タイトル: | 特許公報(B2)_抗体精製 |
出願番号: | 1996531774 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07K 1/20,A61K 39/395,C07K 16/00,C12N 15/09,C12P 21/08 |
リンダーネッチト,アーンスト・エイチ ザパタ,ジェラード・エイ JP 4042868 特許公報(B2) 20071122 1996531774 19960405 抗体精製 ジェネンテク・インコーポレイテッド 園田 吉隆 小林 義教 リンダーネッチト,アーンスト・エイチ ザパタ,ジェラード・エイ US 08/425,763 19950420 20080206 C07K 1/20 20060101AFI20080121BHJP A61K 39/395 20060101ALI20080121BHJP C07K 16/00 20060101ALI20080121BHJP C12N 15/09 20060101ALI20080121BHJP C12P 21/08 20060101ALI20080121BHJP JPC07K1/20A61K39/395 GC07K16/00C12N15/00 AC12P21/08 C07K 1/00 - 19/00 C12N 15/00 - 15/90 BIOSIS/WPI(DIALOG) PubMed Science Direct 特表平06−508267(JP,A) 18 US1996004683 19960405 WO1996033208 19961024 1999504007 19990406 29 20030227 引地 進 発明の背景発明の分野本発明は、概して抗体精製に関する。具体的には、本発明は、抗体断片をそれに伴う変種、不純物及び汚染物質から回収する方法に関する。関連技術の説明疎水相互作用クロマトグラフィー(HIC)は、分子をその疎水性に基づいて分離するための有用な手段である。一般的には、高塩緩衝液中の試料分子をHICカラムに添加する。緩衝液中の塩は水分子と相互作用して溶解状態にある分子の溶媒和を減じるので、試料分子中の疎水領域が露出することになり、その結果、その試料分子がHICカラムに吸着される。分子の疎水性が高いほど、結合を促進するのに必要な塩は少なくなる。通例、減少する塩勾配を用いて、カラムから試料を溶出させる。イオン強度が減少するにつれて、分子の親水領域の露出が増大し、疎水性が増大する順に分子がカラムから溶離する。温和な有機調節剤又は洗浄剤を溶離緩衝液に添加することによって、試料の溶離を達成することもできる。HICは、Protein Purification,第2版,Springer-Verlag,ニューヨーク,176-179頁(1988)に概説されている。HICは様々な研究者によって抗体の精製に使用されている。Danielssonら,Journal of Immunological Methods 115:79-88(1988)は、抗体の等電点が7.2未満である場合に、HICが、マウス腹水からのモノクローナル抗体の精製にとりわけ有用であることを発見した。HICは、Alkyl Superose HRTMカラムで行われた。緩衝液系は、硫酸アンモニウムを添加した0.1Mリン酸であった。通例、出発緩衝液は2M硫酸アンモニウムを含有した。Bridonneauら,Journal of Chromatography 616:197-204(1993)は、ヒト免疫グロブリンG(IgG)サブクラスの選択的精製に異なるHICカラムを使用できるかどうかを決定することに興味を持った。抗体は、IM硫酸アンモニウム(pH7.0)中のPhenyl-、Butyl-又はOctyl-SepharoseTMカラムに吸着され、減少する塩勾配で溶出された。Octyl-SepharoseTM媒体は、IgG2aがいくらか濃縮された吸着性の低い画分を与えた。抗体のHICについては、Berkowitzら,Journal of Chromatography 389:317-321(1987)、Gagnonら(第90回アメリカ微生物学会年次総会,アナハイム,1990年5月13〜17日)抄録No.0〜4、Johanssonら,Biol.Recombinant Microorg.Anim.Cells(Oholo 34 Meeting)409-414(1991)、Pavluら,Journal of Chromatography 359:449-460(1986)及びAbeら,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 27:215-227(1993)をも参照のこと。HICは、抗体断片の精製にも使用されている。Inouyeら,Protein Engineering,6,8及び1018-1019頁(1993)、Inouyeら,Animal Cell Technology:Basic & Applied Aspects 5:609-616(1993);Inoueら,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 26:27-34(1993);及びMorimotoら,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117(1992)は、TSKゲルEther-5PWTMHICカラムを用いて、マウスIgMモノクローナル抗体のペプシン消化物からF(ab')2断片を調製した。これらの抗体断片は60%硫酸アンモニウムで塩析され、その沈殿はIM硫酸アンモニウムを含有するリン酸緩衝食塩水(PBS,pH7.4)に溶解された。この溶液は、やはり1M硫酸アンモニウムを含有するPBSで平衡化しておいたHICカラムにかけられた。カラムに吸着したF(ab')2断片は、溶離緩衝液中の硫酸アンモニウム濃度をOMまで減少させることによって溶出された。Inouyeらは、F(ab')2を含有する画分が、SDS-PAGEとゲル濾過HPLCの両方で均一であることを発見した。この方法は、F(ab')2断片の大量精製に好適であると考えられた。さらに、Reaら,Journal of Cell.Biochem.Suppl.O,Abstract No.X1-206(17 PartA)50頁(1993)は、ネズミIgG2aモノクローナル抗体のペプシン消化によって生産されたF(ab')2断片の精製について、HICを評価した。HIC段階に先立って、残存する完全抗体を除去するために、プロテインA精製が行われた。3種類のHICカラムの精製能力が、数種類の塩及びpHで試験された。POROS PETM(フェニルエーテル)が最良のカラムであり、pH8のリン酸緩衝硫酸ナトリウムが最も良好にF(ab')2断片を分割することがわかった。発明の要約一般に(抗体の溶離に塩勾配を用いて)高塩濃度の存在下にほぼ中性pHで行われる上述のHIC技術とは対照的に、本発明は、抗体精製用の低pH疎水相互作用クロマトグラフィー(LPHIC)に関する。このLPHICは、好ましくは低塩濃度、すなわち約0〜0.25M塩(好ましくは約0〜0.1M塩、より好ましくは0〜50mM塩)で行われる。この低塩濃度は充填(loading)緩衝液にも適用される。抗体の溶出には塩勾配を使用しないことが好ましい。具体的に述べると、本発明は、抗体を汚染物質から精製する方法であって、抗体と汚染物質とを含有する混合物を疎水相互作用クロマトグラフィーカラムに添加し、そのカラムから約2.5〜4.5のpHを持つ緩衝液で抗体を溶出させることからなる方法を提供する。緩衝液のpHは約2.8〜3.5であることが好ましく、約3.1のpHがさらに好ましい。通例、カラムに添加する混合物は溶離緩衝液とほぼ同じpHである。本発明方法は、抗体断片、特に、正しく折りたたまれジスルフィド結合した抗体断片(例えばFab断片)を、正しく折りたたまれておらずかつ/または正しくジスルフィド結合していない汚染抗体断片から精製するのにとりわけ有用である。本発明の少なくとも一部は、組換え免疫グロブリン類の生産に伴う問題を同定したことにある。このような生産は、機能的なF(ab')2抗体と共に、不適切に結合した種々の軽鎖及び重鎖断片をもたらす。本研究において、除去が最も困難な不純物は、軽鎖と重鎖がジスルフィド結合を介して結合できていない正しく折りたたまれた抗体であると特徴づけられた。この抗体不純物は、SDS PAGEゲルと逆相HPLCによって、重鎖及び軽鎖として検出することができる。ここに記述するLPHICは、組換え抗体断片を生産する宿主から得た部分精製組成物から、この汚染物質を十分に除去するための手段を提供する(ただし、上記LPHICは組換え産物の精製に限られるわけではない)。本発明は、本発明方法によって調製される抗体製剤と、その抗体製剤の使用にも関係する。【図面の簡単な説明】図1は、低pH疎水相互作用クロマトグラフィーの典型的な通過(flow through)クロマトグラムを示す(実施例1参照)。このカラムは通過モードで行なった。正しく折りたたまれジスルフィド結合した抗体断片は通過する。軽鎖、重鎖、軽鎖-重鎖会合体及び非ジスルフィド結合抗体断片種はカラムに結合したまま留まる。ピーク1は水洗浄後の通過画分であり、ピーク2は結合種の尿素洗浄画分である。図2は、抗CD18 MHM23抗体断片のABXTM及びPhenyl SepharoseTMFast Flow(FF)プールの逆相HPLC分析を表す。クロマトグラム1;LPHIC精製前の軽鎖及び重鎖汚染物質を含むABXTMプール。クロマトグラム2;LPHIC精製。クロマトグラム3;Phenyl SepharoseTMFast Flowカラムによって保持された抗体断片と軽鎖及び重鎖不純物とを含有するカラム再生緩衝液の逆相分析。図3A〜3Dは、2つの抗体断片(rhuMAb H52OZG1とrhuMAb H52OZG2)の円偏光二色性によって得られる近UV及び遠UVスペクトルを表す。図3AはrhuMAb H52OZG2の近UVスペクトルを表し、図3BはrhuMAb H52OZG2の遠UVスペクトルを表す。この抗体は、重鎖と軽鎖の間のジスルフィド結合に関与するシステイン残基215と228がセリン残基に突然変異したrhuMAb H52OZG1の突然変異体である。これら近UV領域と遠UV領域の円偏光二色性スペクトルは共に、pH3.2(太線)付近に転移点を示した。転移点は、折りたたまれた抗体断片からその変性状態への変化を表す。図3CはrhuMAb H52OZG1の近UVスペクトルであり、図3DはrhuMAb H52OZG1の遠UVスペクトルである。この抗体断片はpH2.5に異なる転移点を示した(太線)。図4は、HIC pHの変更が生成物収率に与える影響を表す棒グラフである。無結合抗体不純物(すなわち重鎖と軽鎖の間にジスルフィド結合を持たないもの)を含有するABXTM精製抗体断片プールをPhenyl SepharoseTMFast Flowカラムでさらに精製した。この精製は、最大の収率と純度を得るのに最適なpHを決定するために、3.0〜6.5のpH値で行なった。通過プールの分析は逆相HPLCで行なった。この棒グラフから、rhuMAb H52OZG1抗体断片の精製において純度と収率の両方を最大化するのに最適な値はpH3.1であることがわかる。図5Aと5Bは、本明細書の実施例2に記述するL-F(ab')2の設計と発現カセットを表す。