タイトル: | 特許公報(B2)_重金属固定剤 |
出願番号: | 1996308789 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C09K 3/00,C07C 333/16,B09B 3/00,C02F 1/62 |
権平 英昭 JP 3817720 特許公報(B2) 20060623 1996308789 19961105 重金属固定剤 日本曹達株式会社 000004307 松橋 泰典 100113860 権平 英昭 20060906 C09K 3/00 20060101AFI20060817BHJP C07C 333/16 20060101ALI20060817BHJP B09B 3/00 20060101ALI20060817BHJP C02F 1/62 20060101ALI20060817BHJP JPC09K3/00 108AC07C333/16B09B3/00B09B3/00 304GC02F1/62 Z C09K 3/00, B09B 3/00, C02F 1/62- 1/64, C07C333/16 特開昭56−139452(JP,A) 特開平08−168778(JP,A) 特開平07−075768(JP,A) 特開平06−166862(JP,A) 特開平03−231921(JP,A) 特開平08−269434(JP,A) 1 1998140132 19980526 6 20030707 小川 知宏 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は工場排水や都市ゴミ、産業廃棄物を焼却処分したときに排出される灰分の中に含まれる有害な重金属を無害化処理するときに使用される有機キレート剤に関するものである。【0002】【従来の技術】工場排水や都市ゴミ、産業廃棄物を焼却処分したときに排出される灰分の中に含まれる有害な重金属を無害化処理、即ち固定化するときに使用される有機キレート剤としてはジチオカルボキシル基を官能基として含むジチオカルバミン酸が主として使用されている。ジチオカルバミン酸は水溶液中ではそれ自身が弱酸性の化合物であり、強アルカリの存在下にジチオカルバミン酸イオンを生成して重金属イオンと不溶性の塩を形成する。しかしながらジチオカルバミン酸はpHに依存し、強酸性側では安定に存在することが出来ない。またジチオカルバミン酸は単離することは難しく、アルカリやアルカリ土類等の金属塩やアルキルアンモニウム塩のような形にするか、またはエステルの形で取り出すことができる。このようにジチオカルバミン酸は種々の特異的な性質をもつが、コストと製造のし易さ、そして固定化能の面から考えて有害重金属の固定化には最適の化合物である。現在、焼却場から発生する飛灰中に含まれている有害重金属を固定化するのに特にジエチルアミンやジブチルアミン等の低分子アミンを用いたジチオカルバミン酸やジエチレントリアミンやテトラエチレンペンタミン等の多価アミンを用いたジチオカルバミン酸、そしてポリエチレンイミンを用いたポリジチオカルバミン酸などの塩の水溶液が主に用いられている。【0003】【発明が解決しようとする課題】重金属の溶出量を規制値以下にするためにはより重金属固定能の優れたキレート剤が待たれている。特に、飛灰中の有害重金属を固定化するには飛灰に適量の水(混練水)が必要であり、通常、この混練水にジチオカルバミン酸塩を溶解、希釈して飛灰に添加、混練して餅状にすることによって有害重金属を固定化する方法が行われている。このためジチオカルバミン酸塩は水溶性であることが必要であるが、水への溶解性が悪い場合、溶解するのに多量の水を必要とし、場合によってはこの水の量が混練し、餅状にするのに必要な水の量を上回る場合がある。この場合、混練水が多過ぎることになり、飛灰を餅状に固化することが出来ない。このため水への溶解度が出来るだけ大きいジチオカルバミン酸塩が望まれている。【0004】【課題を解決するための手段】本発明は1,3−プロパンジアミノ基をユニットとしてもつポリアミン化合物と二硫化炭素と反応させることによって得られるポリジチオカルバミン酸およびその塩であり、特に一般式(I)【0005】【化2】【0006】(R1 、R2 は水素原子またはC1 〜C6 アルキル、nは0〜1000)で表されるポリアミンと二硫化炭素と反応させることによって得られるポリジチオカルバミン酸およびその塩である。