生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_微生物由来の多糖類
出願番号:1996112360
年次:2006
IPC分類:C08B 37/00,C09K 3/00,C12P 19/04


特許情報キャッシュ

倉根 隆一郎 野畑 靖浩 山口 善治 穴澤 秀治 松浦 一郎 JP 3826168 特許公報(B2) 20060714 1996112360 19960507 微生物由来の多糖類 伯東株式会社 000234166 協和醗酵工業株式会社 000001029 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 社本 一夫 100089705 今井 庄亮 100071124 増井 忠弐 100076691 栗田 忠彦 100075236 小林 泰 100075270 倉根 隆一郎 野畑 靖浩 山口 善治 穴澤 秀治 松浦 一郎 20060927 C08B 37/00 20060101AFI20060907BHJP C09K 3/00 20060101ALI20060907BHJP C12P 19/04 20060101ALI20060907BHJP JPC08B37/00 PC09K3/00 103GC12P19/04 C C08B 37/00 C09K 3/00 C12P 19/04 CA(STN) BIOSIS(STN) WPIDS(STN) 特開平05−301904(JP,A) 特公平06−037521(JP,B2) 3 FERM BP-2015 1997296002 19971118 11 20030408 内藤 伸一 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、微生物由来の新規な多糖類と、これを有効成分とする増粘剤に関するものである。【0002】【従来の技術】多糖類は複数の単糖類がグリコシド結合によって結合した炭水化物で、天然に存在するもの、天然に存在するものをさらに化学的に変性させたものなど数多く知られている。単糖類は一般に水に溶解するが、多糖類は種類も多く性質もまちまちであるが、一般に水には溶解し難く、溶解する場合もコロイド状態に溶けていることが多い。しかし水に溶解させたもの、あるいはコロイド状に溶解したものでも粘性の高い溶液となり、非常に特徴のある挙動をし、産業上の利用価値が高い。そこで多糖類を化学的に変成し水に溶解するように加工したものが多く使用されている。例えば、セルロースは水に不溶であるが、これに塩化メチル、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどを反応させて得たメチルセルロースは水に溶解するようになり、極く一般的な工業材料の一つとして利用されている。しかし、化学的に変成した半合成品を製造する場合、多くの場合反応は理想的に進まず、部分的に親水基と疎水基の並びに偏りが生じ、水に不溶解部分を生じ、これが継粉を生じたりする原因となる。このような見地から多糖類としての諸性質を有しつつ、水に溶解するものが望まれている。【0003】【発明が解決しようとする課題】このような背景のもとに、本発明は特定の微生物を培養し、その培養物より新規な多糖類を分離・採取することにあり、 またその多糖類を有効成分とした水に非常に溶解し易い、安定性の高い増粘剤を提供することにある。【0004】【課題を解決するための手段】本発明者らは、特定の微生物を培養し、その培養物の特定成分に着目した多糖類が、特異な単糖類の結合様式になっており、これが水に非常に溶解し易い、安定性の高いレオロジー改良剤、または増粘剤となりうることを見いだし本発明をなすに至った。すなわち、本発明は、構成単糖が実質フコースとマンノースである多糖類であり、この多糖類を用いた増粘剤である。【0005】【発明の実施の形態】本発明の多糖類は、構成単糖が実質フコースとマンノースであり、好ましくはフコースとマンノースの構成比が1:(0.8〜1.2)であり、さらに好ましくは構成単糖のフコースとマンノースの多くが交互に結合しているものである。本発明の多糖類は、好ましくは分子量が1x102〜1x107である。1x102より小さいと増粘効果が小さく、他方1x107より大きいとゲル状となり、いずれも増粘剤として好ましくない。【0006】本発明の多糖類は、アルカリゲネス・レイタス(Alcaligenes latus)に属するアルカリゲネス・レイタスB−16株(FERM−BP−2015)菌株の産出物より有利に抽出しうる。