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タイトル:特許公報(B2)_防腐剤の配合濃度演算処理装置
出願番号:1996281434
年次:2005
IPC分類:7,A61K7/00,A61L2/24


特許情報キャッシュ

岡部 文市 須加 基昭 JP 3618489 特許公報(B2) 20041119 1996281434 19961001 防腐剤の配合濃度演算処理装置 株式会社カネボウ化粧品 504180206 岡部 文市 須加 基昭 20050209 7 A61K7/00 A61L2/24 JP A61K7/00 Z A61L2/24 7 A61K 7/00- 7/50 A61L 2/24 JICSTファイル(JOIS) 特開平08−283125(JP,A) 繁田啓子他,乳化化粧料中パラベンの水相・油相分配に及ぼす多価アルコールの影響,日本化粧品技術者会誌,1995年,vol.29, no.1,pp.34-40 4 1998101528 19980421 15 20010227 榊原 貴子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、例えば乳化化粧料等の水系乳化組成物に添加すべき防腐剤の配合濃度を適正化するのに用いて好適な防腐剤の配合濃度演算処理装置に関する。【0002】【従来の技術】一般に、乳化化粧料等の水系乳化組成物にあっては、微生物等の発生を抑えるために、例えばパラオキシメチルエステル(MP)、パラオキシエチルエステル(EP)、パラオキシプロピルエステル(PP)、パラオキシブチルエステル(BP)、パラオキシイソブチルエステル(イソ−BP)等のパラベン類からなる防腐剤を添加するようにしている。【0003】そして、例えば1986年に日本防菌防黴学会から発行された「防菌防黴ハンドブック」にも記載されているように、前記防腐剤として用いるパラベン類は、広い抗菌活性を持ち、抗菌作用が緩和であることから、薬品、食品、化粧品等に広く使用されている。【0004】ところが、パラベン類を乳化化粧料等の水系乳化組成物に配合した場合、処方中に非イオン界面活性剤が共存すると非イオン界面活性剤による防腐力の低下が起こり、防腐剤の実際の効果が発揮されないといった問題が起こることが知られている。そのため、乳化化粧料等の水系乳化組成物に配合するパラベン類などの防腐剤の配合濃度の適切な決定は、時として困難なものとする。【0005】そこで、水系乳化組成物に対するパラベン類などの防腐剤の配合濃度を短時間で算出でき、防腐剤の配合濃度を適正に演算処理できるようにした防腐剤の配合濃度演算処理装置が望まれる。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明者等はかかる事情に鑑み鋭意検討した結果、非イオン界面活性剤の影響による防腐剤の効果の低下をも考慮した防腐剤の配合濃度演算処理装置を発明することにより、防腐剤の配合濃度を適正に演算処理できるに至ったものであって、その目的は例えば乳化化粧料等の水系乳化組成物に添加すべき好適な防腐剤の配合濃度を決定する防腐剤の配合濃度演算処理装置を提供することにある。【0007】【課題を解決するための手段】上述した課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、水系乳化組成物に配合される複数の油剤、可溶化剤、非イオン界面活性剤、および防腐剤の種類とそれぞれの配合濃度とをデータとして入力する入力手段(ステップ1)と、各水相、油相成分の容量%、各油剤毎の容量率および総濃度の算定手段(ステップ2)と、ステップ1で入力したデータに基づき前記水系乳化組成物の水相中に含まれる可溶化剤濃度を算定する可溶化剤濃度算定手段(ステップ3)と、水相中の非イオン活性剤のモル濃度算定手段(ステップ4)と、ステップ3による可溶化剤濃度に基づき、前記各油剤毎に防腐剤の単純系における油相−水相分配係数を算定する第1の分配係数算定手段(ステップ5)と、ステップ2で得た容量率およびステップ5で得られた防腐剤の単純系における油相−水相分配係数とから、各油剤の混合系における