タイトル: | 特許公報(B2)_エトポシド類の製造法 |
出願番号: | 1996336297 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C07H 17/04,B01J 31/22,C07H 1/00,C07B 61/00 |
房内 幸博 好川 博 JP 3904270 特許公報(B2) 20070119 1996336297 19961203 エトポシド類の製造法 日本化薬株式会社 000004086 房内 幸博 好川 博 JP 1995345114 19951208 20070411 C07H 17/04 20060101AFI20070322BHJP B01J 31/22 20060101ALI20070322BHJP C07H 1/00 20060101ALI20070322BHJP C07B 61/00 20060101ALN20070322BHJP JPC07H17/04B01J31/22 ZC07H1/00C07B61/00 300 C07H CASREACT(STN) 特開平07−196680(JP,A) 特開平02−295996(JP,A) 特公昭63−028438(JP,B1) 特開平05−178880(JP,A) 特開平05−306293(JP,A) 特表平06−509334(JP,A) 11 1997216894 19970819 10 20021225 伊藤 幸司 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は(1)抗腫瘍剤として広く使用されている4’−デメチル−4−エピポドフィロトキシン−β−D−エチリデングルコシド(以下エトポシドと称す)および(2)その糖部分の水酸基をアミノ基に置き換えた水溶性誘導体(以下アミノエトポシドと称す)及び(3)それらの化合物の官能基が保護されているものの製造法に関する。【0002】【従来の技術】後記式(1)で示される保護基を付した4’−デメチル−4−エピポドフィロトキシンと後記式(2)で示される保護基を付した糖を三ふっ化ほう素ジエチルエ−テル錯体等を触媒として反応させ、後記式(3)の官能基の保護されたエトポシド類を得る方法において溶媒としてジクロロメタン、またはクロロホルム等のハロゲン系溶媒が好適に使用されている(特開平2−292295号、同2−295996号、特公昭63−28438号等)。【0003】【発明が解決しようとする課題】近年、ハロゲン溶媒の人に対する発癌性や環境への有害性から非ハロゲン系溶媒への変換が望まれている。しかしながら本反応系で非ハロゲン系溶媒を使用し、同様の条件で反応を行った場合、目的とするβ−グルコシド体の他にα−グルコシド体が多く副生してくることがわかった。α−グルコシド体の生成は目的物の収量の低下のみならず品質の低下を来すので極力その生成を抑える手段が望まれる。【0004】【発明が解決するための手段】本発明者らはα−グルコシド体の生成を抑制する方法を種々検討した結果、エーテル類を反応系に共存させることによりα−グルコシド体の生成を顕著に抑制することができることを見出し本発明の完成にいたった。【0005】即ち、本発明は次の(1)〜(14)に関する。(1)式(1)【化5】(式中R1 は水酸基の保護基を示す)で示される4’−デメチル−4−エピポドフィロトキシンと式(2)【0006】【化6】(式中R2 は水酸基の保護基を示しX1 は保持基の付いた水酸基またはアミノ基である)で示されるグルコース誘導体またはグルコサミン誘導体を、有機溶媒及びエーテル類の存在下に反応させて式(3)【0007】【化7】(式中R1,R2 およびX1 は前記と同一である)で示される官能基の保護されたエトポシド類を得、必要に応じて脱保護することを特徴とするエトポシド類の製造法。【0008】(2)反応触媒として三ふっ化ほう素ジ低級アルキルエーテル錯体又はトリ(C1〜C4)アルキルシリルトリフルオロメタンスルホネートを使用する(1)記載の製造法。