生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_トロンビンの調製
出願番号:1996525511
年次:2006
IPC分類:C12N 9/74,C12N 9/96,A61K 38/46,A61P 7/04


特許情報キャッシュ

マックグレゴー イアン ランドル ハーディー ジョン チャールズ ドラモンド オリーヴ JP 3819935 特許公報(B2) 20060623 1996525511 19960223 トロンビンの調製 コモン サーヴィシス エージェンシー 中村 稔 大塚 文昭 宍戸 嘉一 竹内 英人 今城 俊夫 小川 信夫 村社 厚夫 浅井 賢治 マックグレゴー イアン ランドル ハーディー ジョン チャールズ ドラモンド オリーヴ GB 9503750.3 19950224 20060913 C12N 9/74 20060101AFI20060824BHJP C12N 9/96 20060101ALI20060824BHJP A61K 38/46 20060101ALN20060824BHJP A61P 7/04 20060101ALN20060824BHJP JPC12N9/74C12N9/96A61K37/54A61P7/04 C12N 9/74 特開平05−186369(JP,A) 特開平03−218322(JP,A) 特開平07−308190(JP,A) 24 GB1996000423 19960223 WO1996026269 19960829 1999500619 19990119 12 20030219 深草 亜子 発明の分野本発明は、トロンビン、特にヒトトロンビンの新規な製造方法、及び存在するウイルスを不活性化するために加熱処理してもよい、凍結乾燥形態で製造することのできるトロンビン調製物に関する。発明の背景トロンビンは、血漿中でのプロトロンビンの第Xa因子による活性化生成物である。トロンビンは、フィブリノーゲンをフィブリンに変換し、第XIII因子を活性化することによりフィブリンの架橋を促進する、潜在的に広範囲な特異的セリンプロテイナーゼである。また、他の観察された多くの生物学的活性の中で、トロンビンは、凝固カスケード内でいくつかのフィードバックループを制御し、血小板放出反応を引き起こす(1,2)。トロンビンは、局所止血剤として長年用いられてきた。しかし、トロンビンの臨床使用が拡大すると思われるのは、フィブリン封止剤(フィブリン接着剤)の構成成分としてである。トロンビンは、切り口又は移植片上でフィブリノーゲンをフィブリンに変換するためのフィブリン封止剤中で用いられ、多くの外科的応用が外科的専門の広い範囲で記述される(3,4)。典型的な、局所止血剤として又は市販のフィブリン封止剤生成物の構成成分として、ウシトロンビンが、現在広く用いられている。このようなトロンビン生成物は生物学的に活性であるけれども、通常は繰り返し使用した後、ウシトロンビン又はウシ第V因子等の不純物に対するアレルギー応答及び抗体の誘導の十分裏付けのある危険性と関係する(5,6及び7)。Ortelら(8)は、最近、このような後天性凝固因子阻害剤は、おそらく現在理解されるより一般に起こりやすく、頻繁に臨床上良性であるとしても、これらの阻害剤は生命を脅かす(life-threatening)出血に関係するかもしれないと結論した。この理由のため、局所止血剤又はフィブリン封止剤生成物に包含するために用いるのに適したヒトトロンビンを生成する方法の開発が求められている。本来的に、トロンビンは、プロトロンビン(第II因子)が活性化第X因子、活性化第V因子、リン脂質及びカルシウムイオンによってトロンビンに変換されたときに形成される。プロトロンビンのトロンビンへの変換は、一部の関係する成分なしでも起こるが、変換の速度は望ましくないほど遅い。in vitroにおけるプロトロンビンを変換する3つの主要な方法が当業界において知られている。第1の方法は、トロンボプラスチンの使用による。プロトロンビンは、好ましくは塩化カルシウムの存在下でトロンボプラスチンの使用によりトロンビンに変換する。このことは、EP0439156A及びEP0505604A等の多くの特許明細書に記載されている。