アルカリゲネス・レイタスB−16株の菌学的性質、培養方法は、特許公告公報平成6−37521号に記載されている。アルカリゲネス・レイタスB−16株から産出する多糖類については、既に該前記特許公報、さらに特許公開公報平4−200389号、特許公開公報平5−301904号に報告されているが、本発明の多糖類はこれら前記公報に記載された多糖類と同時に産出するものであるが、全く別種のものである。すなわち、該前記公報に記載された多糖類(グルコース、ラムノース、グルクロン酸、フコース、マンノースよりなる)の分別工程で、分別されなかった分から別途分離精製されるものである。【0007】本発明の多糖類を増粘剤として使用する場合は、通常該多糖類を0.01〜10重量%程度の水溶液にして使用される。0.01重量%より低い濃度の水溶液では所期の目的を達するに多量必要とし効率的とはいえず、また10重量%より高い濃度の水溶液は、該多糖類の溶解度が充分でなく実質溶解できないこと、さらに溶液の粘度が上がり過ぎて取り扱いの上から不可能なことなどの難点がある。本発明の多糖類は水に溶解し易く、その水溶液の粘性は、pH、金属塩などの影響を受け難く非常に安定である。従って、これを増粘剤として使用すると、水に易溶で、かつ継粉状の不溶解分を残さず、得られた水溶液の粘性が環境によって変わらないので、工程安定化、製品品質の向上に大きく寄与することができる。【0008】本発明の増粘剤の適用分野は、特に限定するものではないが、研磨剤、ワックス、顔料など微粒子の懸濁安定化剤として、ラテックス、農薬、インク、ペイント、潤滑油、加工油などの乳化安定化剤として、あるいはペイント、ドレッシングなどの増粘剤などとして実質的に水をベースとした系のものに適用される。適用の際の添加量も限定するものではなく、適用場所、適用目的に従って決められるべきである。この際、他の種類の増粘剤を併用することをなんら妨げるものではない。【0009】多糖類は、その培養生成物から分離精製して目的の多糖類を得るが、純度の高くない多糖類の場合には、他の多糖類、オリゴ糖類などが混ざっていることが多い。本発明多糖類を増粘剤として使用するときは、その使用目的、対象製品によっては必ずしも純度の高いものが要求されない分野があり、この場合には本発明の多糖類以外の多糖類が混在してもよい。本発明の増粘剤の適用にあたっては、そのような他の多糖類の混在を妨げるものではない。【0010】【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。【0011】【実施例1】1.培養条件特開平5−301904の実施例1の方法に従い、アルカリゲネス・レイタスBー16菌株(FERM BP−2015号)の培養を行った。培養培地の組成は次の通りである。<培養培地の組成>以下の成分をイオン交換水に溶解し、全体を1Lとした。グルコース 〔関東化学(株)製 試薬〕 15 gKH2PO4 〔関東化学(株)製 試薬〕 4.5 gK2HPO4 〔関東化学(株)製 試薬〕 1.5 gNaCL 〔関東化学(株)製 試薬〕 0.1 gMgSO4・7H2O 〔関東化学(株)製 試薬〕 0.2 g尿素 〔関東化学(株)製 試薬〕 1.0 g酵母エキス 〔オキソイド(OXOID)社製〕 0.5 gpH=7この培養培地100mLを、0.2μmの滅菌済みのメンブレンフィルターで除菌した後、300mLの滅菌済み三角フラスコに入れ、アルカリゲネス・レイタスBー16菌株を一白金耳接種した後、温度を30℃に7日間振とう培養した。【0012】2.分離・精製培養により産出、蓄積された多糖類を、次の方法で分離、精製した。アルカリゲネス・レイタスB−16菌株を培養した培養物100mLに対して水400mLを加え、1NのNaOH水溶液によりpHを12に調整した。ついでこの液をイオン交換樹脂:ダイヤイオンHPA−75〔日本練水(株)製〕100mLを充填したカラムに通した。(通水量はイオン交換樹脂の体積の8倍以下とした)。この処理によりイオン交換樹脂に蛋白質、核酸、および多糖類の低分子量成分が吸着される。この時イオン交換樹脂カラムに吸着されずに通過した水に多糖類の高分子量成分が含まれる。この高分子量成分が前記公報(特開平5−301904号)に記載された多糖類である。【0013】通水後のイオン交換樹脂に純水300mLを通し十分に洗浄した後、0.1MのNaCL溶液を30mL通水し、イオン交換樹脂カラムに吸着した多糖類を溶出させた。