図5AはL-F(ab')2変種(v1、v2及びv3)の模式図であり、ここでは抗p185HER2AbであるhuMAb4D5-8と抗CD18AbであるhuMAb H52OZG1の可変(V)ドメインを、それぞれ白抜きの四角と黒塗りの四角で表してある。図5Bは、プラスミドpAK19に由来する抗p185HER2L-F(ab')2変種の発現用のニシストロン性オペロンの模式図である。発現は、リン酸枯渇によって誘導される大腸菌アルカリ性ホスファターゼプロモーター(phoA)の転写制御下にある。各抗体(Ab)鎖の前には、大腸菌の周辺腔への分泌を指令するための大腸菌熱安定エンテロトキシンII(stII)シグナル配列が付いている。ヒト化V1及びVH(両コピー)ドメインは、その3'側で、それぞれヒトκ1CL定常ドメインとIgG1CH1定常ドメインに正確に融合している。H鎖は、5'CH1ドメインがVHコード部分に枠を合わせて結合している縦列複製断片からなる。3'CH1ドメインの後ろには、バクテリオファージラムダt0転写終結区(ter)が続いている。図6A〜6Cは、抗p185HER2のFPLCサイズ排除クロマトグラフィー分析を表す。図6AはL-F(ab')2v1、図6Bはチオエーテル結合型F(ab')2、そして図6CはFabの、p185HER2細胞外ドメイン(ECD)による滴定を示す。図7は、抗p185HER2L-F(ab')2、F(ab')2及びFab断片によるBT474の増殖の阻害を示す。表記のデータは、無処理の培養による結果の百分率(二連の測定値の平均、3回の独立した実験の典型)として表されている。p185HER2ECDによる滴定とゲル濾過によって判定した一価及び二価断片を、それぞれ白抜き及び黒塗りの記号で表す。図8は、抗p185HER2L-(ab')2v1、Fab及びチオエーテル結合型F(ab')2断片のマウスにおける薬物動力学を表す。1回の尾静脈注射(10mg/kg)後に、45匹の雌CD-1マウスの群から血清試料を回収した。抗原(Ag)-結合ELISAによって見積もった平均血清濃度(Ct±SD)を非線型最小二乗曲線(―)と共に示す:Ct=155e-1.73t+190e-0.042t,L-F(ab')2v1;Ct=239e-0.704t+38.4e-0.264t,F(ab')2;Ct=440e-4.99t+2.69-0.442t,Fab。好ましい態様の詳細な説明定義「抗体」という用語は最も広義に使用され、具体的には、完全なモノクローナル抗体(アゴニスト及びアンタゴニスト抗体を含む)、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの完全抗体から形成される多重特異性抗体(例えば二特異性抗体)を包含し、さらにそれらが所望の生物活性を示す限り、抗体断片をも包含する。「抗体断片」は、完全な抗体の」部、一般的には完全な抗体の抗体結合領域又は可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')2及びFv断片;ダイアボディー;直線型抗体(下記実施例2を参照のこと);一本鎖抗体分子;及び抗体断片から形成される多重特異性抗体がある。本明細書において使用する「モノクローナル抗体」という用語は、実質上均一な抗体集団(すなわちその集団を構成する個々の抗体は、微量に存在する可能性のある天然の突然変異以外は、同一である)から得られる抗体を意味する。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原性部位を指向する。また、通常は異なる決定基(エピトープ)を指向する異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体はその抗原上の単一の決定基を指向する。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらがハイブリドーマ培養によって合成され、他の免疫グロブリンによって汚染されていないという点で有利である。「モノクローナル」という修飾詞は、その抗体が実質上均一な抗体集団から得られるという特徴を示すのであって、何らかの特定の方法によるその抗体の生産を必要とするのだと解釈してはならない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein,Nature 256:495(1975)に初めて記述されたハイブリドーマ法で作成してもよいし、組換えDNA法(米国特許第4,816,567号[Cabillyら])によって作成してもよい。「モノクローナル抗体」は、例えばClacksonら,Nature 352:624-628(1991)及びMarksら,J.Mol.Biol. 222:581-597(1991)に記述されている技術を用いて、ファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。本明細書におけるモノクローナル抗体には、特に、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)(この抗体では、その重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体若しくは特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同であり、その鎖の残りの部分は、別の種に由来する抗体若しくは別の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同である)(Cabillyら,上記;Morrisonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855[1984])を包含し、さらにそれらが所望の生物活性を示す限り、そのような抗体の断片をも包含する。非ヒト(例えばネズミ)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有するキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はそれらの断片(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2若しくは抗体の他の抗原結合性部分配列)である。ヒト化抗体の大部分はヒト免疫グロブリン(受容抗体)であって、その受容抗体の相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性及び容量を持つマウス、ラット、ヤギなどのヒト以外の種のCDR(供与抗体)に由来する残基で置換されている。ある場合は、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が対応する非ヒト残基で置換される。また、ヒト化抗体は、受容抗体にも、移入されるCDR又はフレームワーク配列にも存在しない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体の性能をさらに精密にし、最適化するために施される。一般的には、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、通常は2つの可変ドメイン(このうち、CDR領域の全て又は実質上全てが非ヒト免疫グロブリンの当該領域に対応し、FR領域の全て又は実質上全てがヒト免疫グロブリン配列の当該領域である)の実質上すべてを含有するだろう。最適なヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)(通常はヒト免疫グロブリンの当該領域)の少なくとも一部をも含有するだろう。さらなる詳細については、Jonesら,Nature,321:522-525(1986);Reichmannら,Nature,332:323-329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593-596(1992)を参照のこと。ヒト化抗体には、抗体の抗原結合領域がマカークザルを問題の抗原で免疫化することによって生産される抗体に由来する、PrimatizedTM抗体が含まれる。「ダイアボディー(diabody)」という用語は、同じポリペプチド鎖(VH−VJ)上で軽鎖可変ドメイン(VL)に結合している重鎖可変ドメイン(VH)からなる、2つの抗原結合部位を持つ小さい抗体断片を意味する。同じ鎖上の2つのドメインが互いに対を形成しえないほど短いリンカーを使用することによって、これらのドメインは別の鎖の相補ドメインと対を形成して2つの抗原結合部位を生成することを余儀なくされる。ダイアボディーについては、例えばEP404,097;WO93/11161;及びHolligerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)などに、より詳しく記述されている。本明細書で使用する場合、「緩衝液」とは、酸-塩基共役成分の作用によってpHの変化を阻止する緩衝溶液をいう。本発明の疎水相互作用クロマトグラフィーに使用する緩衝液は、約2.5〜4.5、好ましくは約2.8〜3.5の範囲にあるpHを持つ。この領域内にpHを制御する緩衝液の例には、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液又はアンモニウム緩衝液若しくはそれらの組み合わせがある。このような緩衝液のうち好ましいものはクエン酸緩衝液及びアンモニウム緩衝液、より好ましくは硫酸アンモニウム又はクエン酸アンモニウム緩衝液である。「充填緩衝液(loading buffer)」とは、抗体と汚染物質の混合物をHICカラムに添加するために使用する緩衝液であり、「溶離緩衝液」とは、抗体をカラムから溶離させるために使用する緩衝液である。充填緩衝液と溶離緩衝液は同じである場合が多い。「正しくジスルフィド結合した」とは、抗体中の全てのシステイン残基がジスルフィド結合として共有結合していて、それらのジスルフィド結合が天然免疫グロブリンのジスルフィド結合に相当することを意味する。実施例1に記述するように円偏光二色性を利用すれば、酸変性時の分子の構造的完全性を追跡することによって、抗体が正しくジスルフィド結合しているかどうかを決定することができる。1又はそれ以上のシステイン残基がジスルフィド結合として共有結合していなかったり、天然免疫グロブリンでは通常結合しないシステイン残基と共有結合している場合、その抗体は「不適切にジスルフィド結合している」という。発明の実施態様本発明の方法では、通常、抗体を他のほとんどの不純物から精製し終えた後に、その抗体を関連する変種から精製する。この精製段階は治療用調剤前の最後の精製段階であってもよいし、この精製段階の後に他の精製段階を行なってもよい。変種の混合物中の抗体はどのような供給源(例えば完全な抗体のペプチド切断)から製造してもよいが、組換え的に製造されることが好ましい。抗体断片を含む抗体の生産技術を以下に説明する。1.抗体調製(i)ポリクローナル抗体ポリクローナル抗体は、一般的には、関連抗原とアジュバントを皮下(sc)又は腹腔内(ip)に複数回注射することによって、動物中に生じる。免疫化する種において免疫原性を持つタンパク質(例えばキーホールリムペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン又は大豆トリプシン阻害剤)に、二官能性試薬又は誘導体化試薬(例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基による結合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による結合)、グルタルアルデヒド、コハク酸無水物、SOCl2又はR1N=C=NR(ここにRとR1は異なるアルキル基を表す))を用いて、その関連抗原を結合することも有益だろう。