この方法の不利な点は、トロンボプラスチンが通常、新鮮な均質化した脳、肺又は腸組織から得られた、粗調製物であることである。これらの出所に依存して、ウイルス又は交差種汚染物質の危険を有し得るので、この手法は試薬としてのヒトトロンビンの調製に適していない。第2の方法はトロンビンを得るために蛇毒のいくつかの成分を利用する(9,10,11)。しかし、いくつかの蛇毒が、天然の活性化剤である第Xa因子のようにプロトロンビン内の同一の結合を切断しないことが報告されている(12)。従って、トロンビンの非生理学的形態を臨床的に用いる場合には、危険性を含むかもしれない。第3のin vitroの方法は、本質的にin vivoの方法と同じであり、この場合、プロトロンビンは、ほぼ生理学的条件に近い条件下で活性化第X因子、第V因子、リン脂質及びカルシウムイオンによってトロンビンに変換される。このことは、例えば、EP0528701、EP0378798及び米国特許5,219,995号明細書に記載されている。しかし、得られたトロンビンは、トロンビンを安定化するための外因性蛋白質、ポリオール及び/又は糖を添加しないと、しばしば不安定である。ヒトトロンビンは献血から得られた血漿に由来するので、最初の献血中のウイルスの存在によるトロンビンの汚染の危険がある。従って、診療に使用するために設計されたヒトトロンビンの調製物は、使用前にウイルスの不活性化工程に付すべきである。溶剤−洗浄剤処理によるウイルスの不活性化は既に開示されている(13)。しかし、トロンビンの調製物は、溶剤−洗浄剤を除去するために更なる精製工程に付す必要があるかもしれない。他の研究者は、例えば、EP0378798及びEP0543178に、ウイルス/不活性化プロトロンビン供給原料の使用を開示したが、それらから調製したトロンビン生成物のウイルス/不活性化方法は開示していない。生成物の終末(例えば、方法の最終工程)ウイルス/不活性化は、再汚染の機会を最小限にするので、多分ウイルス不活性化の最も安全かつ最も効果的なウイルス/不活性化方法であると見られる。従って、当業界において、特に加熱処理により最終的にウイルス/不活性化された、不活性化されたトロンビンが必要である。一般的に言えば、本発明は、プロトロンビンが酸性条件下で高収率でトロンビンに変化し、酸性条件が生成したトロンビンの安定性を促進するという驚くべき発見に基づく。発明の要約即ち、本発明の第1の特徴は、プロトロンビン、第Xa因子、第Va因子及びリン脂質を含む混合物を、7.0未満のpHで、カルシウムイオンにより処理することからなるトロンビンの調製方法を提供する。一般に、プロトロンビン、第Xa因子、第Va因子及びリン脂質を含む混合物は、ヒト血漿の低温沈殿の上清(血漿を凍結融解することによって作られる)から得ることができる。混合物は、低温沈殿した血漿の上清のクロマトグラフィー精製、一般には陰イオン交換クロマトグラフィーにより得ることができる。更に詳細には、臨床の第IX因子濃縮物の製造のために用いられるかもしれない低温沈殿した血漿の吸収された上清のDEAE−セルロースの溶出物は、トロンビン生成物の混合物として役立つ(14)。上記混合物は、第X因子、第V因子、第IX因子、第IXa因子等の付加的な凝固因子、及び極微量のトロンビンを含むかもしれない。先行技術(例えば、EP0378789及びEP0528701)は、既に生理的条件又はその付近において(pH7.0〜7.3)プロトロンビンを含む混合物に低濃度のカルシウムイオン(5〜25mM)を添加することを教示し、EP0528701はCaCl2の高濃度の添加がトロンビンの調製を阻害することを開示している。プロトロンビンのトロンビンへの変換が、生理的な条件に近い条件で最も良く進行することが予想される。従って、トロンビンが7.0未満のpHで特に良い収率で得られることは本発明の驚くべき特徴である。好ましくはpHは6.0〜7.0であり、更に好ましくはpH6.4〜6.6である。前提とする理論に制限されることを望むことなしに、7.0未満のpHが、生成されたトロンビンの自動分解を制限することが教示される。一般に、7.0未満のpHは、50mM〜90mM、更に好ましくは60mM〜80mM、最も好ましくは65mM〜75mMの濃度でCa2+イオン(特にCaCl2)を混合物に添加することによって形成される。