タイトル: | 特許公報(B2)_抗原−抗体またはタンパク質−補因子の反応法、検出方法およびそのための装置 |
出願番号: | 1997075253 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | G01N 33/53,G01N 33/543 |
門上 洋一 川上 文清 川村 良久 JP 3800712 特許公報(B2) 20060512 1997075253 19970327 抗原−抗体またはタンパク質−補因子の反応法、検出方法およびそのための装置 東洋紡績株式会社 000003160 高島 一 100080791 門上 洋一 川上 文清 川村 良久 20060726 G01N 33/53 20060101AFI20060706BHJP G01N 33/543 20060101ALI20060706BHJP JPG01N33/53 ZG01N33/543 501BG01N33/543 581B G01N 33/53 G01N 33/543 特公平06−050315(JP,B2) 11 1998267927 19981009 12 20031114 竹中 靖典 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、抗原と抗体、またはタンパク質と補因子の反応方法、またはこれらの検出方法、およびそのための装置に関する。【0002】【従来の技術】現在、臨床検査、食品検査、環境検査など幅広い分野において、糖、タンパク質、核酸などの生体成分の分析、定量が日常的に行われている。一般的な生体成分の分析、定量方法としては、対象とする生体成分の種類によって多種、多様のものがあるが、これらの方法には、生体成分と親和性のある物質との反応を利用したものがある。特に、抗原−抗体反応、タンパク質−補因子反応を利用した特定物質の定量方法は、EIA(enzyme immunoassay)として、感度の高い、信頼性のある方法として確立しており、臨床検査など幅広い分野において、汎用されている。近年は、ラジオアイソトープを用いない高感度のものも主流になって来ている。しかしながら、市販の試薬キットを用いても、その繁雑な反応は各々時間がかかり、試料が多いときには迅速な検査は困難であった。これは、特定の温度における運動エネルギーが、互いの分子を衝突させる頻度で反応速度を律速するためである。【0003】抗原−抗体反応などにおいて特に一方が固定化されている場合、分子衝突頻度は極端に低下し、反応速度もそれに応じて低下する。これを改善すべく、反応時に超音波を作用させ、反応速度を高める方法は従来報告されている。この場合、超音波は、非固相の抗原または抗体に作用し、固相の抗体または抗原への衝突頻度を上昇させて結合反応を促進させるものと考えられる。【0004】特公平6−54315号公報「超音波処理により免疫反応を促進する方法」には、作用させる超音波として、約5〜109 kHz、超音波処理の条件として、電力約1〜100W、温度約15〜40℃、処理時間約30秒〜2時間が開示されている。また、特公平6−50314号公報「免疫反応測定装置」には、作用させる超音波として、「反応液の振動には十分だが抗原と抗体の結合を壊さない程度の超音波」として「約20〜40kHz」が開示されている。【0005】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら超音波を用いる技術は、いまだ一般化されておらず、また、その装置も市販されていない。これは、超音波の条件が至適化されていなかったこと、あるいは、様々な点からその至適条件の再現が困難であったことによると思われる。すなわち、従来において作用させていた超音波では、周波数や電力などは例示されていたが、超音波自体の波形を加工することについては全く着目されておらず、周波数、電力を決定された超音波は、もっぱら一定の振幅強度で用いられていた。従って、波形の加工条件、加工された超音波の印加条件についても全く至適化されていなかった。また、超音波の周波数、電力、超音波振動子と反応位置との関係、反応法など、これら諸条件が常に一定でなければ、再現性ある反応は期待出来ない。従来、報告のあった条件は、いずれも超音波振動子と反応位置の関係、反応法などについては詳細が示されていない。【0006】超音波が波である以上、波長と反応位置は重要な条件因子である。