1mg又は1μgのペプチド又は複合体(それぞれウサギ又はマウスの場合)を3体積のフロインド完全アジュバントと混合し、その溶液を複数箇所の皮内に注射することにより、動物を抗原、免疫原性複合体又は誘導体に対して免疫化する。1ヶ月後、最初のペプチド又は複合体量の1/5〜1/10量をフロインド完全アジュバントに混合して、それを複数箇所に皮下注射することにより、動物を追加抗原刺激する。7〜14日後に動物から採血し、その血清の抗体力価を検定する。抗体力価が平坦になるまで、動物を追加抗原刺激する。好ましくは、同じ抗原の異なる担体タンパク質との複合体及び/又は異なる架橋試薬による複合体で、追加抗原刺激する。複合体を組換え細胞培養中で融合タンパク質として生産することもできる。また、免疫応答を増進するために、明礬のような凝集剤を使用してもよい。(ii)モノクローナル抗体モノクローナル抗体は、実質上均一な抗体の集団(すなわちその集団を構成する個々の抗体は、微量に存在する可能性のある天然の突然変異を除いて、同一である)から得られる。したがって、「モノクローナル」という修飾詞は、別々の抗体の混合物ではないというその抗体の特徴を示す。モノクローナル抗体は、例えばKohler及びMilstein,Nature,256:495(1975)によって最初に記述されたハイブリドーマ法を用いて製造することもできるし、組換えDNA法(Cabillyら,上記)によって製造することもできる。ハイブリドーマ法では、マウスその他の適当な宿主動物(ハムスターなど)を上述のように免疫化して、免疫化に用いたタンパク質に特異的に結合する抗体を生産する(若しくは生産することができる)リンパ球を誘導する。別法として、リンパ球を試験管内で免疫化してもよい。次に、適当な融合試薬(例えばポリエチレングリコール)を用いて、リンパ球を骨髄腫細胞と融合することにより、ハイブリドーマ細胞を形成させる(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,59-103頁[Academic Press,1986])。このようにして調製したハイブリドーマ細胞を、(好ましくは非融合親骨髄腫細胞の増殖又は生存を阻害する1又はそれ以上を物質を含む)適当な培養培地に接種し、生育する。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシル・トランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠くならば、ハイブリドーマ用の培養培地は、HGPRT欠損細胞の増殖を防止するヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有する(HAT培地)のが一般的だろう。好ましい骨髄腫細胞は、効率よく融合し、選択した抗体生産細胞による抗体の安定な高レベル生産を支持し、かつHAT培地などの培地に対して感受性を持つ細胞である。これらのなかでは、Salk Institute Cell Distribution Center(米国カリフォルニア州サンディエゴ)から入手できるMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍由来のものや、American Type Culture Collection(米国メリーランド州ロックビル)から入手できるSP-2細胞などのネズミ骨髄腫系が、好ましい骨髄腫細胞系である。ヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞系も、ヒトモノクローナル抗体の生産に関して記述されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001[1984];Brodeurら,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,51-63頁[Marcel Dekker,Inc.,ニューヨーク,1987])。ハイブリドーマ細胞が増殖している細胞培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の生産に関して検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生産されるモノクローナル抗体の結合特異性を、免疫沈降法か、放射線免疫検定法(RIA)や酵素結合免疫吸着剤検定法(ELISA)のような試験管内結合検定法によって決定する。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson及びPollard,Anal.Biochem.,107:220(1980)のスカッチャード分析によって決定できる。所望の特異性、親和性及び/又は活性を持つ抗体を生産するハイブリドーマ細胞を同定したら、そのクローンを限界希釈法によってサブクローニングし、標準的な方法(Goding,上記)によって増殖させることができる。この目的に適した培養培地には、例えばD-MEMやRPMI-1640培地がある。また、ハイブリドーマ細胞を動物中の腹水腫瘍として、生体内で増殖させてもよい。上記サブクローンが分泌するモノクローナル抗体を、従来の免疫グロブリン精製法(例えばプロテインA-SepharoseTM、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティークロマトグラフィーなど)によって、培養培地、腹水液又は血清から適当に分離する。モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の方法を用いて(例えば、ネズミ抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いて)、容易に単離され、配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源となる。そのDNAを一旦単離したら、それを発現ベクターに入れ、そのベクターを宿主細胞(大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞若しくは免疫グロブリンタンパク質を本来生産しない骨髄腫細胞など)にトランスフェクションすることにより、組換え宿細胞におけるモノクローナル抗体の合成を達成することができる。抗体をコードするDNAの細菌における組換え発現に関する総説には、Skerraら,Curr.Opinion in Immunol.,5:256-262(1993)やPluckthun,Immunol.Revs.,130:151-188(1992)がある。さらなる態様として、McCaffertyら,Nature,348:552-554(1990)に記述されている技術を用いて作成される抗体ファージライブラリーから、適当な抗原(CDlla、CD18、IgE又はHER-2など)を用いて適当な抗体又は抗体断片を選択することにより、抗体又は抗体断片を単離することもできる。Clacksonら,Nature,352:624-628(1991)とMarksら,J.Mol.Biol.,222:581-597(1991)は、ファージライブラリーを用いる、それぞれネズミ及びヒト抗体の単離について記述している。その後の刊行物には、鎖再編成による高親和性(nM領域)ヒト抗体の生産(Markら,Bio/Technology,10:779-783[1992])と、極めて大きいファージライブラリーを構築する方法としての生体内組換えと複合感染法(Waterhouseら,Nuc.Acids.Res.,21:2265-2266[1993])が記述されている。したがって、これらの技術は、「モノクローナル」抗体の単離に関して、伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術に代わる、実行可能な代替技術である。また、例えば相同なネズミ配列に代えてヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコーディング配列を用いたり(Cabillyら,上記;Morrisonら,Proc.Nat.Acad.Sci.,81:6851[1984])、非免疫グロブリンポリペプチドのコーディング配列の全部又は一部を免疫グロブリンコーディング配列に共有結合することによって、DNAを修飾してもよい。典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドで、抗体の定常ドメインを置換するか、若しくは抗体の1抗原結合部位の可変ドメインを置換することによって、ある抗原に対して特異性を持つ1つの抗原結合部位と異なる抗原に対する特異性を持つもう1つの抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作成する。キメラ又はハイブリッド抗体は、合成タンパク質化学で知られる方法(架橋試薬を伴う方法を含む)を用いて、試験管内で調製することもできる。例えば、抗毒素は、ジスルフィド交換反応を用いて、或いはチオエーテル結合の形成によって構築することができる。この目的に適した試薬の例には、イミノチオラートとメチル-4-メルカプトブチルイミデート(methyl-4-mercaptobutyrimidate)がある。診断的応用には、抗体から誘導される本明細書記載の変種を検出可能な成分で標識するのが一般的である。検出可能成分は、検出可能なシグナルを直接又は間接に生成しうるものなら何でもよい。例えば、検出可能成分は、3H、14C、32P、35S又は125Iのような放射性同位体でもよいし、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、ルシフェリンのような蛍光又は化学発光化合物でもよく、さらには、例えば125I、32P、14C又は3Hなどといった放射活性同位体標識や、アルカリ性ホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼのような酵素でもよい。検出可能成分にポリペプチド変種を個別に結合するための当該技術分野で知られる方法は、Hunterら,Nature,144:945(1962);Davidら,Biochemistry,13:1014(1974);Painら,J.Immunol.Meth.,40:219(1981);及びNygren,J.Histochem.and Cytochem.,30:407(1982)に記述されている方法を含めて、いずれも使用できる。(iii)ヒト化又はヒト抗体非ヒト抗体をヒト化する方法は当該技術分野で良く知られている。一般に、ヒト化抗体には、ヒト以外の供給源に由来する1又はそれ以上のアミノ酸残基が導入されている。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「移入(import)」残基と呼ばれ、通常は「移入」可変ドメインに由来する。