特定の範囲でのCaCl2の添加により、一般に必要とされるpHに到達するに十分であるかもしれない、混合物のpHが低下する。また、プロトロンビンのトロンビンへの変換を開始するためのCa2+イオンの添加の前に、要求される範囲で緩衝化する公知の適当なバッファーにより、混合物はpH6.0〜7.0、好ましくはpH6.4〜6.6に緩衝化される。適当なバッファーとしては、例えばMES(2−〔N−モルホリノ〕エタンスルホン酸);ACES(2−〔2−アミノ−2−オキソエチル)アミノ〕エタンスルホン酸);BES(N,N−ビス〔2−ヒドロキシエチル〕−2−アミノエタンスルホン酸);MOPS(3−〔N−モルホリノ〕プロパンスルホン酸);TES(N−トリス〔ヒドロキシメチル〕メチル−2−アミノエタンスルホン酸)及びHEPES(N−〔2−ヒドロキシエチル〕ピペラジン−N−〔2−エタンスルホン酸)等が含まれる。実質的に全てのプロトロンビンをトロンビンに変換するために、変換は、効果的な変換のために適当な温度で一定の時間行われる。典型的には、変換は12〜24時間、更に好ましくは16〜20時間行なうべきである。変換は室温、典型的には18〜25℃で行われ、より高い温度は必要でない。この方法で調製されたトロンビンは、一般に4000〜9000単位/mlのトロンビン凝固活性及び250〜700単位/mgの比活性を有する。これは、EP0528701に記載された方法により得られたトロンビンの活性(700〜1000単位/mlの凝固活性及び20〜40単位/mgの比活性)よりもかなり高い。トロンビン調製物中には、最初のDEAE−セルロース溶出物中の汚染物質として存在するフィブリノーゲンに対する生成したトロンビンの作用により、及び不溶性リン酸カルシウムの作用により、おそらく、フィブリンが生成することによる、不要な不溶性物質が見出される。該不溶性物質は、遠心又はろ過工程により除去することができる。しかし、ある場合には調製物は大変粘稠であるので、粘度を減少するために好ましくはトロンビン調製物を希釈する。トロンビン1容量に対して3容量までのバッファーによる希釈が一般に行われ、例えば、pH6.0〜7.0の範囲で用いられるのに適当な3容量バッファーが用いられる。典型的なバッファーは、pH6.5において、40mMグルコン酸ナトリウム又は20mMMESを含む。次いで、不溶性物質を除去するために、希釈された調製物を遠心又はろ過する。又は、希釈バッファーとしては、20mMクエン酸塩(citrate)、pH6.5を用いてもよい。これにより、不溶性リン酸カルシウムの溶解性による遠心又はろ過の必要がなくなる。希釈されたトロンビン調製物は、直後の更なる工程を行なうのに適しており、又は、実質的な凝固活性の損失なしに−40℃で少なくとも6ヶ月間保存することができる。また、希釈された材料は、中間精製調製物として配合し、凍結乾燥してもよい。250単位/mg〜700単位/mgのトロンビン調製物の比活性は、4000トロンビン単位/mgの純粋なα−トロンビンの比活性と比較して約6%〜17.5%の純度に相当する。これはほとんどの臨床例に十分であるが、トロンビン調製物を更に高純度のトロンビンを生産するための工程に付すことは可能である。更なる工程は、トロンビンのクロマトグラフィー精製と、クロマトグラフィー精製の前の任意の溶媒/洗浄剤ウイルス不活性化工程からなる。適当な溶媒/洗浄剤ウイルス/不活性化工程はEdwardsら(13)によって既に開示されている。クロマトグラフィー精製は、一般に陽イオン交換クロマトグラフィーにより行われる。用いてもよい典型的な陽イオン交換樹脂は、Mono-s(登録商標)、S−セファロースFF(登録商標)及びS−セファロースBig Beads(登録商標)であるが、他のスルホネートゲル又は他の陽イオン交換樹脂を用いてもよい。クロマトグラフィー工程により、溶媒及び洗浄剤が除去され、ウイルス不活性化工程が実施されればトロンビン調製物が精製される。典型的には、トロンビン調製物が陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合し、精製トロンビンは塩濃度を増加させた適当なバッファーを用いて溶出される。適当なバッファーとしては、例えば20mMクエン酸塩 pH6.5、20mM MES pH6.5及び40mMグルコン酸 pH6.5が含まれる。