タイトル: | 特許公報(B2)_高純度マンネンタケ菌糸体の製造方法 |
出願番号: | 1996245624 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C12N1/14,A23L1/212,A23L1/28 |
森川 俊雄 JP 3597648 特許公報(B2) 20040917 1996245624 19960827 高純度マンネンタケ菌糸体の製造方法 森川健康堂株式会社 592207809 筒井 知 100087675 森川 俊雄 20041208 7 C12N1/14 A23L1/212 A23L1/28 C12N1/14 C12R1:645 JP C12N1/14 G C12N1/14 F A23L1/212 101 A23L1/28 Z C12N1/14 G C12R1:645 7 A23L 1/212 -1/218 特開平07−000144(JP,A) 特開平07−079738(JP,A) 特開昭63−208507(JP,A) 特開平05−292917(JP,A) 特開昭60−043357(JP,A) 特開平09−056362(JP,A) 3 1998066535 19980310 5 20030807 村上 騎見高 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、きのこ類の培養技術の分野に属し、特に、マンネンタケを培養して高純度の菌糸体を製造する技術に関する。【0002】【従来の技術とその課題】きのこ類は、低カロリーの健康食品として注目されている。特にマンネンタケは、中国名で霊芝と呼ばれるように古来不老不死の霊薬とされ、現在も刻んだり、そのまま煎じたりして食されている。さらに、近年は、マンネンタケの菌糸体を加工した粉末、ドリンク、錠剤なども数多く出現している。このため、安価で入手容易な材料、例えば、おがくずと米糠を用いてマンネンタケを培養し、菌糸体(mycelium)を増殖することも試みられている。しかしながら、従来の方法は純度の高い菌糸体を得るためには必ずしも満足すべきものではない。例えば、おがくず+米糠を用いる培養の場合、菌糸体の純度は、せいぜい30〜40重量%であることが見出されている。【0003】【課題を解決するための手段】本発明者は、単純な培地を用いて高純度のマンネンタケ菌糸体が得られることを見出した。すなわち、本発明は、もち米とグルコースから成る培地を用いてマンネンタケを培養することを特徴とするマンネンタケ菌糸体の製造方法を提供するものである。驚くべきことに、本発明における培地は、本質的にもち米とグルコース(ぶどう糖)のみから成り、その他の成分を含有しなくても、きわめて菌糸体含有量の高い培養物を産生させることができる。本発明に従いもち米とグルコースから成るシンプルな培地を用いることにより高純度のマンネンタケ菌糸体が得られる詳細な理由は未だ判らないが、アミロペクチンを多量に含むもち米の組織がマンネンタケの培養に適しているものと推測される。【0004】【発明の実施の形態】本発明に従う培地用のもち米(餅米)としては、特に限定されるものではなく、いろいろな品種のものが利用可能であるが、好適な例としては、ヒゴモチ、アサヒモチなどが挙げられ、その他、ヒヨクモチ、ヒメノモチ、ハッサクモチなど各種の水稲もち米および陸稲もち米を用いることができる。グルコースはD‐グルコースである。【0005】培地は、もち米を蒸したものにグルコースを混合することによって調製される。通常、重量比でもち米2に対してグルコースを約1の割合で用い、オートクレーブにかけて滅菌し、マンネンタケ(学名:Ganoderma lucidium)の種菌を植菌して培養を行う。培養は、好気条件下に25℃の温度において、通常2カ月半〜3カ月間実施する。【0006】本発明に従うこのような培養により、マンネンタケの内部標準物質(苦味成分)として知られたガノデリン酸(ganoderic acid)を多量に含有する高純度のマンネンタケ菌糸体が得られる。なお、ガノデリン酸は、高血圧降下作用を有することでも知られている。このようにして得られたマンネンタケ菌糸体を食品素材として利用するためには、該菌糸体を培地から抽出することが必要であるが、マンネンタケ菌糸体中のガノデリン酸は、熱には比較的強いが抽出過程で長時間加熱すると壊れてしまう。【0007】本発明者は、マンネンタケ菌糸体中に含有されているガノデリン酸を破壊することなく菌糸体を培地から抽出処理する技術を確立した。かくして、本発明の特に好ましい態様においては、上記の培養後の培養物を55℃〜60℃の温度下に繊維素分解酵素(セルラーゼ)を用いて抽出処理する工程が含まれる。セルラーゼは、通常、温水1リットルに対して約600〜640g溶解して使用される。【0008】さらに、このように抽出処理したままの状態の菌糸体は水分を多く含有しており、食品素材として長時間保存する場合、腐敗する可能性が高い。そこで、本発明の好ましい態様に従えば、抽出物を乾燥粉末化する工程が含まれる。乾燥粉末化は、凍結真空乾燥機やスプレードライヤー(噴霧式加熱乾燥機)などを用いて行われる。【0009】上述した本発明の方法によって得られたマンネンタケ菌糸体は、きわめて高純度であり、後に定義するようなマンネンタケ含有率に従えば95%以上の値を示すことが明らかにされている。したがって、本発明は、別の視点として、上述したような方法によって製造され、95重量%以上の菌糸体純度を有するマンネンタケ菌糸体を提供する。