(3)エーテル類が1−5個のエーテル基及び2−6個の、炭素数1−6の鎖状もしくは環状炭化水素残基を含むモノ又はポリエーテルである(1)記載の製造法。【0009】(4)モノ又はポリエーテルが下記式(4)【化8】(式中nは0ないし4の整数であり、R3 、R5 はそれぞれ独立に炭素数1−4のアルキル基、R4 は炭素数2−4の直鎖又は分岐のアルキレン基を示す)で示されるエーテルである(3)記載の製造法。(5)有機溶媒として非ハロゲン系溶媒を用いる(1)記載の製造法(6)非ハロゲン系有機溶媒としてアセトニトリル単独もしくはアセトニトリルと芳香族系溶媒との混合溶媒を用いる(1)に記載した製造法。(7)有機溶媒としてアセトニトリル単独もしくはアセトニトリルおよびベンゼンもしくはトルエンもしくはキシレンとの混合溶媒を用いる(6)に記載した製造法。(8)水酸基の保護基が低級アルキルカルボニル基又は1ないし3個のハロゲン原子で置換された低級アルキルカルボニル基である(1)記載の製造法。(9)水酸基の保護基がアセチル基又は1ないし3個のハロゲン原子で置換されたアセチル基である(8)記載の製造法。(10)R1 及びR2 における水酸基の保護基が1ないし3個のハロゲン原子で置換されたアセチル基、X1 が水酸基の場合1ないし3個のハロゲン原子で置換されたアセチル基で保護され、またアミノ基の場合ベンジルオキシカルボニル基で保護され、有機溶媒がアセトニトリル単独もしくは芳香族系溶媒との混合溶媒、エーテル類がエチレングリコールジメチルエーテルであり、反応触媒として、三ふっ化ほう素ジエチルエーテルを使用する(1)記載の製造法。(11)エーテル類が(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類であり、その使用量が有機溶媒に対して1〜50%である(10)記載の製造法。(12)ハロゲン化合物の含量が50ppb以下であるエトポシド。(13)4’−デメチル−4−エピポドフィロトキシンの二量体を実質的に含まない(12)記載のエトポシド。(14)エトポシドのα−グルコシド体を実質的に含まない(12)記載のエトポシド。【0010】【発明の実施の形態】【0011】式(1)の保護された4′−デメチル−4−エピポドフィロトキシンの水酸基の保護基R1 としては炭素数1ないし10のアシル基が好ましく、例えば、低級(C1〜C6)アルキルカルボニル基、低級(C1〜C6)アルキルオキシカルボニル基あるいはベンゾイル基又は1ないし3個のハロゲン原子で置換された低級(C1〜C6)アルキルカルボニル基、低級(C1〜C6)アルキルオキシカルボニル基あるいはベンゾイル基又はベンジルオキシカルボニル基等があげられる。グルコース誘導体との反応においてはアセチル基またはモノ、ジもしくはトリハロゲノアセチル基が好ましい。ここではハロゲンはふっ素、塩素または臭素等を示し、特にモノクロロアセチル基またはジクロロアセチル基が好ましい。またグルコサミン(アミノ糖)誘導体との反応においてはベンジルオキシカルボニルが好適に用いられる。【0012】式(2)の保護された糖の水酸基の保護基R2 はR1 であげた保護基がいずれも使用でき、例えば、低級(C1〜C6)アルキルカルボニル基あるいは低級(C1〜C6)アルキルオキシカルボニル基又は1ないし3個のハロゲン原子で置換された低級(C1〜C6)アルキルカルボニル基あるいは低級(C1〜C6)アルキルオキシカルボニル基があげられる。ここでハロゲンはふっ素、塩素または臭素等を示し、クロロ−アセチル基が好ましく、特にモノクロロアセチル基またはジクロロアセチル基が好ましい。また、X1 は保護基の付いた水酸基またはアミノ基であり、水酸基の保護基としては上記R2 と同じものが例えば挙げられる。またアミノ基の保護基はアミノ基の保護に通常使用される保護基がいずれも使用できるが、好ましくはベンジルオキシカルボニルが用いられる。