精製トロンビンの活性を維持するためには、バッファーのpHは好ましくはpH6.0〜7.0の範囲であり、更に好ましくはpH6.4〜6.6の範囲である。通常、いくつかの塩は与えられた陽イオン交換樹脂で溶出することに適しており、典型的にはNaClを含む。溶出した精製トロンビンの濃度は、樹脂に結合する量に直接依存するが、典型的には4000〜9000単位/mgの精製トロンビン濃度が得られる。これらの濃度の低い範囲も、次の凍結乾燥のための配合バッファーで適当に希釈するのに適している。精製トロンビンは溶出バッファー中で直接凍結することができ、トロンビン活性の実質的な損失なしに6ヶ月間保存できる。しかし、保存の容易さのためにトロンビン精製中間体及び精製トロンビンは凍結乾燥することが望ましい。凍結乾燥は、しばしばトロンビン(トロンビン精製中間体及び精製トロンビン)活性の損失を起こすので、トロンビンを配合バッファーに配合させることが重要である。この配合バッファーは凍結乾燥の間にトロンビンを安定化することを補助する。トロンビンを配合する前に、不溶性物質を除去するためにトロンビンを遠心及び/又はろ過することが望ましい。該技術は、既に例えばグリセロール、マンニトール及びソルビトール等のポリオール;スクロース及びグルコース等の糖及び/又はアルブミン等の外因性蛋白質等の安定化剤のトロンビン調製物への添加が、トロンビン調製物の安定化、特に凍結乾燥の間の安定化に好ましいことを開示している。従って、ポリオール、糖、蛋白質及びこれらの混合物等の安定化剤の添加なしで実質的に安定にトロンビンが得られるという本発明の特徴は驚くべきことである。従って、別の特徴において、本発明はトロンビン調製物を提供し、該調製物はpH7.0未満のpHで緩衝化され、外因性安定化剤(蛋白質、糖、ポリオール及びこれらの混合物等)を実質的に含まないトロンビンからなる。一般に、トロンビン調製物は凍結乾燥され任意に加熱処理される。従って、更なる特徴によれば、本発明は、蛋白質、糖又はポリオール及びこれらの混合物等の外因性安定化剤を実質的に含まない、凍結乾燥され、任意に加熱処理されたトロンビン調製物を提供する。好ましくはトロンビン調製物はpH6.0〜7.0、更に好ましくはpH6.4〜6.6に緩衝化される。これは、例えば適当なpH範囲の40mMグルコン酸又は20mMMESバッファーにより達成される。好ましくは、トロンビン調製物は、更に10mM〜30mM濃度の範囲のクエン酸塩、典型的にはクエン酸ナトリウムを含有する。更に好ましくは、調整物は、更に100〜250mM、例えば100〜200mM濃度の塩化ナトリウムを含有する。グルコン酸又はMESに加えて、クエン酸塩及び塩化ナトリウムを含有するトロンビン調製物は、凍結乾燥及び任意の加熱処理に対して最も安定であることが分かった。即ち、トロンビン調製物は、凍結乾燥及び任意の加熱処理後に凝固活性の最大の割合を維持している。凍結乾燥は、好ましくは2段階凍結工程を用いて行われる。次いで、凍結生成物は−20℃〜−30℃の棚温度で第1の乾燥がなされ、+15℃〜+30℃の棚温度で第2の乾燥がなされる。次いで、凍結乾燥トロンビン調製物はウイルス汚染を不活性化するために加熱処理してもよい。典型的には、乾燥加熱処理は、70〜100℃の間の温度で96時間まで行われる。特に好ましい加熱処理は約80℃で約72時間である。好ましい態様の詳細な説明本発明の態様を、添付図面を参照しながら、実施例により詳述する。実施例の項実施例1−DEAE−セルロースによる、プロトロンビン、第Xa因子、第Va因子及びリン脂質を含む混合物の調製450lの低温沈殿した血漿をpH6.9±0.05に調整し、発熱物質を含まない水150lで最終容量600lに希釈した。次いで、6kgのDEAE−セルロースゲル(DE-52 Whatman)を血漿/水溶液に加え、得られた懸濁液を1時間連続して混合し、凝固因子をゲルに結合させた。次いで、ゲルを遠心によって集め、上清を捨てた、次いで、ゲルを30mMクエン酸塩、30mMリン酸塩 pH6.9バッファーに再懸濁し、得られた懸濁液をクロマトグラフィーカラムに注いだ。次いで、カラムを21lの同じバッファーで洗浄することにより満たした。次いで、凝固因子を30mMクエン酸塩、30mMリン酸塩、200mM NaCl、pH6.9で溶出した。