生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_シリコーンオイルの定量分析方法
出願番号:1996181920
年次:2005
IPC分類:7,G01N27/62


特許情報キャッシュ

久高 一郎 勝野 保夫 古川 洋一郎 JP 3654715 特許公報(B2) 20050311 1996181920 19960711 シリコーンオイルの定量分析方法 電気化学工業株式会社 000003296 久高 一郎 勝野 保夫 古川 洋一郎 20050602 7 G01N27/62 JP G01N27/62 V 7 G01N 27/62 - 27/70 H01J 49/00 - 49/48 G01N 30/72 JICSTファイル(JOIS) 特開平08−145950(JP,A) NISHIMURA T,AOKI Y,HIYAMA Y,SONODA A,"Thermospray Ionization Mass Spectrometry of Polydimethylsiloxane Antifoams",Bull.Chem.Soc.Jpn.,社団法人日本化学会,1991年12月15日,Vol.64,No.12,p.3722-3726 1 1998026607 19980127 8 20020920 鈴木 俊光 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、溶液中に含まれる微量の不純物の分析法として要求されるシリコーンオイルの一種類であるジメチルシロキサンを迅速に分析する技術に関するものである。【0002】【従来の技術とその課題】シリコーンオイルは様々な分野で応用されている。例えば、その中の一種類であるジメチルシロキサンはシール材、被覆材、及びグリース等として工学分野に、また、消泡剤、胃内有泡性粘膜除去剤等として医学、薬学分野に応用されている。そのため、工業製品、工業用水、排水、空気中、及び医薬品等に含まれるシリコーンオイルの不純物量が注目され、その分析法は重要な技術となっている。【0003】従来から、用いられているこれらシリコーンオイルの分析法としては、赤外吸収法、核磁気共鳴法、ガスクロマトグラフィー法、及び熱分解ガスクロマトグラフィー法等があり、特にシリコーンオイルの一種類であるジメチルシロキサンの分析方法に関しては、以下の方法がある。(1)赤外吸収法では測定物質特有の吸収波長から測定物質を同定し、吸収量から定量分析を行うが、微量の測定物では感度が小さく定量が困難であるという課題があった。また、混合物中の一成分を検出し、その成分を定量することが困難であるという課題もあった。(2)ガスクロマトグラフィー法は、物質の吸着性能の相違を利用して測定物を分離し、適当な検出器に接続して定性及び定量するものであり、低分子量のジメチルシロキサンの分析法として感度良く測定することができるが、高分子量かつ高粘性のポリジメチルシロキサンとなるとカラムの分離効率及びカラムからの回収率が低下するため精度良く測定できないという課題があった。(3)高分子量のポリジメチルシロキサンを定性分析する方法として、熱分解ガスクロマトグラフィー−質量分析法が提案されている。その例として、Analytical Chemistry.vol52,p1245(1980)には、30,000cSt(1cStは1St(ストークス)の1/100)また、Macromolecules vol17,p1312(1984)には、60,000cSt −ポリジメチルシロキサンの定性分析例が報告されている。しかしながら、ガスクロマトグラフィー法と同様にカラムの分離効率の低下とカラムからの回収率の低下、そして粘度の増加に伴う難揮発性の増加により再現精度が低下することから、定量分析に関しては報告されていない。【0004】また、ポリジメチルシロキサンを熱分解ガスクロマトグラフィー法で定量する一つの方法として分析化学1991,40,T37 では、シリコーンゴム硬化物から揮散するシリコーン化合物の分析への応用例が報告されている。