防腐剤の油相−水相分配係数を算定する第2の分配係数算定手段(ステップ6)と、前記水系乳化組成物に含まれる油相および水相の容積比算定手段(ステップ7)と、ステップ4に基づき、非イオン界面活性剤によって可溶化されていない防腐剤(遊離の防腐剤)の割合の算定手段(ステップ8)と、前記ステップ5〜8に基づき前記ステップ1で入力した防腐剤の配合濃度と水相中で非イオン界面活性剤に対して遊離の防腐剤濃度の算定手段(ステップ9)と、ステップ9に基づき、水相中で遊離の防腐剤濃度を算定する手段(ステップ10)と、ステップ10を表示する手段(ステップ11)と、その防腐剤濃度に基づいて最適防腐力獲得濃度を検定する手段(ステップ12、13)とからなる構成を採用している。【0008】また、請求項2に記載の発明では、ステップ1〜ステップ9から得られるステップ10の算定結果をステップ1による入力データと共に表示・出力し(ステップ11)、さらにステップ11を基に、最適防腐力獲得濃度を検定する手段(ステップ12、13)とを備える構成としている。【0009】次に、請求項3に記載の発明では、前記第2の分配係数算定手段(ステップ6)は、ステップ2、3、5による油相−水相分配係数とに基づいて前記防腐剤の油相−水相分配係数を算定する構成としている。【0010】さらに、請求項4に記載の発明では、前記非イオン界面活性剤によって可溶化されていない防腐剤(遊離の防腐剤)の割合の算定手段(ステップ8)は、ステップ2、4に基づいて防腐剤の配合濃度と遊離の防腐剤濃度の比率を算定する構成としている。【0011】【発明の実施の形態】ここで、前記水系乳化組成物とは乳化化粧料、乳化食品および乳化薬品等を指し、前記油剤とはこれらの乳化物に用いられる疎水性物質であり、例えば鉱油、スクワラン、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、ミリスチン酸イソセチル、トリステアリン酸硬化ヒマシ油、オリーブ油、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、シクロジメチルポリシロキサン、メトキシケイ皮酸オクチル、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル等が使用される。【0012】また、前記可溶化剤としては多価アルコール類が用いられ、例えば1,3ブチレングリコール(1,3−BG)、ジプロピレングリコール(DPG)、グリセリン、エタノール等が使用される。【0013】そして、前記防腐剤としては、乳化化粧料、食品および薬品等に使用される抗菌成分であり、例えばパラオキシメチルエステル(MP)、パラオキシエチルエステル(EP)、パラオキシプロピルエステル(PP)、パラオキシブチルエステル(BP)、パラオキシイソブチルエステル(イソ−BP)等のパラベン類が使用される。なお、防腐剤として安息香酸、安息香酸Na 、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸Na 、フェノキシエタノール、フェネチルアルコール、1−フェノキシ−2プロパノール等を用いてもよい。【0014】さらに、前記非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンエーテル系の界面活性剤が用いられ、例えばポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル等が使用される。【0015】【作用】請求項1に記載の発明では、入力手段で入力したデータに基づき水系乳化組成物の水相中に含まれる可溶化剤の濃度を可溶化剤濃度算定手段で算定することにより、この可溶化剤の濃度に基づいて第1の分配係数算定手段では、水系乳化組成物の各油剤毎にそれぞれの防腐剤の単純系における油相−水相分配係数を算定できると共に、第2の分配係数算定手段では第1の分配係数算定手段により前記各油剤毎に算定した防腐剤の単純系における油相−水相分配係数に基づき前記各油剤の混合系における防腐剤の油相−水相分配係数を算定することができる。