【0013】反応溶媒は有機溶媒であればいずれも使用できるが、非ハロゲン系溶媒のときに本発明の効果は大きい。非ハロゲン系溶媒としては非ハロゲン化脂肪族極性溶媒単独もしくは該脂肪族極性溶媒と非ハロゲン化芳香族系溶媒との混合溶媒が好ましい。より好ましくはアセトニトリル単独または上述の芳香族系溶媒との混合溶媒が用いられる。芳香族系溶媒としては、反応に影響を与えないものが好ましく、特にトルエンが好ましい。溶媒の使用量は反応させるものによって異なるが、原料である保護基を付した4′−デメチル−4−エピポドフィロトキシンに対して1〜50倍容量、特に2〜20倍容量が好ましい。【0014】エーテル類は1−5個のエーテル基及び2−6個の、炭素数1−6の鎖状もしくは環状炭化水素残基を含むモノ/又はポリエーテルが例えばあげられ、好ましくは式(4)で示されるエーテルである。【0015】エーテル類の両末端の炭素数1−6の鎖状炭化水素残基としては、例えばメチル基、エチル基またはプロピル基等の低級アルキル基が好ましい。エーテル類の中間に存在する炭素数1−6鎖状炭化水素残基としては、例えば分枝していてもよいC2〜C4のアルキレンが好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、1−メチルエチレン基などがあげられる。環状炭化水素残基としてはフェニル基、またはフェニレン基などがあげられる。【0016】式(4)で示されるエーテルとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールのそれぞれジメチルエーテル、ジエチルエーテルおよびジプロピルエーテルであり、特にエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルおよびジエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。更に好ましくはエチレングリコールジメチルエーテルである。これらの添加量は触媒の使用量および溶媒量によって異なるが、溶媒に対して1〜50%、好ましくは10〜30%である。【0017】反応触媒としては脱水縮合触媒が使用され、例えば、三ふっ化ほう素ジエチルエーテル錯体等の三ふっ化ほう素ジ低級アルキルエーテル錯体又はトリ(C1〜C4)アルキルシリルトリフルオロメタンスルホネートがあげられ、三ふっ化ほう素ジエチルエーテル錯体が比較的安価で、使用し易いため好ましいものとして挙げられる。三ふっ化ほう素ジエチルエーテル錯体の使用量は原料である式(1)で示される化合物に対して1〜15倍当量、特に1.5〜8倍当量が好ましい。【0018】また、式(1)および(2)で示される各化合物の使用量は、通常式(1)で示される化合物に対し、式(2)で示される化合物が1〜5当量、好ましくは1.2〜3当量である。【0019】この反応は一般的に10℃以下の低温、好ましくは0〜−30℃、より好ましくは−5〜−20℃の冷却下で行われ、反応系は出来るだけ無水状態で行われ、必要に応じてモレキュラーシーブ等の乾燥剤が用いられる。上記反応で得られた式(3)化合物より保護基を脱離する。保護基の脱離は、保護基の種類により、加水分解、加アルコール分解等の加溶媒分解または接触還元等の還元などの通常の方法によって行えばよい。例えばアセチル基またはハロゲノアセチル基の脱離はメタノールまたはメタノールを含有する混合溶媒中で通常の脱アシル化触媒である各種酢酸塩あるいはピリジン等塩基性物質の存在下加熱することにより容易に進行する。またベンジルオキシカルボニル基の脱離はパラジウムブラックあるいはパラジウムカーボン等を触媒として接触還元により脱離される。上記の方法によって得られた粗エトポシドは、メタノール等の低級アルコール類、アセトン等の低級ケトン類、酢酸エチル等の低級カルボン酸エステル類、イソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、ヘキサン等の炭化水素溶媒もしくはこれらの混合溶媒等の非ハロゲン系溶媒で1〜2回再結晶又はこれらのアルコールで1〜2回懸濁処理することによって、精製することができる。