すなわち、超音波振動子と反応容器の基部との距離は、最大の振動を得るために超音波の波長の偶数倍でないこと、反応容器は底が平らであり、反応容器の支持体上に置いたとき、空気の層が出来ないこと、反応容器の支持体の材質は金属、ガラスもしくは硬質のプラスチックであること、などである。また、これら諸条件を満たす装置は制作が困難であった。【0007】本発明の課題は、抗原と抗体またはタンパク質と補因子の反応法、それらの検出法に超音波を適用するに際し、反応の安定化、迅速化が可能なように超音波の条件を設定して、新たなる反応法、検出法を提供するとともに、この新たなる反応法、検出法の実施に好ましい装置を提供することである。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者らは、抗原−抗体またはタンパク質−補因子が反応するときに、振幅が脈動する超音波を作用させることにより、従来全く知られていなかった著しい反応時間の短縮と高い再現性を示すことを見い出し、本発明を完成させた。【0009】本発明の抗原−抗体反応法は、振幅が脈動する変調超音波を作用させながら、抗原と抗体とを反応させることを特徴とするものである。【0010】本発明のタンパク質−補因子反応法は、振幅が脈動する変調超音波を作用させながら、タンパク質と補因子とを反応させることを特徴とするものである。【0011】本発明による試料中の抗原または抗体の検出方法は、振幅が脈動する変調超音波を作用させながら、(a)担体に固定化された抗原と試料中の抗体とを反応させて、または(b)担体に固定化された抗体と試料中の抗原とを反応させて、担体に結合した複合体を形成した後、振幅が脈動する変調超音波を作用させながら、(c)前記(a)の場合には複合体中の抗体とこれに対する標識抗原とを反応させ、(d)前記(b)の場合には複合体中の抗原とこれに対する標識抗体とを反応させ、標識された複合体を形成し、その標識を測定することを特徴とするものである。【0012】本発明による、試料中のタンパク質または補因子の検出方法は、振幅が脈動する変調超音波を作用させながら、(a)担体に固定化されたタンパク質と試料中の補因子とを反応させて、または(b)担体に固定化された補因子と試料中のタンパク質とを反応させて、担体に結合した複合体を形成した後、振幅が脈動する変調超音波を作用させながら、(c)前記(a)の場合には複合体中の補因子とそれに対する標識タンパク質とを反応させ、(d)前記(b)の場合には複合体中のタンパク質とこれに対する標識補因子とを反応させ、標識された複合体を形成し、その標識を測定することを特徴とするものである。【0013】本発明による、抗原−抗体反応法、タンパク質−補因子反応法、試料中の抗原または抗体の検出方法、試料中のタンパク質または補因子の検出方法の好ましい態様では、振幅が脈動する変調超音波が、19kHz〜50kHz、4W〜10Wの信号電圧を50Hzまたは60Hzで振幅変調し脈動させて超音波振動子に印加し超音波振動子の振幅を経時的に変化させて得られる脈動超音波であって、好ましい作用条件は、当該変調超音波を15℃〜45℃において10秒間〜30分間作用させることである。【0014】また、本発明による装置は、つぎの特徴を有する。(1)▲1▼超音波の伝達媒体となる液体が入れられる槽と、▲2▼振幅が脈動する変調超音波を発生し得る超音波振動子およびその駆動装置と、▲3▼抗原−抗体反応またはタンパク質−補因子反応を行うための容器とを少なくとも有し、前記▲2▼の超音波振動子は、槽内に液体が入れられたときの該液体に変調超音波を伝達し得る位置に設けられ、前記▲3▼の容器は、槽内に液体が入れられたときの該液体に接触する位置に設けられたものである、抗原−抗体またはタンパク質−補因子の反応、検出のための装置。【0015】(2)上記▲2▼の超音波振動子が槽の外部底面に設けられ、上記▲3▼の容器は、開口部が上記液体の液面上、底部が上記液体の液面下となるように、保持部材によって保持されるものである上記(1)記載の装置。【0016】(3)上記容器内において、抗原、抗体のいずれか一方、またはタンパク質、補因子のいずれか一方が担体に固定化されている上記(1)記載の装置。【0017】【作用】抗原−抗体、またはタンパク質−補因子の反応は、互いの分子衝突頻度で律速され、これはその温度の運動エネルギーで決まる。