次いで、溶出プール(3.1l)を無菌の瓶にろ別(0.45μmポアサイズ)して凍結した。溶出プールは多量のプロトロンビン(第II因子)を含有している(80μMで全蛋白質の約25%)。また、溶出プールは、第IX因子及び第X因子を活性及び不活性型(約5μM)で、凝集活性リン脂質、本質的な凝固経路によりプロトロンビンをトロンビンに生理的に変換させるのに十分な第V因子及び第VIII因子を微量含有している。実施例2−トロンビン精製中間体の調製凍結したDEAE−セルロース溶出物(実施例1により調製したもの)を室温で、又は37℃の水浴中で融解した。(溶出物の典型的な値は以下の通りである:導電率=17mS;pH=7.0;30mMクエン酸塩;30mMリン酸塩;200mMナトリウム;200mM塩化物;15mg/ml全蛋白質;及びプロトロンビン60単位/ml)次いで、1M CaCl2溶液を、融解した溶出物に対して、溶出物1000ml当たり75mlCaCl2の割合で、20℃で攪拌しながら滴下して加えた。この結果は、最終カルシウム濃度は70mMとなり、混合物のpHはpH6.4〜6.6に低下した。反応を20℃で18時間、一晩攪拌して進め、プロトロンビンをトロンビンに変換した。15の実験において、トロンビン凝固活性は6,333±1,146単位/ml(平均±SD)及び比活性は508±110単位/mg(図1参照)であった。SDSPAGEは、活性化の終わりに、全てのプロトロンビンのバンドがトロンビンと同じ移動度のバンドに有効に変換したことを示した。トロンビン凝固活性は、肉眼検出、及び二重試料を使用して室温におけるフィブリノーゲンの凝固時間により測定した。100mM CaCl2及び0.1w/v%ウシ血清アルブミンを追加した50mM Tris-HCl、100mM NaCl pH7.5で希釈した標準(1〜4単位/ml)又はトロンビンの試験溶液を、50mM Tris-HCl、100mM NaCl pH7.5中の5mg/ml濃度のヒトフィブリノーゲン溶液200μlに加え、それに続く凝固形成時間を記録した。標準カーブは、ヒトα−トロンビン標準89/588に対して標準化したウシトロンビンを用いた凝固時間(秒)のlog10に対してトロンビン濃度(単位/ml)のlog10をプロットすることにより作製した。試験試料のトロンビン凝固活性は、標準カーブからの外挿法により求めた(15)。実施例3−活性化の際の反応溶液のpHの変化の影響実施例1で記載した工程に従って、混合物のpHを7.0〜7.2にした。これは、CaCl2を70mMになるように添加することにより直ちに6.5に減少した。次いで、変換の間(18時間)にpHを6.1〜6.3に一様に減少した。pHを低下させることは、高活性のトロンビンの成功裡の生成のために必要であった。このことは、CaCl2の添加後ただちに溶液のpHがpH7.0〜pH7.5に調整される比較実験により証明された。ここで、反応の終わりにおける最終pH値は、それぞれpH6.7及びpH7.1であり、トロンビン活性の非常に低い量が生成された(表1参照)。更なる実験においては、CaCl2の添加直後に混合物をpH6.5に緩衝化した(20mM MES)。これの結果、トロンビンへの変化がわずかに増加したが、凝固活性の増加は取るに足らないものであった。実施例4−プロトロンビンのトロンビンへの変換に用いる時間の長さ又は温度の変化の影響プロトロンビンのトロンビンへの変換のための最適のタイムコース(time course)を決定するための研究を行った。16時間及び24時間で生成されたトロンビンの量の比較は、16時間で頭打ち(プラトー)になることを示した。また、研究は、この工程がこのタイプの供給原料で有用な収量を得るために必要であるという報告(欧州特許出願第92401889.8号)を考慮して、それに続く室温でのインキュベーションの前の37℃におけるインキュベーションの影響を決定するための研究を行った。トロンビン生成の初速度は室温で得られるものを越えるが、トロンビンの最終収量は、室温での変換に比して16又は24時間では良くないことが分かった。実施例5−トロンビン生成に対するカルシウムイオン濃度の変化の効果添加したカルシウムイオン濃度(DEAE−セルロース溶出物の7つのバッチ)の範囲での24時間におけるトロンビン生成量を決定した(図2)。