生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_キサンチンデヒドロゲナーゼ及び該酵素の製造方法
出願番号:1996196938
年次:2006
IPC分類:C12N 9/02,C12R 1/38


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三上 洋一 松本 清一郎 JP 3735956 特許公報(B2) 20051104 1996196938 19960709 キサンチンデヒドロゲナーゼ及び該酵素の製造方法 有機合成薬品工業株式会社 000246398 野崎 銕也 100075498 三上 洋一 松本 清一郎 20060118 C12N 9/02 20060101AFI20051221BHJP C12R 1/38 20060101ALN20051221BHJP JPC12N9/02C12N9/02C12R1:38 特開平9−21548(JP,A) Biol. Chem. Hoppe-Seyler, 2 (1991) p.203-211,1991年 J. Bacteriology, 163 [2] (1985) p.600-609,1985年 J. Bacteriology, 172 [10] (1990) p.5999-6009,1990年 Biochimica et Biophysica Acta, 1188 (1994) p.432-438,1994年 Biochimica et Biophysica Acta, 410 (1975) p.12-20,1975年 FASEB J., 8 [7] (1994) p.A1422,1994年 Agric. Biol. Chem., 43 [4] (1979) p.753-760,1979年 2 FERM P-15104 1998023887 19980127 10 20020523 高堀 栄二 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は耐熱性のキサンチンデヒドロゲナーゼ及びその製造方法に関する。本発明におけるキサンチンデヒドロゲナーゼは、耐熱性酵素による核酸塩基交換反応を利用したヌクレオシド化合物の製造において有用な酵素である。【0002】【従来の技術】従来、キサンチンデヒドロゲナーゼに関する報告は次のようなものがある。▲1▼Biochimica et Biophysica Acta、410巻、12−20頁(1975年)、▲2▼Agri.Biol.Chem.43巻、753−760頁(1979年)。しかしながら、▲1▼及び▲2▼で報告されているキサンチンデヒドロゲナーゼの至適温度はそれぞれ30℃と40℃であり、いずれも耐熱性が低く、耐熱性のキサンチンデヒドロゲナーゼは今まで見い出されていなかった。一般に、酵素を利用する反応では耐熱性酵素を用いることにより、反応温度を高く設定できるので、高濃度反応が可能となり、また、反応速度の向上が図られ、さらに雑菌汚染が少ない条件下で酵素を用いることができるという利点がある。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は耐熱性に優れたキサンチンデヒドロゲナーゼを提供することにある。【0004】【課題を解決するための手段】本発明者は上述の課題を解決すべく耐熱性に優れたキサンチンデヒドロゲナーゼを鋭意探索した結果、至適温度及び作用適温の範囲において従来知られているものと性質を異にする耐熱性キサンチンデヒドロゲナーゼを産生する微生物を見い出し本発明を完成するに至った。【0005】 すなわち、本発明はシュードモナス・エスピー Y−510(FERM P−15104)が産生する次の理化学的性質を有するキサンチンデヒドロゲナーゼである。(1)作用【0006】【化2】【0007】(2)基質特異性ヒポキサンチン、キサンチンに対して作用する。(3)至適pH及び安定pH至適pHは8.9付近であり、pH7〜9において60℃で30分加熱しても失活しない。(4)至適温度及び作用適温至適温度は60℃付近、作用適温は40〜70℃。【0008】(5)熱安定性pH7における酵素活性の半減期は、40℃において130時間、50℃において120時間、60℃において25時間である。(6)阻害Cu2+、Zn2+、Pb2+、Mn2+によって阻害を受け、Ag+、Hg+によって著しい阻害を受ける。(7)活性化電子受容体を必要とする。(8)分子量ゲルろ過法による分子量は141,000。【0009】(9)サブユニットの分子量SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によるサブユニットの分子量は56,000及び84,000。(10)ミカエリス定数ミカエリス定数(Km)はキサンチンに対して0.327mM、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドに対して0.060mM。(11)等電点等電点電気泳動法による等電点(pI)は6.0。【0010】 及び、本発明は上述のキサンチンデヒドロゲナーゼを産生するシュードモナス・エスピー Y−510(FERM P−15104)を培養し、培養物から該酵素を採取することを特徴とするキサンチンデヒドロゲナーゼの製造方法である。