ヒト化は、本質的にWinterとその共同研究者らの方法(Jonesら,Nautre,321:522-525[1986];Riechmannら,Nature,332:323-327[1988];Verhoeyenら,Science 239:1534-1536[1988])に従って、齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の対応する領域を置換することによって行なうことができる。したがって、このような「ヒト化」抗体は、完全なヒト可変ドメインよりかなり小さい部分が、ヒト以外の種の対応する配列で置換されているキメラ抗体(Cabillyら,上記)である。実際上、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかのCDR残基あるいはいくつかのFR残基が齧歯動物抗体中の類似の部位に由来する残基で置換されているヒト抗体である。抗原性を減少させるためには、ヒト化抗体の作成に使用する軽鎖及び重鎖ヒト可変ドメインの選択が極めて重要である。いわゆる「ベストフィット(best-fit)」法によれば、齧歯類抗体の可変ドメインの配列を、既知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに対してスクリーニングし、齧歯類の配列に最も近いヒト配列を、ヒト化抗体のヒトフレームワーク(FR)として受け入れる(Simsら,J.Immunol.,151:2296[1993];Chothia及びLesk,J.Mol.Biol.,196:901[1987])。もう1つの方法では、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループの全てのヒト抗体の共通配列に由来する特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークを数種類のヒト化抗体に使用することができる(Carterら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285[1992];Prestaら,J.Immunol.,151:2623[1993])。さらに、抗原に対する高い親和性とその他の好ましい生物学的特性を保持したまま抗体をヒト化することが重要である。この目標を達成するには、親配列と種々の概念的ヒト化産物を親及びヒト化配列の三次元モデルを用いて分析する方法によって、ヒト化抗体を作成することが好ましい。三次元免疫グロブリンモデルは一般に利用することができ、当業者にはよく知られている。選択した候補免疫グロブリン配列のありえそうな三次元立体配置構造を図解、表示するコンピュータープログラムを入手することができる。これらの表示を点検することにより、候補免疫グロブリン配列の機能におけるその残基の考えうる役割の分析(すなわちその抗原に結合するという候補免疫グロブリンの能力に影響を与える残基の分析)が可能になる。この方法で、所望の抗体特徴(標的抗原に対する増大した親和性など)が達成されるように、共通及び移入配列からFR残基を選択し、組み合わせることができる。一般に、これらのCDR残基は、抗原結合の変動に、直接的かつ最も本質的に関与する。別法として、現在では、免疫化した時に、内因性免疫グロブリンを生産することなく、ヒト抗体のすべて(full repertoire)を生産することのできる形質転換動物(例えばマウス)を作出することもできる。例えば、キメラ及び生殖細胞系突然変異マウスにおける抗体重鎖連関領域(JH)遺伝子のホモ接合欠失は、内因性抗体生産の完全な阻害をもたらすことが既に記述されている。この生殖細胞系突然変異マウスにヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子アレイを移入すると、抗原投与時にヒト抗体の生産が起こるだろう。例えば、Jakobovitsら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551-255(1993);Jakobovitsら,Nature 362:255-258(1993);Bruggermannら,Year in Immuno. 7:33(1993)を参照のこと。ヒト抗体は、ファージ-ディスプレー(phage-display)ライブラリー中で生産することもできる(Hoogenboomら,J.Mol.Biol. 227:381[1991]及びMarksら,J.Mol.Biol. 222:581[1991])。(iv)抗体断片抗体断片の生産については、種々の技術が開発されている。伝統的には、完全な抗体のタンパク質加水分解的消化によってこれらの抗体が誘導されていた(例えばMorimotoら,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117[1992]やBrennanら,Science 229:81[1985]を参照のこと)。しかし、現在では、これらの断片を組換え宿主細胞によって直接生産することができる。例えば、上述の抗体ファージライブラリーから抗体断片を単離することができる。また、Fab'-SH断片を大腸菌から直接回収し、化学的に結合してF(ab')2断片を形成させることもできる(Carterら,Bio/Technolo 10:163-167[1992])。また、F(ab')2断片を組換え宿主細胞培養から直接単離することもできる。抗体断片を生産するためのその他の技術は、当業者には明白だろう。(v)二特異性抗体二特異性抗体(bispecific antibody=BsAb)とは、少なくとも2種類の抗原に対する結合特異性を持つ抗体をいう。二特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab')2二特異性抗体)から誘導することができる。二特異性抗体を作成する方法は、当該技術分野で知られている。完全長二特異性抗体は、2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づき、それら2つの鎖は異なる特異性を持つ(Millstein及びCuello,Nature 305:537-539[1983])。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダムな取り合わせゆえに、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10種類の抗体分子の潜在的混合物を生産し、そのうちの1つのみが正しい二特異性構造を持つ。通常アフィニティークロマトグラフィー処理によって行われる正しい分子の精製は、かなり煩わしく、生成物の収率も低い。同様の方法はWO93/08829(1993年5月13日公開)とTrauneckerら,EMBO J. 10:3655-3659(1991)に開示されている。より好ましい別の方法では、所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を持つ抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合する。この融合は、ヒンジ、CH2及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常領域を用いて行なうことが好ましい。軽鎖結合に必要な部位を含有する第1重鎖定常領域(CH1)が、その融合物の少なくとも1つに存在することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物をコードするDNAと、所望であれば免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時にトランスフェクションする。こうすれば、3つのポリペプチド鎖を等しくない比率で構築に使用すると最適な収率が得られる態様において、3つのポリペプチド断片の相互の比率を調節する際に極めて融通がきく。しかし、少なくとも2つのポリペプチド鎖が等しい比率で発現すると高い収率が得られる場合や、比率が特に重要でない場合には、2つの又は3つ全てのポリペプチド鎖のコード配列を1つの発現ベクターに挿入することもできる。この方法の好ましい態様では、二特異性抗体が、第1の結合特異性を持つ一方のアーム中のハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、他方のアーム中の(第2の結合特異性を提供する)ハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対とからなる。この非対称構造は、所望の二特異性化合物の、不必要な免疫グロブリン鎖複合体からの分離を容易にする。免疫グロブリン軽鎖がその二特異性分子の半分にのみ存在するために、分離が容易になるからである。この方法は、WO94/04690(1994年3月3日公開)に開示されている。二特異性抗体の作成に関するさらなる詳細については、例えばSureshら,Methods in Enzymology 121:210(1986)を参照のこと。二特異性抗体には、架橋された抗体又は「ヘテロ複合」抗体が含まれる。例えば、そのヘテロ複合体中の抗体の1つをアビジンに結合し、他方をビオチンに結合することができる。このような抗体は、例えば好ましくない細胞に免疫系を誘導するため(米国特許第4,676,980号)や、HIV感染症の治療(WO91/00360、WO92/200373及びEP03089)に提案されている。ヘテロ複合抗体の作成には、都合のよい架橋法のいずれを用いてもよい。好適な架橋試薬は当該技術分野で良く知られており、いくつかの架橋技術と共に米国特許第4,676,980号に開示されている。二特異性抗体を抗体断片から製造する技術も文献に記述されている。例えば、二特異性抗体は化学結合を用いて製造することができる。Brennanら,Science 229:81(1985)は、完全な抗体をタンパク質加水分解的に切断して、F(ab')2断片を製造する方法を記述している。これらの断片は、隣接ジチオールを安定化し、分子内ジスルフィド形成を防止するために、ジチオール錯化試薬亜砒酸ナトリウムの存在下に還元される。次に、生成したFab'断片をチオニトロ安息香酸(TNB)誘導体に変換する。次に、そのFab'-TNB誘導体の一つを、メルカプトエチルアミンを用いる還元によってFab'-チオールに再変換し、等モル量の他のFab'-TNB誘導体と混合することによって、BsAbを形成させる。生成したBsAbは、酵素を選択的に固定化するための試薬として使用できる。最近の進歩により、Fab'-SH断片の大腸菌からの直接回収が容易になり、それを化学的に結合して二特異性抗体を形成させることができるようになった。Shalabyら,J.Exp.Med. 175:217-225(1992)は、完全にヒト化したBsAbF(ab')2分子の生産について記述している。各Fab'断片は大腸菌から個別に分泌され、BsAbが生成するように制御された試験管内化学結合にかけられた。このようにして作成されたBsAbは、HER2受容体を過剰発現させる細胞と正常なヒトT細胞に結合することができると共に、ヒト乳癌腫瘍標的に対するヒト細胞障害性リンパ球の溶解活性を誘発することができた。Rodriguezら,Int.J.Cancers(Suppl.)7:45-50(1992)をも参照のこと。組換え細胞培養から直接的にBsAb断片を作成し、単離する技術も種々記述されている。例えば、二特異性F(ab')2ヘテロ二量体が、ロイシンジッパーを用いて生産されている。Kostelnyら,J.Immunol. 