70mMのカルシウムの添加がプロトロンビンのトロンビンへの有効な変換を一様に生ずることが見出された。実施例6−溶媒/洗浄剤によるウイルス不活性化実施例2で得られたトロンビンを、0.3%トリ−(n−ブチル)ホスフェート及び1%Tween 80溶液と20〜30℃の温度で6〜24時間攪拌することにより混合した。これは、汚染性の脂質で包まれたウイルスを不活性化するのに十分であった。溶媒/洗浄剤はクロマトグラフィーにより除去した。実施例7−トロンビン精製中間体のクロマトグラフィー精製クロマトグラフィー工程は、溶媒及び洗浄剤を除去し、及びトロンビン精製中間体を精製するために作用する。1.6cmの直径のクロマトグラフィーカラムに、直線流速2.2cm/分(4.5ml/分と同等)において、S−セファロースFF(登録商標)10mlを、40mMグルコン酸及び20mM MES、又は20mMクエン酸塩(全てpH6.5)を用いて詰めた。100mlの溶媒/洗浄剤で処理した、実施例6のトロンビン又は実施例2のトロンビン精製中間体を、平衡化バッファーで1+3に希釈して、0.45μmでろ過して同じ流速でカラムにのせた。次いで、カラムを280nmの吸収がベースラインに戻り、カラム流出液中の溶媒又は洗浄剤が許容範囲内の低濃度より低く見つけられるようになるまで、平衡化バッファーで洗浄した(典型的には約150ml)。次いで、0.5M NaClを含む平衡化バッファーでカラムを洗浄することによりトロンビンを溶出させた。精製トロンビンは、典型的には4000単位/ml及び2mg/ml蛋白質の濃度で約25mlで得られた。クロマトグラフィー工程後の精製トロンビンの典型的な収率は88±16%であった。この収率は、実施例6に記載された、溶媒/洗浄剤不活性化工程にかけていないトロンビン調製物に対するものである。実施例8−配合、凍結乾燥及び最後の乾燥加熱処理実施例2又は6で得られたトロンビンを室温で3,000rpm、20分間遠心し、次いでミリポア(Millpore)プレフィルター(AP25)、次いでWhatman0.2μmフィルター(Polydisc AS)でろ過した。次いで、ろ過した溶液を配合バッファー(40mMグルコン酸又は20mM MES、20mMクエン酸三ナトリウム、150mM NaCl、pH6.5)でトロンビン活性が600単位/mlになるように希釈し、凍結乾燥のためにガラス瓶に2mlずつのロットに分配した。凍結乾燥は、Super-Modulyo(Edwards,Crawler)凍結乾燥機で、−45℃にセットした凍結温度で、次いで−25℃にセットした第1の乾燥温度、及び+20℃にセットした第2の乾燥温度で行った。次いで、汚染ウイルスを不活性化するために、瓶を80℃で72時間加熱処理した。実施例9−種々の配合バッファーのトロンビンに対する安定化効果の比較凍結乾燥及びそれに続く加熱処理(ウイルスの不活性化)の際のトロンビンの安定化のための最適な配合バッファーを決定するために、トロンビンを種々の配合バッファーに配合した。実施例2で得られたトロンビン精製中間体、及び実施例7で得られた精製トロンビンを、種々の配合バッファー(表2に記載した)でトロンビン濃度が600単位/mlとなるように希釈した。次いで、トロンビン調製物を実施例8と同様に凍結乾燥し、凍結乾燥したトロンビンの量を80℃で72時間加熱処理した。凍結乾燥及びそれに続く加熱処理後に保持している凝固活性の割合を調べるために、前述したようにトロンビン凝固活性を決定した。結果を表2に示す。表2から、20mMクエン酸三ナトリウム及び/又は150mM塩化ナトリウムを含むか含まない20mM tris-HCLバッファーpH7.2からなる配合バッファーは、凍結乾燥後74%以上のトロンビン凝固活性の回復を生じることが示された。しかし、後の加熱処理において、特にクエン酸三ナトリウムの不存在下で大きな活性の損失が見られる。配合バッファー中に塩化ナトリウムを配合すると、物質の完全なプラグを生じ、一方、塩化ナトリウムなしでは、プラグは撤回され崩壊する。バルクとして機能し、かつプラグ構造及び外観を向上させるために、配合バッファーに蛋白質(例えば、ヒトアルブミン)を0.5g/l〜10g/lの濃度で含有させることができる。