不確定の熱運動をする分子に対し、超音波はこの運動をさらに増幅することで反応速度を高めていると考えられるが、振幅を一定に整調された超音波では、分子を一定の共振された運動状態にするため、むしろ反応は起こり難いと思われる。しかしながら、従来、超音波は反応を促進すると報告されている。【0018】また、特異的に結合する対の構成員の間の複合体の形成の速度は、特異的に結合する対の構成員を含有する媒質を超音波処理することによって増大することが公知である(特公平6−54315号公報)。この方法では、超音波周波数は5〜109 kHz、出力10〜100W、温度は15〜40℃、時間は30秒〜2時間と記載されている。本発明者らも同様な観察をしており、超音波周波数20kHz、出力20〜50W、温度15〜40℃、時間10分にて再現実験を行ったが、好ましい結果が得られず、再現性に問題があることがわかった。【0019】これに対して、本発明に用いられる、振幅が脈動するように振幅変調された超音波(以下、単に「変調超音波」ともいう)は、分子運動を整合させず、たえず違った振幅で運動させるため、常に、安定した再現性をもって、好ましい効果が得られる。【0020】本発明に用いられる変調超音波は、振幅を経時的に変化させる振幅変調方式によって発生させる。超音波の周波数(振幅変調における搬送波の周波数)は、20kHz〜50kHzが好ましく、なかでも35kHz〜42kHz、特に38kHz付近は、反応速度を効果的に高めるより好ましい周波数である。変調波の周波数は、限定されないが、特に好ましいもものとして50Hzまたは60Hzが挙げられ、一般的な商用交流を利用するのが好ましい。超音波の周波数と変調波の周波数との組合せは自由に選択してよいが、38kHzの超音波を50Hzまたは60Hzで変調する組合せが、最大の効果が得られる組合せの1つである。【0021】超音波の出力は、1W〜20Wが好ましい。変調超音波を作用させる時間としては、上記超音波の周波数、変調波の周波数、出力などの設定条件にもよるが、1分間〜30分間が好ましく、特に、8分間〜16分間が好ましい条件として挙げられる。【0022】変調波の波形は限定されず、サインカーブ、矩形波、三角波などであってもよい。振幅変調方式によって得られる変調超音波には、図1(a)のような全波方式によるもの、図1(b)のような半波方式によるものが例示される。【0023】超音波振動子と反応容器との位置関係は、例えば、超音波周波数が20kHzの時、水中での波長は約7.5cmとなるので、この偶数倍の距離に反応容器が来ると超音波の「波の節」が反応液に当たるので、このとき分子振動は起こらなくなる。従って、超音波の「波の腹」に試料が当たるように容器を設置することが効率の良い超音波を作用させるための条件である。【0024】従来好ましいとされた20kHz前後の超音波は人間の可聴域にあるため、極めて騒音が著しく、操作上困難を伴っていたが、本発明では、人間の可聴域の上限よりもはるかに高い周波数域に最も好ましい領域を有しており、出力も8W以下と低いので、騒音発生は著しく軽減される。【0025】【発明の実施の形態】先ず、本発明による抗原−抗体反応法、およびタンパク質−補因子反応法を説明する。本発明では、これらの反応における、抗原と抗体との組合せ、タンパク質と補因子との組合せは、互いに特異的に反応する組合せであれば、いずれをリガンドとしてもレセプターとしてもよい。【0026】本発明による抗原−抗体反応では、抗原は特に制限されるものではなく、例えば各種ホルモン(甲状腺ホルモン、成長ホルモン、インスリン、胎盤性ゴナドトロビン、など)、各種酵素(酸性フォスファターゼ、乳酸脱水素酵素など)、腫瘍マーカー(α−フェトプロテイン;AFT、癌胎児性抗原;CEAなど)、ウイルス抗原(ロタウイルス、B型肝炎ウイルスなど)、血漿タンパク(アルブミン、IgG、α1 −アンチトリプシンなど)が例示される。【0027】また、抗体としては、これらの抗原に親和性を有するものであれば、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体またはこれらの断片であってもよい。【0028】本発明によるタンパク質−補因子反応では、タンパク質としては、上記抗原−抗体反応に用いられるタンパク質の他、ホモメチルトランスフェラーゼ、グルタミン酸ホルミルトランスフェラーゼ、コリンアセチルトランスフェラーゼ、グリコーゲンシンターゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、ヘキソキナーゼなどの酵素や、糖タンパク質であるアビジンなどが挙げられる。