溶出液を別途イオン交換樹脂:AG50W−X8(H型)〔バイオラッド(Bio−Rad)社製〕,さらにAG1−X4(Ac−OH型)〔バイオラッド社製〕に通して脱塩を行った。脱塩後の液をロータリエバポレーターにより濃縮した後、エタノールを加え多糖類を沈澱させた。常温減圧乾燥し、本発明の多糖類を得た。【0014】3.分子量測定プルランを標準としてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により 平均分子量を求めた。得られた結果を表1に示す。<GPC分析の条件>高速液体クロマトグラフィー(HPLC)装置〔ウオーターズ(Waters)社製〕カラム : ウルトラハイドロゲンジェル1000、ウルトラハイドロゲンジェル2000、ガードカラムの3本使用〔いずれもウオーターズ(Waters)社製〕移動相 : 0.1N−NaNO3流速 : 0.5mL/分カラム温度 : 45℃検出器 : 示差屈折計標準サンプル : プルラン〔ショーデックス(Shodex)社製〕標準分子量として、8.5×105、 4.8×104、 5.8×103 の3種GPC分析結果を下記表1に示す。【0015】【表1】これらの結果から、 この多糖類の分子量は、1×104〜5×104であることが認められた。【0016】4.構成単糖の決定本発明の多糖類を以下の条件で加水分解した後、HPLCにて分析した。加水分解の条件:本発明の多糖類14.0mgをイオン交換水4mLに溶解し、濃硫酸1mLを加え アンプルに封管し、100℃、2時間加熱した。冷却後、この処理液を炭酸バリウムで中和、沈殿物を除去した後、濃縮した。【0017】<HPLC測定条件>カラム : SH−1011〔ショーデックス社製〕 3本カラム温度 : 50℃移動相 : 0.01N−H2SO4流速 : 0.5mL/分標準サンプル : グルクロン酸、グルコース、マンノース、ラムノース、フコースを使用した。標準ピーク(分) : グルクロン酸;38.35、 グルコース;42.05、 マンノース;44.30、 ラムノース;45.98、 フコース;49.77結果を図1に示した。この結果から、本発明の多糖類の構成単糖は、フコースとマンノースであることがわかった。【0018】5.部分加水分解物の分離、及び構成単糖の決定本発明の多糖類約100mgを0.25N−トリフルオロ酢酸5mLに入れ、 80℃、30分間加熱して加水分解させた。この加水分解液をイオン交換樹脂:DEAE−Sephadex(炭酸型)〔バイオラット社製〕で中和した後ろ過し、そのろ液を凍結乾燥して部分加水分解物を調製した。この加水分解物を、AsahipakNH2P−50(4.6×250mm;ショーデックス社製)のカラムを用いたHPLCにより分析した。結果を図2に示した。本発明の多糖類の部分加水分解物としてNo.1〜No8のオリゴ糖成分として分取することができた。【0019】<HPLC測定条件>カラム : AsahipakNH2P−50(4.6 × 250mm)温度 : 30℃溶媒 : アセトニトリル:水(体積比6:4)の混合液流速 : 1.0 mL/分単離したNo.1〜No8のオリゴ糖成分それぞれについて、4で述べたと同じ条件、方法で加水分解し、構成単糖を決定した。単離したオリゴ糖成分の組成を表2に示した。この結果より、全てのオリゴ糖はフコースとマンノースがほぼ等モルで構成されていることが判明した。【0020】【表2】【0021】6.核磁気共鳴スペクトル(NMR)による構成単糖の分析本発明の多糖類を85%含水ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、核磁気共鳴スペクトル分析装置〔ブルカー(Bruker)社 ARX500、1Hに対して500Mz、13Cに対して125MHz〕を用い、90℃にて測定した。化学シフトはDMSOのシグナルを トリメチルスルホキシド(TMS)よりδ2.49(1H)、δ39.5(13C)として表記した。一次元NMRの場合、1Hでは30°パルスで測定時間2.1秒、待ち時間2.0秒で測定し、13Cでは30°パルス、測定時間0.5秒、待ち時間0.1秒で測定した。結果を表3、図3と図4に示す。図3の13C一次元NMRの測定から、12本のシグナルが明瞭に観測されたので、フコースとマンノース以外の糖は存在しないことがわかった。また、図4の 1H一次元NMRの測定から、フコースとマンノースのアノマープロトン(H−1)のシグナルの面積比を求めると、0.995:1.000となることから、この構成単糖は、フコース:マンノース=1:1であることがわかった。