そして、非イオン界面活性剤濃度算定手段による非イオン界面活性剤濃度に基づき、非イオン界面活性剤によって可溶化されていない防腐剤(遊離の防腐剤)の割合の算定手段と容積比算定手段で算定した前記水系乳化組成物に含まれる油相と水相の容積比と前記第2の分配係数算定手段による防腐剤の油相−水相分配係数とに基づいて、防腐剤濃度検索算定手段では前記防腐剤の配合濃度および前記水相中での防腐剤濃度を、過去の処方値等を参考にして検索し算定することができ、防腐剤の配合濃度が適正値となるように短時間で演算処理を実行できる。【0016】この場合、請求項2に記載の発明のように、記憶手段および表示・出力手段を備える構成とすることにより、前記可溶化剤濃度算定手段、前記第1,第2の分配係数算定手段、前記容積比算定手段および前記防腐剤濃度検索算定手段でそれぞれ演算処理を行うときに、前記記憶手段に記憶した各演算式を適宜に読出して順次演算処理を実行でき、その後は前記表示・出力手段で防腐剤濃度検索算定手段による検索算定結果を前記入力手段による入力データと共に表示・出力することにより、前記防腐剤の配合濃度および前記水相中での防腐剤濃度が過去の処方実績から妥当であるか否かを評価しつつ、前記入力データの変更を容易に行うことができる。【0017】また、請求項3に記載の発明のように、前記第2の分配係数算定手段では、全油相の容量に対する前記各油剤毎の容量率と前記第1の分配係数算定手段による油相−水相分配係数とに基づいて前記防腐剤の油相−水相分配係数を算定する構成とすることにより、前記各油剤の混合系における防腐剤の油相−水相分配係数をさらに正確に算定できる。【0018】さらに、請求項4に記載の発明のように、前記非イオン界面活性剤によって可溶化されていない防腐剤(遊離の防腐剤)の割合の算定手段(ステップ8)は、ステップ2、4に基づいて防腐剤の配合濃度と遊離の防腐剤濃度の比率を算定する構成とすることにより、前記非イオン界面活性剤の影響を考慮した可溶化されていない防腐剤(遊離の防腐剤)の割合をさらに正確に算定できる。【0019】【実施例】以下、本発明の実施例による防腐剤の配合濃度演算処理装置を図1乃至図4に基づいて説明する。【0020】図1中、1は当該配合濃度演算処理装置の本体部を構成するコントロールユニットを示し、該コントロールユニット1は入出力インターフェース(I/O)、中央演算処理回路(CPU)およびROM,RAM等の記憶回路(いずれも図示せず)からなるマイクロコンピュータにより構成されている。【0021】そして、コントロールユニット1の入力側にはテンキー等を含むキーボード2、マウス3およびフロッピーディスク装置(ハードディスク装置)からなる記憶装置4等が接続され、キーボード2およびマウス3は後述の水相・油相成分および防腐剤の種類やそれぞれの配合濃度(配合量)を入力データとして入力するための入力手段を構成している。【0022】また、コントロールユニット1の出力側にはディスプレイ5およびプリンタ6等が接続され、該ディスプレイ5およびプリンタ6は表示・出力手段を構成している。そして、コントロールユニット1は前記記憶回路内に図2および図3に示すプログラム等を格納し、防腐剤の配合濃度演算処理を行うようになっている。さらに、コントロールユニット1の記憶回路にはその記憶エリア1A内に、後述の数1〜数3および数5〜数7による演算式が予め格納されると共に、キーボード2等による入力データおよび各演算式による演算結果等が更新可能に記憶されるものである。【0023】ここで、コントロールユニット1の記憶エリア1Aは各演算式等を記憶する記憶手段を構成している。なお、この記憶手段としてはコントロールユニット1の記憶エリア1Aに限るものではなく、フロッピーディスク装置(ハードディスク装置)等からなる記憶装置4によって記憶手段を構成してもよい。【0024】また、水系乳化組成物として乳化化粧料を例に挙げると、この乳化化粧料は下記の表1に示すように、74重量%(容量%)の純水および可溶化剤としての8重量%(容量%)のジプロピレングリコール(DPG)からなる水相)と、下記の表2に示すように、10重量%(容量%)の鉱油、4重量%(容量%)のミリスチン酸オクチルドデシルおよび2重量%(容量%)のシクロジメチルポリシロキサンからなる油相とによって構成され、更に表1および表3に示すようにこれらに乳化剤としては例えば非イオン系界面活性剤である、2重量%(容量%)のポリオキシエチレンセチルエーテル(エチレンオキサイドの付加モル数10モル)(表3参照)がこれらの乳化化粧料に加えられている。