タイトル: | 特許公報(B2)_アルジネート印象材 |
出願番号: | 1996304499 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A61K 6/10 |
織田 享子 千原 彰一 JP 3881413 特許公報(B2) 20061117 1996304499 19961115 アルジネート印象材 株式会社ニッシン 391011490 特許業務法人志成特許事務所 110000257 織田 享子 千原 彰一 20070214 A61K 6/10 20060101AFI20070125BHJP JPA61K6/10 A61K 6/10 特開平05−194137(JP,A) 特開平03−255012(JP,A) 特開昭58−035105(JP,A) 特表昭57−501426(JP,A) 特開昭59−225104(JP,A) 粉体工学研究会・日本粉体工業協会,粉体物性図説,日本,株式会社産業技術センター,1975年 5月 1日,216頁 3 1998139618 19980526 7 20031015 原田 隆興 【0001】【発明の属する技術分野】本発明はアルジネート印象材に関する。更に詳しくは練和性能に優れたアルジネート印象材に関する。アルジネート印象材は主に歯牙の治療修復の際の型取りやその他の型取りに好適に使用されるものである。【0002】【従来の技術】アルジネート印象材はアルギン酸塩を基に、これに硫酸カルシウムなどのゲル化反応剤等を組み合わせることにより、ゲル状硬化体が得られることを利用して、歯牙等様々な型取りに利用されている。アルジネート印象材はその商品形態から粉末タイプとペーストタイプの2種類に分類される。粉末タイプは使用直前に水と練和して均一なペースト状として、ペーストタイプはアルギン酸塩と不活性粉体等をあらかじめ水で均質なペースト化した主剤と、ゲル化反応剤を主体とした硬化剤とを混合して印象採得に用いられる。【0003】上記粉末タイプ、ペーストタイプのいずれも練和作業が伴う。印象材を使用するにあたり最も重要なことはこの練和作業である。練和作業は各成分を十分混ぜ合わせるとともに、各成分の溶解を促し、均一に反応させる働きもある。練和が不十分であると各成分、特にアルギン酸塩の溶解が不十分となり化学反応が不均一となる。この場合アルジネート印象材が本来持つ性能が十分に発揮出来ず、採得した印象も満足なものとは言い難く、その後の作業にも影響を与える。この印象材の練和は単なる攪拌混合操作ではなく、若干の熟練と多少の力を要するため不慣れな者にとっては難しく、苦手な操作となっている。【0004】例えば通常歯科用印象材は練和用のラバーボールと専用の印象ヘラを用いて手練和を行うことが多い。印象材ペーストの練り易さは印象材粉末と水、或いはペーストと粉末等、2成分のなじみ易さや、ペーストの手応えの軽さ、ペースト化していく外観等、様々な要素を含んでいる。手早く、激しく攪拌する必要があるので、ペーストの手応えが少ないこと、少ない小さな力でペーストが良く伸びることは良好な練和感を得る上で重要なこととなる。【0005】続いて練和によって得られた印象材ペーストは型を取る場所に圧接される。型取り材として使用するためには型取りする部位、例えば口腔内の歯牙等に圧接したときは流動し、細部にまで行き渡ることが必要だが、逆に、流動性がありすぎると、印象採得に際して問題がある。例えば印象材ペーストが自重により、垂れてしまうと、必要な印象部分に十分な厚みがとれないため、採得した印象の強度は不十分なものとなってしまう。また、極端な場合には咽頭へ流れ込む結果となり、著しく不快、且つ危険なこととなる可能性もある。【0006】例えば、このアルジネート印象材には、流動性の調節あるいは印象の補強のために、珪藻土等の充填材を含有させている(特開昭59−225101号公報等)。しかし、単に珪藻土を配合した場合には練和性の低下、たれの発生、印象表面の荒れ等の問題が発生する。【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明は印象材の練和性を向上させ、容易に練和することが可能で、且つ圧接時には十分な流動性がありながら自重による流動(たれ)が少ないアルジネート印象材を提供しようとするものである。【0008】【課題を解決するための手段】 上記目的のため、鋭意検討した結果、特定の珪藻土を組み合わせて使用することで、練和性にすぐれ、自重によるたれが少ないアルジネート印象材が得られることを見出し、本発明に到達した。即ち本発明の要旨は、アルギン酸塩、ゲル化反応剤、ゲル化調節剤及び珪藻土を含有する印象材において、該珪藻土として、円盤状の形状である珪藻土及び桿状の形状である珪藻土を、1:9〜9:1(重量比)の割合で配合したものを使用することを特徴とするアルジネート印象材に存する。以下本発明を詳細に説明する。【0009】本発明の印象材は、アルギン酸塩、ゲル化反応剤、ゲル化調節剤、充填剤を含有する。