0.2%,硫酸マグネシウム0.02%,を含む培地(pH5.5)を作成し,500mlの三角フラスコに100mlずつ分注した。この培地を121℃で20分間滅菌したものに,上記種培養液で得られた培養物を2%の割合で接種し,28℃で72時間振盪培養した。【0026】このようにして培養した5lの培養液に20lのアセトンを加え,攪拌して一夜放置した後,濾過して上清と沈澱物に分離した。上清を減圧下で濃縮しアセトンを除去した後,得られた濃縮液をpH8.5に調整し,酢酸エチル5lで2回抽出した。酢酸エチル層を減圧下で濃縮乾固し,粗抽出物を得た。この粗抽出物を,ODS−7515−12A(センシュウ科学社製)を用いたフラッシュクロマトグラフィーに付し,メタノール/水(8:1)及び(9:1)で溶出した活性画分89.7mgを得た。最終的に,SUPELCOSIL LC ABZ+PLUS(スペルコ社製)21.2φ×250mmのカラムを用い,メタノール:水(75:25)を用いたHPLCにより精製を行い,32.7分に溶出されてくる活性画分Q33160−A物質47.9mg及び33.9分に溶出されてくる活性画分Q33160−B物質17.7mgを単離した。液体クロマトグラフィー(HPLC)の条件は以下の通りである。カラム:SUPELCOSIL LC−ABZ+PLUS(スペルコ社製,21.2φ×250mm)溶出溶媒:メタノール:水(=75:25)の混合溶液流出速度:4ml/min検出波長:210nm上記抽出,分離,精製されたQ33160−A物質は下記の物理化学的性質を有する。(1)色及び形状:白色粉末。(2)酸性,中性,塩基性の区分:中性。(3)溶解性:メタノール,クロロホルムには溶けるが水,ヘキサンにはほとんど溶けない。(4)紫外部吸収スペクトル:214,239,323,335nmに吸収極大を示し,第1図通りである(溶剤:メタノール)。(5)分子量:255.36(6)マススペクトル(FAB−Mass):256[M+H]+,254[M−H]-(7)分子式:C17H21NO(8)赤外吸収スペクトル(KBr)は,第2図通りである。(9)1H−NMRスペクトル(500MHz,CDCl3):Q33160−A物質の1H−NMRスペクトルは第3図の通りである。(10)13C−NMRスペクトル(125MHz,CDCl3):Q33160−A物質の13C−NMRスペクトルは第4図の通りである。上記の物理化学的性質からQ33160−A物質の化学構造式は下記のように決定された。【0027】【化7】【0028】上記抽出,分離,精製されたQ33160−B物質は下記の物理化学的性質を有する。(1)色及び形状:白色粉末。(2)酸性,中性,塩基性の区分:中性。(3)溶解性:メタノール,クロロホルムには溶けるが水,ヘキサンにはほとんど溶けない。(4)紫外部吸収スペクトル:213,241,322,335nmに吸収極大を示し,第5図通りである(溶剤:メタノール)。(5)分子量:255.36(6)マススペクトル(FAB−Mass):256[M+H]+,254[M−H]-(7)分子式:C17H21NO(8)赤外吸収スペクトル(KBr)は,第6図通りである。(9)1H−NMRスペクトル(500MHz,CDCl3):Q33160−B物質の1H−NMRスペクトルは第7図の通りである。(10)13C−NMRスペクトル(125MHz,CDCl3):Q33160−B物質の13C−NMRスペクトルは第8図の通りである。上記の物理化学的性質からQ33160−B物質の化学構造式は下記のように決定された。【0029】【化8】【0030】前記活性化合物のインビトロ活性は以下の方法により示すことができる。実施例2前記物質のインビトロ活性測定は以下の方法により示すことができる。抗菌活性の測定抗菌物質含有寒天平板の作製評価する物質を100%ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し,2倍系列希釈した。本希釈液を滅菌丸シャーレに入れ,そこに滅菌後50℃に保温しておいた10mlのブルセラ寒天培地(0.1%β−サイクロデキストリン)に加え,混和後,固めた。DMSOの最終濃度は1%以下となる。接種材料の調製と結果判定ブルセラ寒天培地(5%仔牛血清含有)を用いてマルチガスインキュベーター(N280%,CO215%,O25%)で37℃にて3日間培養したヘリコバクター・ピロリ菌,例えばヘリコバクター・ピロリATCC43504を,濁度により約108個/1mlになるようにブルセラブロスを用いて調製した。本菌液を,同様にブルセラブロスを用いて100倍希釈した液を,薬剤を含有する寒天培地に,ミクロプランターを用いて約5μlを寒天表面に接種した。接種した寒天平板を,上記マルチガスインキュベーターに37℃で3日間(72時間)培養する。培養を終了した寒天平板を観察し,増殖の観察されない薬剤濃度をMICとした。