【0029】また、補因子としては、補欠分子族である鉄ポルフィリン、FADなど、補酵素であるS−アデノシルメチオニン(SAM)、テトラヒドロ葉酸(THF)、チアミン2リン酸(TPP)、補酵素A(CoA)、ウリジン2リン酸グルコース(UDP−Glu)、ピリドキサルリン酸(PLP)、アデノシン3リン酸(ATP)、ビオチンなど、および金属イオン各種が挙げられる。【0030】次に、本発明による検出方法を説明する。本発明の検出方法は、担体に結合した複合体を形成する場合の、抗原−抗体反応、タンパク質−補因子反応、および/または、該複合体を標識する際の抗原−抗体反応、タンパク質−補因子反応において、変調超音波を作用させながら反応を行わせるものである。変調超音波はこれら検出工程中から選ばれる任意の反応に作用させればよいが、好ましくは全ての反応に作用させるのがよい。以下、本明細書では、便宜上、抗原−抗体反応、タンパク質−補因子反応だけを限定してリガンド−レセプタ反応とよぶ。抗原と抗体、タンパク質と補因子の関係において、いずれをリガンドとするかは特定されない。【0031】複合体を結合させるべき担体は、反応容器の内壁面、ビーズ、スティック、膜、など公知のものを用いてよい。特に担体を膜とする場合には、膜へのリガンドまたはリガンドレセプターの固定化は、転写によって行うことが好ましい。【0032】膜としては、ナイロン膜、ニトロセルロース膜など公知のものを用いてよい。また、リガンドまたはリガンドレセプターを膜に転写して固定し、試料中のリガンドレセプターまたはリガンドを検出するに至るまでの過程を、ウエスタンブロッテング法に従って行なってもよい。【0033】次に本発明の装置について説明する。本発明の装置は、本発明による反応法、および検出方法を好ましく実施し得るものである。図2に一例として概略的な断面を示すように、本発明の装置は、超音波の伝達媒体となる液体6が入れられる槽5と、変調超音波を発生し得る超音波振動子1とその駆動装置7と、試料4を入れて反応を行うための容器3とを少なくとも有する。超音波振動子1は液体に変調超音波を伝達し得る位置に設けられ、容器3は、槽5内に液体6が入れられたとき該液体に接触する位置に設けられたものである。このような構成とすることによって、超音波振動子1で発生した変調超音波は槽内の液体によって伝達され、容器内で行われるリガンドとリガンドレセプターとの反応に対して好ましく作用する。【0034】槽内に入れられる液体は、超音波の伝達媒体となり得るものであればどのようなものでもよく、水、鉱物油などが挙げられる。【0035】超音波振動子を設ける位置は、槽内の液体を介して容器に変調超音波を伝達させ得る位置であればよいが、装置の実用的な製作基準の点からは槽の外部底面が好ましい。【0036】超音波振動子およびその駆動装置は、本発明に用いる変調超音波を発生させ得るものであればよい。特に駆動装置は、電源、超音波用の発振回路、変調回路、出力回路を有するものであって、個別のユニットの集合であってもよい。また、必要に応じて、変調波の波形を自由に加工し得る回路など、付加的な回路を設けてもよい。【0037】容器を設ける位置は、槽内の液体から変調超音波が伝達するように該液体に接触する位置であればよいが、容器は、ウエルのように開口している場合が多いので、容器の開口部が上記液体の液面上、底部が上記液体の液面下となるように、液中に浸ける位置が好ましい。また、超音波振動子に対する容器の位置は、上記作用の説明で述べたように、変調超音波の「波の腹」に試料が当たるような位置が好ましい。【0038】容器を槽内の液体に浸けて接触させる場合、容器を液面に浮かべるなどその方法は自由であるが、図2に符号2で示すような保持部材を用いて液面付近に容器を保持するのが好ましい。保持部材は、図2の例のように、槽の開口部の外周縁に引っ掛け部を有し、これによって液面付近に位置することができるプレート状、トレー状のもの(反応用プラットホーム)や、容器を液面付近に保持し得るように槽内部に脚部を有する態様が挙げられる。【0039】保持部材がプレート状・トレー状である場合、容器が配置される面(保持部材の底面)は、単純な板状、板状の面に貫通孔が多数設けられた状態や、網状、などが挙げられる。