これら各成分は特に限定されるものではなく公知のものを適宜選択することができる。例えば、アルギン酸塩としては特に限定されるものではないが、アルギン酸のナトリウム、カリウム、アンモニウムまたはトリエタノールアミン等の水溶性の塩が挙げられる。使用量としては印象材の粉末換算として通常3〜30重量%、好ましくは5〜25重量%である。【0010】ゲル化反応剤としては例えば硫酸カルシウム2水塩、硫酸カルシウム半水塩、硫酸カルシウム無水塩等の硫酸カルシウムが挙げられる。使用量としては印象材粉末換算として通常3〜40重量%、好ましくは5〜30重量%である。ゲル化調節剤としてはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の第3リン酸塩、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩等の燐酸塩、珪酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩等が挙げられる。使用量としては印象材粉末換算として通常0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜4重量%である。【0011】珪藻土は単細胞植物珪藻由来のシリカを主成分とする微細な多孔質体であり、天然品である。珪藻土が海水産か淡水産かにより、またそれぞれの産地によって粒子の形状が異なる。また、焼成方法や粉砕条件等処理方法によって純度、粒子形状や粒径等が異なる。珪藻土中の不純物はアルギン酸塩の硬化反応に影響を与える場合があるので、通常アルジネート印象材には融剤焼成品が用いられる。上記、珪藻土の粒子形状の違いや粒径の違いにより、印象材における最適充填量が異なる。充填量の違いで、印象材化した後の最適混水比が異なり、さらには印象材の物性にも影響を与える。【0012】本発明者らは各種珪藻土の形状を顕微鏡にて観察したところ、▲1▼円盤状▲2▼桿状▲3▼蜂の巣状▲4▼鱗片状に大別されることが解った。▲1▼円盤状は一部の淡水産に、▲2▼桿状は一部海水産に確認される。▲3▼蜂の巣状は▲1▼▲2▼より粒径が大きく、通常平均粒径が25μmを越え、また粒径も不揃いで淡水産、海水産のいずれにも確認され、▲4▼鱗片状は▲1▼〜▲3▼が粉砕されて生じる微細なもので、通常平均粒径は5μm未満である。【0013】蜂の巣状の珪藻土を用いた場合、粒径が大きいものが含まれるため、アルジネート印象材を練和したときの手触りがジャリジャリし、できあがった印象材ペーストも肌理が粗く、精細な印象採得には適さない。また、粒径や細孔の存在状態が不揃いなので、再現性良くアルジネート印象材を製造するには不適当である。鱗片状の珪藻土を用いた場合、アルジネート印象材をペースト化した時にダマが生じやすい。練和初期にペースト中に生じたダマを潰すことは大変困難で、印象採得時にもダマを含んだペーストを用いることとなり、精細な印象用途には用いることが出来なくなってしまう。この理由としては、微細な粒子が凝集し易いことによると考えられる。【0014】そのため、本発明で使用する珪藻土としては、円盤状の形状及び桿状の形状である珪藻土を組み合わせて使用する。円盤状の形状の珪藻土は、透過型顕微鏡において撮影した写真において、円または楕円の形状を示す。円盤状珪藻土は、複数の空隙部分を有する。空隙部分の数、形状については特に限定はないが、通常円または楕円の中心から外側に向かって空隙部分を有するものである。円盤状珪藻土の厚みについても特に限定はなく、空隙部分の数、形状等の条件により異なるが、通常均一ではなく例えば中心部分が他部分よりも薄くなっているものがある。【0015】また、円盤状の形状は具体的には円盤の長軸径と短軸径との比率が1〜1.5の円盤状の形状のものが好ましく使用できる。ここで、円盤の長軸径と短軸径とは透過型顕微鏡において撮影した写真において、まず長軸径を決定し、それに直交する軸を短軸径としたものである。桿状の形状の珪藻土は、透過型顕微鏡において撮影した写真において棒状の形状を示す。桿状珪藻土は、内部に1つ以上の空隙部分を有し、例えば空隙部分が1つで長軸にそって貫通している場合はパイプ状となる。また、桿状の形状は具体的には長軸と短軸との比率が3〜20であるものが好ましく使用できる。ここで、桿状の長軸と短軸とは、透過型顕微鏡において撮影した写真においてまず長軸を決定し、それに直交する軸を短軸としたものである。【0016】これら両者の形状の珪藻土の平均粒子径としては、レーザー回折散乱法にて測定した平均粒子径が各々5〜25μmの範囲が好ましい。平均粒子径がこれ以上になると練和時の手触りが不良となり、さらには練和したペーストの肌理が粗く外観不良となる。また、これ以下の場合には印象材ペースト中にダマを生じる可能性があり、精密印象には不適当となる。【0017】円盤状の珪藻土と桿状の珪藻土の配合割合は、重量比で1:9〜9:1の範囲のものが好ましい。