148(5):1547-1553(1992)。Fos及びJunタンパク質から得たロイシンジッパーペプチドが、遺伝子融合によって、2種類の抗体のFab'部分に連結された。その抗体ホモ二量体をヒンジ領域で還元してモノマーを形成させた後、再酸化によって抗体ヘテロ二量体を形成させた。Hollingerら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),90:6444-6448(1993)に記載の「ダイアボディー」技術によって、BsAb断片を作成するもう1つの仕組みが提供されている。その断片は、同じ鎖上の2つのドメイン間では対を形成できないほど短いリンカーによって軽鎖可変ドメイン(VL)に結合された重鎖可変ドメイン(VH)からなる。したがって、1つの断片のVHドメインとVLドメインは、もう1つの断片の相補的VLドメイン及びVHドメインと対を形成することを余儀なくされ、その結果、2つの抗原結合部位が生じる。一本鎖Fv(sFv)二量体を使用してBsAB断片を作成するもう1つの方法も報告されている。Gruberら,J.Immunol. 152:5368(1994)を参照のこと。これらの研究者は、25アミノ酸残基リンカーによって第2抗体のVH及びVLドメインに結合した第1抗体のVH及びVLドメインからなる抗体を設計した。再生した分子はフルオレセインとT細胞受容体に結合し、表面にフルオレセインが共有結合されているヒト腫瘍細胞の溶解を再指向(redirect)した。2.抗体精製組換え技術を使用する場合、抗体を細胞内や周辺腔で生産することもできるし、培地に直接分泌させることもできる。抗体が細胞内で生産される場合は、第1段階として、粒状残渣(宿主細胞か溶解した断片)を、例えば遠心分離か限外濾過によって除去する。Carterら,Bio/Technology 10:163-167(1992)は、大腸菌の周辺腔に分泌される抗体の単離法について記述している。簡単に述べると、細胞ペーストを酢酸ナトリウム(pH3.5),EDTA及びフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)の存在下に約30分かけて融解する。細胞残渣は遠心分離によって除去することができる。抗体が培地中に分泌される場合は、そのような発現系から得た上清を一般的には先ず市販のタンパク質濃縮フィルター(例えばAmicon又はMillipore Pellicon限外濾過ユニット)を用いて濃縮する。タンパク質加水分解を阻害するために、PMSFのようなプロテアーゼ阻害剤を上述のいずれの段階に含めてもよく、二次的な汚染物質の増殖を防止するために、抗生物質を含めてもよい。細胞から調製した抗体組成物を、LPHICに先立って、少なくとも1つの精製段階にかけることが好ましい。好適な精製段階の例には、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析及びアフィニティークロマトグラフィーがあり、なかでもアフィニティークロマトグラフィーは好ましい精製法である。プロテインAがアフィニティーリガンドとして好適かどうかは、その抗体中に存在する免疫グロブリンFcドメインの種とイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2又はγ4重鎖に基づく抗体の精製に使用できる(Lindmarkら,J.Immunol.Meth. 62:1-13[1983])。プロテインGは、全てのマウスインタイプとヒトγ3に推奨される(Gussら,EMBO J. 5:1567-1575[1986])。アフィニティーリガンドを結合させるマトリックスは、ほとんどの場合、アガロースであるが、他のマトリックスも使用できる。制御多孔質ガラス(controlled pore glass)やポリ(スチレンジビニル)ベンゼンのように機械的に安定なマトリックスを使用すれば、アガロースの場合よりも速い流速と短い処理時間が可能になる。抗体がCH3ドメインを含む場合は、Bakerbond ABXTM樹脂(J.T.Baker,ニュージャージー州フィリップスバーグ)が精製に有用である。イオン交換カラムによる分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカによるクロマトグラフィー、ヘパリンSepharoseTMによるクロマトグラフィー、陰イオン又は陽イオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)によるクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE及び硫酸アンモニウム沈殿などといった他のタンパク質精製技術も、回収しようとする抗体によっては利用できる。予備的な精製段階の後、目的の抗体と汚染物質とからなる混合物をLPHICにかける。精製すべき抗体組成物は、それ以前の精製段階の緩衝液中に存在することが多いだろう。しかし、LPHIC段階に先立って、抗体組成物に緩衝剤を加えることが必要な場合もある。多くの緩衝液を利用することができ、その選択は機械的な実験で行なうことができる。精製すべき抗体と少なくとも1つの汚染物質とからなる充填緩衝液中の混合物のpHを、出発pHによって酸か塩基を用いて、約2.5〜4.5のpHに調節する。この充填緩衝液は、低い塩濃度(すなわち約0.25M塩未満)を持つことが好ましい。その混合物をHICカラムに添加する。HICカラムは通常、疎水性リガンド(例えばアルキル基又はアリール基)が結合した基盤マトリックス(例えば架橋アガロース又は合成コポリマー素材)からなる。好ましいHICカラムは、フェニル基で置換されたアガロース樹脂(例えばPhenyl SepharoseTMカラム)からなる。多くのHICカラムが市販されている。その例には、低又は高置換のPhenyl SepharoseTM6 Fast Flowカラム(Pharmacia LKB Biotechnology,AB,スウェーデン);Phenyl SepharoseTMHigh Performanceカラム(Pharmacia LKB Biotechnology,AB,スウェーデン);Octyl SepharoseTMHigh Performanceカラム(Pharmacia LKB Biotechnology,AB,スウェーデン);FractogelTMEMD Propyl又はFractogelTMEMD Phenylカラム(E.Meck,ドイツ);Macro-PrepTMMethyl又はMacro-PrepTMt-Butyl Supports(Bio-Rad,カリフォルニア);WP HI-Propyl(C3)TMカラム(J.T.Backer,ニュージャージー);及びToyopearlTMエーテル、フェニル又はブチルカラム(TosoHaas,ペンシルベニア州)があるが、これらに限らない。通常は、充填緩衝液と同じ溶離緩衝液を用いて、抗体をカラムから溶出させる。溶離緩衝液は機械的な実験によって選択することができる。溶離緩衝液のpHは約2.5〜4.5であり、低い塩濃度(すなわち約0.25M塩未満)を持つ。目的の抗体を溶出させるために塩勾配を使用する必要はないことがわかった。所望の生成物はカラムに有意に結合しない通過画分に回収される。LPHIC段階は、正しく折りたたまれジスルフィド結合した抗体を、不必要な汚染物質(例えば不適切に結合した軽鎖及び重鎖断片)から取り出す方法を提供する。具体的に述べると、この方法は、軽鎖と重鎖がジスルフィド結合を介して結合できていない正しく折りたたまれた抗体断片であると本研究において特徴づけられた不純物を、十分に除去するための手段を提供する。本明細書に記述するLPHICを用いて製造された抗体組成物は、少なくとも95%純粋であることがわかった。実施例1に記述する方法を用いることにより、98%を超える純度が達成された。LPHICによって製造される抗体組成物は、所望であれば、当該技術分野で良く知られる技術を用いて、さらに精製することができる。精製タンパク質の診断用又は治療用製剤は、生理学的に許容できる担体に入ったその抗体組成物を用意することによって製造できる。その例を以下に記述する。HICカラムを再利用できるように、汚染物質(例えば折りたたまれていない抗体や、不適切に結合した軽鎖及び重鎖断片)をHICカラムから除去するには、尿素を含む組成物(例えば6.0M尿素,1%MES緩衝液pH6.0,4mM硫酸アンモニウム)をカラムに流せばよい。3.精製した抗体の利用法ここに開示する方法を用いて精製された抗体には、診断的用途及び治療的用途を含む数多くの用途が考えられる。抗体に関する種々の診断的及び治療的用途は、例えばGoldenbergら,Semin.CancerBiol. 1(3):217-225(1990)、Beckら,Semin.Cancer Biol. 1(3):181-188(1990)、Niman,Immunol.Ser. 53:189-204(1990)及びEndo,Nippon Igaku Hoshasen Gakkai Zasshi(Japan)50(8):901-909(1990)などに概説されている。本明細書に記述する抗体は、酵素免疫検定法などの免疫検定法に使用できる。BsAbはこのタイプの検定法にとりわけ有用である。BsAbの一方のアームを、それが酵素上の特定のエピトープに結合し、しかもその結合が酵素阻害を起さないように設計し、その抗体の他方のアームを固定化マトリックスに結合するように設計することにより、所望の部位に高い酵素密度を確保することができる。このような診断用BsAbの例には、例えば、IgGやフェリチンに対する特異性を持つもの、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)やホルモンに対する結合特異性を持つものなどがある。二部位免疫検定法で使用するために抗体を設計することができる。例えば、被分析タンパク質上の2つの別個のエピトープに結合する2つの抗体を作成する。この場合、一方の抗体は複合体を不溶性マトリックスに結合し、他方は指示薬酵素を結合する。抗体は、ガンなどの様々な疾患の試験管内又は生体内免疫診断にも使用できる。この診断的使用を容易にするため、腫瘍関連抗原を結合する抗体を検出可能なマーカー(例えば放射性核種を結合するキレート剤)と結合してもよい。例えば、腫瘍関連抗原CEAに対する特異性を持つ抗体を、結腸直腸ガン及び甲状腺ガンの撮像に使用することができる。本明細書に開示する抗p185HER2抗体は、HER2原腫瘍形成遺伝子の増幅を特徴とするガンを検出するために使用できる。本抗体のその他の非治療的、診断的用途は、当業者には明らかだろう。診断的応用には、抗体を検出可能な成分で直接的又は間接的に標識するのが一般的だろう。検出可能成分は、直接的又は間接的に検出できるシグナルを生成することができるものなら何でもよい。例えば、検出可能成分は、3H、14C、32P、35S又は125Iなどの放射性同位体であってもよいし、フルオレセインイソチオシァナート、ローダミン又はルシフェリンのような蛍光化合物又は化学発光化合物であってもよく、またアルカリ性ホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ又はHRPなどの酵素であってもよい。