【0011】以下、本発明のキサンチンデヒドロゲナーゼ及びその製造方法について説明する。本発明で用いられる該酵素の産生菌は、本発明における理化学的性質を有するキサンチンデヒドロゲナーゼを産生する微生物であれば特に制限されないが、好ましくは、本発明者によって土壌中から分離されたシュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)Y−510(以下、本菌株という)である。【0012】本菌株は通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されており、寄託番号はFERM P−15104である。本菌株の菌学的性質をバージェイズ・マニュアル・オブ・システマテック・バクテリオロジー第2巻に準じて検討した結果を以下に示す。1.形態桿菌:1.6〜3.2μm×0.6〜0.7μm2.培養的性質ニュートリエントブロス培地:50℃、2日間培養平板上:黄色。光沢あり、透明、盛り上がらない。コロニーの形は円形。スラント上:黄色。光沢あり、透明、盛り上がらない。生育は中程度。【0013】3.生化学的性質(1)グラム染色 陰性(2)嫌気的性質 生育せず(3)運動性 あり、単極毛(4)オキシダーゼ 陽性(5)カタラーゼ 陰性(6)ゼラチンの液化 液化能なし(7)OFテスト 陰性(8)グルコースからの酸の産生 産生せず【0014】(9)ラクトースからの酸の産生 産生せず(10)キシロースからの酸の産生 産生せず(11)ガラクトースからの酸の産生 産生せず(12)硝酸塩の還元 陽性(13)硝酸カリウムの脱窒能 陰性(14)無機窒素源の利用NO3 を唯一の窒素源として 生育しないNH4 を唯一の窒素源として 生育した(15)独立栄養の基質COを唯一の炭素源として 生育しない【0015】(16)生育温度 40〜55℃で生育至適 48〜53℃(17)尿素の加水分解 分解能なし(18)クエン酸の利用 陰性(19)インドールの産生 陰性(20)GC含量 67.7%以上の菌学的性質に基づき、本菌株はシュードモナス属(Pseudomonas sp.)に属することが判明した。【0016】本菌株の培養は、シュードモナス属に属する微生物の通常行われる条件で行えばよい。大量に培養するには液体培地を用い、浸盪培養又は通気攪拌培養により好気的条件下で行うことが好ましい。培地としては炭素源及び窒素源としてトリプトン、ペプトン又は肉エキスを含む培地を用いることができる。本菌株が生育し本酵素が十分に産生される条件下であれば、培養温度、培養時間、培養のpHは特に制限されない。培養条件によって変動することもありうるが、培養温度は45〜53℃、培養時間は10〜100時間、培養のpHは7〜7.5で行うことが好ましい。【0017】培養物からキサンチンデヒドロゲナーゼを採取する方法は、通常用いられる方法に従って行えばよい。例えば、遠心分離などによって集菌した菌体を超音波破砕、ガラスビーズなどで機械的に破砕した後、遠心分離などにより細胞片などの固形物を除き、粗酵素液を得る。次に、硫安、芒硝などの塩析法、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどによる金属凝集法、プロタミン、エチレンイミンポリマーなどによる凝集法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーなどによるクロマトグラフィー法を用いて精製することができる。【0018】【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を実施例により詳しく説明する。なお、キサンチンデヒドロゲナーゼにおける酵素活性単位は、1分間当たり1μmolの尿酸を産生する酵素量を1unitと定義する。NADはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを、NADPはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を、NBTはニトロブルーテトラゾリウムを、INTは3−(p−ヨードフェニル)−2−(p−ニトロフェニル)−5−フェニル−2Hテトラゾリウムクロリドを表す。【0019】製造例シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)Y−510の培養及び集菌ニュートリエントブロス(ディフコ社製)8g、ヒポキサンチン1g及び水1LからなるpH7の培地を用いた。2Lの三角フラスコに培地0.5Lを入れ滅菌した後にシュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)Y−510(FERM P−15104)の菌体3×107 個を添加し、培養温度50℃、200rpmで回転させつつ、15〜20時間培養した。培養終了後、菌体を遠心分離(10,000g、4℃、10分)により集菌した。【0020】【実施例】実施例11.