これは、活性炭を充填したガラスカラムに空気を通じてシリコーン化合物を吸着させ、有機溶剤で溶離し、これを加熱気化させクロマトグラフィーを行う方法であり、比較的精度良く測定することができる。しかしながら、比較的精度良く測定されたとはいえその測定対象となるシリコーンオイルは粘度100cSt以下であり、これ以上の粘度をもつ高分子量のシリコーンオイルの定量方法に関する測定例は報告されていない。この理由は、ガスクロマトグラフィー法では、高分子量のシリコーンオイルになるに従い、粘度が増加する、すなわち難揮発性が増加するため測定不能となるためである。【0005】本発明は、従来、溶液中に存在する高分子量のシリコーンオイルを高感度かつ高精度に定量分析できなかったという課題を解決するためになされたものであり、詳しくは、容易に高分子量のシリコーンオイルを定性分析でき、かつ粘度100cSt以上の高分子量のジメチルシロキサンの定量に関し、高感度かつ高精度に分析できる知見を得て、本発明を完成するに至った。【0006】【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、(1)ジメチルシロキサンを含有してなり、メタノール又はエタノールを1容量%以上含むシリコーンオイル溶液又は溶離液を気化し、次いで、これを大気中で生起させたコロナ放電プラズマに導入して、前記溶液中に含まれるジメチルシロキサンを質量分析により定量することを特徴とするシリコーンオイルの定量分析方法である。【0007】【発明の実施の形態】以下、本発明を詳しく説明する。大気圧化学イオン化−質量分析装置について大気圧下で生起させたコロナ放電プラズマ(以下、APCIという)と質量分析計を組み合わせた大気圧化学イオン化−質量分析装置(以下、APCI−MSという)は、近年開発された高感度分析装置である。この装置では、溶液を180℃前後に加熱した霧化器により霧化し、更に400℃に加熱した脱溶媒器を通過後、溶液は蒸発し、中性分子及びイオンは液相から気相に移る。ここで、コロナ放電により溶媒分子がイオン化され、更に逐次起こるイオン−分子反応により溶質分子がイオン化され、生成したイオンが電場で加速された後、0.2μm の径をもつ細孔から真空中にサンプリングされ、質量分析計へ導かれる。【0008】大気圧化学イオン化法は、大気圧下におけるイオン化ゆえ溶質分子のイオン化効率が高いので、極微量の溶質分子をイオン化し、特定イオンを選択的に検出することにより高感度な定量分析が行える。また、このような原理を応用した分析法であるため、ガスクロマトグラフィーでは分析不可能な極性基を多くもつ化合物や難揮発性化合物そして高分子量化合物の分析が可能である。【0009】更に、イオン源へ試料溶液を導入する前にカラムを介することにより液体クロマトグラフ−大気圧化学イオン化−質量分析装置への拡張も可能である。加えて質量分析計の分解能も著しく進歩しており、最近では種々の試料への応用が検討されている。【0010】APCI−MSによるシリコーンオイルの分析法についてこの方法は、ジメチルシロキサンを溶媒で一定濃度に希釈した溶液を大気圧下で生起させたコロナ放電プラズマに導入し、前記溶液中に含まれるジメチルシロキサンを質量分析計で定量することを特徴とする。本発明は、APCI−MSによるシリコーンオイル中のジメチルシロキサンの高感度でかつ、高精度の分析を実現するためのものであり、詳しくは、シリコーンオイルの成分であるジメチルシロキサンのイオン化を高効率で行うには、試料溶媒又は溶離液にメタノール又はエタノールを用いることが有用であることを見い出したものである。一方、ジメチルシロキサンを成分とするシリコーンオイルを試料溶媒及び溶離液にベンゼン、トルエン、クロロホルム等の有機溶媒を用いAPCI−MSにより分析するとジメチルシロキサン由来のイオンが数多く生成する。これらイオンは低分子量の環状シロキサンのプロトン化イオンや環状シロキサンからのメチル基脱離イオンそして鎖状シロキサンイオンである。しかし、これら各イオンを用いてジメチルシロキサンの定量は可能であるが、その検出下限は数百ppmオーダーであり、ppbオーダーの微量分析ができないので好ましくない。