【0025】【表1】【0026】【表2】【0027】【表3】【0028】本実施例による防腐剤の配合濃度演算処理装置は上述の如き構成を有するもので、次に図2および図3を参照してコントロールユニット1による防腐剤の配合濃度演算処理について説明する。【0029】まず、処理動作がスタートすると、ステップ1で前記乳化化粧料の水相・油相成分(種類)、および非イオン界面活性剤(例えばポリオキシエチレンセチルエーテル)を前記表1および表2の如く選定すると共に、それぞれの配合量を重量%で数値入力する。【0030】また、ステップ1では前記乳化化粧料の抗菌成分となる防腐剤の種類を下記の表4に示すように、例えばパラオキシメチルエステル(MP)、パラオキシエチルエステル(EP)、パラオキシプロピルエステル(PP)、パラオキシブチルエステル(BP)からなるパラベン類として選定し、これらをそれぞれMP,EP,PP,BPとして図1に示したキーボード2またはマウス3により入力する。【0031】【表4】【0032】そして、次なるステップ2では各水相・油相成分毎にその配合率を容量%として前記表1、表2、および表3に示すように演算すると共に、各油剤k(例えば鉱油,ミリスチン酸オクチルドデシルまたはシクロジメチルポリシロキサン)毎に容量率Vk (k=1,2,3,…)を、【0033】【数1】Vk =(油剤kの容量)/(全油相の容量)として表2に示す如く鉱油,ミリスチン酸オクチルドデシルおよびシクロジメチルポリシロキサン毎に算定する。また、このときに総濃度を容量%として表3に示す如く演算する。【0034】次に、ステップ3では水相中の可溶化剤(DPG)濃度x(容量%)を、【0035】【数2】x=100・(DPG容量)/(全水相の容量)として前記表1に示す如く算定する。【0036】次に、ステップ4では水相中の非イオン活性剤のモル濃度M(mol/l)を、【0037】【数3】M=10・(非イオン界面活性剤の水相中濃度/非イオン界面活性剤の分子量)として前記表1に示す如く算定する。【0038】そして、次なるステップ5では各油剤k毎に防腐剤(MP,EP,PPまたはBPのいずれか)の単純系における油相−水相分配係数Pk (k=1,2,3,…)を、前記数2の式による可溶化剤(DPG)濃度xから、【0039】【数4】Pk =a×10−bx a,b:防腐剤、油剤kおよび可溶化剤の種類によって決まる定数として算定する。【0040】次に、ステップ6ではステップ2で得た前記数1による各油剤k毎の容量率Vk (k=1,2,3,…)と前記ステップ5で得た数4によるそれぞれの単純系における油相−水相分配係数Pk とから、各油剤kの混合系(即ち鉱油,ミリスチン酸オクチルドデシルおよびシクロジメチルポリシロキサンを混合した状態)における防腐剤の油相−水相分配係数Pr を数5【0041】【数5】なるクルップ(Kurup)等の演算式(ファルマソイティカ アクタ ヘルベティアエ ,61,308頁−313頁(1986年)「Pharm.ActaHelv.,61,308−313(1986)」参照)から算定する。【0042】ここで、防腐剤としてMPを使用した場合には、前記表2および表4に示す如く油剤としての鉱油は容量率V1 (V1 =0.625)、分配係数P1 (P1 =0.034)となり、油剤としてのミリスチン酸オクチルドデシルは容量率V2 (V2 =0.025)、分配係数P2 (P2 =3.655)となり、油剤としてのシクロジメチルポリシロキサンは容量率V3 (V3 =0.125)、分配係数P3 (P3 =0.090)となるので、これらの混合系における防腐剤(MP)の油相−水相分配係数Pr を数5の演算式により、Pr =0.3986として前記表4の如く算定する。また、他の防腐剤(EP,PP,BP)を使用した場合についても、これと同様にして混合系における油相−水相分配係数Pr を表4の如く算定する。