検出可能成分を抗体に個別に結合するための当該技術分野で知られる方法は、Hunterら,Nature 144:945(1962);Davidら,Biochemistry 13:1014(1974);Painら,J.Immunol.Meth. 40:219(1981);Nygren,J.Histochem.and Cytochem. 30:407(1982)に記述されている方法を含めて、いずれも使用できる。本発明の抗体は、競争結合検定法、直接又は間接サンドイッチ検定法及び免疫沈降検定法など、既知の検定法のいずれにも使用できる。Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniues,147-158頁(CRC Press,Inc.,1987)。競争結合検定法は、制限された量の抗体との結合に関して試験試料分析物と競争するという標識した標品の能力に依っている。試験試料中の分析物の量は、抗体に結合する標品の量に逆比例する。結合する標品の量を容易に決定するために、一般的には、抗体に結合した標品と分析物を未結合のまま残った標品と分析物から都合よく分離できるように、抗体を競争の前又は後に不溶化する。BsAbは、それぞれが検出すべき試料の異なる免疫原性部分又はエピトープに結合することができる2つの分子を使用するサンドイッチ検定法に、とりわけ有用である。サンドイッチ検定法では、試験試料分析物が固相に固定化した抗体の第1アームに結合した後、その抗体の第2アームが分析物に結合することによって、不溶性の三部分複合体が生成する。例えば米国特許第4,376,110号を参照のこと。抗体の第2アーム自体を検出可能な成分で標識してもよいし(直接サンドイッチ検定法)、検出可能な成分で標識した抗免疫グロブリン抗体を用いて、抗体の第2アームを測定してもよい(間接サンドイッチ検定法)。例えば、サンドイッチ検定法の一種はELISA検定法であり、この場合は検出可能成分が酵素である。抗体は、組換え細胞培養又は天然の供給源から目的の抗原をアフィニティー精製する際にも有用である。本明細書に記述する方法を用いて精製した抗体には、治療的用途も考えられる。例えば、抗体は(例えば腫瘍細胞を殺すための)再指向性(redirected)細胞障害性に、或いはワクチンアジュバントとして、血栓溶解剤を血塊に送達するため、抗毒素を腫瘍細胞に送達するため、標的部位(例えば腫瘍)で酵素活性化プロドラッグを変換するため、感染性疾患を治療するため、若しくは免疫複合体を細胞表面受容体に誘導するために使用することができる。抗体の治療用製剤は、所望の純度を持つ抗体を任意の生理学的に許容できる担体、賦形剤又は安定化剤(Remington's Pharmaceutical Sciences,第16版,Osol,A.編[1980])と混合して、凍結乾燥塊や水溶液にすることによって、貯蔵用に調製される。許容できる担体、賦形剤又は安定化剤は、使用する濃度と用量で受容者に対して非毒性であり、緩衝剤(リン酸、クエン酸その他の有機酸など);抗酸化剤(アスコルビン酸を含む);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなど);親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジンなど);単糖類、二糖類その他の炭水化物(グルコース、マンノース又はデキストリンを含む);キレート試薬(EDTAなど);糖アルコール(マンニトールやソルビトールなど);塩形成対イオン(ナトリウムなど);及び/又は非イオン界面活性剤(Tween、Pluronics又はポリエチレングリコール(PEG)など)が含まれる。コアセルベーション技術や界面重合などによって調製されるマイクロカプセル(例:それぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル、及びポリ-[メチルメタクリレート]マイクロカプセル)、コロイド薬物送達系(例えばリポソーム、アルブミン微小球、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルジョンに、抗体を封入してもよい。そのような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences(上記)に開示されている。生体内投与に使用しようとする抗体は滅菌状態でなければならない。これは、凍結乾燥と再構成の前又は後に、滅菌濾過膜を通してろ過することによって、容易に達成される。抗体は通常、凍結乾燥型か溶液状態で保存される。治療用抗体組成物は、一般的には、滅菌出入口を持つ容器(例えば静脈内溶液バッグ又は皮下注射針を突き刺せる栓が付いたバイアル)に入れられる。抗体の投与経路は、既知の方法、例えば静脈内、腹腔内、大脳内、筋肉内、眼内、動脈内又は病変内経路による注射又は注入、若しくは後述の徐放系による方法などに従って行なわれる。抗体は、注入によって継続的に、若しくはボーラス注射によって投与される。徐放性製剤の好適例には、フィルムやマイクロカプセルなどの成型品の形状をした、タンパク質を含有する疎水性ポリマーの半透過性マトリックスがある。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル[例えば、Langerら,J.Biomed.Mater.Res.15:167-277(1981)とLanger,Chem.Tech. 12:98-105(1982)に記述されているようなポリ(2-ヒドロキシルエチルーメタクリレート)や、ポリ(ビニルアルコール)]、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、EP58,481)、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタメートのコポリマー(Sidmanら,Biopolymers 22:547-556[1983])、非分解性エチレン-ビニルアセテート(Langerら,上記)、Lupron DepotTM(乳酸-グリコール酸コポリマーとロイプロライドアセテート(leuprolide acetate)からなる注射可能な微小球)のような分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(EP133,988)がある。エチレン-ビニルアセテートや乳酸-グリコール酸のようなポリマーを使用すれば100日間以上分子を放出することができるが、ある種のヒドロゲルはより短い期間、タンパク質を放出する。封入した抗体が長期間体内に残存する場合、それらは37℃で湿気にさらされた結果として変性又は凝集し、生物活性の喪失や免疫原性の変化を起こしうる。抗体を安定化するには、関与する機構に応じて合理的な戦略を案出することができる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド交換による分子間S-S結合の形成であることがわかった場合は、スルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥し、水分含量を制御し、適当な添加剤を使用し、特定のポリマーマトリックス組成物を開発することによって、安定化を達成することができる。徐放性抗体組成物には、リポソームに封入した抗体も含まれる。抗体を含有するリポソームは、それ自体は公知の方法(DE3,218,121;Epsteinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688-3692(1985);Hwangら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4030-4034(1980);EP52,322;EP36,676;EP88,046;EP143,641;日本国特許出願83-118008;米国特許第4,485,045号及び同4,544,545号;EP102,324)によって調製される。通常、リポソームは小さい(約200〜800オングストローム)単層型であり、その脂質含量は約30モル%以上であって、選択される比率はその抗体療法が最適となるように調節される。治療的に使用される抗体の有効量は、例えば治療目標、投与経路、患者の状態などに依存するだろう。したがって、治療専門家は、最適な治療効果を得るために、用量を滴定し、必要に応じて投与経路を改良する必要があるだろう。典型的な日用量は、上述の因子によって、約1mg/kg〜10mg/kg又はそれ以上になるだろう。典型的な場合、臨床医は所望の効果が得られる用量に達するまで抗体を投与するだろう。この治療の進行は、従来の検定法で容易に監視できる。以下の実施例は例示のために提供するのであって、限定を目的とするものではない。本明細書で引用する全ての文献は、特に参考文献として本明細書の一部を構成する。実施例1低pH疎水相互作用クロマトグラフィー(LPHIC)酸変性によって非ジスルフィド結合型抗体を選択的に変性させる方法を開発した。酸変性中は、分子間の電荷反発が変性の一因となり、変性の程度は酸性化の条件とタンパク質構造に依存する。低いpHでは、変性した抗体と不適切に結合した軽鎖及び重鎖断片を、LPHIC(通過モード)で分離することができる。不必要な抗体種はカラムに結合するが、所望の抗体断片は通過する。不純物は、6.0M尿素,1%MES緩衝液(pH6.0),4mM硫酸アンモニウムを用いて、カラムから除去することができる。次の抗体をLPHICにかけた:(a)ヒト化抗CD18 Fab'及びF(ab')2;(b)キメラ抗CD18 Fab'及びF(ab')2;(c)直線型ヒト化抗CD18 F(ab')2;及び(d)直線型ヒト化抗p185HER2F(ab')2。材料と方法細胞材料.Eigenbrot,Proteins:Structure,Function and Genetics,18:49-62(1994)に記述されているように、形質転換大腸菌株を用いてヒト化抗CD18 Fab' H52,OZ型(rhuMAb H52OZG1)を調製した。軽鎖配列:配列番号1と重鎖配列:配列番号2を持つキメラ型の抗CD18 MAb,MHM23(Hildrethら,Eur.J.Immunol. 13:202-208[1983])を調製した。Fabをコードする配列を、既にCarterら,Bio/Technoloy 10:163-167(1992)に記述されているpAK19系のベクターにサブクローニングした。直線型ヒト化抗CD18 huMAbH52と抗p185HER2huAb4D5-8 F(ab')2断片は、下記実施例2に記述するように作成した。逆相クロマトグラフィー分析.逆相クロマトグラフィーは、50℃に維持した逆相PLRP-STM4.6×50mmカラム,8mm粒子サイズ(Polymer Laboratories,英国シュロップシア)で行なった。31%緩衝液Bから41%緩衝液Bまで増大する直線的な勾配を用いて、タンパク質を溶出させた。緩衝液Aは脱イオン水中に0.1%トリフルオロ酢酸を含み、緩衝液BはHPLC級アセトニトリル中に0.1%トリフルオロ酢酸を含む。流速を2ml/分に維持し、検出波長は214nmとした。大腸菌からのFab'抗体断片の抽出と4,4-DTPによる遊離スルフヒドリルの保護.10リットル醗酵で得た大腸菌凍結細胞ペレットから抗体断片を抽出した。細胞を完全に破壊したので、ヒンジ領域に遊離のチオールを含有するように操作したFab'抗体断片(抗CD18 H52OZG1と抗CD18 MAb MHM23)中の遊離システインを保護するために、4,4-ジチオジピリジン(4,4-DTP)を加えた。