本発明方法によれば精製されたエトポシドにおけるハロゲン化合物の含量を、高感度クロマトグラフィーによる分析で80ppb以下、より好ましくは50ppb以下、更に好ましくは数ppb〜30ppb程度にできる。従来のハロゲン系溶媒を用いて合成されたものはハロゲン化溶媒などのハロゲン化合物を百数拾ppm以上含むもので、本発明方法で得られたものはそれらとは明らかに差別化できるものである。尚、ここでハロゲン化合物の含量とは、ハロゲン化合物が2種以上存在した場合にはそれらの合計として表したものである。また、この精製されたエトポシドは原料4’−デメチル−4−エピポドフィロトキシンの二量体及びエトポシドのα−グルコシド体を実質的に含まないものであり、例えばそれらの含量は1%以下、好ましくは0.1%以下である。本発明において式(1)で示される化合物及び式(2)で示される化合物はどのようにして製造されたものでも特に制限はないが、ハロゲン系溶媒を使用せずに合成されたものを用いることが好ましい。【0020】式(1)で表わされる化合物としては例えば下記のものがあげられる。(1)4′−ジクロロアセチル4′−デメチル−エピポドフィロトキシン(式(1)のR1 =−COCHCI2 )(2)4′−ジブロモアセチル−4′−デメチル−エピポドフィロトキシン(式(1)のR1 =−COCHBr2)(3)4′−β,β,β−トリクロロエトキシカルボニル−4′−デメチル−エピポドフィロトキシン(式(1)のR1 =−COOCH2 CCl3 )(4)4′−β,β,β−トリブロモエトキシカルボニル−4′−デメチル−エピポドフィロトキシン(式(1)のR1 =−COOCH2 CBr3 )(5)4′−クロロアセチル−4′−デメチル−エピポドフィロトキシン(式(1)のR1 −COCH2 Cl)(6)4′−ベンジルオキシカルボニル−4′−デメチルエピポドフィロトキシン(式(1)のR1 =−COOCH2 C6 H5 )【0021】式(2)で表わされる化合物としては例えば下記のものがあげられる。(1)4,6−O−エチリデン−2,3−ジ−O−ジクロロアセチル−β−D−グルコピラノース(式(2)のR2 =−COCHCl2 、X1 =−OCOCHCl2 )(2)4,6−O−エチリデン−2,3−ジ−O−ジブロモアセチル−β−D−グルコピラノース(式(2)のR2 =−COCHBr2 、X1 =−OCOCHBr2)(3)4,6−O−エチリデン−2,3−ジ−O−トリクロロアセチル−β−D−グルコピラノース(式(2)のR2 =−COCCl3 、X1 =−OCOCCl3 )(4)4,6−O−エチリデン−2,3−ジ−O−β,β,β−トリクロロエトキシカルボニル−β−D−グルコピラノース(式(2)のR2 =−COOCH2 CCl3 、X1 =−OCOOCH2 CCl3 )(5)4,6−O−エチリデン−2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−デオキシ−3−ジクロロアセチル−β−D−グルコピラノース(式(2)のR2 =−COCHCl2 、X1 =−NHCOOCH2 C6 Hs )【0022】また両者の反応によって得られた式(3)の官能基の保護されたエトポシド類としては、それぞれ原料に対応した保護基を有するものが得られる。具体的には例えば下記のものがあげられる。