【0022】また、フコースとマンノースのアノマー位の13C一次元NMRのシグナルは、1本のシャープなピークであるため、フコースとマンノースが交互に結合した構造であることがわかった。【0023】<1H−NMRスペクトルの測定条件>溶媒 : 85%含水DMSO−d61H : 500MHz温度 : 80 ℃パルス : 30°測定時間 : 2.1秒待ち時間 : 2.0秒化学シフト: DMSOのシグナルはTMSよりδ2.49 (1H)【0024】<13C−NMRスペクトルの測定条件>溶媒 : 85%含水DMSO−d613C : 125MHz温度 : 80 ℃パルス : 30°測定時間 : 0.5秒待ち時間 : 0.1秒化学シフト: DMSOのシグナルはTMSよりδ39.5 (13C)【表3】【0025】【実施例2】1. 比較に用いた多糖類HPMC : ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔メトローズ90SH−15000(商品名)、信越化学工業(株)製〕HEC : ヒドロキシエチルセルロース〔HECダイセルSP−800(商品名)、ダイセル化学工業(株)製〕アルギン酸 : 〔紀文フード(株)社製〕カードラン : 〔和光純薬(株)製〕キサンタンガム : 〔ケルコ(Kelco)社製〕ローカストビーンガム : 〔三晶(株)製〕【0026】2.水溶液の安定性に及ぼすpHの影響本発明の多糖類、あるいは比較の多糖類それぞれの1重量%の水溶液を作り、塩酸と酢酸、あるいは水酸化ナトリウムとリン酸水素ナトリウムを加えpHを調整した。B型粘度計を用い30℃、30rpmにて各水溶液の粘度を測定した。結果を下記表4に示す。本発明の多糖類の水溶液は、どのpHにおいても粘度が一定で安定していた。【0027】【表4】【0028】3.水溶液の安定性に及ぼす金属塩の影響本発明の多糖類、あるいは比較の多糖類をそれぞれイオン交換水に溶解し、1重量%水溶液を作った。ここに塩化ナトリウム、 あるいは硫酸アルミニウムを所定量加えた後、 B型粘度計を用い30℃、30rpmにて水溶液の粘度を測定した。結果を下記表5に示す。本発明の多糖類の水溶液は塩化ナトリウム、 あるいは硫酸アルミニウムの存在に影響されず安定した粘度を示した。【0029】【表5】【0030】4.溶解のし易さの比較本発明の多糖類、 あるいは比較の多糖類のそれぞれを、粒径100〜200メッシュにそろえて、その1gをイオン交換水1000mLを入れたビーカーに添加し、撹拌装置にて、300rpm、30℃で10分間攪拌を行った。各多糖類の溶解液を、恒量測定済みのNo6濾紙(直径150mm)にて吸引濾過を行った。この濾紙を105℃で2時間乾燥させた後、デシケーターに入れ1時間、室温まで冷却した。この乾燥濾紙の重量を測定した後、各多糖類の溶解率を下記の式にて求めた。【0031】次に本発明の多糖類と比較の多糖類を、それぞれ1gをイオン交換水1000mlに入れ、撹拌装置にて、300rpm、60℃で120分間攪拌を行った後、前述の方法に従い、溶解率を求めた。下記表6に示したように、本発明の多糖類は、室温程度の水温においても短時間で完全に溶解することが確認できた。【表6】【0032】【発明の効果】本発明の多糖類は、新規の多糖類であり、水に非常に溶解し易い、安定性の高い増粘剤となる。各種産業分野において広く適用が可能である。【図面の簡単な説明】【図1】Aは標準物質の加水分解物の HPLCチャートであり、Bは本発明の多糖類の加水分解物の HPLCチャートである。【図2】本発明の多糖類の加水分解物の逆相HPLCの溶出パターンを示す。【図3】本発明の多糖類の1H−NMRスペクトルを示す。【図4】本発明の多糖類の13C−NMRスペクトルを示す。 構成単糖が、フコースとマンノースからなり;フコースとマンノースとの構成比が、1:(0.8〜1.2)であり;分子量が1x102〜1x107であり;アルカリゲネス・レイタス(Alcaligenes latus)に属するアルカリゲネス・レイタスB−16株(FERM−BP−2015)菌を培養し、その培養物より分離・採取するものであること;を特徴とする多糖類。 アルカリゲネス・レイタス(Alcaligenes latus)に属するアルカリゲネス・レイタスB−16株(FERM−BP−2015)菌を培養し、その培養物より分離・採取することを特徴とする請求項1に記載の多糖類の製造方法。 請求項1又は2に記載の多糖類を有効成分とする増粘剤。


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