ヒンジ領域に遊離システインを工作しなかった直線型F(ab')2(抗CD18 huMAbH52とhuMAb4D5-8直線型)は、下記実施例2に記述するように、4,4-DTPなしで抽出した。抽出.凍結細胞ペレットを、5mM EDTAと予めエタノールに溶解しておいた20mM 4,4'-DTPを含有する20mM MES緩衝液pH6.0に室温で再懸濁した(3リットル緩衝液/kg細胞ペレット)。その懸濁細胞を5500〜6500PSIでMantin Gaulinホモジナイザーに2回通すことによって破壊した。そのホモジネートをポリエチレンイミン(PEI)で0.25%(v/v)に調節し、等体積の2〜8℃精製水で希釈した。次に、希釈したそのホモジネートを遠心分離した。抗体断片は上清に認められた。保護Fab'-TP抗体断片の精製.抗体断片を大腸菌タンパク質から精製するために、先ずABXTMクロマトグラフィーを用いた。軽鎖と重鎖の間にジスルフィド結合を欠く抗体種から抗体断片をさらに精製するために、低pH疎水相互作用クロマトグラフィー段階を導入した。ABXTMクロマトグラフィー.抗体断片を含有する上清を、精製水で導電率2ミリジーメンス以下に希釈した。希釈した上清をポンプで順次0.5ミクロンフィルターと0.22ミクロンフィルターに通し、50mM MES/5mM EDTA,pH6.0(緩衝液A)中で平衡化したABXTMカラム(J.T.Baker,ニュージャージー州フィリップスバーグ)に添加した。溶出液を280nmで監視した。添加後、カラムを緩衝液Aで2カラム体積分洗浄した。抗体を、緩衝液A中の0mM硫酸アンモニウムから50mM硫酸アンモニウムに至る20カラム体積の勾配で溶出させた。画分をHPLCで分析し、それに従ってプールした。低pH疎水相互作用クロマトグラフィー(LPHIC).Phenyl SepharoseTMFast Flow(Pharmacia Biotech Inc.,ニュージャージー州ピスカタウェイ)カラムに添加する直前に、ABXTM精製Fab'プール(ヒト化及びキメラ抗CD18)を20mM NaPO4に調節し、そのプールのpHを6N HClで3.1に調節した。化学的に結合したF(ab')2(ヒト化及びキメラ抗CD18)と直線型F(ab')2(抗CD18及び抗p185HER2)のABXTMプールを、20mM硫酸アンモニウムにした点を除いて、同じ方法で調製した。このLPHICの典型的な通過クロマトグラムを図1に示す。LPHIC精製した抗体のpHは、10%NaOHで直ちにpH5に調節した。pH分析.最大の精製率と最大の収率を与えうるpHを決定するための実験を設計した。ABXTMプールのNaPO4濃度を25mMにし、pHを6N HClで調節した。所望のpHにした後、試料をPhenyl SepharoseTMFast Flowカラムに通し、そのプールを逆相HPLCで分析することにより、純度と収率を決定した。円偏光二色性.スペクトルは、25℃のAVIVモデル60DS装置で記録した。遠UV測定には1mmの光路長セルを使用し、近UV測定には10mm光路長セルを使用した。rhuMAb H52OZG1とrhuMAb H52OZG2精製抗体試料を、Sephadex G25TM(Pharmacia Biotech Inc.,ニュージャージー州ピスカタウェイ)でのゲル透過クロマトグラフィーによって、10mM KPO4緩衝液に緩衝液交換した。CDスペクトルを測定する前に、試料を所望のpHまでリン酸で滴定した。結果と考察rhuMAb H52OZG1及びrhuMAb H52OZG2のCDスペクトル.ABXTM精製プールは、軽鎖と重鎖が正しく折りたたまれているが、ジスルフィド結合を介して共有結合できていない抗体断片を少量含有するようである。この不純物はSDSゲルと分析用逆相HPLCで検出できる(図2)。非共有結合型抗体断片は、選択的酸変性とそれに続くLPHICによって、所望の生成物から分離することができる。ジスルフィド結合種と非ジスルフィド結合種の酸変性の相違を測定するために、2種類の精製抗体断片を使用した:rhuMAb H52OZG2及びrhuMAb H52OZG1。rhuMAb H52OZG2は、軽鎖及び重鎖中のシステイン残基それぞれ215と228がセリン残基に変化しているrhuMAb H52OZG1の突然変異体である。この突然変異体は、非ジスルフィド結合型抗体の酸変性挙動を模倣するはずである。rhuMAb H52OZG2とrhuMAb H52OZG1の異なるpH値における近UV及び遠UVスペクトルは、異なる変性転移点を示す(図3A〜3D)。転移点は正しく折りたたまれた抗体断片からその変性状態への変化を表す。非ジスルフィド結合型断片はpH3.2付近で変性させることができたが、ジスルフィド結合型断片を変性させるには、2.5未満のpH値が必要だった。LPHIC pH分析.酸変性分析から、pH3.0付近で非ジスルフィド結合型断片を変性させることができ、それをPhenyl SepharoseTMFast Flowカラムに選択的に結合させることができると結論できる。低pHの変化がこのLPHIC段階に与える効果を評価するために、ABXTM精製抗体プールを異なるpH値でLPHIC精製した。精製プールの分析は、逆相HPLCを用いて行なった。LPHIC精製物から純度、収率及び軽鎖率を決定し、棒グラフを作成した(図4)。この棒グラフから、rhuMAb H52OZG1抗体の精製に関して純度と収率を釣り合わせるには、pH3.1が最適値であると決定した。ABXTMプールの大規模精製をpH3.1で行なった。要約LPHICは、Fab'、L-F(ab')2及び化学的に結合したF(ab')2抗体断片を不必要な抗体断片から98%を超える純度まで精製することを可能にした。試料をPhenyl SepharoseTMFast Flowカラムに低いpHで通すことにより、重鎖と軽鎖の間にジスルフィド結合を欠く抗体と不適切に結合した軽鎖及び重鎖種が除去された。ジスルフィド結合型抗CD18 F(ab')2抗体と非ジスルフィド結合型抗CD18 F(ab')2抗体(rhuMAb H52OZG1とrhuMAb H52OZG2)の円偏光二色性試験により、非ジスルフィド結合型抗体(rhuMAb H52OZG2)がpH3.2で軽鎖分子と重鎖分子に変性することが明らかになった。ジスルフィド結合型抗体(rhuMAb H52OZG1)はpH2.5で変性した。異なるpH値におけるクロマトグラフィー実験により、抗CD18 rhuMAb H52OZG1の精製に関して純度と収率を釣り合わせるには、pH3.1が最適値であることが明らかになった。実施例2直線型抗体生産この実施例では、LPHIC(上記実施例1参照)にかけた二価直線型(L-)F(ab')2断片(軽鎖と同時に分泌される重鎖断片の縦列反復VH-CH1-VH-CH1からなる)について説明する。材料と方法L-F(ab')2変種の構築.huMAb4D5-8 Fab'を分泌させるための発現プラスミドpAK19については既に記述されている(Carterら,Bio/Technology 10:163-167[1992])。プラスミドpLA1、pLA2及びpLA3を、それぞれL-F(ab')2変種v1、v2及びv3を分泌するように設計した(図5A)。プラスミドpLA1は、縦列huMAb4D5-8Fd部分:VH-CH1-VH-CH1をコードするように重鎖を改変することによって、pAK19から構築した。L-F(ab')2v2及びv3は、pLA1中のVHのそれぞれ5'又は3'コピーをヒト化抗CD18 Ab,huMAb H52OZ(Eigenbrotら,上記)に由来するもので正確に置換することによって、pLA1から構築した。L-F(ab')2抗CD18を分泌するようにプラスミドを設計した。縦列Fd部分VH-CH1-VH-CH1をコードするように重鎖を改変することにより、抗CD18 Ab,huMAbH52OZ(Eigenbrotら,上記)からプラスミドを構築した。L-F(ab')2変種の大腸菌発現と精製.huMAb4D5-8 Fab及びチオエーテル結合型F(ab')2断片の大腸菌からの生産は、既にKellyら,Biochemistry 31:5434-5441(1992)とRodriguezら,J.Immunol. 151:6954-6961(1993)に記述されている。L-F(ab')2変種は、既に記述されているように(Carterら,上記)、曝気した10リットル培養器中、30℃で40時間生育した、対応する発現プラスミドを含有する大腸菌株33B6(Rodriguezら,Cancer Res. 55:63-70[1995])から分泌させた。発現力価は、抗原(Ag)-結合ELISA(Carterら,上記)によって評価した。L-F(ab')2変種を、2リットルの20mM MES,5mM EDTA,pH6.0(ME緩衝液)の存在下に融解した対応する醗酵ペースト400gから精製した。再懸濁した細胞を、微量流動化装置(microfluidizer)(Microfluidics Corporation,マサチューセッツ州ニュートン)に3回通すことによって破壊し、0.25%(v/v)ポリエチレンイミンに調節した。固体残渣を遠心分離(7300g,30分間,4℃)によって除去した。上清を等量の蒸留水で希釈した後、ME緩衝液で平衡化しておいた20mlのBakerbond ABXTMカラム(J.T.Baker,ニュージャージー州フィリップスバーグ)に添加した。L-F(ab')2を、ME緩衝液中0-50mM(NH4SO4の直線的勾配を用いて溶出させた。集めたL-F(ab')2を25mM Na2HPO4,pH3.0に調節し、25mM Na2HPO4,20mM(NH4)SO4,pH3.0で平衡化した20mlのPhenyl SepharoseTMFast Flowカラム(高置換)(Pharmacia,ニュージャージー州ピスカタウェイ)に通した。L-F(ab')2を含有する通過画分を集め、pH6.0に調節した。全ての抗体断片を、S100-HRTM(Pharmacia)サイズ排除クロマトグラフィー(2.5cm×100cm)によって、PBSに緩衝液交換した。残存内毒素をProBind-STTMフィルター(Sepracor,マサチューセッツ州ヤールバラ)に繰り返し通すことによって除去した。各調製物の内毒素レベルを、カブトガニ遊走細胞溶解液試験(Associates of Cape Cod Inc.,マサチューセッツ州ウッズホール)によって見積もった。精製抗体(Ab)断片を0.2mmフィルターに通し、液体窒素で瞬間凍結し、使用するまで-70℃で保存した。p185HER2ECDに対するAb断片結合の分析.p185HER2ECD(Fendlyら,J.Biol.Resp.Mod. 9:449-455[1990])に対するhuMAb4D5-8 Ab断片の結合の親和性と速度を、KellyとO'ConnellがBiochemistry 32:6828-6835(1993)に記述しているように、BIAcoreシステム(Pharmacia)を用いる表面プラズモン共鳴によって決定した。Agに対するAb断片の結合の化学量論を溶液中で決定した。簡単に述べると、PBS中の様々な量のp185HER2ECD(Fendlyら,上記)を、一定量のAb断片(15〜20mg)に加えた後、その混合物を、0.1M NaH2HPO4,pH6.7で平衡化したSuperose 12TMカラム(Pharmacia)を用いるサイズ排除FPLCで分析した。細胞増殖検定.