【0010】本発明によって得られたマンネンタケ菌糸体は、高純度のマンネンタケ成分を含有した優れた健康食品素材として各種の応用が可能である。例えば、マンネンタケ(霊芝)菌糸体粉末にβ−サイクロデキストリンを加え、防湿性を高めたものに酸味料で味付けしたものを顆粒状や打錠した錠剤として利用される。また、マンネンタケ菌糸体粉末にβ−サイクロデキストリンを加え、防湿性を高めたものに、ビタミンE(酸化防止)、サフラワー油、乳化剤を加えてエマルジョン化したものをソフトカプセルに充填した形態で使用することもできる。【0011】【実施例】以下、本発明の特徴をさらに明瞭にするため、実施例に沿って本発明を説明する。菌糸体の培養蒸したもち米2に対しグルコース1の割合で調製した培地(もち米:ヒゴモチ)をオートクレーブにかけて滅菌し、これにマンネンタケの種菌を植菌し、25℃において80日間好気条件下に培養した。培養後55℃〜60℃の温水1リットルに対し、繊維素分解酵素〔セルラーゼ・オノズカS、ヤクルト薬品工業(株)製〕を10gの割合で溶解させた溶液を用いて培養物を抽出処理した。その後、抽出された菌糸体含有率を凍結真空乾燥機〔共和真空技術(株)製〕を用い、凍結真空乾燥することによりマンネンタケ(霊芝)菌糸体粉末を得た。この粉末をサンプル1とする。なお、比較のために、以下のようなサンプルを調製した(培養温度、期間などは、上記の場合と実質的に同じである)。サンプル2:もみがら+米糠を用いて培養し、酵素剤で処理、抽出した霊芝菌糸体粉末。サンプル3:おがくず+米糠を用いて培養し、子実体(傘の部分)まで成長させ、子実体を削って粉末化したもの。【0012】菌糸体含有率(純度)の測定[試料及び標準物質の調製]イ.試料の調製1.サンプル薬10gを精秤し水100mlを加えて溶かし(必要に応じて加温する)、これにエチルアルコール100mlを加えて、よく振り混ぜた後濾過する。残留物を水:エチルアルコール(1:1)200mlで同様に操作する。2.濾過物を合わせて減圧下で濃縮し全量を10ml以下にする。この濃縮物を水200mlに分散させ、クロロホルム50mlで3回抽出する。クロロホルム層を合わせ5%炭酸水素ナトリウム水溶液50mlで3回抽出する。3.水層を合わせて2N塩酸にてpH3に調整し、クロロホルム50mlで3回抽出する。クロロホルム層を合わせ、重量概知のフラスコに移し、クロロホルムを減圧下で留去し、残留物をシリカゲルを入れたデシケーター中で24時間乾燥した後その重量を量る。【0013】ロ.標準物質の調製<子実体または培養物の水による抽出物を加工した製品の場合>1.サンプル1〜3の乾燥物(粉末)約10gを精秤し、水500mlを加え30分間ウォーターバス上でかき混ぜながら加熱した後濾過する。2.残留物を水500mlずつ2回同様に操作し、全濾液を合わせて減圧下で濃縮し全量を10ml以下とする。3.濃縮物を水200mlに分散させ、クロロホルム50mlで3回抽出する。クロロホルム層を合わせ、5%炭酸水素ナトリウム水溶液50mlで3回抽出する。4.水層を合わせ2N塩酸にてpH3に調整し、クロロホルム50mlで3回抽出する。クロロホルム層を合わせ重量概知のフラスコに移し、クロロホルムを減圧下で留去し、残留物をシリカゲルの入ったデシケーター中で24時間乾燥後重量を量る。【0014】[確認試験]酸性クロロホルム抽出により得たサンプル3mg〜10mgを正確に量り、内標準溶液1mlを正確に加えて、サンプル溶液とする。別に原料の霊芝(マンネンタケ)乾燥物の酸性クロロホルム抽出により得た標準物質3mg〜10mgを正確に量り、内標準溶液1mlを正確に加えて標準溶液とする。サンプル溶液及び標準溶液10μlにつき次の条件で液体クロマトグラフ法により試験を行う時、サンプル溶液及びクロマトグラム及び標準溶液のクロマトグラムに同じ特有なパターンが認められる。【0015】<培養物を加工した場合>内標準溶液:ピレンのエタノール溶液(10μg/ml)操作条件検出器:紫外吸光光度計(測定波長210nm)カラム:内径4mm、長さ15〜20cmのステンレス管に5μmのオクタデシルシリル化シリカゲルを充填する。カラム温度:室温移動相:PH6.5のリン酸水素カリウム・リン酸水素二ナトリウム緩衝液:メタノール混液(9:20)。流量:ピレンの保持時間が約30分になるように調整する。【0016】[定量法]サンプル及び標準物質の調製で得られた酸性クロロホルム可溶物の重量を用い、次式によりマンネンタケ含有率を求める。マンネンタケ(霊芝)含有率(乾燥物換算)=[サンプルの酸性クロロホルム可溶分量(mg)/サンプルの量(g)]/[標準物質の酸性クロロホルム可溶物量(mg)/標準培養物の乾燥重量(g)]×100この式によるマンネンタケ(霊芝)含有率は、従来よりマンネンタケの内部標準物質として知られるガノデリン酸含有率に対応するものと考えられる。【0017】[結果]本発明に従いもち米+グルコースを用いて培養したマンネンタケ菌糸体粉末はきわめて高い含有率(97%)を示した。 もち米とグルコースから成る培地を用いてマンネンタケを培養することを特徴とするマンネンタケ菌糸体の製造方法。 培養後の培養物を55℃〜60℃の温水下に繊維素分解酵素を用いて抽出処理する行程を含むことを特徴とする請求項1のマンネンタケ菌糸体の製造方法。 抽出物を乾燥粉末化する工程を含むことを特徴とする請求項1または請求項2のマンネンタケ菌糸体の製造方法。