(1)4′−ジクロロアセチル−4′−デメチル−エピポドフィロトキシン−β−D−2,3−ジ−O−ジクロロアセチル−4,6−O−エチリデングルコシド(式(3)のR1 、R2 =−COCHCl2 、X1 =−OCOCHCl2 )(2)4′−ジブロモアセチル−4′−デメチル−エピポドフィロトキシン−β−D−2,3−ジ−O−ジブロモアセチル−4,6−O−エチリデングルコシド(式(3)のR1 、R2 =−COCHBr2、X1 =−OCOCHBr2)(3)4′−ジクロロアセチル−4′−デメチル−エピポドフィロトキシン−β−D−2,3−ジ−O−トリクロロアセチル−4,6−O−エチリデングルコシド(式(3)のR1 =COCHCl2 、R2 =−COCCl3 、X1 =−OCOCCl3 )(4)4′−クロロアセチル−4′−デメチル−エピポドフィロトキシン−β−D−2,3−ジ−O−クロロアセチル−4,6−O−エチリデングルコシド(式(3)のR1 、R2 =−COCH2 Cl、X1 =−OCOCH2 Cl)(5)4−O−(2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−デオキシ−3−ジクロロアセチル−β−D−グルコピラノシル)−4′−ベンジルオキシカルボニル−4′−デメチル−エピポドフィロトキシン(式(3)のR1 =ベンジルオキシカルボニル、R2 =−COCHCl2 、X1 =−NHCOOCH2 C6 H5 )【0023】【実施例】次に本発明を実施例により更に具体的に説明する。実施例1エトポシドの合成式(2)の(1)の化合物(式(2)においてR2 =COCHC12 、X1 =OCOCHC12 )1.67gとアセトニトリル0.5mlおよびトルエン2.5mlを攪拌混合した。さらにエチレングリコールジメチルエーテル0.5mlを加え、混合液を−10℃以下に冷却した。これに三ふっ化ほう素ジエチルエーテル錯体0.83gを加えた。次に式(1)の(1)の化合物(式(1)においてR1 =COCHC12 )1.00gを加え反応温度を−10℃以下に保ちながら3時間反応を続けた。ピリジン0.7gを加え反応を停止した。反応液に酢酸エチル20mlおよび水20mlを加え攪拌した後分液した。さらに水洗を2回繰り返し、式(3)の(1)の化合物(式(3)においてR1 =R2 =COCHC12 X1 =OCOCHC12 )を含む有機層を得た。有機層にメタノール3mlおよび酢酸アンモニウム1.5gを加え、40℃で8時間攪拌し表記エトポシドを含む反応液を得た。反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析した結果エトポシド1.11gを含有していた。収率96.9%またα−グルコシド体はエトポシドに対して1.65%(面積比)であった。上記反応液を40℃に加熱し水を加え晶析させ、25℃以下に冷却した。水で洗浄し、ろ過し、粗エトポシドを得た。得られたエトポシドは純度約97.7%で、α−グルコシド体含量、前記2量体含量はいずれも1%未満であった。またハロゲン化合物量は80ppb以下であった。【0024】比較例1実施例1においてエチレングリコールジメチルエーテルを添加しないで、他は全く同様の操作を行ったところ反応液にはエトポシド1.04gを含有していた。収率90.5% またα−グルコシド体はエトポシドに対して6.62%(面積比)であった。【0025】実施例2アミノエトポシドの合成式(1)の(6)の化合物(式(1)においてR1 =ベンジルオキシカルボニル)5.00gおよび式(2)の(5)の化合物(式(2)においてR2 =COCHC12 、X1 =NHCOOCH2 C6 H5 )5.66gとアセトニトリル80mlおよびエチレングリコールジメチルエーテル20mlを攪拌混合した。混合液を−10℃以下に冷却した。これに三ふっ化ほう素ジエチルエーテル錯体3.40gを加えた。反応温度を−10℃以下に保ちながら1時間反応を続けた。ピリジン2.19gを加え反応を停止した。反応液に酢酸エチル100mlおよび水100mlを加え攪拌した後、分液した。さらに水洗を2回繰り返し、式(3)の(5)の化合物(式(3)においてR2 =COCHC12 、R1 =ベンジルオキシカルボニル、X1 =NHCOOCH2 C6 H5 )を含む有機層を得た。有機層にメタノール15ml及び酢酸アンモニウム4.0gを加え、40℃で1.5時間攪拌した。