【0043】次に、ステップ7では乳化化粧料に含まれる油相(鉱油,ミリスチン酸オクチルドデシルおよびシクロジメチルポリシロキサン)と水相(純水およびDPG)の容積比Φを【0044】【数6】Φ=(油相の容量)/(水相の容量)なる数6から算定する。水相の容量が82に対し油相の容量が16でその容積比は0.1951と算定された。【0045】次に、ステップ8では乳化化粧料に含まれる防腐剤の配合濃度と遊離の防腐剤濃度の比率Rを、【0046】【数7】c,d:防腐剤、非イオン界面活性剤の種類によって決まる定数、H:非イオン界面活性剤のHLB(界面活性剤を構成している親水基と親油基の強さバランスを示したパラメータ)、M:非イオン界面活性剤の水相中のモル濃度として算定する。【0047】ここで、防腐剤としてMPを使用した場合、非イオン界面活性剤として直鎖のアルキルエーテル系のうち、いずれかを使用した場合、定数cは6.4に、定数dは44になる。また、非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレンセチルエーテル(エチレノキサイド付加モル数10モル)を使用した場合、HLBは13.5となる。さらに、ポリオキシエチレンセチルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数10モル)の分子量は682であるからステップ4にて算定された如く水相中のモル濃度は0.035mol/lとなる。したがってR値は表5に示す如く算定された。【0048】そして、図3に示す次なるステップ9では、過去の処方値等を検索しこれを参考とすることによって防腐剤の配合濃度Cを数値入力し、ステップ10に移ってこの防腐剤の配合濃度C、前記容積比Φ、数5の式による油相−水相分配係数Pr および数7の式によるRから水相中で遊離の防腐剤濃度Cwを【0049】【数8】Cw =C×{(Φ+1)/(Pr ×Φ+R)}数8なるビーン(Bean)等の演算式(ジャーナル オブ ファーマシイアンドファーマコロジィ,21,173S−181S(1969年)「J.Pharm.Pharmac.,21,173S−181S(1969)」参照)を用いて算定した。その結果を表5、表6に示した。【0050】【表5】【0051】【表6】【0052】次に、ステップ11では前記防腐剤(MP,EP,PP,BP)の配合濃度Cおよび水相中での防腐剤濃度Cw (水相中濃度)を各入力データと共に、表1〜表6および図4に示す如くディスプレイ5で画面表示させ、これらを必要に応じてプリンタ6でプリントアウトさせる。【0053】ここで、図4に示す特性線では、前記数8の演算式によって算出した各防腐剤(MP,EP,PP,BP)の配合濃度Cを棒グラフとして表し、水相中での防腐剤濃度Cw (水相中濃度)を折れ線グラフとして表している。【0054】そして、次なるステップ12では画面表示(プリントアウト)された防腐剤の配合濃度Cおよび防腐剤濃度Cw 等から、防腐剤濃度Cw の値を変更すべきか否かを判定し、「YES」と判定したときにはステップ8に戻って防腐剤濃度Cw の数値データを変更し、再びステップ9からステップ11に亘る処理を繰返すようにする。【0055】また、ステップ12で「NO」と判定したときには次なるステップ13に移って過去の処方実績から防腐剤の配合濃度C等が妥当であるか否かを判定し、「NO」と判定したときには前記ステップ1に戻ってこれ以降の処理を繰返すようにする。そして、ステップ13で「YES」と判定したときには防腐剤の配合濃度C等が妥当であるとして、処理動作を終了させる。【0056】かくして、本実施例によれば、乳化化粧料に配合すべき複数の油剤、可溶化剤、非イオン界面活性剤および防腐剤の種類とそれぞれの配合濃度とを選択的に入力するにあたり、過去の処方値等を参考にし有効に活用することによって、前記ステップ1からステップ13に亘る処理で、防腐剤の配合濃度Cおよび水相中で遊離の防腐剤濃度Cw を正確に検索し算定することができ、前記防腐剤(例えばMP,EP,PP,BP等のパラベン類からなる)の配合濃度Cが適正値となるように短時間で演算処理を実行できる。