保持部材がトレー状である場合、槽内の液体とトレー状の内部の液体とは、完全に隔離されていても、貫通孔によって互いに流通可能であってもよい。【0040】本発明の装置を本発明の検出方法に用いる場合、上記検出方法の説明で述べたように、容器内に、リガンドまたはリガンドレセプターを担体に固定化して収容しておくことが好ましい。【0041】図3は、本発明の装置の他の例であって、担体を膜とし、ウエスタンブロッテング法に用いる態様例を示す図である。図2と図3との違いは、図2における保持部材2と反応用の容器3とが図3では1つの部材で兼用されていることであり、図2における保持部材2のトレー部分が図3では反応用の容器として機能している。従って、図3におけるトレー部分の内部の液体4は試料液である。膜mにはリガンドまたはリガンドレセプターが転写され固定化されており、試料液中に浸漬されている。【0042】【実施例】実施例1本実施例では、図2の装置を用いて、変調超音波を作用させながら、ヒトインターロイキン−8(IL−8)固相サンドイッチ(ELISA)法により、IL−8を検出した一例を示す。IL−8に特異的な抗体(抗IL−8抗体)を、容器3であるマイクロタイタープレートの各ウエルに塗付にて固定化しておき、これに既知のIL−8スタンダード、または未知の試料を添加し(50μL)、これに変調超音波(38kHz,8W)を約8分間作用させ、ウエルの内壁面に複合体を形成させた。【0043】槽内の液体は水である。水面付近に保持部材2としてプラスチックトレーを固定し、この上にマイクロタイタープレートを置いた。プラスチックトレーとマイクロタイタープレートとの間に空気の相があると、超音波は透過できないので、水をマイクロタイタープレートの20%の高さまで満たして、変調超音波が効果的に伝達し得るようにした。【0044】ウエルの内壁面に結合する複合体を形成させた後、固相と液相を分離し、各ウエルを0.1Mグリシン−NaOH緩衝液、pH10.3で十分に洗浄した。洗浄においては超音波を5秒程作用させて洗浄効果を高めた。次いで、ビオチンで標識された抗IL−8抗体50μLを加え、前記と同様の変調超音波(38kHz,8W)を約8分間作用させた。【0045】次いで、ストレプトアビジンが結合したパーオキシダーゼ(固定化抗体)を加え、変調超音波(38kHz,8W)を約8分間作用させ、(抗原)−(抗体−ビオチン)−(ストレプトアビジン−パーオキシダーゼ)の複合体サンドイッチを形成させた。固相と液相を分離した後、固相を上記と同様にして洗浄した。次いで、パーオキシダーゼの基質の1つであるテトラメチルベンジジンを100μL加え、前記と同様の変調超音波(38kHz,8W)を約8分間作用させ、発色反応を行った。反応停止には100μLの1N硫酸を加えた。比色計で450nmの吸光度を測定し、常法に従い試料中のIL−8の量を測定した。【0046】実施例2本実施例では、図3の装置を用い、ナイロン膜に転写されたタンパク質からIL−8の検出を行った。IL−8を含む試料を電気泳動させ、泳動されたタンパク質をナイロン膜に転写した。次いで、ビオチン化抗IL−8抗体を含む緩衝液に、タンパク質が転写された前記ナイロン膜を浸漬し、これに変調超音波(38kHz、8W)を約8分間作用させた。【0047】反応用の容器3は保持部材を兼用するものであって、反応が行われるプラスチックトレーの部分と、水槽5の開口に引っ掛けるフックの部分とを有し、水面付近にトレー部が浸漬した状態で固定する態様である。【0048】固相と液相を分離した後、固相を洗浄し、ストレプトアビジンが結合したパーオキシダーゼを加え、変調超音波(38kHz,8W)を約8分間作用させた。固相と液相を分離した後、固相を洗浄し、テトラメチルベンジジンを加え、前記と同様の変調超音波(38kHz,8W)を約8分間作用させ、発色反応を行い、1N硫酸を加えることで反応を停止させ、吸光度を測定し、常法に従い試料中のIL−8の量を測定した。【0049】実施例3本実施例では、図2に示す装置を用い、変調超音波の作用時間と反応との関係を調べ、変調超音波を作用させない場合と比較した。実験は、IL−8のELISAキット(商品名:ELISING PRO、東洋紡績)を用いて、IL−8と、ビオチン化抗IL−8抗体との反応について調べた。付帯的な作業の詳細な記載は省略する。