【0011】ところが、メタノール又はエタノールを試料溶媒や溶離液に用いることによりm/z237イオン(メタノールの場合)又はm/z251イオン(エタノールの場合)を選択的に生成する。例えば、このm/z237イオンは、直鎖状のジメチルシロキサンが熱分解により生成した環状シロキサン3量体であるヘキサメチルシクロトリシロキサンとメタノールより生成したメチルカチオンが相互作用して生成したエネルギー的に安定なイオン−分子錯体である。このm/z237イオンの化学式は、CH3 + 〔Si(CH3)2 O〕3 で表される。【0012】更に、驚くことに、この反応を利用し、メタノール又はエタノールを試料溶媒や溶離液に用いることにより、m/z237イオン又はm/z251イオンを選択的に生成させ、他の一連の低分子量の環状シロキサンや鎖状シロキサンイオンの生成を抑えることができる。このm/z251イオンの化学式は、C2 H5 + 〔Si(CH3)2 O〕3 で表される。【0013】イオン化時にメチルカチオンが存在するとき、すなわち試料溶媒又は溶離液にメタノールを用いたときは、m/z237イオンを生成させる。また、エタノールを用いたときは、エチルカチオンとヘキサメチルシクロトリシロキサンの相互作用したイオン(m/z251イオン)を生成させる。この種のイオンを選択的に検出することによりジメチルシロキサンを高感度にかつ、高精度に検出することができる。【0014】このm/z237及び251イオンを高感度に検出するためには、試料溶液又は溶離液にメタノール又はエタノールを1容量%以上含むことが好ましい。更に、m/z237及び251イオンの検出感度の向上のためには、試料溶液又は溶離液に含まれるメタノール又はエタノールの量は、10〜50容量%が好ましく、20〜30容量%がより好ましい。特に好ましい溶媒組成の一例としては、試料溶媒及び溶離液としてトルエン/メタノール=80/20容量%の条件を用いる。10容量%未満では、m/z237及び251イオンの生成量が十分大きくないため、シリコーンオイルの定量下限を下げることができない。一方、50容量%を越えるとシリコーンオイルが可溶な溶媒組成比が小さくなるため、定量精度が劣る傾向になるからである。【0015】この様な高粘性を有するシリコーンオイルの配管及び霧化器等への吸着を低減することに関しては、溶離液として用いる溶媒にベンゼン、トルエン、及びクロロホルム等のシリコーンオイルの溶解度が高い溶剤を用いることで回避できる。【0016】これにより試料注入孔や送液配管内、霧化器等に吸着するシリコーンオイルが極端に減少するので、シリコーンオイルの定量精度を向上させることができる。【0017】シリコーンオイルの高感度分析には、その溶媒組成としてメタノールを用いた方がエタノールを用いるよりも高感度な分析が可能である。m/z237イオンの方が、m/z251イオンより気相中でより安定であることから、メタノールを用いた方がよりシリコーンオイル由来のイオンを検出することができるからである。よって、メタノールを用いた方がより低濃度のシリコーンオイルの定量ができるので好ましい。【0018】更に、本発明は、複雑な前処理無しに、試料調製としてメタノール又はエタノールを試料溶媒として用いること、そして、溶離液としてシリコーンオイルが可溶なトルエン又はクロロホルム等を用いることのみで簡単にシリコーンオイルの同定及びppbオーダーの高感度なシリコーンオイルの定量が高精度にできる。【0019】【実施例】本発明をさらに説明するために、以下に実施例を挙げるが、これらの実施例はいかなる意味においても本発明を制限するものではない。実施例1トルエン溶液中のシリコーンオイルの一種類であるポリジメチルシロキサンの定量をAPCI−MSを用いて行った。用いた装置の概略図を図1に示す。溶離液1からトルエン溶液を送液ポンプ2で1ml/minの流量で調整しながら送液し、試料注入孔3から分析試料を10μl 溶離液中に導入した。分析試料溶液を含んだ溶離液は霧化器5を通過後、コロナ放電により分析試料がイオン化される。生成したイオンは質量分析部8のイオンレンズ9を通して流れを揃え、四重極質量分析計10によってm/z237イオンを選択し、イオン検出器11でそのイオン強度を測定した。