【0057】また、コントロールユニット1の記憶エリア1A等に前記数1〜数3および数5〜数8の演算式を予め記憶させておくことにより、前記ステップ1からステップ10に亘る配合濃度C等の演算処理を行うときに、これらの各演算式を適宜に読出して順次演算処理を実行でき、その後のステップ11ではディスプレイ5およびプリンタ6でこれらの演算結果や入力データを表示・出力することにより、前記ステップ12、13で防腐剤の配合濃度Cおよび水相中での防腐剤濃度Cw が過去の処方実績から妥当であるか否かを評価しつつ、前記入力データの変更を容易に行うことができる。【0058】さらに、例えばMP,EP,PP,BP等のパラベン類からなる防腐剤の水相中濃度(防腐剤濃度Cw )が抗菌活性に重要な役割を果すとの知見に基づき、多価アルコール類(DPG)等からなる可溶化剤を水相中に加えるようにしているから、DPG等の可溶化剤によって水相中での防腐剤濃度Cw を確実に増加させることができ、乳化化粧料の防腐力を効果的に増強できる。【0059】加えて、非イオン界面活性剤がパラベン類の抗菌活性を低下させるとの知見に基づき、その低下の度合いを掌握することにより、製剤の防腐力を適切に判断するものである。【0060】さらにまた、上記の知見に基づきパラベン類等からなる防腐剤の油相−水相分配係数Pk を、油相が単一成分からなる単純系(油相−水相の容量比が1:1である単純系)での各油剤k毎の分配係数Pk として、前記数2,数3の演算式により水相中での可溶化剤濃度x(容量%)に関連付けて算定しているから、各油剤kの混合系(鉱油,ミリスチン酸オクチルドデシルおよびシクロジメチルポリシロキサンを混合した状態)における防腐剤の油相−水相分配係数Pr を、前記数5の式でより正確に算定できると共に、これによって防腐剤の配合濃度Cおよび水相中で遊離の防腐剤濃度Cw をより正確に検索算定することができる。【0061】従って、本実施例によれば、乳化化粧料に対する防腐剤(MP,EP,PP,BP等のパラベン類からなる)の配合濃度Cを短時間で算出でき、これらの防腐剤の配合濃度を適正に演算処理することができる等の効果を奏する。【0062】なお、前記実施例では、図2および図3に示すプログラムのうち、ステップ3が本発明の構成要件である可溶化剤濃度算定手段の具体例を示し、ステップ5が第1の分配係数算定手段の具体例であり、ステップ6が第2の分配係数算定手段の具体例であり、ステップ7が容積比算定手段の具体例であり、ステップ8が非イオン界面活性剤によるパラベン類の抗菌活性低下率の算定手段の具体例であり、さらにステップ9からステップ13に亘る処理が防腐剤濃度検索算定手段の具体例である。【0063】また、前記実施例では、乳化化粧料に配合する複数の油剤として鉱油,ミリスチン酸オクチルドデシルおよびシクロジメチルポリシロキサンを用いる場合を例に挙げて説明したが、これに替えて、乳化化粧料に配合する複数の油剤kとして、例えば鉱油、スクワラン、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、ミリスチン酸イソセチル、トリステアリン酸硬化ヒマシ油、オリーブ油、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、シクロジメチルポリシロキサン、メトキシケイ皮酸オクチル、パラジメチルアミノ安息香酸オクチルを下記の表7の如く用いてもよい。【0064】【表7】【0065】そして、この場合には純水(水相)に加える可溶化剤として、例えば1,3ブチレングリコール(1,3−BG)、ジプロピレングリコール(DPG)からなる多価アルコールを用い、防腐剤としてパラオキシメチルエステル(MP)、パラオキシエチルエステル(EP)、パラオキシプロピルエステル(PP)、パラオキシブチルエステル(BP)を用いることにより、各油剤k毎の単純系における油相−水相分配係数Pk を上記の表7に示すように求めることができる。【0066】表7に示す以外の油剤についても、予め単純系における油相−水相分配係数を求めることによって、乳化化粧料に用いることができる。