反応液を3回水洗し、有機層を濃縮した。蒸発残渣をメタノール150mlに溶解し、つぎにパラジウムブラック1.1gを加え、オートクレーブ中、60℃で接触還元した。反応液をろ過し反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析した結果アミノエトポシド4.20gを含有していた。 収率79.7%またα−グルコシド体はアミノエトポシドに対して3.67%(面積比)であった。なお原料として使用する式(2)の(5)の化合物は特開平−295996に開示されている方法に準じて、2−N−ベンジルオキシカルボニル−4,6−O−エチリデン−D−グルコサミンに、ジクロロアセチルクロライドを反応させることによって得ることができる。【0026】比較例2実施例2においてエチレングリコールジメチルエーテルを添加しないで、式(1)の(6)の化合物と式(2)の(5)の化合物の反応時間が30分の他は全く同様の操作を行ったところ反応液はアミノエトポシド3.59gを含有していた。 収率70.3%またα−グルコシド体はアミノエトポシドに対して12.66%(面積比)であった。【0027】【発明の効果】本発明によって、有害なハロゲン系溶媒を使用せずかつ副生物を抑え高収率でエトポシド類を得ることができる。 式(1)(式中R1 は水酸基の保護基を示す)で示される保護基を付した4’−デメチル−4−エピポドフィロトキシンと式(2)(式中R2は水酸基の保護基を示しX1は保護基の付いた水酸基またはアミノ基である)で示されるグルコース誘導体またはグルコサミン誘導体を、有機溶媒及びエーテル類の存在下に反応させて式(3)(式中R1,R2およびX1は前記と同一である)で示される官能基の保護されたエトポシド類を得、必要に応じて脱保護することを特徴とするエトポシド類の製造法。 反応触媒として三ふっ化ほう素ジ低級アルキルエーテル錯体又はトリ(C1〜C4)アルキルシリルトリフルオロメタンスルホネートを使用する請求項1記載の製造法。 エーテル類が、1−5個のエーテル基及び2−6個の、炭素数1−6の鎖状もしくは環状炭化水素残基を含むモノ又はポリエーテルである請求項1記載の製造法。 モノ又はポリエーテルが下記式(4)(式中nは0ないし4の整数であり、R3、R5はそれぞれ独立に炭素数1−4のアルキル基、R4は炭素数2−4の直鎖又は分岐のアルキレン基を示す)で示されるエーテルである請求項3記載の製造法。 有機溶媒として非ハロゲン系有機溶媒を用いる請求項1記載の製造法。 非ハロゲン系有機溶媒としてアセトニトリル単独もしくはアセトニトリルと芳香族系溶媒との混合溶媒を用いる請求項5に記載の製造法。 非ハロゲン系有機溶媒としてアセトニトリル単独もしくはアセトニトリルおよびベンゼンもしくはトルエンもしくはキシレンとの混合溶媒を用いる請求項6に記載の製造法。 水酸基の保護基が低級アルキルカルボニル基あるいは低級アルキルオキシカルボニル基又は1ないし3個のハロゲン原子で置換された低級アルキルカルボニル基あるいは低級アルキルオキシカルボニル基である請求項1記載の製造法。 水酸基の保護基がアセチル基又は1ないし3個のハロゲン原子で置換されたアセチル基である請求項8記載の製造法。 R1及びR2における水酸基の保護基が1ないし3個のハロゲン原子で置換されたアセチル基、X1が水酸基の場合1ないし3個のハロゲン原子で置換されたアセチル基で保護され、またアミノ基の場合ベンジルオキシカルボニル基で保護され、有機溶媒がアセトニトリル単独もしくは芳香族系溶媒との混合溶媒、エーテル類がエチレングリコールジメチルエーテルであり、反応溶媒として、三ふっ化ほう素ジエチルエーテルを使用する請求項1記載の製造法。 エーテル類が(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類であり、その使用量が有機溶媒に対して1〜50%である請求項10記載の製造法。