250pg/mLのIL−8溶液50μLを、抗IL−8抗体が固定化されたウエル(図2中の容器3)に加え、室温において、変調超音波(超音波周波数38kHz、変調周波数60Hz、半波方式によるもの)を継続的に作用させながら反応させて、反応開始より、0分、1分、2分、4分、8分、16分経過時における吸光度を450nmで測定した。【0050】各経過時における吸光度の値、即ち、変調超音波の作用時間と吸光度との関係を図4に太線のグラフとして示す。また、同様の条件で、変調超音波を全く作用させずに反応させた場合の、各経過時における吸光度の値を図4に破線のグラフとして示す。図4から明らかなように、変調超音波を作用させることにより、著しく反応時間を短縮させ得ることがわかった。なお、この条件では、最大16分の変調超音波の作用でも熱発生は見られず、反応速度の上昇は、熱発生による温度上昇によるものではない。また、本実施例で示した抗原または抗体の一方が固定されたような系での反応速度の、変調超音波による加速は、ELISAの他の工程すべてに適用出来る。さらに、ナイロンなどの膜などに固定された抗原または抗体の検出(ウエスタンブロッテング)にも同様、適用可能である。【0051】実施例4本実施例では、▲1▼変調超音波下での抗原−抗体反応(本発明)、▲2▼変調しない超音波(整調超音波)下での抗原−抗体反応、▲3▼超音波を作用させない抗原−抗体反応、を各々同一条件で繰り返して行い、これらの反応速度の繰り返しに対する再現性を調べた。超音波の仕様は次のとおりである。▲1▼の変調超音波(本発明の反応法);超音波周波数38kHz、出力10W、変調周波数60Hz、半波方式による振幅変調。▲2▼の整調超音波(従来技術);周波数19.5kHz、出力10W。【0052】実験は、実施例3と同様の手順とし、図2に示す装置を用い、IL−8のELISAキットを用いてIL−8とビオチン化抗IL−8抗体との反応を室温23℃にて行った。反応開始より、0分、1分、2分、4分、8分、16分経過時における吸光度を450nmで測定し、反応進行の度合いとした。これを各反応毎に3回行い、進行の度合いのバラツキから再現性を評価することとした。上記▲1▼〜▲3▼の反応における、反応時間の経過と吸光度との関係を図5にグラフとして示す。同図のグラフでは、本発明による反応を太線で、整調超音波下での反応を一点鎖線で、超音波を作用させない通常の反応を破線で示している。【0053】図5のグラフから明らかなように、本発明の反応は、各試行毎の進行度合いのバラツキも少なく、反応の進行は安定した再現性をもって著しく早い。これに対して、整調超音波下での反応は、超音波を作用させない通常の反応に比べると反応は促進されているが、これら▲2▼▲3▼の反応の進行の度合いは、実験の度に大きくばらつき、再現性が低いことがわかった。【0054】実施例5本実施例では、図2に示す装置を用い、超音波振動子へ加えられる出力(電力)と反応との関係を調べた。図2に示す装置のうち、超音波振動子へ印加される駆動装置7からの出力電圧を抵抗器にて調節し、その電力を電力計で測定した。実施例1にて使用した試薬と同様の試薬を用い、同様の反応を行ったが、駆動装置7の出力電力は、0W、6W、12W、15W、20Wとして各々の実験を行った。各実験とも超音波の作用時間は8分とした。【0055】図6に、変調超音波の出力と吸光度との関係をグラフとして示す。図6のグラフから明らかなように、いずれの電力でも吸光度に大きな差は見られなかった。このことは、変調超音波による反応液の温度上昇に伴って反応の速度が高まったのではなく、変調超音波の振動が分子運動に直接干渉した結果、反応の速度を高めたことを示している。【0056】【発明の効果】本発明の反応方法、検出方法、およびそのための装置では、外部より変調超音波を作用させることにより、その反応時間が大幅に短縮されること、また超音波を作用させることが再現性の高い普遍的な方法として確立されたことにより、生体成分分析の精度を高めることが可能となる。特に、迅速で再現性のある生体成分の定量または検出が可能となり、研究、臨床検査、食品検査、環境検査等幅広い産業分野での利用が可能である。また、本発明では人間の可聴域の上限を大きく上回る40kHz前後の波長域での超音波を脈動超音波として用いることが好ましいので、極端に発生音が軽減され、より実用的である。【図面の簡単な説明】【図1】本発明に用いられる変調超音波の波形の一例を示す図である。