【0067】さらに、前記実施例では、水系乳化組成物として乳化化粧料を調製する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば薬品または食品等の水系乳化組成物を調製する場合にも適用できるものである。【0068】具体的な乳化製剤について本発明装置によって算出した値を基に防腐剤の配合濃度を決定した。その結果を表8に示す。乳化製剤の場合、応用例1または2に示したように、防腐剤は一般にパラベン類の合計で0.2〜0.3%程度配合することが多い。しかし、本発明装置による演算処理の結果、この処方では応用例4に示したように防腐剤濃度が0.05%では防腐力を失ってしまうが、応用例8に示したように防腐剤濃度が0.07%では防腐力が得られることがわかり、実際の防腐試験結果によってもこのことが実証された。【0069】【表8】【0070】【発明の効果】以上詳述した如く、本発明により、例えば乳化化粧料等の水系乳化組成物に添加すべき防腐剤の配合濃度を適正化するのに用いて好適な防腐剤の配合濃度演算処理装置を提供できることは明らかである。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の実施例による防腐剤の配合濃度演算処理装置を示す制御ブロック図である。【図2】コントロールユニットによる防腐剤の配合濃度演算処理を示す流れ図である。【図3】図2に続く防腐剤の配合濃度演算処理を示す流れ図である。【図4】防腐剤の配合濃度および水相中濃度を示す特性線図である。【符号の説明】1 コントロールユニット2 キーボード(入力手段)3 マウス(入力手段)4 記憶装置5 ディスプレイ(表示・出力手段)6 プリンタ(表示・出力手段) 水系乳化組成物に配合される複数の油剤、可溶化剤、非イオン界面活性剤、および防腐剤の種類とそれぞれの配合濃度とをデータとして入力する入力手段(ステップ1)と、各水相、油相成分の容量%、各油剤毎の容量率および総濃度の算定手段(ステップ2)と、ステップ1で入力したデータに基づき前記水系乳化組成物の水相中に含まれる可溶化剤濃度を算定する可溶化剤濃度算定手段(ステップ3)と、水相中の非イオン活性剤のモル濃度算定手段(ステップ4)と、ステップ3による可溶化剤濃度に基づき、前記各油剤毎に防腐剤の単純系における油相−水相分配係数を算定する第1の分配係数算定手段(ステップ5)と、ステップ2で得た容量率およびステップ5で得られた防腐剤の単純系における油相−水相分配係数とから、各油剤の混合系における防腐剤の油相−水相分配係数を算定する第2の分配係数算定手段(ステップ6)と、前記水系乳化組成物に含まれる油相および水相の容積比算定手段(ステップ7)と、ステップ4に基づき、非イオン界面活性剤によって可溶化されていない防腐剤(遊離の防腐剤)の割合の算定手段(ステップ8)と、前記ステップ5〜8に基づき前記ステップ1で入力した防腐剤の配合濃度と水相中で非イオン界面活性剤に対して遊離の防腐剤濃度の算定手段(ステップ9)と、ステップ9に基づき、水相中で遊離の防腐剤濃度を算定する手段(ステップ10)と、ステップ10を表示する手段(ステップ11)と、その防腐剤濃度に基づいて最適防腐力獲得濃度を検定する手段(ステップ12、13)とから構成してなる防腐剤の配合濃度演算処理装置。 ステップ1〜ステップ9から得られるステップ10の算定結果をステップ1による入力データと共に表示・出力し(ステップ11)、さらにステップ11を基に、最適防腐力獲得濃度を検定する手段(ステップ12、13)を通じて得られる算定結果を表示・出力することから構成してなる請求項1に記載の防腐剤の配合濃度演算処理装置。 前記第2の分配係数算定手段(ステップ6)は、ステップ2、3、5による油相−水相分配係数とに基づいて前記防腐剤の油相−水相分配係数を算定する構成としてなる請求項1乃至2に記載の防腐剤の配合濃度演算処理装置。 前記非イオン界面活性剤によって可溶化されていない防腐剤(遊離の防腐剤)の割合の算定手段(ステップ8)は、ステップ2、4に基づいて防腐剤の配合濃度と遊離の防腐剤濃度の比率を算定する構成としてなる請求項1乃至3に記載の防腐剤の配合濃度演算処理装置。


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