配合バッファーをpH6.5に緩衝化されたグルコン酸又はMESを用いて酸性にすると、乾燥加熱処理後のトロンビン凝固活性は実質的に向上した。グルコン酸バッファー配合を用いて長期安定性を調べた(表2参照)。これらの研究は、凍結乾燥及び加熱処理後、4℃及び37℃でいくつかの瓶を保存することにより行った。37℃で保存したトロンビンと4℃で保存したトロンビンを比較したとき、6ヶ月間でトロンビン凝固活性の損失は見られなかった。参考文献1. 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Haemostats. 67:424-427. プロトロンビン、第Xa因子、第Va因子及びリン脂質を含む混合物を、pH6.0〜7.0で、50mM〜90mMのカルシウムイオンにより処理することを特徴とする、トロンビンの調製方法。 上記混合物が血漿の低温沈殿の上清から得られる、請求の範囲第1項に記載の方法。 上記混合物が低温沈殿した血漿の上清のクロマトグラフィー精製により得られる、請求の範囲第2項に記載の方法。 pHが6.4〜6.6である、請求の範囲第1項〜第3項の何れか1項に記載の方法。 カルシウムイオン濃度が60mM〜80mMである、請求の範囲第1項〜第4項の何れか1項に記載の方法。 カルシウムイオン濃度が65mM〜75mMである、請求の範囲第1項〜第4項の何れか1項に記載の方法。 カルシウムイオンを添加する前に前記pHに上記混合物が緩衝化される、請求の範囲第1項〜第6項の何れか1項に記載の方法。 1容量のトロンビン調製物を3容量までのバッファーで希釈することにより希釈されたトロンビン調製物を形成する工程を更に含み、上記バッファーがpH6.0〜7.0の範囲での使用に適している、請求の範囲第1項〜第7項の何れか1項に記載の方法。 上記バッファーが10mM〜30mMのクエン酸塩を含む、請求の範囲1〜7のいずれかに記載の方法。 上記バッファーが実質的に20mMのクエン酸塩を含みかつpHが6.5である、請求の範囲第9項に記載の方法。 上記バッファーが100mM〜250mMの塩化ナトリウムを含む、請求の範囲第9又は10項に記載の方法。 上記バッファーが0.5g/l〜10g/lの濃度の外因性蛋白質を含む、請求項11に記載の方法。 トロンビン調製物が、20mMのMES又は20〜40mMのグルコン酸で、pH6.4〜6.6に緩衝化されている、請求の範囲第1項〜第12項の何れか1項に方法。 望ましくない不溶性物質を除去するために、希釈されたトロンビン調製物を更に遠心又はろ過する工程を含む、請求の範囲8又は9に記載の方法。 高純度のトロンビンを得るための更なる工程を含み、該更なる工程が、クロマトグラフィー精製を含み、高純度のトロンビンがpH6.0〜7.0の適当なバッファーを用いて溶出される、請求の範囲第8項〜第10項の何れか1項に記載の方法。 上記クロマトグラフィー精製の前に、更に、溶媒/洗浄剤ウイルス不活性工程を含む、請求の範囲第15項に記載の方法。 請求の範囲第1項〜第16項の何れか1項に記載のトロンビンを調製し、該トロンビンを凍結乾燥することを特徴とする凍結乾燥トロンビンの調製方法。 ウイルス汚染を不活性化するために、上記凍結乾燥トロンビンを加熱処理する工程を更に含む、請求の範囲第17項に記載の方法。 上記加熱処理工程が、70℃〜100℃の温度で96時間までの時間での乾燥加熱処理である、請求の範囲第18項に記載の方法。 上記加熱処理工程が、80℃で72時間での加熱処理である、請求の範囲第19項に記載の方法。 前記凍結乾燥が、−20℃〜−30℃の棚温度での第1の乾燥と、+15℃〜+30℃の棚温度での第2の乾燥とを含む2段階凍結工程である、請求の範囲第17項〜第20項の何れか1項に記載の方法。 前記トロンビンが、ヒトトロンビンである、請求の範囲第1項〜第21項の何れか1項に記載の方法。 前記トロンビンが、外因性安定剤を実質的に含まない、請求の範囲第1項〜第22項の何れか1項に記載の方法。 外因性安定剤を添加する工程を更に含み、該外因性安定剤が、蛋白質、ポリオール及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求の範囲第1項〜第22項に記載の方法。


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