【図2】本発明による装置の一例を概略的に示す断面図である。【図3】本発明による装置の他の例を概略的に示す断面図である。【図4】本発明による反応法における、変調超音波の作用時間と吸光度との関係を示すグラフ図である。【図5】本発明の反応法による反応、整調超音波下での反応、超音波を作用させない反応の、各々の再現性を示すグラフ図である。【図6】本発明による反応法における、超音波振動子への出力と吸光度との関係を示すグラフ図である。【符号の説明】1 超音波振動子2 保持部材3 容器4 試料5 槽6 液体7 駆動装置 振幅が脈動する変調超音波を作用させながら、抗原と抗体とを反応させることを特徴とする抗原−抗体反応法。 振幅が脈動する変調超音波が、19kHz〜50kHz、4W〜10Wの信号電圧を50Hzまたは60Hzで振幅変調し脈動させて超音波振動子に印加し超音波振動子の振幅を経時的に変化させて得られる脈動超音波であって、当該変調超音波を15℃〜45℃において10秒間〜30分間作用させるものである請求項1記載の抗原−抗体反応法。 振幅が脈動する変調超音波を作用させながら、タンパク質と補因子とを反応させることを特徴とするタンパク質−補因子反応法。 振幅が脈動する変調超音波が、19kHz〜50kHz、4W〜10Wの信号電圧を50Hzまたは60Hzで振幅変調し脈動させて超音波振動子に印加し超音波振動子の振幅を経時的に変化させて得られる脈動超音波であって、当該変調超音波を15℃〜45℃において10秒間〜30分間作用させるものである請求項3記載のタンパク質−補因子反応法。 振幅が脈動する変調超音波を作用させながら、(a)担体に固定化された抗原と試料中の抗体とを反応させて、または(b)担体に固定化された抗体と試料中の抗原とを反応させて、担体に結合した複合体を形成した後、振幅が脈動する変調超音波を作用させながら、(c)前記(a)の場合には複合体中の抗体とこれに対する標識抗原とを反応させ、(d)前記(b)の場合には複合体中の抗原とこれに対する標識抗体とを反応させ、標識された複合体を形成し、その標識を測定することを特徴とする、試料中の抗原または抗体の検出方法。 振幅が脈動する変調超音波が、19kHz〜50kHz、4W〜10Wの信号電圧を50Hzまたは60Hzで振幅変調し脈動させて超音波振動子に印加し超音波振動子の振幅を経時的に変化させて得られる脈動超音波であって、当該変調超音波を15℃〜45℃において10秒間〜30分間作用させるものである請求項5記載の検出方法。 振幅が脈動する変調超音波を作用させながら、(a)担体に固定化されたタンパク質と試料中の補因子とを反応させて、または(b)担体に固定化された補因子と試料中のタンパク質とを反応させて、担体に結合した複合体を形成した後、振幅が脈動する変調超音波を作用させながら、(c)前記(a)の場合には複合体中の補因子とこれに対する標識タンパク質とを反応させ、(d)前記(b)の場合には複合体中のタンパク質とこれに対する標識補因子とを反応させ、標識された複合体を形成し、その標識を測定することを特徴とする、試料中のタンパク質または補因子の検出方法。 振幅が脈動する変調超音波が、19kHz〜50kHz、4W〜10Wの信号電圧を50Hzまたは60Hzで振幅変調し脈動させて超音波振動子に印加し超音波振動子の振幅を経時的に変化させて得られる脈動超音波であって、当該変調超音波を15℃〜45℃において10秒間〜30分間作用させるものである請求項7記載の検出方法。 ▲1▼超音波の伝達媒体となる液体が入れられる槽と、▲2▼振幅が脈動する変調超音波を発生し得る超音波振動子およびその駆動装置と、▲3▼抗原−抗体反応またはタンパク質−補因子反応を行うための容器とを少なくとも有し、前記▲2▼の超音波振動子は、槽内に液体が入れられたときの該液体に変調超音波を伝達し得る位置に設けられ、前記▲3▼の容器は、槽内に液体が入れられたときの該液体に接触する位置に設けられたものである、抗原−抗体またはタンパク質−補因子の反応、検出のための装置。 上記▲2▼の超音波振動子が槽の外部底面に設けられ、上記▲3▼の容器は、開口部が上記液体の液面上、底部が上記液体の液面下となるように、保持部材によって保持されるものである請求項9記載の装置。 上記容器内において、抗原、抗体のいずれか一方、またはタンパク質、補因子のいずれか一方が担体に固定化されている請求項9記載の装置。