また、このポリジチオカルバミン酸塩を用いた重金属固定剤である。【0007】1,3−プロパンジアミノ基をユニットとしてもつポリアミン化合物とは、【0008】【化3】【0009】を持つ化合物であり、この場合、分子内でプロピレン鎖を介して隣接するアミノ基は1級のアミノ基でも2級のアミノ基でもよい。【0010】具体的には1,3−プロパンジアミン、N−メチル−1,3−プロパンジアミン、N,N′−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1、3−ペンタンジアミン、N−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、N,N′−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、イミノビスプロピルアミン、N,N′−ビス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、ポリプロピレンイミン等が挙げられる。【0011】また、上記1,3−プロパンジアミノ基をユニットとして含有する化合物には高分子化合物であってもよく、ユニットが主鎖や側鎖にあってもよい。ポリアミンの分子量としては74から100000である。【0012】本化合物の水溶液の製法は一般的なジチオカルバミン酸塩と同様な製法でよく、反応するポリアミノ化合物と金属水酸化物を水に溶解させ、40℃以下で二硫化炭素を滴下する。反応の終点は、水溶液中で分散している二硫化炭素の粒が消失した時点を目安としてNMRで確認すればよい。反応終了後は、過剰に仕込んだ二硫化炭素および溶存する酸素を追い出すため窒素ガスによるバブリングを行い、遮光性のある褐色の容器に密閉保存することが望ましい。分子内に1級アミノ基が少なくとも1つ含まれるポリアミンを用いる場合には副生成物の生成を抑制するために、pHを10〜14の間にコントロールして反応させることが望ましい。【0013】塩としては、アルカリやアルカリ土類等の金属塩やアルキルアンモニウム塩であり、特にナトリウム、カリウム、リチウムが好ましい。【0014】【実施例】本発明を以下の実施例により具体的に説明する。但し、本発明は実施例によって何ら制限を受けるものではない。【0015】実施例1500mlの4つ口フラスコの中に撹拌子を入れ、純度98%のイミノビスプロピルアミン(IBPA)を26.7g(0.20mol)とH2 O 20.8gを入れた。この時のpHは13.1であった。pHメーター、温度計、純度98%のCS2 を55.8g(CS2 :0.72mol)および封入水10gを入れた100mlの等圧滴下ロートと25wt%のNaOH水溶液を96g(NaOH:0.60mol)を入れた100mlの等圧滴下ロートを取り付けて、スターラー撹拌をしながら30℃の温浴中で反応を行った。IBPAとH2 Oは水和反応により発熱するので温浴中で液温が25℃以下になってからCS2 の滴下を開始した。約20分後にpHが10になったのでNaOH水溶液の添加を開始してpHが10〜14の範囲に調整されるようにした。反応を開始してから約5時間後にCS2 の分散による濁りがほぼ消失した。この時点で残りのNaOH水溶液を全量滴下し、10分間撹拌した後に反応を終了した。N2 バブリングをして過剰のCS2 、溶存酸素を追い出して黄橙色の溶液を得た。この溶液のpHは13.8であった。【0016】 1H−NMRで確認すると2.05ppm、3.56ppmおよび4.11ppmにメチレン基のプロトンが確認された。それ以外のシグナルは確認されなかった。13C−NMRで確認すると28.2ppm、47.8ppmおよび53.9ppmにメチレン基、211.2ppm、212.5ppmにジチオカルボキシル基のカーボンが確認された。それ以外のシグナルは確認されなかった。これより反応は完全に生成系に移行しており、なおかつ副反応が起こっていないことを確認した。