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タイトル:特許公報(B2)_ヘキサフルオロリン酸リチウムの付加化合物及びその製造方法並びにそれを用いた電解液
出願番号:1997064957
年次:2004
IPC分類:7,C01B25/30,C07C69/96,C07D317/38,H01M10/40


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辻岡 章一 伊東 久和 高畑 満夫 川島 忠幸 佐々木 広美 JP 3555720 特許公報(B2) 20040521 1997064957 19970318 ヘキサフルオロリン酸リチウムの付加化合物及びその製造方法並びにそれを用いた電解液 セントラル硝子株式会社 000002200 西 義之 100108671 辻岡 章一 伊東 久和 高畑 満夫 川島 忠幸 佐々木 広美 20040818 7 C01B25/30 C07C69/96 C07D317/38 H01M10/40 JP C01B25/30 D C07C69/96 Z C07D317/38 H01M10/40 A 7 CA(STN) CAOLD(STN) REGISTRY(STN) 特表2002−514153(JP,A) 特開昭63−281365(JP,A) 特開昭59−151779(JP,A) 特公昭53−031859(JP,B1) 米国特許第04432904(US,A) 特公昭48−033733(JP,B1) 特開平07−192761(JP,A) 特開平07−192760(JP,A) 特開平08−321312(JP,A) Solod State Ionics, Vol.17, No.1 (1985) p.67-p.73 J. Phys. Chem., Vol.100, No.11 (1996) p.4618-p.4621 J. Chem. Soc., Chem. Commun., No.18 (1988) p.1262-p.1264 Chemical Abstracts, 要約番号121:194276 4 1998259189 19980929 5 20000512 藤森 知郎 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、リチウム電池用電解質として有用なヘキサフルオロリン酸リチウムの付加化合物及びその製造法並びにそれを用いた電解液に関する。【0002】【従来技術】近年、高電圧、高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池が開発され、その需要が急速に伸びている。この種の電池の電解質には、ヘキサフルオロリン酸リチウムが主に使用されている。しかし、ヘキサフルオロリン酸リチウムは、非常に不安定な化合物であるために、製造工程上からあるいは保管取り扱い上から、不純物として系内に混入してくる水分等による加水分解のためにその品質が低下する。また、非水有機溶媒にヘキサフルオロリン酸リチウムを溶解し、電解液を調製する際、溶解熱および溶媒和熱により溶液の温度が上昇し、それにより電解液の分解反応を局部的に引き起こすという問題点もある。このように非常に取り扱いにくい物質であるため、より取り扱いやすい電解質が求められているが、イオン伝導度、耐電圧等の電池の性能に直接関わる特性において、ヘキサフルオロリン酸リチウム以上もしくは同等の化合物は、未だに見出されていない。【0003】【問題点を解決するための具体的手段】本発明者らは、かかる従来技術の問題点に鑑み鋭意検討の結果、有機溶媒中において、新規なヘキサフルオロリン酸リチウムの当該有機溶媒の付加物を見いだし本発明に到達したものである。【0004】すなわち本発明は、ヘキサフルオロリン酸リチウムとエステル化合物からなり、ヘキサフルオロリン酸リチウム1分子に対して、エステル化合物が1から6分子配位していることを特徴とする付加化合物を合成し、電解質として使用することにより、上記のような問題点を解決したものである。【0005】ヘキサフルオロリン酸リチウムは、非常に不安定な化合物であり、製造工程上からあるいは保管取り扱い上から、不純物として系内に混入してくる水分により、次のような加水分解反応を起こし、品質を低下させる。LiPF6 + X H2O → LiPOXF(6−2X) + 2X HF (1)【0006】この分解反応により発生するLiPOXF(6−2X) 、HF 等の不純物は、ヘキサフルオロリン酸リチウムの用途であるリチウム電池用電解質として使用されたとき、その電池性能に大きく影響を及ぼすことが知られている。【0007】本発明者らは、種々検討した結果、ヘキサフルオロリン酸リチウムと有機化合物からなる付加化合物を合成することにより、従来の純粋なヘキサフルオロリン酸リチウムよりも耐加水分解性、耐自己分解性の優れた化合物にできることを見いだした。【0008】従来は単純に(1)式のような機構で加水分解反応が進行すると考えられていたが、検討した結果、次のような2段反応機構で加水分解が進行するものと推定された。LiPF6 → LiF + PF5 (2)PF5 + X H2O → POXF(5−2X) + 2X HF (3)【0009】そこで、配位性の強い有機化合物をリチウムイオンの周りに配位させ、ヘキサフルオロリン酸リチウムの付加化合物とすることにより、(2)式で示したLiFとPF5の生成を抑制し、(3)式の加水分解反応を防止することを可能とした。【0010】本発明の付加化合物は、取り扱い易さにおいて、従来のヘキサフルオロリン酸リチウムより優れており、しかも、電池の性能に直接関わる特性においても、従来のヘキサフルオロリン酸リチウムと同等である。【0011】本発明において、ヘキサフルオロリン酸リチウムと付加化合物を形成する有機化合物は、比較的配位性の高いエステル化合物が挙げられる。特に安定性の面から考えると炭酸エステルまたは、酢酸エステルが好ましい。