ヒト乳腺ガン細胞系BT474の増殖に対するhuMAb4D5-8 Ab断片(0〜30mg/ml)の効果を、既に記述されている方法(Hudziakら,Molec.Cell.Biol.9:1165-1172[1989])で調べた。正常マウスにおけるAb断片の薬物動力学.Halan Sprague Dawley(インディアナ州インディアナポリス)から入手した雌のCD-1マウスの群(20〜32g,n=45)に、迅速な尾静脈注射によってhuMAb4D5-8 Ab断片(PBS中3〜4mg/ml)の1つを投与した(10mg/kg)。注射後1分から24時間までの予定の時刻に、各時点につき3匹のマウスを犠牲にし、それらの血清試料を集め、凍結保存した。各Ab断片の血清濃度を、対応する断片を標品として用いて、既に記述されているようにAg-結合ELISAによって決定した(Rodriguezら,上記)。注射後24時間では、チオエーテル結合型F(ab')2のみが検出できた(0.7mg/ml)。二指数関数C(t)=Ae-at+Be-btを各時点の血清濃度に適合させることによって、各処置群から得たデータを分析した。指数成分は、Gauss-Newton-Marquardt-Levenberg法(Pressら,Numerical Recipies in C,Cambridge University Press,英国ケンブリッジ[1988])とy-2(ここにyは測定した血清濃度である)の加重を用いる非線型最小二乗法によって見積もった。次に、定常状態(Vss)における分布の初期容量(V1)、クリアランス時間(CL)及び初期及び終点半減期(t1/2)を、見積もったパラメーターから、記述されているように(Wagner,J.Pharmacokin.Biopharm. 4:443-467[1976])計算した:C0=A+BV1=投与量/C0Vss=(A/a2+B/b2)/(AUC)2CL=投与量/AUC初期t1/2=ln2/a終点t1/2=ln2/b(ここに、C0は外挿した初期濃度であり、AUCは適合させた血漿濃度対時間曲線下の面積である)。永続時間(permanence time)(T)(これは、薬物がある区画(この場合は血清)中を通過するのに費やすと予想される時間である)を次のように見積もった(Mordenti及びRescigno,Pharm.Res. 9:17-25[1992]):T=AUC/C0結果と考察L-F(ab')2の設計.L-F(ab')2変種を、対応する2コピーの軽(L)鎖に結合した縦列Fd断片の重(H)鎖VH-CH1-VH-CH1からなるように設計した(図5A)。Fd-Fd接合部では、CH1のC末端(...THT)がVHのN末端(EVQ...)に、無関係な連結タンパク質配列を伴うことなく直接結合している。これは、患者における潜在的な免疫原性の危険と血清プロテアーゼに対する感受性を最小限に抑えるための試みであった。リンカーを省略するこの方法の潜在的欠点は、抗原(Ag)に対するC末端結合部位の接近しやすさが損なわれるかもしれないということである。huMAb4D5-8 L-F(ab')2変種v1は、Ag,p185HER2ECDに対して2つの機能的結合部位を持つように設計した(図5A)。対照的に、huMAb4D5-8 L-F(ab')2v2及びv3は、単一のAg結合部位を持つように設計した。これは、L-F(ab')2v1中のVHの5'コピーか3'コピーを、抗CD18 Ab,huMAbH52 OZ(Eigenbrotら,上記)由来の対応部分で置換することによって達成した。huMAb4D5-8由来のL鎖とhuMAbH52 OZ由来のH鎖Fd断片とからなるFabを発現させ、精製したところ、予想通り、p185HER2ECDを結合しないことがわかった。抗体(Ab)断片の生産と試験管内での特徴づけ.二シストロン性オペロン(図5B)からL鎖と縦列H鎖Fd断片を同時に分泌させることにより、大腸菌中でL-F(ab')2変種を発現させた。対応する発現プラスミドを含有する大腸菌を培養器中で高細胞密度まで培養することにより、力価≧100mg/lの機能的(Ag結合性)huMAb4D5-8L-F(ab')2が得られた。対応する醗酵ペーストを完全に破壊することにより、大腸菌からL-F(ab')2を直接回収した後、ABXTM、低pH疎水相互作用及びサイズ排除クロマトグラフィーにかけた。内毒素濃度は精製タンパク質1mgあたり≦0.32内毒素単位と見積もられた。精製huMAb4D5-8 L-F(ab')2変種をF(ab')2及びFabと共に、SDS-PAGEで分析した。非還元条件下で、3種類のhuMAb4D5-8 L-F(ab')2とFab断片(Mr〜48kDa)は、予想される電気泳動移動度を持つ1つの主要バンドを示す。チオエーテル結合型F(ab')2断片(Mr〜96kDa)は、97kDa標品と比べて異常に遅い移動度を示す。還元条件下では、全てのhuMAb4D5-8 Ab断片が、遊離のL鎖について予想される〜23kDaの見かけ上の分子量を持つバンドを与える。さらに、L-F(ab')2とF(ab')2は、それぞれ縦列H鎖二量体及びチオエーテル結合型H鎖二量体の存在から予想される通り、〜48kDaのバンドを与える。Fab断片については、還元されたH鎖とL鎖は、使用した電気泳動条件では分割されない。p185HER2ECDに対するAb断片の結合の分析.huMAb4D5-8 Ab断片をp185HER2で滴定した後、サイズ排除クロマトグラフィーで分析することにより、Ab-Ag相互作用の化学量論を調べた(図6A〜6C)。huMAb4D5-8 L-F(ab')2v1とF(ab')2は、極めてよく似たp185HER2ECDによる滴定特性を示し、2等量の抗原を結合する(図6A及び6B)。Fab断片は、予想通り、1等量のAgを結合する(図6C)。L-F(ab')2v2及びv3は、1等量のAgのみを結合する。Agに対するhuMAb4D5-8 Ab断片の結合の親和性と速度を、固定化p185HER2ECDを用いる表面プラズモン共鳴によって調べた。下記表1を参照のこと。二価L-F(ab')2変種v1は、F(ab')2より3倍低い親和性でAgを結合する。これは主に、それぞれF(ab')2とL-F(ab')2間の会合速度のわずかな減少を反映している。一価L-F(ab')2変種v2及びv3は、二価L-F(ab')2変種v1より約3倍及び12倍弱い結合を示す。したがって、Ag結合の効率はC末端部位に関して見かけ上わずかに損なわれるものの、L-F(ab')2中の両結合部位は、p185HER2ECDを結合することができる。予想されるように、L-F(ab')2v2の結合親和性は対応するFab断片に極めてよく似ている。Ab断片の抗増殖活性.p185HER2を過剰発現させる乳癌細胞系BT474を用いて、huMAb4D5-8 Abの抗増殖活性を調べた(図7参照)。飽和量のL-F(ab')2v1及びチオエーテル結合型F(ab')2の存在下におけるBT474の増殖は、それぞれ無処理対象の約40%と55%である。したがって、L-F(ab')2v1は、BT474細胞の増殖の遮断に関して、チオエーテル結合型F(ab')2断片より強力である。一価L-F(ab')2v2及びv3の抗増殖活性は、二価L-F(ab')2変種v1のそれにほぼ等しく、Fab断片よりはるかに高い。正常マウスにおけるAb断片の薬物動力学的特徴づけ.正常なマウスの血清におけるhuMAb4D5-8 Fab、F(ab')2及びL-F(ab')2変種の経時変化を、複数の動物の連続的犠牲によって測定し、薬物動力学的変数の計算に使用した。下記表2を参照のこと。L-F(ab')2とチオエーテル結合型F(ab')2は、それらの薬物動力学的変数が極めてよく似ているが、Fab断片はより迅速に除去される。L-F(ab')2v1とチオエーテル結合型F(ab')2に関する永続時間は、Fab断片より、それぞれ7倍及び8倍大きい。配 列 表(1)一般的情報:(i)出願人:(A)ジェネンテク・インコーポレイテッド(ii)発明の名称:抗体精製(iii)配列の数:2(iv)連絡先:(A)宛名:ジェネンテク・インコーポレイテッド(B)通り:ポイント・サン・ブルーノ・ブールバード460番(C)市:サウス・サン・フランシスコ(D)州:カリフォルニア(E)国:アメリカ合衆国(F)ZIP:94080(v)コンピューター解読書式:(A)媒体型:3.5インチ,1.44Mbフロッピーディスク(B)コンピューター:IBM PC適合(C)オペレーティング・システム:PC−DOS/MS−DOS(D)ソフトウェア:WinPatin(ジェネンテク)(vi)本出願のデータ:(A)出願番号:(B)出願日:1995年4月20日(C)分類:(viii)弁理士/代理人情報:(A)氏名:リー、ウェンディ・エム(B)登録番号:00,000(C)参照/整理番号:P0941PCT(ix)電話連絡先情報:(A)電話番号:415/225−1994(B)ファックス番号:415/952−9881(C)テレックス:910/371−7168(2)配列番号1の情報:(i)配列の特徴:(A)長さ:214アミノ酸(B)型:アミノ酸(D)トポロジー:直鎖状(xi)配列:配列番号1:(2)配列番号2の情報:(i)配列の特徴:(A)長さ:232アミノ酸(B)型:アミノ酸(D)トポロジー:直鎖状(xi)配列:配列番号2: 正しく折りたたまれジスルフィド結合した抗体と正しく折りたたまれないか、もしくは、正しくジスルフィド結合していない抗体とを含有する混合物を、疎水相互作用クロマトグラフィーカラムに添加し、そのカラムから2.5〜4.5のpHを持つ緩衝液で抗体を溶出させることを含んでなる、正しく折りたたまれジスルフィド結合した抗体を精製する方法。 カラムに添加する混合物のpHが2.5〜4.5である請求項1の方法。 カラムに添加する混合物が0〜0.25Mの塩濃度を持つ請求項1の方法。 カラムに添加する混合物が0〜0.1Mの塩濃度を持つ請求項3の方法。 緩衝液が0〜0.25Mの塩濃度を持つ請求項1の方法。 緩衝液が0〜0.1Mの塩濃度を持つ請求項5の方法。 抗体がキメラである請求項1の方法。 抗体がヒト化されている請求項7の方法。 抗体が抗体断片からなる請求項1の方法。 抗体断片がF(ab')2断片からなる請求項9の方法。 緩衝液が2.8〜3.5のpHを持つ請求項1の方法。 緩衝液が3.1のpHを持つ請求項11の方法。 疎水相互作用クロマトグラフィーカラムがフェニルアガロースカラムである請求項1の方法。 精製される抗体が正しくジスルフィド結合している請求項1の方法。 不適切にジスルフィド結合した抗体から抗体を精製する請求項1の方法。 不適切にジスルフィド結合した抗体が抗体断片である請求項15の方法。 請求項1に記載の抗体の精製法であって、該抗体が2つの軽鎖断片と結合した直線型VH-CH1-VH-CH1重鎖断片を含み、CH1のC末端が重鎖断片のFd-Fd接合部においてVHのN末端と直接連結される抗体断片である抗体の精製方法。 正しく折りたたまれジスルフィド結合した抗体断片の製造方法において、該抗体断片が2つの軽鎖断片と結合した直線型VH-CH1-VH-CH1重鎖断片を含み、CH1のC末端が重鎖断片のFd-Fd接合部においてVHのN末端と直接連結されており、重鎖断片及び軽鎖断片をコードする核酸を含む宿主細胞を培養し、核酸を発現させ、宿主細胞培養から、正しく折りたたまれないか、もしくは、正しくジスルフィド結合していない抗体を含有する混合物を疎水相互作用クロマトグラフィーカラムに添加し、そのカラムから2.5〜4.5のpHを持つ緩衝液で抗体を溶出させることにより、正しく折りたたまれジスルフィド結合した抗体断片を回収することを含んでなる方法。