その結果,Q33160−A物質でのMICは0.006μg/ml,Q33160−B物質でのMICは,0.025μg/mlであった。【0031】実施例3通性嫌気性菌,好気性菌に対するインビトロ活性測定は以下の方法により測定する。抗菌物質含有寒天平板の作製評価する物質を100%ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し,2倍系列希釈した。本希釈液を滅菌丸シャーレに入れ,そこに滅菌後50℃に保温しておいた10mlのミューラーヒントン寒天培地に加え,混和後,固めた。DMSOの最終濃度は1%以下となる。接種材料の調製と結果判定ミューラーヒントンブロスを用いて,37℃に設定したフラン器で終夜培養した菌液を,ミューラーヒントンブロスを用いて約106個/1mlになるように希釈調製した。本菌液を,薬剤を含有する寒天培地に,ミクロプランターを用いて約5μlを寒天表面に接種した。接種した寒天平板を,37℃のフラン器で18時間培養した。培養を終了した寒天平板を観察し,増殖の観察されない薬剤濃度をMICとした。結果Q33160−A,Q33160−Bは,スタフィロコッカス アウレウス(Staphylococcus oureus)FDA209A,エシェリシア コリ(Escherichia coli)O−1,シュードモナス エルギノザ(Pseudomonas aeruginosa)NCTC10490のような代表的通性嫌気性菌,好気性菌に対するMICが50μg/mlよりも大きな値を示した。【0032】実施例4嫌気性菌に対するインビトロ活性測定は以下の方法により測定する。抗菌物質含有寒天平板の作製評価する物質を100%ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し,2倍系列希釈した。本希釈液を滅菌丸シャーレに入れ,そこに滅菌後50℃に保温しておいた10mlのGAM寒天培地に加え,混和後,固めた。DMSOの最終濃度は1%以下となる。接種材料の調製と結果判定GAMブイヨンを用いて,N280%CO210%H210%の混合ガスでガス置換した嫌気性菌培養装置を用いて37℃にて終夜培養した菌液を,同じGAMブイヨンを用いて約106個/1mlになるように調製した。本菌液を,薬剤を含有する寒天培地に,ミクロプランターを用いて約5μlを寒天表面に接種した。接種した寒天平板を,上記の37℃に設定してある嫌気性菌培養装置で18時間培養した。培養を終了した寒天平板を観察し,増殖の観察されない薬剤濃度をMICとした。結果Q33160−A,Q33160−Bは,ビフィドバクテリウム ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)CAYA21−1,ペプトストレプトコッカス プロダクタス(Peptostreptococcus productus)CAYA12−2,バクテロイデス フラジリス(Bacteroides fragiris)GA15562のような扁性嫌気性菌に対するMICは50μg/mlより大きな値を示した。【0033】【発明の効果】本発明は,ヘリコバクター・ピロリに対して抗菌作用を示し,ヒトにおけるヘリコバクター・ピロリ及び動物における関連するヘリコバクター属に属する細菌感染の治療に有効である。また,本発明抗ヘリコバクター・ピロリ剤は,消化性潰瘍(例えば胃及び十二指腸潰瘍),炎症(胃炎,十二指腸炎),胃癌等の消化管上部の疾患,もしくは慢性心疾患等の治療にも有効である。【0034】【図面の簡単な説明】【図1】Q33160−A物質の紫外部吸収スペクトルを示す。【図2】Q33160−A物質の赤外部吸収スペクトルを示す。【図3】Q33160−A物質の1H−NMRスペクトルを示す。【図4】Q33160−A物質の13C−NMRスペクトルを示す。【図5】Q33160−B物質の紫外部吸収スペクトルを示す。【図6】Q33160−B物質の赤外部吸収スペクトルを示す。【図7】Q33160−B物質の1H−NMRスペクトルを示す。【図8】Q33160−B物質の13C−NMRスペクトルを示す。 下記式(I)で示される2−(2−ヘプテニル)−3−メチル−4(1H)−キノロンを有効成分とする抗ヘリコバクター・ピロリ剤。 下記式(II)で示される2−(2−cis−ヘプテニル)−3−メチル−4(1H)−キノロンを有効成分とする抗ヘリコバクター・ピロリ剤。 下記式(III)で示される2−(2−trans−ヘプテニル)−3−メチル−4(1H)−キノロンを有効成分とする抗ヘリコバクター・ピロリ剤。 2−(2−cis−ヘプテニル)−3−メチル−4(1H)−キノロン又はその塩。


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