具体例としては、プロピレンカ−ボネ−ト、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが挙げられる。これらの炭酸エステルは、リチウムイオン二次電池用溶媒として使用されているため、これらの付加化合物は、そのままの状態で電解質として使用できるという長所がある。この他のものについては、使用時に炭酸エステル類に置換することにより使用できる。具体的には、付加化合物を炭酸エステルに溶解し、付加している溶媒と炭酸エステルの蒸気圧差を利用して、付加している溶媒のみを除去する方法等がある。【0012】配位数は、有機化合物により異なるがヘキサフルオロリン酸リチウム1分子に対して、1から6分子である。例えば、エチレンカーボネートの配位数は4、ジエチルカーボネートの配位数は2、そして、アセトニトリルの配位数は4となっている。【0013】これらの付加化合物は、ヘキサフルオロリン酸リチウムを付加させる有機化合物中に溶解し、その溶液を−20℃から40℃の温度領域にて蒸発および冷却することにより結晶として晶出させる方法により得られる。−20℃より低い温度では、有機物自体の凝固が起こるため好ましくない。また、40℃以上の温度では、付加化合物が安定に存在できない。【0014】本発明により得られたヘキサフルオロリン酸リチウムの付加化合物は、非常に純度が高い。例えば、リチウムイオン二次電池に悪影響を及ぼす酸性不純物含量が従来の製法で得られるヘキサフルオロリン酸リチウムに比べ、非常に低くなっている。【0015】また、ヘキサフルオロリン酸リチウムの付加化合物は、エステル化合物が、リチウムイオンに配位しているため、純粋なヘキサフルオロリン酸リチウムに比べ、熱に対する安定性、加水分解に対する安定性、保存時の安定性ともに改善されており、取り扱いが容易である。【0016】また、ヘキサフルオロリン酸リチウムを溶媒に溶解し、電解液を調製する際に溶解熱と溶媒和熱により、電解液の温度が上昇し電解液の分解等を引き起こすという問題が従来はあったが、本発明のヘキサフルオロリン酸リチウムの付加化合物を使用することにより解決された。また、当該付加化合物は既に溶媒和した状態であるため、溶媒和熱は発生しないので、温度上昇も従来の2分の1程度となるという長所もある。さらに、溶解速度についても従来のものよりも優れている。【0017】【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例により限定されるものではない。【0018】実施例1ヘキサフルオロリン酸リチウム45gをジエチルカーボネート75gに40℃で溶解した。この溶液を20℃まで、冷却したところ溶液全体が凝固して、結晶が得られた。得られた結晶をヘキサンで洗浄した後、1torrの減圧度で減圧乾燥を行った。【0019】以上のようにして、118.5gの結晶を得た。得られた結晶の元素分析を行いその組成を確認したところ、LiPF6・2(ジエチルカーボネート)で表される付加化合物であることが確認された。この付加化合物の融点は36℃であった。また、不純物のフッ化水素濃度は50ppm以下(定量下限)であった。【0020】実施例2ヘキサフルオロリン酸リチウム8gをエチレンカーボネート33gに80℃で溶解した。この溶液を20℃まで、冷却したところ粒径1〜2mmの結晶が析出した。この結晶をヘキサンで洗浄した後、1torrの減圧度で減圧乾燥を行った。【0021】以上のようにして、26gの結晶を得た。得られた結晶の元素分析を行いその組成を確認したところ、LiPF6・4(エチレンカーボネート)で表される付加化合物であることが確認された。この付加化合物の融点は40℃であった。また、不純物のフッ化水素濃度は50ppm以下(定量下限)であった。【0022】加水分解に対する安定性確認のため、この付加化合物の結晶を露点−10℃の雰囲気中に1時間放置したところ、加水分解により発生すると思われるフッ化水素濃度は60ppmであった。【0023】次に、この付加化合物に40℃のエチレンカーボネートを添加して、1mol/lの濃度の溶液を調製した。その際に、溶液の温度が溶解熱により50℃まで上昇した。【0024】比較例1ヘキサフルオロリン酸リチウム中のフッ化水素濃度を測定したところ、100ppmであった。このヘキサフルオロリン酸リチウムの加水分解に対する安定性確認の試験を実施例2と同様の方法で実施した。その結果、フッ化水素濃度が300ppmまで増加した。【0025】次に、このヘキサフルオロリン酸リチウムに40℃のエチレンカーボネートを添加して、1mol/lの濃度の溶液を調製した。その際に、溶液の温度が溶解熱と溶媒和熱により65℃まで上昇した。【0026】【発明の効果】本発明のヘキサフルオロリン酸リチウムの付加化合物は、従来のヘキサフルオロリン酸リチウムに比べ、耐加水分解性、耐自己分解性において優れたものであり、取り扱いが容易で、当該付加化合物を用いることにより不純物の少ないリチウム電池用電解質を提供することができる。 ヘキサフルオロリン酸リチウムとエステル化合物からなり、ヘキサフルオロリン酸リチウム1分子に対して、エステル化合物が1から6分子配位しているヘキサフルオロリン酸リチウムの付加化合物であって、該エステル化合物が、炭酸エステルまたは酢酸エステルであることを特徴とするヘキサフルオロリン酸リチウムの付加化合物。 請求項1記載の炭酸エステルが、プロピレンカ−ボネ−ト、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートのいずれかであることを特徴とするヘキサフルオロリン酸リチウムの付加化合物。 請求項1または2記載のヘキサフルオロリン酸リチウムの付加化合物を、−20℃から40℃の温度範囲で蒸発または冷却により晶出させることを特徴とするヘキサフルオロリン酸リチウムの付加化合物の製造方法。 請求項1または2記載のヘキサフルオロリン酸リチウムの付加化合物を少なくとも1種類以上含む電解質とすることを特徴とするリチウム電池用電解液。


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