円盤状と桿状の使用比率を1:9より桿状を多くした場合、自重によるたれは小さくなるが印象ヘラの滑りが悪く、手応えが重くなり練和性が悪くなる。これは桿状の珪藻土同士が絡みあうので、印象材ペーストの伸びが悪くなる為と考えられる。【0018】円盤状と桿状の使用比率を9:1より円盤状を多く使用した場合、ペーストの伸びが良好となり、印象ヘラの滑りも良く、手応えが軽く、練和性は向上するが、自重によるたれが大きくなる。これは珪藻土同士の絡みが無く、滑り性がでるため練和感は向上するが、逆に自重によるたれも大きくなると考えられる。また、印象材に含まれる両者の珪藻土の量は粉末換算の合計量で30〜85重量%であることが好ましい。【0019】尚、本発明の効果を損なわない範囲において、珪藻土以外の充填剤として公知のタルク、シリカ、水酸化アルミニウム等も併用することができる。この場合に珪藻土以外の充填剤の使用量としては、珪藻土と他充填剤との合計量の30重量%以下が好ましい。更に本発明の印象材には上記成分以外にも、例えば模型石膏との相性を改良するためにヘキサフルオロチタン酸ナトリウム、ヘキサフルオロジルコン酸カリウム等のフッ化物やケイフッ化物を配合することもできるし、界面活性剤、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、流動パラフィン等の粉塵防止剤、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム等の金属酸化物、金属水酸化物、着色剤、香料等の添加剤を配合することができる。【0020】本発明の印象材の製造方法については特に限定されずに公知の方法から適宜選択して使用することができる。例えば、全原料を同時に混合機に投入、混合しても良いし、目的に応じて分割混合して製造することでも良い。【0021】【実施例】以下実施例によって本発明を更に詳しく記述するが、以下実施例は本発明を制限するものでは無く、本趣旨を逸脱しない範囲で変更するところはすべて本発明の技術範囲に包含される。(実施例1〜2、比較例1〜4)表−1に示した配合割合(重量部数)に従って、ブレンダーで混合した。珪藻土については種類を形状により分類し、その物性を次のとおり測定した。【0022】(1)珪藻土の平均粒径珪藻土の平均粒径はレーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−500)にて測定した。(2)珪藻土の長軸/短軸比率長軸(径)と短軸(径)との比率は透過型顕微鏡にて撮影した珪藻土の写真を用いて計測し、計算した。長軸(径)及び短軸(径)は、全ての形状において、透過型顕微鏡にて撮影した写真においてまず長軸(径)を決定し、それに直交する軸を短軸(径)としたものである。上記の通り作成した印象材を次の方法で評価した。【0023】(1)ゲル化時間、弾性歪、永久歪ゲル化時間、弾性歪、永久歪はJIS−6505(歯科用アルギン酸塩印象材)に準拠した。混水比は印象材粉末/水=8.0/20(g)で評価した。(2)たれたれについては、ガラス板上に印象材を27×20×10mmに盛り上げて練和開始より1分後に、そのガラス板を鉛直に立てる。印象材がゲル化した後に、印象材の全長を測定し最初の印象材の長さである20mmを引いた値をたれとする。(3)加圧フロー加圧フローは、練和した印象材を20φ×31.5mmの円筒に成形し、印象材の練和開始より1分後に120gの荷重をかけ、ゲル化後その円盤の直径を測定した。尚、全ての評価方法において、評価環境はJISに準拠した。評価結果を表−1に示す。【0024】【表1】【0025】実施例1、2はいずれも荷重により適当な流動性を持ちながらも自重による流動性は小さく、かつ練和性に優れペーストの外観も著しく良好であった。比較例1は荷重による流動性は適度にあり、自重による流動性は小さいが、練和性に問題があり、ペースト外観もなめらかさが無く不良であった。比較例2はペーストにぶつぶつが目立ち不良であった。比較例3はペーストのなめらかさに欠け、加圧フローは50mmを下回り、荷重による流動性が小さい為、細部の印象材採得に問題があった。比較例4では自重による流動性が大きく、患者の咽頭への流れ込みが懸念され実用上は問題があった。【0026】【発明の効果】本発明の印象材は練和性能に優れ、ペースト化した際に充分な流動性とたれ防止能があり、更に、本発明の印象材により得られる印象の表面形状は優れたものとなる。 アルギン酸塩、ゲル化反応剤、ゲル化調節剤及び珪藻土を含有する印象材において、該珪藻土として、円盤状の形状である珪藻土及び桿状の形状である珪藻土を、1:9〜9:1(重量比)の割合で配合したものを使用することを特徴とするアルジネート印象材。 円盤状の形状である珪藻土が、円盤の長軸径と短軸径との比率が1〜1.5であることを特徴とする請求項1記載のアルジネート印象材。 桿状の形状である珪藻土が、長軸と短軸との比率が3〜20であることを特徴とする請求項1記載のアルジネート印象材。