酵素の分離精製製造例で得られた湿菌30gを10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7)に懸濁し、超音波で菌体を破砕した。菌体破砕液50mlについて超遠心分離(30,000g、10分)を行い、上清40mlを得た。上清に硫酸プロタミンを0.25重量%になるように添加し4℃で撹拌した後、超遠心分離(30,000g、10分)を行い上清40mlを得た。次に、上清に硫酸アンモニウムを25重量%になるように添加し、4℃で15分撹拌した後、20分放置し遠心分離(10,000g、20分)を行った。【0021】上清にさらに硫酸アンモニウムを45重量%になるように添加し4℃で15分撹拌した後、20分放置し遠心分離(10,000g、20分)を行い沈殿5gを得た。次いで、沈殿に10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7)5mlを添加し、懸濁させた後、10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7)2Lを用いて20時間透析を行った。透析終了後、超遠心分離(30,000g、10分)を行い、上清12mlを得た。【0022】この上清を、DEAE Sepharose fast flow(ファルマシア社製)90mlを充填したカラム(φ25×330mm)に添加した。続いて、10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7)200mlと1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7)200mlとでリン酸濃度が上昇するグラジエントをつくり、溶出した。活性画分30mlを分取し、限外ろ過で3mlに濃縮した。得られた溶液を、10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7)で平衡化したSuperrose12(ファルマシア社製)カラムでゲルろ過を行い、キサンチンデヒドロゲナーゼ(以下、本酵素という)13mgを得た。【0023】2.理化学的性質1で得られた本酵素の理化学的性質は以下のとおりであった。(1)作用及び基質特異性本酵素2μg、表1に示す0.5mMの各種基質及び0.5mMNADを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH9)の1ml溶液を50℃で10分間反応させ、分解した基質を定量した。結果を表1に示す。本酵素はヒポキサンチン、キサンチンに対してのみ作用した。【0024】【表1】【0025】(2)至適pH及び安定pH本酵素2μg、1mMキサンチン及び1mMNADを含む、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6〜7.5)、50mMトリス塩酸緩衝液(pH6.7〜8.7)又は50mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH8.5〜10.7)の1ml溶液を50℃で10分間反応させ、生成した尿酸を定量した。結果を図1に示す。pH8.9付近において高い酵素活性が認められた。また、本酵素を50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7)又は50mMトリス塩酸緩衝液(pH9)中で60℃で30分加熱した後、残存する酵素活性を測定した。その結果、本酵素はpH7〜9において失活しなかった。【0026】(3)至適温度及び作用適温本酵素2μg、1mMキサンチン及び1mMNADを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH9)の1ml溶液を図2に示す30〜80℃の各種温度で10分間反応させ、生成した尿酸を定量した。結果を図2に示す。至適温度は60℃付近であった。至適温度での酵素活性を100とすると40〜70℃の広い範囲で80%以上の相対活性が認められた。【0027】(4)熱安定性本酵素を50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7)又は50mMトリス塩酸緩衝液(pH9)中で各々40、50、60℃においてインキュベートし、経過時間における残存する酵素活性を測定した。酵素活性は、本酵素2μg、1mMキサンチン及び1mMNADを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH9)の1ml溶液を50℃で10分間反応させ、生成した尿酸を定量して求めた。結果を図3に示す。酵素活性の各種温度における半減期は、pH7でインキュベートした場合では、40℃において130時間、50℃において120時間、60℃において25時間であった。【0028】(5)阻害本酵素2μg、1mMキサンチン及び1mMNADを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH9)の1ml溶液に、表2に示す0.1mMの各種金属塩を添加し50℃で10分間反応させ、生成した尿酸を定量することにより金属イオンによる影響を調べた。結果を表2に示す。