上記の反応によって得られたトリス(ジチオカルボキシ)イミノビスプロピルアミンのNa塩水溶液の濃度はt−ブチルアルコールを内部指示薬としてそのプロトン比から42.0wt%と算出された。【0017】比較例1500mlの4つ口フラスコの中に撹拌子を入れ、純度98.5%のジエチレントリアミン(DETA)を20.9g(0.20mol)とH2 O 26.6gを入れた。この時のpHは13.3であった。pHメーター、温度計、純度98%のCS2 を55.8g(CS2 :0.72mol)および封入水10gを入れた100mlの等圧滴下ロートと25wt%のNaOH水溶液を96g(NaOH:0.60mol)を入れた100mlの等圧滴下ロートを取り付けて、スターラー撹拌をしながら30℃の温浴中で反応を行った。DTEAとH2 Oは水和反応により発熱するので温浴中で液温が25℃以下になってからCS2 の滴下を開始した。約20分後にpHが10になったのでNaOH水溶液の添加を開始してpHが10〜14の範囲に調整されるようにした。反応を開始してから約5時間後にCS2 の分散による濁りがほぼ消失した。この時点で残りのNaOH水溶液を全量滴下し、10分間撹拌した後に反応を終了した。N2 バブリングをして過剰のCS2 、溶存酸素を追い出して黄橙色の溶液を得た。この溶液のpHは13.6であった。【0018】 1H−NMRで確認すると3.9ppm、4.3ppmにメチレン基のプロトンが確認された。それ以外のシグナルは確認されなかった。13C−NMRで確認すると48ppmおよび55ppmにメチレン基、212ppm、213ppmにジチオカルボキシル基のカーボンが確認された。それ以外のシグナルは確認されなかった。これより反応は完全に生成系に移行しており、なおかつ副反応が起こっていないことを確認した。上記の反応によって得られたトリス(ジチオカルボキシ)ジエチレントリアミンのNa塩水溶液の濃度はt−ブチルアルコールを内部指示薬としてそのプロトン比から40.5wt%と算出された。【0019】試験例1(ブランク)実施例1のキレート溶液の有害重金属の不溶化固定能を調べるために先ずブランクテストを実施した。ホバートミキサーに焼却場の飛灰100g、H2 Oを47gを入れた。これを混練して餅状にしたものを7日間養生させて溶出テストの試料とした。溶出テストは環境庁告示13号に準じて実施した。有害な重金属の一つであるPbの溶出量は9.4mg/1であった。【0020】試験例2ホバートミキサーに焼却場の飛灰100g、H2 Oを47gそして実施例1で調製したキレート溶液を飛灰に対して1〜5%になるように添加した。これを混練して餅状にしたものを7日間養生させて溶出テストの試料とした。溶出テストは環境庁告示13号に準じて実施した。有害な重金属の一つであるPbについての不溶化固定能を調べた結果、Pbの規制値である0.3mg/l以下に抑制するためのキレート溶液の必要量は1.7%であり、これはジチオカルバミン酸のモル数で1.7×10-3モル、ジチオカルボキシル基のモル数で5.1×10-3モルであった。【0021】試験例3(比較)ホバートミキサーに焼却場の飛灰100g、H2 Oを47gそして比較例1で調製したキレート溶液を飛灰に対して1〜5%になるように添加した。これを混練して餅状にしたものを7日間養生させて溶出テストの試料とした。溶出テストは環境庁告示13号に準じて実施した。有害な重金属の一つであるPbについての不溶化固定能を調べた結果、Pbの規制値である0.3mg/l以下に抑制するためのキレート溶液の必要量は2.7%であり、これはジチオカルバミン酸のモル数で2.7×10-3モル、ジチオカルボキシル基のモル数で8.1×10-3モルであった。【0022】【発明の効果】本発明の新規なジチオカルバミン酸塩を用いることにより、水への溶解性が高く、重金属固定能が高い重金属固定剤を得ることができる。 一般式(I)(R1、R2は水素原子またはC1〜C6アルキル、nは0〜1000)で表されるポリアミン化合物と二硫化炭素と反応させることによって得られるポリジチオカルバミン酸のナトリウム、カリウム又はリチウム塩を用いることを特徴とする重金属固定剤。