試料は、ポリジメチルシロキサン粘度1万cStを溶媒トルエン/メタノール=80/20容量%混合溶液で調製した。検量線は次のようにして求めた。標準シリコーンオイルとしてポリジメチルシロキサン粘度1万cStを用い、これをトルエン/メタノール=80/20容量%混合溶液で100ppbから10ppm迄の間で数点希釈溶液を調製し、各々の濃度でのm/z237イオンのピーク面積を測定し、濃度との関係を求めた。求めた関係(検量線)を図2に示す。図2よりポリジメチルシロキサンの濃度とm/z237イオンのピーク面積との間には高い一次相関が得られている。試料の測定結果を表1に示す。【0020】【表1】【0021】得られた分析結果は、ポリジメチルシロキサンの濃度は、1.9ppmであり、10回繰り返し測定したときの再現精度は、Cv=3.3%であり、十分満足できるものであった。【0022】実施例2水溶液中に溶解しているシリコーンオイル(ポリジメチルシロキサン;粘度1万cSt)の定量を実施例1と同様にして行なった。検量線は以下のようにして求めた。標準シリコーンオイル粘度1万cStをトルエン/メタノール/水=72/18/10(重量,%)を用い、1ppmに調製した。この標準試料を1、2、5及び10μl 注入し、各々測定し、絶対注入量に対するm/z237イオンのピーク面積を求め、その関係を図3に示す。図3より、ポリジメチルシロキサンの濃度とm/z237イオンのピーク面積との間には高い一次相関が得られている。分析試料4点の試料調製は、標準試料溶液と同じ溶媒組成を用いて10倍に希釈した。この分析試料を測定し、予め作製しておいた検量線を用いて定量を行なった。その測定結果を表2に示す。【0023】【表2】【0024】得られた分析結果は、ポリジメチルシロキサンの濃度が、測定試料換算において、No.1は、0.51ppm、No.2は、0.51ppm、No.3は、0.91ppm、No.4は、0.77ppmであった。また、各試料6回測定したときの再現精度は良好で、測定値が高い程良好なCv値が得られた。尚、一回の測定時間は3分以内であり、試料4点を各4回繰り返し測定したときの全測定時間は10分であった。尚、定量下限については、m/z237イオンのピーク強度を考慮すると、供試試料換算でpgオーダーまで定量可能と推測される。【0025】比較例1熱分解ガスクロマトグラフ/質量分析計を用いて粘度1万cStのポリジメチルシロキサンを含む1%トルエン溶液からポリジメチルシロキサンの定性及び定量分析を行った。熱分解生成物である低分子量の環状シロキサン(3〜5量体)からのメチル基脱離イオンが特に強く検出された。定量分析を行うためにこれらのイオン強度を積算し、その合計値を算出したが良好な再現性が得られず、定量することができなかった。【0026】【発明の効果】以上のように、本発明の分析方法は、試料調整のみで複雑な前処理等を必要とせず、溶液中に存在する不純物としてのシリコーンオイルの極微量の定量分析が高精度、高感度、及び短時間に可能である。従って、例えば、製剤等の工業製品の製造工程中における品質管理方法として大きな効果をもたらすものである。【図面の簡単な説明】【図1】図1は、本発明で使用したAPCI−MSの装置の概略図を示す。【図2】図2は、本発明の定量に用いた検量線の一部で標準試料濃度(重量/体積,%)とm/z237イオンのピーク面積の関係を示す。【図3】図3は、本発明の検量線の一例で、標準試料濃度(絶対量,ng)とm/z237イオンのピーク面積の関係を示す。【符号の説明】1 溶離液2 送液ポンプ3 試料注入孔4 カラム5 霧化器6 コロナ放電電極7 細孔8 質量分析部9 イオンレンズ10 四重極質量分析計11 イオン検出器 ジメチルシロキサンを含有してなり、メタノール又はエタノールを1容量%以上含むシリコーンオイル溶液又は溶離液を気化し、次いで、これを大気中で生起させたコロナ放電プラズマに導入して、前記溶液中に含まれるジメチルシロキサンを質量分析により定量することを特徴とするシリコーンオイルの定量分析方法。


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