Cu2+、Zn2+、Pb2+、Mn2+によって阻害を受け、Ag+、Hg+によって著しい阻害を受けた。【0029】【表2】【0030】(6)活性化本酵素2μg、1mMキサンチン及び表3に示す1mMの各種電子受容体を含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH9)の1ml溶液を50℃で10分間反応させ、生成した尿酸を定量した。その結果、電子受容体の中でも、NAD、NADP、フェナジンメトサルフェート、メチレンブルー、又は2,6−ジクロロインドフェノールを必要とした。【0031】【表3】【0032】(7)分子量Superrose12(ファルマシア社製)を用いるゲルろ過法で分子量を測定した。標準蛋白質には、Ferritin(分子量440,000)、Lactate Dehydrogenase(分子量140,000)、Bovine Serum Albumin(分子量67,000)、Ovalbumin(分子量43,000)、Soybean Trypsin Inhibitor(分子量20,100)を用いた。その結果、分子量は141,000であった。【0033】(8)サブユニットの分子量SDS−ポリアクリルアミドゲル(PAGE)電気泳動法によりサブユニットの分子量を測定した。標準蛋白質には、Myosin(分子量212,000)、α−Macroglobulin(分子量170,000)、β−Galactosidase(分子量116,000)、Transferrin(分子量76,000)、Glutamic Dehydrogenase(分子量53,000)を用いた。その結果、サブユニットの分子量は56,000と84,000であった。【0034】(9)ミカエリス定数本酵素2μg、0.033〜0.5mMキサンチン及び0.033〜0.5mMNADを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH9)の1ml溶液を50℃で10分間反応させ、生成した尿酸を定量した。キサンチンに対するミカエリス定数(Km)は0.327mM、NADに対するミカエリス定数は0.060mMであった。【0035】(10)等電点等電点電気泳動法により等電点(pI)を測定した。標準蛋白質には、Amyloglucosidase(等電点3.50)、Soybean Trypsin Inhibitor(等電点4.55)、β−Lactoglobulin(等電点5.20)、Bovine Carbonic AnhydraseB(等電点5.85)、Human Carbonic AnhydraseB(等電点6.55)、Horse Myoglobin(等電点6.85)、Lenti Lectin(等電点8.15、8.45、8.65)、Trypsinogen(等電点9.30)を用いた。その結果、等電点(pI)は6.0であった。【0036】【発明の効果】本発明の耐熱性に優れたキサンチンデヒドロゲナーゼを酵素を利用する反応に用いることにより、該反応の反応温度を高く設定することができ、高濃度反応が可能となり、反応速度が向上するとともに、雑菌汚染が少ない条件で酵素を利用する反応ができるという効果を奏する。【図面の簡単な説明】【図1】本発明のキサンチンデヒドロゲナーゼの至適pHを示す図である。【図2】本発明のキサンチンデヒドロゲナーゼの至適温度及び作用適温を示す図である。【図3】本発明のキサンチンデヒドロゲナーゼの熱安定性を示す図である。 シュードモナス・エスピー Y−510(FERM P−15104)が産生する次の理化学的性質を有するキサンチンデヒドロゲナーゼ。(1)作用(2)基質特異性 ヒポキサンチン、キサンチンに対して作用する。(3)至適pH及び安定pH 至適pHは8.9付近であり、pH7〜9において60℃で30分加熱しても失活しない。(4)至適温度及び作用適温 至適温度は60℃付近、作用適温は40〜70℃。(5)熱安定性 pH7における酵素活性の半減期は、40℃において130時間、50℃において120時間、60℃において25時間である。(6)阻害 Cu2+、Zn2+、Pb2+、Mn2+によって阻害を受け、Ag+、Hg+によって著しい阻害を受ける。(7)活性化 電子受容体を必要とする。(8)分子量 ゲルろ過法による分子量は141,000。(9)サブユニットの分子量 SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によるサブユニットの分子量は56,000及び84,000。(10)ミカエリス定数 ミカエリス定数(Km)はキサンチンに対して0.327mM、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドに対して0.060mM。(11)等電点 等電点電気泳動法による等電点(pI)は6.0。 請求項1記載のキサンチンデヒドロゲナーゼを産生するシュードモナス・エスピー Y−510(FERM P−15104)を培養し、培養物から該酵素を採取することを特徴とするキサンチンデヒドロゲナーゼの製造方法。


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